<第1の実施形態>
[自動分析装置]
この実施形態の自動分析装置について各図を参照して説明する。この実施形態の自動分析装置は、分注された被検試料(以下「検体」という場合がある。)と試薬とを混合して反応させ、その反応液(混合液)を分析することにより、反応液の成分を測定する装置である。
自動分析装置10の構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、自動分析装置10の全体構成を示すブロック図である。
[自動分析装置の全体構成]
図1に示すように、自動分析装置10は、分析部24、分析制御部25と、データ処理部30と、異常データ検出部60と、分類処理部50と、システム制御部70と、操作部80と、出力部40と、保管部90とを有する。
分析部24は、試料及び試薬の各液体を含む混合液を生成し、混合液の成分を測定する。分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを制御する。
データ処理部30は、分析部24から出力された混合液の成分の測定結果を受けて、混合液中の特定物質の濃度を算出処理し、分析データ、検量データ等を作成する。さらに、データ処理部30は、算出された濃度の時系列変化を示す反応曲線を含むグラフデータを作成する。濃度の時系列変化を示す反応曲線は一般に反応タイムコースと呼ばれる。
濃度の算出処理は、検量線に基づいて行われる。検量線は濃度既知の標準試料を測定し、キャリブレーションデータ(標準データ)を取得することによって作成される。また、濃度の算出処理は、検量線と精度管理データに基づいても行うことができる。精度コントロールデータ(精度管理データ)は、濃度と測定変動幅が既知の精度コントロール試料を測定することによって取得される。
異常データ検出部60は、検体測定の測定結果を解析することで異常データを検出する。異常データの検出は、検体測定の最終的な測定値について行われ、この値が正常であるか否かを判定することで行われる。例えば、検体測定の最終的な測定値の閾値が設定されている場合は、当該測定値が所定の閾値よりも大きい場合または小さい場合に異常データと判定する。または検体測定の最終的な測定値の範囲が設定されている場合は、当該範囲外である場合に異常データと判定する。
異常データ検出部60は、所定の時間間隔における検体の測定データから検体の測定データの変化率の値または変化量の値を算出する。異常データ検出部60は、予め設定された検体の測定データの変化率または変化量の上限値および下限値と、算出して得られた変化率の値または変化量の値とを比較して、測定に異常があるか否かを判定し検出する。
分析部24は、1つの検体に対して、複数の項目の測定を行う。異常データ検出部60は、異常データの検出を、例えば、項目の測定ごとに行う。
分類処理部50は、異常データ検出部60から出力された異常データの情報を受けて、この異常の種別に応じて、その検体測定の測定結果に基づき作成されたグラフデータを分類(以下、グループ化ともいう)する。
また、グループ化は、グラフデータを作成する前においてなされてもよく、その場合、グラフデータに対応する検体測定の測定結果がグループ化される。
異常の種別とは、異常が判定されたときの項目、異常の要因の種別等である。異常の要因が検体由来の場合には、異常の原因物質の種類などが挙げられる。また、検体が複数の種別の異常データを有する場合には、異常データの種別の組み合わせ等によってグループ化されるグラフデータを決定してもよい。
システム制御部70は、分析制御部25と、データ処理部30と、異常データ検出部60と、分類処理部50と、出力部40とを統括して制御する。操作部80は、システム制御部70に対して各種コマンド信号の入力操作等を行う。
出力部40は、データ処理部30、分類処理部50、異常データ検出部60、操作部80等から受けた情報を、システム制御部70の制御に基づいて印刷出力、表示出力及びネットワーク等を介して外部に出力する。この外部出力は、例えば、印刷部41及び表示部42を用いる。
出力部40が受ける情報としては、例えば、データ処理部30で生成された各種データ、反応曲線等が挙げられる。また、出力部40が受ける情報としては、例えば、異常データ検出部60で検出された異常データの情報が挙げられる。また、出力部40が受ける情報としては、例えば、分類処理部50でグループ化されたグラフデータ等が挙げられる。また、出力部40が受ける情報としては、操作部80から入力された操作入力の情報が挙げられる。
操作部80は、例えば、マウス、キーボード等の独立した操作入力機能を有するものが挙げられる。また、操作部80は、表示部42と組み合わされたものであってもよい。これは、例えば、タッチパネル等の操作入力機能と表示機能とが組み合わされたものである。操作部80は、例えば、直接入力されたものを、自動分析装置10への命令としてシステム制御部70に入力する。また、例えば、表示部42に表示されたボタン等のオブジェクトをマウス等によって選択する。これにより、この操作に対応する命令が、自動分析装置10への命令としてシステム制御部70に入力される。
保管部90は、データ処理部30、分類処理部50、異常データ検出部60、操作部80等から受けた情報を保管する。また、保管部90は、システム制御部70の制御に基づいて保管された情報を各部に出力する。
分析部24は、試料と試薬との反応液を吸光測定して、測定データを出力する。測定データとしては、例えば、被検データが挙げられる。また、測定データとしては、被検データの他に、キャリブレーションデータ、精度コントロールデータ、試料ブランクデータ、試薬ブランクデータ等の予備測定データが挙げられる。
上記の吸光測定において試料を患者の血液等とすることで被検データが得られる。キャリブレーションデータは、上記の吸光測定において試料を濃度が既知である標準試料とした測定データである。
上述したように濃度が既知の試料に対する吸光度を測定することでキャリブレーションデータが得られる。キャリブレーションデータは、当該試料における濃度に対する吸光度の対応関係を規定する。このデータに基づいて検体測定が行われることで、検体測定の測定確度が向上する。
上記の吸光測定において試料を濃度及び測定変動幅が既知である精度コントロール試料とすることで、精度コントロールデータが得られる。精度コントロールデータは、上述したように既知の濃度と測定変動幅の試料に対する吸光度を測定することで、当該試料における濃度に対する吸光度の測定変動を規定する。このデータに基づいて検体測定が行われることで、検体測定の測定精度が向上する。
上記の吸光測定において試薬を精製水又は生理食塩液とすることで試薬ブランクデータが得られる。試料ブランクデータは、上記の吸光測定において試料を精製水又は生理食塩液としたものである。これらのブランクデータは、例えば、被検データと差分を取ることで被検データの補正をするために用いられる。
また、この実施形態においては検体由来の異常データを検出する。異常データの検出は、例えば、後述する予備測定のデータと被検データとを比較し、検体測定の最終的な測定値が、所定の範囲外の値である場合に異常反応と判定することにより行われる。また、例えば、検体測定の最終的な測定値と、予備測定の最終的な測定値との差が、所定の閾値以上である場合に異常反応と判定することにより行われる。
[分析部の構成]
図2は、分析部24の構成の詳細及び分析部24の入出力を示す図である。図2を参照して分析部24の構成を詳細に説明する。
分析部24は分析制御部25によって制御される。分析制御部25は、機構部26と、制御部27とを有する。
機構部26は、モータやギア等を含み構成され、駆動力を発生して分析部24の各ユニットに伝達させることで、分析部24の各ユニットを駆動させる。
制御部27は、機構部26に指示することで、分析部24が有する各ユニットの駆動を制御する。各ユニットは、第1試薬庫2、第2試薬庫3、反応庫5、ディスクサンプラ6、及び、アーム14(試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、第2試薬分注プローブ9の各アーム)を含む。
検体は、試料容器61に収納されている。試料容器61は、回転可能な円形状のディスクサンプラ6に載置される。試薬は、試薬容器4に収容されている。試薬容器4は、第1試薬庫2及び第2試薬庫3に載置される。試薬容器4には、検体の項目に対し選択的に反応する各種の第1試薬又は第1試薬と対の各種の第2試薬が収納される。第1試薬が収容された試薬容器4は、第1試薬庫2に載置され、第2試薬が収納された試薬容器4は、第2試薬庫3に載置される。第1試薬庫2及び第2試薬庫3には、回動可能な円形状の試薬ラック1が収納されている。各試薬容器4は、この試薬ラック1に環状に並んで収納されている。
検体及び試薬が分注される反応容器51は、反応庫5に載置される。反応容器51は、回動可能な円形状のカセット部材(図示省略)に環状に並んで載置される。
検体及び試薬の分注は、試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、及び、第2試薬分注プローブ9により行われる。
試料分注プローブ7は、ディスクサンプラ6の回動によって規定の吸引位置に搬送された試料容器61から検体を吸引し、規定の吐出位置に搬送された反応容器51に検体を吐出する。
第1試薬分注プローブ8は、第1試薬庫2の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第1試薬を吸引し、規定の吐出位置に搬送された反応容器51に第1試薬を吐出する。
第2試薬分注プローブ9は、第2試薬庫3の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第2試薬を吸引し、規定の吐出位置に搬送された反応容器51に第2試薬を吐出する。
反応庫5の外周には、更に攪拌ユニット11、測光ユニット12、及び、洗浄ユニット13が設けられている。
検体及び試薬が分注された反応容器51は、カセット部材(図示省略)の回動により順に攪拌ユニット11、測光ユニット12、及び、洗浄ユニット13の攪拌、測定、及び洗浄位置に搬送される。
攪拌ユニット11は、1サイクル毎に、攪拌位置に停止した反応容器51内における検体及び試薬(第1試薬、第2試薬)の反応液を攪拌する攪拌部である。
洗浄ユニット13は、洗浄・乾燥位置に停止した反応容器51内の測定を終えた反応液を吸引すると共に、反応容器51内を洗浄・乾燥する。
測光ユニット12は、反応液を測光位置から測定する測定部である。測光ユニット12は、反応液の吸光度を測定した後、その測定データをデータ処理部30に出力する。データ処理部30は、吸光度から検量線に基づいて反応液の濃度を求める。それにより、反応液の成分を測定することが可能となる。
この実施形態では、反応タイムコース(反応過程)を示すグラフの一覧表示を特徴としている。反応タイムコースは、反応の時系列変化を表す。以下、反応タイムコースを示すグラフの一覧表示について説明する。
反応タイムコースを示すグラフは、例えば、表示部42に表示される。反応タイムコースを示すグラフは、反応タイムコースのグラフデータに基づいて表示される。
反応タイムコースのグラフデータは、分析部24から出力された測定データに基づいて、グラフ作成部32で作成される。
このグラフデータは、グラフ分類部54によって所定の条件に基づいてグループ化される。グループ化されたグラフデータは、表示部42等に出力される。これにより、表示部42に、反応タイムコースを示すグラフが一覧表示される。
このとき、反応タイムコースのグラフデータは、複数の測定データに基づいて作成された複数の反応タイムコースを含んでいてもよい。
[自動分析装置の詳細構成]
図3は、自動分析装置10の全体構成の詳細を示すブロック図である。この実施形態の自動分析装置10は、異常データ検出部60で検出された異常の種別に応じて、反応タイムコースのグラフデータをグループ化して表示部42に出力する。
データ処理部30は、演算部31と、グラフ作成部32と、データ記憶部33とを有する。
演算部31は、分析部24の測光ユニット12から出力された標準データや被検データを処理して各項目の検量データや分析データを生成する。これらのデータは、液中の特定物質の濃度を算出処理することで生成される。
グラフ作成部32は、演算部31で生成された標準データや分析データから、少なくとも1つの反応曲線のデータを含むグラフデータを作成する。グラフデータは、分析部24による測定結果に基づいて作成される。
グラフデータは、例えば、反応タイムコースのグラフデータである。グラフデータは、少なくとも1つの測定に対応する1つの反応タイムコースのグラフデータを含んでいる。グラフデータは、複数の測定に対応する複数の反応タイムコースのグラフデータを含んでもよい。反応タイムコースを示すグラフは、検体測定の反応過程を示すグラフの他に、上述した予備測定の反応過程を示すグラフが挙げられる。
また、グラフデータは、複数種類のグラフデータを含むグラフデータであってもよい。つまり、グラフデータは、測定された吸光度の値と何らかの関係性を表すものであれば、どのようなグラフデータであってもよい。
反応曲線としては、例えば、被検データに基づく反応タイムコースを示す被検曲線、キャリブレーション測定における反応タイムコースを示す標準曲線、精度コントロール測定における反応タイムコースを示す精度コントロール曲線、試薬ブランク測定データの反応タイムコースを示す試薬ブランク曲線、試料ブランク測定データの反応タイムコースを示す試料ブランク曲線等が挙げられる。これらのうち、標準曲線、精度コントロール曲線、試薬ブランク曲線及び試料ブランク曲線は予備測定曲線と呼ばれる。
作成されるグラフには、反応曲線として少なくとも被検曲線が示される。また、このグラフには、被検曲線に加えてキャリブレーション曲線、精度コントロール曲線、試薬ブランク曲線、試料ブランク測定のうち少なくとも1つが被検曲線と比較可能なように示されていてもよい。検体は通常、複数の項目で分析されるので、このグラフは、例えば、項目ごとに複数作成される。
データ記憶部33は、演算部31で生成された標準データや分析データ、グラフ作成部32で作成されたグラフデータを保存する。
分類処理部50は、検索部52と、分類条件記憶部53と、グラフ分類部54と、分類グラフ記憶部55とを有する。
グラフ分類部54は、異常の種別に応じて、データ記憶部33から複数のグラフデータを呼び出して所定の条件でグループ化をする。異常の種別に対応するグループ化の条件である分類条件は、例えば、分類条件記憶部53に保管されており、グラフ分類部54は、この分類条件に基づいてグラフデータのグループ化を行う。
このグループ化は、例えば、検体に基づいて行われる。これは、例えば、同一の患者の測定結果に基づいて作成された複数のグラフデータをグループ化する。つまり、所定時間内において測定された、同一患者の測定結果に基づいて作成された複数のグラフデータをグループ化する。また、1回の測定においてされた、同一患者の複数の項目の測定結果に基づいて作成された複数のグラフデータをグループ化することもできる。
また、グラフ分類部54は、グラフ作成部32で作成が完了していないグラフデータを呼び出すことができる。つまり、このグラフデータは、吸光度の測定が最後まで完了していない測定データに基づいて作成された、作成途上のグラフデータである。また、このグラフデータは、例えば、検体測定の反応タイムコースのグラフデータである。
このように、作成途中のグラフデータを呼び出すことでリアルタイムに検体の反応タイムコースを示すグラフを参照することができる。これにより、例えば、表示部42に表示されたグラフから異常を検知した時点で、異常に該当する検体の測定を中止することができる。
グループ化されたグラフデータは、例えば、表示部42に出力される際に、どのように表示するかを示す情報を含んでいてもよい。この情報としては、例えば、後述する表示条件が挙げられる。
また、グループ化されたグラフデータは、出力部40にそのまま出力されてもよいし、分類グラフ記憶部55に記憶されてもよい。
分類条件記憶部53には、分類条件が予め記憶されている。分類条件は、異常の種別とグループ化されるグラフデータとの対応情報である。異常の種別とは、例えば、測定異常を引き起こした要因の種別をいう。分類条件は、例えば、異常の種別と分類種別との対応情報を含む。また、分類条件は、異常の種別と表示の種別との対応情報である表示条件を含んでいてもよい。
分類種別とは、例えば、グループ化の種別である。グループ化の種別は、前述したように、例えば、項目が挙げられる。検体の測定は、複数の項目において行われる場合がある。つまり、同一検体における複数項目の測定結果に基づいて作成された、複数の反応タイムコースのグラフデータがグループ化される。また、表示条件により、例えば、表示部42に表示される表示態様が規定される。この表示態様は、例えば、並べて表示する、重ねあわせて表示する等が挙げられる。
分類条件は、対応情報、表示条件を任意に選んで設定することができ、さらに、これらを組み合わせて設定することもできる。
分類条件は、任意に設定することができる。グラフデータのグループ化は、分類条件記憶部53に予め記憶された分類条件に基づいて行われるが、操作部80から入力された分類条件に基づいて行われてもよい。
異常の種別の判定は、例えば、異常データ検出部60で自動的に行われる。異常データ検出部60は、異常反応と判定すると、異常反応のデータをグラフ分類部54に送信する。
異常反応のデータは、被検者情報(患者ID)、異常反応が判定された検体測定の全項目に亘る測定生データ、エラー情報等が含まれる。また、異常の種別の判定を、例えば、操作者が行ってもよい。この場合、操作者が異常反応の判定結果を操作部80から入力すると、異常データ検出部60が前記と同様な情報を自動的にグラフ分類部54に出力する。
グラフ分類部54においてグループ化される反応タイムコースのグラフデータは、例えば、異常が検出された測定に関連する測定に基づいて作成された反応タイムコースのグラフデータである。つまり、グループ化される反応タイムコースのグラフデータは、グラフ分類部54に異常の検出の入力があった測定に関連する測定のグラフデータである。
検体測定に関連する測定とは、例えば、当該検体測定と検体が同じ又は関連する測定である。同じ検体とは、例えば、同じ試料容器から分注された検体をいう。関連する検体とは、例えば、同じ被検者から採取された検体をいう。
異常の検出の入力があった測定に関連する測定は、例えば、検体測定においてなされる複数の項目の測定のうち、1つの項目で異常の検出があった場合に、その検体測定においてなされた全ての項目の測定をいう。
グラフ分類部54は、検体測定において1つの項目で異常の検出がされると、その検体測定においてなされた全ての項目に対応する反応タイムコースのグラフデータをグループ化する。
表示条件は、例えば、グラフを並べて表示するときの条件、グラフを重ねあわせて表示するときの条件を含む。グラフを並べて表示するときの条件は、例えば、並べて表示されるグラフの順番、表示されるグラフの大きさ等の条件が挙げられる。
表示されるグラフの順番は、例えば、測定された日時時刻が古い順、項目番号が小さい順等によって、右から左、上から下に表示される。
グラフを重ねあわせて表示するときの条件は、重ねあわせるグラフの組み合わせ等が挙げられる。
重ねあわせるグラフの組み合わせとして、例えば、検体測定と、その検体測定に関連する測定との組み合わせが挙げられる。検体測定のグラフは、被検データに基づいて作成された反応タイムコースのグラフデータに基づいて表示される。
また、検体測定に関連する測定のグラフは、各種予備測定データに基づいて作成された反応タイムコースのグラフデータから任意のものを選ぶことができる。重ねあわせるグラフの組み合わせは、例えば、操作部80からの入力によって表示部42にグラフが表示された後にも変更できる。
表示部42に表示される反応タイムコースを示すグラフは、例えば、項目番号の小さい順に、左から右、上から下に並べて表示がされる。
また、このグラフのそれぞれには、被検データに基づいて作成された反応タイムコースを示す曲線101に加えて、この測定に対応する予備測定データに基づいて作成された反応タイムコースを示す曲線102〜104が重ね合わされて表示される。予備測定の反応タイムコースを示す曲線102はキャリブレーション測定、曲線103は試薬ブランク測定、曲線104は試料ブランク測定を示す。
前記した演算処理は測定の全項目に亘ってそれぞれ行われる。演算結果に基づいて、検体測定の反応タイムコースと、標準試料測定の反応タイムコースと、試薬ブランク測定の反応タイムコースとを含むグラフデータが、全項目に亘ってそれぞれ作成される。このグラフデータが、表示部42に出力されることで表示部42に複数のグラフが並べて表示される。
検索部52は、グラフ分類部54からの指示を受けてデータ記憶部33及び/又は分類グラフ記憶部55から複数の反応タイムコースのグラフデータを取得する。さらに、取得した複数のグラフデータをグラフ分類部54に出力する。複数の反応タイムコースのグラフデータは、グラフ分類部54においてグループ化されている。
分類グラフ記憶部55は、上記のようにしてグループ化された反応タイムコースのグラフデータであるグループデータを保管する。このグループデータは、例えば、検体測定に先立って行われた各種の予備測定を項目ごとに、この検体測定に対応するようにグループ化することにより作成される。
前記の処理に基づいて、各種の予備測定の反応タイムコースのグラフデータを、分類条件ごとに予めグループ化し、例えば、保管部90に保管しておく。これにより、検体測定時に予備測定の情報を参照したい場合に、表示部42に素早く表示することができる。これは、例えば、表示部42に被検データに基づいて作成がされている反応タイムコースを示すグラフをリアルタイムに表示する場合には、予備測定データに基づいて作成がされた反応タイムコースを示すグラフを素早く呼び出すことができる。
これにより、例えば、検体測定中に、検体測定に対応するグラフデータと、予備測定に対応するグラフデータとを素早く呼び出し、これらを重ね合わせて表示することができる。
表示部42は、反応タイムコース等を示すグラフを一覧表示する他に、システム制御部70に各部を制御させるための操作ボタンも表示されている。また、反応タイムコース等を示すグラフを選択することによって、そのグラフに対応する項目を選択することが可能である。
操作ボタンとしては、例えば、選択された項目の再検査を指示する再検ボタン、選択された項目におけるエラーデータの外部出力を指示するエクスポートボタン、選択された項目におけるエラーデータのレポートの作成を指示するレポートボタン等が挙げられる。
[自動分析装置の動作]
次に、この実施形態の自動分析装置10の動作について、図4〜8を参照して説明する。この実施形態においては、検出された異常が検体由来の物質が原因であると判断される場合について説明する。
図4は、検出された異常が検体由来の物質が原因であると判断される場合に、反応タイムコースを示すグラフを一覧表示する処理の一例を示すフローチャートである。この処理においては、図1〜3及び図5〜8を適宜参照する。
図4に示すように、分類処理部50は、反応タイムコースのグラフデータをグループ化して、これを表示部42に表示する。具体的には、検体測定の終了後において、異常反応の検出信号が分類処理部50に入力されることに応じて、反応タイムコースのグラフデータのグループ化が行われ、これが表示部42に出力される。検体測定の前には、予め予備測定が行われる。1回の検体測定、1回の予備測定において、複数の項目について行われる。
まず、分析部24において予備測定が全項目に亘って行われ、測定結果がデータ処理部30に送信される。グラフ作成部32は、受信した予備測定の測定結果を処理して反応タイムコースのグラフデータを作成する(ステップS001)。
この測定において行われた全項目の測定の測定結果に基づいて、この反応タイムコースのグラフデータがそれぞれ作成され、データ記憶部33に記憶される。予備測定において、前述したもののうち、試薬ブランク測定及び標準試料測定が選ばれる。
次に、分析部24において検体測定が全項目に亘って行われ、測定結果がデータ処理部30に出力される。グラフ作成部32は、受信した検体測定の測定結果を処理して反応タイムコースのグラフデータを作成する(ステップS002)。
この反応タイムコースを示すグラフデータは、全項目に亘って作成され、データ記憶部33に記憶される。この検体測定中に、異常データ検出部60において異常反応の検出が行われる。異常反応検出は、例えば、測定値がその項目について予め設定された値の範囲内にあるかを判定することによって行われる。
検体測定が終了すると、システム制御部70は、表示部42に分析結果の一覧を表示する(ステップS003)。表示される分析結果は、データ処理部30で生成された分析結果と、この分析結果に基づいて異常データ検出部60において異常反応であると判定された分析結果とを含む。
図5は、分析結果の一覧表34の一例を示す表である。図5に示すように、この一覧表34には患者IDに対応して、依頼時間、測定時間、項目A〜D、項目A〜Dにおけるエラーの有無が示されている。ここで、患者IDは測定される検体がどの患者のものであるかを示している。依頼時間は、この測定が依頼された時間であり、測定時間は、測定を開始した時間である。項目A〜Dは、1回の測定においてなされた複数の項目の測定を示している。
この分析結果の一覧表を34参照すると、患者ID「12348」の項目Cの測定結果がエラーとなったことを示すエラー番号「A01」が表示されている。エラー番号は、エラーの種別に応じて番号、記号が付与されたものである。
システム制御部70は、表示部42に表示された一覧表34において、エラーが検出された検体の列を構成するセル34Aを強調表示する(ステップS004)。
この強調表示は、例えば、患者ID「12348」の列を構成するセルに着色等がなされることによって行われる。これにより、操作者は、患者ID「12348」の検体の測定結果がエラーとなったことを確認することができる。エラー番号「A01」のエラーは、第1反応において検体測定の吸光度の最終的な値が所定の範囲外の場合に出力される。
次に、システム制御部70は、表示部42に所定の条件でクループ化された患者ID「12348」に対応する検体測定のグラフの一覧を表示する(ステップS005〜S007)。
図6は、反応タイムコースを示すグラフの一覧を示す。この図は、エラーが検出された検体における全項目の測定結果を取得し、これらをグラフの一覧として示したものである。図6に示すように、表示部42には、患者ID「12348」の項目毎に作成されたグラフが複数表示されている。
表示部42には複数のグラフ33A〜33Fが項目A〜Fの順に、左から右、上から下に所定間隔をおいて配列されて表示されている。また、各グラフの近傍には、そのグラフを選択するためのチェックボックス35A〜35Fが表示されている。
また、グラフの一覧43には、必要に応じて、分析部24、データ処理部30等に指示をするためのボタンを備えている。このボタンは、例えば、選択された項目の再検査指示をするための再検ボタン36A、レポート作成画面に移動するレポートボタン36B、選択された項目における測定結果を外部出力するエクスポートボタン36C、図5に示した分析結果の一覧表を表示する結果一覧ボタン36D、グラフの一覧に表示する表示グループを変更する表示グループボタン36E等が挙げられる。
チェックボックスにチェックを入れて、所望の項目を少なくとも選択した後に、所望のボタンを押すことによって、所望の項目において所望の動作をさせることができる。例えば、エラーの検出がされた項目Cに対応するチェックボックス35Cにチェックを入力して再検ボタン36Aを押すことによって、項目Cについて再検オーダーがなされる。
例えば、項目Cについて自動的にエラーが検出され、再検が自動的にオーダーされている場合には、再検ボタン36Aによる項目Cに対する再検のオーダーがあっても、そのオーダーを自動的にキャンセルすることができる。この場合、例えば、チェックボックス35Cにチェックが入力できないようにすることもできる。
表示部42に表示される複数のグラフは、所定の条件でグループ化されたものである。グループ化はグラフ分類部54において行われる。グラフ分類部54はエラーの検出信号を受ける(ステップS005)と、エラーの種別に対応付けられた条件で各項目において作成されたグラフをグループ化する(ステップS006)。グループ化は、分類条件記憶部53に記憶された分類条件に基づいて行われる。
検出された異常について検体由来の物質が原因であると判断される場合、例えば、その検体の測定結果における全項目の反応タイムコースのグラフデータは、上記分類条件によりグループ化される。
この場合、検出された異常は第1反応において検体測定の吸光度が所定の閾値よりも高いことを意味するので、項目A〜Fにおける各反応タイムコースのグラフデータがグループ化され、表示部42に一覧表示される。グラフのグループは、操作者により任意に変更可能である。また、時間や項目などのサブグループも設定することができる。
反応タイムコースを示すグラフは、縦軸が吸光度の絶対値、横軸が時間である。また、このグラフ中の時間T=0は、図5に示した測定時間に対応する。このことは以下においても同様である。システム制御部70は、被検データに対応する反応タイムコース(吸光度の時系列変化)を示す曲線101を少なくとも有するグラフを表示部42に表示する(ステップS007)。
さらに、このグラフには、予備測定データに対応する反応タイムコースを示す曲線102が重ねて表示されている。曲線102〜104は、予備測定データに対応する反応タイムコースを示す。曲線102は試薬ブランクデータに対応する。曲線103はキャリブレーションデータに対応する。曲線104は精度コントロールデータに対応する。
被検データに対応する反応タイムコースを示す曲線101に、予備測定の反応タイムコースを示す曲線102〜104を重ねて表示することによって、両者の比較を簡易に行うことができる。これにより、異常反応の判断を簡易かつ素早く行うことができる。
グラフ中に表示される曲線の組み合わせは予め設定されているが、グラフの表示中においても、操作者による操作入力等によって、その組み合わせは任意に変更が可能となっている。これにより、例えば、操作者の操作によって、曲線が全選択されたり、個別選択等されたりする。
また、表示部42には、さらに各項目の結果詳細画面へのリンク37が表示されている。このリンク37は、例えば、各項目に対応するグラフに直接関連付けられていてもよいし、当該グラフの近傍に独立して表示されていてもよい。操作者がこのリンク37を選択することによって、各項目における測定結果の詳細を知ることができる。
操作者は、表示部42に表示された項目A〜Fのグラフ43A〜43Fを参照する。そうすると、項目Aの第1反応の吸光度の初期値が高いことから、操作者は項目Aの検体測定において異常反応が疑われると判断する。操作者がその判断に基づいて項目Aのグラフをマウス等でクリックして選択する(ステップS008)と、図7に示すような、検体測定の測定結果の詳細画面44が表示される。
測定結果の詳細画面44には、反応タイムコースを示すグラフ45の他に、検量線を示す線が表示されたグラフ46、並びに検体測定及び予備測定の詳細情報47が表示される。また、詳細画面44には、調整ボタン38A、エクスポートボタン38B、レポートボタン38C、検量線ボタン38D等の各種ボタンが表示されている。
調整ボタン38Aは詳細画面44における表示項目の調整を行う場合に使用するボタンである。エクスポートボタン38Bは、測定結果の詳細を外部に出力する場合に使用するボタンである。レポートボタン38Cは、測定結果の詳細に基づいてレポートを作成する場合に使用するボタンである。検量線ボタン38Dは、検量線を示す線が表示されたグラフ46の表示設定等を変更する場合に使用するボタンである。
測定の詳細情報47は、測定の生データとも呼ばれる。詳細画面44においては、反応が終了していない測定中の検体についてもリアルタイム表示することができる。
操作者は、グラフの一覧43、詳細画面44等において測定異常と判断した項目Aに対応するチェックボックス35Aにチェックを入力して再検ボタン36Aを押す(ステップS009)。これにより、検体測定の項目Aの再検査がオーダーされる。
また、グラフの一覧43が表示部42に表示されている場合に、操作者は、所望の項目を選択してレポートボタン36Bを押す。そうすると、表示部42に図8に示すようなレポート作成画面48が表示される。
レポート作成画面48は、項目ごとにレポートが作成できるように構成されている。レポート作成画面48は、詳細画面44で表示された情報の他、検査技師等の操作者がメモを残せるようなコメント欄49を備えている。レポート作成画面48において作成されたレポート71は、例えば、図9に示すような反応タイムコースを示すグラフ62と、測定の生データの一部を示す表63と、操作者によるコメント64とが表示される。レポート71は、外部出力、印刷等が可能である。
図4に示したフローチャートに示す処理は、検体測定終了前においても行うことができる。これにより、操作者は、検体測定の終了前でも異常反応を確認することができる。その結果、測定中に異常反応であると判断できるタイミングで再検オーダー等が可能となる。
[自動分析装置の作用・効果]
この実施形態の自動分析装置10は、検出されたエラーに基づいて、このエラーに対応する被検データを所定の条件でグループ化して、表示部に出力する。具体的には、分類処理部50が、異常データ検出部60等から送信されたエラー信号を受けて、このエラー信号に対応する被検データを所定の条件でグループ化する。分類処理部50は、このグループ化された各被検データを一覧として表示部42に表示させる。表示部42に表示される被検データは、例えば、検体測定の反応タイムコースを示す曲線を有するグラフである。
従来の自動分析装置においては、検体測定の吸光度の最終的な値が所定の閾値よりも高い場合に、吸光度値の異常によるエラーが出力されていた。すなわち、検体測定の吸光度の最終的な値が異常でなければ正常反応であると判断していた。つまり、反応の過程が異常である異常反応の発生が見過ごされるおそれがあった。
検体測定において検体由来のエラーが検出されると、この見過ごしを回避するために、操作者(検査技師等)は、エラーとなった項目だけでなく、全ての項目について別個の画面を開いて確認することがあった。しかしながら、これは、非常に手間のかかる作業となっていた。
一方で、この実施形態の自動分析装置10は、検体測定において検体由来のエラーが検出されると、エラーが検出された項目を含む全項目の検体測定及び予備測定の反応タイムコースを重ねあわせて示したグラフを一覧表示する。
これにより、検体測定において検体由来のエラーが検出された場合に、エラーが検出された項目を含む複数の項目の反応タイムコースを一度に確認することができる。その結果、操作者は、エラーと判定された項目以外においても、異常反応が疑われる項目がないか、再検の必要な項目はないかを確認することができる。
また、従来の自動分析装置においては、異常が検出された場合、操作者は手動で該当する項目の検体測定、予備測定等の測定データの生データを含むエラーデータを保存する。測定データの生データは表示部42に表示された画像のハードコピー(スクリーンショット等)等によって保存されることが多く、複数の項目に亘って行うのは手間であった。
一方で、この実施形態の自動分析装置10は、表示部42に、エラーが検出された項目を含む全項目の検体測定及び予備測定の反応タイムコースを重ねあわせて示したグラフを一覧表示する。さらに、一覧表示されたグラフが選択可能となっている。これにより、操作者はグラフを選択して、表示部42に表示されたボタンを押すことで、再検オーダー、データ出力、レポートの作成等をすることができる。
その結果、同じ検体の測定において、再検の判断を素早くできるとともに、再検オーダーも素早くすることができる。また、複数の項目の再検オーダーを1画面において同時に行うことができる。さらに、所望の項目のエラーデータの保存、レポートの作成、印刷を簡易に行うことができる。加えて、複数の項目のエラーデータの保存、レポートの作成、印刷を1画面において同時にすることができる。
上述したように、この実施形態の自動分析装置10によれば、任意のグループで反応タイムコースを示すグラフを表示部42に一覧表示するようにしたので、測定結果のデータの確認、レポートの作成・保存を簡単に素早く行うことができる。また、反応タイムコースを示すグラフが一覧表示された画面において、再検オーダーを可能としたので、反応タイムコース等のデータを確認しながら再検のオーダーをすることができる。これにより、より的確な再検オーダーの手助けとなる。
<第2の実施形態>
[自動分析装置]
この実施形態の自動分析装置10の全体構成、詳細構成は第1の実施形態の自動分析装置10と同様である。
この実施形態の自動分析装置10は、異常データ検出部60等において検出された異常が装置起因である場合、異常の種別に応じて反応タイムコースのグラフデータをグループ化して表示部42に一覧表示する。
異常データ検出部60は、例えば、検体測定の測定結果を解析することで異常データを検出する。異常データの検出は、例えば、吸光度測定時に吸光度の値が異常に上昇、減少する場合に行われる。異常データ検出部60は異常データを検出した反応容器51を指定する。これは、吸光度の増加率、減少率が所定の範囲内にない場合、又は所定の閾値を超えた場合等が挙げられる。
また、異常データ検出部60は、所定期間における異常データの発生の統計をとって、異常データの原因が疑われる装置を異常装置として指定することもできる。異常装置は、例えば、反応容器51、分注プローブ等に適用することができる。
また、異常データ検出部60は、所定期間における異常データの発生の統計をとる。この統計の所定の時刻において異常データが集中する場合には、この時刻を、異常データの原因が疑われる異常時刻として指定することもできる。
分類処理部50は、異常データ検出部60から出力された装置の情報を受けて、その装置を使用してなされた測定に基づいて作成されたグラフデータを分類する。装置は、例えば、反応容器51、分注に使用した各プローブ等が挙げられる。
また、分類処理部50は、異常データ検出部60から出力された時刻の情報を受けて、その時刻に行われた測定に基づいて作成された反応タイムコースのグラフデータをグループ化する。
分類処理部50において、グループ化された反応タイムコースのグラフデータは、表示部42に出力されることで、表示部42において、図6に示したものと同様に並べて表示される。
反応容器に基づいてグループ化される場合には、例えば、測定開始時間順に並べられて表示される。この場合、図6に示したグラフの「項目」の部分には「測定開始時間」等が表示される。また、開始時間に基づいてグループ化される場合には、例えば、検体の患者ID順に並べられて表示される。この場合、図6に示したグラフの「項目」の部分には「患者ID」等が表示される。
分類条件記憶部53は、分類条件が予め記憶されている。例えば、反応容器51の種別、設置位置等に応じて、検体測定及び予備測定の測定データを併せて出力する処理、検体測定の測定データを出力する処理のいずれかが対応付けられる。また、例えば、異常が検出された時刻に応じて、検体測定及び予備測定の測定データを併せて出力する処理、検体測定の測定データを出力する処理のいずれかが対応付けられる。
分類種別とは、例えば、グループ化の種別である。グループ化の種別は、例えば、項目ごと、測定の開始時間ごと、反応容器51ごと、使用した分注プローブごと等が挙げられる。グループ化は、例えば、分類種別が同じものについて行われる。
この分類種別は、分類処理部50において自動的に決定されてもよいし、図10に示すような、複数のグループを操作者が任意に設定するようにしてもよい。また、任意に設定した複数のグループを分類条件記憶部53、保管部90等に保管しておいてもよい。
図10は、グループの設定画面56を示す図である。図10に示すように、この設定画面56によって、患者ID、項目、時間又は反応容器のいずれかが設定され、これに基づいてグループ分けが行われる。
また、操作者は、グループ5〜グループ16について、任意に条件を設定することができる。ここで、時間とは、例えば、測定開始時間をいう。
[自動分析装置の動作]
次に、この実施形態の自動分析装置10の動作について、図9〜図12を参照して説明する。この実施形態においては、検出された異常が装置起因であると判断される場合について説明する。
図11は、検出された異常が装置起因であると判断される場合に、反応タイムコースを示すグラフを表示部42に一覧表示する処理の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、検体測定の終了後において、異常として指定された反応容器51の情報が分類処理部50に入力される。これをトリガーとして反応タイムコースのグラフデータのグループ化が行われ、表示部42への表示が行われる。
まず、分析部24において予備測定が全項目に亘って行われ、測定結果がデータ処理部30に送信される。グラフ作成部32は、受信した予備測定の測定結果を処理して反応タイムコースのグラフデータを作成する(ステップS011)。
この測定において行われた全項目の測定の測定結果に基づいて、この反応タイムコースのグラフデータがそれぞれ作成され、データ記憶部33に記憶される。予備測定は、前述したもののうち、試薬ブランク測定及び標準試料測定が行われる。
次に、分析部24において検体測定が全項目に亘って行われ、測定結果がデータ処理部30に出力される。グラフ作成部32は、受信した検体測定の測定結果を処理して反応タイムコースのグラフデータを作成する(ステップS012)。
この反応タイムコースを示すグラフデータは、全項目に亘って作成され、データ記憶部33に記憶される。この検体測定中に、異常データ検出部60において異常反応の検出が行われる。この異常データの検出に基づいて異常が疑われる反応容器51が指定される。
反応容器51の指定は、例えば、反応容器51に付されたバーコードによって識別されることによって行われる。
異常が疑われる反応容器51の指定は、エラー信号としてグラフ分類部54に送信される。エラー信号を受けたグラフ分類部54は、指定された反応容器51に異常がある疑いありと判断し、指定された反応容器51で行われた測定の測定結果を所定の条件でグループ化する(ステップS013〜S015)。このグループ化は、例えば、現時点の測定から遡る過去20測定分の測定結果をグループ化する。
次に、グループ化した測定結果から、グラフ作成部32で反応タイムコースのグラフデータをそれぞれ作成し、作成された複数のグラフデータを表示部42に出力することで、反応タイムコースのグラフを表示部42に一覧表示する(ステップS016)。
図12は、反応タイムコースを示すグラフの一覧を示す。この図は、エラーが検出された検体が収容された反応容器51における過去の測定結果を複数取得し、グラフの一覧として示したものである。
図12に示すように、検体測定が終了すると、表示部42にはグラフの一覧74が表示される。グラフの一覧74には、複数のグラフ73A〜73Fが、左から右、上から下に千鳥格子状に配列されて表示される。また、各グラフの近傍には、そのグラフを選択するためのチェックボックス75A〜75Fが表示されている。
また、グラフの一覧74には、必要に応じて、分析部24、データ処理部30等に指示をするためのボタンを備えている。このボタンは、例えば、選択された項目の再検査指示をするための再検ボタン76A、レポート作成画面に移動するレポートボタン76B、選択された項目における測定結果を外部出力するエクスポートボタン76C、図6に示した分析結果の一覧表を表示する結果一覧ボタン76D、グラフの一覧に表示する表示グループを変更する表示グループボタン76E等が挙げられる。
グラフ73A〜73Fは、いずれも反応タイムコースを示すグラフを示している。夫々のグラフに示されている反応タイムコースの曲線は、同じ反応容器51を用いてされた測定結果に基づいて作成されている。
複数のグラフ73A〜73Fは、反応容器51の異常の有無を絞り込むために、他のパラメータを揃えてもよい。このパラメータは、例えば、検体、項目等である。つまり、グラフ73A〜73Fは、検体と項目とが同じグループの中で、同じ反応容器51を用いて測定された測定結果に基づいて作成されたものであってもよい。
複数のグラフ73A〜73Fは、グラフ73Aが一番古い測定データ、グラフ73Fが一番新しい測定データとして時系列で並べられている。つまり、複数のグラフ73A〜73Fは、反応容器51の異常が検出された測定結果に基づいて作成されたグラフ73Fから、5測定分のグラフを遡って表示したものである。この場合においては、5測定分のグラフを遡って表示するが、例えば、20測定分のグラフを遡って表示することもできる。
複数のグラフ73A〜73Fに示された反応タイムコースの曲線を比較すると、グラフ73Cに示された反応タイムコースの曲線にスパイク波120が確認される。また、グラフ73D、73E、73Fにおいても、各グラフに示された反応タイムコースの曲線にスパイク波120が確認される。
スパイク波120は、反応容器51に傷がある場合に、反応タイムコースの曲線に生じる特徴的な波形である。反応容器51に傷があると、その傷によって散乱、反射等が起こるので、受光部に達する光は減衰し吸光度は強いピークを示す。
異常データ検出部60は、所定間隔ごとに測定データの変化率又は変化量の値を算出し、所定間隔ごとに予め算出した測定データの変化率又は変化量の許容範囲の値と比較する。この場合、前記値が、許容範囲の値の範囲外にある場合に異常データと判断し、異常を検出する。
グラフ73C、73D、73E、73Fにおいて、各グラフに示された反応タイムコースの曲線にスパイク波120が確認された。このことは、グラフ73Bに対応する測定が行われた時刻と、グラフ73Cに対応する測定が行われた時刻との間の時刻において、指定された反応容器51に傷がついたことを知ることができる。これにより、反応容器51に異常が生じたタイミングを知ることができる。
また、この処理は、異常データ検出部60によって異常な反応があった時刻が指定される場合にも、同様に行うことができる。具体的には、この時刻に測定された測定結果の前後10分間に行われた測定の結果に基づいて作成された反応タイムコースのグラフデータを取得する。さらに、これらのグラフデータをグループ化して表示部42に表示する。これにより、特定の反応容器51以外の反応容器51でも異常が起きていないかを簡易に確認することができる。つまり、異常が起こっていれば、どのような条件で起こっているかなどの特定をすることができ、トラブルシュートに役立てることができる。
また、第1の実施形態の自動分析装置において、表示部42に表示されるグラフの一覧43の表示グループボタン36Eを押すことで、表示グループを「反応容器」とすることもできる。そこで、異常が疑われる反応容器51を指定して、この反応容器51の過去20測定分の測定結果から夫々の測定に対応する反応タイムコースを示すグラフデータを作成する。そして、これらのグラフデータに基づいて反応タイムコースのグラフを表示部42に一覧表示する。この20測定分の反応タイムコースの曲線を時系列で比較することにより、反応容器51に異常が生じたタイミングを知ることができる。
この実施形態の自動分析装置10の上記以外の動作は、第1の実施形態の自動分析装置の動作と同様に行うことができる。
[自動分析装置の作用・効果]
この実施形態の自動分析装置は、第1の実施形態の自動分析装置と同様に構成され、さらに、装置起因の異常データに基づいて測定結果のグループ化をしたものである。このことにより、第1の実施形態の自動分析装置と同様な作用効果を有するとともに、装置に異常が生じたタイミングを知ることができる。
また、異常データが発生した時刻に基づいて測定結果のグループ化をしたので、特定の装置以外においても異常が起きていないかを簡易に確認することができる。つまり、異常が起こっていれば、どのような条件で起こっているかなどの特定をすることができ、トラブルシュートに役立てることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。