以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、検査項目成分の含有量が既知である標準試料や未知である被検試料とその成分に反応する成分を含む試薬との混合液を測定する分析部24と、各混合液の測定により検査項目成分と試薬中の成分が反応する反応工程における標準試料データや被検試料データを生成する信号処理部25とを備えている。
また、自動分析装置100は、信号処理部25で生成された標準試料データや被検試料データに基づいて各検査項目の検量データや分析データの生成、及び反応工程における反応が正常であるか否かの判定等を行うデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データ等を出力する出力部40とを備えている。
更に、自動分析装置100は、標準試料に含まれる検査項目成分の濃度値や活性値で表される分析値、この分析値を含む範囲である検索範囲、及び反応モード(Rate法、End−Point法)等の各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析部24、信号処理部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料及び被検試料の各試料を収容する試料容器17と、試料容器17を保持するサンプルディスク5と、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。また、各検査項目の分析に用いられる1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、試薬容器6を格納する試薬庫1と、試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aとを備えている。
また、試薬ラック1aに保持される試薬容器6に記された第1試薬を識別する検査項目の名称及びロット番号等の第1試薬情報を読み取るリーダ1bと、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、試薬容器7を格納する試薬庫2と、試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aと、試薬ラック2aに保持される試薬容器7に記された第2試薬を識別する検査項目の名称及びロット番号等の第2試薬情報を読み取るリーダ2bとを備えている。
更に、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の各試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に支持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、リーダ1bに読み取られた第1試薬情報が記された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に支持する第1試薬分注アーム8とを備えている。
更にまた、リーダ2bに読み取られた第2試薬情報が記された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に支持する第2試薬分注アーム9とを備えている。また、反応容器3内に吐出された各試料及び第1試薬の混合液、又は各試料並びに第1試薬及び第2試薬の混合液を測定する測光部13と、測光部13で測定された混合液を収容する反応容器3内を洗浄する反応容器洗浄ユニット12とを備えている。
測光部13は、発光する光源、この光源から入射した光を検出する検出素子、及びこの検出素子で検出された検出信号を増幅する増幅回路等を有する。そして、反応ディスク4の回転により光源と検出素子間を結ぶ光路と交差した反応容器3内の標準試料や被検試料の検査項目成分と1試薬系の第1試薬成分又は2試薬系の第1及び第2試薬成分とが反応する混合液を透過した光を検出する。次いで、検出した標準信号や被検信号の各検出信号を信号処理部25へ出力する。
信号処理部25は、マルチプレクサ及びアナログ−デジタル(A/D)変換回路等を備えている。そして、分析部24の測光部13から出力された標準信号の内、例えば2試薬系である場合には第1試薬及び第2試薬を含む混合液を収容する反応容器3が光路と18回目乃至33回目に交差したときに測光部13で検出される反応工程の信号を収集する。次いで、収集した標準信号をA/D変換した後、反応工程の第18乃至第33測光ポイントの吸光度データで表される標準試料データを時系列的に生成し、生成した標準試料データをデータ処理部30に出力する。
また、測光部13から出力された被検信号の内、2試薬系である場合には第1試薬及び第2試薬を含む混合液を収容する反応容器3が光路と18回目乃至33回目に交差したときに測光部13で検出される反応工程の信号を収集する。次いで、収集した被検信号をA/D変換した後、反応工程の第18乃至第33測光ポイントの吸光度データで表される被検試料データを時系列的に生成し、生成した被検試料データをデータ処理部30に出力する。
図1に示したデータ処理部30は、操作部50からの入力により設定された分析パラメータ及び信号処理部25で生成された標準試料データや被検試料データ等を保存するデータ記憶部31と、データ記憶部31に保存された分析パラメータ及び標準試料データや被検試料データに基づいて検量データや分析データを生成する演算部32とを備えている。また、分析データの生成に応じて標準試料データをデータ記憶部31から検索する検索部33と、検索部33で検索された標準試料データに基づいて生成された分析データに関連する反応工程の被検試料データで示される反応が正常であるか否かを判定する判定部35とを備えている。
データ記憶部31は、分析部24のリーダ1bやリーダ2bにより読み取られた1試薬系の第1試薬情報や2試薬系の第1及び第2試薬情報を保存する。また、保存した1試薬系の第1試薬情報や2試薬系の第1及び第2試薬情報に関連付けて、その試薬を用いて分析が行われる検査項目の分析パラメータとして設定された標準試料の分析値、この分析値を含む範囲である検索範囲、反応モード、並びに反応工程の内の検量データ及び分析データの生成に関る工程である演算工程等の操作部50から入力された各分析パラメータを保存する。
ここで、検索範囲としては、標準試料を例えば未知試料として分析したとき、分析部24の各ユニットが許容誤差内で正常に動作しているときに得られる分析データの許容される範囲を設定する。
また、演算工程としては、各検査項目の反応モードに応じて特徴的な反応を示す工程であり、反応工程の内の検量データや分析データの生成に用いる吸光度データが得られる開始の測光ポイントと終了の測光ポイント間を設定する。そして、反応モードとしてRate法が設定されていると、反応が進行しているときの反応速度である単位時間当たりの吸光度の変化を求める必要があるため、開始の測光ポイントと終了の測光ポイント間の全ての測光ポイントの吸光度データを用いる。また、End−Point法では、反応工程の内の反応がほぼ終了している工程のRate法よりも少ない数の測光ポイントの吸光度データを用いる。
また、データ記憶部31は、信号処理部25で生成される各検査項目の標準試料データを、この標準試料データを得るために測定された標準試料の分析値に関連付けて保存する。また、標準試料データの保存に応じて演算部32で生成される検量データを、この検量データを得るために生成された標準試料データに関連付けて保存する。
更に、データ記憶部31は、各検査項目の検量データを保存した後に信号処理部25で生成される被検試料データを保存する。また、被検試料データの保存に応じて演算部32で生成される分析データを、この分析データを得るために生成された被検試料データに関連付けて保存する。また、分析データの保存に応じて判定部35で判定される判定結果が異常である場合の異常情報を、その分析データに関連付けて保存する。
演算部32は、信号処理部25で生成された標準試料データのデータ記憶部31への保存に応じて、その標準試料データに関連する分析値及びその標準試料データの内の演算工程における標準試料データをデータ記憶部31から読み出す。そして、読み出した分析値及び標準試料データに基づいて各検査項目の検量データを生成し、生成した検量データをデータ記憶部31及び出力部40へ出力する。
また、演算部32は、各検査項目の検量データがデータ記憶部31へ保存された後に、信号処理部25で生成される各検査項目の被検試料データのデータ記憶部31への保存に応じて、その検査項目の検量データ及び演算工程における被検試料データをデータ記憶部31から読み出す。次いで、読み出した検量データ及び被検試料データに基づいて濃度値や活性値等で表される各検査項目の分析データを生成し、生成した分析データをデータ記憶部31に出力する。
そして、生成した分析データの保存に応じて、その分析データに関連する反応工程の被検試料データで示される反応が判定部35で正常であると判定されたとき、その分析データを出力部40へ出力する。また、生成した分析データの保存に応じて、判定部35で異常であると判定されたとき、その判定された異常情報を生成した分析データに付加して出力部40へ出力する。
検索部33は、演算部32で生成された各検査項目の分析データの保存に応じて、その分析データ及びこの分析データに関連する反応工程の被検試料データをデータ記憶部31から読み出す。次いで、読み出した分析データを含む検索範囲をデータ記憶部31から検索し、更に検索した検索範囲に関連する反応工程の標準試料データをデータ記憶部31から検索する。そして、読み出した被検試料データ及び検索した標準試料データを判定部35へ出力する。
判定部35は、検索部33で検索された標準試料データ及び読み出された被検試料データに基づいて、検索部33で読み出された被検試料データで示される反応が正常であるか否かを判定し、その判定結果が異常である場合の異常情報をデータ記憶部31へ出力する。
出力部40は、データ処理部30の演算部32から出力された各検査項目の検量データや分析データ等を印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41はプリンタなどを備え、検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙に印刷出力する。また、表示部42はCRTや液晶パネルなどのモニタを備え、検量データや分析データ等を表示する。また、操作部50からの入力により各検査項目の分析パラメータを設定するための分析パラメータ設定画面を表示する。
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータの入力、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検試料毎に分析する検査項目の選択入力等の様々な入力を行う。
システム制御部60は、CPUと記憶回路を備え、操作部50から入力されるコマンド信号や、各検査項目の分析パラメータ、被検体情報、被検試料毎に選択された検査項目などの入力情報を保存する。そして、入力情報に基づいて、分析部24の各ユニットを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、データ処理部30における検量データや分析データの生成や反応の判定に関する制御などシステム全体の制御を行なう。
以下、図1乃至図7を参照して、自動分析装置100の動作の一例を説明する。なお、以下では、含有量の異なる複数の標準試料が用いられる検査項目Zである例えばC反応性蛋白質(CRP)と、CRPの試薬中の成分である例えばラテックスに結合したCRP抗体との抗原抗体反応により生じるプロゾーン現象を含む反応の判定について説明する。
データ処理部30のデータ記憶部31は、分析部24のリーダ1b,2bにより読み取られた検査項目Zの第1及び第2試薬情報を保存している。また、保存した第1及び第2試薬情報に関連付けて、操作部50からの入力により予め設定された検査項目Z成分の含有量が異なる7つの標準試料S1乃至S7の分析値D1乃至D7及び各分析値D1乃至D7を含む検索範囲R1乃至R7、演算工程である第22乃至第33測光ポイント、及び反応モードであるRate法等の各分析パラメータを保存している。更に、各標準試料S1乃至S7を含む混合液の測定により生成された反応工程における各第1乃至第7の標準試料データを、各分析値D1乃至D7に関連付けて保存している。そして、操作部50から第1乃至第7の標準試料データのグラフを表示させる表示操作が行われると、出力部40の表示部42に各第1乃至第7の標準試料データの経時変化を示す反応曲線が表示される。
図3は、表示部42に表示された各第1乃至第7の標準試料データの経時変化を示す反応曲線の画面の一例を示した図である。この画面43には、検査項目Zの第1及び第2試薬と各標準試料S1乃至S7との混合液の測定により生成された各第1乃至第7の標準試料データの経時変化を示す反応曲線W1乃至W7が表示されている。そして、各反応曲線W1乃至W7は、第18乃至第33測光ポイントで示される反応時間を単位とするx軸及び吸光度を単位とするy軸の2次元座標上に表示されている。
反応曲線W1は、検査項目Zの成分を含有しない分析値D1の標準試料S1を含む混合液の測定により生成された第1の標準試料データを処理して、第18乃至第33測光ポイントの互いに隣り合う測光ポイントの標準試料データ間を補間することにより求められる。また、反応曲線W2は、検査項目Z成分を含有する分析値D2の標準試料S2を含む混合液の測定により生成された第2の標準試料データを処理して、第18乃至第33測光ポイントの互いに隣り合う測光ポイントの標準試料データ間を補間することにより求められる。
また、反応曲線Wm(mは3乃至7の整数)は、分析値D(m−1)よりも大きい分析値Dmの検査項目Z成分を含有する標準試料Smとの混合液の測定により生成された第mの標準試料データを処理して、第18乃至第33測光ポイントの互いに隣り合う測光ポイントの標準試料データ間を補間することにより求められる。
なお、検査項目Zの検量データは、各第1乃至第7の標準試料データの演算工程における第22乃至第33測光ポイントの標準試料データを例えば最小二乗法により第22乃至第33測光ポイント間における各反応曲線W1乃至W7の傾きを求め、求めた各傾きと各分析値D1乃至D7との関係を例えばスプライン関数で近似することにより生成される。
図4は、自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。検査項目Zに関して充分な知識を有する自動分析装置100の操作者により、表示部42の図3に示した画面43に表示された各反応曲線W1乃至W7で示される反応が正常であると判断されると、例えば7つの被検試料(第1乃至第7の被検試料)中の検査項目Zの分析が行われる。各第1乃至第7の被検試料を収容する7個の試料容器17がサンプルディスク5に保持された後、各第1乃至第7の被検試料に含まれる検査項目Zを分析するための開始操作が操作部50から行われると、自動分析装置100は動作を開始する(ステップS1)。
システム制御部60は、分析部24、信号処理部25、データ処理部30、及び出力部40に検査項目Zの分析を指示する。分析部24の試薬ラック1a,2aは、試薬庫1,2に格納された試薬容器6,7を回動する。リーダ1b,2bは、回動する試薬ラック1a,2aに保持された試薬容器6,7の第1及び第2試薬情報を読み取る。データ記憶部31は、リーダ1b,2bに読み取られた第1及び第2試薬情報の内の新たな試薬情報のみを保存する。
サンプル分注プローブ16は、サンプルディスク5に保持された各試料容器17から各第1乃至第7の被検試料を吸引して反応容器3内に吐出する。第1試薬分注プローブ14は、リーダ1bに第1試薬情報が読み取られた試薬容器6から検査項目Zの第1試薬を吸引して各第1乃至第7の被検試料が吐出された反応容器3内へ吐出する。第2試薬分注プローブ15は、リーダ2bに第2試薬情報が読み取られた試薬容器7から検査項目Zの第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された各反応容器3内へ吐出する。測光部13は、各第1乃至第7の被検試料を含む混合液を透過した光を検出して増幅した被検信号を信号処理部25へ出力する。
信号処理部25は、第nの被検試料(n=1)を含む混合液の測定により測光部13から出力された被検信号の内、反応工程における被検信号を収集する。次いで、収集した被検信号から反応工程における第nの被検試料データを生成し、生成した第nの被検試料データをデータ処理部30のデータ記憶部31に出力する。
データ記憶部31は、リーダ1b、リーダ2bに読み取られた検査項目Zの第1及び第2試薬情報に関連付けて、信号処理部25から出力された第nの被検試料データを保存する。演算部32は、データ記憶部31への第nの被検試料データの保存に応じて、検査項目Zの検量データ及び第nの被検試料データの演算工程における第22乃至第33の被検試料データをデータ記憶部31から読み出す。次いで、読み出した検量データ及び被検試料データに基づいて第nの分析データを生成し、生成した第nの分析データをデータ記憶部31に出力する(ステップS2)。
データ記憶部31は、演算部32から出力された第nの分析データを、第nの被検試料データに関連付けて保存する。検索部33は、第nの分析データの保存に応じて、第nの分析データ及び第nの被検試料データをデータ記憶部31から読み出す。そして、読み出した第nの被検試料データを判定部35へ出力する。また、読み出した第nの分析データを含む検索範囲をデータ記憶部31から検索し、更に検索した検索範囲に関連する反応工程の標準試料データをデータ記憶部31から検索する。そして、検索した標準試料データを判定部35へ出力する(ステップS3)。
なお、精度管理等に使用される検査項目Zの成分の含有量が既知であり、その含有量が異なる複数の管理試料を含む混合液の測定により信号処理部25で生成される反応工程の管理試料データ、及び予め設定されたその管理試料の分析値及びこの分析値を含む検索範囲をデータ記憶部31に保存し、分析データの検索範囲に含まれる管理試料データを検索するように実施してもよい。
判定部35は、検索部33で検索された標準試料データ及び検索部33で読み出された第nの被検試料データに基づいて被判定値を算出する。そして、算出した被判定値が予め設定された許容範囲内である場合(ステップS4のはい)、第nの被検試料データで示される反応が正常であると判定し、ステップS5へ移行する。また、算出した被判定値が前記許容範囲から外れている場合(ステップS4のいいえ)、第nの被検試料データで示される反応が異常であると判定し、ステップS6へ移行する。
ステップS4の「はい」の後に、演算部32は、判定部35で正常であると判定された判定結果に応じて、第nの分析データを出力部40の例えば表示部42へ出力する。表示部42は、演算部32から出力された第nの分析データを表示する(ステップS5)。
ステップS4の「いいえ」の後に、判定部35は、第nの被検試料データで示される反応が異常であることを示す異常情報をデータ記憶部31へ出力する。データ記憶部31は、判定部35で判定された異常情報を、第nの分析データに関連付けて保存する。演算部32は、異常情報のデータ記憶部31への保存に応じて、その異常情報を第nの分析データに付加して表示部42へ出力する。表示部42は、第nの分析データ及び異常情報を表示する(ステップS6)。
ステップS5又はステップS6の後に、nが7未満の整数である場合(ステップS7のいいえ)、nに1を加算してステップS2へ戻る。また、nが7である場合(ステップS7のはい)、ステップS8へ移行する。
ステップS7の「はい」の後に、システム制御部60が分析部24、信号処理部25、データ処理部30、及び出力部40に検査項目Zの分析の停止を指示することにより、自動分析装置100は、動作を終了する(ステップS8)。
次に、各第1乃至第7の被検試料データで示される反応が正常であるか否かを判定する判定方法の一例を、実験データから算出された被判定値を参照して説明する。
図5は、被判定値の一覧を示した図である。この被判定値の一覧70は、被判定値である複数の積分比率値、各積分比率値の絶対値の総和であるバラツキ総和値、及び各積分比率値の標準偏差である標準偏差値からなる。そして、判定部35は、少なくとも1つの積分比率値が予め設定された許容範囲(−2.5%〜2.5%)から外れている場合、バラツキ総和値が予め設定された許容範囲(0%〜10.0%)から外れている場合、又は標準偏差値が予め設定された許容範囲(0〜0.010)から外れている場合に異常であると判定する。また、積分比率値、バラツキ総和値、及び標準偏差値が夫々の許容範囲内である場合に正常であると判定する。
先ず、第1の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。
第1の分析データに関連する第1の被検試料データの経時変化は、図6に示すように、第1の被検試料データを処理して、第18乃至第33測光ポイントの互いに隣り合う測光ポイントの被検試料データ間を補間することにより求められる反応曲線WA1で示される。そして、第1の分析データは検索範囲R4に含まれ、検索部33は検索範囲R4に関連する第4の標準試料データを検索する。判定部35は、第4の標準試料データ及び第1の被検試料データに基づいて、第(17+p)測光ポイント(pは1乃至15の整数)と第(18+p)測光ポイント間の積分比率値1Epを算出する。
ここで、先ず反応曲線WA1の第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間を補間する関数を、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間で積分して部分積分値Apを求める。次いで、図7(a)に示すように、pが各1乃至15である場合の各部分積分値A1乃至A15を求めた後、反応工程の全ての部分積分値A1乃至A15の総和である総和積分値ATを求める。そして、部分積分値Apを総和積分値ATで除することにより、比率値(Ap/AT)を求める。
また、反応曲線W4の第(17+p)測光ポイントと第(18+1)測光ポイント間を補間する関数を、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間で積分して部分積分値Spを求める。次いで、図7(b)に示すように、pが各1乃至15である場合の各部分積分値S1乃至S15を求めた後、反応工程の全ての部分積分値S1乃至S15の総和である総和積分値STを求め、部分積分値Spを総和積分値STで除することにより基準となる比率値(Sp/ST)を求める。更に、比率値(Ap/AT)を比率値(Sp/ST)で除することにより得られる比率から、1を差し引いた値を百分率で表すことにより積分比率値1Epを算出する。
そして、実験により求められた各データから、積分比率値1E1である「−1.0%」、積分比率値1E2である「−1.0%」、積分比率値1E3である「−1.1%」、・・・、積分比率値1E15である「1.2%」を算出する。また、各積分比率値1E1乃至1E15の絶対値の総和を求めることにより、バラツキ総和値F1である「16.3%」を算出する。更に、各積分比率値1E1乃至1E15の標準偏差を求めることにより、標準偏差値G1である「0.012」を算出する。これにより、バラツキ総和値F1及び標準偏差値G1が夫々の許容範囲から外れているため、第1の被検試料データで示される反応が異常であると判定する。
なお、操作者が検査項目Zに関して充分な知識を有する場合、反応曲線WA1を表示部42に表示させることにより、図6に示すように、第18乃至第26測光ポイントでは滑らかな曲線が、第27測光ポイント以降では上方にシフトしていることから、異常であると判断することができる。
このように、第1の分析データの生成に応じて第1の被検試料データで示される反応の異常を判定し、その異常情報を第1の分析データに付加して表示部42に表示させることができる。これにより、表示部42に反応曲線WA1を表示させることなく、反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zの知識が不十分な操作者でも容易に判断することができる。
次に、第2の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。
第2の分析データに関連する第2の被検試料データの経時変化は、図6に示すように、第2の被検試料データを処理して、第18乃至第33測光ポイントの互いに隣り合う測光ポイントの被検試料データ間を補間することにより求められる反応曲線WA2で示される。そして、第2の分析データは第1の分析データよりも高い濃度値を示し、検索範囲R5に含まれるため、検索部33は検索範囲R5に関連する第5の標準試料データを検索する。判定部35は、第5の標準試料データ及び第2の被検試料データに基づいて、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間の積分比率値2Epを算出する。
ここで、先ず反応曲線WA2の第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間を補間する関数を、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間で積分して部分積分値Bpを求める。次いで、図7(a)に示した反応曲線WA1の場合と同様にして、pが各1乃至15である場合の各部分積分値Aa1乃至Aa15を求めた後、反応工程の全ての部分積分値Aa1乃至Aa15の総和である総和積分値AaTを求める。そして、部分積分値Aapを総和積分値AaTで除することにより、比率値(Aap/AaT)を求める。
また、反応曲線W5の第(17+p)測光ポイントと第(18+1)測光ポイント間を補間する関数を、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間で積分して部分積分値Sapを求める。次いで、図7(b)に示した反応曲線W4の場合と同様にして、pが各1乃至15である場合の各部分積分値Sa1乃至Sa15を求めた後、反応工程の全ての部分積分値Sa1乃至Sa15の総和である総和積分値SaTを求め、部分積分値Sapを総和積分値SaTで除することにより基準となる比率値(Sap/SaT)を求める。更に、比率値(Aap/AaT)を比率値(Sap/SaT)で除することにより得られる比率から1を差し引いた値を百分率で表すことにより、積分比率値2Epを算出する。
そして、実験データから、積分比率値2E1である「0.4%」、積分比率値2E2である「−0.4%」、積分比率値2E3である「−0.4%」、・・・、積分比率値2E15である「―0.4%」を算出する。また、各積分比率値2E1乃至2E15の絶対値の総和を求めることにより、バラツキ総和値F2である「10.5%」を算出する。更に、各積分比率値2E1乃至2E15の標準偏差を求めることにより、標準偏差値G2である「0.011」を算出する。これにより、積分比率値2E6,2E7である「2.7%」及び「2.6%」、バラツキ総和値F2、並びに標準偏差値G2が許容範囲から外れているため、第2の被検試料データで示される反応が異常であると判定する。
なお、操作者が検査項目Zに関して充分な知識を有する場合、反応曲線WA2を表示部42に表示させることにより、図6に示すように、第24測光ポイントの被検試料データが上方に突出していることから、異常であると判断することができる。
このように、第2の分析データの生成に応じて第2の被検試料データで示される反応の異常を判定し、その異常情報を第2の分析データに付加して表示部42に表示させることができる。これにより、表示部42に反応曲線WA2を表示させることなく、反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zの知識が不十分な操作者でも反応の異常を容易に判断することができる。
次に、第3の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。
第3の分析データに関連する第3の被検試料データの経時変化は、図6に示すように、第3の被検試料データを処理して、第18乃至第33測光ポイントの互いに隣り合う測光ポイントの被検試料データ間を補間することにより求められる反応曲線WA3で示される。そして、第3の分析データは第2の分析データよりも高い濃度値を示し、高濃度領域の検索範囲R7に含まれるため、検索部33は検索範囲R7に関連する第7の標準試料データを検索する。判定部35は、第7の標準試料データ及び第3の被検試料データに基づいて、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間の積分比率値3Epを算出する。
ここで、先ず反応曲線WA3の第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間を補間する関数を、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間で積分して部分積分値Abpを求める。次いで、図7(a)に示した反応曲線WA1の場合と同様にして、pが各1乃至15である場合の各部分積分値Ab1乃至Ab15を求めた後、反応工程の全ての部分積分値Ab1乃至Ab15の総和である総和積分値AbTを求める。そして、部分積分値Abpを積分値AbTで除することにより、比率値(Abp/AbT)を求める。
また、反応曲線W7の第(17+p)測光ポイントと第(18+1)測光ポイント間を補間する関数を、第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間で積分して部分積分値Sbpを求める。次いで、図7(b)に示した反応曲線W4の場合と同様にして、pが各1乃至15である場合の各部分積分値Sb1乃至Sb15を求めた後、反応工程の全ての部分積分値Sb1乃至Sb15の総和である総和積分値SbTを求め、部分積分値Sbpを総和積分値SbTで除することにより基準となる比率値(Sbp/SbT)を求める。更に、比率値(Abp/AbT)を比率値(Sbp/SbT)で除することにより得られる比率から1を差し引いた値を百分率で表すことにより、積分比率値3Epを算出する。
そして、実験データから、積分比率値3E1である「−5.2%」、積分比率値3E2である「−3.7%」、積分比率値3E3である「−2.5%」、・・・、積分比率値3E15である「1.1%」を算出する。また、各積分比率値3E1乃至3E15の絶対値の総和を求めることにより、バラツキ総和値F3である「22.9%」を算出する。更に、各積分比率値3E1乃至3E15の標準偏差を求めることにより、標準偏差値G3である「0.020」を算出する。これにより、積分比率値3E1,3E2である「−5.2%」及び「−3.7%」、バラツキ総和値F3、並びに標準偏差値G3が許容範囲から外れているため、第3の被検試料データで示される反応が異常であると判定する。
なお、操作者が検査項目Zに関して充分な知識を有する場合、反応曲線WA3を表示部42に表示させることにより、反応曲線WA3が滑らかに変化しているにもかかわらず、異常であると判定され、且つ、第3の分析データが高値であることから、プロゾーン現象が生じて異常であると判断することができる。
このように、プロゾーン現象が発生する高濃度域における第3の分析データの生成に応じて第3の被検試料データで示される反応の異常を判定し、その異常情報を第3の分析データに付加して表示部42に表示させることができる。これにより、表示部42に反応曲線WA3を表示させることなく、反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zの知識が不十分な操作者でも反応の異常を容易に判断することができる。
次に、第4の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。第4の分析データに関連する第4の被検試料データの経時変化は、図示しないが、滑らかな反応曲線で示される。また、第4の分析データは分析値D1近傍の濃度値を示し、検索範囲R1に含まれるため、検索部33は検索範囲R1に関連する第1の標準試料データを検索する。判定部35は、第1の標準試料データ及び第4の被検試料データに基づいて第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間の積分比率値4Epを算出する。
そして、実験データから、積分比率値4E1である「0.1%」、積分比率値4E2である「0.0%」、・・・、積分比率値4E15である「0.0%」を算出する。また、バラツキ総和値F4である「0.1%」を算出し、標準偏差値G4である「0.000」を算出する。これにより、積分比率値4E1乃至4E15、バラツキ総和値F4、及び標準偏差値G4が夫々許容範囲内であるため、第4の被検試料データで示される反応が正常であると判定する。
このように、検査項目A成分を含まない、又は低濃度領域の第4の分析データの生成に応じて第1の被検試料データで示される反応が正常であるか否かを判定することができる。これにより、表示部42に反応曲線を表示させることなく、反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zに知識が不十分な操作者でも反応が正常であるか否かを容易に判断することができる。
次に、第5の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。第5の分析データに関連する第5の被検試料データの経時変化は、図示しないが、滑らかな反応曲線で示される。また、第5の分析データは第1の分析データよりも低く、第4の分析データよりも高い濃度値を示し、検索範囲R2に含まれるため、検索部33は検索範囲R2に関連する第2の標準試料データを検索する。判定部35は、第2の標準試料データ及び第5の被検試料データに基づいて第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間の積分比率値5Epを算出する。
そして、実験データから、積分比率値5E1である「0.7%」、積分比率値5E2である「0.6%」、・・・、積分比率値5E15である「−0.5%」を算出する。また、バラツキ総和値F5である「4.6%」を算出し、標準偏差値G5である「0.004」を算出する。これにより、積分比率値5E1乃至5E15、バラツキ総和値F5、及び標準偏差値G5が夫々許容範囲内であるため、第5の被検試料データで示される反応の変化が正常であると判定する。
次に、第6の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。第6の分析データに関連する第6の被検試料データの経時変化は、図示しないが、滑らかな反応曲線で示される。また、第6の分析データは第2の分析データの付近の濃度値を示し、検索範囲R5に含まれるため、検索部33は検索範囲R5に関連する第5の標準試料データを検索する。判定部35は、第5の標準試料データ及び第6の被検試料データに基づいて第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間の積分比率値6Epを算出する。
そして、実験データから、積分比率値6E1である「−0.1%」、積分比率値6E2である「−0.2%」、・・・、積分比率値6E15である「0.1%」を算出する。また、バラツキ総和値F6である「0.6%」を算出し、標準偏差値G6である「0.001」を算出する。これにより、積分比率値6E1乃至6E15、バラツキ総和値F6、及び標準偏差値G6が夫々許容範囲内であるため、第5の被検試料データで示される反応の変化が正常であると判定する。
このように、第2の分析データ付近の第6の分析データの生成に応じて第6の被検試料データで示される反応が正常であると判定することができる。これにより、表示部42に反応曲線を表示させることなく、反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zの知識が不十分な操作者でも反応の異常を容易に判断することができる。
次に、第7の分析データの生成に応じて、判定部35で算出される被判定値及び判定結果を説明する。第7の分析データに関連する第7の被検試料データの経時変化は、図示しないが、滑らかな反応曲線で示される。また、第7の分析データは検索範囲R7に含まれ、検索部33は検索範囲R7に関連する第7の標準試料データを検索する。判定部35は、第7の標準試料データ及び第7の被検試料データに基づいて第(17+p)測光ポイントと第(18+p)測光ポイント間の積分比率値7Epを算出する。
そして、実験データから、積分比率値7E1である「0.9%」、積分比率値7E2である「0.7%」、・・・、積分比率値7E15である「−0.6%」を算出する。また、バラツキ総和値F7である「6.0%」を算出し、標準偏差値G7である「0.005」を算出する。これにより、積分比率値7E1乃至7E15、バラツキ総和値F7、及び標準偏差値G7が許容範囲内であるため、第5の被検試料データで示される反応の変化が正常であると判定する。
このように、第7の分析データの生成に応じて第7の被検試料データで示される反応が正常であると判定することができる。これにより、表示部42に反応曲線を表示させることなく、反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zの知識が不十分な操作者でも容易に判断することができる。
以上述べた実施形態によれば、正常な各第1乃至第7の標準試料データ、各分析値D1乃至D7、及び各検索範囲R1乃至R7をデータ記憶部31に保存することにより、各第1乃至第7の分析データを含む検索範囲に関連する反応工程の標準試料データをデータ記憶部31から検索することができる。次いで、検索した標準試料データ及び各第1乃至第7の分析データに関連する各第1乃至第7の被検試料データに基づいて積分比率値、バラツキ総和値、及び標準偏差値からなる被判定値を算出することにより、各第1乃至第7の被検試料データで示される反応が正常であるか否かを判定することができる。
そして、算出した積分比率値、バラツキ総和値、及び標準偏差値が夫々の許容範囲内である場合、反応が正常であると判定することができる。また、算出した積分比率値、バラツキ総和値、又は標準偏差値のいずれかが夫々の許容範囲から外れている場合、反応が異常であると判定し、その異常情報を各第1乃至第3分析データに付加して表示部43に表示することができる。
以上により、表示部42に各反応曲線を表示させることなく、各第1乃至第7の被検試料データで示される反応が正常であるか否かを判断することができる。また、検査項目Zの知識が不十分な操作者でも反応が正常であるか否かを容易に判断することができる。これにより、反応の異常を精度良くチェックすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。