JP4808196B2 - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳片を製造するために使用する連続鋳造用鋳型に関する。
従来、図6、図7(A)〜(C)に示す連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)80に溶鋼を供給して鋳片を鋳造している。この鋳型80は、間隔を有して対向配置された銅板で構成される一対の短辺(短片ともいう)81、82と、この各短辺81、82を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置された銅板で構成される一対の長辺(長片ともいう)83、84とを備えている。
この短辺81、82は、鏡面対称で同じ構成となっており、裏面側の上下方向に多数の導水溝85〜87が設けられ、この短辺81、82の裏面側に、ボルト88によってバックプレート(支持部材、冷却箱、又は水箱ともいう)89、90が固定されている。また、長辺83、84も、裏面側の上下方向に多数の導水溝85〜87が設けられ、この長辺83、84の裏面側に、ボルト88によってバックプレート91、92が固定されている(例えば、特許文献1参照)。
鋳型80は、短辺81、82、長辺83、84、及びそれぞれのバックプレート89〜92を有して構成され、対向配置される長辺83、84に固定されたバックプレート91、92の両端部には、それぞれボルト93が取付けられ、ばね(図示しない)を介してナット94で固定されている。
連続鋳造作業時においては、バックプレート89〜92の下部に設けられた給水部(図示しない)から、短辺81、82及び長辺83、84に設けられた多数の導水溝85〜87を介して、バックプレート89〜92の上部に設けられた排水部(図示しない)へ冷却水を流している。これにより、各短辺81、82と各長辺83、84を冷却しながら、鋳型80の上方から溶鋼を注いで溶鋼の初期凝固を行い、凝固シェルが形成された鋳片を鋳型下方よりほぼ一定速度で連続して引き抜き、鋳片を製造する。
特開2003−136204号公報
しかしながら、従来の各短辺81、82及び各長辺83、84には、幅狭で深さが深い導水溝85〜87が形成されているため、各短辺81、82及び各長辺83、84の厚みを必要以上に厚く(例えば、30mm程度)する必要があり、発生する熱応力も高くなっていた。また、導水溝85〜87の構造そのものが、各短辺81、82及び各長辺83、84の変形を防止するリブの役目をしていたため、その自由変形を拘束していた。
このため、熱負荷が大きい湯面(メニスカス)近傍では、各短辺81、82及び各長辺83、84の拘束ひずみが増して、応力状態が悪化、即ち塑性ひずみの発生が増大していた。これにより、メニスカスクラック(メニスカスレベル付近に発生するヒートクラック:以下、単にクラックともいう)が発生して、鋳型寿命を低下させる問題があった。
更に、各短辺81、82及び各長辺83、84の厚みが厚くなるに伴い、溶鋼を電磁撹拌する際に、各短辺81、82及び各長辺83、84内に形成される渦電流が大きくなり、溶鋼の撹拌力を低下させたり、また各短辺81、82及び各長辺83、84を製造するための材料コストがかかる問題もある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、熱応力及び導水溝構造によるメニスカスクラックの発生を抑制して、長寿命化を図ることが可能な連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る連続鋳造用鋳型は、間隔を有して対向配置された一対の短辺と、該短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置された一対の長辺と、前記短辺及び前記長辺の裏面側にそれぞれ上下方向に並べて配置された複数の締結手段を備えた締結手段群によってそれぞれ固定された支持部材とを有し、該支持部材に設けられた給水部及び排水部を介して、前記短辺及び前記長辺の裏面側に設けられた多数の導水溝に冷却水を流すことで、前記短辺及び前記長辺の冷却を行うと共に溶鋼の冷却を行って鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
前記短辺又は前記長辺を構成する冷却部材の裏面側に設けられた前記導水溝のうち、該冷却部材の少なくとも上側に設けられた強冷却導水溝は、該冷却部材と前記支持部材の間に形成された空間部と、該冷却部材の裏面側に向けて突出して、その先端面が前記空間部の前記冷却部材の底面に当接する仕切り部が設けられたスペーサーとで形成され、
しかも前記強冷却導水溝のうち、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の内幅を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記強冷却導水溝の内幅よりも狭くした。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記強冷却導水溝のうち、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の深さを、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記強冷却導水溝の深さよりも深くし、更に、前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の平断面積を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記強冷却導水溝の平断面積の−50%以上+50%以下の範囲内とすることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記導水溝は、前記冷却部材の上側に形成された前記強冷却導水溝と、該冷却部材の下側に形成され前記強冷却導水溝に連通する下側導水溝からなり、しかも該下側導水溝は、裏面側に複数の溝が形成された前記冷却部材に、平面状の第2のスペーサーを配置することで形成されていることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記強冷却導水溝と前記下側導水溝との境界部は、前記冷却部材の上端から下方へ200mm以上600mm以下の範囲内にあることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の底部に、冷却効率を増大させる水平突起からなるフィンを設けることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記メニスカスは、前記冷却部材の上端から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内にあり、しかも前記フィンを、該メニスカスの上方50mmの位置から、該メニスカスの下方150mm位置までの範囲内に設けることが好ましい。
請求項1〜6記載の連続鋳造用鋳型は、冷却部材の裏面側で少なくとも上側に設けられた強冷却導水溝を、冷却部材と支持部材の間に形成された空間部と、この空間部の冷却部材の底面に当接する仕切り部が設けられたスペーサーとで形成するので、メニスカスクラックの発生し易い冷却部材の上側の構造を、従来の導水溝構造とは異なって、冷却部材(短辺及び長辺)自体に導水溝(スリット)を形成しない構造とすることができる。
これにより、冷却部材自体の拘束ひずみを緩和することができるので、冷却部材でのクラックの発生を抑制(発生ひずみを低減)でき、鋳型の長寿命化を図ることができる。
また、冷却部材に導水溝を設けないことで、冷却部材の厚みを従来よりも薄くできるので、冷却部材の冷却効率を高めることができ、冷却部材でのクラックの発生を更に抑制できる。更に、鋳型内に形成される渦電流を抑制でき、溶鋼の撹拌力を現状よりも向上できると共に、材料コストの低減も図れる。
そして、冷却部材のメニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の強冷却導水溝の内幅を、上下方向の締結手段間の強冷却導水溝の内幅よりも狭くするので、締結手段の側方部分を流れる冷却水の流速を、他の部分よりも速くできる。これにより、従来温度が高くなり易かった部分の冷却効率を高めることができ、冷却部材でのクラックの発生を更に抑制できる。
特に、請求項2記載の連続鋳造用鋳型は、冷却部材のメニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の強冷却導水溝の深さを、上下方向の締結手段間の強冷却導水溝の深さよりも深くするので、締結手段の側方部分の冷却範囲を、他の部分よりも広げることができる。これにより、従来温度が高くなり易かった部分の冷却効率を高めることができ、冷却部材でのクラックの発生を更に抑制できる。
更に、締結手段の側方部分の強冷却導水溝の平断面積を、上下方向の締結手段間の強冷却導水溝の平断面積に対して所定範囲内に規定するので、圧力損失の上昇を抑制できる。これにより、冷却部材の下部から上部へかけて冷却水の流れを安定にできるので、冷却部材の均一な冷却を実施でき、クラックの発生を更に抑制できる。
特に、請求項3記載の連続鋳造用鋳型は、強冷却導水溝に連通する下側導水溝を、裏面側に複数の溝が形成された冷却部材に、平面状の第2のスペーサーを配置することで形成しているので、冷却部材の全体形状を全て特殊形状にする必要がなく、加工が容易である。
請求項4記載の連続鋳造用鋳型は、強冷却導水溝と下側導水溝との境界部の位置を規定するので、特に熱負荷が大きい湯面近傍で発生する長辺及び短辺の拘束ひずみを低減できる。これにより、冷却部材でのクラックの発生を抑制でき、鋳型の長寿命化を図ることができる。
請求項5記載の連続鋳造用鋳型は、冷却部材のメニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の強冷却導水溝の底部に、冷却効率を増大させる水平突起からなるフィンを設けるので、熱負荷が大きい湯面近傍の鋳型温度の上昇を抑制できる。これにより、冷却部材でのクラックの発生を抑制でき、鋳型の長寿命化を図ることができる。
請求項6記載の連続鋳造用鋳型は、フィンを設ける領域を、適切な範囲に設定することで、冷却部材でのクラックの発生を更に抑制できる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)は本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型のメニスカス直下に位置する締結手段近傍の部分平断面図、(B)は同連続鋳造用鋳型の上下方向に隣り合う締結手段間の部分平断面図、図2(A)は同連続鋳造用鋳型の長辺の裏面側の説明図、(B)は(A)のa−a矢視断面図、(C)は(A)のb−b矢視断面図、図3(A)は同長辺のスペーサーの裏面側の説明図、(B)は同スペーサーの側面図、(C)は同スペーサーの正面図、(D)は(C)のc−c矢視断面図、(E)は(C)のd−d矢視断面図、図4は変形例に係る連続鋳造用鋳型の上下方向に隣り合う締結手段間の部分平断面図、図5(A)は変形例に係る長辺の裏面側の部分拡大図、(B)は(A)のe−e矢視断面図である。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)は、間隔を有して対向配置された図示しない一対の短辺(短片ともいう)と、短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置された一対の長辺(長片ともいう)10、11と、短辺と長辺10、11の裏面(溶鋼と接する面とは反対側の面)側にそれぞれ上下方向(鋳造方向)に並べて配置された複数の締結手段12、12aを備えた締結手段群によってそれぞれ固定された支持部材の一例であるバックプレート(冷却箱又は水箱ともいう)13、14とを有するものである。これにより、バックプレート13、14の下部に設けられた給水部(図示しない)から、短辺と長辺10、11の裏面側に設けられた多数の導水溝15〜17を介して、バックプレート13、14の上部に設けられた排水部(図示しない)へ冷却水を流し、短辺と長辺10、11とで形成される鋳型本体内に供給された溶鋼を冷却部材となる短辺と長辺10、11で冷却し凝固させながら下方へ引き抜きスラブ(鋳片の一例)を製造できる。なお、短辺と長辺10、11は、その幅のみが異なって他の構成は略同様であり、また長辺10、11は鏡面対称であるため、以下、図1〜図3に示す長辺10の構成を主として、詳しく説明する。
各短辺は、銅又は銅合金で構成され、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、幅が50mm以上300mm以下程度で、上下方向の長さが600mm以上1200mm以下程度である。また、各長辺10、11は、銅又は銅合金で構成され、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、幅(鋳片と接触する幅)が600mm以上3000mm以下程度、上下方向の長さが短辺と同程度である。
従って、対向配置される一対の短辺の間隔は、600mm以上3000mm以下程度であり、一対の長片10、11の間隔は、50mm以上300mm以下程度であり、また鋳型の上下方向の長さは、600mm以上1200mm以下程度である。なお、対向配置される短辺は、上記した範囲内でその間隔を変えることができる。
これにより、例えば、幅が600mm以上3000mm以下程度、厚みが50mm以上300mm以下程度のスラブを製造できる。
図1(A)、(B)、図2(A)〜(C)、図3(A)〜(E)に示すように、長辺10の裏面側に設けられた導水溝15〜17は、長辺10とバックプレート13の間に形成された空間部18と、この空間部18に配置されたスペーサー19とで形成されている。なお、本実施の形態では、この導水溝15〜17が強冷却導水溝を構成している。
この空間部18は、長辺10を薄肉平板化して、この部分の長辺10の厚みT1を、3mm以上30mm以下とするようにして、長辺10の幅方向に隣り合う締結手段群間に形成する。
ここで、薄肉平板化した部分の長辺の厚みが3mm未満の場合、長辺の繰り返し使用時における研削代が減少して鋳型使用回数の低下が生じる。一方、厚みが30mmを超える場合、厚みが厚くなり過ぎ、鋳型温度の上昇と締結の拘束による発生応力の増加により、塑性ひずみの発生量が増大する。
以上のことから、薄肉平板化した長辺の厚みT1を、3mm以上30mm以下としたが、上限を20mm、更には12mmとすることが好ましく、下限を5mm、更には7mmとすることが好ましい。
長辺10の裏面側には、薄肉平板化されなかった部分(即ち、締結手段群の上下に隣り合う締結手段12、12aを連結する領域)が、長辺10の上下方向に渡って長辺10の裏面側に突出する固定部20として残っている。なお、幅方向に隣り合う締結手段群の間隔Sは、例えば、50mm以上200mm以下程度である。また、締結手段群を構成する締結手段12と締結手段12aとは、形状のみが異なるものである。
固定部20の上部と下部には、ねじ穴21が形成され、ねじ穴21にスペーサー19に形成された取付け孔22を合わせて、ねじ(図示しない)を締め付けることにより固定部20にスペーサー19を取付けることができる。
このスペーサー19は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、又は耐食性を備えるステンレスで構成されており、長辺10の幅方向に、締結手段群を境として複数配置されている。
スペーサー19は、締結手段12の取付け位置では、その幅方向両側が凹んだ形状となっており、これにより、隣り合うスペーサー19は、締結手段12をよけて、締結手段12が取付けられていない場所では、その側部が当接する構成となっている。
このスペーサー19には、長辺10の裏面側に向けて長辺10の上下方向に渡って突出して、その先端面が長辺10の空間部18の底面に当接する仕切り部23、24が設けられている。これにより、隣り合う締結手段群間に、それぞれ複数(ここでは、3本)の導水溝15〜17が形成される。
この導水溝15〜17のうち、締結手段群に隣接する導水溝15、17は、長辺10の上下方向に渡ってその断面形状が、締結手段12の側方に位置する部分と、他の部分(固定部20の側方に位置する部分)とで異なっている。なお、導水溝15、17の間に位置する導水溝16は、長辺10の上下方向に渡ってその断面形状が同一である。
図1(A)に示す締結手段12の側方部分の導水溝15(導水溝17も同様)の内幅W1は、図1(B)に示す上下方向に隣り合う締結手段12間に位置する導水溝15の内幅W2よりも狭くなっている。そして、図1(A)に示す側方部分の導水溝15の深さD1は、図1(B)に示す上下方向に隣り合う締結手段12間に位置する導水溝15の深さD2よりも深くなっている。
具体的には、W1が3mm以上40mm以下、D1が3mmを超え20mm以下であり、しかもこのとき、D1/W1が、0.075を超え5以下の関係を満足している。また、W2が10mm以上80mm以下、D2が3mm以上10mm以下であり、しかもこのとき、D2/W2が、0.075以上1以下の関係を満足している。これにより、締結手段12近傍の冷却効率を高めることができる。
ここで、導水溝15の締結手段12の側方に位置する部分(以下、領域Aともいう)と、上下方向に隣り合う締結手段12間に位置する部分(以下、領域Bともいう)との接続部は、領域Bから領域Aへ向け、その内幅を連続的(曲面的)に徐々に幅狭にしている。また、接続部は、領域Bから領域Aへ向け、その深さを徐々に深くしている。
なお、締結手段12の側方部分の導水溝15(領域A)の平断面積は、上下方向に隣り合う締結手段12間の導水溝15(領域B)の平断面積と同じ、又は−50%以上+50%以下(好ましくは、上限を+20%、更には+5%、下限を−20%、更には−5%)の範囲内である。
ここで、領域Aの平断面積を、領域Bの平断面積に近づけることにより、導水溝15を流れる冷却水の流速を、長辺10の下部から上部まで略均一にできる。
なお、上記実施の形態では、導水溝15〜17を強冷却導水溝で構成した場合について示したが、長辺の上側のみを、上記した強冷却導水溝で構成してもよい。
また、上記実施の形態では、全ての締結手段12の側方部分の導水溝の内幅、深さ、平断面積を所定の条件を満たすように設定したが、メニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の導水溝又はこれを含む導水溝に対して前記の条件を設定するようにしてもよい。
この場合、導水溝は、図4に示すように、上側の強冷却導水溝と、強冷却導水溝に連通する下側導水溝25〜27で構成する。なお、各下側導水溝25〜27は、裏面側に複数の溝が形成された長辺28に、平面状の第2のスペーサー29を配置することで構成するとよい。この下側導水溝25〜27の断面の輪郭形状は、導水溝16の輪郭形状と実質的に同一になっているが、その内幅をより広くしてもよい。このとき、長辺の隣り合う締結手段群間に、それぞれ上側の強冷却導水溝を構成するスペーサーと、下側導水溝25〜27を構成する平面状の第2のスペーサー29とが配置されることになる。これにより、各スペーサーの加工が容易になる。
ここで、強冷却導水溝と下側導水溝25〜27との境界部は、長辺の上端から下方へ200mm以上600mm以下(好ましくは、下限を250mm、上限を450mm)の範囲内にする。なお、メニスカスは、長辺28の上端から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内にある。
更に、図5(A)、(B)に示すように、長辺30の隣り合う締結手段群の間に形成された空間部18と、仕切り部23、24を有するスペーサー19とで形成された導水溝31〜33のうち、締結手段群の両側に隣接する導水溝31、33(強冷却導水溝)のメニスカス直下に位置する締結手段12の側方に位置する部分の底部に、冷却効率を増大させる水平突起からなるフィン34、35を設けてもよい。なお、長辺30は、フィン34、35が設けられたこと以外は、前記した長辺10と同一構成である。
このフィン34、35は、導水溝31、33が形成される領域の底面に対して、長辺30の幅方向に、例えば、ボールエンドミル(図示しない)を動かすことで形成できる。このフィン34、35は、側断面視して波状に形成されており、長辺30の上下方向のピッチPが1mm以上5mm以下程度、深さD3が、フィン34、35を形成する前の底面に対して、0.5mm以上2mm以下程度である。
なお、フィンは、導水溝31、33の全体に渡って又は部分的に設けてもよく、また、メニスカスの上方50mmの位置から、メニスカスの下方150mm位置までの範囲内に渡って全体的に、又は部分的に設けてもよい。
以上に示した長辺10の裏面側(冷却面とは反対側)には、複数の締結手段12、12aを使用して、例えば、ステンレス製のバックプレート13(例えば、厚みが50mm以上500mm以下程度)が取付けられる。この取付けに際しては、バックプレート13の周辺部に、バックプレート13の給水部、排水部、及び長辺10の導水溝15〜17を囲むように溝(図示しない)が形成され、ここにOリング(図示しない)を配置することで、長辺10とバックプレート13の密着性を向上させ、導水溝15〜17からの冷却水の漏れを防止している。
この締結手段12、12aは、長辺10に形成されている雌ねじ部36と、雌ねじ部36に螺合してバックプレート13を締着する雄ねじ(図示しない)を有している。また、雄ねじを取付けるため、バックプレート13に形成された孔37には、予め防水可能なシール座金が配置されており、雄ねじを取付けた部分からの冷却水の漏れを防止している。
また、長辺の表面(溶鋼面)には、コーティング層を形成してもよい。
コーティング層は、例えば、Co−NiのようなCo合金、Ni−FeのようなNi合金、又はNiのめっきを使用できるが、溶射(例えば、NiベースのCr−Si−B系合金)も使用できる。このコーティング層は、同一種類の成分を、長辺に使用する銅板の表面全面に渡って形成してもよく、また、複数種類の成分を、銅板の上下方向の異なる領域に、各成分の機能に応じてそれぞれ形成してもよい。
以上に示した長辺は、それぞれ銅板表面にコーティング層を形成した後、所定の形状を、従来公知の機械加工を行って製造する。
この長辺の形状は、一対の長辺の間隔を、スラブの引き抜き方向へ向けて同一としてもよいが、スラブの凝固収縮形状に応じて狭くすることが好ましい。
次に、本発明の作用効果を確認するため、FEM解析(有限要素法を用いた解析)を行った結果について説明する。
ここで、従来例の長辺は、図7に示した形状であり、長辺を構成する銅板の裏面側一面に導水溝が形成され、銅板の溶鋼冷却面からバックプレートとの接触面までの厚みが厚いもの(25mm)である。なお、銅板に形成した導水溝は、その深さが13mm、幅が5mmである。
一方、実施例の長辺は、図1(A)、(B)、図2(A)〜(C)、図3(A)〜(E)に示した形状であり、長辺を構成する銅板の空間部が形成された部分の厚みT1が従来例の銅板よりも薄いもの(13mm)である。なお、この銅板の裏面側にスペーサーを配置して形成した締結手段の側方部分の導水溝の内幅W1が9mm、深さD1が10mm、また上下方向に隣り合う締結手段間の導水溝の内幅W2が21mm、深さD2が4.5mmである。
長辺のメニスカス位置での温度は、従来例が264℃、実施例が263℃であり、また、締結手段の側方部分での温度は、従来例が275℃、実施例が267℃であった。
このとき、長辺のメニスカス位置での最大変形量は、従来例が0.085mm、実施例が0.058mmとなり、実施例の形状とすることで、長辺の変形量を従来例よりも大幅に低減できることを確認できた。
また、長辺のメニスカス位置での塑性ひずみ幅は、従来例が0.288%、実施例が0.184%であり、疲労寿命(クラックが発生するまでの繰り返し荷重がかかる回数)は、従来例が842回、実施例が1774回であった。
従って、従来例の疲労寿命を1とした場合、実施例では2.11倍程度まで、疲労寿命を伸ばせることを確認できた。
そして、長辺の熱変形に伴う締結手段の反力は、長辺の上端から1〜3段目の各締結手段の位置で、従来例が3310kg、5070kg、3290kg、実施例が3370kg、3230kg、2900kgであった。
このように、実施例での長辺の上端から2段目(メニスカス直下)の締結手段の反力を、従来例と比較して大幅に低減できるため、長辺をバックプレートに固定するための雄ねじの深さを浅くできることを確認できた。これにより、雄ねじのサイズを現状よりも小さくできるため、長辺の厚みを現状よりも薄くできることを確認できた。
更に、長辺の厚みを薄くできることで、銅板内に形成される渦電流が抑制され、溶鋼の撹拌力を、従来例の1.65倍程度まで向上できることを確認できた。
なお、メニスカス直下に位置する締結手段の側方部分に、前記したフィンを設けた場合、銅板の冷却効率を更に高めることができることを確認できた。
以上のことから、本願発明の連続鋳造用鋳型を使用することで、熱応力及び導水溝構造によるメニスカスクラックの発生を抑制して、長寿命化を図れることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の連続鋳造用鋳型を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、長辺及び短辺を冷却部材としたが、短辺のみ、又は長辺のみを冷却部材としてもよい。
そして、前記実施の形態においては、鋳片の一例であるスラブを製造する鋳型の構成について説明したが、形状と寸法の異なる他の鋳片、例えば、ブルームを製造する鋳型に、本願発明を適用することも勿論可能である。
(A)は本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型のメニスカス直下に位置する締結手段近傍の部分平断面図、(B)は同連続鋳造用鋳型の上下方向に隣り合う締結手段間の部分平断面図である。 (A)は同連続鋳造用鋳型の長辺の裏面側の説明図、(B)は(A)のa−a矢視断面図、(C)は(A)のb−b矢視断面図である。 (A)は同長辺のスペーサーの裏面側の説明図、(B)は同スペーサーの側面図、(C)は同スペーサーの正面図、(D)は(C)のc−c矢視断面図、(E)は(C)のd−d矢視断面図である。 変形例に係る連続鋳造用鋳型の上下方向に隣り合う締結手段間の部分平断面図である。 (A)は変形例に係る長辺の裏面側の部分拡大図、(B)は(A)のe−e矢視断面図である。 従来例に係る連続鋳造用鋳型の平面図である。 (A)は同連続鋳造用鋳型の長辺の裏面側の説明図、(B)は(A)のf−f矢視断面図、(C)は(A)のg−g矢視断面図である。
符号の説明
10、11:長辺、12、12a:締結手段、13、14:バックプレート(支持部材)、15〜17:導水溝、18:空間部、19:スペーサー、20:固定部、21:ねじ穴、22:取付け孔、23、24:仕切り部、25〜27:下側導水溝、28:長辺、29:第2のスペーサー、30:長辺、31〜33:導水溝、34、35:フィン、36:雌ねじ部、37:孔

Claims (6)

  1. 間隔を有して対向配置された一対の短辺と、該短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置された一対の長辺と、前記短辺及び前記長辺の裏面側にそれぞれ上下方向に並べて配置された複数の締結手段を備えた締結手段群によってそれぞれ固定された支持部材とを有し、該支持部材に設けられた給水部及び排水部を介して、前記短辺及び前記長辺の裏面側に設けられた多数の導水溝に冷却水を流すことで、前記短辺及び前記長辺の冷却を行うと共に溶鋼の冷却を行って鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
    前記短辺又は前記長辺を構成する冷却部材の裏面側に設けられた前記導水溝のうち、該冷却部材の少なくとも上側に設けられた強冷却導水溝は、該冷却部材と前記支持部材の間に形成された空間部と、該冷却部材の裏面側に向けて突出して、その先端面が前記空間部の前記冷却部材の底面に当接する仕切り部が設けられたスペーサーとで形成され、
    しかも前記強冷却導水溝のうち、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の内幅を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記強冷却導水溝の内幅よりも狭くしたことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  2. 請求項1記載の連続鋳造用鋳型において、前記強冷却導水溝のうち、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の深さを、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記強冷却導水溝の深さよりも深くし、更に、前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の平断面積を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記強冷却導水溝の平断面積の−50%以上+50%以下の範囲内としたことを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  3. 請求項1及び2のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型において、前記導水溝は、前記冷却部材の上側に形成された前記強冷却導水溝と、該冷却部材の下側に形成され前記強冷却導水溝に連通する下側導水溝からなり、しかも該下側導水溝は、裏面側に複数の溝が形成された前記冷却部材に、平面状の第2のスペーサーを配置することで形成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  4. 請求項3記載の連続鋳造用鋳型において、前記強冷却導水溝と前記下側導水溝との境界部は、前記冷却部材の上端から下方へ200mm以上600mm以下の範囲内にあることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型において、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記強冷却導水溝の底部に、冷却効率を増大させる水平突起からなるフィンを設けることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  6. 請求項5記載の連続鋳造用鋳型において、前記メニスカスは、前記冷却部材の上端から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内にあり、しかも前記フィンを、該メニスカスの上方50mmの位置から、該メニスカスの下方150mm位置までの範囲内に設けることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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