JP6330542B2 - 連鋳鋳片の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造により、表層の密度が内層の密度より高い複層鋳片を製造する方法及びその方法の実施に用いる連続鋳造装置に関するものである。
従来から、鋳片表層と内層の組成が異なる複層鋳片を連続鋳造によって製造することが知られている。例えば、特許文献1には、所定の合金元素を含有させた連続鋳造用パウダーを用いるとともに、連続鋳造鋳型内の上部に設置した電磁攪拌装置により、鋳型内溶鋼プール中の水平断面内で攪拌流を形成し、かつその下方に設置した電磁ブレーキ装置により、幅方向に均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳片の厚み方向に印加することで鋳型内溶鋼プール中に制動域を形成し、浸漬ノズルの吐出孔の位置が前記直流磁界域の下方になるように浸漬ノズルを配置して、タンディッシュからの溶鋼を前記直流磁界域の下方に供給しつつ鋳造することで、合金元素の鋳片表層部の濃度が内層に比べて高い複層状の鋳片を製造する連鋳鋳片の製造方法が提案されている。
また、特許文献2では鋳型内に浸漬ノズルの吐出孔の上下に電磁ブレーキ装置を配置した複層状の鋳片を製造する製造方法が提案されている。
特開平8−290236号公報 特開2001−232450号公報 特開2011−136354号公報
特許文献1に記載の方法によると、連続鋳造用パウダー内に添加した合金元素を鋳片表層部に富化でき、かつ、電磁攪拌装置による攪拌によって表層部における合金元素濃度の均一化を図ることができるが、本発明者らの検討では、表層にNiなどの密度の大きい金属の濃度を高めた場合のように、表層と内層の密度差が大きくなると、表層用と内層用の二つの溶鋼の混合を安定して抑制できないこと、さらには、表層成分領域と内層成分領域との境界付近にアルミナ系介在物を伴った粗大な気泡が残存しているのが認められた。
また、使用環境の厳格化に伴い、材料に求められる特性の向上がより求められるとともに、加工度の増大に伴い、加工時に疵の原因となるアルミナ系介在物を伴った粗大な気泡の削減がより必要となっている。
一方、特許文献1に記載の方法では電磁撹拌装置を用いて表層部における合金元素濃度の均一化を図っているが、本発明者らがさらに検討した結果、上段電磁ブレーキを鋳型メニスカス近傍に設置しても同様の効果が得られることが分かった。
また、特許文献2に記載の方法では浸漬ノズル吐出孔を下段電磁ブレーキ上方に設置しているが、上方に流れる溶鋼量は下段電磁ブレーキの強度で調整する必要があるため、表層と内層と境界部が不明瞭となる。
また、本発明者らは特願2013−158077号に記載の方法を発明し出願したが、メニスカス近傍に電磁撹拌装置を設け水平方向の旋回流を生じせしめるために図10に示すように浸漬ノズル1本あたりで使用できる鋳造時間が多少短くなる傾向があった。
そこで、本発明は、鋳片表層の密度が内層に比べて高い複層鋳片を、表層と内層と境界部が明瞭で、かつ境界部に、加工時(特に大きな加工度での加工時)に疵の原因となる粗大な気泡の発生がなく、浸漬ノズル1本当たりの鋳造時間を短くすることなく安定して製造できるようにすることを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究開発した結果、メニスカス近傍に均一な強い縦方向の旋回流を形成させることにより、鋳型のメニスカス近傍に供給される表層用溶鋼を均一化するとともに、下段電磁ブレーキ装置の直流磁界域内に浸漬ノズルの吐出孔を配置して、該吐出孔からノズル横方向に溶鋼を吐出することで、表層と内層との境界部が明瞭で、かつ気泡の浮上を促進できることを見出した。
本発明の要旨とすることは以下の通りである。
(1)鋳型の上部に鋳型内溶鋼の上段電磁ブレーキ装置を設置し、該上段電磁ブレーキ装置の下方に下段電磁ブレーキ装置を設置した連続鋳造装置を用いて複層鋳片を鋳造する方法において、前記上段電磁ブレーキ装置によって形成された縦方向の旋回流の領域に、タンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼の領域を形成し、前記下段電磁ブレーキ装置のコア下端から上端の間に前記浸漬ノズルの吐出孔を配置して、前記下段電磁ブレーキ装置の印加する電磁力を0.4テスラ以上とし、該吐出孔から浸漬ノズルの側方に下向き45°から上向き10°以下の吐出角度で溶鋼を吐出しつつ鋳造することにより、鋳片表層の密度が内層に比べて高い鋳片とすることを特徴とする複層鋳片の製造方法。
(2)前記上段電磁ブレーキ装置のコア範囲における縦方向の旋回流の凝固シェル前面流速を10〜50cm/秒とすることを特徴とする前記(1)に記載の複層鋳片の製造方法
(3)前記縦方向の旋回流に合金ワイヤを供給して、前記密度の高い溶鋼の領域を形成することを特徴とする前記(1)又は2)に記載の複層鋳片の製造方法。
)前記タンディッシュに、前記浸漬ノズルとは別に溶鋼の供給ノズルを設け、該供給ノズルの先端位置を前記上段電磁ブレーキ装置のコア範囲内とするとともに、供給ノズル内に表層の溶鋼密度を高めるための成分を有するワイヤを供給し、供給ノズル内でワイヤを溶融してその溶鋼を前記旋回流に吐出することにより前記密度の高い溶鋼を形成することを特徴とする前記(1)又は2)に記載の複層鋳片の製造方法
本発明によれば、表層に供給する溶鋼を上段電磁ブレーキで形成する縦方向の旋回流で攪拌することにより、均一な組成にするとともに、内層の溶鋼より密度が大であっても表層の溶鋼と内層の溶鋼が混合しがたくなるので、表層と内層の境界部の明瞭な複層鋳片を提供することができる。また、下段電磁ブレーキ装置の直流磁界域内に溶鋼を吐出することで、気泡の浮上を促進でき、表層と内層との境界部に粗大な気泡の発生がない複層鋳片を提供することができる。
上段電磁ブレーキ装置と下段電磁ブレーキ装置を設置した連続鋳造装置を用いた複層鋳片の製造の一例を示す図である。 図1と同様に複層鋳片の製造の他の例を示す図である。 凝固シェル前面流速と初期凝固シェル厚不均一度との関係を示す図である。 上段電磁ブレーキ装置と下段電磁ブレーキ装置の両方を作動させた場合と、下段電磁ブレーキ装置のみを作動させた場合、上段の電磁ブレーキ装置のみを作動させた場合の、表層からの距離に対するNi濃度の変化を示す図である。 溶鋼の吐出位置を変えて製造された複層鋳片の断面を示す図であり、(a)は本発明例を、(b)は従来例をそれぞれ示す。 本発明例と従来例の表面疵の発生状態を比較して示す図である。 上段電磁ブレーキ装置と下段電磁ブレーキ装置とを使用した場合の浸漬ノズル吐出孔位置の違いによる表層からの距離に対するNi濃度の変化を示す図である。 上段電磁ブレーキ装置と下段電磁ブレーキ装置とを使用した場合の溶鋼の吐出位置を変えて製造された複層鋳片の断面を示す図であり(a)は本発明例を、(b)は従来例をそれぞれ示す。 上段電磁ブレーキ装置と下段電磁ブレーキ装置とを使用した場合の溶鋼の吐出位置を変えて製造された複層鋳片を圧延して薄板にした後の表面疵の発生状況を比較して示す図である。 本発明例と従来例の浸漬ノズルの耐用を比較して示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[基本原理の説明]
まず本発明の基本原理を、図1を用いて説明する。
本発明では、連続鋳造鋳型1の上部に鋳型内溶鋼の上段電磁ブレーキ装置2を設置し、上段電磁ブレーキ装置2の下方に所定の間隔を置いて鋳型内溶鋼の下段電磁ブレーキ装置3を設置した連続鋳造装置を用いて、次のようにして複層鋳片を製造する。
(a)浸漬ノズル5の吐出孔30から供給された溶鋼流21を下段電磁ブレーキ装置3の電磁気力により、流速分布のばらつきが小さく一定の速度範囲内に制御した状態で鋳型上方に向かう溶鋼流24として供給し、その溶鋼流を上段電磁ブレーキ装置2を用いて制御することにより、鋳型内のメニスカス近傍の溶鋼に縦方向の均一な強い旋回流25を形成させる。ここで「縦方向の旋回流」とは、旋回流によって形成される面がほぼ垂直面であるような旋回流を意味する。
(b)溶鋼の縦方向の旋回流25が形成されている、上段電磁ブレーキ装置2のコイルのコア7に対応する領域に、例えば、溶鋼密度を高めるための成分(以下「高密度化成分」ともいう。)を有するワイヤ6を供給して内層用溶鋼10よりも密度の高い表層用溶鋼9を形成する。
(c)上段電磁ブレーキ装置2の下方に設置した下段電磁ブレーキ装置3により、幅方向に均一な磁束密度分布を有する直流磁界を鋳片の厚み方向に印加することにより鋳型内溶鋼プール中に制動域を形成する。
(d)タンディッシュ4の溶鋼11を浸漬ノズル5を通して鋳型1内に供給する際、浸漬ノズル5の吐出孔を下段電磁ブレーキ装置3の直流磁界域内に配置して、該吐出孔から横方向に下向き45°から上向き10°の角度で溶鋼を吐出して内層用溶鋼10を形成する。
以上によって、先に凝固する鋳型内上部の表層用溶鋼9によって鋳片19の表層13が形成され、それに続いて凝固する下部の内層用溶鋼10によって鋳片19の内層14が形成される(図8参照)。
本発明では、上段電磁ブレーキ装置2によりメニスカス近傍に均一な強い縦方向の旋回流の流速を制御することにより、鋳型のメニスカス近傍に供給される表層用溶鋼を均一化するとともに、凝固シェル前面に溶鋼速度10〜50cm/秒の旋回流を形成することにより、鋳型下部に供給される内層用溶鋼がメニスカス近傍に浮上してくることを抑制し、表層用溶鋼と内層用溶鋼の混合を防止して、表層と内層の境界が明瞭な複層鋳片を製造することができる。
また、浸漬ノズルからの溶鋼を下段電磁ブレーキ装置3の直流磁界域内に吐出することにより、浸漬ノズルから吹き込まれるガスの浮上を促進して、鋳片の表層と内層と境界部に、表面欠陥の原因となる粗大な気泡の発生がない複層鋳片を製造することができる。
次に、以上のような本発明について、その態様をさらに詳細に説明する。
[表層用溶鋼の形成]
メニスカス近傍の溶鋼に、鋳型の上部に設置した上段電磁ブレーキ装置2によって鋳型内溶鋼メニスカスに直角方向の縦方向の旋回流25を形成し、その旋回流の領域(表層用溶鋼9の領域)に高密度化成分を供給し、タンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼の領域を形成する。
(溶鋼密度を高める成分の添加)
メニスカス近傍の溶鋼密度を高める方法として、ワイヤにより必要な高密度化成分を溶鋼に添加する方法を用いる。それを実施する方法には次の2つの方法がある。
第1の方法は、図1に示すように、縦方向の旋回流に鋳型1の外からワイヤ6を挿入する方法である。ワイヤには、内層を形成する溶鋼よりも密度が高くなるように、密度の高い元素よりなるワイヤや密度の高い元素を多く含む合金よりなるワイヤを用いる。
ワイヤは、ワイヤ供給装置31によって、表層用溶鋼中の高密度化成分濃度が目的とする溶鋼濃度になるような供給速度でメニスカスから溶鋼中に供給される。溶鋼に挿入されたワイヤは溶融し、高密度化成分は縦方向の旋回流25に乗って鋳型内の表層用溶鋼9領域全体に均一に拡散され、密度の高い表層用溶鋼を形成する。表層用溶鋼中の高密度化成分濃度は、ワイヤによって供給される高密度化成分供給量(単位時間当たり)と、溶鋼流25として表層用溶鋼領域に供給される溶鋼量(単位時間当たり)とのバランスによって定まる。なお、溶鋼流25として表層用溶鋼領域に供給される溶鋼量とみあう鋼の相当部分は、表層用溶鋼領域で凝固する凝固シェルとして下方に引き抜かれることとなる。
なお、供給したワイヤは、溶鋼と接してすぐに溶解するようにしてもよいが、ワイヤとパウダーとの反応や周辺雰囲気によるワイヤの酸化が懸念されるので、上段電磁ブレーキ装置2のコアの上端と下端の間との中間で溶融させるのが好ましい。そのようにするためには、例えば、ワイヤの太さと供給速度を調整する方法、ワイヤに耐熱性の被覆を施して溶融を遅らせる方法、ワイヤを耐熱性の案内管を通して送給する方法などがあり、これらの方法を適宜採用すればよい。添加位置は縦方向の旋回流の流れの大きな位置であれば、特に限定されるものではないが、上向きの流れが強い鋳型短辺近傍や、下向きの流れが生ずる浸漬ノズル近傍で添加することで短時間に溶解させることが可能となり効率的である。
第2の方法は、図2に示すように、タンディッシュ4に、浸漬ノズル5とは別に溶鋼の第2の供給ノズル12を設け、供給ノズル12の先端位置を、上段電磁ブレーキ装置2のコア7の範囲内(コアの上端と下端の間)とするとともに、該供給ノズル12内に第1の方法で用いたワイヤと同じワイヤ6をタンディシュ外からワイヤ供給装置31によって供給する。そして、前記の方法を用いて供給ノズル12内でワイヤが溶融するように調整して、供給ノズル12内で溶鋼の密度を高め、その溶鋼を縦方向の旋回流25に吐出することにより、その溶鋼を鋳型内の表層用溶鋼9領域全体に拡散させ、密度の高い表層用溶鋼を形成する。
ワイヤの組成は目的の表層成分に応じて決められるもので、特に限定されるものではないが、例えば、表層の耐食性を高めた鋼板を得るために、NiなどのFeよりも密度の高い元素を主成分とするワイヤや、そのNiを多く含有する合金ワイヤなどを用いることができる。その他、Co、Mo、Biなどの濃度を表層において高めた鋼板を得るために、それらの元素を単独で含有する、あるいはそれらの含有量を高めたワイヤが利用できる。
縦方向の旋回流25を安定して形成する。即ち、浸漬ノズルから供給される溶鋼流を下段電磁ブレーキ装置2の電磁力にて、減速しかつ整流化させた状態で鋳型上部に供給し、上段電磁ブレーキ装置2の電磁力により、メニスカス近傍の凝固シェル前面流速が一定速度範囲になるよう制御することで、溶質濃度が均一化しかつ表面品質に優れた厚みも均一な表層と、母溶鋼組成の内層とを両立する複層鋳片を製造する。
(鋳型内溶鋼表層部の上段電磁ブレーキ装置および下段電磁ブレーキ装置による溶鋼流動制御)
下段電磁ブレーキ装置内3に供給された溶鋼の溶鋼流21は下段電磁ブレーキ装置3により減速されつつ溶鋼流22となって鋳型短辺に衝突し、一部は下方に向かう溶鋼流23となり、他の一部は下段電磁ブレーキ装置3上方へ向い上段電磁ブレーキ装置2に達する溶鋼流24を形成する。
(下段電磁ブレーキ装置)
浸漬ノズルから供給される溶鋼は水平方向に設けられた吐出流れとして下段電磁ブレーキ装置3により直接ブレーキ力が作用する。
下段電磁ブレーキ装置3により、浸漬ノズルから吐出される溶鋼吐出流を必要に応じて減速し、短辺に衝突し上方、メニスカス方向に向かう溶鋼流24の流速を制御する。浸漬ノズル吐出孔30から吐出された溶鋼流21は一旦下段電磁ブレーキ装置3の磁場の範囲、コアの部分に流入し、主たる部分は下段電磁ブレーキ装置3の電磁ブレーキ力により溶鋼流速が減速された溶鋼流22となって鋳型短辺に衝突し、鋳造方向下方向に溶鋼流速が均一化した状態で溶鋼流23として供給される。一方鋳型短辺に衝突した残りの溶鋼は下段電磁ブレーキ装置3の電磁力に応じて均一な溶鋼流速を持って下段電磁ブレーキ装置3より上方の鋳型に溶鋼流24として供給され、メニスカス部を含む表層用溶鋼9領域への溶鋼の供給源となる。
上記のように鋳型短辺に衝突した均一化された溶鋼流24(25a)は鋳型上端のメニスカス位置で、鋳型短辺から鋳型中央の浸漬ノズルに向かう溶鋼流25bを形成し鋳型幅方向中央の浸漬ノズルの周辺で下方向に向かう(溶鋼流25c)。その結果鋳型内縦方向の均一な回転流れ(旋回流25)を生じせしめる。この回転流れの流速は、上段電磁ブレーキ装置2と下段電磁ブレーキ装置3の電磁力を一定にした状態であれば、浸漬ノズルから供給される溶鋼量が増大するほど、つまり溶鋼流速が増大するほど大きくなる。
このように、下段電磁ブレーキ装置3より上部に形成された縦方向の旋回流25が形成されることにより、下段電磁ブレーキ装置3より上部の鋳型内溶鋼は撹拌され、鋳型内溶鋼の混合が促進される。また、鋳型内溶鋼が均一混合されることにより、鋳型内溶鋼の温度が均一化される。その結果、鋳型による溶鋼の冷却も、鋳型内で均一化され、初期凝固シェルの形成速度のばらつきも減少し、初期凝固シェルの厚みも均一化する。該縦旋回流が形成される。なお、上段電磁ブレーキ2のコア範囲内で生じる下降流としての溶鋼流25cが、さらに上段電磁ブレーキ装置2下端から下方向に向かう溶鋼流れとはならない。鋳型下方には下段電磁ブレーキ装置3が設置されているために下段電磁ブレーキ装置3により電磁ブレーキ力が作用するためである。また、図1に示すように、下段電磁ブレーキ装置3の働きにより、浸漬ノズル5から吐出する溶鋼流21と平行に反対方向に向かうMHD対向流26が発生することが知られており(例えば特許文献3)、このMHD対向流26によっても、表層用溶鋼と内層用溶鋼との分離は促進される。
前記溶鋼流は鋳型の上部に設置した鋳片の厚み方向に向かう直流磁界を鋳片の幅方向に形成する上段電磁ブレーキ装置2により、流動を抑制され鋳型内溶鋼メニスカス近傍に、メニスカスに直角方向の均一な縦方向の旋回流25を形成させることにより、旋回流内の溶鋼組成のばらつきを低減して均一化するととともに、密度が大きな表層用溶鋼と密度が小さな内層用溶鋼の混合を抑制する。
その際旋回流25に、凝固シェル前面流速が10cm/秒以上50cm/秒以下となるような溶鋼流速を付与することにより、表層用と内層用の溶鋼の湯混ざりを防止するだけでなく、鋳片幅方向の初期凝固シェル厚のばらつきを小さくすることにより、凝固後の表層厚みのばらつきを低減させるようにする。より好ましい前面流速は20cm/秒以上である。
図3に、本発明者らが行った実験によって得られた凝固シェル前面流速と初期凝固シェル厚不均一度との関係を示す。実験ではコア厚が400mmの上段電磁ブレーキ装置を用いた。
凝固シェル前面の溶鋼流速は、デンドライト傾角の測定を行い、下記式(1)に示す岡野の式(例えば、「鉄と鋼、vol.93(2007)No.9、566頁」参照)を用いて算出した。デンドライト傾角の測定は、鋳造された鋳片から鋳造方向断面および鋳造方向直角断面より試片を切り出し、酸により腐食した後、倍率5倍で凝固組織を撮像し、鋳片表層の一次デンドライトアームの鋳片表面での法線に対する角度を測定することによって行った。また、メニスカスからの深さ方向のデータを得るために、この測定を鋳片表層から上段電磁ブレーキ装置2のコアの下端位置まで行った。
lnV=(θ+9.73×lnf+33.7)/(1.45×lnf+12.5) ・・・(1)
ここで、V:溶鋼流速(cm/秒)、θ:デンドライト傾角(度)、f:凝固速度(cm/秒)を示す。
また、初期凝固シェル厚不均一度は、上段電磁ブレーキ印加時の凝固シェル厚さの標準偏差を、上段電磁ブレーキを印加しない場合の凝固シェル厚さの標準偏差で除した値に100をかけた値として定義されるものである。
凝固シェル厚さの標準偏差の測定は、まず、初期凝固シェル厚を、例えば「鉄と鋼、vol.93(2007)No9,568頁」に記載されているように、鋳造中にSを添加して鋳片のサルファプリントを採取することにより測定し、その測定を、同文献の570頁に記載されているように、鋳片の全幅に対して5mm間隔で実施して、得られた値の標準偏差を求めることにより行った。
また、鋳造厚246mm、鋳造幅2000mmの鋳片を鋳造速度2000mm/分の鋳造速度で下向き45度で鋳片幅方向に2個の幅70mm高さ100mmの吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて鋳造を行い、上段の電磁ブレーキを0〜05T(テスラ)の範囲で制御することにより、凝固シェル前面流速を0〜60cm/秒で制御した。後述のように、縦方向の旋回流の位置によって流速が異なるので、メニスカスから20cm位置に相当する部分の流速を測定に用いた。
図3に示すように、凝固シェル前面流速10cm/秒以上を確保することにより、縦方向の旋回流が安定して形成され、初期凝固シェル厚のばらつきが小さくなり、厚みの均一な凝固シェルが形成される。また、内層用の溶鋼と表層用の溶鋼の混合が幅方向で均一に抑制されることにより、表層の厚みが均一な複層鋳片の製造が可能となる。
実験では、凝固シェル前面流速50cm/秒まで均一な厚みのシェルが得られることが確認されたが、50cm/秒を超えて流速を高めても効果が飽和するのに比べ、メニスカス近傍の凝固シェル前面流速が50cm/秒を超えると、連鋳パウダーの巻き込みが大きくなり品質欠陥が増大するため、この値を上限とするのが望ましい。効果の観点からは凝固シェル前面流速の範囲は40cm/秒以下で十分である。
(上段電磁ブレーキ装置)
浸漬ノズルから供給された溶鋼が下段電磁ブレーキ装置3による溶鋼流動を制御され、上方に反転してきた溶鋼流およびメニスカスを短辺方向から浸漬ノズル方向に向かい下方に向かう溶鋼流に必要に応じて電磁力を作用させ電磁ブレーキ力を働かせることにより
(1)下方から上方、メニスカスに向かう溶鋼流を減速かつ均一化させる
(2)鋳型メニスカス部を短辺方向から浸漬ノズル方向に向かう流れおよび鉛直方向下方に向かう溶鋼流速を必要に応じ減速させるので、表層用溶鋼と、内層用溶鋼との混合を防止する。
下段電磁ブレーキ装置3に関する説明で記したように、上段電磁ブレーキの制動力が一定の条件下で、下段電磁ブレーキ3にて形成された、鋳型縦方向の回転流れの流速は、鋳造速度に応じて浸漬ノズルから供給される溶鋼量と下段電磁ブレーキ装置3の電磁力の強度によって一意的に規定される。一定鋳造速度であっても鋳造幅が大きくなったり、一定鋳造幅でも鋳造速度が大きくなる場合には下段電磁ブレーキ装置3の電磁力が一定であれば縦方向の回転流れの流速は大きくなり撹拌力も大きくなる。鋳型上部に溶質元素を添加し、均一混合させる観点からは回転流速を大きくし、撹拌力を増大させることは有効である。また、凝固シェル前面流速を一定流速以上(10cm/秒以上)に保つことにより、初期凝固シェルに気泡や溶鋼中の非金属介在物が捕捉されることが防止され、鋳片表面清浄性を向上させることができる。一方、縦方向の回転流速が過大となると、下段電磁ブレーキ装置3から上方に向かう溶鋼の流速が過大となり、例えば50cm/秒超となるとメニスカス近傍の溶鋼流速が過大となり、鋳型内溶鋼上部に添加されている連続鋳造用パウダーを巻き込み成品での品質欠陥となる。従って、鋳片表面清浄性を確保する観点からは、縦方向の回転流れの溶鋼流速を10〜50cm/秒の一定範囲に制御することが必要である。上段電磁ブレーキ装置2を設置し、縦方向の回転流速に応じて、上段電磁ブレーキ装置2の電磁力を制御してやることで、鋳型上部の、特にメニスカス近傍の凝固シェル前面流速を10〜50cm/秒の一定速度範囲に制御することが有効である。
一方、メニスカス近傍の溶鋼流速が小さいと、鋳型上部への熱の供給が不足し、連鋳パウダーの溶解が不均一になることにより鋳型の抜熱が不均一になるために、初期凝固シェルの厚さの変動が大となり、厚さの均一性が悪くなるだけでなく、未溶解のパウダーが溶鋼に巻き込まれ品質欠陥が発生する原因ともなるので、縦方向の回転流速が小さい場合には、上段電磁ブレーキ装置2の電磁力を弱くするか、印加を止めればよい。つまり、上段電磁ブレーキ装置の電磁力の強度を制御することにより、下段電磁ブレーキ装置3の磁場強度を一定の条件にした場合でも、鋳型上部、特にメニスカス近傍の凝固界面流速を制御することが可能となる。この観点からすると、一般的には上段電磁ブレーキ装置2の電磁力は下段電磁ブレーキ装置3の電磁力に比べ小さくすることとなる。
鋳造厚246mm、鋳造幅2000mmの鋳片を鋳造速度2000mm/分の鋳造速度で下向き45度で鋳片幅方向に2個の幅70mm高さ100mmの吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて鋳造を行う場合、下段電磁ブレーキを有しない場合、吐出孔出口付近では平均流速120cm/秒、最大流速160cm/秒の高速な溶鋼流速となるが、下段電磁ブレーキで0.4T(テスラ)の電磁力を印加すると、浸漬ノズル吐出孔が下段電磁ブレーキの電磁コイルのコアの領域に位置する場合、吐出孔近傍でほぼ120cm/秒の均一な流れとなり、下段電磁ブレーキの電磁気力により制動力を受けつつ、拡がって鋳型短辺方向に向かう。浸漬ノズルから吐出された整流化された溶鋼は鋳型短辺に衝突し、鋳型下方に向かう溶鋼流23と鋳型上方に向かう溶鋼流24とに分かれる。この際、鋳型上方に向かう溶鋼流24は(浸漬ノズルに吹き込まれたArガスの鋳型上方に浮上する力を受けつつ)、短辺に衝突することにより乱れを生じ平均流速としては70cm/秒程度であるが最大90cm/秒の流速を持ち鋳型上方へ向かう。この鋳型上方へ向かう溶鋼流は上段電磁ブレーキを0.2〜0.3T印加することにより、再度整流化され溶鋼流25aとして平均流速30〜40cm/秒の凝固界面前面流速を保持しつつメニスカス部に到達し、メニスカス水平方向に鋳型短辺から溶鋼流25bとして浸漬ノズル方向に向かい(20〜30cm/秒)、浸漬ノズル近傍で鋳型下方向に向かう溶鋼流25c(上段電磁ブレーキコア下端位置で10cm/秒程度)となる。
[内層用溶鋼の形成条件]
鋳片の内層を形成するために、上段電磁ブレーキ装置2の下方に下段電磁ブレーキ装置3を設け、下段電磁ブレーキ装置3のコア8の範囲内に、タンディッシュ4からの溶鋼を吐出して、表層用溶鋼と内層用溶鋼がそれぞれ混合しないように凝固させる。以下それぞれの条件について説明する。
(浸漬ノズル吐出孔位置)
内層用溶鋼の鋳型内への供給を均一化し、かつ上向き流れの生成を抑制し、表層用溶鋼と内層用溶鋼との混合を抑制し、表層と内層との成分境界を明確にするためには、浸漬ノズル5の吐出孔30から注入される溶鋼流21が下段電磁ブレーキ装置3の磁界を通過することが必要である。浸漬ノズルの吐出孔上端と下端の中間点が、電磁場が最大となる下段電磁ブレーキの中心線上(コア上端と下端の中間点)と一致するように配置することが最も望ましいが、電磁場は、コアの上部および下部にも拡がっているので、浸漬ノズルの吐出孔位置を電磁ブレーキのコア下端から上端の間に位置するように配置すれば実用上問題はない。
具体的には、浸漬ノズル吐出孔30の上端が下段電磁ブレーキ装置3のコア8上端より下方に位置し、ノズル吐出孔30の下端がコア下端より上方に、より好ましくは5cm以上上方に位置するように配置する。
下段電磁ブレーキ装置のコア上端より上方にノズル吐出孔上端が位置するようにして鋳造した場合、水平より上向きの角度を持った浸漬ノズルの場合に上向きの流れを生じせしめ、表層用溶鋼と内層用溶鋼の混合を促進させることは当然であるが、下向きの吐出角度を持った浸漬ノズルを用いた場合であっても、コア上端位置の直流電磁場にて吐出流は抑制されるものの、磁場を逃れて上方に向かう溶鋼流が強くなり、表層用溶鋼と内層用溶鋼との混合が促進されてしまう。
また、浸漬ノズルの吐出孔下端が下段電磁ブレーキ装置3のコア下端より下方に位置した場合、浸漬ノズルの吐出流れが下段電磁ブレーキ装置3により減速されずに、下方向に流れ込む流れが生じる。
溶鋼には、通常、浸漬ノズルの詰まり防止のためにArガスが吹き込まれているが、そのArガスが溶鋼とともに下段電磁ブレーキ装置3より下方に侵入し、それが浮上する際に、下段電磁ブレーキ装置3コア下端近傍で上昇を抑制され、かつ、気泡が合体し粗大化するため、それが浮上できずに鋳片表皮下の一定位置に捕捉され、そこに介在物を伴う粗大な気泡が残存するようになり、それが冷間圧延後、表面疵などの品質欠陥の発生原因となる。
複層鋳片を熱間圧延した後に冷間圧延を実施して薄板材を製造する場合には、製品板厚が薄くなるほど、つまり加工度が大きくなるほど表層が加工により薄くなる。そうすると、表層と内層との間にある表層より内部の欠陥が表面に露出して表面疵になり易くなる。また、疵が発生した場合には内層の金属が露出して、表層の特性が発揮され難くなる。
これに対し、浸漬ノズルと下段電磁ブレーキ装置3との位置関係を本発明条件とすることにより、複層鋳片を薄板に加工した場合でも、表層の改質層と内層との境界への気泡の捕捉防止が可能となり、表層に疵が発生しないようにすることが可能となる。その結果、表層に付与した溶質の特性を問題無く発揮させることが可能となる。
(溶鋼吐出角度)
浸漬ノズル5として、2孔ノズルのような、側面に吐出孔30が形成されているノズルを用い、ノズル側方に溶鋼を吐出する。吐出孔30は、浸漬ノズルに対して、下向き45°から上向き10°までの範囲の吐出角度で溶鋼を吐出すようにする。吐出角度が下向き45°を超えると、下段電磁ブレーキ装置により減速されずに下方向に流れ込む流れが多くなり、浸漬ノズルの吐出孔下端が下段電磁ブレーキ装置のコア下端より下方に位置した場合と同様の問題が生じるようになる。また、吐出角度が上向き10°を超えると、下段電磁ブレーキ装置3コア範囲より上方に流れ込む流れが多くなり、表層用の溶鋼との混合が問題になる。
(下段電磁ブレーキ装置条件)
内層用の溶鋼の供給を下段電磁ブレーキ装置3コア領域の範囲内で実施することにより、内層用の溶鋼が鋳型上方に向かうことを制御する。下段電磁ブレーキ装置3コア範囲より上方で内層用溶鋼を供給した場合には、電磁ブレーキ領域に跳ね返された溶鋼が鋳型上方に向かっていく量が多くなり表層用溶鋼と内層用溶鋼との混合の抑制が困難となる。
下段電磁ブレーキ装置3の電磁力を0.4テスラ以上とすることにより表層用溶鋼と内層用溶鋼との分離をより促進することができる。
下段用電磁ブレーキ装置は、上段電磁ブレーキ装置の下方に所定の間隔を置いて設置される。所定の間隔とは 上段電磁ブレーキと下段電磁ブレーキとのコアに巻いたコイルの外側の距離を50mm以上とする距離である。上記距離が50mm以下となった場合、上段電磁ブレーキと下段電磁ブレーキとの磁場が干渉し、相互の電磁ブレーキの電源電圧が変動する等の不具合が発生してしまう。
[表層厚みの調整]
図8に示す鋳片19の表層13は、図1に示す縦方向の旋回流25の範囲(表層用溶鋼9の範囲)で凝固した部分として形成されるので、その厚みは、メニスカスから上段電磁ブレーキ装置2のコア下端位置までの間に形成される凝固シェル厚によって決められる。このため、鋳造速度を調整することにより、表層厚みを調整することができる。その際、目標とする表層厚みから、次のようにして必要な鋳造速度を求めることができる。
連続鋳造機内の凝固シェル厚D(mm)は、1次元の伝熱計算により、時間の1/2乗に比例する、下記の(2)式で示す形で示される。
D=k×t1/2 ・・・(2)
ここで、k:鋳造機に特有の凝固定数、t:時間(分)である。
表層厚みを求めるための時間tは、メニスカスから上段電磁ブレーキ装置のコア下端位置の距離をL(mm)、鋳造速度をVc(mm/分)とすると、L/Vcで表わされるので、目標とする表層厚みから、必要な鋳造速度を求めることができる。
以下、さらに、本発明の実施可能性および効果を実施例により具体的に説明する。これらの実施例はその説明のための一例であり、本発明を限定するものではない。
(実施例1)
鋳型の上部に上段電磁ブレーキ装置2(コア厚:400mm)を設置し、鋳型上端から700mmの位置にコアの上端が来るように下段電磁ブレーキ装置3(コア厚:200mm)を設置した連続鋳造装置を用い、上段電磁ブレーキ装置2のコアの範囲内の溶鋼にNiワイヤを挿入して、溶鋼のメニスカス近傍にタンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼を形成して、幅2000mm、厚さ246mmの複層鋳片を鋳造する実験を行った。2孔ノズルを有する浸漬ノズル5の吐出孔30の上端と下端の中間点が、下段電磁ブレーキ装置3の中心線上と一致するように配置し、下向き45度で鋳片幅方向に2個の幅70mm高さ100mmの吐出孔を有する浸漬ノズルを用いて鋳造を行った。
本発明例1(上段電磁ブレーキ装置+下段電磁ブレーキ装置)として、下段電磁ブレーキ装置の電磁力を0.4Tと一定条件にして、鋳造速度を2.5m/分で鋳造し、上段電磁ブレーキ装置2の電磁力を0.3Tとし、メニスカスから上段電磁ブレーキ装置2コア下端までの凝固シェル前面の平均流速を30cm/秒となるように制御をしつつ鋳造を行った。このとき、メニスカス水平方向に鋳型短辺から浸漬ノズル方向に向かう溶鋼流25bの流速は35cm/秒程度であり、浸漬ノズル近傍で鋳型下方向に向かう溶鋼流25cは上段電磁ブレーキコア下端位置で20cm/秒程度であった。いずれも、上段電磁ブレーキ装置のコア範囲における旋回流25の凝固シェル前面流速は10〜50cm/秒の範囲内であった。旋回流25の凝固シェル前面流速の測定方法は前述のとおりとした。
また、比較例1−1(下段電磁ブレーキ装置3単独使用)では、下段電磁ブレーキ装置3の電磁力を0.4T一定条件にして鋳造を行った。比較例1−2(上段電磁ブレーキ装置2単独使用)では、上段電磁ブレーキ装置2の電磁力を0.3T一定条件にして鋳造を行った。
電磁力の条件は、予め本条件の範囲内で鋳造試験を実施して、凝固シェル前面流速との関係を調査し決定した。
メニスカスから上段電磁ブレーキ装置2コア下端までの凝固シェル前面の平均流速が30cm/秒となるように上段電磁ブレーキ装置2を作動させ、同時に0.4Tで下段電磁ブレーキ装置3を作動させた本発明例1の鋳片、下段電磁ブレーキ装置3のみ0.4Tで作動させた比較例1−1の鋳片、及び、上段電磁ブレーキ装置2のみ0.4Tで作動させた比較例1−2の鋳片について、それぞれ断面のNi濃度を表層から鋳片厚み方向に測定し、母溶鋼濃度(内層濃度)との差を調べた。
結果を図4に示すが、本発明例の場合は、表層と内層の境界が明りょうなのに対し、比較例1−1では、表層及び内層でのNi濃度の変化が大きく、比較例1−2では、Niの拡散が十分でなく、Niが鋳片表面に滞留して、目的とする組成を有する表層が十分な厚みで形成されないだけでなく、下段電磁ブレーキ装置がないために、鋳型下方向までNiが到達していることが分かる。なお、図4、図7において、「LMF」とは電磁ブレーキ装置を意味する。
(実施例2)
浸漬ノズルの吐出孔の位置の効果を比較するために、浸漬ノズルの位置を変化させる実験を行った。
鋳型の上部に上段電磁ブレーキ装置2(コア厚:400mm)を設置し、鋳型上端から700mmの位置にコアの上端が来るように下段電磁ブレーキ装置3(コア厚:200mm)を設置した連続鋳造装置を用い、上段電磁ブレーキ装置2のコアの範囲内の溶鋼にNiワイヤを挿入して、溶鋼のメニスカス近傍にタンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼を形成して、幅2000mm、厚さ246mmの複層鋳片を鋳造する実験を行った。鋳造速度は2.5m/分で一定とした。
実験では、凝固シェル前面の平均流速が30cm/秒となるように上段電磁ブレーキ装置2を作動させ(0.3T)、同時に0.4Tで下段電磁ブレーキ装置を作動させた状態で、2孔ノズルを有する浸漬ノズル5の吐出孔30の上端と下端の中間点が、下段電磁ブレーキ装置3の中心線上と一致するように配置した場合(本発明例2)と、2孔ノズルの吐出孔の上端を下段電磁ブレーキ装置3のコア下端よりもさらに100mm下方に配置した場合(比較例2)の2通りに浸漬ノズルの位置を変化させた。他の条件は、本発明の条件を満たすものとした。浸漬ノズルの吐出角度はいずれも下向き45°とした。
製造された鋳片の断面を切り出し介在物の観察を行った結果を図5に示す。2孔ノズルの吐出孔30の上端を下段電磁ブレーキ装置3のコア下端よりも下方に配置した場合は、図5(b)に示すように、表層成分領域15と内層成分領域16との境界17付近に直径1〜5mmのアルミナ系介在物を伴った粗大な気泡18が残存しているのが観察された。これに対し、吐出孔を下段電磁ブレーキ装置3の中心に配置した場合は、図5(a)に示すように、直径1mm以上の粗大な気泡は観察されなかった。
次に、得られた複層鋳片を薄板に加工して、気泡の影響を調べた。複層鋳片を熱間圧延した後に冷間圧延を実施して薄板材を製造する場合には、製品板厚が薄くなる程、つまり加工度が大きくなるほど表層が加工により薄くなり、表層成分領域15と内層成分領域16との境界17付近に残存する欠陥が表面に露出して表面疵になり易くなる。
そこで、本発明例2の鋳片と比較例2の鋳片をそれぞれ圧延して0.8mm厚みの冷延板を製造し、冷延板の表面疵の発生状態を調べ、両者の品質を比較した。表面疵の発生状態を、表面疵1個を1mとして、コイル長さで除した長さ割合(%)を発生指数として評価して図6に示す。図6に示すように、本発明例2の場合には疵発生が低位であったのに対し、比較例2では表面にアルミナ系の線状の疵が多発し、冷延板の品質が劣位であった。
以上のように、本発明に基づけば、複層鋳片を薄板に加工した場合でも、表層に疵がほとんど発生しないことが確認された。
(実施例3)
浸漬ノズルの吐出孔の位置の効果をさらに比較するために、浸漬ノズルの位置を変化させる実験を行った。
鋳型の上部に上段電磁ブレーキ装置2(コア厚:400mm)を設置し、鋳型上端から700mmの位置にコアの上端が来るように下段電磁ブレーキ装置3(コア厚:200mm)を設置した連続鋳造装置を用い、上段電磁ブレーキ装置2のコアの範囲内の溶鋼にNiワイヤを挿入して、溶鋼のメニスカス近傍にタンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼を形成して、幅2000mm、厚さ246mmの複層鋳片を鋳造する実験を行った。鋳造速度は2.5m/分で一定とした。浸漬ノズルは下向き45度の吐出角度を持ち短辺方向に吐出孔を有する2孔ノズルを用いた。
実験では、凝固シェル前面の平均流速が30cm/秒となるように上段電磁ブレーキ装置2を作動させ、同時に0.4Tで下段電磁ブレーキ装置を作動させた状態で、2孔ノズルの吐出孔30の上端と下端の中間点が、下段電磁ブレーキ装置3の中心線上と一致するように配置した本発明例3の鋳片、2孔ノズルの吐出孔の下端を下段電磁ブレーキ装置3のコア上端よりもさらに100mm上方に配置した場合に0.4Tで下段電磁ブレーキ装置3を作動させ、凝固シェル前面の平均流速が30cm/秒となるように上段電磁ブレーキ装置2を作動させた比較例3の鋳片について、それぞれ断面のNi濃度を表層から鋳片厚み方向に測定し、母溶鋼濃度(内層濃度)との差を調べた。
結果を図7に示すが、本発明例3の場合は、表層と内層の境界が明りょうなのに対し、比較例3では、表層及び内層でのNi濃度の変化が大きく、比較例3では、浸漬ノズルから供給される母溶鋼の上方への流れが過大で、Ni濃度が小さい領域が拡大し、目的とする組成を有する表層が十分な厚みで形成されないことが分かる。本発明例3では鋳片表層と内層との境界が明瞭であったが、比較例3では境界が不明瞭となるだけでなく、表層の厚みが薄くなる。
製造された鋳片の断面を切り出し介在物の観察を行った結果を図8に示す。本発明例3の鋳片(図8(a))も比較例3の鋳片(図8(b))も、表層成分領域15と内層成分領域16との境界17付近に直径1mm以上の粗大な気泡は観察されなかった。
本発明例3の鋳片と比較例3の鋳片をそれぞれ圧延して0.8mm厚みの冷延板を製造し、冷延板の表面疵の発生状態を調べ、両者の品質を比較した。表面疵の発生状態を、表面疵1個を1mとして、コイル長さで除した長さ割合(%)を発生指数として評価して図9に示した。図9に示すように表面品質に優位な差異は見られなかった。
(実施例4)
浸漬ノズルの耐用に対する効果を比較するために、(実施例3)に示す本発明例とコア厚400mmを有する鋳型内電磁撹拌装置と下段電磁ブレーキ装置3を用いた場合の(参考例)との浸漬ノズルの耐用を評価する実験を行った(本発明例4)。
参考例では下段電磁ブレーキ装置3は本発明例4と同様に位置し、上段電磁ブレーキ装置の位置に鋳型内電磁撹拌装置を設置した。
本発明例4では、鋳型の上部に上段電磁ブレーキ装置2(上LMF)(コア厚:400mm)を設置し、鋳型上端から700mmの位置にコアの上端が来るように下段電磁ブレーキ装置3(下LMF)(コア厚:200mm)を設置した連続鋳造装置を用い、上段電磁ブレーキ装置2のコアの範囲内の溶鋼にNiワイヤを挿入して、溶鋼のメニスカス近傍にタンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼を形成して、幅2000mm、厚さ246mmの複層鋳片を鋳造する実験を行った。鋳造速度は2.5m/分で一定とした。浸漬ノズルは下向き45度の吐出角度を持ち短辺方向に吐出孔を有する2孔ノズルを用いた。
実験では、本発明例4では(実施例3)に記したように凝固シェル前面の平均流速が30cm/秒となるように上段電磁ブレーキ装置2を作動させ、同時に0.4Tで下段電磁ブレーキ装置を作動させた状態で、2孔ノズルの吐出孔の上端と下端の中間点が、電磁ブレーキ装置の中心線上と一致するように配置した。参考例では、上段電磁ブレーキ装置の位置に400mmのコア厚を有する鋳型内電磁撹拌装置を設置して、電磁力の電流値を制御して、本発明例3と同様に、旋回流25の凝固シェル前面における平均流速が30cm/秒となるように制御して鋳造した。鋳造終了後の浸漬ノズルの耐用時間を調べた。参考例を耐用時間を100として、本発明例の耐用時間を相対値で示した。結果を図10に示すが、参考例に比べ本発明例4の場合は、浸漬ノズルの耐用時間は長くなり、耐用時間が短くなる不具合が解消されていることが分かる。
1 連続鋳造鋳型
2 上段電磁ブレーキ装置
3 下段電磁ブレーキ装置
4 タンディッシュ
5 浸漬ノズル
6 ワイヤ
7 上段電磁ブレーキ装置のコア
8 下段電磁ブレーキ装置のコア
9 表層用溶鋼
10 内層用溶鋼
11 タンディッシュの溶鋼
12 第2の供給ノズル
13 表層
14 内層
15 表層成分領域
16 内層成分領域
17 表層成分領域と内層成分領域との境界
18 介在物を伴った粗大な気泡
19 鋳片
21 溶鋼流(吐出流)
22 溶鋼流
23 溶鋼流(下降流)
24 溶鋼流(上昇流)
25 旋回流
25a 溶鋼流(上昇流)
25b 溶鋼流(水平流)
25c 溶鋼流(下降流)
26 MHD対向流
30 吐出孔
31 供給装置

Claims (4)

  1. 鋳型の上部に鋳型内溶鋼の電磁ブレーキ装置(以下、「上段電磁ブレーキ装置」と称す。)を設置し、該上段電磁ブレーキ装置の下方に電磁ブレーキ装置(以下、「下段電磁ブレーキ装置」と称す。)を設置した連続鋳造装置を用いて複層鋳片を鋳造する方法において、
    前記上段電磁ブレーキ装置によって形成された縦方向の旋回流の領域に、タンディッシュから浸漬ノズルを通して鋳型内に供給される溶鋼よりも密度の高い溶鋼の領域を形成し、
    前記下段電磁ブレーキ装置のコア下端から上端の間に前記浸漬ノズルの吐出孔を配置して、
    前記下段電磁ブレーキ装置の印加する電磁力を0.4テスラ以上とし、
    該吐出孔から浸漬ノズルの側方に下向き45°から上向き10°以下の吐出角度で溶鋼を吐出しつつ鋳造することにより、鋳片表層の密度が内層に比べて高い鋳片とすることを特徴とする複層鋳片の製造方法。
  2. 前記上段電磁ブレーキ装置のコア範囲における縦方向の旋回流の凝固シェル前面流速を10〜50cm/秒とすることを特徴とする請求項1に記載の複層鋳片の製造方法。
  3. 前記縦方向の旋回流に表層の溶鋼密度を高めるための成分を有するワイヤを供給して、前記密度の高い溶鋼の領域を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複層鋳片の製造方法。
  4. 前記タンディッシュに、前記浸漬ノズルとは別に溶鋼の供給ノズルを設け、該供給ノズルの先端位置を前記上段電磁ブレーキ装置のコア範囲内とするとともに、供給ノズル内に表層の溶鋼密度を高めるための成分を有するワイヤを供給し、供給ノズル内でワイヤを溶融してその溶鋼を前記縦方向の旋回流に吐出することにより前記密度の高い溶鋼を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複層鋳片の製造方法。
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