図1は、この発明の実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
図1において、符号10はエンジン(内燃機関(駆動源))を示す。エンジン10は駆動輪12を備えた車両14に搭載される(車両14は駆動輪12などで部分的に示す)。
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ16は車両運転席床面に配置されるアクセルペダル18との機械的な接続が絶たれて電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構20に接続され、DBW機構20で開閉される。
スロットルバルブ16で調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と混合されて混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、各気筒の燃焼室に流入する。燃焼室において混合気は点火プラグ(図示せず)で点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト(図示せず)に接続される出力軸22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
出力軸22の回転はトルクコンバータ24を介して無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)26に入力される。
出力軸22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。トルクコンバータ24はロックアップクラッチ24cを備える。
CVT26はメインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される無端可撓部材からなる動力伝達要素、例えば金属製のベルト26cからなる。
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2と、可動プーリ半体26a2の側方に設けられ、油圧が供給されるとき、可動プーリ半体26a2を固定プーリ半体26a1に向けて押圧する油圧アクチュエータ26a3とを備える。
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2と、可動プーリ半体26b2の側方に設けられ、油圧が供給されるとき、可動プーリ半体26b2を固定プーリ半体26b1に向けて押圧する油圧アクチュエータ26b3とを備える。
CVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。すなわち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32からドライブシャフト(駆動軸)34を介して左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
駆動輪(前輪)12と従動輪(後輪。図示せず)からなる4個の車輪の付近にはディスクブレーキ36が配置されると共に、車両運転席床面にはブレーキペダル40が配置される。
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ44を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は油圧供給機構46のマニュアルバルブに伝えられる。
図示は省略するが、油圧供給機構46はエンジン10によって駆動されてリザーバから作動油を汲み上げて油路に吐出する油圧ポンプと、油路に配置される種々の制御バルブと電磁バルブを備え、吐出された作動油の圧力を調整して得た油圧をトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cに供給し、ロックアップクラッチ24cを係合・開放する。
また、油圧供給機構46は可動プーリ半体26a2,26b2の油圧アクチュエータ26a3,26b3のピストン室に油圧を供給し、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させる。その結果、プーリ26a,26b間のプーリ幅が変化してベルト26cの巻掛け半径が変化し、エンジン10の回転を駆動輪12に伝達する変速比(レシオ)が無段階に変化させられる。このように、CVT26はエンジン10の回転を入力して無段階に変速する。
さらに、油圧供給機構46は運転者によって操作されたレンジセレクタ44の位置に応じて動作するマニュアルバルブを介して油圧を前後進切換機構28の前進クラッチ28aまたは後進ブレーキクラッチ28bのピストン室に供給し、車両14を前進方向あるいは後進方向に走行可能にする。
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブ16の下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
DBW機構20のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
また、アクセルペダル18の付近にはアクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)56が設けられてアクセルペダル18の運転者による踏み込み量(アクセルペダル操作量)に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力する。ブレーキペダル40の付近にはブレーキスイッチ58が設けられて運転者のブレーキペダル40の操作に応じてオン信号を出力する。
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいてDBW機構20の動作を制御すると共に、インジェクタ(図示せず)による燃料噴射と点火プラグなどによる点火時期を制御する。
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT、より具体的には変速機入力軸回転数(と前進クラッチ28aの入力軸回転数)を示すパルス信号を出力する。
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられてドリブンプーリ26bの回転数NDN、具体的にはカウンタシャフトCSの回転数、より具体的には変速機出力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
また、セカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近には車速センサ(回転数センサ。車速検出手段)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数と回転方向を示すパルス信号(具体的には車速Vを示すパルス信号)を出力する。
また、レンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ80が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
油圧供給機構46の油路には油圧センサ82が配置されてドリブンプーリ26bの油圧アクチュエータ26b3のピストン室に供給される油圧に応じた信号を出力する。
上記したNTセンサ70などの出力はシフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、油圧供給機構46の電磁バルブを励磁・非励磁して前後進切換機構28とCVT26とトルクコンバータ24を制御する。
図2はシフトコントローラ90で使用される変速マップの特性を説明する説明図である。
図2に示すように、シフトコントローラ90は、検出された車速Vとアクセル開度APとから変速マップを検索してエンジン10の目標回転数、より具体的にはCVT26に入力される回転数NDRの目標値(以下「目標NDR」という)を算出する。また、シフトコントローラ90は、目標NDRとエンジン10の実際の回転数、より具体的にはCVT26に入力される回転数NDRの検出値(以下「実NDR」という)との偏差が減少(一致)するように変速比を制御する。
変速マップは、車両14が発進してから車速Vが所定速度に達するまで、すなわち、車両14が発進時にあるときに用いられる発進マップ(破線で示す)と、車両14が発進時から通常時(通常走行時)に移行したときに用いられる通常マップ(実線で示す)の少なくとも2種類が用意される。
図示の如く、発進マップは、同一の車速Vとアクセル開度APに対して、通常マップよりも目標NDRが高くなるように設定される。これは、車両14を発進させるとき、運転者はアクセルペダル18をある程度踏み込んで車両14を加速させようと意図することから、車両14の発進時には目標NDRが通常時よりも高く設定された発進マップを選択して運転者に車両発進時の加速度感をより体感させるためである。
図3はシフトコントローラ90の動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムはシフトコントローラ90において所定時間ごとに実行される。
以下説明すると、S10において車速センサ76とアクセル開度センサ56の出力から、車速V、アクセル開度APおよびアクセル開度変化量ΔAPを検出(算出)する(S:処理ステップ)。
次いでS12に進み、車両14が発進時にあるか否か判断(判定)する。これは、検出された車速Vが所定速度未満で、かつアクセル開度APが規定値以上か否か判定することで判断する。
S12で肯定されて発進時にあると判断されるときはS14に進み、変速マップとして前記した発進マップを選択する。
次いでS16に進み、発進時に運転者によってキックダウン(KD)が要求されたか否かを判定するためのキックダウン判定条件に使用される、発進時KD判定しきい値を選択(設定)する。KD判定しきい値は、車速Vに基づいて検索されるアクセル開度APのしきい値(APしきい値)とアクセル開度変化量(アクセルペダル18の踏み込み速度)のしきい値(ΔAPしきい値)とからなる(従って、キックダウン判定条件は、車速VとAPしきい値とΔAPしきい値とアクセル開度APとアクセル開度変化量ΔAPとから設定される(これら4つのパラメータからキックダウンが要求されたか否かが判定される))。尚、この明細書においてアクセル開度APとアクセル開度変化量ΔAPを「アクセル操作パラメータ」という。
一方、S12で否定されるときはS18に進み、車両14が発進した後、所定条件が成立したか否か判断する。これは、車速Vが前記した所定速度以上で、かつアクセル開度が前記した規定値未満であるか否かを判定することで判断する。
S18で否定されて所定条件が成立しないと判断されるときは車両14が依然として発進時にあると判断し、S12に進んで発進マップを選択する一方、S18で肯定されるときは車両14が発進時から通常時に移行したと判断し、S20に進んで前記した通常マップを選択する。
次いでS22に進み、S16と同様、通常時KD判定しきい値を選択(設定)する。
図4は発進時KD判定しきい値と通常時KD判定しきい値を説明する説明図である。
図示の如く、発進時KD判定しきい値と通常時KD判定しきい値は異なるように設定される。すなわち、KD判定しきい値は、同一の車速Vに対し、発進時の値(特性A,A’)が通常時の値(特性B,B’)よりも大きくなるように設定される。また、KD判定しきい値は、発進時の値と通常時の値のいずれも、車速Vが大きくなるほど小さくなるように設定される。
尚、KD判定しきい値としてAPしきい値のみ(特性A,B)、あるいはΔAPしきい値のみ(特性A’,B’)としてもよく、さらにはAPしきい値とΔAPしきい値の一方または双方を車速Vに対して同一となる固定値としてもよい。
図3フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS24に進み、S10で検出されたアクセル開度APとアクセル開度変化量ΔAPがそれぞれ、図4に示す特性において同一の車速Vから検索される(S16またはS22で選択された)APしきい値とΔAPしきい値(KD判定しきい値)以上か否か判断する。
S24で否定されるときはS26をスキップする一方、肯定されるときはS26に進んでキックダウン(KD)モードに移行する(後述)。尚、キックダウンモードは、上記したように、キックダウンを生じさせるようにCVT26を制御するモードを意味する。
次いでS28に進み、目標NDRに基づいて変速制御する。すなわち、実NDRが発進マップあるいは通常マップから検索される目標NDRと一致するようにCVT26の変速比を制御する。
図5は図3フロー・チャートのS26のキックダウンモードの処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャート、図6は図3および図5フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
以下説明すると、S100において現在選択されている変速マップが発進マップか否か判断し、肯定されるときはS102に進み、発進マップからではなく、通常マップから検索される目標NDRに基づいてキックダウン時目標回転数(キックダウン時の目標NDR。以下「KD時目標NDR」という)を算出(決定)する。
他方、S100で否定されるときはS104に進み、現在選択されている変速マップ(この実施例では通常マップ)から検索される目標NDRに基づいてKD時目標NDRを算出(決定)する。この実施例のように変速マップが発進マップと通常マップの2種類の場合には、S102とS104の処理内容は実質的に同一となる。
図6タイム・チャートに示す如く、S102とS104で算出されるKD時目標NDRは、通常マップから検索される目標NDRに所定の比率を乗じて減少させられる値、例えば通常マップから検索される目標NDRの60%から70%程度の値に算出される。
次いでS106に進み、算出されたKD時目標NDRに基づいてCVT26を変速制御する。すなわち、上記したように実NDRがKD時目標NDRと一致するようにCVT26の変速比を制御する。
図6タイム・チャートにおいて時刻t1からt2までの処理がそれに相当する。図示の如く、この間はKD時目標NDRが急峻な値となるので、実NDRもそれに応じて急増させられる。
次いでS108に進み、目標NDRに比して減少させられたKD時目標NDRを一定の傾きで上昇させるように制御する。図6タイム・チャートにおいて時刻t2からt3の処理がそれに相当する。尚、開示の如く、実NDRもKD時目標NDRに追従して上昇させられる。
次いでS110に進み、KD時目標NDRが目標NDRをαだけ超えたか否か判断し、否定されるときはS108に戻って上記した処理を継続する。
一方、S110で肯定されるときはキックダウンモードが終了したと判断し、S112に進んで図3フロー・チャートのS28の処理と同様、実NDRが、発進マップあるいは通常マップから検索される目標NDRと一致するようにCVT26の変速比を制御する。
ここで、図3および図5フロー・チャートの処理を説明すると、図3フロー・チャートにおいてはS16で発進時KD判定しきい値として通常時KD判定しきい値よりも大きな値を選択し、S24で検出されたアクセル開度APやアクセル開度変化量ΔAPと選択された発進時KD判定しきい値(車速Vに基づいて検索したアクセル操作パラメータ)とを比較してキックダウンが要求されたか否か判定するように構成したので、車両14が発進時にあると判定される場合、車両14が発進時にない(通常時にある)と判定される場合に比し、キックダウンモードに移行し難く(キックダウンが要求されたと判定され難く)することができる。
また、発進時KD判定しきい値も通常時KD判定しきい値も、車速が低下するに従って増加するように設定されることから、低車速ほどキックダウンモードに移行し難くすることができる。
次いで図7,8を参照して図5フロー・チャートの処理を説明する。図7は図3および図5フロー・チャートの処理の一部を説明するタイム・チャート、図8は図7タイム・チャートのKD時目標NDRをより詳細に説明する説明図である。
図7に参考例(特性C)として示すように、車両14の発進時、条件が成立したとき、キックダウンモードに直ちに移行させることも考えられるが(時刻t01)、そのように構成すると、その後時刻t1までの間は、アクセルペダル18を踏み込んでも実NDRは上昇せず、運転者は車両14の加速度感や車速Vの伸び感を感じることができない不都合が生じる。
それに対して、この実施例では上記したように、車両14の発進時はキックダウンモードに移行させ難くし、特性Dに示すように、時刻t01での車速Vで決定されるアクセル開度APやアクセル開度変化量ΔAPではキックダウンモードに移行させないように構成した(図3フロー・チャートのS16,S24)。これにより、時刻t01からt1では実NDRがアクセルペダル18の踏み込み量に応じて上昇することになるため、運転者に車両14の加速度感や車速Vの伸び感を与えることができる。尚、時刻t1でキックダウンモードに移行することは上記した通りである。
ただし、図8の特性Eに示すように、KD時目標NDRを発進マップにより検索される目標NDRに基づいて設定(算出)すると(KD時目標NDRを発進マップにより検索される目標NDRの60%から70%程度の値に設定すると)、発進マップにより検索される目標NDRはもともと高めに設定されているため、KD時目標NDRも、この高めに設定された発進マップの目標NDRに対応してより高い回転数となる。このため、キックダウンさせると実NDRが急激に上昇し、運転者にエンジン10の吹き上がり感を与える不都合がある。
また、KD時目標NDRを高い回転数に設定すると、実NDRをKD時目標NDRに到達させるのに時間がかかり、その分だけレスポンスが悪化する印象を運転者に与える。
その点を鑑み、図5を参照して説明した如く、この実施例では図8の特性Fに示すように、キックダウンが要求されるとき、発進マップが選択されている場合であっても、発進マップで検索される目標NDRに基づいてKD時目標NDRを算出するのではなく、通常マップで検索される目標NDRに基づいてKD時目標NDRを算出(通常マップで検索される目標NDRの60%から70%程度の回転数としてKD時目標NDRを算出)して変速制御するようにした(図5フロー・チャートのS100からS106)。
すなわち、通常マップで検索される目標NDRは、発進マップで検索される目標NDRよりも低い回転数に設定されるので、通常マップで検索される目標NDRに基づいて算出されるKD時目標NDRも、発進マップで検索される目標NDRに基づいて算出されるKD時目標NDRより低くなり、発進マップに基づくKD時目標NDRを使用する場合のようにエンジン10の吹き上がり感が生じるのを解消することができる。
さらに、KD時目標NDRを通常マップにより検索される目標NDRに基づいて変速制御するようにしたので、実NDRをより早くKD時目標NDRに到達させることができて運転者に与えるレスポンス感も向上させることができる。
このように、この実施例においては車両14が発進時のときは、キックダウンモードに移行させ難くすることで、アクセルペダル18の踏み込み量に対応するような車両14の加速度感や車速Vの伸び感を与える一方、さらにアクセルペダル18が踏み込まれた場合にはキックダウンモードに移行させてキックダウンさせるようにして運転者が意図するレスポンスを実現するようにした。
上記した如く、この実施例にあっては、車両14に搭載される駆動源(エンジン)10の回転を入力して無段階に変速する無段変速機(CVT)26と、前記車両の走行速度を示す車速Vを検出する車速検出手段(車速センサ。S10)76と、前記車両の運転席に配置されるアクセルペダル18の踏み込み量を示すアクセル開度APを検出するアクセル開度検出手段(アクセル開度センサ。S10)56と、前記車両が発進時にあるか否か判定する車両発進時判定手段(S12,S18)と、前記車両発進時判定手段の判定結果において前記車両が発進時にあると判定されたときは変速マップとして発進マップを選択する一方、前記車両が発進時にないと判定されたときは前記変速マップとして前記発進マップよりも目標回転数(目標NDR)が低く設定された通常マップを選択すると共に、前記検出された車速とアクセル開度とに基づき、前記駆動源からの入力回転数(実NDR)が前記選択された変速マップから検索される前記目標回転数と一致するように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段(S14,S20,S28)とを備えた無段変速機の制御装置(シフトコントローラ)90において、前記車両発進時判定手段の判定結果に応じて前記検出された車速と前記アクセル開度を少なくとも含むアクセル操作パラメータとから設定されるキックダウン判定条件に従い、前記車両の運転者によってキックダウンが要求されたか否か判定するキックダウン判定手段(S16,S22,S24)を備え、前記変速比制御手段は、前記キックダウン判定手段によって前記キックダウンが要求されたと判定されたとき、前記検出された車速とアクセル開度とに基づき、前記駆動源からの入力回転数がキックダウン時目標回転数(KD時目標NDR)と一致するように前記無段変速機の変速比を制御すると共に、前記キックダウン判定条件は、前記車両が発進時にあると判定される場合、前記車両が発進時にないと判定される場合に比し、前記キックダウンが要求されたと判定され難いように前記アクセル操作パラメータが設定される(S16,S22,S24,S26,S100からS110)如く構成したので、車両14の発進時にはキックダウンされ難いこととなり、車両14の加速度感や車速Vの伸び感が得られないといった事象を抑制することができる。すなわち、車両14が発進時にあるときはキックダウンが要求されたと判定され難いようにアクセル操作パラメータが設定されるようにしたので、運転者に違和感を与えないようにキックダウンモードへの移行を制御することができる。
また、前記変速比制御手段は、前記キックダウン判定手段によって前記キックダウンが要求されたと判定され、かつ前記車両が発進時にあると判定されるとき、前記通常マップから検索される目標回転数に基づいて前記キックダウン時目標回転数を決定する如く構成(S26,S100,S102,S106)したので、上記した効果に加え、キックダウンモードに移行するときには、エンジン10の吹き上がり感やレスポンスの悪化を防止することができる。
すなわち、KD時目標NDRを発進マップから検索される目標NDRに基づいて決定すると、発進マップから検索される目標NDRは通常マップから検索される目標NDRに比べて高い回転数に設定されているため、KD時目標NDRも高い回転数に設定される。しかしながら、KD時目標NDRが高い回転数に設定されると、実NDRは高い回転数に設定されたKD時目標NDRに追従させられるため、エンジン10が吹き上がったような印象を運転者に与える。また、KD時目標NDRを高い回転数に設定するほど、その分実NDRがKD時目標NDRに到達するまでの時間が長くなり、レスポンスも悪化する。
しかしながら、本発明のように、発進マップを選択している場合であっても、KD時目標NDRを発進マップからではなく、通常マップから検索される目標NDRに基づいて決定することで、KD時目標NDRをより低い回転数に抑えることができ、エンジン10の吹き上がり感やレスポンスの悪化を防止することができる。
また、アクセル操作パラメータが前記アクセル開度である如く構成したので、上記した効果に加え、運転者によってキックダウンが要求されたか否かを精度よく判定することができる。
また、アクセル操作パラメータが前記アクセル開度とその変化量である如く構成したので、上記した効果に加え、運転者によってキックダウンが要求されたか否かを一層精度よく判定することができる。
尚、上記において、図6に示すように、キックダウンさせた後、KD時目標NDRを所定の傾きで上昇させるように制御したが、この傾きはどのような値であっても良く、所定の傾きに限定されるものではない。
また、KD時目標NDRを発進マップや通常マップにより検索される目標NDRの60%から70%程度の回転数としたが、この数値は例示であって限定されるものではない。
また、所定速度についても具体的な数値で示したが、この数値も例示であって限定されるものではない。
また、CVT26の動力伝達要素として金属製のベルト26cを開示したが、それに限られるものではなく、例えばチェーン式であっても良い。