図1は、この発明の実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
図1において、符号10はエンジン(内燃機関)を示す。エンジン10は駆動輪(前輪)12を備えた車両14に搭載される(車両14は駆動輪12などで部分的に示す)。
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ16は車両運転席床面に配置されるアクセルペダル18との機械的な接続が絶たれて電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構20に接続され、DBW機構20で開閉される。
スロットルバルブ16で調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト(図示せず)を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
クランクシャフトの回転は出力軸22およびトルクコンバータ24を介して自動変速機Tに入力される。自動変速機Tは無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)26を備える。
即ち、出力軸22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。トルクコンバータ24はロックアップクラッチ24cを備える。
CVT26はメインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドライブ(DR)プーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドリブン(DN)プーリ26bと、その間に掛け回される動力伝達部材、例えば金属製のベルト26cからなる。
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2と、可動プーリ半体26a2の側方に設けられて油圧(作動油の圧力)を供給されるときに可動プーリ半体26a2を固定プーリ半体26a1に向けて押圧する、ピストンとシリンダとスプリングからなる油圧アクチュエータ26a3を備える。
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2と、可動プーリ半体26b2の側方に設けられて油圧を供給されるときに可動プーリ半体26b2を固定プーリ半体26b1に向けて押圧する、ピストンとシリンダとスプリングからなる油圧アクチュエータ26b3を備える。
自動変速機TにおいてCVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ28a(と後進ブレーキクラッチ28b)を介して接続される。
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32から左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
駆動輪12と従動輪(後輪。図示せず)の付近にはディスクブレーキ34が配置されると共に、車両運転席床面にはブレーキペダル36が配置される。ブレーキペダル36はマスタバック38とマスタシリンダ40を介してディスクブレーキ34に接続される。
運転者がブレーキペダル36を踏み込むと、その踏み込み力はマスタバック38で増力されてマスタシリンダ40からディスクブレーキ34に伝えられ、ディスクブレーキ34を動作させて車両14を制動(減速)させる。
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ44を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は変速機油圧供給機構46のマニュアルバルブに伝えられ、車両14を前進あるいは後進方向に走行させる。
尚、この明細書において自動変速機Tはトルクコンバータ24とCVT26と前後進切換機構28(より具体的にはその前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28b)からなる。
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブ16の下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
DBW機構20のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブ16の開度THに比例した信号を出力する。
また、前記したアクセルペダル18の付近にはアクセル開度センサ56が設けられて運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。ブレーキペダル36の付近にはブレーキスイッチ58が設けられ、運転者によってブレーキペダル36が操作されたときオン信号を出力する。上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。
また、メインシャフトMSにはNTセンサ70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT、具体的には変速機入力軸回転数、より具体的には前進クラッチ28aの入力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ72が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ74が設けられてドリブンプーリ26bの回転数NDN(カウンタシャフトCSの回転数)に応じたパルス信号を出力する。
またセカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近にはVセンサ(回転数センサ)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数と回転方向を示すパルス信号(具体的には車速Vを示すパルス信号)を出力する。この実施例に係るCVT26にあっては、ギヤ30bの円周には複数個、より具体的には12個の突起が形成される。
Vセンサ76は、図2に示す如く、ギヤ30b(CVT26のカウンタシャフト(出力軸)CSを通じてカウンタシャフトCS)の所定回転角ごとに位相の異なる2種のパルスをそれぞれ出力する2個の磁電変換素子(MRE素子)76aと、出力された2種のパルスを整形回路A,Bを介して入力し、それらから回転方向を検出して車両14の進行方向を意味する前進側パルスと後進(後退)側パルスとして出力するパルス出力回路(パルス出力手段)76bとを備える。
このように、Vセンサ76は、CVT26の出力軸(カウンタシャフト)CSまたは入力軸(メインシャフト)MS、より具体的にはギヤ30cを通じて出力軸(カウンタシャフト)CSの回転数を示すパルスを出力、より具体的には出力軸の回転数と回転方向(換言すれば車両14の進行方向)とを示す前進側パルスまたは後進側パルスを出力する。以下、Vセンサ76を「回転数センサ」という。
図1の説明に戻ると、前記したレンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ80が設けられ、運転者によって選択されたP,R,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
変速機油圧供給機構46にはエンジン10で駆動される油圧ポンプ46aが設けられると共に、油圧ポンプ46aの吐出口から電磁ソレノイドバルブなどを介してCVT26のドリブンプーリ26bに通じる油路などには圧力センサ82が配置され、その部位に供給される油圧に応じた信号を出力する。
また、変速機油圧供給機構46に接続されるリザーバ(オイルパン)には油温センサ84が配置されて油温(作動油ATFの温度TATF)に応じた信号を出力する。
尚、変速機油圧供給機構46の詳細は前記した特許文献1に記載されているため、この明細書では説明を省略する。
上記したNTセンサ70などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ90に送られる。エンジンコントローラ66とシフトコントローラ90はそれぞれCPU,ROM,RAM,I/Oなどで構成されるマイクロコンピュータを備えると共に、相互に通信自在に構成される。
シフトコントローラ90は、上記したセンサ出力に基づき、変速機油圧供給機構46の電磁ソレノイドバルブなどを励磁・消磁して前後進切換機構28とトルクコンバータ24の動作を制御すると共に、プーリ供給油圧(側圧)を制御してCVT26の動作を制御する。
エンジンコントローラ66は上記したセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構20の動作を制御し、燃料噴射量や点火時期を決定してインジェクタあるいは点火プラグなどの点火装置の動作を制御すると共に、車両14のアイドリングストップ制御を実行する。
図3はこの実施例に係る装置の動作のうちの、エンジンコントローラ66のアイドリングストップの第1許可条件の成立判定と許可を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは所定時間、例えば10msecごとに実行される。
尚、図3から図7を参照して説明する技術は特許文献1に記載される公知技術であるが、この実施例はその公知技術を前提とするので、以下、それについて説明する。
図3にあっては、先ずS10においてBRK ON、即ち、ブレーキスイッチ58の出力からブレーキペダル36が運転者によって操作されているか(踏まれているか)否か判断し、否定されるときはS12に進み、アイドリングストップ(I/S)不許可、即ち、アイドリングストップの実行を禁止する。図3などのフロー・チャートでSは処理ステップを示す。
一方、S10で肯定されるときはS14に進み、AP OFF、即ち、アクセル開度センサ56の出力からアクセルペダル18が操作されていないか(踏まれていないか)否か判断し、否定されるときはS12に進む。
S14で肯定されるときはS16に進み、回転数センサ76の出力から車速Vを検出し、検出された車速Vが零か否か判断し、否定されるときはS12に進む。車速Vの検出は具体的には、後で触れる図7(b)に示すようなパルス列のパルス間隔を時間計測することで行なう。
S16で肯定されるときはS18に進み、シフトコントローラ90に通信して得た情報からCVT26のレシオ(変速比)がロー(Low)か否か判断し、否定されるときはS12に進む一方、肯定されるときはS20に進み、アイドリングストップを許可する。
S10からS18までに記載される条件が、少なくとも車両14が停止中である(S16の判断)ことを含む第1許可条件に相当する。このように、第1許可条件が成立したと判定されたとき、アイドリングストップが許可され、アイドリングストップが開始される。
図4は、同様にこの実施例に係る装置の動作のうちの、許可されて開始されたアイドリングストップを継続するか、あるいは終了してエンジン10の始動に復帰するかの判定を示すフロー・チャートである。図示のプログラムも所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S100においてBRK OFF、即ち、ブレーキスイッチ58の出力からブレーキペダル36が運転者によって操作されていないか(踏まれていないか)否か判断し、肯定されるときはS102に進み、アイドリングストップを終了してエンジン10の始動(駆動)に復帰する。
一方、S100で否定されるときはS104に進み、AP ON、即ち、アクセル開度センサ56の出力からアクセルペダル18が操作されているか(踏まれているか)否か判断し、肯定されるときはS102に進む。
他方、S104でも否定されるときはS106に進み、移動判定フラグFのビットが1にセットされているか否か判断する。これについては後述する。S106で肯定されるときはS102に進み、アイドリングストップを終了してエンジン10の始動に復帰する一方、S106で否定されるときはS108に進み、アイドリングストップを継続する。
図5は図4フロー・チャートのS106の移動判定フラグFのビットの設定処理を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S200においてアイドリングストップが許可、即ち、図3フロー・チャートのS20で第1許可条件が成立したと判定されてアイドリングストップが許可されたか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。
一方、S200で肯定されるときはS202に進み、ENGストップ過渡状態、具体的にはエンジン10が停止されつつある過渡状態にあるか、より具体的にはエンジン10が完全に停止されているか否か判断する。即ち、第1許可条件が成立したと判定されてアイドリングストップが許可されたとき、エンジン10が停止されたか否か判定する。
エンジン10が完全に停止されているか否かは、アイドリングストップが許可されてからの経過時間を計測し、計測値が所定時間に到達したか否か判定することで判断する。尚、それに代え、前記したクランク角センサ50の出力(パルス)から判断(判定)しても良い。
図6は図5フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図示の如く、アイドリング許可判断がなされてからエンジン10が完全に停止するまで若干の時間がかかるが、その間にエンジン10の揺動に起因する変位によって回転数センサ76からパルスが出力されることがある。
図7は図2に示す回転数センサ76のパルス出力回路76bから出力されるパルスを示す説明図である。
実施例に係るCVT26のギヤ30bの円周に12個の突起が形成されるため、車両14の移動によってではなく、エンジン10などのパワープラントの揺動に起因するCVT26の変位によってパルスが出力されるとき、その変位分に相当するパルス数は例えば3個となる。
従って、通常はパルスが1個出力された時点で後退(あるいは前進)と判定する一方、パワープラントの揺動に起因するCVT26の変位によってパルスが出力される可能性がある状態では、出力パルスについて例えば後進側を正、前進側を負として合計し、得た合計値が変位分に相当するパルス数(3個)を超えるか否か判断することで、パルス出力がパワープラントの揺動に起因するのか、車両14の実際の移動に起因するのかを判別でき、その状態での車両14の後退(あるいは前進)を精度良く判定することができる。
具体的に説明すると、同図(a)に示すようなパルス出力例の場合、パルスの合計は後進側パルス3−前進側パルス2=後進側パルス1となり、合計3個以下であることから、パルス出力は車両14の実際の移動ではなく、パワープラントの揺動に起因するものと判定することができる。
従って、同図(b)に示すようなパルス出力例の場合、パワープラントの揺動に起因するCVT26の変位によってパルスが出力される可能性のある状態にあるか否か判定することで、車両14が実際に移動したか否かを判定することができる。
S202のENGストップ過渡状態判断が、そのパワープラントの揺動に起因するCVT26の変位によってパルスが出力される可能性のある状態にあるか否かの判定に相当する。図6タイム・チャートに示す如く、そのような過渡状態(NE=0が安定しない状態)にあるときは、パルスマスクをかけることになる。
図5フロー・チャートの説明に戻ると、S202で肯定されてエンジン10が完全には停止していないと判定されるときはS204に進み、回転数センサ(Vセンサ)76から所定の複数個のパルスが出力されたか、具体的には前進側パルスと後進側パルスのうちのいずれかからなる(換言すれば同一方向の)所定の複数個のパルスが出力されたか、より具体的には過去500msec中(所定時間内に)同一方向に通算して(連続的であると断続的であると問わず)4パルス(所定の複数個のパルス)が出力されたか否か判断する。
S204で肯定されるときはS206に進み、前記したフラグFのビットを1にセットする一方、否定されるときはS208に進み、前記したフラグFのビットを0にリセットする。このフラグFのビットを1にセットすることは車両14の実際の移動を検知したこと、0にリセットすることは検知しないことを意味する。
他方、S202で否定されてエンジン10が(完全に)停止したと判断(判定)され、パワープラントの揺動に起因するCVT26の変位によってパルスが出力される可能性がないと判断されるときはS210に進み、前進側パルスが所定の複数個より少ない個数、より具体的には少なくとも1個出力されたか否か判断し、肯定されるときはS212に進み、フラグFのビットを1にセットする。
また、S210で否定されるときはS214に進み、後進側パルスが同様に所定の複数個より少ない個数、より具体的には少なくとも1個出力されたか否か判断し、肯定されるときはS212に進む一方、否定されるときはS208に進む。
即ち、エンジン10が(完全には)停止していないと判定される前は回転数センサ76から所定の複数個のパルスが出力されたとき車両14が移動したと判定する一方、エンジン10が(完全に)停止したと判定された後は回転数センサ76から所定の複数個より少ない個数、正確には少なくとも1個、より正確には1個のパルスが出力されたとき車両14が移動したと判定する。
換言すれば、回転数センサ76から前進側パルスまたは後進側パルスがエンジン停止判定手段の判定結果で決定される個数以上出力されたとき車両14が移動したと判定する。
これにより、図4フロー・チャートにあってはS106で肯定されてS102に進み、アイドリングストップが終了(中止)させられてエンジン10の始動に復帰される。
以上、図3から図7を参照して特許文献1記載の技術を説明したが、この実施例の特徴は、その特許文献1記載の技術を前提とした上で、それに加え、少なくとも車両14が所定車速以下で減速走行中であることを含む第2許可条件が成立したか否か判定する第2許可条件成立判定手段と、第2許可条件が成立したと判定されたときエンジン10のアイドリングストップを許可する第2アイドリングストップ許可手段とを備えると共に、第2許可条件が成立したと判定される場合と第1許可条件が成立したと判定される場合とで、前進側パルスまたは後進側パルスに基づく車両14の移動判定を異ならせるように構成したことにある。
図8は図1に示す装置の動作のうちの、この実施例の特徴的な部分の動作を示すフロー・チャート、図9から図11はその動作を説明するタイム・チャートである。図示のプログラムもエンジンコントローラ66によって図5フロー・チャートと平行して所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S300においてアイドリングストップが許可、即ち、第2許可条件が成立したと判定されてアイドリングストップが許可されているか否か、あるいは図3フロー・チャートのS20で第1許可条件が成立したと判定されてアイドリングストップが許可されているか否か判断する。
図9を参照して説明すると、エンジンコントローラ66は図示しないルーチンにおいて、車両14が所定車速、例えば10km/h以下で減速走行中であるとき、第2許可条件が成立したと判定し、第2許可条件が成立したと判定されたときエンジン10のアイドリングストップを許可する。
即ち、車両14はアイドル回転数での燃料噴射状態でトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cなどが解放され、車速が10km/hまで低下したとき、第2許可条件が成立したと判定される(この後、燃料噴射が停止される)。従って、第2許可条件は減速走行中以外にロックアップクラッチ24cの解放などの条件も含み得ることから、「少なくとも車両14が所定車速以下で減速走行中であることを含む」と定義した。
以下、第2許可条件が成立して許可されたアイドリングストップを「減速時アイドリングストップ」といい、S10からS18までに記載される第1許可条件が成立して許可されたアイドリングストップを「停止時アイドリングストップ」という。
図8フロー・チャートにおいてS300で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS302に進み、回転数センサ76から後進側パルスが規定個数、例えば通算して4個(連続的にあるいは断続的に)以上出力されたか否か判断(判定)し、肯定されるときはS304に進み、車両14が移動したと判定し(第2移動判定を実行し)、アイドリングストップを終了してエンジン10の始動(駆動)に復帰する。
他方、S302で否定されるときはS306に進み、車両14が停止したか否か判断(判定)する。これは回転数センサ76から出力される前進側パルスのパルス離間時間間隔(パルス間の時間間隔)が適宜設定される所定時間以上か、換言すれば回転数センサ76から1パルスも出力されない状態が所定時間以上継続したか否か判断することで行い、肯定されるとき、車両14が停止したと判定する。
S306で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS308に進み、所定時間が経過したか否か判断する。
即ち、S306で肯定されて車両14が停止したと判断されたとき、図示しないルーチンにおいてタイマカウンタ(ダウンカウンタ)に所定時間に相当する既定値がセットされてダウンカウント(時間計測)が開始されるが、S308ではそのタイマの値が零に達したか否か判定することで所定時間の経過を判断する。
S308で肯定されるときはS310に進み、前記した図5フロー・チャートの処理に従って車両14が移動したか否か判断する。即ち、回転数センサ76の前進側パルスまたは後進側パルスがエンジン10の停止判定結果で決定される個数以上出力されたとき車両14が移動したと判定する(第1移動判定を実行する)。
より具体的には、第1許可条件成立による停止時アイドリングストップの際、エンジン10が(完全には)停止していないと判定される前は回転数センサ76から所定の複数個(例えば4個)のパルスが出力されたとき車両14が移動したと判定する一方、エンジン10が(完全に)停止したと判定された後は回転数センサ76から所定の複数個より少ない個数、より正確には1個のパルスが出力されたとき車両14が移動したと判定する。
一方、S308で否定されるときは以降の処理をスキップする(換言すれば、第1移動判定の実行を中止する)。即ち、車両14が停止する際には駆動輪12が回転状態から停止状態に遷移すると共に、車体が前後方向に揺動する。そのとき、出力軸CS(検出対象)は停止するものの、車体(検出側)は揺動して回転数センサ76からパルスが入力されるおそれがあることから、上記したように所定時間の経過を判断する。
また、S308で否定される場合、次回以降のプログラムループにおいてS300で肯定されてS302に進むことになるが、そこでも肯定されるときはS304に進み、車両14が移動したと判定し(第2移動判定を実行し)、第2許可条件成立によるアイドリングストップを終了してエンジン10の始動(駆動)に復帰する。
上記した如く、この実施例にあっては、車両14に搭載されるエンジン10と、前記エンジン10で駆動される油圧ポンプ46aと、前記油圧ポンプ46aから供給される油圧で動作して入力軸(メインシャフト)MSから入力される前記エンジン10の出力を変速して出力軸(カウンタシャフト)CSから駆動輪12に伝達する自動変速機Tと、前記自動変速機Tの出力軸または入力軸の回転数と回転方向とを示す前進側パルスまたは後進側パルスを出力する回転数センサ(Vセンサ)76と、少なくとも前記回転数センサ76の出力に基づいて前記車両14が停止中であることを含む第1許可条件が成立したか否か判定する第1許可条件成立判定手段(エンジンコントローラ66。S10からS18)と、前記第1許可条件成立判定手段によって前記第1許可条件が成立したと判定されたとき前記エンジン10のアイドリングストップ(停止時I/S)を許可する第1アイドリングストップ許可手段(エンジンコントローラ66。S20)と、前記第1アイドリングストップ許可手段によって前記第1許可条件が成立して前記エンジン10のアイドリングストップが許可されたとき、前記エンジン10が停止したか否か判定するエンジン停止判定手段(エンジンコントローラ66。S106,S200からS202)と、前記回転数センサ76から前記前進側パルスまたは後進側パルスが前記エンジン停止判定手段の判定結果で決定される個数以上出力されたとき前記車両が移動したと判定する移動判定手段(エンジンコントローラ66。S106,S204からS212)と、前記移動判定手段によって前記車両が移動したと判定されたとき前記アイドリングストップを終了して前記エンジン10を始動するエンジン始動手段(エンジンコントローラ66。S102)とを備える車両の制御装置において、少なくとも前記車両14が所定車速以下で減速走行中であることを含む第2許可条件が成立したか否か判定する第2許可条件成立判定手段(エンジンコントローラ66)と、前記第2許可条件成立判定手段によって前記第2許可条件が成立したと判定されたとき前記エンジンのアイドリングストップ(減速時I/S)を許可する第2アイドリングストップ許可手段(エンジンコントローラ66)とを備えると共に、前記移動判定手段は、前記第2許可条件成立判定手段によって前記第2許可条件が成立したと判定される場合と前記第1許可条件成立判定手段によって前記第1許可条件が成立したと判定される場合とで、前記前進側パルスまたは後進側パルスに基づく前記車両14の移動判定を異ならせる(S300からS310)如く構成したので、即ち、第1許可条件が成立したと判定されたときは前進側パルスまたは後進側パルスがエンジン停止判定手段の判定結果で決定される個数以上出力されたか否かで車両14の移動判定を行うのに対して相違させる、例えば、後進側パルスのみに基づいて車両14の移動判定を行うように構成することで、車両14が所定車速以下で減速走行中であること(減速時)を許可条件に加えてアイドリングストップを許可した場合でも、車両14の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン10の始動に復帰することができ、よって車両14が所定車速以下で減速中の減速時においてもアイドリングストップを効果的に実行することができる。
また、特許文献1記載の技術と同様、図3から図7に示す如く、第1許可条件が成立したと判定されてアイドリングストップ(停止時I/S)が許可された場合も、前進側パルスまたは後進側パルスがエンジン停止判定手段の判定結果で決定される個数以上出力されたか否かで車両14の移動判定を行うことで、停車時の車両14の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン10の始動に復帰することができ、よって運転者に不安感を与えるのを回避できることはいうまでもない。
また、前記移動判定手段は少なくとも前記前進側パルスの離間時間間隔(パルス間の時間的な間隔)に基づいて前記車両14が停止したか否か判定する車両停止判定手段(エンジンコントローラ66。S306)を備えると共に、前記第2アイドリングストップ許可手段によって前記エンジン10のアイドリングストップ(減速時I/S)が許可された場合、前記車両停止判定手段によって(S306において)前記車両14が停止したと判定される前に(S302において)前記回転数センサ76から前記後進側パルスが規定個数(例えば4個)以上出力されたとき、前記車両14が移動したと判定する第2移動判定を実行する如く構成したので、上記した効果に加え、減速時を第2の許可条件に加えてアイドリングストップを許可した場合でも、車両14の後進(後退)方向の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン始動に復帰することができ、よって車両14が後退して運転者に不安感を与えるのを回避することができる。
これについて図10を参照して説明すると、車両14が所定車速以下で減速中であること(減速時)を許可条件に加えてアイドリングストップを許可した場合、車両14は停止するまでは回転数センサ76から前進側パルスが出力され続ける結果、特許文献1記載の技術ではアイドリングストップを許可しても直ちに車両14の移動が検知されてエンジン10の始動に復帰することになり、アイドリングストップを効果的に実行することができない。
しかしながら、第2アイドリングストップ許可手段によって減速時アイドリングストップが許可された場合にはS300で肯定されてS302に進み、車両停止判定手段によって車両14が停止したと判定される前に、より詳しくは図8フロー・チャートでS306に進む前に、S302において、回転数センサ76から後進側パルスが規定個数(例えば4個)以上出力されたとき、車両14が移動したと判定(第2移動判定を実行)する如く構成したので、車両14の後進(後退)方向の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン10の始動に復帰することができる。
尚、減速時アイドリングストップが許可されてS300で肯定されてS302に進むとき、車両14が停止に向けて前進走行中である限り、S302で否定されるので、減速時アイドリングストップの実行に支障を来たすことはない。
また、車両停止判定手段がパルスの離間時間間隔に基づいて、換言すれば回転数センサ76から1パルスも出力されない状態が所定時間以上継続したか否かを判断して車両14の停止を判定するように構成したので、減速時を許可条件に加えてアイドリングストップを許可した場合、最初に述べた如く、例えば登坂路で停車するときに運転者のブレーキ踏み込みが緩み、図11に示す如く、車両14が減速前進状態から車速零を一瞬通過して後退してしまい、車両14の停止を確実に検知するのが困難となることがある。
特許文献1記載の技術では車両14の停止が検知されてから車両14の移動の有無を判定し、移動が検知されたとき、アイドリングストップを中止してエンジン始動に復帰させるように構成されるため、車両14の停止が検知されない限り、エンジン始動に復帰させることができず、よってアイドリングを効果的に実行することができない。
しかしながら、その場合も、車両停止判定手段によって車両が停止したと判定される前に回転数センサから後進側パルスが規定個数以上出力されたとき、車両が移動したと判定する第2移動判定を実行する如く構成したので、減速時を第2の許可条件に加えてアイドリングストップを許可した場合でも、車両14が停止したか否かを精度良く判定することができる。その結果、車両14の後進(後退)方向の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン始動に復帰することができる。
また、前記移動判定手段は、前記第2アイドリングストップ許可手段によって前記エンジン10のアイドリングストップが許可された場合、前記車両停止判定手段によって前記車両14が停止したと判定された後に前記回転数センサ76から前記前進側パルスまたは後進側パルスが前記エンジン停止判定手段の判定結果で決定される個数以上出力されたとき、前記車両14が移動したと判定する第1移動判定を実行する(S308,S310)如く構成したので、上記した効果に加え、車両14が停止したと判定された後は車両14の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン始動に復帰することができる。
また、前記移動判定手段は、前記第2アイドリングストップ許可手段によって前記エンジン10のアイドリングストップが許可された場合、前記車両停止判定手段によって前記車両14が停止したと判定された後も、所定時間が経過するまでは、前記第1移動判定の実行を中止する一方、前記第2移動判定の実行を継続する(S300からS310)如く構成したので、上記した効果に加え、車両14の停止に伴って車両14にピッチング(前後揺動)が生じ、それに起因してパルスが生じたときも、そのパルスによって車両14が移動したと誤検知するのを防止することができる。また、その間もS300以降に戻って第2移動判定を継続することで、車両14の後進(後退)方向の移動を精度良く検知してアイドリングストップを迅速に中止してエンジン始動に復帰することができる。
また、前記エンジン停止判定手段の判定結果で決定される個数は、前記エンジン10が停止したと判定された後は1個である(S202,S210からS214)如く構成したので、上記した効果に加え、車両14の移動を一層迅速に検知してエンジン10の始動に復帰することができる。
尚、上記においてエンジン10などのパワープラントの揺動に起因するCVT26の変位によってパルスが出力されるとき、その変位分に相当するパルス数は3個としたが、これはCVT26のギヤ30bの円周に12個の突起が形成される場合であり、ギヤ30bなどに形成される突起の個数が相違すれば、異なるものである。
また、自動変速機Tとして無端可撓部材がベルトからなるCVT26を開示したが、それに限られるものではなく、無端可撓部材はチェーンであっても良い。さらに、自動変速機TとしてCVT26を図示したが、それに限られるものではなく、有段変速機であっても良い。