JP2015059248A - 鋼の熱処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間で、鋼表面から深さ方向に、疲労強度を担う硬化層を深く形成する。【解決手段】鋼に軟窒化処理(好ましくは500〜670℃で、1〜12時間)を施し、表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を形成し、次いで、1000〜1200℃で30〜120分加熱することを特徴とする鋼の熱処理方法。【選択図】図5

Description

本発明は、自動車、産業機械、建設機械等で用いるクランクシャフトやコネクティングロッド等の機械構造用鋼の表層に厚い硬化層を形成する熱処理方法に関する。
自動車、産業機械、及び、建設機械等に用いるクランクシャフトやコネクティングロッド等の機械構造部品において疲労強度は備えるべき機械特性である。通常、機械構造用鋼材や機械構造用合金鋼材等を所望の形状に熱間鍛造し、鍛造ままで、又は、鍛造後焼ならしを施して、軟窒化処理を施し、機械構造部品の疲労強度を向上させる(特許文献1〜6、参照)。
鋼材に軟窒化処理を施すと、鋼材表面に、通常、数μm〜20μm程度の厚さの窒化物層(「化合物層」ともいう。)が形成される。この窒化物層が、鋼材の耐摩耗性や耐焼付き性の向上に寄与する。窒化物層の下には、数100μm〜1mm程度の厚さの“拡散層(硬化層)”が形成される。軟窒化処理を施した鋼材においては、拡散層(硬化層)の存在で、疲労強度が向上する。
軟窒化処理は、加熱温度が600℃前後と低いので、熱処理歪が小さいが、一方で、硬化層(拡散層)の深さが浅く、高周波焼入れ処理又は浸炭処理に比べ、疲労強度の向上代が小さい。軟窒化処理において、硬化層(拡散層)を深く形成するためには、窒素を鋼表面から内部へ充分に拡散させる必要がある(特許文献7及び8、参照)。
そのためには、軟窒化処理時間を長くするか、加熱温度を上げなければならないが、軟窒化処理時の延長及び/又は加熱温度の上昇は、生産性及び製造コストの点で好ましくない。それ故、軟窒化処理を低温又は短時間で施しても、窒素の拡散量を充分に確保し、表面から深さ方向に硬化層を深く形成することができる熱処理方法が求められている。
特開平06−173967号公報 特開2006−299324号公報 特開2007−077411号公報 特開2007−146232号公報 特開2011−032536号公報 特開2011−252197号公報 特開2005−264318号公報 特開2007−238969号公報
本発明は、上記要望に鑑み、短時間で、鋼表面から深さ方向に、疲労強度を担う硬化層を深く形成することを課題とし、該課題を解決する熱処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意研究した。その結果、軟窒化処理で、鋼の表面に所要厚の窒化物層を形成し、次いで、オーステナイト温度域で拡散処理(γ域加熱)を施せば、短時間で、表面から深さ方向に硬化層を深く形成できることを見いだした。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)鋼に軟窒化処理を施し、表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を形成し、次いで、1000〜1200℃で30〜120分加熱することを特徴とする鋼の熱処理方法。
(2)前記軟窒化処理を500〜670℃で、1〜12時間施すことを特徴とする前記(1)に記載の鋼の熱処理方法。
(3)前記加熱を高周波加熱又は炉加熱で行うことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の鋼の熱処理方法。
(4)前記鋼が、質量%で、C:0.05〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜2.50%、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜0.02%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼の熱処理方法。
(5)前記鋼が、さらに、質量%で、Cr:0.1〜2.0%、Mo:0.1〜2.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜2.0%、Ti:0.003〜0.05%、V:0.05〜0.50%、Nb:0.01〜0.10%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(4)に記載の鋼の熱処理方法。
本発明によれば、軟窒化処理と、その後の熱処理により、窒素を、極めて短時間で、鋼表面から深さ方向に拡散させ、疲労強度を担う硬化層を深く形成することができる。
厚さ約30μmの窒化物層を形成した鋼の断面を示す図である。 軟窒化処理後の鋼の深さ方向における硬度分布と、軟窒化処理後、高周波加熱を施した鋼の深さ方向における硬度分布を示す図である。 軟窒化処理後、1200℃の高周波加熱を施した鋼の断面を示す図である。 軟窒化処理後の鋼の深さ方向における硬度分布と、軟窒化処理後、炉加熱を施した鋼の深さ方向における硬度分布を示す図である。 軟窒化処理後、1000℃の炉加熱を施した鋼の断面を示す図である。 軟窒化処理後、1200℃の炉加熱を施した鋼の断面を示す図である。 窒化物層の生成態様を模式的に示す図である。(a)は、母相断面を示し、(b)は、軟窒化処理後の母相断面を示し、(c)は、母相表面から深さ方向における窒素濃度を示す。 高周波加熱時の窒化物層の挙動と窒素の拡散を模式的に示す図である。(a)は、高周波加熱時の窒化物層の挙動と窒素濃度分布を示し、(b)は、高周波加熱後の母相の態様と窒素濃度を示す。 炉加熱による窒化物層の挙動と窒素の拡散を模式的に示す図である。(a)は、炉加熱時の窒化物層の挙動と窒素濃度分布を示し、(b)は、炉加熱後の母相の態様と窒素濃度を示す。
本発明の鋼の熱処理方法(以下「本発明方法」ということがある。)は、軟窒化処理と熱処理(拡散処理)の組合せで、鋼表面から深さ方向に、疲労強度を担う硬化層を深く形成することを基本思想とする。
そして、本発明方法は、具体的には、鋼に軟窒化処理を施し、表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を形成し、次いで、1000〜1200℃で30〜120分加熱することを特徴とする。
以下、本発明方法の軟窒化条件及び熱処理条件について説明する。
まず、鋼に軟窒化処理を施し、表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を形成する。鋼は、軟窒化処理で、表面に厚さ10〜50μm程度の窒化物層を形成し得る鋼であればよく、特定の成分組成の鋼に限定されない。なお、好ましい成分組成については後述する。
軟窒化処理条件は、鋼表面に厚さ10〜50μm程度の窒化物層を形成し得る条件であればよいが、500〜670℃で、生産性の観点から1〜12時間が好ましい。
加熱温度が500℃未満であると、長時間加熱しても、所望の厚さの窒化物層が得られない場合があるので、500℃以上が好ましい。より好ましくは550℃以上である。
加熱温度が670℃を超えると、加熱中に窒化拡散相中にオーステナイトが生成するため、670℃以下が好ましい。より好ましくは600℃以下である。
加熱時間が1時間未満であると、所望の厚さの窒化物層が得られない場合があるので、1時間以上が好ましい。より好ましくは2時間以上である。
加熱時間は12時間を超えてもよいが、長時間加熱しても窒化物層の成長速度は時間とともに遅くなるため、生産性を考慮して12時間以下が好ましい。より好ましくは10時間以下である。
窒化物層の厚さが10μm未満であると、次の加熱(1000〜1200℃、30〜120分)で硬化層の硬さが低下するので、下限を10μmとする。好ましくは15μm以上である。軟窒化処理による窒化物層は、厚さ50μm以上になると剥離し易くなるので、上限を50μmとする。好ましくは45μm以下である。
図1に、厚さ約30μmの窒化物層を形成した鋼の断面を示す。表1に成分組成を示す鋼(SCr420に相当)で、φ:3mm×長さ:10mmの丸棒を作製し、流量、NH3:4m3/hr、N2:0.85m3/hr、及び、CO2:0.15m3/hrの混合ガス気流中で、上記丸棒に600℃で8時間の軟窒化処理を施し、図1に示すように、鋼の表面に、厚さ約30μmの窒化物層を形成した。
本発明方法においては、鋼表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を形成した後、オーステナイト域(γ域)の1000〜1200℃で30〜120分加熱する。このオーステナイト域(γ域)での加熱で、窒化物層中の窒素を鋼の深いところまで拡散させて、疲労強度を担う硬化層を形成する。この点が、本発明方法の特徴である。
窒素の拡散係数は、γ域よりα域(フェライト域)での方が大きいが、γ域でも、1000℃以上の領域では、600℃で軟窒化処理を行う際の窒素の拡散係数と同等又は同等以上の大きさになる。
また、窒素をα域で拡散させる場合、鋼中にCrやSiが存在すると、窒素がCrやSiと化合物を形成するので、窒素の拡散が阻害されるが、γ域では、窒素が化合物を形成しないので、窒素の拡散が円滑に進む。
それ故、本発明方法では、γ域において、表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を有する鋼を1000〜1200℃に加熱する。1000〜1200℃のγ域加熱時、窒化物層(厚さ10〜50μm)は、窒素の供給源として働き、窒素が鋼の内部まで拡散する。そして、窒化物層が消滅するまで、窒素が、鋼内部の深いところまで拡散し、疲労強度を担う硬化層が形成される。
加熱温度が1000℃未満であると、窒素の拡散が遅く、600℃で軟窒化処理を行う際の窒素の拡散係数より小さくなり、窒化物層が消滅するまでに時間がかかるため、加熱温度は1000℃以上とする。好ましくは、1050℃以上である。
加熱温度が1200℃を超えると、窒化物層が消滅した後の表層の脱窒が顕著になり、表面の硬さが低下するため、加熱温度は1200℃以下とする。好ましくは1150℃以下である。
加熱時間は30〜120分とする。加熱時間が30分未満であると、1200℃で加熱しても、窒化物層が残存するので、加熱時間は30分以上とする。好ましくは50分以上である。加熱時間が120分を超えると、生産性を損なうので、加熱時間は120分以下とする。好ましくは100分以下である。
1000〜1200℃、30〜120分の加熱を行う加熱手段は、特定の加熱手段に限定されない。また、加熱手段として、通電加熱、高周波加熱及び炉加熱等の種々の加熱方法を適用できる。
ここで、軟窒化処理後に加熱することの技術的意義を、非密封試験片を用いた高周波加熱と密封試験片を用いた炉加熱を例にとり説明する。密封試験片は、後述するように、軟窒化処理後の試験片をガラス管にArで封入した試験片であり、非密封試験片はガラス管に封入せず、軟窒化処理後の試験片をそのまま用いることを意味する。
図2に、軟窒化処理後の鋼の深さ方向における硬度分布と、軟窒化処理後、高周波加熱を施した鋼の深さ方向における硬度分布を示す。厚さ30μmの窒化物層を有する試験片に、窒素雰囲気中と大気圧下で、1200℃、120分の高周波加熱を施し、その後、急冷して、深さ方向における硬度(HV)を測定した。
図中、窒化ままの硬度は、窒化物層と母相の界面からの距離での硬度であり、高周波加熱(1200℃、120分加熱+急冷)後の硬度は、窒化物層がなくなっていたため、表面からの距離での硬度である。
用いた試験片を軟窒化せずに焼入れた単純焼入材の硬さは、中心部でHV290であるので、図2から、高周波加熱により表面近傍に存在する窒素が内部に拡散して、表面から0.5mm以上の内部では、硬度が単純焼入より上昇していることが解る。
このことは、高周波加熱(1200℃×2時間+急冷)で、窒素は拡散するが、表層の窒化物は拡散に寄与せず、窒化時に鋼内部に形成された窒素濃度分布が、窒素の拡散で、よりなだらかになったことを示している。
図3に、軟窒化処理後、高周波加熱を施した鋼の断面を示す。鋼の表面に、窒化物層の痕跡はなく、替わりに、黒い斑点(空洞と推測される)が存在する。高周波加熱中に窒化物が分解して、窒素が窒素ガスとして逃散してしまうと推測されるが、この点については後述する。
図4に、軟窒化処理後の鋼の深さ方向における硬度分布と、軟窒化処理後、炉加熱を施した鋼の深さ方向における硬度分布を示す。炉加熱は、軟窒化処理後の試験片を、ガラス管にArで封入(密封試験片)して、(a)1200℃(γ域)で2時間、(b)1000℃(γ域)で2時間、及び、(c)700℃(α域)で2時間行った。
なお、ガラス管封入では、1200℃、1000℃、及び、700℃のそれぞれで大気圧になるように、封入するAr量を調節した。
図4から、試験片の深さ方向の硬度が、窒化時の表面硬度より上昇していることが解る。これは、窒化時に母相内に形成された窒素の濃化層のみならず、表層の窒化物層中の窒素が内部に深く拡散した結果であると推測される。
図5に、軟窒化処理後、1000℃の炉加熱を施した鋼の断面を示す。鋼の表面に、窒化物層の痕跡はなく、替わりに、黒い斑点(空洞と推測される)が存在する。図6に、軟窒化処理後、1200℃の炉加熱を施した鋼の断面を示す。
図5及び図6において、鋼表面に、黒い斑点(空洞と推測される)が存在する。これは、封入ガラス管内の内圧が上がり、窒化物の分解が抑制され、1200℃で窒化物が残存したと推測される。そして、1000〜1200℃の炉加熱により、窒素が、窒化物層から鋼内部の深くまで、拡散したと推測される。
本発明方法において、軟窒化後の加熱で、窒素が鋼の内部へ深くまで拡散する理由は、次のように推測される。
図7に、窒化物層の生成態様を模式的に示す。図7(a)に、母相断面を示し、図7(b)に、軟窒化処理後の母相断面を示し、図7(c)に、母相表面から深さ方向における窒素濃度を示す。
軟窒化処理で窒化物が生成すると膨張する(図7(b)、参照)。窒素濃度は窒化物層と母相の境界で急減している(図7(c)、参照)。
図8に、高周波加熱時の窒化物層の挙動と窒素の拡散を模式的に示す。図8(a)に、図7(b)に示す窒化物層を有する母相における高周波加熱時の窒化物層の挙動と窒素濃度分布を示し、図8(b)に、高周波加熱後の母相の態様と窒素濃度を示す。
非密封試験片の高周波加熱では、昇温中に窒化物層は分解し、加熱温度に到達した時点で窒化物層は残存せず、窒化物を形成する窒素は、窒素ガスとなって表面から逃散する(図8(a)の上図、参照)。窒素が抜けたところへのFeの拡散が追いつかないので、窒素が抜けたところは空洞となる。この空洞が、図3に示す鋼の断面の表層近傍に存在する黒い斑点である。
加熱温度に保持すると、窒素原子の拡散により母材中の窒素の濃度分布は、平坦となる(図8(a)の下図、及び、図8(b)の下図、参照)。
図9に、密封試験片の炉加熱による窒化物層の挙動と窒素の拡散を模式的に示す。図9(a)に、図7(b)に示す窒化物層を有する母相における炉加熱時の窒化物層の挙動と窒素濃度分布を示し、図8(b)に、炉加熱後の母相の態様と窒素濃度を示す。
炉加熱の昇温中、窒化物層は分解し、窒化物を形成する窒素が、窒素ガスとなって表面から逃散するが、密封されているためにガラス管内の圧力が上昇し、窒化物の分解が抑制されるため、窒化物層は表層部のみ分解し、窒化物層は残存する(図9(a)の上図、参照)。
昇温終了時、窒化物層は残存し、加熱温度に保持中、窒化物層中の窒素原子は母相に拡散し、最終的に化合物層は消失する。化合物層中の窒素の抜けたところへのFeの拡散が追いつかないので、窒素が抜けたところは空洞となる。この空洞が、図5及び図6に示す鋼の断面の表層近傍に存在する黒い斑点である。(図9(b)の上図、参照)。母材中の窒素の濃度分布は、高濃度で、かつ、鋼内部の深いところまで平坦となる(図9(a)の下図、及び、図9(b)の下図、参照)。即ち、本発明方法においては、短時間で、浸窒深さを増大し、鋼の内部の深くまで、疲労強度を担う硬化層を形成することができる。
次に、本発明方法で対象とする鋼の好ましい成分組成について説明する。以下、%は質量%を意味する。
C:0.05〜0.55%
Cは、機械構造部品としての強度を確保する元素である。0.05%未満では、添加効果の発現が不十分であり、また、熱処理後においても強度を維持するため、0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。一方、0.55%を超えると、機械加工性が低下するので、0.55%以下が好ましい。より好ましくは0.50%以下である。
Si:0.05〜0.50%
Siは、鋼の強度向上に寄与する元素である。0.05%未満では、添加効果の発現が不十分であるので、0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。一方、0.50%を超えると、加工性が低下するので、0.50%以下が好ましい。より好ましくは0.45%以下である。
Mn:0.20〜2.50%
Mnは、焼入れ性を改善し、強度の向上に寄与する元素である。0.20%未満では、添加効果の発現が不十分であるので、0.20%以上が好ましい。より好ましくは0.40%以上である。一方、2.50%を超えると、硬さが上昇し加工性が低下するので、2.50%以下が好ましい。より好ましくは2.00%以下である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、脱酸剤として機能する元素である。0.005%未満では、添加効果が不十分であるので、0.005%以上が好ましい。より好ましくは0.010%以上である。一方、0.10%を超えると、疲労強度を阻害する硬質の非金属介在物を生成するので、0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.08%以下である。
N:0.001〜0.02%
Nは、鋼中で、窒化物を形成する元素である。鋼中の窒化物は、疲労破壊の起点となり、疲労強度を低下させるので、0.02%以下が好ましい。より好ましくは0.01%以下である。Nを0.001%未満に低減すると、鋼の製造コストが上昇するので、0.001%以上が好ましい。より好ましくは0.003%以上である。
本発明方法で対象とする鋼は、上記元素の他、残部はFe及び不可避的不純物からなる。不可避不純物としてのP及びSは、P:0.01%以下、S:0.01%以下とすることが好ましい。
P:0.01%以下
Pは、オーステナイト粒界に偏析し、靭性や疲労強度の低下を招くので、0.01%以下が好ましい。より好ましくは0.005%以下である。Pは、少ないほど好ましいので、0%を含むが、0.0001%未満に低減すると、鋼の製造コストが上昇するので、実用鋼においては、0.0001%が下限である。
S:0.01%以下
Sは、鋼の熱間加工性を阻害し、また、鋼中での非金属介在物を形成し、靭性や疲労強度を阻害するので、0.01%以下が好ましい。より好ましくは0.005%以下である。Sは、少ないほど好ましいので、0%を含むが、0.0001%未満に低減すると、鋼の製造コストが上昇するので、実用鋼においては、0.0001%が下限である。
本発明方法で対象とする鋼は、上記元素の他、本発明方法の作用効果を阻害しない範囲で、Cr、Mo、Ni、Cu、Ti、V、Nbの1種又は2種以上を含有してもよい。
Cr、Mo、Ni、Cuは、いずれも、適量の添加で、靭性を損なうことなく強度を増大する元素である。Cr、Mo、Ni、Cuは、いずれも、0.1%未満では添加効果が小さく、2.0%を超えると、靭性が大きく劣化することがあるため、いずれも、下限を0.1%、上限を2%とすることが好ましい。
Tiは、窒化物や炭化物を生成し、析出強化により強度の向上に寄与する元素である。0.003%未満では、添加効果は小さく、0.05%を超えると靱性が劣化することがあるので、下限を0.003%、上限を0.05%とすることが好ましい。
Vも、Tiと同様、窒化物や炭化物を生成し、析出強化により強度の向上に寄与する元素である。添加効果を得るためには、0.05%以上の添加が好ましい。一方、過多に添加すると靭性が劣化することがあるので、上限は0.50%が好ましい。
Nbも、Tiと同様、窒化物や炭化物を生成し、析出強化により強度の向上に寄与する元素である。添加効果を得るためには、0.01%以上の添加が好ましい。一方、過多に添加すると靭性が劣化することがあるため、上限は0.10%が好ましい。
また、これらの元素以外にも、被削性を向上させる元素として、Pb、Bi等を添加してもよく、その場合も本発明に含まれる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表2に示す成分組成の鋼に、表3に示す軟窒化処理条件で軟窒化処理を施し、次いで、表3に示す熱処理条件で熱処理を施した。熱処理後、鋼を切断し、断面の表面硬さ(表面から25μmの位置)及び表面下1mm位置の硬さ(硬化層の硬さ)をビッカース硬さ試験によって測定した。
表3から、発明例においては、軟窒化処理を行わずに熱処理を行った比較例(番号3)に比べて、表面及び硬質層の硬さが顕著に優れた鋼が得られていることが解る。また、熱処理の前に形成された窒化物層の厚みが不十分であった比較例(番号4)は、熱処理温度が低かった比較例(番号9)、熱処理時間が短かった比較例(番号10)は、硬質層の硬さが発明例に比べて劣っている。
前述したように、本発明によれば、軟窒化処理と、その後の熱処理により、窒素を、極めて短時間で、鋼表面から深さ方向に拡散させ、疲労強度を担う硬化層を深く形成することができる。よって、本発明は、浸窒深さが要求される機械構造部品(例えば、クランク、歯車、CVT等)の製造に適用できるものであり、産業上の利用可能性が高いものである。

Claims (5)

  1. 鋼に軟窒化処理を施し、表面に厚さ10〜50μmの窒化物層を形成し、次いで、1000〜1200℃で30〜120分加熱することを特徴とする鋼の熱処理方法。
  2. 前記軟窒化処理を500〜670℃で、1〜12時間施すことを特徴とする請求項1に記載の鋼の熱処理方法。
  3. 前記加熱を高周波加熱又は炉加熱で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼の熱処理方法。
  4. 前記鋼が、質量%で、C:0.05〜0.55%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜2.50%、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜0.02%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼の熱処理方法。
  5. 前記鋼が、さらに、質量%で、Cr:0.1〜2.0%、Mo:0.1〜2.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜2.0%、Ti:0.003〜0.05%、V:0.05〜0.50%、Nb:0.01〜0.10%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の鋼の熱処理方法。
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