JP5905799B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は無段変速機の制御装置に関し、より具体的にはアクセルペダルの早戻し操作がされたときの無段変速機の制御装置に関する。
無段変速機においては検出されたアクセル開度と車速から所定の特性に従って無段変速機に入力される駆動源の目標回転数を算出し、算出された目標回転数と駆動源の実際の回転数の偏差が減少するように変速比が制御される。
しかしながら、検出されたアクセル開度をそのまま用いて目標回転数を算出すると、アクセル開度の微小な増減に応じて変速比が大きく変化して運転フィーリングが低下する。
そこで、下記の特許文献1記載の技術において、検出されたアクセル開度を、増加方向の特性の値を減少方向のそれに比して減少させるように値が設定されたヒステリシス特性に従って特性検索用の検索スロットル開度に変換し、変換されたアクセル開度などから所定の特性に従って目標回転数を算出することが提案されている。
さらに、特許文献1記載の技術においては、検出されたアクセル開度が増加から減少あるいはその逆へと反転する場合、反転前のアクセル開度をそのまま検索アクセル開度として設定するように構成している。尚、特許文献1記載の技術では、実際にはアクセル開度ではなく、スロットル開度が用いられる。
特許第2789579号公報
特許文献1記載の技術は上記のように構成することでアクセル開度の微小な増減に応じて変速比が大きく変化するのを防止している。しかしながら、上記したヒステリシス特性に従って検出されたアクセル開度を検索スロットル開度に変換して目標回転数を算出すると、アクセルペダルが、踏み込まれた後、所定時間のうちに戻される早戻し操作がなされ、次いで再び踏み込まれるような操作がなされた場合、戻されるときと再び踏み込まれたときとで同一のアクセル開度に対して検索アクセル開度が相違するため、目標回転数が相違して運転者に違和感を与えることがある。
即ち、図13に示す如く、時刻t1でアクセルペダルが踏み込まれた後、所定時間のうちに時刻t2で規定値以上の速度で戻される早戻し操作がなされ、次いで時刻t3で再び踏み込まれるような操作がなされたとき、図14に示すようなヒステリシス特性に従って検出されたアクセル開度を検索スロットル開度に変換して目標回転数が算出されるとする。
その場合、図13の時刻t2で戻されるとき、検出アクセル開度APAT1は図14の(上側の)減少方向の変換値が大きいヒステリシス特性を用いて検索アクセル開度APCT1に変換されるが、時刻t3で再び踏み込まれるとき、検出アクセル開度APAT2は(下側の)増加方向の値が小さいヒステリシス特性を用いて検索アクセル開度APCT2に変換される。
その結果、比較的短い期間でほぼ同一のアクセル開度APAT1,APAT2に対して検索アクセル開度がAPCT1,APCT2と相違し、よって算出される目標回転数NEDが相違(低下)して運転者に違和感を与えることがある。
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、検出されたアクセル開度を増加方向と減少方向で値が相違させられたヒステリシス特性に従って検索アクセル開度に変換して目標回転数を算出すると共に、アクセルペダルの早戻し操作がなされたときも運転者に違和感を与えることがないようにした無段変速機の制御装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、車両に搭載される駆動源の回転を入力して無段階に変速する無段変速機と、前記車両の運転席に配置されるアクセルペダルの運転者による踏み込み量を示すアクセル開度を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度について増加方向の特性と減少方向の特性が異なるように設定されたヒステリシス特性に従い、前記アクセル開度センサで検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換するアクセル開度変換手段と、少なくとも前記変換されたアクセル開度から所定の特性に従って前記駆動源の目標回転数を算出し、前記算出された目標回転数と検出回転数の偏差が減少するように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段とを備えた無段変速機の制御装置において、前記アクセルペダルが踏み込まれた後、所定時間のうちに規定値以上の速度で戻される早戻し操作がなされたか否か判定する早戻し操作判定手段を備えると共に、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが再び踏み込まれた場合には前記ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する如く構成した。
請求項2に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記変速比制御手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが戻されたときの前記駆動源の検出回転数を前記目標回転数に設定すると共に、前記設定された目標回転数に基づいて前記無段変速機の変速比を制御する早戻し操作時制御を実行する如く構成した。
請求項3に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記変速比制御手段は、前記ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って変換される検索アクセル開度から算出される目標回転数が前記目標回転数に一致あるいはほぼ一致したとき、前記早戻し操作時制御を中止する如く構成した。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記変速比制御手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが戻されたときの前記駆動源の検出回転数と前記ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って変換される検索アクセル開度から算出される目標回転数の偏差が所定回転数以上の場合、前記早戻し操作時制御を実行する如く構成した。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記車両の走行速度を示す車速を検出する車速検出手段を備えると共に、前記所定回転数は少なくとも前記車速に基づいて設定される如く構成した。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作時制御において前記検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量が所定範囲内になったとき、前記ヒステリシス特性のうちの増加方向の特性と前記減少方向の特性の間に設定される中間特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する如く構成した。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作時制御において前記検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量が所定範囲内になってから既定時間が経過したとき、前記中間特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する如く構成した。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、前記ヒステリシス特性は、前記増加方向の特性の値が前記減少方向の特性の値よりも小さく設定されるように構成した。
請求項1にあっては、アクセル開度について増加方向の特性と減少方向の特性が異なるように設定されたヒステリシス特性に従い、アクセル開度センサで検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換し、少なくとも変換されたアクセル開度から所定の特性に従って駆動源の目標回転数を算出し、それと検出回転数の偏差が減少するように無段変速機の変速比を制御するようにした無段変速機の制御装置において、アクセルペダルが踏み込まれた後、所定時間のうちに規定値以上の速度で戻される早戻し操作がなされたか否か判定すると共に、アクセルペダルの早戻し操作がなされたと判定されたとき、アクセルペダルが再び踏み込まれた場合にはヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する如く構成したので、アクセル開度の微小な増減に応じて変速比が大きく変化するのを防止できると共に、早戻し操作がなされたと判定されるときであってアクセルペダルが再び踏み込まれた場合にはヒステリシス特性のうちの(戻されたときと同じ)減少方向のヒステリシス特性に従って検出アクセル開度を検索アクセル開度に変換することで、比較的短い期間で同じ検出アクセル開度に対して検索アクセル開度が大きく相違するのを防止でき、よって目標回転数が相違(低下)することがないので、運転者に違和感を与えることがない。また、早戻し操作は、アクセルペダルが踏み込まれた後、所定時間のうちに規定値以上の速度で戻される操作である如く構成したので、早戻し操作時制御の実行を必要な範囲に限定することができる。
図13と図14を再び参照して説明すると、時刻t1で踏み込まれたアクセルペダルが時刻t2で戻されるとき、検出アクセル開度APAT1は減少方向のヒステリシス特性に従って検索アクセル開度APCT1に変換され、時刻t3で再び踏み込まれるときも、検出アクセル開度APAT2は同じ減少方向のヒステリシス特性に従って検索アクセル開度APCT2に変換されるため、APCT1とAPCT2はほぼ同一の値となる。即ち、想像線で示すように増加方向のヒステリシス特性に従ってAPCT2を変換すると、APCT1と大きく相違するが、同じ減少方向のヒステリシス特性に従って変換するため、ほぼ同一の値となる。従って、目標回転数は相違(低下)せず、検出回転数も相違(低下)することがないため、運転者に違和感を与えることがない。
請求項2に係る無段変速機の制御装置にあっては、早戻し操作がなされたと判定されたとき、アクセルペダルが戻されたときの駆動源の検出回転数を目標回転数に設定すると共に、設定された目標回転数に基づいて無段変速機の変速比を制御する早戻し操作時制御を実行する如く構成したので、上記した効果に加え、アクセルペダルが戻される前の目標回転数を維持させることができ、よって運転者に一層違和感を与えることがないと共に、必要な場合にはエンジンブレーキあるいは余裕駆動力を確保することができる。
即ち、運転者がアクセルペダルを踏み込んだ後に所定時間のうちに戻す早戻し操作を行うときは単に車速を一時的に低下させたいだけであり、駆動源の出力の低下までは望んでいない場合が多い。従って、そのような場合、上記のように制御することで、運転者の意図に良く沿うことができ、よって運転者に一層違和感を与えることがない。
請求項3に係る無段変速機の制御装置にあっては、ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って変換される検索アクセル開度から算出される目標回転数が目標回転数に一致あるいはほぼ一致したとき、早戻し操作時制御を中止する如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御を不要に延長することがないと共に、早戻し操作時制御を中止したときの変速比の急変を防止することができる。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、早戻し操作がなされたと判定されたとき、アクセルペダルが戻されたときの駆動源の検出回転数とヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って変換される検索アクセル開度から算出される目標回転数の偏差が所定回転数以上の場合、早戻し操作時制御を実行する如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御の実行を一層必要な範囲に限定することができる。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、車両の走行速度を示す車速を検出すると共に、所定回転数は少なくとも車速に基づいて設定される如く構成したので、上記した効果に加え、少なくとも車速を用いることで車両の挙動を考慮して早戻し操作時制御の実行を判断することができ、早戻し操作時制御の実行を一層必要な範囲に限定することができる。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、早戻し操作時制御において検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量が所定範囲内になったとき、ヒステリシス特性のうちの増加方向と減少方向の特性の間に設定される中間特性に従って検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御を中止するとき、目標回転数や変速比の急変を抑制しつつ、本来の制御(増加方向と減少方向とで値が異なるように設定されたヒステリシス特性に従って検出アクセル開度を検索アクセル開度に変換して目標回転数を算出する制御)に滑らかに復帰することができると共に、早戻し操作時制御の実行を一層必要な範囲に限定することができる。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、早戻し操作時制御において検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量が所定範囲内になってから既定時間が経過したとき、中間特性に従って検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御を中止するとき、本来の制御に一層滑らかに復帰することができる。
請求項に係る無段変速機の制御装置にあっては、ヒステリシス特性は、増加方向の特性の値が減少方向の特性の値よりも小さく設定されるように構成したので、上記した効果に加え、アクセル開度の微小な増減に応じて変速比が大きく変化するのを効果的に防止することができる。
この発明の実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。 図1装置の動作を示すフロー・チャートである。 図2のフロー・チャートが前提とするCVTの制御を一般的に示す説明図である。 図3で示されるヒステリシス特性を拡大して示す説明図である。 図3に示すCVTの制御の早戻し操作時の制御を示すタイム・チャートである。 同様に図3に示すCVTの制御の早戻し操作時の制御を示すタイム・チャートである。 図2フロー・チャートの検索アクセル開度の目標回転数の演算を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図2フロー・チャートの早戻し操作時制御(Fast off制御)を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図8フロー・チャートの処理を説明する説明図である。 図2フロー・チャートの早戻し操作時のアクセル開度の安定判断を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図2フロー・チャートの早戻し操作時制御の目標回転数の演算を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図2フロー・チャートの最終目標回転数の演算を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。 図5と同様なこの発明の課題を示すタイム・チャートである。 図13の処理で使用されるヒステリシス特性を示す説明図である。
以下、添付図面に即してこの発明に係る動力伝達装置を実施するための形態を説明する。
図1は、この発明の実施例に係る無段変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
図1において、符号10はエンジン(内燃機関(駆動源))を示す。エンジン10は駆動輪12を備えた車両14に搭載される(車両14は駆動輪12などで部分的に示す)。
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置されるアクセルペダル16との機械的な接続が絶たれ電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構18に接続され、DBW機構18で開閉される。
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルドを通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブが開弁されたとき、当該気筒の燃焼室に流入する。燃焼室において混合気は点火プラグで点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフトに接続される出力軸22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
出力軸22の回転はトルクコンバータ24を介して無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)26に入力される。即ち、DBW機構18で運転者のアクセルペダル16の操作に応じて調整されるスロットル開度で決定されるエンジン10の出力軸の回転はトルクコンバータ24を介してCVT26に入力される。吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席床面に配置される。
エンジン10の出力軸22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。トルクコンバータ24はロックアップクラッチ24cを備える。
CVT26はメインシャフトMS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドライブプーリ26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CS、より正確にはその外周側シャフトに配置されたドリブンプーリ26bと、その間に掛け回される無端可撓部材からなる動力伝達要素、例えば金属製のベルト26cからなる。
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSの外周側シャフトに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSの外周側シャフトに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
CVT26は前後進切換機構28を介してエンジン10に接続される。前後進切換機構28は、車両14の前進方向への走行を可能にする前進クラッチ28aと、後進方向への走行を可能にする後進ブレーキクラッチ28bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構28cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ28aを介して接続される。
プラネタリギヤ機構28cにおいて、サンギヤ28c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ28c2は前進クラッチ28aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
サンギヤ28c1とリングギヤ28c2の間には、ピニオン28c3が配置される。ピニオン28c3は、キャリア28c4でサンギヤ28c1に連結される。キャリア28c4は、後進ブレーキクラッチ28bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
カウンタシャフトCSの回転はギヤを介してセカンダリシャフト(中間軸)SSから駆動輪12に伝えられる。即ち、カウンタシャフトCSの回転はギヤ30a,30bを介してセカンダリシャフトSSに伝えられ、その回転はギヤ30cを介してディファレンシャル32からドライブシャフト(駆動軸)34を介して左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。
駆動輪(前輪)12と従動輪(後輪。図示せず)からなる4個の車輪の付近にはディスクブレーキ36が配置されると共に、車両運転席床面にはブレーキペダル40が配置される。
前後進切換機構28において前進クラッチ28aと後進ブレーキクラッチ28bの切換は、車両運転席に設けられたレンジセレクタ44を運転者が操作して例えばP,R,N,Dなどのレンジのいずれかを選択することで行われる。運転者のレンジセレクタ44の操作によるレンジ選択は油圧供給機構46のマニュアルバルブに伝えられる。
図示は省略するが、油圧供給機構46はエンジン10によって駆動されてリザーバから作動油を汲み上げて油路に吐出する油圧ポンプと、油路に配置される種々の制御バルブと電磁バルブを備え、吐出された作動油の圧力を調整して得た油圧をトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cに供給し、ロックアップクラッチ24cを係合・開放する。
また、油圧供給機構46はCVT26の可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室に油圧を供給し、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させる。その結果、プーリ26a,26b間のプーリ幅が変化してベルト26cの巻掛け半径が変化し、エンジン10の回転を駆動輪12に伝達する変速比(レシオ)が無段階に変化させられる。
さらに、油圧供給機構46は運転者によって操作されたレンジセレクタ44の位置に応じて動作するマニュアルバルブを介して油圧を前後進切換機構28の前進クラッチ28aまたは後進ブレーキクラッチ28bのピストン室に供給し、車両14を前進方向あるいは後進方向に走行可能にする。
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
DBW機構18のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
また、アクセルペダル16の付近にはアクセル開度センサ60が設けられてアクセルペダル16の運転者による踏み込み量(アクセルペダル操作量)に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力すると共に、ブレーキペダル40の付近にはブレーキスイッチ62が設けられて運転者のブレーキペダル40の操作に応じてオン信号を出力する。
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいてDBW機構18の動作を制御すると共に、インジェクタ20による燃料噴射と点火プラグなどによる点火時期を制御する。
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数NT、より具体的には変速機入力軸回転数(と前進クラッチ28aの入力軸回転数)を示すパルス信号を出力する。
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられてドライブプーリ26aの回転数NDR、換言すれば前進クラッチ28aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力する。
ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられてドリブンプーリ26bの回転数NDN、具体的にはカウンタシャフトCSの回転数、より具体的には変速機出力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
また、セカンダリシャフトSSのギヤ30bの付近には車速センサ(回転数センサ)76が設けられてセカンダリシャフトSSの回転数と回転方向を示すパルス信号(具体的には車速Vを示すパルス信号)を出力する。
また、前記したレンジセレクタ44の付近にはレンジセレクタスイッチ80が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのレンジに応じた信号を出力する。
油圧供給機構46の油路には油圧センサ82が配置されてドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室26b21に供給される油圧に応じた信号を出力する。リザーバには油温センサ84が配置されて油温に応じた信号を出力する。
上記したNTセンサ70などの出力はシフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もCPU,ROM,RAM,I/Oなどからなるマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、油圧供給機構46の電磁バルブを励磁・非励磁して前後進切換機構28とCVT26とトルクコンバータ24を制御する。
図2はこの装置の動作、即ち、シフトコントローラ90のCVT26の制御を示すフロー・チャートである。
同図の説明に入る前に、図3から図7を参照してこの実施例におけるシフトコントローラ90のCVT26の制御を概説すると、シフトコントローラ90は、早戻し操作がなされたと判定されない(通常の)場合、図3の上部に示すようなアクセル開度APについて増加方向の特性100aと減少方向の特性100bが異なるように設定されたヒステリシス特性100に従い、アクセル開度センサ60で検出されたアクセル開度(「APAT」という)を特性検索用の検索アクセル開度(「APCT」という)に変換する。
次いでシフトコントローラ90は、少なくとも変換された検索アクセル開度APCT、より具体的には変換された検索アクセル開度APCTと車速センサ76から検出される車速Vとから図3に示す所定の特性(NDRMAP)102に従ってCVT26に入力されるエンジン10の目標回転数NDRCMDを算出する。
目標回転数NDRCMDはCVT26にトルクコンバータ24を介して入力されるエンジン10の回転数NEの目標値、具体的にはトルクコンバータ24を介して入力されるCVT26のドライブプーリ26aの回転数NDRの特性(NDRMAP)102を検索して得られる目標値を意味する。
また、それと比較される検出回転数はドライブプーリ26aの検出回転数NDRを意味する。ドライブプーリ26aの回転数NDRはエンジン10の回転数NEに基づくことから、エンジン10の回転数としても等価である。
次いでシフトコントローラ90は、算出された目標回転数NDRCMDと検出回転数NDRの偏差が減少するようにCVT26のドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室に供給すべき油圧を調整することで変速比(レシオ)を制御、より具体的には検出回転数NDRが高すぎるときはハイ側、低すぎるときはロー側となるように変速比を制御する。
図4は図3に示すヒステリシス特性100の拡大図であるが、ヒステリシス特性100は図示の如く、アクセル開度APについて増加方向の特性100aと減少方向の特性100bが異なる、例えば検出アクセル開度APATが3のとき、検索アクセル開度APCTは増加方向100aでは2、減少方向100bでは4となるように、即ち、増加方向の特性100aの値が減少方向の特性100bの値よりも小さく設定される。
図5は早戻し操作がなされたときのCVT26の制御を示すタイム・チャートである。
前記した如く、例えば図5の時刻t1でアクセルペダル16が踏み込まれた後、短時間(所定時間)のうちに時刻t2で戻される早戻し操作(「Fast-off」ともいう)がなされた場合、運転者は単に車速を一時的に低下させたいだけであり、エンジン10の出力の低下までは望んでいない場合が多い。
従って、この実施例においては早戻し操作がなされたか否か判定し、早戻し操作がなされたと判定されたとき、アクセルペダル16が時刻t2で戻されたときの検出回転数NDRをラッチし、目標回転数NDRCMDとしてそのまま設定すると共に、その目標回転数NDRCMDに基づいて、より具体的には時刻t2以降において検出回転数NDRが目標回転数NDRCMDとして維持されるようにCVT26の変速比を制御する早戻し操作時制御(「Fast-off制御」ともいう)を実行するようにした。
また、時刻t3でアクセルペダル16が再び踏み込まれた場合には、図4に示す如く、ヒステリシス特性100のうちの減少方向の(値が大きい側の)特性100bに従って検出アクセル開度を検索アクセル開度に変換する。その結果、図5の上部に示す如く、時刻t3からt4の期間tp1(およびそれ以降)において検索アクセル開度APCTは検出アクセル開度APATより大きくなる(想像線で示すAPCT2のような小さな値とならない)ように変換される。
このように、アクセルペダル16が戻されたときの検出回転数NDRをラッチして目標回転数NDRCMDとしてそのまま設定して変速比を制御すると共に、アクセルペダル16が再び踏み込まれた場合にはヒステリシス特性100のうちの減少方向の特性100bに従って検索アクセル開度に変換することで、図3に示す所定の特性(NDRMAP)102の増加方向の特性100aに従って算出された目標回転数(「NDRCMDF」という。想像線で示す)のように時刻t4で低下することがなく、よって運転者に違和感を与えることがないようにした。
即ち、微小なアクセル操作に対して目標回転数NDRCMDを保持する一方、同一のヒステリシス特性に従って算出した値を目標回転数(「仮想目標回転数NDRCMD’」という)とすることで、エンジン10の出力トルクが慣性によって消費されるのを回避し、運転者の受けるトルクレスポンスを向上して運転者に違和感を与えないようにした。
尚、図5に示す如く、例えば時刻t4においてこの仮想目標回転数NDRCMD’(ヒステリシス特性100のうちの減少方向の特性100bに従って変換される検索アクセル開度APCTから算出される目標回転数)がラッチされた目標回転数NDRCMD(あるいはそれから余裕代を減じた値)に一致あるいはほぼ一致したとき早戻し操作時制御を中止することとする。
また、図6に示す如く、時刻t4で仮想目標回転数NDRCMD’がラッチされた目標回転数NDRCMDに一致あるいはほぼ一致しない場合でも、時刻t4から既定時間が経過して時刻t5において検出アクセル開度の時間当たりの変化量ΔAP(とアクセル開度)が所定範囲内になってアクセル開度が安定したとき、時刻t5から図4に示すようなヒステリシス特性100のうちの増加方向の特性100aと減少方向の特性100bの間に設定される中間特性100cに従って検出アクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換する処理を行って時刻t6で早戻し操作時制御を中止することとする。これにより、図3の下部に示すように変速比(レシオ)が固定されて円滑に早戻し操作時制御を中止することができる。
尚、図5の時刻t4あるいは図6の時刻t6で早戻し操作時制御が中止されれば、通例の制御、即ち、検出アクセル開度APATの増減に対応する側の(通常の)ヒステリシ特性に従って変換された検索アクセル開度APCT(と車速V)から目標回転数NDRCMDを算出し、それと検出回転数NDRの偏差が減少するように変速比が制御される。
上記を前提とし、図2フロー・チャートの説明に戻り、この実施例に係るCVT26の制御を詳細に説明する。図示のプログラムは所定の時間間隔で実行される。
説明すると、S10において検索アクセル開度APCTを用いて前記した目標回転数NDRCMDを演算する。
図7はその処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
S100においてアクセル開度センサ60で検出された検出アクセル開度APATを読み込み、S102に進み、Fast-off制御用AP安定フラグ(後述)のビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグのビットの初期値は0であることからS102の判断は通例否定されてS104に進み、Fast-off制御モードフラグ(後述)のビットが1にセットされているか否か判断する。
図7フロー・チャートの説明を続ける前に、Fast-off制御モードフラグのビットのセット/リセットを決定するFast-off制御モード判断を説明すると、図2のS12がその処理であり、図8がその処理を具体的に示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
以下説明すると、S200においてFast-off制御モードフラグのビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグのビットの初期値は0であることからS200の判断は通例否定されてS202に進み、アクセルペダル16の早戻し操作がなされたか否か判断する。
図5を参照して説明した如く、時刻t1でアクセルペダル16が踏み込まれた後、所定時間のうちに時刻t2で戻される操作がなされた場合、即ち、アクセルペダル16が踏み込まれてから所定時間(極短時間)のうちに規定値以上の操作速度で戻された場合、S202においてアクセルペダル16の早戻し操作がなされたと判断(判定)する。
S202で肯定されて早戻し操作がなされたと判断されるときはS204に進み、検出回転数NDRと目標回転数NDRCMD(図3の特性102を検索して得られる値)の偏差が所定回転数DNFO以上か否か判断する。
換言すれば、早戻し操作がなされたと判定されたとき、アクセルペダル16が戻されたときの検出回転数NDRとヒステリシス特性100のうちの減少方向100bの特性に従って変換される検索アクセル開度APCTから特性102を検索して算出される(通常の)目標回転数NDRCMDの偏差が所定回転数以上DNFO以上か否か判断する。
図9はその所定回転数の特性を示す説明図である。図示の如く、所定回転数DNFOは車速Vとアクセル開度AP(検出アクセル開度APAT)、より具体的には車速Vに基づいて設定され、変速比の変化が許容できる範囲内の値となるように設定される。
S204で肯定されるときはS206に進み、Fast-off制御モードフラグのビットを1にセットする。Fast-off制御モードフラグのビットが1にセットされることは前記した早戻し操作時制御(Fast-off制御)の実行が許可されることを意味する。即ち、アクセルペダル16が戻されたときの検出回転数NDRをラッチして目標回転数NDRCMDに(目標回転数NDRCMDとして)そのまま設定して変速比を制御すると共に、アクセルペダル16が再び踏み込まれた場合にはヒステリシス特性100のうちの減少方向の特性100bに従って検索アクセル開度に変換する制御が許可されることを意味する。
一方、S202あるいはS204で否定されるときはS208に進み、Fast- off制御モードフラグのビットを0にリセットする。このフラグのビットが0にリセットされることは早戻し操作時制御(Fast-off制御)が許可されないことを意味する。
また、S200で肯定されて早戻し操作時制御が実行中と判断されるときはS210に進み、ヒステリシス特性100のうちの減少方向の特性100bに従って変換される検索アクセル開度APCTから算出される仮想目標回転数NDRCMD’が早戻し操作時制御による回転数(図5に示すラッチされた検出回転数NDR相当の目標回転数)以上か否か判断する。S210の判断に際しては仮想目標回転数NDRCMD’が厳密に目標回転数NDRCMD以上となった場合の他、その値近くになった場合も含む。
尚、S210の判断において、目標回転数NDRCMDから余裕代を減じて得られた差以上か否か判断するようにしても良い。さらにはその余裕代を車速Vや検出アクセル開度APATで相違させても良い。例えば、車速Vや検出アクセル開度APATが大きいときは余裕代を増加させ、早い時点で早戻し操作時制御を中止するようにしても良い。
S210で肯定されるときはS208に進み、フラグFast-off制御モードのビットを0にリセットする。即ち、仮想目標回転数NDRCMD’が目標回転数NDRCMDに一致あるいはほぼ一致したとき、早戻し操作時制御を中止する。
一方、S210で否定されるときはS212に進み、前記したFast-off制御用AP安定フラグのビットが1にセットされているか否か判断し、肯定されるときはS208に進む一方、否定されるときは以降の処理をスキップする。これは図6を参照して説明した早戻し操作時制御を中止する別の場合である。
図2フロー・チャートに戻ってS14に進み、Fast-off制御用AP安定判断、即ち、このFast-off制御用AP安定フラグのビットのセット/リセットを判断する。
図10はその処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
以下説明すると、S300においてFast-off制御モードフラグのビットが1にセットされている(早戻し操作時制御が実行中)か否か判断し、否定されるときはS302に進み、タイマ(ダウンカウンタ)に所定値をセットしてスタートさせ、時間計測を開始する。次いでS304に進み、Fast-off制御用AP安定フラグのビットを0にリセットする。
他方、S300で肯定されるときはS306に進み、ΔAPが所定値以内で、かつAPが所定値以内、即ち、検出アクセル開度APATの時間当たりの変化量ΔAPが適宜設定される所定範囲内で、かつ検出アクセル開度APATが適宜設定される所定範囲内か否か、換言すれば図6においてアクセルペダル16の操作が安定する時刻t4以降の状態にあるか否か判断する。
S306で否定されるときはS302に進んでタイマに所定値をセットし直す一方、肯定されるときはS308に進み、S302で所定値がセットされたタイマの値が零、即ち、所定値に相当する時間(既定時間)が経過したか否か判断する。S308で否定されるときはS304に進む一方、肯定されるときはS310に進み、Fast-off制御用AP安定フラグのビットを1にセットする。
このように、Fast-off制御用AP安定フラグのビットが1にセットされることはアクセルペダルの踏み込みが安定して所定値相当の既定時間が経過したことを意味し、0にリセットされることはそのような状態にないことを意味する。
S310においてFast-off制御用AP安定フラグのビットが1にセットされた場合、図8のS212の判断は肯定されてS208に進み、図6を参照して説明したように早戻し操作時制御(Fast-off制御)が中止される一方、S304においてFast-off制御用AP安定フラグのビットが0にリセットされた場合、図8のS212の判断は否定されて以降の処理がスキップされる。
ここで図7フロー・チャートの説明に戻ると、S102で否定されるときはS104に進み、Fast-off制御モードフラグのビットが1にセットされているか否か判断する。即ち、早戻し操作時制御が実行中か否か判断し、肯定されるときはS106に進み、前記した如く、図4に示す特性100(図3に示す特性100に同じ)のうちの上側の減少方向のヒステリシス特性100bに従って検出アクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換する。
他方、S104で否定されるときは検出アクセル開度APATが増加方向にあれば増加方向の特性100a、減少方向にあれば減少方向の特性100bの本来のヒステリシス特性に従って変換する。従ってその場合はS108に進み、変換された検索アクセル開度APCTが増加方向の特性100aを検索して得られる値未満か否か判断し、肯定されるときはS110に進んでそれに置き換える。
一方、S108で否定されるときはS112に進み、変換された検索アクセル開度APCTが減少方向の特性100bを検索して得られる値を超えるか否か判断し、肯定されるときはS114に進んでそれに置き換える。S108からS114の処理は検索アクセル開度の値を図4に示す特性100の範囲内に制限する処理である。
尚、S102で肯定されてアクセルペダル16の踏み込みが安定して所定値相当の時間が経過したと判断されるときはS116に進み、図4に示す特性100のうちの上側の減少方向100bと下側の増加方向100aのヒステリシス特性の間の破線で示す中間特性100cに従って検出アクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換する。
即ち、早戻し操作時制御において検出されるアクセル開度APATの時間当たりの変化量ΔAPが図10フロー・チャートのS306で規定される所定範囲内になった場合、より具体的には所定範囲内になって図10フロー・チャートのS308で規定される既定時間が経過した場合、ヒステリシス特性100のうちの増加方向100aと減少方向100bの特性の間に設定される中間特性100cに従って検出されたアクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換する。
これにより、図6に示す如く、仮想目標回転数NDRCMD’がラッチされた目標回転数NDRCMDに一致あるいはほぼ一致しない場合、それから既定時間が経過して検出アクセル開度の時間当たりの変化量ΔAPが所定範囲内になってアクセル開度APが安定したと判断されて早戻し操作時制御を中止するとき、変速比の急変などを生じることがなく、滑らかに中止することができる。
図7フロー・チャートにあっては、次いでS118に進み、先に述べた如く、得られた検索アクセル開度APCTと車速Vから図2の特性102を検索して目標回転数NDRCMDを算出する。
図2フロー・チャートに戻ると、次いでS16に進み、早戻し操作時制御(Fast-off制御)の目標回転数を演算する。
図11はその処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
以下説明すると、S400において早戻し操作時制御(Fast-off制御)開始時の目標回転数(NDRCMD、より正確にはラッチされたNDR)をN0と置き換えると共に、そのときの車速VをV0と置き換える。
次いでS402に進み、(N0/V0)×現在の車速Vを算出する。現在の車速は図2フロー・チャートのループ時に検出された、現在の車速を意味する。従って、S402においては、早戻し操作時制御開始時の車速V0と回転数N0の関係(レシオ)に基づいて現在の車速Vに対応する回転数N1を算出する。
次いでS404に進み、早戻し操作時制御開始時の回転数N0と車速V0から上限回転数NLを設定し、S406に進み、上記した回転数N1と上限エンジン回転数NLのうちの最小(min)の値を早戻し操作時制御の目標回転数とする。
図5を参照して上記を説明すると、アクセルペダル16が戻されたときの検出回転数NDRをラッチして目標回転数NDRCMDとしてそのまま設定して変速比を制御することで運転者に違和感を与えるのを防止できるが、他方、車両14が降坂する場合など車速が過度に増加することがある。図11の処理はそれを回避するための処理である。
図2フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS18に進み、最終目標回転数を演算する。
図12はその処理を説明するサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
以下説明すると、S500においてFast-off制御モードフラグのビットが1にセットされている(早戻し操作時制御(Fast-off制御)が実行中)か否か判断し、肯定されるときはS502に進み、図11フロー・チャートのS406で算出された値を最終目標回転数とする。
一方、S500で否定されるときはS504に進み、図4に示すヒステリシス特性100に基づき、アクセル開度センサ60で検出されたアクセル開度APATを増加側は増加方向100a、減少側は減少方向100bとする本来の特性に従って検索アクセル開度に変換して得た検索アクセル開度APCTと車速Vとから特性102に従って算出される目標回転数NDRCMDを最終目標回転数とする。
上記した如く、この実施例にあっては、車両14に搭載される駆動源(エンジン)10の回転を入力して無段階に変速する無段変速機(CVT)26と、前記車両の運転席に配置されるアクセルペダル16の運転者による踏み込み量を示すアクセル開度を検出するアクセル開度センサ60と、前記アクセル開度について増加方向の特性100aと減少方向の特性100bが異なるように設定されたヒステリシス特性100に従い、前記アクセル開度センサで検出されたアクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換するアクセル開度変換手段(S10,S100からS116)と、少なくとも前記変換された検索アクセル開度APCTから所定の特性(NDRMAP)102に従って前記駆動源の目標回転数NDRCMDを算出し、前記算出された目標回転数NDRCMDと検出回転数NDRの偏差が減少するように前記無段変速機の変速比(レシオ)を制御する変速比制御手段(S118,S18)とを備えた無段変速機の制御装置(シフトコントローラ90)において、前記アクセルペダルが踏み込まれた後、所定時間のうちに戻される早戻し操作(Fast-off)がなされたか否か判定する早戻し操作判定手段(S12,S202からS206)を備えると共に、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが再び踏み込まれた場合には前記ヒステリシス特性100のうちの減少方向100bの特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する(S104,S106)如く構成したので、アクセル開度APATの微小な増減に応じて変速比が大きく変化するのを防止できると共に、早戻し操作がなされたと判定されるときであってアクセルペダル16が再び踏み込まれた場合にはヒステリシス特性100のうちの(戻されたときと同じ)減少方向100bのヒステリシス特性に従って検出アクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換することで、比較的短い期間で同じ検出アクセル開度APATに対して検索アクセル開度APCTが大きく相違するのを防止でき、よって目標回転数NDRCMD、より正確には仮想目標回転数NDRCMD’が相違(低下)することがないので、運転者に違和感を与えることがない。
即ち、図13と図14に示す如く、時刻t2で戻されるとき、検出アクセル開度APAT1は減少方向のヒステリシス特性に従って検索アクセル開度APCT1に変換され、時刻t3で再び踏み込まれるときも、検出アクセル開度APAT2は同じ減少方向のヒステリシス特性に従って検索アクセル開度APCT2に変換されるため、想像線で示すように増加方向のヒステリシス特性に従って変換した場合と異なり、APCT1とAPCT2はほぼ同一の値となることから目標回転数NDRCMD、より正確には仮想目標回転数NDRCMD’は相違(低下)せず、検出回転数NDRも相違(低下)することがないため、運転者に違和感を与えることがない。
また、前記変速比制御手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダル16が戻されたときの前記駆動源の検出回転数NDRを前記目標回転数NDRCMDに設定すると共に、前記設定された目標回転数に基づいて前記無段変速機の変速比を制御する早戻し操作時制御を実行する(S202,S204,S206)如く構成したので、上記した効果に加え、アクセルペダル16が戻される前の目標回転数を維持させることができ、よって運転者に一層違和感を与えることがないと共に、必要な場合にはエンジンブレーキあるいは余裕駆動力を確保することができる。
即ち、運転者がアクセルペダル16を踏み込んだ後に所定時間のうちに戻す早戻し操作を行うときは単に車速を一時的に低下させたいだけであり、エンジン10の出力の低下までは望んでいない場合が多い。従って、そのような場合、上記のように制御することで、運転者の意図に良く沿うことができ、よって運転者に一層違和感を与えることがない。
また、前記変速比制御手段は、前記ヒステリシス特性100のうちの減少方向の特性100bに従って変換される検索アクセル開度APCTから算出される目標回転数NDRCMD、より正確には仮想目標回転数NDRCMD’が前記目標回転数NDRCMDに一致あるいはほぼ一致したとき、前記早戻し操作時制御を中止する(S200,S210,S208)如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御を不要に延長することがないと共に、早戻し操作時制御を中止したときの変速比の急変を防止することができる。
また、前記早戻し操作は、前記アクセルペダル16が踏み込まれた後、前記所定時間のうちに規定値以上の速度で戻される操作である(S202)如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御の実行を必要な範囲に限定することができる。
また、前記変速比制御手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダル16が戻されたときの前記駆動源の検出回転数NDRと前記ヒステリシス特性100のうちの減少方向の特性100bに従って変換される検索アクセル開度APCTから算出される目標回転数NDRCMDの偏差が所定回転数DNFO以上の場合、前記早戻し操作時制御を実行する(S204,S206)如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御の実行を一層必要な範囲に限定することができる。
また、前記車両14の走行速度を示す車速Vを検出する車速検出手段(車速センサ)76を備えると共に、前記所定回転数は少なくとも前記車速に基づいて設定される如く構成したので、上記した効果に加え、少なくとも車速Vを用いることで車両14の挙動を考慮して早戻し操作時制御の実行を判断することができ、早戻し操作時制御の実行を一層必要な範囲に限定することができる。
また、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作時制御において前記検出されるアクセル開度APATの時間当たりの変化量ΔAPが所定範囲内になったとき、前記ヒステリシス特性100のうちの増加方向100aと前記減少方向の特性100bの間に設定される中間特性100cに従って前記検出されたアクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換する(S102,S116,S210,S212,S300からS310)如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御を中止するとき、目標回転数NDRCMDや変速比の急変を抑制しつつ、本来の制御(増加方向100aと減少方向100bとで値が異なるように設定されたヒステリシス特性100に従って検出アクセル開度APATを検索アクセル開度APCTに変換して目標回転数NDRCMDを算出する制御)に滑らかに復帰することができる。
また、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作時制御において前記検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量ΔAPが所定範囲内になってから既定時間が経過したとき、前記中間特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換する(S102,S116,S210,S212,S300からS310)如く構成したので、上記した効果に加え、早戻し操作時制御を中止するとき、本来の制御に一層滑らかに復帰することができる。
また、前記ヒステリシス特性100は、前記増加方向の特性100aの値が前記減少方向の特性100bの値よりも小さく設定されるように構成したので、上記した効果に加え、アクセル開度APATの微小な増減に応じて変速比が大きく変化するのを効果的に防止することができる。
尚、上記においてCVTとしてベルト式のCVT26を開示したが、それに限られるものではなく、トロイダル式あるいはチェーン式であっても良い。
10 エンジン(内燃機関。駆動源)、12 駆動輪、14 車両、16 アクセルペダル、18 DBW機構、24 トルクコンバータ、26 無段変速機(CVT)、28 前後進切換機構、46 油圧供給機構、60 アクセル開度センサ、66 エンジンコントローラ、72 NDRセンサ、76 車速センサ、90 シフトコントローラ、100 ヒステリシス特性、100a 増加方向の特性、100b 減少方向の特性、100c 中間特性、102 特性(MAP)

Claims (8)

  1. 車両に搭載される駆動源の回転を入力して無段階に変速する無段変速機と、前記車両の運転席に配置されるアクセルペダルの運転者による踏み込み量を示すアクセル開度を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度について増加方向の特性と減少方向の特性が異なるように設定されたヒステリシス特性に従い、前記アクセル開度センサで検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換するアクセル開度変換手段と、少なくとも前記変換されたアクセル開度から所定の特性に従って前記駆動源の目標回転数を算出し、前記算出された目標回転数と検出回転数の偏差が減少するように前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段とを備えた無段変速機の制御装置において、前記アクセルペダルが踏み込まれた後、所定時間のうちに規定値以上の速度で戻される早戻し操作がなされたか否か判定する早戻し操作判定手段を備えると共に、前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが再び踏み込まれた場合には前記ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換することを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 前記変速比制御手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが戻されたときの前記駆動源の検出回転数を前記目標回転数に設定すると共に、前記設定された目標回転数に基づいて前記無段変速機の変速比を制御する早戻し操作時制御を実行することを特徴とする請求項1記載の無段変速機の制御装置。
  3. 前記変速比制御手段は、前記ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って変換される検索アクセル開度から算出される目標回転数が前記目標回転数に一致あるいはほぼ一致したとき、前記早戻し操作時制御を中止することを特徴とする請求項2記載の無段変速機の制御装置。
  4. 前記変速比制御手段は、前記早戻し操作判定手段によって前記早戻し操作がなされたと判定されたとき、前記アクセルペダルが戻されたときの前記駆動源の検出回転数と前記ヒステリシス特性のうちの減少方向の特性に従って変換される検索アクセル開度から算出される目標回転数の偏差が所定回転数以上の場合、前記早戻し操作時制御を実行することを特徴とする請求項2または3に記載の無段変速機の制御装置。
  5. 前記車両の走行速度を示す車速を検出する車速検出手段を備えると共に、前記所定回転数は少なくとも前記車速に基づいて設定されることを特徴とする請求項4記載の無段変速機の制御装置。
  6. 前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作時制御において前記検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量が所定範囲内になったとき、前記ヒステリシス特性のうちの増加方向の特性と前記減少方向の特性の間に設定される中間特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の無段変速機の制御装置。
  7. 前記アクセル開度変換手段は、前記早戻し操作時制御において前記検出されるアクセル開度の時間当たりの変化量が所定範囲内になってから既定時間が経過したとき、前記中間特性に従って前記検出されたアクセル開度を検索アクセル開度に変換することを特徴とする請求項6記載の無段変速機の制御装置。
  8. 前記ヒステリシス特性は、前記増加方向の特性の値が前記減少方向の特性の値よりも小さく設定されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の無段変速機の制御装置。
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