JP2018069324A - 鋼の連続鋳造用鋳型装置及びそれを用いた表層改質鋳片の製造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造用鋳型装置及びそれを用いた表層改質鋳片の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】2本の浸漬ノズルによって表層と内層の成分組成が異なる複層鋳片を製造するに際し、鋳片厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造を用い、表面割れ発生を回避するとともに、表層厚比率が高い表層と内層の成分組成が異なる鋳片を製造する。【解決手段】鋳型の上端から下記(i)式を満たす距離Lの位置に直流磁場発生装置の下端を配置し、鋳型上端から100mm位置における鋳型開口部は、幅中央部に厚みがTM、幅がWTの厚み拡大部を有し、鋳型上端から距離Lの位置における鋳型開口部は、幅中央部に厚みがTINの厚み拡大部を有し、下端の鋳型開口部は幅W、厚みTの矩形であり、下記(ii)〜(v)式を満足する鋳型を用いて鋳造を行う。400mm ≦ L≦ 800mm (i)20mm≦(TIN−T) (ii)1/3 ≦WT/W ≦ 2/3 (iii)(TM−T)/W≦0.08 (iv)TIN<TM(v)【選択図】図2

Description

本発明は、表層改質鋳片を製造するに際し、その製造に適した鋼の連続鋳造用鋳型装置及びそれを用いた表層改質鋳片の製造方法に関するものである。
表層と内層の成分組成が異なる複層状の鋳片を製造する試みは古くから行われている。例えば、鋳片の表層のみ改質する方法として、連続鋳造用パウダーに何某かの元素を含有させ連続的に供給する、あるいは、パウダー層の上方から連続的にパウダーと反応しにくい金属粉あるいは金属粒を供給する方法としては、例えば、特許文献1があげられる。本方法では、合金元素を含有させた連続鋳造用パウダーを用い、連続鋳造鋳型内の上部に電磁攪拌装置を設置して鋳型内上部溶鋼の水平断面内で合金元素を溶解・混合する攪拌流を形成し、その下方に幅方向に直流磁場を鋳片の厚み方向に印加して溶鋼中に直流磁場帯を形成し、かつ、その直流磁場帯の下方に浸漬ノズルにより溶鋼を供給して鋳造することで、合金元素の鋳片表層部の濃度が内層に比べて高い複層状の鋳片を製造する方法である。さらに、この方法はメニスカスから合金を添加するため、メニスカス近傍で最も濃度が高く、直流磁場帯で区分された上部溶鋼プール内で濃度を連続的に変化させる方法であって、内層に比べて合金元素の濃度が高い表層部の厚みを薄くすることができる方法である。しかしながら、鋳型内では上部にパウダー層が存在し、かつ周囲から冷却され、さらに矩形断面形状となるため、強力な攪拌を行うことができず、濃度の均一化が図りにくく鋳片周方向での濃度が不均一となることに加えて表層厚みの制御が不十分であった。また、ストランド上部と下部に供給する溶鋼量を独立に制御しないため、上下プール間での溶鋼混合が避けられず、分離度の高い鋳片を製造しにくいという課題があった。
また、特許文献2には、長さの異なる二本の浸漬ノズルを鋳型内にある溶融金属のプールに挿入し、それぞれの吐出口を深さが異なる位置に設け、さらに異種の溶融金属間に直流磁場を利用して両金属の混合を防止しながら複層鋳片を製造する方法が開示されている。
特許文献3には、特許文献2に記載の方法と同様の複層鋳片の連続鋳造方法において、鋳型以後の連続鋳造機内に設置された鋳片を厚み方向に圧下せしめる装置を用いて未凝固鋳片を圧下することにより、組成の異なる2種の金属の相対的な厚み比を調節する発明が開示されている。これによって、クラッド比の異なる複合金属材を工業的に安価かつ効率良く得ることができる。特許文献3に記載のものは、鋳型内メニスカスより450〜700mm下方に直流磁場帯を設け、直流磁束密度を0.5テスラとしている。
一方、非特許文献1に記載のように、スラブ厚が40〜100mmの薄スラブ(薄鋳片)を鋳造する薄スラブ連続鋳造方法が知られている。鋳造された薄スラブは、加熱された後、4段から7段程度の小規模な圧延機で圧延される。
薄スラブ鋳造に用いる連続鋳造鋳型としては、漏斗状鋳型を用いる方法と矩形の平行鋳型を用いる方法が採用されている。漏斗状鋳型は、鋳型下端部の開口部(溶鋼と凝固シェルが充填される部分)については矩形とし、鋳型メニスカス部の開口部については、短辺部の開口幅は鋳型下端部の短辺幅と同一としつつ、浸漬ノズルが挿入される部分の開口幅を拡げ、浸漬ノズルの下端よりも下方において開口部表面形状が徐々に狭くなる漏斗状に形成した形状の鋳型である。漏斗状鋳型を用いることにより、鋳造する鋳片の短辺幅をさらに低減することができ、あるいは浸漬ノズルの外径を大きくすることができる。
また、鋳型より下方のロール帯において鋳片の内部が未凝固状態でロールによって鋳片を圧下し、鋳片厚みを低減する未凝固圧下法が適用される。未凝固圧下で鋳片厚みを40mm圧下することにより、鋳型部において100mmであった鋳片厚みを、圧下後に60mmの薄スラブとすることができる。
薄スラブ連続鋳造における未凝固圧下装置として、特許文献4には、未凝固領域において鋳片をサポートするロールのうち、鋳造方向に並ぶ6対程度のロールのロール間隔を鋳造方向で順次狭めることにより、厚さ90mmの鋳型で鋳造した鋳片を圧下して50mmの薄スラブとする装置が開示されている。
薄スラブの連続鋳造では、高速鋳造によって生産性を確保することが必要であり、工業的には5〜6m/分、最高では10m/分の高速鋳造が可能となっている(非特許文献1参照)。このような高速鋳造においては、鋳片表面の縦割れが問題となる。特に、亜包晶鋼と呼ばれる成分組成(例えばC含有量が0.1%前後の鋼)においては縦割れが発生しやすいため、薄スラブ連続鋳造機の場合には通常鋳造対象に入れていない場合が多い。鋳造する場合には、特別なモールドフラックスを使用することが必要であるとされる(非特許文献1参照)。
但し、後述するように、表層改質鋳片の製造に際しては、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下で連続鋳造を行う薄スラブ鋳造によることが好都合であり、その実施のためには鋳型形状に工夫を要するが、そのような着想が公開されたことは未だ無い。また、薄スラブの連続鋳造における亜包晶鋼の鋳片表面の縦割れ問題は、表層改質鋳片として製造することで解決できるが、そのような着想も公開されたことはない。
特開平8−290236号公報 特開昭63−108947号公報 特開平5−69088号公報 特開2002−160048号公報
第5版鉄鋼便覧 第1巻製銑・製鋼 第454〜456頁
まず、表層改質鋳片を製造するに際し、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下で連続鋳造を行う薄スラブ鋳造を適用する意義について説明する。表層改質鋳片とは、表層部と内層部の品質、特に成分組成が異なる鋳片を意味する。
内層部と比べて表層部の濃度が高い鋳片を鋳造することができ、かつ、その表層厚みを自由に制御することができればその用途は様々なものが考えられる。
例えば、表層部の機能特性が鋼材の機能特性に影響を及ぼすには、表層厚の鋳片全厚に対する比率として少なくとも10%以上は必要である。一例として、内層C濃度0.1%に対して表層C濃度を0.5%に高くした表層部の厚さを鋼材全厚に対して10%以上とすることができれば、表層硬度を高くすることができ、耐摩耗性、摩擦係数等の特性を高めることができる。NiやCuを表層のみ高くすることができれば耐食性を高めることができる。このように表層部濃度が内層に比べて高く、かつ鋳片全厚に対して表層厚みを10%以上に確保することができれば、内層部の鋼材特性と表層部の鋼材特性を兼ね備えた複合鋼材を提供することができる。
薄スラブの連続鋳造においては、前述のように鋳造速度が5〜6m/分ときわめて高速である。そのため、表層溶鋼と内層溶鋼との境界位置が鋳型内メニスカスから0.2mであったとすると表層厚みは5mm程度となる。
加えて、薄スラブ鋳造においては、鋳型直下においてメニスカスから5m程度下方において、その領域で未凝固部分を圧下し鋳片全体の厚みを薄肉化する。メニスカス下5mにおいて、鋳片全厚を100mmから50mmまで圧下することで表層厚が5mmの条件であったとしても表層厚比率は10%確保することができる。この条件は表層のC濃度を高め耐摩耗性や摩擦係数を増加させることや表層のNi濃度を高め耐食性を向上させることが可能となる等、鋼材の表面に新たな特性を付与した鋼材製造を行う上で好適な条件となる。
また、前述の亜包晶鋼は、鋼のδ/γ変態の影響により鋳型内で不均一凝固が生じやすい。不均一凝固が生じると、凝固遅れ部が鋳型から離れる方向に変形し、その結果、凝固遅れが助長するため、表面割れが生じやすい。しかしながら、このような現象はメニスカス〜メニスカス下200mm程度の溶鋼静圧が不十分な領域での現象のため、この領域における凝固シェルの炭素濃度を亜包晶領域から外すことができればこのような欠陥は生じない。
他の例として、スクラップ中に含まれるCuは鉄と比較して酸化しにくい元素であるため、鋼の凝固から加熱炉での高温酸化雰囲気では鉄/スケール界面のCu濃度が増加し、鋼中の固溶限をこえると、Cuが析出しCuの融点以上であればCu液滴をスケール/鉄界面に形成する。Cu液滴は鋼に対して濡れやすいため、鋼のγ粒界に沿って容易に侵入し粒界割れを引き起こす。この防止策として、一般的にNi/Cuが0.5以上、望ましくは1以上のNiを添加することで鋼のCuの固溶限をあげている。しかしながら、Niは表層のみ、例えば、加熱炉でのスケールオフ量を考慮しても表層5mm程度あれば十分であり、内部に添加したNiは合金コストをあげるのみである。薄スラブ鋳造の鋳造速度であれば、メニスカス下200mmの凝固シェル厚がほぼ5mm程度である。従ってこの場合においても、メニスカス〜メニスカス下200mm程度の領域のNi濃度を高くすることができれば、このような欠陥は生じない。
このように、メニスカス〜メニスカス下200mm程度の領域の溶質成分を高めることで、表層5mm程度の領域のみC濃度を高め亜包晶鋼の表面割れを防止することや、表層5mm程度の領域のみNi濃度を高めてトランプエレメント起因の表面割れを防止する方法として好適である。さらに表層5mmのみに合金添加するため、合金添加量を最小化する意味でも薄スラブ鋳造において表層改質鋳片を鋳造することが極めて有効であることは明らかである。
さらに、表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造するにあたり、表層5mm程度の領域の濃度を高めることで表面割れ発生を回避する方法を提供することに加え、表層厚比率が10%強と高い表層と内層の成分組成が異なる鋳片を、同じ連続鋳造機において低コストでかつ生産性を悪化することなく自由に造り込みことができる方法を提供するという観点において従来の方法はなしえなかった課題を克服し、本発明は、表層厚み比率(表層厚/鋳片厚×100)を比較的任意に調整できるとともに、10%以上の表層厚み比率をも実現することのできる、表層改質鋳片の製造における薄スラブの鋳造に適した連続鋳造用鋳型装置及び表層改質鋳片の製造方法を提供することを目的とする。
その結果、本発明は表層厚が薄いものの表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造することで表面割れ発生を回避する方法を提供することに加え、表層厚比率が高い表層と内層の成分組成が異なる鋳片を、同じ連続鋳造機において低コストでかつ生産性を悪化することなく自由に造り込むことができる。
そこで、表層改質鋳片を製造するに際し、本発明は、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下で連続鋳造を行う薄スラブ鋳造を適用し、長さの異なる二本の浸漬ノズルを鋳型内にある溶融金属のプールに挿入し、それぞれの吐出口を深さが異なる位置に設け、さらに異種の溶融金属間に直流磁場を利用して両金属の混合を防止しながら複層鋳片を製造する方法を採用する。
本発明は、表層改質鋳片の製造に鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造を適用するにあたり、鋳型全幅にわたって鋳型厚み方向に直流磁場を印加して直流磁場帯を形成し、直流磁場帯の上側溶鋼プールと下側溶鋼プールのそれぞれに別々の浸漬ノズルによって異なった成分の溶鋼を供給して、表層と内層の成分組成が異なる鋳片を製造する方法において、安定して表層改質鋳片を製造できる連続鋳造用鋳型装置及びその鋳型装置を用いた表層改質鋳片の製造方法を提供する。
図1に示す複層鋳片の連続鋳造方法において、直流磁場発生装置8によって形成される直流磁場帯14をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール15、下部を下側溶鋼プール16とする。そして、表層溶鋼用浸漬ノズル6と内層溶鋼用浸漬ノズル5を鋳型内に挿入し、表層溶鋼用浸漬ノズル6の吐出孔18を上側溶鋼プール15内に配置し、内層溶鋼用浸漬ノズル5の吐出孔18を下側溶鋼プール16内に配置し、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量をそれぞれの浸漬ノズルで供給することにより、表層と内層の成分組成が異なる鋳片を製造することができる。上側溶鋼プール15には表層溶鋼が、下側溶鋼プール16には内層溶鋼が収容され、表層溶鋼と内層溶鋼との境界27が直流磁場帯14の範囲内に形成される。鋳型1内で凝固シェル23が形成され、上側溶鋼プール凝固部分24が鋳片29の表層部を形成し、下側溶鋼プール凝固部分25が鋳片29の内層部を形成する。
上側溶鋼プール15と下側溶鋼プール16を隔離するための直流磁場発生装置8は、鋳造方向で鋳型1が配置された位置に設けられる。内層の溶鋼を供給する内層溶鋼用浸漬ノズル5は、その吐出孔18を直流磁場発生装置8よりも下方の下側溶鋼プール16に配置する必要がある。一方、表層の溶鋼を供給する表層溶鋼用浸漬ノズル6は、その吐出孔を直流磁場発生装置8よりも上方の上側溶鋼プール15に配置する必要がある。本発明は、鋳型短辺厚みが100mm以下で連続鋳造する場合を対象としているため、鋳型として矩形の平行鋳型を用いたのでは、メニスカスから深い位置では凝固シェルの発達によって鋳片厚み方向の未凝固溶鋼厚みが薄くなり、浸漬ノズルの挿入が困難になる。そこで、漏斗状鋳型を採用し、2つの浸漬ノズル、特に内層溶鋼用浸漬ノズル5に近接する位置については、鋳型の開口厚みを大きくし、これによって浸漬ノズルの挿入を容易にすることとしている。一方、メニスカスからコア43上端までの距離が200mm未満となると、表層溶鋼のための上側溶鋼プール15を確保することができないので、メニスカス17から直流磁場発生装置8のコア上端までの距離は200mmm以上が必要である。また、メニスカス17から表層溶鋼用浸漬ノズル6の吐出孔までの距離、浸漬深さを少なくとも100mm以上、望ましくは150mm以上確保する必要があり、そのためにも、メニスカス17からコア43上端までの距離を200mm程度は確保する必要がある。さらに、メニスカス17は、通常は鋳型上端から100mm程度の位置に設定して鋳造を行う。
ここで図2〜図4を参照して、本発明で用いる鋳型装置の形状を説明する。鋳型の水平断面において、溶鋼と凝固シェルが形成される部分は開口を形成しているので、この部分を開口部4と称する。鋳型下端部の開口部形状は、厚みT、幅Wの矩形とする(図3(C))。
まず、鋳型上端から100mm下(メニスカス17相当部)の開口部4の形状について、図3(A)、図4に基づいて説明する。メニスカス17相当部の開口部4形状は、短辺2の厚みは鋳型下端部の厚みTにほぼ等しく、幅も鋳型下端部の幅Wにほぼ等しい。そして、開口部4の幅方向のうちで浸漬ノズルを挿入する部位(幅中央部)については厚み拡大部を設け、厚み拡大部の開口厚みを下端部の厚みTよりも大きくし、漏斗状鋳型の形状とする。表層溶鋼用浸漬ノズル6と内層溶鋼用浸漬ノズル5を比較すると、内層溶鋼用浸漬ノズル5の方が流す溶鋼量が多いため、浸漬ノズル太さも太くなる。以上より、鋳型上端から100mm位置における鋳型開口部は、幅中央部に厚み拡大部を有し、厚み拡大部の厚みは短辺部の厚みよりも厚くなる。また、厚み拡大部の厚みをTM、幅をWTとする。
ここで、鋳型上端から100mm位置(メニスカス17相当部)の開口部において、厚み拡大部の幅WT(図3(A)参照)は、鋳型幅中央を対称に鋳型幅Wの1/3〜2/3である。1/3より狭いと、二本給湯を行うための羽口(タンディッシュ内の注湯用上部ノズル)や注湯量制御を行うためのストッパー、スライディングノズル等をタンディッシュに設置することができないためである。一方、2/3より広いと鋳型内部形状の変化にスラブ形状が追随できず、鋳型下端において短辺厚みTの矩形形状のスラブとは異なるスラブ形状となるためである。
1/3 ≦WT/W ≦ 2/3 (iii)
次に、直流磁場発生装置との位置関係から定まる、鋳型上端からの距離Lの位置における鋳型開口部の形状について、図3(B)、図4に基づいて説明する。メニスカスからの深さが深くなるほど凝固シェル厚が成長し、浸漬ノズルのうちで最も深い位置は内層溶鋼用浸漬ノズルの下端であることから、内層溶鋼用浸漬ノズルの下端位置における鋳型の所要開口量が最大所要開口量となる。なお、本発明においては内層溶鋼用浸漬ノズルの下端位置は直流磁場発生装置のコア下端位置とほぼ同じとなるため、以下の説明では、直流磁場発生装置のコア下端位置を代表値として、鋳型形状を説明する。鋳型上端から直流磁場発生装置のコア下端位置までの距離Lは、本発明に係る鋳型の開口部厚みが端部より所定値以上厚い部分の距離といえ、この距離Lは、鋳型上端からメニスカス17までの距離が通常100mmであることを考慮すると、少なくとも鋳型上端から400mm以上は必要である。
この条件は、メニスカスからコア上端までの距離が前記したように200mm以上は必要であるし、コア高さは最低限100mmは必要ということから定まる条件である。一方、Lの上限値としてはメニスカスからコア上端までの距離を400mm、コア高さを300mm程度とした条件であり、最大値は800mmとなる。メニスカスからコア上端までの距離は、表層厚みを厚くしたい場合等には長くする方が好ましいと言えるが、浸漬ノズルをその分だけ長くしなければならないので400mm程度が上限となる。また、電磁ブレーキのコア高さは高くしても良いが、コアサイズが大きくなるために鋳型の振動重量制約から最高でも300mm程度までである。
そのため、距離Lに関する条件式は(i)式で表現される。なお、距離Lについては、鋳型上端から鋳造中の内層溶鋼用浸漬ノズルの下端を想定した位置までの距離であるということもできる。
400mm ≦ L≦800mm・・・・・(i)
そこで、図3(B)、図4に示す鋳型上端からLmm下(直流磁場発生装置の下端位置相当部)における鋳型開口部の形状について、幅中央部に、厚みがTINの厚み拡大部を有し、厚み拡大部の厚みTINは短辺部の厚みよりも厚くなる形状とする。そして、鋳型上端から距離Lの位置(直流磁場発生装置の下端位置に相当)における鋳型開口部の厚み拡大部の厚TINを種々変更して薄スラブ表層改質鋳片(以下、複層鋳片ともいう。)の鋳造を行ったところ、下記(ii)式を満たすように定めれば、電磁ブレーキ下端位置相当部において浸漬ノズルと凝固シェルの間のクリアランスを問題なく確保できることがわかった。
20mm≦(TIN−T) (ii)
また、鋳型上端から100mm位置の開口部形状において、厚み拡大部の厚みTMをどこまで拡大できるかは、メニスカス部での長辺幅(ほぼWに等しい)が凝固収縮と鋳型開口部の減肉に凝固シェル変形が追随できるか否かによって決まる。後述するように、凝固シェルの変形に伴う過度な応力を生じることなく鋳造ができるためには、下記(iv)式を満足する必要があると分かった。
(TM−T)/W≦0.08 (iv)
そこで、上記した(i)式(ii)(iii)式および(iv)式を満たし、さらに鋳型上端部を含め、鋳型上端から100mm位置から鋳型上端から距離Lの位置までにおける鋳型開口部形状を一定形状とし(TM=TIN)、鋳型下端の開口部形状を幅W、厚みTの矩形とし、鋳型上端から距離Lの位置(直流磁場発生装置の下端位置相当部)から鋳型下端部までの開口部形状を連続的に減少させた鋳型(図4参照)を用いて鋳造を行ったところ、後述するように、安定して鋳造を行うことができた。但し、メニスカス部において内層溶鋼用浸漬ノズル周りに軽微ではあるものの地金張りが生じることがあったので、下記(v)式を満たすものとする。また、下記(v)式は凝固収縮により鋳型と鋳片との間にエアギャップを生じさせないためにも好ましい。さらに、より好ましくは、TMはTINよりも20mm程度大きい方が好ましい。
IN<TM (v)
なお、メニスカス17相当部と鋳型上端部との間の開口部形状は、例えば、メニスカス17相当部の接線をそのまま直線状に延長して、メニスカス17相当部と平行な平面と交わった部分の形状にするなど、連続的に変化させても良い。
本発明は、表層改質鋳片の製造に際し、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造を適用するので、下記(vi)式を満たすものである。
T≦100mm (vi)
本発明では複層鋳片の製造において、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造を適用するに際し、表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造し、その表層厚みの鋳片全厚に対する比率を鋳型よりも下方の連続鋳造機内において比較的任意に調整することでもう一つの課題解決をはかる。具体的には、まず図2に模式的に示したように鋳型下端での鋳型短辺厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造において、鋳型幅中央を対称に所定距離離して配置した長さの異なる2本の浸漬ノズルと鋳型とのクリアランスを十分確保する内面形状とした鋳型(すなわち、上記した鋳型)を用いて、直流磁場帯をはさんで上下の溶鋼プールで消費される溶鋼量をそれぞれの浸漬ノズルから供給することで表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造する。
さらに、図5に模式的に示すように、鋳型直下の垂直部において中心部が未凝固の状態の鋳片を厚み方向に圧下することで、中心部が固まってないため内層の未凝固部分の厚みを減厚する。そのため、未凝固で圧下することで表層厚み/鋳片厚みの比を高めることができる。本発明の薄スラブ鋳造においては鋳造速度が高速であるため、鋳型内で形成される表層厚みは5mm程度と薄い。また、未凝固圧下を行うことで比較的少ない圧下量で表層厚み比率を制御することができる。
以上、述べたように本発明においては、表層厚みが薄い条件が必要となる場合には圧下を行わない条件で鋳造し、一方、表層厚みが厚い条件が必要となる場合には未凝固で圧下を行い表層厚/鋳片厚の比率を高めた鋳片を製造することができる鋳型装置を提供する。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)鋼の表層改質鋳片を連続鋳造するための鋳型装置であって、前記鋳型装置は鋳型および直流磁場発生装置を有しており、前記直流磁場発生装置の下端は前記鋳型の上端から下記(i)式を満たす距離Lの位置にあって、鋳型上端から100mm位置における鋳型開口部は、幅中央部に、厚みがTM、幅がWTの厚み拡大部を有し、前記厚み拡大部の厚みTMは短辺部の厚みよりも厚く、鋳型上端から距離Lの位置における鋳型開口部は、幅中央部に、厚みがTINの厚み拡大部を有し、前記厚み拡大部の厚みTINは短辺部の厚みよりも厚く、下端の開口部は、幅W、厚みTの矩形であり、前記TM、TIN、T、WT、Wそれぞれの関係は下記(ii)〜(vi)式を満足することを特徴とする連続鋳造用鋳型装置。
400mm ≦ L≦ 800mm・・・・・(i)
20mm≦(TIN−T) ・・・・・(ii)
1/3 ≦WT/W ≦ 2/3 (iii)
(TM−T)/W≦0.08 (iv)
IN<TM (v)
T≦100mm (vi)
(2)直流磁場発生装置によって、鋳型全幅にわたって鋳型厚み方向に直流磁場を印加し、当該直流磁場発生装置によって形成される直流磁場帯をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール、下部を下側溶鋼プールとし、表層溶鋼用浸漬ノズルの吐出孔を前記上側溶鋼プール、内層溶鋼用浸漬ノズルの吐出孔を前記下側溶鋼プール内に配置し、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量を各浸漬ノズルから供給する表層と内層の成分組成が異なる鋳片の鋳造において、上記(1)に記載した連続鋳造用鋳型装置を用いて鋳造を行うことを特徴とする表層改質鋳片の製造方法。
(3)鋳型内メニスカス近傍において、少なくとも前記した鋳型幅WTの領域を旋回攪拌することを特徴とする上記(2)に記載の表層改質鋳片の製造方法。
(4)鋳型よりも下方において連続鋳造機内に設置された、鋳片を厚み方向に圧下する装置を用いて未凝固鋳片を圧下することを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の表層改質鋳片の製造方法。
本発明では、表層改質鋳片の製造において、直流磁場発生装置によって、鋳型全幅にわたって鋳型厚み方向に直流磁場を印加し、当該直流磁場発生装置によって形成される直流磁場帯をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール、下部を下側溶鋼プールとし、表層溶鋼用浸漬ノズルを上側溶鋼プール、内層溶鋼用浸漬ノズルを下側溶鋼プール内に配置し、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量を各浸漬ノズルから供給する表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造する。鋳片の鋳造にあたり、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造を適用し、鋳型幅中央を対称に所定距離離した表層溶鋼用浸漬ノズルから内層溶鋼用浸漬ノズルまでを含んだ領域の鋳型開口部の厚みが内層溶鋼用浸漬ノズルの下端位置における鋳型開口部の厚みよりも大で、かつ、鋳型下端部においては短辺部厚みと同じ矩形となる鋳型を用いて鋳造を行うことで、薄スラブ鋳造において表層と内層の成分組成が異なる鋳片を安定して鋳造することができる鋳型装置を提供する。さらに、前記鋳型装置を用いて鋳造した鋳片を、連続鋳造機内において未凝固鋳片を厚み方向に圧下することで、表層厚み/鋳片厚みの比を調整することができるとともに、10%以上の表層厚み比率を実現することができる。
その結果、前述したように鋳型上部プールのC濃度を亜包晶域からさけることで、内部は亜包晶であるものの鋳型内不均一凝固を発生させることなく鋳造が可能となる。あるいは、上部プールのNi濃度をNi/Cuが0.5以上、望ましくは1以上とすることで、Cu起因の表面割れを鋳造時、加熱炉において発生させることなく製造できる。このように、表層厚が薄いものの表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造することで表面割れ発生を回避する方法を提供することができる。さらに、同じく鋳型上部プールのC濃度を0.5%、鋳型下部プールのC濃度0.1%としたうえで、鋳型よりも下方において、未凝固部分を40mm程度圧下することで、表層厚み比率を10%強まで高めた表層と内層の成分組成が異なる鋳片を製造することができる。このように同じ連続鋳造機において、低コストでかつ生産性を悪化することなく、表層と内層の成分組成が異なり、かつ表層厚比率が異なる鋳片を自由に造り込むことが可能となる。
表層改質鋳片の製造装置の一例を示す部分断面図である。 本発明の鋳型装置に係る鋳型の開口部形状と直流磁場発生装置との位置関係を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面断面図である。 本発明の鋳型の平面断面図であり、(A)(B)(C)はそれぞれ図4のA−A、B−B、C−C矢視断面図である。 本発明の鋳型の側面断面図である。 鋳型より下方で未凝固圧下を行う状況を示す断面図である。 鋳型と直流磁場発生装置、電磁攪拌装置との位置関係を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面断面図である。 未凝固圧下量と表層厚み比率、表層分離度XOとの関係を示す図である。 鋳型と直流磁場発生装置、電磁攪拌装置との位置関係を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面断面図である。
本発明は、表層改質鋳片を製造するに際し、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下で連続鋳造を行う薄スラブ鋳造において、図1に示したように、図2に示した鋳型装置を用いて、長さの異なる二本の浸漬ノズルを鋳型内にある溶融金属のプールに挿入し、それぞれの吐出口を深さが異なる位置に設け、さらに異種の溶融金属間に直流磁場を利用して両金属の混合を防止しながら複層鋳片を製造する方法を採用する。
図2において、鋳型上端から100mm下(メニスカス17相当部)の開口部4と開口部表面30を図示している。図1及び図2に模式的に示すように、鋳型の幅方向全幅にわたってほぼ一様な磁束密度の直流磁場を鋳型厚み方向に印加することのできる直流磁場発生装置8を設けることで、制動域を形成し長さの異なる二本の浸漬ノズルの吐出孔をその制動域をはさんだ上下に配置して、各溶鋼プールで凝固によって消費される溶鋼量を各浸漬ノズルを用いて供給することで表層と内層の成分組成が異なる複層鋳片を鋳造する。直流磁場発生装置8によって形成される直流磁場帯14をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール15、下部を下側溶鋼プール16とする。そして、表層溶鋼用浸漬ノズル6と内層溶鋼用浸漬ノズル5を鋳型内に挿入し、表層溶鋼用浸漬ノズル6の吐出孔18を上側溶鋼プール15内に配置し、内層溶鋼用浸漬ノズル5の吐出孔18を下側溶鋼プール16内に配置し、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量をそれぞれの浸漬ノズルで供給することにより、表層と内層の成分組成が異なる鋳片を製造することができる。上側溶鋼プール15には表層溶鋼が、下側溶鋼プール16には内層溶鋼が収容され、表層溶鋼と内層溶鋼との境界27が直流磁場帯の範囲内に形成される。
薄スラブ鋳造においては鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下と薄い。しかも制動域の下方にノズル吐出孔を配置する必要がある。本発明では、漏斗状鋳型を採用し、2つの浸漬ノズル、特に内層溶鋼用浸漬ノズル5に近接する位置については、鋳型の開口厚みを大きくし、これによってノズルと凝固シェルとのクリアランスを確保する。鋳型下端部の開口部形状は、厚みT、幅Wの矩形とする(図3(C)、図4)。鋳型の開口部形状のうち、短辺部の形状については、鋳型の上端から下端にかけてほぼ同一の値を有する。鋳型下端部の短辺の厚みがTであることから、鋳型上端に至る各部位において、開口部の短辺部(端部)の厚みはほぼTの値となる。
前述のように、本発明に係る鋳型装置は鋳型および直流磁場発生装置を有していて、その直流磁場発生装置の下端は鋳型の上端から距離Lの位置にある。鋳型上端から距離Lの位置における鋳型開口部の形状は、幅中央部の厚みTINが短辺部の厚みよりも厚くなる形状として定めている。本発明に係る鋳型の開口部厚みが端部より所定値以上厚い部分の長さLは、少なくとも鋳型上端から400mm以上は必要である。この条件は、メニスカスからコア上端までの距離が200mm、コア高さが100mmの条件である。一方、Lの上限値としてはメニスカスからコア上端までの距離を400mm、コア高さを300mm程度とした条件であり、最大値は800mmとなる。そのため、距離Lに関する条件式は(i)式で表現される。
400mm ≦ L≦800mm・・・・・(i)
さらに、鋳型上端からLmm下(直流磁場発生装置の下端相当位置)における鋳型開口部において、幅中央部に厚みがTINの厚み拡大部を有し、短辺部の厚みよりも厚くする。厚み拡大部の厚みをTINとしたとき、鋳型下端部の開口部厚みTとの関係について下記(ii)式を満たすように定めれば、内層溶鋼用浸漬ノズル5の下端位置において浸漬ノズルと凝固シェルの間のクリアランスを問題なく確保できることがわかった(図3(B)、図4)。
(TIN−T)≧20mm (ii)
その上、鋳型上端から100mm下(メニスカス17相当部)の開口部形状において、厚みがTMである厚み拡大部の幅WTは、鋳型幅中央を対称に鋳型幅Wの1/3〜2/3である。
1/3 ≦WT/W ≦ 2/3 (iii)
そこで、上記した(i)式(ii)式および(iii)式を満たし、鋳型上端部および鋳型上端から距離Lの位置(直流磁場発生装置の下端位置相当部)の両開口部の形状を、鋳型上端から100mm位置(メニスカス17相当部)の形状と同一にして(TM=TIN)、直流磁場発生装置の下端位置相当部から鋳型下端部までの開口部形状を連続的に減少させ、鋳型下端部の開口部形状を厚みT、幅Wの矩形とした鋳型(図3、図4参照)を用いて鋳造を行ったところ、後述するように、安定して鋳造を行うことができた。但し、メニスカス部において内層溶鋼用浸漬ノズル周りに軽微ではあるものの地金張りが生じることがあったので、TMはTINよりも大きくする必要があり、さらに20mm程度大きい方が好ましい。これは凝固収縮により鋳型と鋳片との間にエアギャップを生じさせないためにも好ましい。
IN<TM (v)
なお、メニスカス17相当部と鋳型上端部との間の開口部形状は、例えば、メニスカス17相当部の接線をそのまま直線状に延長して、メニスカス17相当部と平行な平面と交わった部分の形状にするなど、連続的に変化させても良い。
加えて、表層厚み比率(表層厚/鋳片厚×100)を比較的任意に調整できるとともに、10%以上の表層厚み比率をも実現できるかが2点目のポイントとなる。
上記2つのポイントを明らかにするため、試験連続鋳造機を用いて鋳造試験を行った。試験連続鋳造機では、幅W:800mm×厚T:100mmの鋳片を5m/分の鋳造速度で鋳造を行うことができ、メニスカスから0.3m下方の位置を高さ方向中心として鋳型長辺銅板背面に鋳型全幅にわたって直流磁場を印加するため、直流磁場発生装置8として磁極(コア高さ200mm)を設置し、0.5Tの磁場を厚み方向に印加した。加えて、メニスカスから4m下方の位置に図5に示すように、圧下装置(圧下セグメント10)を設けた。圧下セグメント10において、片側のセグメントは垂直であるが、他方のセグメントが絞り込み、圧下が可能な構造となっており、2つのセグメントで鋳片の厚み調整が可能で、最大50%の圧下が可能である。
鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズルは、幅中心をはさんでそれぞれ1/4幅位置に配置した。すなわち、ノズル中心間距離は400mmである。深さ方向には直流磁場発生装置8によって形成される直流磁場帯14の上方と下方にそれぞれ設置した。具体的には、メニスカスの位置を鋳型上端から100mmとし、表層溶鋼用浸漬ノズル6の吐出孔位置はメニスカス17から150mmとし、内層溶鋼用浸漬ノズル5の吐出孔位置はメニスカス17から400mmとした。このとき、鋳型の開口部厚みを拡張している鋳型上端からの距離Lの位置(直流磁場発生装置の下端位置相当部)を500mm(但し、鋳型全長1.2m)とし、厚み拡大部の幅(WT)を500mmとした鋳型を用いた。
表層溶鋼用浸漬ノズル6の内部形状は内径25mmφの円形でメニスカスから0.15mの位置に左右に吐出孔を設けた。吐出孔径は25×20mmとした。一方、内層溶鋼用浸漬ノズル5の内部形状は100×25mmの矩形で同じ断面積で斜め下向に表層溶鋼用浸漬ノズル方向下向きに吐出した。浸漬ノズルの厚みについては強度上、最低限15mm必要であるため、浸漬ノズルの外部形状は130×55mmとした。鋳型内のK値はおよそ20mm/min0.5であることを確認しているため、鋳造速度5m/分で鋳造した際の内層溶鋼用浸漬ノズル設置位置までで形成される凝固シェル厚は6mm、鋳造開始時の鋳造速度2m/分で鋳造した際の凝固シェル厚は9mmとなる。そのため、鋳造速度2m/分の条件で凝固シェルとノズルとのクリアランスを20mm確保するには、内層溶鋼用浸漬ノズル設置位置で必要な開口部の厚みは113mmとなる。一方、表層溶鋼用浸漬ノズル吐出孔位置、メニスカスから0.15m下方位置までに形成される凝固シェルの厚みは鋳造速度5m/分で約4mm、鋳造速度2m/分で約6mmとなる。そのため、鋳造速度2m/分で凝固シェルとノズルとのクリアランスを20mm確保するため、表層溶鋼用浸漬ノズル吐出孔の設置位置で必要な開口部の厚みは107mmとなる。
そこで図2〜図4に示すように、本発明では、鋳型下端の厚みは短辺部の厚みTと同じとし、表層溶鋼用浸漬ノズルならびに内層溶鋼用浸漬ノズルの設置位置を含んで幅中央±250mmの範囲について開口部に厚み拡大部を設け、厚み拡大部の厚みを、鋳型上端から距離L下方(直流磁場発生装置のコア下端相当位置)では短辺部の厚みよりも厚くしその厚みをTIN,鋳型上端から100mmでの厚み拡大部の厚みTMはTINと比較し、同等またはさらに拡大し、TMIN間、TINと鋳型下端間は連続的に厚みを変化した。同じ高さ位置では短辺部と拡大した開口部との間には厚み変更領域をそれぞれ100mm設け、滑らかに短辺部と接続した鋳型を製作した。なお、鋳型全長は1.2m、鋳片の幅Wは800mm、鋳片短辺部の厚みTは100mmとした。製作した鋳型の寸法を表1に示した。
さらに、図6に模式的に示すように鋳型長辺背面に電磁攪拌装置9を設置した。電磁攪拌装置9の設置位置はメニスカスを上端とし、コア高さは表層溶鋼用浸漬ノズル下端までを含む範囲とした。電磁攪拌を付与することで20〜40cm/秒の流速が付与できることを確認している。
本発明において、鋳型の上方に設けるタンディッシュについては特段定めない。2つの浸漬ノズルそれぞれから、成分が異なる表層溶鋼と内層溶鋼がそれぞれのプールで凝固によって消費される溶鋼量が供給される。本実験では表層は0.2%C鋼を内層は0.1%C鋼をそれぞれ供給する。ここで、前述したように鋳型内のK値はおよそ20mm/min0.5であることを確認しており、鋳造速度5m/分で鋳造した際の直流磁場発生装置8の中心までで形成される表層厚は約5mmである。なお、鋳造においては、成分が質量比でCaO/SiO2=0.95、1300℃での粘度が0.4poise、溶融温度が1000℃のパウダーを用いて鋳造を行った。本パウダーを用いて亜包晶鋼鋳造を行うと、縦割れ発生が避けられないことを確認済みである。
鋳片内C濃度分布を調査するため、表層については表面から3mm位置(表層厚みの中心)、内層については表面から20mm位置(鋳片1/4厚)について、両短辺中央、1/4幅位置の表裏面、1/2幅位置の表裏面、のそれぞれ8箇所、表層、内層あわせて合計16箇所から分析試料を採取し濃度を調査した。また、表層厚については、分析試料を採取した部位(合計8箇所)について、表面から20mmまでの領域を対象に、分析試料を採取したほぼ同じ位置でサンプルを切り出し、EPMAにて厚み方向の濃度分布を調査した。添加した元素の濃度が高くなっている厚みDを求め、鋳片厚みTとの比を求めた。得られた分析結果については以下の指標で分離度を評価した。表層厚み内の鋳片濃度CO、鋳片内層濃度CI、内層溶鋼用浸漬ノズルに供給される溶鋼濃度CLと表層溶鋼用浸漬ノズルに供給される溶鋼濃度CTから決まる表層分離度XOを以下の式(A)を用いて求めた。加えて、圧下装置(圧下セグメント10)の圧下量を0〜50mmまで変化して実験を行い、分離度、表層厚みと鋳片厚みとの関係を調査した。
O=(CO −CI)/(CT −CL ) −−−− (A)
Figure 2018069324
まず、表1に示した鋳型を用いて鋳造を行った。
なお、表1の「比較」は、鋳型の開口部形状が厚み拡大部を有さず、鋳造方向全長にわたって幅W、厚みTの矩形形状としている。メニスカス位置でも開口部が厚み拡大部を有しない。また、「比較」は表層、内層ともに0.1%C鋼を供給した。その結果、鋳造中内層溶鋼用浸漬ノズルの亀裂発生が見られ、鋳造を中断せざるを得なかった。また、内層溶鋼用浸漬ノズル周囲に地金張りが見られ、また鋳造した鋳片をみると表層厚みの不均一が見られた。そのため、本発明の目的を満たすものではない。
一方、TMとTINが120mmの鋳型を用いた条件(鋳型1)では、鋳造はできたものの内層溶鋼用浸漬ノズル周りに軽微ではあるものの地金張りが生じた。TMが140mm(鋳型2)、160mm(鋳型3)、180mm(鋳型4)の鋳型を用いた条件では見られなかった。これは表層プール中には表層溶鋼用浸漬ノズルから溶鋼が供給されるのみであるため、内層溶鋼用浸漬ノズルと長辺間や内層溶鋼用浸漬ノズルと短辺間は流れがよどみやすい。そのため、内層溶鋼用浸漬ノズルと長辺間のクリアランスを確保するだけでなく、湯面全体での溶鋼の置換わりを促す必要がある。しかしながら、TMが180mmの鋳型(鋳型4)を用いた条件では鋳型抵抗が増大した。鋳型開口部の厚みの絞り込みに鋳片が追随できていないことによると思われる。上記結果をもとに、TM,TINと鋳造幅Wとの関係を整理したところ、以下の関係式を満足する必要があることがわかった。
ここで、鋳型上端から100mm位置の開口部形状において、厚み拡大部の厚みTMをどこまで拡大できるかは、メニスカス部での長辺幅(ほぼWに等しい)が凝固収縮と鋳型開口部の減肉に凝固シェル変形が追随できるか否かによって決まる。表1の結果が意味するところは、凝固収縮量よりも大きいものの本発明の範囲であれば、凝固シェルの変形に伴う過度な応力を生じることなく鋳造ができたことを意味しており、下記(iv)式を満足すれば良いことがわかった。
400mm ≦ L≦ 800mm・・・・・(i)
20mm≦(TIN−T) (ii)
1/3 ≦WT/W ≦ 2/3 (iii)
(TM−T)/W≦0.08 (iv)
IN<TM (v)
T≦100mm (vi)
表1には併せて、(A)式に示す指標を用いて表層分離度XOを評価した結果も示したが、磁束密度0.5Tの磁場を印加することで極めて分離度の高い鋳片が得られていることに加えて、0.1%C鋼の鋳造では縦割れが多数観察されたが(比較)、鋳型1,2,3,4いずれの条件でも縦割れは観察されなかった。この結果は、鋳造においては、成分が質量比でCaO/SiO2=0.95、1300℃での粘度が0.4poise、溶融温度が1000℃のパウダーを用いて鋳造を行った。本パウダーを用いて亜包晶鋼鋳造を行うと、縦割れ発生が避けられないことを確認しており、本発明の鋳型1,2,3,4いずれの条件でも縦割れが観察されなかったことは表層部のC濃度が0.2%となっており、不均一凝固が生じていない結果である。
さらに、表1の鋳型3を用いた条件に加え、図6に示すように電磁攪拌装置を長辺全幅に設置し、旋回撹拌をメニスカス全体に付与した条件(撹拌1、撹拌2)、電磁撹拌装置を開口部厚みの拡大した部分のみに設置した条件(撹拌3、撹拌4)について鋳造を行い、前述のとおり、合計8箇所について表層厚みを測定し、表層厚みの標準偏差を「表層厚偏差(mm)」として記録した。また、標準偏差/平均厚を、「表層厚不均一度(−)」として記録した。結果を表2に示す。電磁攪拌を印加しない条件では表層厚みの偏差ならびに表層厚の不均一が若干みられたが、電磁攪拌を印加することで表層厚みの偏差は小さく、また表層厚の不均一度も小さくなった。さらに、メニスカス全体で旋回撹拌を付与することで、短辺部と幅中央部の表層厚みの偏差、加えて表層厚の不均一度についても小さくすることができた。
Figure 2018069324
次に、鋳造速度5m/分の条件で、磁束密度は0.6Tの条件で一定のままで、圧下セグメント10での圧下量を振った条件で鋳造を行った。その結果、図7に示すように、表層分離度XOはそのままで表層厚/鋳片厚の比率を変化できることがわかった。また、表層厚比率0.1以上(10%以上)をも実現することができた。
以上から、鋳型下端での鋳片厚みが100mm以下の薄スラブ鋳造の条件において、鋳型幅中央を対称に所定距離離して配置した長さの異なる2本の浸漬ノズルと鋳型とのクリアランスを十分確保する内面形状とした鋳型を用いて、前述した長さの異なる2本の浸漬ノズルを鋳型全幅にわたって形成された直流磁場帯の上下に配置して鋳造を行う際に、印加する磁束密度とコア高さを調整することでストランドを上下に分割することで、表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造するとともに、上記(i),(ii),(iii),(iv),(v)式を満足する鋳型形状を採用することにより、鋳造中の内層溶鋼用浸漬ノズルの亀裂発生や折損等を招くことなく、かつメニスカス部での地金張りを防止し、さらに鋳片周方向全体にわたって均一な表層厚み分布を有する表層と内層の成分組成が異なる鋳片を鋳造することができる。さらに、鋳型直下の垂直部において中心部が未凝固の状態の鋳片を厚み方向に圧下することで、中心部が固まっていないため内層の未凝固部分の厚みが減厚される。その結果、未凝固で圧下することで表層厚み/鋳片厚みの比を高めることができ、表層厚み/鋳片厚みの比を任意に調整することができるとともに、10%以上の表層厚み比率を実現することができる。
本発明の原理を検証するため鋳造試験を行った。断面サイズが幅W:1600mm×厚T:100mmの鋳片を鋳造速度5.0m/分の条件で鋳造した。後述するように、表層溶鋼用浸漬ノズルと内層溶鋼用浸漬ノズルを含んだ領域の開口部の厚みを短辺厚みと比較して拡大した鋳型で、鋳型上端から100mm位置の開口部の厚み拡大部の厚みTM、鋳型上端から距離Lの位置(直流磁場発生装置コア下端相当部)での開口部の厚み拡大部の厚みTINが異なる鋳型を製作し鋳造に供した。鋳型下端部の開口部形状は、厚みT、幅Wの矩形とする。なお、メニスカス17から0.3mの位置を中心に鋳型長辺バックプレートの背面全幅にわたって直流磁場を印加するためのコア43(コア高さ=200mm)を設置し、鋳型厚み方向に直流磁場を印加できる直流磁場発生装置8が設置されており、0.5Tの磁場を印加することができる。加えて、図8に模式的に示すように鋳型長辺背面に電磁攪拌装置を設置した。電磁攪拌装置の設置位置はメニスカスを上端とし、コア高さは表層溶鋼用浸漬ノズル下端までを含む範囲とした。電磁攪拌を付与することで20〜40cm/秒の流速が付与できることを確認している。さらに、メニスカス17から4m下方の位置に図5に示すように2基の圧下セグメント10を配置し、圧下セグメント10における片側のF側圧下ロール11は垂直であるが、他方のL側圧下ロール12が絞り込み、圧下が可能な構造となっており、2つの圧下セグメント10で鋳片の厚み調整が可能で、最大50%の圧下が可能である。
鋳型内に溶鋼を供給する浸漬ノズルは、前述したように幅中心をはさんでそれぞれ1/4幅位置で、深さ方向には直流磁場発生装置8によって形成される直流磁場帯14の上方と下方にそれぞれ設置した。具体的には、表層溶鋼用浸漬ノズル6の吐出孔18位置はメニスカス17から0.15mとし、内層溶鋼用浸漬ノズル5の吐出孔18位置はメニスカス17から0.4mとした。表層溶鋼用浸漬ノズルの内部形状は内径25mmφの円形でメニスカスから0.15mの位置に左右に吐出孔を設けた。吐出孔径は25×20mmである。一方、内層溶鋼用浸漬ノズルの内部形状は150×25mmの矩形で同じ断面積で斜め下向に2方向に吐出した。浸漬ノズルの厚みについては強度上、最低限15mm必要なため、浸漬ノズルの外部形状は180×55mmとなる。鋳型内のK値はおよそ20mm/min0.5であることを確認しているため鋳造速度5m/分で鋳造した際の内層溶鋼用浸漬ノズル下端までで形成される凝固シェル厚は約6mm、鋳造開始時の鋳造速度2m/分で鋳造した際の凝固シェル厚は約9mmとなる。そのため、鋳造速度2m/分の条件で凝固シェルとノズルとのクリアランスを20mm確保するため、内層溶鋼用浸漬ノズル設置位置で必要な開口部の厚みは113mmとした。一方、表層溶鋼用浸漬ノズル吐出孔位置、メニスカスから0.15m下方位置までに形成される凝固シェルの厚みは鋳造速度5m/分で約4mm、鋳造速度2m/分で約6mmとなる。そのため、鋳造速度2m/分で凝固シェルとノズルとのクリアランスを20mm確保するため、表層溶鋼用浸漬ノズル吐出孔の設置位置で必要な開口部の厚みは107mmとなる。
以上を踏まえ、表3に示した鋳型を用いて鋳造を行った。距離Lはいずれも500mm、幅WTはいずれも1000mmとした。なお、鋳型全長の長さは1.2mである。直流磁場帯14の磁束密度は0.5Tとした。本実施例では、0.3%Cu鋼の鋳造を行った。表層溶鋼、内層溶鋼ともに0.3%のCuを含有する一方、表層溶鋼には0.3%のNiを含有させた。内層溶鋼及び比較A3の表層溶鋼には、Niを添加していない。
なお、比較A3は、鋳型の開口部形状が厚み拡大部を有さず、鋳造方向全長にわたって幅W、厚みTの矩形形状としている。メニスカス位置でも開口部が厚み拡大部を有しない。
鋳造速度5m/分で鋳造した際の直流磁場発生装置8の中心までで形成される表層厚は前述したように約5mmであるため、表層については表面から3mm位置(表層厚みの中心)、内層については表面から20mm位置(鋳片1/4厚)について、両短辺中央、1/4幅位置の表裏面、1/2幅位置の表裏面、のそれぞれ8箇所、表層、内層あわせて合計16箇所から分析試料を採取しNi濃度を調査した。また、表層厚については、分析試料を採取した部位(合計8箇所)について、表面から20mmまでの領域を対象に、分析試料を採取したほぼ同じ位置でサンプルを切り出し、EPMAにて厚み方向のNi濃度分布を調査した。Niの濃度が高くなっている厚みDを求め、鋳片厚みTとの比を求めた。得られた分析結果については以下の指標で分離度を評価した。表層厚み内の鋳片濃度CO、鋳片内層濃度CI、内層溶鋼用浸漬ノズルに供給される溶鋼濃度CLと表層溶鋼用浸漬ノズルに供給される溶鋼濃度CTから決まる表層分離度XOを前記式(A)を用いて求めた。
その結果、比較A1は、TMとTINが120mmの鋳型を用いた条件であって(v)式を僅かに外れており、鋳造は完了して本発明の目的を達成した。一方で、内層溶鋼用浸漬ノズル周りに軽微ではあるものの地金張りが生じた。本発明A1〜A3は、TMが160mm、180mm、200mmの鋳型を用いた条件であって(i),(ii),(iii),(iv)、(v)式を満足し、鋳造中内層溶鋼用浸漬ノズルの亀裂発生等は見られなかったことに加え、地金張りも見られなかった。これは表層プール中には表層溶鋼用浸漬ノズルから溶鋼が供給されるのみであるため、内層溶鋼用浸漬ノズルと長辺間や内層溶鋼用浸漬ノズルと短辺間は流れがよどみやすい。本発明例は、内層溶鋼用浸漬ノズルと長辺間のクリアランスを確保し、湯面全体での溶鋼の置換わりを促している。しかしながら、比較A2はTMが250mmの鋳型を用いているため(iv)式を満たさず、鋳造中に鋳型抵抗が増大した。以上から、(i),(ii),(iii),(iv),(v)式の関係式を満足する本発明例の鋳型では鋳造性に悪影響を及ぼすことなく鋳造を行うことができた。表3には併せて、前記(A)式に示す指標を用いて分離度を評価した結果も示した。磁束密度0.5Tの磁場を印加することで極めて分離度の高い鋳片が得られていることが確認された。一方、表層、内層ともにNiを含有しない鋼の鋳造(比較A3)では、鋳型の開口部形状が厚み拡大部を有さず、鋳造方向全長にわたって幅W、厚みTの矩形形状としために鋳造中内層溶鋼用浸漬ノズルの亀裂発生が見られ、鋳造を中断せざるを得なかった。また、内層溶鋼用浸漬ノズル周囲に地金張りが見られ、また鋳造した鋳片をみると表層厚みの不均一が見られた。さらに、鋳造できた範囲の鋳片表面にはCu含有鋼特有の表面割れ(Cu割れ)が多数観察されたが、表層にNiを含有する本発明例の条件では表面割れは観察されなかった。
Figure 2018069324
さらに、表3の本発明A2を用いた条件に加え、図6、図8に示すように電磁撹拌装置9を長辺全体にわたって設置、メニスカス全体で旋回流を付与した条件で鋳造を行い、前述のとおり、合計8箇所について表層厚みを測定し、表層厚みの標準偏差を「表層厚偏差(mm)」として記録した。また、標準偏差/平均厚を、「表層厚不均一度(−)」として記録した。結果を表4に示すが、電磁攪拌を印加しない条件では表層厚みの偏差が若干みられたが、電磁攪拌を印加した条件では表層厚みの偏差は小さくなった。加えて、電磁撹拌の印加により表層厚の不均一度が小さくなった。
Figure 2018069324
次に、表3の本発明A3を用いた条件において、直流磁場帯14の磁束密度は0.5Tに固定し、圧下装置の圧下量を0〜50mmまで変化して実験を行い、表層厚みと鋳片厚みとの関係(表層厚み比率)を調査した。その結果、表5に示すように、圧下量を増やすことによって表層厚み比率が増大し、最大で表層厚み比率を0.1とすることができた。加えて、各条件で圧下量を振った条件で鋳造を行ったところ、未凝固で50mm圧下することで元々の表層厚/鋳片厚が0.05から0.1に高めることができた。また、分離度はいずれの条件においても0.93で一定であった。
Figure 2018069324
1 鋳型
2 短辺
4 開口部
5 内層溶鋼用浸漬ノズル
6 表層溶鋼用浸漬ノズル
8 直流磁場発生装置
9 電磁攪拌装置
10 圧下セグメント
11 F側圧下ロール
12 L側圧下ロール
13 鋳型直下サポートロール
14 直流磁場帯
15 上側溶鋼プール
16 下側溶鋼プール
17 メニスカス
18 吐出孔
23 凝固シェル
24 上側溶鋼プール凝固部分(表層部)
25 下側溶鋼プール凝固部分(内層部)
27 界面
29 鋳片
30 開口部表面
43 コア

Claims (4)

  1. 鋼の表層改質鋳片を連続鋳造するための鋳型装置であって、
    前記鋳型装置は鋳型および直流磁場発生装置を有しており、
    前記直流磁場発生装置の下端は前記鋳型の上端から下記(i)式を満たす距離Lの位置にあって、
    鋳型上端から100mm位置における鋳型開口部は、幅中央部に、厚みがTM、幅がWTの厚み拡大部を有し、前記厚み拡大部の厚みTMは短辺部の厚みよりも厚く、
    鋳型上端から距離Lの位置における鋳型開口部は、幅中央部に、厚みがTINの厚み拡大部を有し、前記厚み拡大部の厚みTINは短辺部の厚みよりも厚く、
    下端の鋳型開口部は、幅W、厚みTの矩形であり、
    前記TM、TIN、T、WT、Wそれぞれの関係は下記(ii)〜(vi)式を満足することを特徴とする連続鋳造用鋳型装置。
    400mm ≦ L≦ 800mm・・・・・(i)
    20mm≦(TIN−T) ・・・・・(ii)
    1/3 ≦WT/W ≦ 2/3 (iii)
    (TM−T)/W≦0.08 (iv)
    IN<TM (v)
    T≦100mm (vi)
  2. 直流磁場発生装置によって、鋳型全幅にわたって鋳型厚み方向に直流磁場を印加し、当該直流磁場発生装置によって形成される直流磁場帯をはさんだストランドの上部を上側溶鋼プール、下部を下側溶鋼プールとし、表層溶鋼用浸漬ノズルの吐出孔を前記上側溶鋼プール、内層溶鋼用浸漬ノズルの吐出孔を前記下側溶鋼プール内に配置し、それぞれの溶鋼プール中で凝固によって消費される溶鋼量を各浸漬ノズルから供給する表層と内層の成分組成が異なる鋳片の鋳造において、請求項1に記載した連続鋳造用鋳型装置を用いて鋳造を行うことを特徴とする表層改質鋳片の製造方法。
  3. 鋳型内メニスカス近傍において、少なくとも前記した鋳型幅WTの領域を旋回攪拌することを特徴とする請求項2に記載の表層改質鋳片の製造方法。
  4. 鋳型よりも下方において連続鋳造機内に設置された、鋳片を厚み方向に圧下する装置を用いて未凝固鋳片を圧下することを特徴とする上記請求項2又は請求項3に記載の表層改質鋳片の製造方法。
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