JP5383461B2 - 連続鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents
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Description
この鋳型には、例えば、特許文献1に開示されているように、冷却銅板の鋳造方向に渡って1つのテーパ(傾斜面)で形成される単一テーパ(シングルテーパともいう)の鋳型や、傾斜角度の異なる2つのテーパで形成される2段テーパの鋳型等がある。
しかし、溶鋼の凝固過程においては、凝固収縮が発生するため、鋳片の引抜き方向へ向けて、水冷銅板表面(鋳型内面)と溶鋼の鋳型接触面側に形成される凝固シェルとの間に隙間が生じ、鋳片のコーナー部の冷却効率が他の部分よりも低下して、凝固遅れが発生していた。
そこで、特許文献2のように、水冷銅板表面の形状を、鋳片の凝固プロフィールに対応させた形状、即ちマルチテーパとした鋳型が提案されていた。
連続鋳造時の溶鋼からの熱による熱変形は、図12(A)、(B)に示すように、水冷銅板からなる長辺(長片ともいう)91とこの裏側に取付けられたバックプレート92とが、また図12(C)、(D)に示すように、水冷銅板からなる短辺(短片ともいう)93とこの裏側に取付けられたバックプレート94とが、一体的に熱変形する。
このとき、長辺91又は短辺93がバックプレート92、94よりも大きく変形する。なお、これらの水冷銅板を有する鋳型は、図12(A)、(B)に示すように、間隔を有して対向配置された一対の短辺93の幅方向両側が、一対の長辺91で挟み込まれた形状となっている。
更に、長辺91と短辺93に中膨らみとなる変形が発生することでテーパ形状が崩れ、その結果、鋳片コーナー部の冷却が更に悪くなって、形成される凝固シェルの厚みが薄くなり、最終的には、ブレークアウトを招く恐れもある。
前記長辺及び短辺のいずれか一方又は双方を構成する水冷銅板の裏側に配置されたバックプレートの背部に第1の距離計を配置し、該第1の距離計によって、前記バックプレートの移動距離aを測定し、前記バックプレート内に第2の距離計を埋込み、該第2の距離計によって、前記バックプレートと前記水冷銅板の距離bを測定して、前記移動距離aと前記距離bとの和から、前記水冷銅板の熱膨張の分布を予め求め、該水冷銅板の内側部に、前記水冷銅板の内側中央部の熱膨張に対応した凹部を形成して、連続鋳造の際に熱膨張した前記水冷銅板の内側形状を、製造する鋳片の凝固形状に合わせる。
従って、鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造できる。
まず、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型について説明した後、連続鋳造用鋳型の製造方法について説明する。
図1(A)〜(D)、図2(A)、(B)に示すように、連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)10は、間隔を有して対向する長辺(長片ともいう)11と、その間に挟まれて間隔を有して対向する短辺(短片ともいう)12を構成する水冷銅板を有している。この一対の長辺11と一対の短辺12によって形成され上下方向に貫通した鋳型内部13は、テーパ状となって(即ち、対向する長辺11間の距離、又は対向する短辺12間の距離が、下方に向けて徐々に狭くなって)おり、鋳型内部13に溶鋼14を供給して冷却しながら鋳片を製造している。
これにより、例えば、幅が600mm以上3000mm以下程度、厚みが50mm以上300mm以下程度のスラブを製造できる。
なお、連続鋳造時における長辺11及び短辺12に発生する熱膨張は、長辺11及び短辺12の内側中央部、即ち、湯面(メニスカス)位置から下端位置(更には、下端位置の上方100mm位置)までの範囲に大きく発生するので、この範囲に凹部19、20を設けることになる。
図1(A)、(B)、図2(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る連続鋳造用鋳型の製造方法は、長辺11の裏側に配置されたバックプレート15の背部に、複数(ここでは、3個)のレーザー式変位計(距離計の一例)21〜23を配置し、この各レーザー式変位計21〜23により、バックプレート15の移動距離aを測定して、鋳型10を製造する方法である。この方法は、バックプレート15の剛性が小さく、バックプレート15が長辺11と一体的に膨張収縮するときに有効である。
ここで、レーザー式変位計21、23、22は、長辺11の高さ方向の上部(長辺の上端から鋳造方向へ150mmまでの範囲)、下部(長辺の下端から上方向へ200mmまでの範囲)、及び中央部(上部及び下部を除く部分)の測定がそれぞれできるように配置されているが、これに限定されるものではなく、更に長辺の幅方向に間隔を有して複数配置してもよい。
これにより、バックプレート15と鋳型フレーム17との相対距離L1を、各レーザー式変位計24〜26を設置した位置ごとに測定できる。なお、鋳型フレーム17は、バックプレート15とは間隔を有して配置され、熱変形しない(熱変形が小さい)ため、連続鋳造の開始の前後で相対距離L1を測定することで、バックプレート15の移動距離aを測定でき、長辺11のそり変形の際の変位を検知できる。
この長辺11の熱膨張の分布は、実際に測定した各測定位置ごとの移動距離aに合わせるように、演算手段を用いたFEM解析(有限要素法を用いた解析)を行うことで、予め求めることができる。なお、熱膨張の分布は、レーザー式変位計の設置個数を更に増やし、得られた各測定位置ごとの移動距離aを曲線で連続的にむすび、求めることも可能である。
そして、このデータに基づいて、例えば、新たに使用する長辺に、また補修する長辺に、機械加工を施し、長辺11の内側部に、長辺11の内側中央部の熱膨張に対応した凹部19を形成する。なお、機械加工に際しては、予め得られた鋳片の凝固プロフィールのデータも入れておく。
これにより、連続鋳造の際に熱膨張した長辺11の内側形状を、製造する鋳片の凝固形状に合わせることができる。
なお、各渦電流式変位計26〜28は、バックプレート16の裏面側に配置された基準バー29の正面側(バックプレート16の裏面に対向する側)に、鋳造方向に渡って間隔を有して配置されている。この基準バー29は、バックプレート16の上部と下部に、支持部30、31を介して取付けられている。
この移動距離a´から、短辺12の熱膨張の分布を求める方法は、上記した長辺11の熱膨張から求める方法と同様である。
これにより、短辺12の内側部に、短辺12の内側中央部の熱膨張に対応した凹部20を形成できるので、連続鋳造の際に熱膨張した短辺12の内側形状を、製造する鋳片の凝固形状に合わせることができる。
なお、短辺39は、前記した短辺13と同様の構成であり、バックプレート40は、各渦電流式変位計41〜43が設けられていること以外は、前記したバックプレート16と同一構成である。また、図3中の番号44、45は、冷却水が流れる導水溝であり、番号46は、短辺39とバックプレート40との間からの冷却水の漏れを防止するOリングである。
検出部48は、センサーヘッド押え部50により、検出部48の先端面が短辺39の裏面に接触するように(隙間を有してもよい)、位置決めされている。なお、検出部48とセンサーヘッド押え部50との間、及びセンサーヘッド押え部50と貫通孔49内面との間には、それぞれOリング51、52が取付けられ、冷却水の漏出しを防止している。
これにより、バックプレート40と短辺39との距離bを、各渦電流式変位計41〜43を設置した位置ごとに、測定できる。
この距離bから、短辺39の熱膨張の分布を求める方法は、前記した長辺11の熱膨張から求める方法と同様である。
使用した鋳型は、従来公知の連続鋳造機に使用する鋳型である。
鋳型を構成する対となる長辺は、鋳造されて下流側へ搬送される鋳片の上面側に接する側をL側といい、下面側に接する側をF側という。また、対となる短辺は、その間隔が可変のものである。
なお、以下の実施例においては、間隔を変更するための一方側の短辺をN側といい、他方側の短辺をS側という。
短辺のN側のそり変形は、短辺の裏側に配置されているバックプレートの背部に、3個の渦電流式変位計を配置し(図2(B)参照)、図4(B)に示すように、N1点〜N3点の3箇所について、バックプレートの変位量をそれぞれ測定した。なお、N1点〜N3点は、短辺の幅方向中央部において、高さ方向の上部、中央部、及び下部である。
また、鋳造速度は1.0m/分と1.5m/分の2つについて行った。この鋳造速度の推移を図5に示す。
図6から明らかなように、F側の変位量は、鋳造速度の上昇と共に大きくなることが分かった。なお、L側についても、F側とは変位量は異なるが、略同様の傾向が得られた。
次に、短辺が取付けられたバックプレートについて、N側のそり変形の推移を図7に示す。
図7から明らかなように、N側の変位量も、鋳造速度の上昇と共に大きくなることが分かった。なお、S側についても、N側とは変位量は異なるが、略同様の傾向が得られた。
この図8及び図9中の「Vc」とは、鋳片の鋳造速度(単位は「m/分」)である。また、図8及び図9には、鋳片の鋳造速度が1.0m/分(太線)と1.5m/分(細線)の場合について、FEM解析(有限要素法を用いた解析)での変形予測結果も示している。
このように、長辺及び短辺の変位量は、FEM解析により推測できるため、このFEM解析を用いることで、長辺側及び短辺側の熱変形分布を求めることができる。
即ち、長辺11及び短辺12の鋳造方向は、長辺11及び短辺12の上端位置から下端位置へかけて、鋳造方向中央部(湯面位置から下端位置、更には下端位置の上方100mm位置までの範囲)が最も凹んだ状態となるように、各凹部19、20を設ける。また、長辺11の幅方向は、長辺11の一方側コーナー部から他方側コーナー部へかけて、幅方向中央部が最も凹んだ状態となるように、凹部19を設ける。
これにより、連続鋳造の際に熱膨張した長辺11及び短辺12の内側形状を、製造する鋳片の凝固形状に合わせることができる。
なお、機械加工に際しては、予め得られた鋳片の凝固プロフィールのデータも入れておく。
これにより、連続鋳造の際に熱膨張した長辺11の内側形状を、製造する鋳片の凝固形状に合わせることができる。
従って、鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造できる。
鋳型の構造は、水冷銅板の裏側にバックプレートが配置された構造であれば、前記実施の形態に示した構造に限定されるものではない。例えば、従来公知の垂直曲げ型の連続鋳造機に使用する鋳型でもよく、また湾曲型の連続鋳造機に使用する鋳型でもよい。
また、レーザー式変位計や渦電流式変位計の取付け位置も、必要に応じて変更でき、また取付け個数も、必要に応じて増減できる。
そして、前記実施の形態では、一対の短辺の双方、又は一対の長辺の双方の変位量を測定して連続鋳造用鋳型を製造した場合について説明したが、一対の短辺の片方又は一対の長辺の片方の変位量のみを測定してもよく、また一対の短辺及び一対の長辺の全ての変位量を測定して、連続鋳造用鋳型を製造してもよい。
Claims (1)
- 対向する長辺とその間に挟まれて対向する短辺とを有し、該長辺と短辺によって形成される鋳型内部がテーパ状となった連続鋳造用鋳型の製造方法において、
前記長辺及び短辺のいずれか一方又は双方を構成する水冷銅板の裏側に配置されたバックプレートの背部に第1の距離計を配置し、該第1の距離計によって、前記バックプレートの移動距離aを測定し、前記バックプレート内に第2の距離計を埋込み、該第2の距離計によって、前記バックプレートと前記水冷銅板の距離bを測定して、前記移動距離aと前記距離bとの和から、前記水冷銅板の熱膨張の分布を予め求め、該水冷銅板の内側部に、前記水冷銅板の内側中央部の熱膨張に対応した凹部を形成して、連続鋳造の際に熱膨張した前記水冷銅板の内側形状を、製造する鋳片の凝固形状に合わせることを特徴とする連続鋳造用鋳型の製造方法。
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