JP4355684B2 - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents
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Description
長辺部材は、図5(A)、(B)に示すように、裏面に上下方向に多数の導水溝80が設けられた銅板(冷却板の一例)81と、銅板81の裏面側に所定の取付け間隔で設けられたボルトにより固定された支持部材の一例であるバックプレート(冷却箱ともいう)82とを有している。このバックプレート82の銅板81に接触する側の上端部及び下端部には、それぞれ排水部83及び給水部84が設けられ、給水部84から流入した冷却水を導水溝80を介して排水部83へ流すことで、銅板81の冷却を行っている。また、銅板81とバックプレート82の間には、導水溝80、排水部83、及び給水部84を囲むようにOリング85が配置され、長辺部材からの水漏れを防止している。なお、短辺部材も、その幅が異なること以外は、長辺部材と略同様の構成となっており、長辺部材及び短辺部材の各銅板で鋳型本体が構成されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、このような構成の鋳型に溶湯を供給し、鋳型内で凝固して形成される鋳片を連続的に下方へ引き抜きながら、冷却水を吹き付けて鋳片を製造している。
従来の鋳型の銅板、特に電磁撹拌用鋳型のように厚みが薄い薄肉銅板は、その熱変形防止を目的として、図5(A)に示すように、過密なピッチ(例えば、50mm以上150mm未満)でバックプレートとのボルト締結がなされている。このため、銅板に拘束歪みが発生してクラックが発生し易かった。
また、近年、鋳造速度の上昇又は電磁撹拌の影響により、銅板のメニスカス部への熱負荷が従来よりも増大しているため、前記過密なボルト締結構造では、銅板のメニスカス部により大きな拘束歪みが発生してクラックが発生し易かった。
このように、銅板にクラックが発生することで、例えば、鋳片品質及びモールド寿命を大きく低下させる恐れがあった。
前記取付け手段は、前記冷却板のメニスカス部である該冷却板の上端位置から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内を避けて設けられ、該メニスカス部の上下に位置する前記取付け手段の取付け間隔を他の部分の取付け間隔よりも広くし、更に、前記冷却板のメニスカス部の表面側には、前記鋳片の製造時の前記メニスカス部の熱膨張量に対応した凹み加工がなされ、しかも該凹み加工により形成される凹部の深さが0.05mm以上1.0mm以下である。
また、冷却板のメニスカス部の表面側に、鋳造の際のメニスカス部の熱膨張量に対応した凹み加工を行うことで、連続鋳造用鋳型の使用に際しても、目的とする形状に変形させることができ、良好な品質を備える鋳片を製造できる。
ここで、図1(A)は本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型の長辺部材の冷却板の背面図、(B)は図1(A)のa−a矢視断面図、図2は連続鋳造用鋳型を使用して鋳片を鋳造する際の冷却板形状を示す説明図である。
冷却板11(例えば、厚み10mm以上100mm以下程度)は、熱伝導性が良好な金属の一例である銅又は銅合金で構成され、その裏面側には上下方向に多数の導水溝20(ここでは11本)が設けられている。なお、各導水溝20は、冷却板11の幅方向に所定ピッチ(例えば、10mm以上40mm以下程度)で形成され、その深さは、例えば、冷却板11の厚みの1/3以上2/3以下程度である。
冷却板11には雌ねじ部が形成され、この雌ねじ部に螺合する雄ねじ(例えば、ボルト)により、冷却板11の裏面側にバックプレート19が固定されている。なお、雄ねじを取付けるためにバックプレート19に形成された孔(図示しない)には、防水可能なシール座金が予め配置されている。この雌ねじ部と雄ねじが取付け手段13〜18(ここでは合計18箇所)を構成しており、この複数の取付け手段13〜18が、冷却板11の幅方向及び上下方向に所定の取付け間隔で設けられている。
図2に示すように、冷却板の熱応力は、表面と裏面の間に温度差があり、しかも裏面側が拘束(変位拘束)されている場合に発生する。ここで、冷却板表面を高温にし裏面を低温にして、冷却板の裏面側の曲がりを完全に防止した平板の熱応力解σtを、以下に示す。
σt=±β・ΔT・E/2(1−ν)
β :線膨張係数(1/℃)
ΔT:(表面温度)−(裏面温度)(℃)
E :ヤング率(kg/mm2)
ν :ポアソン比
ここで、冷却板の表面は「−側」の値となって圧縮応力が働き、裏面は「+側」の値となって引張応力が働く。
なお、表裏の温度差はあっても、裏面の拘束が全くない場合は、自由変形となり応力は発生しない。
この低サイクル疲れ状態では、疲労寿命Nfが、塑性歪みに支配されていることから、以下に示すManson−Coffinの(1)式が成り立つ。
εp:塑性歪み振幅
n、Cp:材料定数
Nf:疲労寿命(回)
この(1)式を、疲労寿命Nfについて整理する。
Nfn=Cp/εp ・・・(1´)
(1´)式から、塑性歪み振幅εpが大きいほど、即ち熱応力解σtの絶対値が大きくなるほど、疲労寿命Nfが短くなり、早期にクラックが発生することが分かる。
なお、電磁撹拌用鋳型の冷却板では、渦電流損を抑えるため薄肉の冷却板を使用しており、冷却板に大きな熱変形が発生し易くなっている。そして、この熱変形を防止するため、ボルト締結の数を増やし、ボルトピッチを過密にしている。このように、締結ボルトを過密に配置していることで、冷却板の裏面の曲がり拘束が強くなり、応力状態を悪化させているため、冷却板の塑性歪みが大きくなって疲労寿命も短くなる。
そこで、前記した2つの方法のうち、これを解消する効果的な方法は、高応力部となるメニスカス部近傍の取付け手段の数を減らすことである。
このことから、取付け手段13の取付け位置の範囲Xを、好ましくは冷却板11の上端位置Pから下方へ50mmまでとする。
また、長辺部材の冷却板の端部(溶鋼が接触しない部分である短辺部材の合わせ位置よりも外側)では、熱負荷がかからないため、取付け手段の各取付け間隔は、従来の取付け間隔と同程度でよい。
このように、メニスカス部12近傍の取付け手段の数を減らし、取付け手段13、14の取付け間隔Dを他の取付け手段14〜18の取付け間隔よりも広くすることで、冷却板11の応力緩和が可能になる。
この凹部24は、鋳造中にメニスカス部12が熱膨張し、その結果、冷却板11表面が目的としたプロフィール(鋳型の下方へかけてその中央へ傾斜した形状)になるように、冷却板表面側に熱変形をキャンセルさせたプロフィール加工(凹み加工)を行うことにより形成する。凹部24は、湯面位置に急激な凹み(凹み加工がなされていない冷却板11表面から、例えば、深さが0.05mm以上1.0mm以下程度)を設け、冷却板11の下方へ向かってなだらかに凹み量を小さくした形状である。
なお、このプロフィール加工は、予め分かっている鋳造の際の操業条件や冷却板の冷却条件に基づき、冷却板11の変形量を数値解析により予測して行うことが可能である。
これにより、熱変形による冷却板11の形状(テーパ)崩れを防止できる。
このようにして、冷却板11へのクラックの発生を抑制、更には防止しながら冷却板11の冷却を行うと共に、溶鋼の冷却を行って品質が良好な鋳片を製造できる。
図4(A)に示すように、メニスカス部の上下のボルトの取付け間隔を広くした冷却板(実線)を使用することで、メニスカス部のボルトによる冷却板の拘束をなくすことができ、従来例に係る鋳型の冷却板34(一点鎖線)よりも熱変形量(自由変形)を大きくできる。このことから、ボルト取付け間隔を広くした冷却板は、従来例に係る鋳型の冷却板34よりも塑性歪みを緩和でき、その疲労寿命を従来例に係る鋳型の冷却板34の疲労寿命の2.1倍程度に改善できると推測される。
図4(B)に示すように、予め分かっている鋳造の際の操業条件に基づき、冷却板30の変形量を数値解析して凹み加工を行うことで、鋳造の際には、冷却板30の局所的な熱膨張部分が発生することなく、所定の形状、即ち対向して配置される冷却板の内幅が鋳型の下方へ向かって縮幅する形状を保障できる。
これにより、この鋳型を使用することで、品質が良好な鋳片を製造できる。
また、前記実施の形態においては、長辺部材の取付け手段の取付け位置について説明したが、必要に応じて、長辺部材及び短辺部材の両方について、又は短辺部材のみについての取付け手段の取付け位置を設定することも可能である。なお、ここで、長辺部材の幅が広い場合は、必要に応じて、メニスカス部に相当する冷却板の高さ位置で、メニスカス部を外して長辺部材の幅方向両端部のみに取付け手段を設けることも可能である。これは、短辺部材についても同様である。
Claims (3)
- 裏面に多数の導水溝が設けられた冷却板と、該冷却板の上下方向に所定の取付け間隔で設けられる複数の取付け手段により、前記冷却板の裏面側に前記導水溝を囲むOリングを介して固定された支持部材とを有し、該支持部材に設けられた給水部及び排水部を介して前記各導水溝に冷却水を流すことで、前記冷却板の冷却を行うと共に溶鋼の冷却を行って鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
前記取付け手段は、前記冷却板のメニスカス部である該冷却板の上端位置から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内を避けて設けられ、該メニスカス部の上下に位置する前記取付け手段の取付け間隔を他の部分の取付け間隔よりも広くし、更に、前記冷却板のメニスカス部の表面側には、前記鋳片の製造時の前記メニスカス部の熱膨張量に対応した凹み加工がなされ、しかも該凹み加工により形成される凹部の深さが0.05mm以上1.0mm以下であることを特徴とする連続鋳造用鋳型。 - 請求項1記載の連続鋳造用鋳型において、前記メニスカス部の上方に位置する前記取付け手段の取付け位置は、前記冷却板の上端位置から下方へ60mmまでの範囲内であることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
- 請求項1及び2のいずれか1項に記載の連続鋳造用鋳型において、前記メニスカス部の上下に位置する前記取付け手段の取付け間隔は、150mm以上250mm以下であることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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