JP2015124785A - 潤滑剤の塗布装置および塗布方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そのシール部材のリップには、密封性の向上と共に摩擦力の低減(潤滑性の維持)を図るために潤滑剤が塗布されているものがある。
例えば、従来から、固体潤滑剤を分散した結合樹脂液をスプレー等により塗布したり、或いは、シール部材を回転させながら筆塗りしたりすることがなされている。
特許文献1に開示の塗布装置は、外周面をテーパ状に形成した塗布用円板を高速回転させることにより、その塗布用円板から潤滑剤をその遠心力により外周方向に連続して飛散させるものである。
そして、この塗布用円板を、円環状に形成されたシール部材の内側にセットし、塗布用円板のテーパ状の外周面の先端部から、潤滑剤を広範囲かつ大量に連続して飛散させてシール部材のリップ内面に潤滑剤を塗布し、リップ内面に潤滑剤層を形成するものである。
また、テーパ部分の先端部から上下方向に広がりながら潤滑剤を飛散(拡散)させるため、シール部材のリップの塗布において塗りムラが生じ得るという課題もある。
そして、回転作動のみではなく、回転軸に対して直線方向に移動しながら潤滑剤を高速で吐出するものとしたことにより、周方向に点状で間欠的に塗布されながら直線方向(例えば鉛直方向)に移動して塗布するため、これにより塗布された潤滑剤が互いにくっつき合って一体になって均一な潤滑剤塗布層が形成される。従って、吐出された潤滑剤が少ない量で均一な厚みに塗布され、吐出された潤滑剤同士が隙間をあけて塗布されてしまうこともなく、塗ムラなども生じない。
また、従来のように潤滑剤を大量に連続して飛散(拡散)させるものと異なり、軸摺接面に向けてピンポイントで間欠的に吐出されるものであるため、無駄な吐出を防ぐことができコストアップを抑止し得る。
シール部材保持機構は、回転軸を鉛直方向に備え、潤滑剤吐出機構は、移動軸を鉛直方向に備え、潤滑剤吐出機構は、シール部材のリップ部における軸摺接面に対して潤滑剤を吐出する吐出ノズルを、前記シール部材のリップ部の軸摺接面に対して所定の傾斜角度をもって配したことを特徴とする潤滑剤の塗布装置としたことである。
シール部材を回転可能に保持するシール部材保持機構と、前記シール部材保持機構に保持されたシール部材のリップ部における軸摺接面に潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構からなり、シール部材保持機構は、回転軸に沿ってシール部材を直線移動可能に保持し、前記潤滑剤吐出機構は、前記シール部材保持機構に保持されて回転しつつ直線移動するシール部材のリップ部における軸摺接面に向けて潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出させることを特徴とする潤滑剤の塗布装置としたことである。
本実施形態における潤滑剤の塗布装置1は、シール部材10を保持するシール部材保持機構2と、前記シール部材10のリップ部30における軸接触面50に潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構5とで構成されており、それぞれが架台9に備えられている。
また、図に示してないが、潤滑剤の塗布装置1には、制御部が配設されている。この制御部により、潤滑剤吐出機構5の鉛直方向の移動・停止位置、移動速度、潤滑剤の吐出間隔、シール部材保持機構2を回転作動させる時の回転速度などを制御し、潤滑剤の塗出開始から塗布終了までの全工程を自動で制御する。
本実施形態で用いるシール部材10は、一般的なオイルシールを想定している。以下、オイルシール10として説明する。
オイルシール10は、中心に貫通孔14を有する円板部12の外周縁から水平方向に環状部15を突出させてなる断面視略コ字状を有する金属製の補強環20と、補強環20の周りを被覆して環状に形成されるゴム等の弾性部13とで構成されている。弾性部13は、円板部11と、円板部11の外周縁から水平方向に突出する環状部16と、内径側に設けられた環状のリップ部30とで構成されている。
また、本実施形態では、円板部13の円周端縁から前記オイルシールリップ30aとは反対の方向に傾斜して環状に突出するダストシールリップ30bが形成されている。
前記リップ部30における内面、すなわち、オイルシールリップ30aの内面とダストシールリップ30bの内面が、軸摺接面50として機能する。本実施形態では、このうちオイルシールリップ30aの内面を軸摺接面50として潤滑剤塗膜層40を形成する。
すなわち、本実施形態では、オイルシール10を成型した後に内径側に残るバリを有効利用しているものである。
このように突部(バリ)18があることにより、後述する潤滑剤吐出機構5から吐出された潤滑剤が仮に飛び散ったとしても、突部(バリ)18が潤滑剤受け部として機能するためシール部材保持機構2を汚すこともない。なお、この突部(バリ)18は、潤滑剤塗布後の工程で、ナイフカット等により取り除かれる。突部(バリ)18の突出量や厚み等は特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
また、本実施形態では成型時に生じ得るバリを積極的に使用しているが、バリではなく、あらかじめ突部18として設計したものであってもよい。
また、本体部3bの上面には、嵌合部2aの内径と同径で穿設されている円筒状の有底孔部3cが形成されている。前記有底孔部3cは、潤滑剤塗膜形成工程が終了し、オイルシール10をシール部材保持機構2から取り外す際に、オイルシール10の内径側から前記有底孔部3c内に指を差し入れることができるため、嵌合部3aからオイルシール10を容易に取り外すことができる。
本体部3bの形状は特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で任意に設計変更可能である。
本実施形態では、回転数30rpmを設定する。
また、本実施形態では、前記ワーク保持部3を、回転中心軸Axを中心にして、前記回転数をもって矢印L方向に回転可能としている(図1参照、図2および図3において回転中心軸Axを図面便宜上、中心位置からやや右側にずらして示している。)なお、駆動源4は特に限定されるものではなく周知一般のモータなど任意である。
制御部では、例えば、予め計測した第一の移動位置(吐出開始位置)100のデータと、第二の移動位置(吐出終了位置)200のデータと、第三の移動位置(待ち状態位置)300のデータが記憶させられており、また、潤滑剤吐出部本体7を鉛直方向に移動させる所定の移動速度に関するデータも記憶させられている。
制御部によって予め設定・記憶させた所定の高さ位置データと、鉛直方向に移動する所定の移動速度データに基づいて、潤滑剤吐出部本体7を移動制御している。
なお、昇降作動部6は、特に限定解釈されないが、油圧シリンダ・ガスシリンダなどによって潤滑剤吐出部本体7を鉛直方向に移動・停止させる構成であってもよく任意である。
本実施形態によれば、前記プランジャの往復動作の調整によって高圧力で吐出ノズル7aから潤滑剤が高速かつ間欠的に吐出し得るものとしている。
その傾斜角度は、吐出ノズル7aがリップ部30の軸摺接面50に非接触状態で塗布でき、かつ、シリンジ(図示しない)内の潤滑剤がこぼれない程度とすれば、回転軸Axに対して約30度程度傾斜させている状態が好ましい。なお、傾斜角度をさらに変えることで第二の移動位置200より上側の軸摺接面50を塗布することもできる。また、リップ部30と吐出ノズル7aとの先端との近接距離は約5mm程度が好ましい。
吐出口からの潤滑剤の吐出は、図に示さない制御装置への数値設定により制御される。その数値設定は、オイルシール10のリップ部30の内径がφ40mmの場合、吐出数が1〜550ショット/10秒の範囲とする。
なお、第一の移動位置100から潤滑剤吐出終了の第二の移動位置200まで向かうに従って、軸摺接面50と吐出ノズル7aとの距離を一定に保つように潤滑剤吐出部本体7を移動制御させリップ部30に潤滑剤を均一な厚みに塗布することができる。本実施形態において、塗膜は、塗布総量が0.02g程度の少ない量でできる。
また、塗布時間は、吐出開始から吐出終了まで、本実施形態では内径φ40mmの場合、約10秒間で均一な厚みの塗膜形成が可能である。
(1)シール部材保持機構2にシール部材(オイルシール)10を保持する工程
(2)保持されたシール部材(オイルシール)10を回転作動させる工程
(3)シール部材保持機構2に保持されたシール部材(オイルシール)10のリップ部30における軸摺接面50に、潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構5の潤滑剤吐出部本体7を、吐出開始の第一の移動位置100に設定する工程
(4)シール部材(オイルシール)10のリップ部30の軸摺接面50に向けて潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出しつつ第二の移動位置200まで上昇移動する工程
(5)シール部材(オイルシール)10のリップ部30における軸摺接面50に潤滑剤を塗布終了後、潤滑剤吐出機構5の潤滑剤吐出部本体7を第三の移動位置300に上昇移動する工程
また、制御部には次の諸数値を入力設定する。
(6)駆動源4の回転速度(ワーク保持機構2の回転速度):30rpm
(7)潤滑剤の吐出ノズル7aの吐出数:500ショット/10秒
(8)潤滑剤吐出本体7を第三の移動位置300から第一の移動位置100まで移動する速度:4mm/s
(9)潤滑剤吐出本体7を第一の移動位置100から第二の移動位置200まで移動する速度:0.5mm/s
本実施形態で使用されるシール部材(オイルシール)10は、上述したオイルシール10でφ40mmとする。
そして、第一の移動位置100から第二の移動位置200に向かって吐出ノズル7aが、0.5mm/sの速度で上昇移動し、かつ、ワーク保持部3が30rpmの速度で回転することと相まって、リップ部30内面に対して周方向に粒点状に塗布され、潤滑剤が均一な厚みに塗布された潤滑剤塗膜層40を形成する。
本実施形態では、塗布時間は、オイルシール回転機構3の回転速度が30rpmで、潤滑剤吐出機構5の吐出数が500ショットの数値設定ならば約10秒間で終えることができる。
その後、オイルシール保持機構2の嵌合部7aから潤滑剤の塗布を終えたオイルシール10を取り外す。その後、リップ部30のバリ部分18は不要のためカットナイフなどで取り去る。
本実施形態では、バリ部分18を取り除いた後のオイルシール10のリップ部30における軸摺接面50に潤滑剤を塗布する実施の一例である。本実施形態においては、第一の移動位置100aから第二の移動位置200に向かって吐出ノズル7aが、0.5mm/sの速度で上昇移動し、かつ、ワーク保持部3が30rpmの速度で回転することと相まって、リップ部30内面に対して周方向に粒点状に塗布され、潤滑剤が均一な厚みに塗布された潤滑剤塗膜層40を形成する。
オイルシール10のその他の構成、この実施形態に用いられる潤滑材の塗布装置、塗布方法(塗布工程)にあっては、上述した前記実施形態と同様であるため、前記実施形態の説明を援用し、ここでの詳細な説明は省略する。
このような構成を採用することによっても、上述した実施形態と同様の作用効果が発揮され得る。
2 シール部材保持機構
3 ワーク保持部
3a 嵌合部
4 駆動源
5 潤滑剤吐出機構
6 昇降作動部
7 潤滑剤吐出部本体
7a 吐出ノズル
7b 外筒
8 高さ調整部
9 架台
10 シール部材(オイルシール)
11,12 円板部
13 弾性部
14 貫通孔
15 環状部
17 環状凹部
20 補強環
30 リップ部
30a オイルシールリップ
30b ダストシールリップ
40 潤滑剤塗膜層
50 軸接触面
Claims (8)
- 回転軸の外周に圧接されて備えられる円環状に形成されたシール部材を対象とし、前記シール部材のリップ部における軸摺接面に潤滑剤塗膜層を形成する装置であって、
シール部材を保持するシール部材保持機構と、
前記シール部材保持機構に保持されたシール部材のリップ部における軸摺接面に、吐出ノズルを介して潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構からなり、
前記シール部材と前記吐出ノズルとは、相対的に回転可能であるとともに、いずれか一方又は双方が、回転軸に対して直線移動可能に構成されており、
前記吐出ノズルは、前記リップ部の軸摺接面に潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出することを特徴とする潤滑剤の塗布装置。 - シール部材を回転可能に保持するシール部材保持機構と、
前記シール部材保持機構に保持されたシール部材のリップ部における軸摺接面に潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構からなり、
前記潤滑剤吐出機構は、前記シール部材保持機構に保持されて回転するシール部材の回転軸に沿って移動しつつシール部材のリップ部における軸摺接面に向けて潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出させることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤の塗布装置。 - シール部材保持機構は、回転軸を鉛直方向に備え、
潤滑剤吐出機構は、移動軸を鉛直方向に備え、
潤滑剤吐出機構は、シール部材のリップ部における軸摺接面に対して潤滑剤を吐出する吐出ノズルを、前記シール部材のリップ部の軸摺接面に対して所定の傾斜角度をもって配したことを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤の塗布装置。 - 前記シール部材は、リップ部からシール部材の中心軸方向に向けて水平に突出する環状の突部を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の潤滑剤の塗布装置。
- シール部材を回転可能に保持するシール部材保持機構と、
前記シール部材保持機構に保持されたシール部材のリップ部における軸摺接面に潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構からなり、
シール部材保持機構は、回転軸に沿ってシール部材を直線移動可能に保持し、
前記潤滑剤吐出機構は、前記シール部材保持機構に保持されて回転しつつ直線移動するシール部材のリップ部における軸摺接面に向けて潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出させることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤の塗布装置。 - シール部材保持機構は、回転軸と移動軸を鉛直方向に備え、
前記潤滑剤吐出機構は、シール部材のリップ部における軸摺接面に対して潤滑剤を吐出する吐出ノズルを、前記リップ部の軸摺接面に対して所定の傾斜角度をもって配したことを特徴とする請求項5に記載の潤滑剤の塗布装置。 - シール部材を回転可能に保持するシール部材保持機構と、
前記シール部材保持機構に保持されたシール部材のリップ部における軸摺接面に潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構からなり、
前記潤滑剤吐出機構は、旋回運動しつつ直線移動してシール部材のリップ部における軸摺接面に対して潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出させることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤の塗布装置。 - シール部材のリップ部に潤滑剤を塗布する潤滑剤の塗布方法において、
回転機構を有するシール部材保持機構にシール部材を保持する工程と、
前記シール部材保持機構に保持された前記シール部材を回転させる工程と、
前記シール部材保持機構に保持された前記シール部材のリップ部に潤滑剤を塗布する潤滑剤吐出機構の吐出ノズルを塗布開始位置に移動する工程と、
前記シール部材保持機構に保持されて回転するシール部材の回転軸に沿って移動しつつ、シール部材のリップ部における軸摺接面に向けて前記潤滑剤吐出機構の吐出ノズルから潤滑剤を高速かつ間欠的に吐出する工程と、
前記シール部材のリップ部における軸摺接面に潤滑剤を塗布終了後、前記潤滑剤吐出機構のノズルをシール部材の外方に移動する工程と、を含むことを特徴とする潤滑剤の塗布方法。
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