JP6033766B2 - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents

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本発明は、鋳片を製造するために使用する連続鋳造用鋳型に関する。
鋳片は、上下方向に貫通する鋳型空間部が内側に形成された鋳型壁を有する連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)を使用し、この鋳型空間部へ供給された溶鋼を鋳型壁で冷却しながら凝固させて鋳造している。なお、鋳型壁は、間隔を有して対向配置された一対の短辺と、この短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置される一対の長辺とで構成されている。
上記した鋳型として、所定厚みの鋳片の鋳造用に作製した一対の長辺を共用し、この長辺間に対向配置される短辺を、鋳造する鋳片の厚みに対応した幅を有する短辺に交換するものがある。これにより、長辺を交換することなく、短辺を交換するのみで、厚みの異なる複数種類の鋳片を鋳造できる(例えば、特許文献1参照)。
特開2013−86121号公報
しかしながら、前記従来の鋳型には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
鋳片を鋳造するに際しては、鋳片が鋳造方向で収縮していくため、鋳造する鋳片の厚みに応じて、一対の短辺をそれぞれ鋳造方向に向けて縮幅させ、鋳型空間部をテーパ状(先細り形状)にしている。具体的には、図5に示す鋳型90のように、短辺91として、幅方向左側の側面92の傾斜角度を一定とし、鋳片の厚みに応じて、幅と、幅方向右側の側面93の傾斜角度を種々変更したものを使用している。
このため、傾斜角度が一定の短辺91の側面92に沿って配置される長辺94は、その傾動角度αが一定となるが、傾斜角度が変更される短辺91の側面93に沿って配置される長辺95は、その傾動角度βが変わる。これにより、長辺94、95と、鋳型90内で形成される鋳片の凝固シェルとの接触状態が、鋳片の厚み方向で異なり、その結果、鋳片の厚み方向両側に形成される凝固シェルの厚みが異なるため、例えば、鋳造した鋳片の品質不良を招くおそれがあった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、厚みの異なる複数種類の鋳片の鋳造に対応でき、しかも良好な品質の鋳片を製造可能な連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る連続鋳造用鋳型は、間隔を有して対向配置され、それぞれ鋳造方向へ向けて縮幅する一対の短辺と、該短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置される一対の長辺とを有し、前記一対の短辺と前記一対の長辺によって形成される鋳型空間部がテーパ状となった連続鋳造用鋳型において、
前記一対の短辺は、鋳造する鋳片の厚みごとに交換可能となって、前記一対の長辺はそれぞれ、前記一対の短辺の側面の傾斜に沿って傾動可能となって
しかも、前記一対の長辺は該各長辺の裏面に当接する水箱に取付け固定され、該各水箱の長辺幅方向両側にそれぞれ突出する突出部は、傾斜面を有する複数のベース座を介して架台上に載置され、該ベース座は、前記各長辺の傾動角度に応じて、異なる傾斜角度で傾斜した複数のベース座から選択されている。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記一対の長辺の各傾動角度は同一であることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、対向する前記長辺には、前記鋳造方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺傾斜部が形成されていることが好ましい。
本発明に係る連続鋳造用鋳型は、一対の短辺が、鋳造する鋳片の厚みに合わせて交換可能となって、一対の長辺がそれぞれ、一対の短辺の側面の傾斜に沿って傾動可能となっているので、鋳片の厚みに応じて幅が異なる短辺ごとに、短辺の幅方向両端に位置する各側面の傾斜角度をそれぞれ変更し、各長辺の傾動角度を変更できる。これにより、長辺と、鋳型内で形成される鋳片の凝固シェルとの接触状態を、良好な状態にできるので、その結果、鋳片の厚み方向両側に形成される凝固シェルの厚みも、良好な状態にできる。
従って、厚みの異なる複数種類の鋳片の鋳造に対応でき、しかも良好な品質の鋳片を製造可能な連続鋳造用鋳型を提供できる。
また、一対の長辺の各傾動角度が同一である場合、長辺と凝固シェルとの接触状態を鋳片の厚み方向で同等にでき、その結果、鋳片の厚み方向両側に形成される凝固シェルの厚みも略同程度にできるため、上記した効果が顕著になる。
そして、対向する長辺に、鋳造方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺傾斜部が形成されている場合、長辺と凝固シェルとの接触状態が更に良好になるため、上記した効果が更に顕著になる。
本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型の使用状態の説明図である。 同連続鋳造用鋳型の部分平断面図である。 (A)は図2のa−a断面図、(B)は図2のb−b断面図である。 図2のc−c断面図である。 従来例に係る連続鋳造用鋳型の使用状態の説明図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)10は、間隔を有して対向配置される一対の短辺11、12と、この短辺11、12を幅方向の両側から挟み込んだ状態で対向配置される一対の長辺13、14とを有し、一対の短辺11、12と一対の長辺13、14によって形成される鋳型空間部15がテーパ状(先細り形状)となったものであり、厚みの異なる複数種類の鋳片の鋳造に対応でき、しかも良好な品質の鋳片を製造可能なものである。以下、詳しく説明する。
図1に示すように、短辺11、12はそれぞれ、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、幅が50mm以上500mm以下程度、鋳造方向の長さが600mm以上1200mm以下程度である。この短辺11、12は、鏡面対称で同じ構成となっている。
また、長辺13、14はそれぞれ、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、対向配置される一対の短辺11、12の間隔(鋳片と接触する幅)を200mm以上3500mm以下の範囲で変更可能とすることのできる幅を有し、鋳造方向の長さは短辺11、12と同程度である。
上記した短辺11、12は、図2に示すように、その裏面に当接するバックプレート16、17(ステンレス製又は鋼製)に取付け固定されている。この短辺11、12の裏面側(バックプレート16、17側)には、多数の導水溝が鋳造方向(鋳片の引き抜き方向)に設けられている。なお、多数の導水溝は、例えば、5mm以上200mm以下程度の範囲内の所定ピッチで、短辺11、12の幅方向に形成されている。
また、上記した長辺13、14は、図2、図3(A)、(B)、図4に示すように、その裏面に当接する水箱(バックプレートも含む)18、19に取付け固定されている。この長辺13、14の裏面側(水箱18、19側)にも上記した多数の導水溝が、長辺13、14の幅方向に所定ピッチで、鋳造方向に設けられている。
短辺11、12の裏面に当接する各バックプレート16、17の裏面側にはそれぞれ、図2に示すように、押圧手段(例えば、シリンダ)20、21が設けられ、この動作により、対向配置された短辺11と短辺12との間隔が調整可能となっている。なお、一対の短辺11、12は、鋳造する鋳片の厚みごとに複数対あり、交換可能となっている。
また、長辺13、14の裏面に当接する各水箱18、19は、図2、図3(A)、(B)、図4に示すように、長辺13、14の幅方向両側にそれぞれ突出する長さを有し、この突出部22〜25をフレーム(架台)26上に載置することで、連続鋳造設備に鋳型10を設置できる。
上記した短辺11、12は、図1に示すように、それぞれ鋳造方向に向けて縮幅している。なお、各短辺11、12の鋳造方向の縮幅量(短辺11、12の幅方向両端に位置する各側面27、28の傾斜量)は僅かであるが、説明の便宜上、図1においては、誇張して示している。
各短辺11、12の縮幅量は、鋳造する鋳片の厚みに応じて、短辺11、12の両側面27、28の各傾斜角度θ1、θ2をそれぞれ変更することで調整している。なお、鋳造する鋳片の厚みの増加に伴い、鋳片の凝固収縮量も大きくなるため、各短辺11、12の縮幅量(傾斜角度θ1、θ2)を、短辺11、12の幅の増加に伴って大きくしている。
上記した短辺11(短辺12も同様)の傾斜角度θ1(傾斜角度θ2も同様)は、鉛直方向に対する傾斜角度、即ち、短辺11の側面27の上端位置と下端位置を結ぶ直線の傾斜角度であり、例えば、0.03〜0.5度程度である。
また、短辺11(短辺12も同様)の傾斜角度θ1(傾斜角度θ2も同様)をテーパ率で示すと、例えば、0.1〜0.5%程度である。ここで、テーパ率とは、短辺11を平面視した際に、短辺11の内側表面(鋳片接触面)の幅方向一方側の上端位置と下端位置の差を、短辺11の鉛直方向の長さで除し、「%」で示した値である。
上記したように、一対の短辺11、12は、鋳造する鋳片の厚みごとに交換可能となって、しかも、交換する各短辺11、12ごとに傾斜角度θ1、θ2も変わる。このため、一対の長辺13、14はそれぞれ、一対の短辺11、12の側面27、28の傾斜に沿って傾動可能となっている。
各長辺13、14の傾動角度は、図3(B)、図4に示すように、各水箱18、19の突出部22〜25と、フレーム26との間に配置される複数のベース座29、30を交換することで行う。
ここで、一方のベース座29は、各水箱18、19の突出部22〜25の下面に、取付け手段(例えば、ボルト等)を用いて取付け自在となっている。また、他方のベース座30は、フレーム26の上面に、取付け手段(例えば、ボルト等)を用いて取付け自在となっている。
この各ベース座29、30は、予め設定した傾斜角度で傾斜しており(斜面となっており)、使用する各短辺11、12の両側面27、28の傾斜角度θ1、θ2と、そのときの各長辺13、14の傾動角度に応じて、傾斜角度が異なる複数のベース座から選択して使用することで、各長辺13、14を傾動させることができる。なお、図4中の符合「31」は、ベース座30に対するベース座29の位置決めを行うキーである。
上記した各短辺11、12の両側面27、28の傾斜角度θ1、θ2、即ち各長辺13、14の傾動角度は異なっているが、同一であることが好ましい。
ここで、同一とは、完全一致(傾斜角度θ1=傾斜角度θ2)のみならず、長辺と凝固シェルとの接触状態を鋳片の厚み方向で同等にでき、その結果、鋳片の厚み方向両側に形成される凝固シェルの厚みも略同程度にできる範囲、例えば、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とが、±10%(好ましくは±5%、更に好ましくは±2%)の範囲内で異なる場合も含む。
上記したように、一対の長辺を傾動させるに際しては、長辺の水箱に取付けられたベース座と、フレームに取付けられたベース座のいずれか一方又は双方を交換し、その傾斜角度を変更すればよいが、長辺の傾動角度を変更できる構成であれば、この構成に限定されるものではない。
なお、一対の短辺と、この短辺を幅方向両側から挟み込む一対の長辺との間には、隙間が形成されないことが好ましい。しかし、たとえ、短辺の側面と長辺との間に隙間が発生したとしても、本発明者らの知見では、例えば、0.1〜0.2mm程度であれば、鋳型からの溶鋼の漏れ出しを防止できる。
上記した対向する長辺13、14は、メニスカス位置から鋳型出口まで、同じ割合で傾斜させた形状、即ち、シングルテーパであるが、鋳造方向に鋳片シェル(凝固シェル)の凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺傾斜部を形成することが好ましい。この対向する長辺13、14の内側断面形状、即ち長辺傾斜部の表面形状は、例えば、特許第4659706号公報に記載の方法で決定できるため、以下、簡単に説明する。
長辺傾斜部の表面形状は、その幅方向に渡って同一形状となっており、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状、即ち、マルチテーパとなっている。このマルチテーパとは、鋳型内(メニスカス位置(湯面)から鋳型出口まで)での鋳片の凝固収縮プロフィールを、曲線(複数の関数で規定)及び複数の直線のいずれか一方又は双方を使用して近似し、それを傾斜部の表面形状に適用したものである。
以下、マルチテーパの決定方法について、簡単に説明する。
マルチテーパは、下記に示す条件を考慮したり、また実際に測定した結果を基にして、3次元の鋳片の凝固収縮及び鋳型の熱変形を考慮したFEM解析(有限要素法を用いた解析、以下同様)により求めている。具体的には、鋳片の形状、鋳片のサイズ、鋳込み条件(例えば、鋳込み温度、引抜き速度、鋳型冷却条件等)、鋳込み鋼種の成分に由来する物理量(例えば、液相温度、固相温度、変態温度、線膨張率、剛性値等)、鋳型と鋳片との間の接触熱移動量(鋳片の収縮量は、この量に大きく影響される)等を用いる。
なお、上記した接触熱移動量は、例えば、鋳造時に使用する潤滑材の種類や鋳片の表面形状(鋼種、オシレーション条件、潤滑材種類に依存)の違いに大きく影響される。従って、各鋳込み条件ごとの実績の接触熱移動量をできるだけ正確に把握することが、マルチテーパの決定には必要とされる。
また、上記した対向する短辺11、12も、メニスカス位置から鋳型出口まで、同じ割合で傾斜させた形状、即ち、シングルテーパであるが、対向する短辺11、12に更に、鋳造方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成することもできる。
対向する短辺11、12の内側断面形状、即ち短辺側傾斜部の表面形状は、その幅方向に渡って同一形状となっており、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状、即ち、マルチテーパとなっている。
なお、短辺側傾斜部の表面形状は、例えば、上記した特許第4659706号公報に記載の方法で決定できるため、説明を省略する。
以上に示した鋳型10の使用にあっては、各導水溝に、鋳型10の下部から上部へ向けて冷却水を流すことにより、短辺11、12、及び長辺13、14の冷却を行うと共に、鋳型空間部15に供給された溶鋼の冷却を行う。ここで、鋳造する鋳片の厚みを変更する場合は、連続鋳造を一旦中断して、一対の短辺11、12を交換し、更に一対の長辺13、14の傾動角度を調整した後、連続鋳造を再度開始する。
これにより、例えば、幅が200mm以上3500mm以下程度、厚みが50mm以上500mm以下程度の厚みの異なる複数種類の鋳片の鋳造に対応でき、しかも良好な品質の鋳片を製造できる。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の連続鋳造用鋳型を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態に示した連続鋳造用鋳型は、従来使用されている垂直曲げ型の連続鋳造機や湾曲型の連続鋳造機のいずれにも使用できる。しかし、長辺と凝固シェルとの接触状態を鋳片の厚み方向で同等にし、鋳片の厚み方向両側に形成される凝固シェルの厚みを略同程度にすることを考慮すれば、本発明の連続鋳造用鋳型を垂直曲げ型の連続鋳造機に使用した方が、本発明の効果がより顕著になる。
10:連続鋳造用鋳型、11、12:短辺、13、14:長辺、15:鋳型空間部、16、17:バックプレート、18、19:水箱、20、21:押圧手段、22〜25:突出部、26:フレーム、27、28:側面、29、30:ベース座、31:キー

Claims (3)

  1. 間隔を有して対向配置され、それぞれ鋳造方向へ向けて縮幅する一対の短辺と、該短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置される一対の長辺とを有し、前記一対の短辺と前記一対の長辺によって形成される鋳型空間部がテーパ状となった連続鋳造用鋳型において、
    前記一対の短辺は、鋳造する鋳片の厚みごとに交換可能となって、前記一対の長辺はそれぞれ、前記一対の短辺の側面の傾斜に沿って傾動可能となって
    しかも、前記一対の長辺は該各長辺の裏面に当接する水箱に取付け固定され、該各水箱の長辺幅方向両側にそれぞれ突出する突出部は、傾斜面を有する複数のベース座を介して架台上に載置され、該ベース座は、前記各長辺の傾動角度に応じて、異なる傾斜角度で傾斜した複数のベース座から選択されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  2. 請求項1記載の連続鋳造用鋳型において、前記一対の長辺の各傾動角度は同一であることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
  3. 請求項1又は2記載の連続鋳造用鋳型において、対向する前記長辺には、前記鋳造方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺傾斜部が形成されていることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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