JP2015060721A - 固体電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】固体電池において、充放電特性を向上させる。【解決手段】固体電解質層2と、固体電解質層を挟んで配置される第1および第2の電極層3および4と、を含む積層構造の電池ユニット5が、集電層6を介して積層された、固体電池1。集電層6は、第1の電極層3の第1の主面7および端面9をそれぞれ覆う主面部6aおよび端面部6bを有し、固体電解質層2は、第1の電極層3の第2の主面8を覆う。固体電解質層2は、第2の電極層4の第1の主面10および端面12をそれぞれ覆う主面部2aおよび端面部2bを有し、集電層6は、第2の電極層4の第2の主面12を覆う。第1の電極層と集電層との接触面積および第2の電極層と固体電解質層との接触面積を大きくし、電極層と固体電解質層または集電層との間のイオンおよび/または電子の授受を、主面部と端面部との双方を介して効率的に行なうことができる。【選択図】図1
Description
この発明は、固体電解質層を備える固体電池に関するもので、特に、固体電池における充放電特性を向上させるための改良に関するものである。
この発明にとって興味ある固体電池として、正極層と負極層とが固体電解質層を挟んで交互に積層された構造を有する、リチウムイオン二次電池が、たとえば特開2010−140725号公報(特許文献1)に記載されている。
固体電解質層を用いた固体電池は、従来の電解液を用いたリチウムイオン二次電池に比べて、液漏れがなく、安全ではあるが、固体電解質材料のイオン伝導性が相対的に低いため、充放電特性に劣るという欠点を有している。
そこで、この発明の目的は、充放電特性の向上を図り得る固体電池を提供しようとすることである。
この発明は、固体電解質層と、固体電解質層を挟んで配置され、かつ一方が正極層となり、他方が負極層となる、第1および第2の電極層と、を含む積層構造の少なくとも1つの電池ユニットと、電池ユニットの少なくとも一方の主面を覆うように配置された集電層と、を備える、固体電池に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
固体電解質層および集電層のいずれか一方である第1のエレメントは、第1および第2の電極層の少なくとも一方の電極層の第1の主面および当該第1の主面に直交する方向に延びる端面をそれぞれ覆う主面部および端面部を有し、固体電解質層および集電層のいずれか他方である第2のエレメントは、電極層の第1の主面に対向する第2の主面を覆うように配置されていることを特徴としている。
固体電解質層および集電層のいずれか一方である第1のエレメントが、上記のような主面部および端面部を有することにより、第1のエレメントと電極層との接触面積を大きくすることができる。また、第1および第2の電極層の少なくとも一方の電極層は、固体電解質層および集電層によって覆われた状態となる。
第1および第2のエレメントによって覆われる電極層は、第1および第2の電極層の双方であることが好ましい。上述した接触面積増大の効果が、第1および第2の電極層の双方において期待できるからである。この場合、第1のエレメントは、第1の電極層の第1の主面および端面を覆う主面部および端面部を有し、第2のエレメントは、第2の電極層の第1の主面および端面を覆う主面部および端面部を有するようにされる。
固体電解質層および集電層の少なくとも一方は、静電印刷によって形成されたものであることが好ましい。静電印刷によれば、主面部および端面部の双方を均一な厚みをもって同時に形成することが容易である。
第1および第2の電極層の少なくとも一方は、スクリーン印刷によって形成されたものであることが好ましい。スクリーン印刷によれば、電極層を所定のパターンで形成することが容易である。
この発明に係る固体電池では、複数の電池ユニットが、集電層を介して積層されていることが好ましい。
この発明によれば、電極層と固体電解質層または集電層との間のイオンおよび/または電子の授受を、主面部と端面部との双方を介して効率的に行なうことができるため、優れた充放電特性を持つ固体電池を得ることができる。
また、電極層が、固体電解質層および集電層により覆われた構造を有するため、正極層と負極層との物理的接触によるイオン伝導または電子伝導による短絡を生じにくくし、内部短絡の少ない固体電池を得ることができる。
まず、図1および図2を参照して、この発明の第1の実施形態による固体電池1について説明する。
固体電池1は、たとえばリチウムイオン二次電池であり、固体電解質層2と、固体電解質層2を挟んで配置される、第1の電極層3および第2の電極層4とを含む積層構造の複数の電池ユニット5を備えている。第1および第2の電極層3および4は、いずれか一方が正極層となり、いずれか他方が負極層となるものであるが、構造上、互いに区別されるものではない。
電池ユニット5の両主面を覆うように、集電層6が配置される。したがって、複数の電池ユニット5は、集電層6を介して積層され、その結果、これら電池ユニット5は、集電層6を介して電気的に直列接続された状態とされる。最外層に位置する集電層6は、当該固体電池1を外部の機器側に接続する正負極端子として機能する。
固体電池1の平面形状は、図1に示すように、矩形状であるが、これに限定されるものではない。
特に図1を参照すればわかるように、固体電池1は、固体電解質層2と集電層6とを積層方向に交互に配置した外観を有している。第1および第2の電極層3および4は、これら固体電解質層2および集電層6によって覆われ、固体電池1の外表面には露出しない。
断面を示す図2を参照して、第1の電極層3に注目すると、第1の電極層3の第1の主面7および当該第1の主面7に直交する方向に延びる端面9は、集電層6によって覆われている。すなわち、集電層6は、第1の電極層3の第1の主面7を覆う主面部6aと端面9を覆う端面部6bとを有する。また、第1の電極層3の第1の主面7に対向する第2の主面8は、固体電解質層2によって覆われている。
同じく図2を参照して、第2の電極層4に注目すると、第2の電極層4の第1の主面10および当該第1の主面10に直交する方向に延びる端面12は、固体電解質層2によって覆われている。すなわち、固体電解質層2は、第2の電極層4の第1の主面10を覆う主面部2aと端面12を覆う端面部2bとを有する。この固体電解質層2は、上述した第1の電極層3の第2の主面8を覆うものでもある。また、第2の電極層4の第1の主面10に対向する第2の主面11は、集電層6によって覆われている。この集電層6は、上述した第1の電極層3の第1の主面7および端面9を覆うものでもある。
この固体電池1では、第1の電極層3と集電層6との間におけるイオンおよび/または電子の授受を、第1の電極層3の第1の主面7と端面9との双方において効率的に進行させることができ、かつ、第2の電極層4と固体電解質層2との間におけるイオンおよび/または電子の授受を、第2の電極層4の第1の主面10と端面12との双方において効率的に進行させることができるため、優れた充放電特性を与えることができる。
また、この固体電池1によれば、固体電解質層2あるいは集電層6を介した第1および第2の電極層3および4間の物理的接触によるイオン伝導あるいは電子伝導に係る短絡を生じにくくすることができる。したがって、固体電池1において、内部短絡を少なくすることができる。
なお、図示の実施形態では、第1の電極層3の端面9が集電層6によって、第2の電極層4の端面12が固体電解質層2によって、それぞれ覆われているが、逆に、第1の電極層3の端面9が固体電解質層2によって、第2の電極層4の端面12が集電層6によって、それぞれ覆われていてもよい。
上記に関して、正極層となるべき電極層と負極層となるべき電極層とのそれぞれの内部におけるイオン伝導性と電子伝導性とを鑑み、イオン伝導性に劣る側の電極層の端面を固体電解質層で、電子伝導性に劣る側の電極層の端面を集電層で、それぞれ覆うようにすると、固体電池の充放電特性を効果的に高めることができる。
特に限定されるものではないが、固体電解質層2の材料としては、たとえば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物を用いることができる。たとえば、Li1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3等である。この場合、上記化学式においてPの一部をB、Si等で置換してもよいし、Liの一部をNa、Ca等で置換してもよい。また、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物以外に、イオン伝導性を有し、電子伝導性が無視できるほど小さい材料を用いることが可能である。このような材料として、たとえば、リチウム酸素酸塩、および、これらの誘導体を挙げることができる。また、リン酸リチウム(Li3PO4)等のLi‐P‐O系化合物、リン酸リチウムに窒素を混ぜたLIPON(LiPO4-xNx)、Li4SiO4等のLi‐Si‐O系化合物、Li‐P‐Si‐O系化合物、Li‐V‐Si‐O系化合物、La0.51Li0.35TiO2.94、La0.55Li0.35TiO3、Li3xLa2/3-xTiO3等のぺロブスカイト型構造を有する化合物、Li7La3Zr2O12等のLi、La、Zrを有するガーネット型構造を有する化合物、等を挙げることができる。Li−P−S系、Li−Ge−P−S系等の硫化物材料を用いてもよい。
集電層6の材料としては、たとえば、炭素、金属、酸化物等の電子伝導性材料が用いられる。集電層6は融着ガラス等、焼成することで電子伝導性材料を焼結する材料を含んでもよいし、熱硬化性樹脂等、100〜200℃程度のアニール処理で電子伝導性材料を固定できる材料を含んでもよい。接着剤等、熱処理をせずに電子伝導性材料を固定できる材料を含んでもよい。なお、集電層6に固体電解質材料等のイオン伝導する材料が含まれると、集電層6を介して電池ユニット5が内部短絡する恐れがあるため、好ましくない。
電極層3および4の材料としては、たとえば、正極層に含まれる活物質として、LiCoO2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2等の層状化合物、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル材料、LiFePO4、LiMnPO4、Li3V2(PO4)3等のリン含有化合物が用いられる。負極層に含まれる活物質として、黒鉛−リチウム化合物、Li−Al等のリチウム合金、Li3V2(PO4)3やLi3Fe2(PO4)3等のナシコン型のリチウム含有リン酸化合物、Li4Ti5O12、Ti、Si、Sn、Cr、FeおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物等が用いられる。具体的には、酸化チタン、酸化シリコン、酸化ニオブ、酸化錫、酸化クロム、酸化鉄および酸化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化物を含んでいることが好ましい。電極層3および4は、固体電解質材料を含むと、電極層3および4のイオン伝導性が高くなるため好ましい。電極層3および4は、電子伝導性材料を含むと、電極層3および4の電子伝導性が高くなるため好ましい。
以下に、図3を主として参照して、固体電池1の好ましい製造方法について説明する。
図3(1)、同(2)および同(3)にそれぞれ示すような3種類のシート積層体13、14および15が作製される。
図3(1)に示した第1のシート積層体13は、まず、(1−1)に示すように、ダイコータにより、PETフィルム等からなる基体(図示せず。)上に集電層6が形成され、次いで、(1−2)に示すように、スクリーン印刷により、集電層6上に第2の電極層4が形成され、次いで、(1−3)に示すように、静電印刷により、集電層6の一部および第2の電極層4上に固体電解質層2が形成されたものである。静電印刷の詳細については、図4および図5を参照して後述する。
図3(2)に示した第2のシート積層体14は、スクリーン印刷により、基体(図示せず。)上に第1の電極層3が形成され、次いで、静電印刷により、基体の一部および第1の電極層3上に集電層6が形成されたものである。
図3(3)に示した第3のシート積層体15は、スクリーン印刷により、基体(図示せず。)上に第2の電極層4が形成され、次いで、静電印刷により、基体の一部および第2の電極層4上に固体電解質層2が形成されたものである。
次に、図3(4)に示すように、第1のシート積層体13上に、第2のシート積層体14および第3のシート積層体15が交互に積層されることが所定回数繰り返され、最後に、第2のシート積層体14が積層される。
その結果、図3(4)に示すような積層構造物16が得られる。積層構造物16は、各層間の密着性を高めるため、必要に応じて、積層方向にプレスされる。
次に、上記積層構造物16は、図3(5)に示した切断線17に沿って切断される。その後、たとえば固体電解質層2がセラミックからなる場合には、焼成工程が実施される。この焼成工程は、固体電池1の抵抗を低減する効果もある。なお、固体電解質層2を構成する固体電解質として酸化物固体電解質を用いると、大気中で一連の工程を実施することができるので好ましい。
以上のようにして、固体電池1が完成される。なお、図示しないが、固体電池1は、必要に応じて、樹脂成形による外装、または樹脂シートによるカバーなどによる外装を施してもよい。
以下、前述した固体電解質層2および集電層6の形成のために適用された静電印刷の詳細について、図4および図5を参照して説明する。
静電印刷工程では、図4に示した静電印刷装置21が用いられる。静電印刷装置21は、たとえば固体電解質層2または集電層6となり得る塗布材料22を収容する貯留タンク23を備える。貯留タンク23は、供給管24を介して、吐出ノズル25に接続される。なお、塗布材料22は、たとえば固体電解質層2および集電層6を構成する材料に加えて、バインダとしての樹脂および溶剤を含むことが好ましい。
他方、吐出ノズル25に対向して、ステージ26が設けられている。ステージ26上には、静電印刷の対象物27が、その主面を吐出ノズル25方向に向けた状態で配置される。図3(1)の(1−3)に示した工程では、集電層6および第2の電極層4を保持する基体がステージ26上に置かれる。図3(2)に示した工程では、第1の電極層3を保持した基体がステージ26上に置かれる。図3(3)に示した工程では、第2の電極層4を保持した基体がステージ26上に置かれる。ステージ26は、導電性材料からなることが好ましい。
吐出ノズル25を通過する塗布材料22には、電源28からのパルス電圧、直流電圧または交流電圧が印加される。このように、電圧を印加した状態において、静電印刷が実施される。印加される電圧は、対象物27と吐出ノズル25との間に静電界を発生させ、かつ塗布材料22を帯電させることができれば、特に限定されないが、数V〜数十Vであることが好ましい。
上記の状態で、貯留タンク23の内圧が矢印32で示すように高められる。これによって、貯留タンク23内の塗布材料22が、供給管24を通って、電圧が印加された吐出ノズル25に供給され、塗布材料22が帯電される。帯電された塗布材料22から電気力線33が生じる。塗布材料22は、吐出ノズル25から対象物27に向かって吐出される。
塗布材料22は、電気力線33に沿って空中を飛ぶ間、クーロン反発力による分裂(レイリー分裂)を繰り返し、霧状となる。したがって、塗布材料22は、分裂を重ねるごとに表面積をより大きくしていき、そのため、塗布材料22の乾燥が進み、塗布材料22に含まれる溶剤や溶媒といった液体成分の蒸発が促進される。
その結果、塗布材料22は、対象物27の表面に付着する時には流動性がほとんど失われる程度に乾燥している。よって、塗布材料22には表面張力が実質的に働かないため、塗布材料22は、対象物27の特定の部分に集まることがなく、よって、対象物27上に薄く均一に付与され得る。図5には、帯電した塗布材料22によって生じる電気力線33が模式的に図示されている。帯電した塗布材料22は、電気力線33に沿って、対象物27に付着する。その結果、塗布材料22によって与えられる膜が対象物27の表面に形成される。
特に、静電印刷を適用すると、図5に示すように、帯電した塗布材料22が電気力線33に沿って対象物27に向かって飛ぶとき、電気力線33は、対象物27のエッジ部分29に集中する傾向があり、その結果、塗布材料22を、エッジ部分29をも含めて、対象物27の主面30から端面31にまで薄く均一な厚みをもって連続的に延びるように、対象物27上に付着させることができる。
上述したような利点を有する静電印刷は、図3(1)および同(3)に示した固体電解質層2の形成ならびに図3(2)に示した集電層6の形成に適している。なぜなら、固体電解質層2または集電層6を形成すべき面は凹面を含み、このような凹面上に印刷膜を形成するとき、静電印刷の利点が発揮されるからである。
なお、固体電解質層2および集電層6が静電印刷によって形成されることにより、各々の主面部2aおよび6aの各厚みは、それぞれ、各々の端面部2bおよび6bの各厚みと実質的に等しくすることができ、たとえば端面部2bおよび6bの各厚み0.7〜1.3倍の範囲とすることができる。
図6および図7を参照して、この発明の第2の実施形態による固体電池1aについて説明する。図6および図7において、図1ないし図3で用いた参照符号を対応の部分に付すことによって、重複する説明を省略する。
図6に示した固体電池1aは、図1および図2に示した固体電池1と比較して、第1の電極層3の第1の主面7を覆う集電層6が主面部6aのみを有し、端面部6bを有していないことが特徴である。したがって、第2の電極層4についてのみ、第1の主面10を覆う固体電解質層2が端面12をも連続的に覆い、第2の主面11が集電層6によって覆われた構成を有している。
この第2の実施形態による固体電池1aによれば、第2の電極層4と固体電解質層2との間におけるイオンおよび/または電子の授受を、第2の電極層4の第1の主面10と端面12との双方において効率的に進行させることができるため、優れた充放電特性を与えることができる。
また、この固体電池1aによっても、前述の固体電池1の場合と同様、固体電解質層2あるいは集電層6を介した第1および第2の電極層3および4間の物理的接触によるイオン伝導あるいは電子伝導に係る短絡を生じにくくすることができる。したがって、固体電池1aにおいて、内部短絡を少なくすることができる。
以下に、図7を参照して、固体電池1aの好ましい製造方法について説明する。
まず、図7(1)に示すように、ダイコータにより、基体(図示せず。)上に集電層6が形成され、次いで、スクリーン印刷により、その上に第2の電極層4が形成され、次いで、その上に、静電印刷により、固体電解質層2が形成される。静電印刷の詳細については前述したとおりである。このようにして、シート積層体18が得られる。
他方、図7(2)に示すように、スクリーン印刷により、基体(図示せず。)上に第1の電極層3が形成される。
次に、図7(3)に示すように、図7(1)の工程で得られたシート積層体18と図7(2)の工程で得られた第1の電極層3とが交互に所定回数積層され、最後に、第1の電極層3が積層された後、その上に、スクリーン印刷により、集電層6が形成される。
このようにして得られた積層構造物16aは、次に、各層間の密着性を高めるため、必要に応じて、積層方向にプレスされる。
次に、上記積層構造物16aは、図7(4)に示した切断線17aに沿って切断される。その後、たとえば固体電解質層2がセラミックからなる場合には、焼成工程が実施される。
以上のようにして、固体電池1aが完成される。
図8を参照して、この発明の第3の実施形態による固体電池1bについて説明する。この第3の実施形態による固体電池1bは、上述した第2の実施形態による固体電池1aの変形例である。よって、図8において、図6で用いた参照符号を対応の部分に付すことによって、重複する説明を省略する。
図8に示した固体電池1bは、第2の電極層4の第1の主面10を覆う固体電解質層2が主面部2aのみを有し、端面部2bを有していないことが特徴である。したがって、第1の電極層3についてのみ、第1の主面7を覆う集電層6が端面9をも連続的に覆い、第2の主面8が固体電解質層2によって覆われた構成を有している。
第3の実施形態による固体電池1bの製造方法は、第2の実施形態による固体電池1aの製造方法から容易に類推することができるので、説明を省略する。
第2の実施形態および第3の実施形態のいずれを選択するかについては、以下の点が考慮される。
前述したように、正極層となるべき電極層と負極層となるべき電極層とのそれぞれの内部におけるイオン伝導性と電子伝導性とを鑑み、イオン伝導性に劣る側の電極層の端面を固体電解質層で、電子伝導性に劣る側の電極層の端面を集電層で、それぞれ覆うようにすると、固体電池の充放電特性を効果的に高めることができる。したがって、第2の電極層4がイオン伝導性に劣る場合には、第2の電極層4の端面12をも固体電解質層2で覆う第2の実施形態が有利であり、第1の電極層3が電子伝導性に劣る場合には、第1の電極層3の端面9をも集電層6で覆う第3の実施形態が有利である。
図9および図10を参照して、この発明の第4の実施形態による固体電池1cについて説明する。図9および図10において、図1ないし図3で用いた参照符号を対応の部分に付すことによって、重複する説明を省略する。
図9に示した固体電池1cは、図1および図2に示した固体電池1と比較して、積層体内部に位置する固体電解質層2の主面部2aおよび集電層6の主面部6aの各厚みがより厚くなっていることが特徴である。他の構成は、図1および図2に示した固体電池1と実質的に同様である。また、図1および図2に示した固体電池1において得られた作用効果は、この固体電池1cにおいても得ることができる。
上記のような固体電池1cの特徴的構成は、図10を参照して以下に説明する製造方法に由来する。
まず、図10(1)に示すように、ダイコータにより、基体(図示せず。)上に固体電解質層2が形成され、次いで、スクリーン印刷により、その上に第1の電極層3が形成され、次いで、その上に、静電印刷により、集電層6が形成される。静電印刷の詳細については前述したとおりである。このようにして、第1のシート積層体19が得られる。
他方、図10(2)に示すように、ダイコータにより、基体(図示せず。)上に集電層6が形成され、次いで、スクリーン印刷により、その上に第2の電極層4が形成され、次いで、その上に、静電印刷により、固体電解質層2が形成される。このようにして、第2のシート積層体20が得られる。
次に、図10(3)に示すように、下から順に、図10(2)の工程で得られた第2のシート積層体20と図10(1)の工程で得られた第1のシート積層体19とが交互に所定回数積層され、最後に、第1のシート積層体19が積層される。このようにして得られた積層構造物16cでは、図10(1)に示した工程で形成された固体電解質層2と図10(2)に示した工程で形成された固体電解質層2とが互いに隣接し、また、図10(1)に示した工程で形成された集電層6と図10(2)に示した工程で形成された集電層6とが互いに隣接している。
積層構造物16cは、次に、各層間の密着性を高めるため、必要に応じて、積層方向にプレスされる。プレス後の状態が図10(4)に示されている。図10(4)に示すように、プレス後の積層構造物16cでは、図10(1)に示した工程で形成された固体電解質層2と図10(2)に示した工程で形成された固体電解質層2とが一体化され、互いの間の境界面が認められなくなり、また、図10(1)に示した工程で形成された集電層6と図10(2)に示した工程で形成された集電層6とが一体化され、互いの間の境界面が認められなくなる。
次に、上記積層構造物16cは、図10(4)に示した切断線17cに沿って切断される。その後、たとえば固体電解質層2がセラミックからなる場合には、焼成工程が実施される。
以上のようにして、固体電池1cが完成される。
上述した製造方法の説明からわかるように、固体電池1cの積層体内部に位置する固体電解質層2の主面部2aおよび集電層6の主面部6aの各厚みが、図1および図2に示した固体電池1の場合の約2倍となる。
このような製造方法を採用すれば、第1および第2の電極層3および4の各々を、固体電解質層2と集電層6とで覆った後、これらを積層して積層構造物16cを作製することになるため、積層時の位置ずれ、あるいは電極層3および4の寸法ばらつき等が生じた場合においても、固体電解質層2あるいは集電層6を介した第1および第2の電極層3および4の物理的接触によるイオン伝導あるいは電子伝導に係る短絡をより生じにくくし、固体電池1cにおいて、内部短絡をより少なくすることができる。
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、その他種々の変形例が可能である。
固体電解質層2および集電層6を形成するために採用された静電印刷法は、電極層3および4を形成する工程で採用されてもよい。この場合、形成が禁止されるべき領域はマスクによって覆われることになるが、マスクの材質は特に限定されない。マスクが図4および図5に示した対象物27に接触して強く帯電することがなく、よって、マスクが対象物27に優先して塗装されることがないよう、適切な絶縁性、あるいは帯電性を有する材質を適宜選択すればよい。
逆に、固体電解質層2および集電層6を形成するため、スクリーン印刷等の他の印刷法が採用されてもよい。
また、固体電池に備える積層体の上下の主面に外部端子電極を形成してもよい。その形成方法は特に限定されない。たとえば、電子伝導性の材料を含むペーストを積層体の主面に塗布した後、熱処理してペーストを焼き付けることによって、外部端子電極を形成することができる。
また、図示の実施形態では、固体電池は、複数の電池ユニットを備えていたが、単に1つの電池ユニットを備える固体電池に対しても、この発明を適用することができる。
1,1a,1b,1c 固体電池
2 固体電解質層
3,4 電極層
5 電池ユニット
6 集電層
2a,6a 主面部
2b,6b 端面部
7,10 第1の主面
8,11 第2の主面
9,12 端面
21 静電印刷装置
22 塗布材料
25 吐出ノズル
27 対象物
28 電源
33 電気力線
2 固体電解質層
3,4 電極層
5 電池ユニット
6 集電層
2a,6a 主面部
2b,6b 端面部
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8,11 第2の主面
9,12 端面
21 静電印刷装置
22 塗布材料
25 吐出ノズル
27 対象物
28 電源
33 電気力線
Claims (5)
- 固体電解質層と、前記固体電解質層を挟んで配置され、かつ一方が正極層となり、他方が負極層となる、第1および第2の電極層と、を含む積層構造の少なくとも1つの電池ユニットと、
前記電池ユニットの少なくとも一方の主面を覆うように配置された集電層と、
を備え、
前記固体電解質層および前記集電層のいずれか一方である第1のエレメントは、前記第1および第2の電極層の少なくとも一方の電極層の第1の主面および当該第1の主面に直交する方向に延びる端面をそれぞれ覆う主面部および端面部を有し、
前記固体電解質層および前記集電層のいずれか他方である第2のエレメントは、前記電極層の前記第1の主面に対向する第2の主面を覆うように配置されている、
固体電池。 - 前記第1および第2のエレメントによって覆われる前記電極層は、前記第1および第2の電極層の双方であり、
前記第1のエレメントは、前記第1の電極層の第1の主面および端面を覆う主面部および端面部を有し、
前記第2のエレメントは、前記第2の電極層の第1の主面および端面を覆う主面部および端面部を有する、
請求項1に記載の固体電池。 - 前記固体電解質層および前記集電層の少なくとも一方は、静電印刷によって形成されたものである、請求項1または2に記載の固体電池。
- 前記第1および第2の電極層の少なくとも一方は、スクリーン印刷によって形成されたものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の固体電池。
- 複数の前記電池ユニットが、前記集電層を介して積層されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の固体電池。
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