JP3886774B2 - 収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型及びこれを用いた連続鋳造設備 - Google Patents

収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型及びこれを用いた連続鋳造設備 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湾曲状態で凝固させた鋳片において収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型及びこれを用いた連続鋳造設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、連続鋳造設備で使用される連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型とも言う)70は、図5に示すように、一対の幅狭冷却部材である短辺71、72と、この短辺71、72を挟み込むように配置される一対の幅広冷却部材である長辺73、74とを備え、この向い合う長辺73、74の両端部にそれぞれボルト75を取付け、バネ(図示しない)を介してナット76で固定した構成となっている。
この短辺71、72は鏡面対称で同じ構成となっており、図6(A)、(B)に示すように、裏面側の上下方向に多数、例えば10本の導水溝77が設けられた銅板78と、銅板78の裏面側にボルト79によって固定された支持部材の一例であるバックプレート80(冷却箱とも言う)とを有している。そして、バックプレート80の上端部及び下端部にそれぞれ設けられた排水部81及び給水部82を介して導水溝77に冷却水の一例である工業用水を流すことで、銅板78の冷却を行っている。
【0003】
一方、長辺73、74も略同じ構成となっているが、各銅板83の内側対向面84は、上端部から下端部にかけて一方側に湾曲し、この湾曲した内側対向面84の上下方向の曲率半径を、所定の曲率半径R1(例えば、10m程度)に設定している。また、長辺73、74の銅板83の幅は短辺71、72間の幅より長く、この銅板83の裏面側にそれぞれ固定されたバックプレート85の幅が、銅板83の幅より長くなり、バックプレート85に銅板83を固定するためのボルトの個数が、短辺71、72より多くなっている。
このため、長辺73、74に挟み込まれる短辺71、72の銅板78は、長辺73、74の銅板83の湾曲した内側対向面84に接するように、銅板78の側面が内側対向面84の曲率半径R1と同じ数値に設定されている。
なお、この短辺71、72の銅板78と、長辺73、74の銅板83とで鋳型本体86が構成されている。
【0004】
連続鋳造作業時においては、上記した連続鋳造用鋳型70の上方(短辺71、72、長辺73、74の上側)から溶鋼を注ぎ、この鋳型70により製品となる鋳片の初期凝固を行い、凝固した鋳片を鋳型70下方より連続して引抜いて製造している。なお、鋳型70に注がれる溶鋼温度及び鋳型70出口の鋳片の表面温度は操業条件により異なるが、通常、溶鋼温度は約1500℃程度であり、鋳型70出口の鋳片の表面温度は800〜1200℃である。ここでの鋳片の内部は未凝固状態、即ち液体状態となっている。
このように、溶鋼から半凝固状態となり、更に固体となって鋳型70出口の温度まで温度降下する際、鋳片には、例えば、凝固収縮、固体収縮等の収縮が発生する。このため、この収縮によって、銅板78の内側対向面87及び銅板83の内側対向面84で構成される冷却面(鋳片との接触面)と鋳片の凝固殻(凝固シェル)との間に隙間(エアギャップ)が発生する。この隙間の発生は、冷却面と凝固殻との間の熱伝達を著しく低下させ、凝固殻の冷却を不均一とするので、例えば鋳片コーナー部の内部割れや、これに起因した鋳片のブレークアウト等を招来することとなる。
【0005】
そこで、鋳片の収縮分に対応(補償)するだけ銅板78、83の内面形状をそれぞれ変化させ、冷却面と凝固殻との接触状態を良好に保つための種々の提案がなされている。
例えば、特開平6−297101号公報には、短辺の銅板及び長辺の銅板の各内側対向面で構成される内周長を、銅板の上端側で大きくすると共に銅板の下端側で小さくし、しかも内周長の減少率を銅板の上端から下端に向かって小さくした連続鋳造用鋳型が開示されている。これにより、鋳片の初期凝固の収縮外形と近似的に等しい内周長の鋳型を使用でき、銅板と凝固殻の接触状態を最適に保つことができるので、凝固殻の生成を促進し、凝固殻厚さを均一にして、鋳片の品質低下の原因となる縦割れ、菱形変形等を生じないようにした。
また、特開2000−42690公報には、銅板の上部(メニスカス位置から所定領域まで)の縦断面形状に、鋳型に注入した溶鋼の液相から固相への凝固収縮量に相当する縮減部が形成された連続鋳造用鋳型が開示されている。これにより、鋳片の凝固殻を、生成初期段階から冷却面を離れる(鋳型から引抜かれる)までの間、冷却面に確実に接触させることができ、冷却面の冷却効果を十分に発揮できるので、鋳片の内部割れを防止することが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した技術を用いても、完全に鋳片の収縮が補償されておらず、また鋳片の冷却不均一や、冷却面と鋳片との接触が完全ではないのが実態である。
例えば、溶鋼を冷却し、溶鋼から湾曲状態で凝固させた鋳片を製造する連続鋳造設備(円弧型連続鋳造設備)に用いる前記した連続鋳造用鋳型の使用後、銅板の内側対向面を観察すると、銅板の磨耗状況が不均一であり、特に鋳造半径(曲率半径)方向の内側対向面(鋳造円弧基準面及びその対向面)での磨耗が大きく、また基準面と対向面とでは磨耗の発生状況が異なっている。このように、銅板の内側対向面に局部的な大きな磨耗が発生することで、連続鋳造用鋳型を交換しなければならず、寿命が短くなるため経済的でない。また、銅板の内側対向面に局部的な大きな磨耗が発生するということは、内側対向面と鋳片表面との接触状態が、銅板の上端部から下端部にかけて不均一となっていることを意味するため、鋳片を均一に冷却できず、品質低下の原因となる鋳片の内部割れや、更には鋳片のブレークアウト等を招来する可能性がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、経済的でしかも良好な品質の鋳片を製造できる収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型及びこれを用いた連続鋳造設備を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型は、溶鋼を冷却し、溶鋼から湾曲状態で凝固させた鋳片を製造する連続鋳造設備に用いる連続鋳造用鋳型において、
鋳型本体の内周長は、鋳片の体積収縮により決定され、鋳型本体の上端部の内周長より下端部の内周長の方が短くなって、更に鋳型本体の長辺の内側対向面が上端部から下端部にかけて湾曲し、しかも、湾曲した内側対向面の上下方向の曲率半径を、内側対向面の上端部から下端部にかけて、鋳片の線膨張量及び温度に対応させ、内側対向面の上部の曲率半径R 2 を100%とした場合に内側対向面の下部の曲率半径R 3 を99〜97.5%の範囲に設定して、連続的又は断続的に徐々に小さくし、鋳片の表面と内側対向面との接触状態を均一にした。
このように構成することで、鋳型本体の内側対向面の上下方向の曲率半径を、収縮する鋳片の収縮外形に対応した数値に設定できるので、鋳片が収縮しても、鋳片の表面と内側対向面との接触状態を最適にでき、鋳片を連続鋳造用鋳型から内側対向面の形状に沿って容易に引抜くことが可能となる。
また、内側対向面の上端部から下端部にかけての各部分の曲率半径を、収縮する鋳片の収縮外形に対応した数値に設定できるので、鋳片が収縮しても、鋳片の表面と内側対向面との接触状態を最適に保つことが可能な連続鋳造用鋳型を容易に製造することが可能となる。
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型を用いた連続鋳造設備は、溶鋼を冷却し、該溶鋼から湾曲状態で凝固させた鋳片を製造する連続鋳造設備において、
溶鋼を凝固させる鋳型本体の内周長は、鋳片の体積収縮により決定され、鋳型本体の上端部の内周長より下端部の内周長の方が短くなって、鋳型本体の長辺の内側対向面が上端部から下端部にかけて湾曲し、しかも、湾曲した内側対向面の上下方向の曲率半径を、内側対向面の上端部から下端部にかけて、鋳片の線膨張量及び温度に対応させ、内側対向面の上部の曲率半径R 2 を100%とした場合に内側対向面の下部の曲率半径R 3 を99〜97.5%の範囲に設定して、連続的又は断続的に徐々に小さくし、鋳片の表面と内側対向面との接触状態を均一にし、更に、鋳型本体の下流側には、内側対向面の曲率半径の減少に伴ってその対向する当接搬送面の曲率半径が徐々に減少する複数のガイドロールが備えられている。
このように構成することで、鋳型本体の内側対向面の上下方向の曲率半径、更には鋳型本体の下流側に備えられた複数のガイドロールによって構成される対向する当接搬送面の曲率半径を、収縮する鋳片の収縮外形に対応した数値に設定できるので、鋳片が収縮しても、鋳片の表面と内側対向面、及び鋳片の表面と当接搬送面との接触状態を更に最適にでき、鋳片を連続鋳造用鋳型から内側対向面や複数のガイドロールの形状に沿って容易に引抜くことが可能となる。
【0009】
本発明者らは、鋳片の凝固及び冷却状況をコンピュータによってシミュレーションし解析して、本発明を完成するに至った。
この検討により、例えば冷却時における鋳片の凝固収縮で、鋳片の平断面形状が変化するだけでなく、鋳片の鋳造半径も大きく変化していることを見出し、この鋳造半径の変化を補償するために、鋳片の凝固時における線膨張量について検討した。
【0010】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型の鋳型本体の説明図、図2は同連続鋳造用鋳型の鋳型本体を斜め上方から見た説明図、図3は同連続鋳造用鋳型で凝固させた鋳片の温度に対する線膨張の説明図、図4は同連続鋳造用鋳型を用いた連続鋳造設備の説明図である。
【0011】
図1〜図4に示すように、本発明の一実施の形態に係る収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型(以下、単に連続鋳造用鋳型とも言う)10は、溶鋼を冷却し、溶鋼から湾曲状態で凝固させた鋳片11を製造する連続鋳造設備12に用いるもので、前記したように、一対の幅狭冷却部材である短辺と、一対の幅広冷却部材である長辺とを組合せることで製造されるものである(図5参照)。また、連続鋳造用鋳型10の短辺は、熱伝導性が良好な金属の一例である銅からなり、裏面側に通水部が設けられた銅板13と、銅板13の裏面側に取付け手段の一例であるボルトによって固定された支持部材の一例であるバックプレート(冷却箱、水箱とも言う)とを有し、バックプレートに設けられた給水部及び排水部を介して通水部に冷却水の一例である工業用水を流すことで銅板13の冷却を行うものである(図6(A)、(B)参照)。なお、連続鋳造用鋳型10の長辺も、上記した短辺と略同様の構成であり、短辺の銅板13と長辺の銅板14とで鋳型本体15が構成されている。以下、詳しく説明する。
【0012】
図1、図2に示すように、鋳型本体15を構成する短辺及び長辺の各銅板13、14の上端から下端までの垂直長さLは、例えば700〜900mm程度であり、鋳型本体15の一方、即ち長辺の銅板14の内側対向面16は、上端部から下端部にかけて一方向側に湾曲している。このため、一対の長辺の各銅板14は、一対の短辺の各銅板13を挟み込んで配置されるので、長辺の内側対向面16の湾曲状態に対応させて、短辺の銅板13の側面は反っている。
なお、銅板13の幅W(銅板14の幅も同様)は、上端部から下端部へかけてそれぞれ短くなっているため、一対の短辺の銅板13の内側対向面17及び一対の長辺の銅板14の内側対向面16とで構成される内周長は、鋳型本体15の上端部より下端部の方が短くなっている。これは、例えば、凝固収縮、固体収縮等の鋳片の体積収縮を考慮して決定されるもので、その数値は、過去の実績データや、鋳片の線膨張量及び温度を基に決定することが好ましい。
【0013】
前後方向に湾曲した銅板14の内側対向面16の上下方向の曲率半径は、内側対向面16の上部で従来の銅板83の内側対向面84(図5参照)と同程度の曲率半径R2(例えば、10〜15m程度)とし(図1中の点線)、また内側対向面16の下部で曲率半径R2より小さい曲率半径R3としている。この曲率半径R3は、鋳片の線膨張量及び温度に対応させて決定されるもので、曲率半径R2を100%とした場合に、99〜97.5%の範囲の数値に設定される。
これにより、湾曲した内側対向面16の上下方向の曲率半径は、内側対向面16の上端部から下端部にかけて、鋳片の線膨張量及び温度に対応させて連続的又は断続的に徐々に小さくすることが可能となる。なお、連続的とは、内側対向面の上端部から下端部にかけて曲率半径を、例えば、関数で求めて変化させたり、所定の数値(例えば、1〜10mm程度)毎に少しずつ変化させることを意味し、また断続的とは、内側対向面の上端部から下端部にかけて、内側対向面を所定の間隔に区分し(銅板の長さに応じて、例えば、50〜200mm毎)、各部分に所定の曲率半径を設定することを意味する。
【0014】
ここで、内側対向面16の曲率半径R3を、前記した数値に設定した理由について説明する。
図3に示すように、鋳片の化学成分の一例である純鉄は、液体状態で連続鋳造用鋳型10に注がれて凝固し始め、連続鋳造用鋳型10の上部の鋳片温度が例えば1500℃程度の場合、基準温度常温に対する線膨張量が2.5%程度、連続鋳造用鋳型10の出口の鋳片の表面温度が例えば800℃程度の場合、線膨張量が1.0%程度となる。この間、純鉄には相変態が発生するため、線膨張量が部分的に小さくなることが分かる。このため、この小さくなった線膨張量を考慮(例えば、平均をとる)すれば、鋳片の温度を1500℃から800℃まで下げることで、約1.7%程度の収縮が鋳片に発生することとなる。従って、連続鋳造用鋳型10の上部の鋳造半径に対して、連続鋳造用鋳型10の出口の鋳造半径では、1.7%の収縮が発生するので、連続鋳造用鋳型10の上部の鋳造半径に対し、連続鋳造用鋳型10の出口の鋳造半径は、1.7%小さい鋳造半径としなければならない。
即ち、銅板14の内側対向面16の上部の曲率半径R2を100%とすれば、内側対向面16の下部の曲率半径R3を98.3%とすることを意味する。従って、曲率半径R2を、例えば10mとした場合、曲率半径R3は9.83mとなる。
【0015】
なお、例えば、鋳片の化学成分(例えば、0.25質量%炭素鋼、0.80質量%炭素鋼等)を変化させた場合、また、連続鋳造用鋳型10の上部の鋳片の表面温度や連続鋳造用鋳型10の出口の鋳片の表面温度を変化させた場合等は、前記した線膨張量はそれぞれ変化するため、曲率半径R3を99〜97.5%の範囲とした。しかし、連続鋳造用鋳型10で凝固させる鋳片の表面と、銅板14の内側対向面16との接触状態をより最適にするには、曲率半径R3を99〜98%の範囲、更には98.5〜98%の範囲とすることが好ましい。
【0016】
続いて、本発明の一実施の形態に係る収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型を用いた連続鋳造設備について説明する。
図4に示すように、連続鋳造設備12は、上流側端部に配置されたタンディッシュ18と、タンディッシュ18から供給される溶鋼の凝固を行う前記した連続鋳造用鋳型10と、連続鋳造用鋳型10の鋳型本体15の下流側に配置され、鋳型本体15で凝固させた鋳片11の更なる冷却を行う複数のガイドロール19を備えた冷却装置20とを有している。なお、この冷却装置20の下流側には、鋳片11を鋳型本体15から引抜くと共に、湾曲状態で凝固させた鋳片11を平坦状態に矯正する複数のロール21が配置された引抜矯正装置22が設置され、この平坦状態となった鋳片23は、更に下流側に配置された切断装置(図示しない)により所定の長さに切断される。
【0017】
冷却装置20を構成する複数のガイドロール19は、銅板14の内側対向面16の曲率半径の減少に伴って、その対向する当接搬送面、即ち複数のガイドロール19と鋳片11との複数の接触点を曲線で結んだ面の曲率半径R4が、徐々に減少するように配置されている。従って、この当接搬送面の曲率半径R4は、銅板14の内側対向面16の下端部の曲率半径R3を基に、当接搬送面の上流側端部から下流側端部にかけて、鋳片11の線膨張量及び温度に対応させて、連続的又は断続的に小さくしている。
このように構成することで、鋳片11の固体収縮に伴って発生する鋳片11に対するガイドロール19からの局部的な力を防止できるので、ガイドロール19の損傷を低減でき経済的である。
【0018】
なお、既存の連続鋳造設備、即ち複数のガイドロールが備えられて形成される当接搬送面の曲率半径を変更できない連続鋳造設備に前記した連続鋳造用鋳型10を配置する場合は、複数のガイドロールの上流側端部の曲率半径を基に、鋳型本体の内側対向面の下端部から上端部にかけて、内側対向面の曲率半径を前記した範囲で徐々に大きくすることが好ましい。
従って、当接搬送面の上流側端部の曲率半径R4が、例えば10mに設定された場合、鋳型本体の内側対向面の下端部の曲率半径R3は10mとなり、内側対向面の上端部の曲率半径R2は、前記した範囲から10.17mに設定することが好ましい。なお、このとき、内側対向面の曲率半径は、内側対向面の下端部から上端部にかけて連続的又は断続的に大きくすることが好ましい。
【0019】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、前記実施の形態においては、連続鋳造用鋳型として多数の導水溝を備えた一対の短辺と一対の長辺とを組合せた組立鋳型を用いた場合について説明したが、例えば、銅製のチューブを、導水溝を備えたハウジングに収納するチューブラ鋳型や、鋳造又は鍛造した銅ブロックに導水溝を穿孔したブロック鋳型等についても、本発明は適用される。そして、このように連続鋳造用鋳型として使用する鋳型の種類を変化させることで、例えば、スラブ(例えば、幅が1000〜2500mm程度、厚みが200〜300mm程度)、ブルーム(例えば、幅及び厚みが200〜400mm程度)、ビレット(例えば、幅及び厚みが100〜200mm程度)、ビームブランク(H型鋼用に使用)等の鋳片をそれぞれ製造することが可能となる。
【0020】
また、前記実施の形態においては、平断面が矩形の開口部を備えた鋳型本体を有する連続鋳造用鋳型を使用した場合について説明したが、開口部の平断面の形状を、製造する鋳片の断面形状に対応させて、例えば多角形(例えば、凸角形、凹角形、6角形、8角形等)、円形、楕円形等とすることも可能である。
そして、前記実施の形態においては、鋳型本体の一方の内側対向面の上部の曲率半径R2を、従来の鋳型本体の銅板の内側対向面の曲率半径と同じとし、内側対向面の下部の曲率半径R3を、鋳片の線膨張量及び温度に対応させて曲率半径R2より小さくしている。このとき、鋳型本体の一方の内側対向面と鋳片表面との接触状態をより最適に行うため、鋳型本体の一方の内側対向面の上端部から下端部にかけて、鋳片の温度を所定間隔(例えば、10mm程度)毎に測定し、その温度と線膨張量を基に、内側対向面の曲率半径をそれぞれ設定することも可能である。
更に、前記実施の形態においては、湾曲した内側対向面の上下方向の曲率半径を、鋳片の線膨張量を基に変化させた場合について説明したが、鋳片の線膨張率や熱膨張係数を基に変化させることも可能である。
【0021】
【発明の効果】
請求項記載の収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型においては、鋳型本体の内側対向面の上下方向の曲率半径を、収縮する鋳片の収縮外形に対応した数値に設定できるので、鋳片が収縮しても、鋳片の表面と内側対向面との接触状態を最適にでき、鋳片を連続鋳造用鋳型から内側対向面の形状に沿って容易に引抜くことが可能となる。従って、従来、収縮した鋳片の形状が、内側対向面で形成される形状と異なることで、鋳型本体の内側に発生していた局部的な大きな磨耗の発生を防止できるので、鋳型本体の寿命を長くでき経済的である。また、鋳型本体の長辺の内側対向面と鋳片表面との接触状態を、鋳型本体の上端部から下端部にかけて均一にできるので、鋳型本体によって鋳片を均一に冷却することができ、安定した品質を備えた鋳片を製造できる。
特に、内側対向面の上端部から下端部にかけての各部分の曲率半径を、収縮する鋳片の収縮外形に対応した数値に設定できるので、鋳片が収縮しても、鋳片の表面と内側対向面との接触状態を最適に保つことが可能な連続鋳造用鋳型を容易に製造することが可能となる。従って、収縮に伴う鋳片の形状変化によって、内側対向面へ局部的に大きな力が加わる可能性を低減できる連続鋳造用鋳型を提供できるので、例えば磨耗や損傷等による連続鋳造用鋳型の交換頻度を低減できるため経済的である。
【0022】
請求項記載の収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型を用いた連続鋳造設備においては、鋳型本体の長辺の内側対向面の上下方向の曲率半径、更には鋳型本体の下流側に備えられた複数のガイドロールによって構成される対向する当接搬送面の曲率半径を、収縮する鋳片の収縮外形に対応した数値に設定できるので、鋳片が収縮しても、鋳片の表面と内側対向面、及び鋳片の表面と当接搬送面との接触状態を更に最適にでき、鋳片を連続鋳造用鋳型から内側対向面や複数のガイドロールの形状に沿って容易に引抜くことが可能となる。従って、収縮した鋳片の形状が、内側対向面及び当接搬送面で形成される形状と異なることで、鋳型本体の内側に発生していた局部的な大きな磨耗の発生を防止でき、またガイドロールから受けていた局部的な大きな力の発生も防止できるので、連続鋳造設備の操業を安定に行うことができ、作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型の鋳型本体の説明図である。
【図2】同連続鋳造用鋳型の鋳型本体を斜め上方から見た説明図である。
【図3】同連続鋳造用鋳型で凝固させた鋳片の温度に対する線膨張の説明図である。
【図4】同連続鋳造用鋳型を用いた連続鋳造設備の説明図である。
【図5】従来例に係る連続鋳造用鋳型の平面図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係る連続鋳造用鋳型に使用した短辺の内側から見た側面図、(A)のA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
10:連続鋳造用鋳型、11:鋳片、12:連続鋳造設備、13:銅板、14:銅板、15:鋳型本体、16:内側対向面、17:内側対向面、18:タンディッシュ、19:ガイドロール、20:冷却装置、21:ロール、22:引抜矯正装置、23:鋳片

Claims (2)

  1. 溶鋼を冷却し、該溶鋼から湾曲状態で凝固させた鋳片を製造する連続鋳造設備に用いる連続鋳造用鋳型において、
    鋳型本体の内周長は、前記鋳片の体積収縮により決定され、該鋳型本体の上端部の内周長より下端部の内周長の方が短くなって、更に該鋳型本体の長辺の内側対向面が上端部から下端部にかけて湾曲し、しかも、湾曲した前記内側対向面の上下方向の曲率半径を、該内側対向面の上端部から下端部にかけて、前記鋳片の線膨張量及び温度に対応させ、前記内側対向面の上部の曲率半径R 2 を100%とした場合に該内側対向面の下部の曲率半径R 3 を99〜97.5%の範囲に設定して、連続的又は断続的に徐々に小さくし、前記鋳片の表面と前記内側対向面との接触状態を均一にしたことを特徴とする収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型。
  2. 溶鋼を冷却し、該溶鋼から湾曲状態で凝固させた鋳片を製造する連続鋳造設備において、
    前記溶鋼を凝固させる鋳型本体の内周長は、前記鋳片の体積収縮により決定され、該鋳型本体の上端部の内周長より下端部の内周長の方が短くなって、該鋳型本体の長辺の内側対向面が上端部から下端部にかけて湾曲し、しかも、湾曲した前記内側対向面の上下方向の曲率半径を、該内側対向面の上端部から下端部にかけて、前記鋳片の線膨張量及び温度に対応させ、前記内側対向面の上部の曲率半径R 2 を100%とした場合に該内側対向面の下部の曲率半径R 3 を99〜97.5%の範囲に設定して、連続的又は断続的に徐々に小さくし、前記鋳片の表面と前記内側対向面との接触状態を均一にし、更に、前記鋳型本体の下流側には、前記内側対向面の曲率半径の減少に伴ってその対向する当接搬送面の曲率半径が徐々に減少する複数のガイドロールが備えられていることを特徴とする収縮による鋳片鋳造半径の変化を考慮した連続鋳造用鋳型を用いた連続鋳造設備。
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