JP2015033697A - リン酸イオン含有水溶液の処理方法 - Google Patents

リン酸イオン含有水溶液の処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、リン酸イオン含有水溶液から、リンを簡便かつ効率的に除去することができる処理方法を提供する。【解決手段】 本発明は、リン酸イオンを含有する水溶液に、特定のリン浄化剤を添加する工程、または、リン酸イオンを含有する水溶液と、特定のリン浄化剤とを接触させる工程、を含むリン酸イオン含有水溶液の処理方法である。【選択図】 なし

Description

本発明は、リン酸イオンを含有する水溶液からリンを除去する処理方法に関する。
リン酸イオンは、各種分野における工業排水等に含まれている場合があるイオンである。リンは環境中で富栄養化を引き起こす原因となる物質であることから、リン酸イオンを含有する水溶液は、そのまま排水せずにリンを除去する処理を行った後に排水する必要がある。したがって、リン酸イオン含有水溶液からリンを効率よく除去する方法が求められている。
リン酸イオン含有水溶液からリンを除去する方法としては、凝集沈殿法が一般的に知られている(非特許文献1参照。)。凝集沈殿法によるリンの除去方法には、硫酸バンドやPAC(ポリ塩化アルミニウム)などのアルミ塩、あるいは塩化第二鉄などの鉄塩と反応させ金属塩として沈殿される方法と、消石灰や塩化カルシウムと反応させアルカリ側でカルシウム塩として沈殿させる方法がある。
しかしながら、凝集沈殿法では、大量の汚泥が発生し、リンの回収も困難であることから、リン酸イオン含有水溶液からリンを除去、回収する方法として、リン酸イオン含有水溶液にカルシウムを添加し、アルカリ剤によるpH調整を行い、リン酸カルシウム化合物であるヒドロキシアパタイト(HAP)として晶析させるHAP法や、アンモニアの存在下でリン酸イオン含有水溶液にマグネシウム剤を添加し、アルカリ剤によるpH調整を行い、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)として回収するMAP法といった技術が開発されている(非特許文献2参照。)。特にMAP法は、リン酸イオン含有水溶液にリン酸イオン、アンモニウムイオン、マグネシウムイオン及び種晶を入れてpHをアルカリに調整すると、リン酸イオン含有水溶液中のリンがリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶として成長するため、この結晶を回収して行う技術である(非特許文献1参照。)。
また、Mg2+、Al3+、Cl、OH及びHOからなる不溶性鉱物性物質であるリン吸着剤「アクトリン」をリン酸イオン含有水溶液に添加して、リンを除去する方法が開示されている(非特許文献3、4参照。)。
その他、リン酸イオンを含有する水と粒径0.03mm以下の卵殻粉とを混合して撹拌することにより、リン酸イオンを卵殻粉に吸着させた後、卵殻粉を水から分離する水中リン除去方法が開示されている(特許文献1参照。)。
特開2005−218982号公報
入門ビジュアル・テクノロジー よくわかる水処理技術(栗田工業(株)著)、2006年、94−97頁 新・公害防止の技術と法規2006〔水質編〕(公害防止の技術と法規編集委員会 編集、社団法人 産業環境管理協会 発行)、2006年、283頁 株式会社トーケミ ろ過材総合カタログ(2012年7月24日時点)、17−18頁 廃棄物学会論文誌、Vol.13、No.2、2002年、99−105頁
上述のように、リン酸イオン含有水溶液からリンを除去、更には回収する方法が開発されている。しかしながら、非特許文献1の凝集沈殿法は、大量の汚泥が発生してしまうものであった。非特許文献1又は2に開示のHAP法やMAP法はいずれも、pH調整といった前処理を必要とする方法であった。更には、リン酸イオン含有水溶液に添加するカルシウムやマグネシウム剤が水溶性の高い金属塩であるために、実施した後の処理後の水溶液は当該金属のイオン濃度が高い水溶液となってしまい、これらの金属イオンを別途除去する必要があるものであった。そして、HAP法ではFAP(フルオロアパタイト)としてフッ素を固定化した後の処理水中に過剰のリン酸イオンが溶出するため、処理水の用途によってはリン酸イオンの除去方法を考える必要のあるものであった。また、非特許文献3又は4に開示のアクトリンを用いたリン除去法においては、アクトリンへのリン酸イオンの吸着に伴って生成する塩化物イオンが処理後の水溶液に残存するため、別途、塩化物イオンを除去する必要があるものであった。
このように、リン酸イオン含有水溶液からリンを除去する方法としては、より簡便かつ効率的なものとするための工夫の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、リン酸イオン含有水溶液から、リンを簡便かつ効率的に除去することができる処理方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、リン酸イオン含有水溶液からリンを除去する方法について種々検討を行った。そうしたところ、リン酸イオン含有水溶液に、水溶液中にマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを生成させるリン浄化剤を添加すると、リン浄化剤の添加量が微量であっても、リン酸イオン含有水溶液からリン酸イオンを充分に除去することができることを見出した。
また、リン浄化剤として水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を用いて、リン酸イオン含有水溶液と接触させた場合にも、当該粒子の添加量が微量であっても、リン酸イオン含有水溶液からリン酸イオンを充分に除去することができることを見出した。そして、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子は、いずれも水に難溶性の塩であるため、処理後の水溶液からこれら粒子を分離、回収することは容易であることがわかった。
このように、リン酸イオン含有水溶液に、水溶液中にマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを生成させるリン浄化剤を添加する、又は、リン酸イオン含有水溶液と、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を含むリン浄化剤とを接触させることにより、リン酸イオン含有水溶液からリン酸イオンを簡便かつ効率的に除去することが可能であり、上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、リン酸イオンを含有する水溶液に、リン浄化剤を添加する工程を含み、該リン浄化剤は、リン酸イオンを含有する水溶液中にマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを生成させる、リン酸イオン含有水溶液の処理方法である。
本発明はまた、リン酸イオンを含有する水溶液と、リン浄化剤とを接触させる工程を含み、該リン浄化剤は、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を含む、リン酸イオン含有水溶液の処理方法でもある。
上記リン浄化剤は、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子(A)と、粒子(A)以外の粒子(B)とを含み、粒子(A)が粒子(B)に担持されている形態であってもよい。
上記接触工程は、上記リン浄化剤を収容した反応槽にリン酸イオンを含有する水溶液を通過させる工程であり、該反応槽は、砂及び上記リン浄化剤を収容しており、該砂及びリン浄化剤は、上記反応槽の上部から順に、第一の砂層、リン浄化剤層、及び、第二の砂層を構成し、該第一の砂層は、有効径が上記粒子(B)よりも小さい第一の砂からなり、該リン浄化剤層は、上記リン浄化剤を含み、該第二の砂層は、有効径が上記粒子(B)よりも小さい第二の砂からなることが好ましい。
上記接触工程において、リン浄化剤と共に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び、塩化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を併用することも好ましい。
上記リン酸イオンを含有する水溶液は、フッ素を含有する水溶液をリン酸水素カルシウム二水和物と接触させて得られるものであることも好ましい。
上記リン酸イオンを含有する水溶液は、更にカルシウムイオンを含有することも好ましい。
本発明は、リン酸イオン及びカルシウムイオンを含有する水溶液と、水酸化マグネシウム粒子とを接触させる工程を含むリン酸イオン含有水溶液の処理方法でもある。
また、本発明は、リン酸イオンを含有する水溶液と、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子とを接触させる工程を含むリン酸イオン含有水溶液の処理方法でもある。
本発明のリン酸イオン含有水溶液の処理方法は、塩化物イオンが生成しないものであることが好ましい。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の処理方法の一つは、リン酸イオンを含有する水溶液に、リン浄化剤を添加する工程を含み、該リン浄化剤は、リン酸イオンを含有する水溶液中にマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを生成させる、リン酸イオン含有水溶液の処理方法である。本明細書においては、当該処理方法を本発明の第一の処理方法ともいう。また、当該リン浄化剤を本発明の第一のリン浄化剤ともいう。
なお、本発明の第一の処理方法と、後述する本発明の第二の処理方法とを合わせて本発明の処理方法ともいう。また、本発明の第一のリン浄化剤と、後述する本発明の第二のリン浄化剤とを合わせて本発明のリン浄化剤ともいう。
本発明の第一の処理方法は、リン酸イオンを含有する水溶液(本明細書においては、「リン酸イオン含有水溶液」又は「処理対象水」ともいう。)に、本発明の第一のリン浄化剤を添加する添加工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよく、例えば、後述するように、添加工程の前に処理対象水に含まれる固形分を除去する固形分除去工程を含んでいてもよい。
上記添加工程は、処理対象水に本発明の第一のリン浄化剤を添加する工程であればその添加の時機は特に制限されず、処理対象水に一括で添加してもよいし、断続的に添加してもよいし、連続的に添加してもよい。
また、上記添加工程において、処理対象水に、本発明の第一のリン浄化剤を添加する方法としては、処理対象水に添加されるとマグネシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物及び処理対象水に添加されるとカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物を添加する方法、処理対象水に添加されるとマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる混合物を添加する方法、またはこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
上記処理対象水に添加されるとマグネシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムが好ましく、水酸化マグネシウムがより好ましい。上記マグネシウムイオンを生成させる化合物としては、これら化合物の1種又は2種以上を用いることができる。なお、当該化合物は、水和物の形態であってもよい。
上記処理対象水に添加されるとカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムが好ましく、硫酸カルシウムがより好ましい。上記カルシウムイオンを生成させる化合物としては、これら化合物の1種又は2種以上を用いることができる。なお、当該化合物は、水和物の形態であってもよい。
上記処理対象水に添加されるとマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる混合物としては、例えば、上記処理対象水に添加されるとマグネシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物と上記処理対象水に添加されるとカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物との混合物などが挙げられる。これらの中でも、水酸化マグネシウムと炭酸カルシウムとの混合物、水酸化マグネシウムと硫酸カルシウムとの混合物、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムとの混合物、炭酸マグネシウムと硫酸カルシウムとの混合物が好ましく、水酸化マグネシウムと硫酸カルシウムがより好ましい。
上記混合物が、上記処理対象水に添加されるとマグネシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物と上記処理対象水に添加されるとカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物との混合物である場合、混合物中の当該マグネシウムイオンを生成させる化合物とカルシウムイオンを生成させる化合物との質量比は、1/2〜5/1(マグネシウムイオンを生成させる化合物/カルシウムイオンを生成させる化合物)であることが好ましい。マグネシウムイオンを生成させる化合物とカルシウムイオンを生成させる化合物との比がこのような範囲であると、リン除去の処理効率を更に良好なものとすることができる。上記マグネシウムイオンを生成させる化合物と、カルシウムイオンを生成させる化合物との質量比としてより好ましくは、3/2〜3/1(マグネシウムイオンを生成させる化合物/カルシウムイオンを生成させる化合物)である。
上記添加工程における本発明の第一のリン浄化剤の添加量としては、処理対象水に添加されるとマグネシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物及び処理対象水に添加されるとカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物を添加する場合、当該マグネシウムイオンを生成させる化合物と当該カルシウムイオンを生成させる化合物とを合計で処理対象水に対して0.01質量%以上添加することが好ましい。当該マグネシウムイオンを生成させる化合物と当該カルシウムイオンを生成させる化合物との合計添加量をこのような範囲とすることによって、充分な処理効率を確保することができる。当該マグネシウムイオンを生成させる化合物と当該カルシウムイオンを生成させる化合物との合計添加量としてより好ましくは、処理対象水に対して0.015質量%以上、更に好ましくは、0.02質量%以上である。特に好ましくは、0.05質量%以上である。一方、本発明の第一の処理方法においては、当該マグネシウムイオンを生成させる化合物と当該カルシウムイオンを生成させる化合物との合計添加量が微量であっても処理対象水からリン酸イオンを充分に除去することが可能であるため、経済的な観点からはなるべく添加量は少ないことが好ましく、当該マグネシウムイオンを生成させる化合物と当該カルシウムイオンを生成させる化合物との合計添加量の上限としては、処理対象水に対して5質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%であり、更に好ましくは1質量%である。
上記添加工程において、処理対象水に添加されるとマグネシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物及び処理対象水に添加されるとカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる化合物を添加する場合、添加される当該マグネシウムイオンを生成させる化合物とカルシウムイオンを生成させる化合物との質量比は、1/2〜5/1(マグネシウムイオンを生成させる化合物/カルシウムイオンを生成させる化合物)であることが好ましい。マグネシウムイオンを生成させる化合物とカルシウムイオンを生成させる化合物との比がこのような範囲であると、リン除去の処理効率を更に良好なものとすることができる。上記マグネシウムイオンを生成させる化合物と、カルシウムイオンを生成させる化合物との質量比としてより好ましくは、3/2〜3/1(マグネシウムイオンを生成させる化合物/カルシウムイオンを生成させる化合物)である。
また、処理対象水に添加されるとマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを処理対象水中に生成させる混合物を添加する場合の、添加工程における本発明の第一のリン浄化剤の添加量としては、当該混合物を処理対象水に対して0.01質量%以上添加することが好ましい。当該混合物の添加量をこのような範囲とすることによって、充分な処理効率を確保することができる。当該混合物の添加量としてより好ましくは、処理対象水に対して0.015質量%以上、更に好ましくは、0.02質量%以上である。特に好ましくは、0.05質量%以上である。一方、本発明の第一の処理方法においては、当該混合物の添加量が微量であっても処理対象水からリン酸イオンを充分に除去することが可能であるため、経済的な観点からはなるべく添加量は少ないことが好ましく、当該混合物の添加量の上限としては、処理対象水に対して5質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%であり、更に好ましくは1質量%である。
本発明の第一の処理方法においては、上記添加工程の後、添加された本発明の第一のリン浄化剤から生成するマグネシウムイオン及びカルシウムイオンと処理対象水とが接触することとなる。その接触時間(便宜上、本発明の第一のリン浄化剤を添加すると同時に、本発明の第一のリン浄化剤から生成するマグネシウムイオン及びカルシウムイオンと処理対象水とが接触するものとする。すなわち、処理対象水に本発明の第一のリン浄化剤を添加した時間が、接触開始時間となる。)としては、本発明の第一のリン浄化剤の添加量、処理対象水のリン酸イオン濃度等に応じて適宜設定できるが、充分なリン除去率を確保する観点から、60分以上であることが好ましい。また、通常遅くとも24時間程度で除去可能である。
本発明の処理方法のもう一つは、リン酸イオンを含有する水溶液と、リン浄化剤とを接触させる工程を含み、該リン浄化剤は、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を含む、リン酸イオン含有水溶液の処理方法である。本明細書においては、当該処理方法を本発明の第二の処理方法ともいう。また、当該リン浄化剤を本発明の第二のリン浄化剤ともいう。
本発明の第二の処理方法は、リン酸イオンを含有する水溶液と、本発明の第二のリン浄化剤とを接触させる接触工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよく、本発明の第一の処理方法と同様、後述する固形分除去工程を含んでいてもよい。
上記接触工程は、処理対象水と本発明の第二のリン浄化剤とを接触させる工程であればその接触方法は特に制限されず、処理対象水に本発明の第二のリン浄化剤を添加する回分式の接触であってもよいし、本発明の第二のリン浄化剤を充填したカラムなどの本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽に処理対象水を流通させる連続式の接触であってもよい。また、回分式の接触で複数回処理してもよいし、連続式の接触で複数回処理してもよいし、回分式の接触と連続式の接触とを組み合わせた処理としてもよい。なお、連続式の接触における反応槽は、移動層式、固定層式、又は、流動層式のいずれであってもよい。
上記回分式の接触において、処理対象水に、本発明の第二のリン浄化剤を添加する際の、添加の時機は特に制限されず、処理対象水に一括で添加してもよいし、断続的に添加してもよいし、連続的に添加してもよい。
また、上記回分式の接触において、処理対象水と本発明の第二のリン浄化剤との接触時間は、本発明の第二のリン浄化剤の添加量、処理対象水のリン酸イオン濃度等に応じて適宜設定できるが、充分なリン除去率を確保する観点から、60分以上であることが好ましい。また、通常遅くとも24時間程度で除去可能である。
上記回分式の接触工程における本発明の第二のリン浄化剤の添加量としては、添加した本発明の第二のリン浄化剤が全て処理対象水に溶解してしまわずに、少なくとも一部(好ましくは、添加した本発明の第二のリン浄化剤全量の60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)が固体状態で存在することが可能な量添加することが好ましい。具体的な添加量としては、本発明の第二のリン浄化剤を処理対象水に対して0.01質量%以上添加することが好ましい。当該粒子の添加量をこのような範囲とすることによって、充分な処理効率を確保することができる。本発明の第二のリン浄化剤の添加量としてより好ましくは、処理対象水に対して0.015質量%以上、更に好ましくは、0.02質量%以上、特に好ましくは、0.05質量%以上である。一方、本発明の第二の処理方法における接触工程を回分式にて行う場合、本発明の第二のリン浄化剤の添加量が微量であっても処理対象水からリン酸イオンを充分に除去することが可能であるため、経済的な観点からはなるべく添加量は少ないことが好ましく、本発明の第二のリン浄化剤の添加量の上限としては、処理対象水に対して5質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%であり、更に好ましくは1質量%である。
上記連続式の接触において、処理対象水と本発明の第二のリン浄化剤との接触時間(処理対象水が反応槽を通過する間に、本発明の第二のリン浄化剤と接触している時間)は、本発明の第二のリン浄化剤の使用量、処理対象水のリン酸イオン濃度、反応槽を通す処理対象水の流速等に応じて適宜設定できるが、充分なリン除去率を確保する観点から、20〜60分であることが好ましい。
本発明の第二のリン浄化剤は、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を含むものであるが、少なくともこれらいずれかの粒子を含む限り、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、後述する化合物(I)などが挙げられる。
なお、これら本発明の第二のリン浄化剤を構成する化合物は、水和物の形態となっていてもよい。
本発明の第二のリン浄化剤は、中でも水酸化マグネシウム粒子であることが好ましい。
また、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子を併用する形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、リン酸イオンを含有する水溶液と、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子とを接触させる工程を含むリン酸イオン含有水溶液の処理方法もまた、本発明の1つである。
本発明の第二のリン浄化剤の粒子径は、0.1〜3.0mmであることが好ましい。粒子径をこのような範囲とすることによって、充分な処理効率を確保することができる。上記粒子径としてより好ましくは、0.3〜2.0mmであり、更に好ましくは、0.5〜1.0mmである。
本発明の第二のリン浄化剤はまた、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子(A)と、粒子(A)以外の粒子(B)とを含み、粒子(A)が粒子(B)に担持されている形態であることも、本発明の好適な実施形態の1つである。粒子(B)は粒子(A)よりも粒径が大きいことが好ましい。
上記第二のリン浄化剤では、リンの除去効率を向上させるために粒子(A)の微粉末を選択した場合であっても、比較的粒子径の大きな粒子(B)を選択し、粒子(A)をそれに担持させることによって、リン浄化剤の粒径を大きくすることができるため、リン浄化剤がダマ(凝集物)になりにくく、処理対象水との接触面積を大きくすることができる。また、反応槽を用いた連続式の接触においては、透水性に優れるリン浄化剤層を形成することができる。粒子(A)の粉末を単独で用いた場合、その粒子径に関わらず、粒子(A)の粉末が凝固し、透水性が低下する場合があり、その傾向は粒子(A)の粒子径が小さいほど顕著である。
また、上記第二のリン浄化剤を、粒子(A)と粒子(B)とから構成されるものとすることにより、粒子(A)を単独で用いた場合と比較して、粒子(A)の粒子同士が化学的に結合することも抑制することが可能となる。
上記第二のリン浄化剤を、粒子(A)を粒子(B)に担持させたものとした場合には、飛散しにくくなり、取り扱い性により優れたものとなる。
上記のことから、上記第二のリン浄化剤を粒子(A)が粒子(B)に担持されたものとすることによって、処理対象水との効率的な接触を妨げることなく、また、透水性を低下させずに、粒子(A)の粒径を小さくすることができる。そのため、効率よく処理対象水中のリンを除去することができ、結果として、長期に亘って処理水中のリン濃度を低下させることができる。更に、使用後のリン浄化剤を簡便かつ高い回収率で回収することができる。
上記第二のリン浄化剤が、粒子(A)を粒子(B)に担持させたものである場合、粒子(B)100質量部に対して、粒子(A)が1〜100質量部であることが好ましい。上記範囲に設定することによって、粒子(A)が粒子(B)に効率よく担持され、より透水性、リン除去性に優れるリン浄化剤となる。より好ましくは、粒子(B)100質量部に対して、粒子(A)が2〜50質量部であり、更に好ましくは、5〜15質量部である。
上記粒子(A)は、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子であるが、中でも水酸化マグネシウム粒子であることが好ましい。また、水酸化マグネシウム粒子及び硫酸カルシウム粒子を併用する形態であってもよい。
上記粒子(A)は、粉末であることが好ましく、その平均粒子径が10〜100μmであることがより好ましい。上記範囲の平均粒子径であることによって、効率的に粒子(A)が粒子(B)に担持されるとともに、リン除去性に優れるリン浄化剤となる。
上記粒子(A)の平均粒子径は、日機装株式会社製のマイクロトラック9320HRAを用いて、レーザー回折錯乱法により測定することができる。
粒子(B)は、粒子(A)を担持可能な粒子である。粒子(A)が粒子(B)に担持されることによって、透水性、リン除去性に優れるリン浄化剤とすることができる。
粒子(B)としては、例えば、一般的に水の浄化に用いられる濾過砂、濾過砂利等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。粒子(B)として、砂を用いることが好ましい。
粒子(B)は、有効径が0.3〜3.0mmであることが好ましい。有効径は、0.4〜1.0mmであることがより好ましく、0.5〜0.6mmであることが更に好ましい。有効径が上記範囲であることによって、リン浄化剤の透水性及びリン除去性がより優れる。
上記有効径は、粒子(B)をふるいわけして総質量の10質量%が通過するふるい目の大きさに相当する粒径である。具体的には、標準網ふるい器(JIS Z8801、呼び寸法:0.3〜3.0mm、ふるい器の大きさ:φ200、深さ:45mm)を用いて手動でふるい分け試験を行い、総質量の10質量%が通過するふるい目の大きさに相当する粒径である。
上記粒子(B)は、実質的に、粒子径が0.3〜3.0mmの粒子であることが好ましく、実質的に粒子径が0.3〜3.0mmの粒子のみからなることがより好ましい。すなわち、粒子(B)としては、粒子(B)全体の90質量%以上の粒子が0.3〜3.0mmの粒子径を有するものであることが好ましく、より好ましい比率は99質量%以上であり、更に好ましい比率は99.9質量%以上である。粒子(B)は、粒子径が0.3mm未満である粒子を含まず、粒子径が3.0mmを超える粒子を含まないことが特に好ましい。粒子径が上記範囲であることによって、粒子(A)が効率的に担持されるため、より透水性、リン除去性に優れるリン浄化剤とすることができる。粒子(B)は、実質的に、粒子径が2.8mmを超える粒子を含まない、すなわち、粒子(B)全体の90質量%以上の粒子が2.8mmを超える粒子径を有さない、ことが最も好ましい。
上記粒子(B)の粒子径は、標準網ふるい器(JIS Z8801、呼び寸法:0.3〜3.0mm、ふるい器の大きさ:φ200、深さ:45mm)を用いて手動でふるい分け試験を行い求めることができる。例えば、粒子径が2.8mmを超える粒子を含まないようにする場合には、呼び寸法2.8mmのふるい器を用いる。
上記粒子(B)は、均等係数が1.5以下であることが好ましい。均等係数が上記範囲であることによって、効率的に粒子(A)が粒子(B)に担持され、より透水性に優れ、かつリンの除去性に優れるリン浄化剤とすることができる。
上記粒子(B)の均等係数は、JWWA A103−1:2006に沿って測定することができる。
上記第二のリン浄化剤が、粒子(A)を粒子(B)に担持させたものである場合、本発明の目的を損なわない範囲で、所望により粒子(A)及び粒子(B)以外の成分を含むものであってもよいが、粒子(A)及び粒子(B)が合計で99質量%以上を占めるものが好ましい。
上記粒子(A)が粒子(B)に担持されている第二のリン浄化剤は、粉末状の粒子(A)と粒子(B)とを混合することにより得ることができる。
上記粒子(A)が粒子(B)に担持されている第二のリン浄化剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、粒子(A)及び粒子(B)を、傾胴型重力式ミキサーを用いて混合する工程を含む製造方法により製造することができる。
傾胴型重力式ミキサーは、粒子(A)及び粒子(B)を混合するための混合容器が傾胴機構に取り付けられたものであり、一般的に傾胴型重力式ミキサーと称されるものであればよい。傾胴機構とは、上記混合容器を傾斜させるための機構である。
傾胴型重力式ミキサーの形態としては、例えば、截頭円錐形状の容器を合体させ、一端部を開口させると共に、他端部を閉塞させた混合容器を傾胴機構に取り付け、該混合容器の内周壁に混合するための羽根を取り付けたもの等が挙げられる。上記混合容器は、回転可能であることが好ましい。
上記粒子(A)及び粒子(B)を混合する場合、通常、傾胴機構を作動させてドラムの開口部を上方に向け、混合容器を一定方向に回転させながら粒子(A)及び粒子(B)を投入する。投入された各材料は羽根により持ち上げられては下方に落とされるという動作が繰り返されて混合される。
傾胴型重力式ミキサーは、投入された材料の挙動によって混合が促進されるため、粒子(A)が粒子(B)に担持された状態を良好に保持しながら混合することができる。そのため、上記粒子(A)が粒子(B)に担持されている第二のリン浄化剤の製造に特に優れた効果を発揮する。
本発明の第二の処理方法においては、本発明の第二のリン浄化剤と共に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び、塩化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以降、「化合物(I)」ともいう。)を併用してもよい。
上記化合物(I)としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、及び、水酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び、硫酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
また、本発明の第二の処理方法を施した後の処理水から、本発明の第二のリン浄化剤に加えて化合物(I)も容易に分離、回収することができるよう、化合物(I)も水に難溶性な粒子であることが好ましい。
ここで、硫酸アルミニウムは水に可溶であり、更に、アルミニウムを含有する金属塩は摂取した場合に脳障害をきたすおそれがあることが知られていることから、本発明の第二の処理方法において本発明の第二のリン浄化剤と共に硫酸アルミニウムを併用し、処理水を飲用水等として摂取する場合、脳への影響が懸念され、好ましくない。
これらのことから、上記化合物(I)の中でも、炭酸カルシウムが特に好ましい。
なお、これら化合物(I)は、水和物の形態となっていてもよい。
上記化合物(I)は、上記粒子(A)同様に、上記粒子(B)に担持された形態であってもよい。その際、上記化合物(I)の粒径は粒子(B)の粒径よりも小さいことが好ましい。
本発明の第二のリン浄化剤と共に化合物(I)を併用する形態には、本発明の第二のリン浄化剤と化合物(I)とを含む鉱物の形態も含まれる。そのような鉱物としては、ダイピング石などが挙げられ、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムを含むダイピング石が好ましい形態として挙げられる。
また、本発明の第二の処理方法において、本発明の第二のリン浄化剤と化合物(I)とを含む鉱物を用いる場合の当該鉱物の添加量は、鉱物の組成から求められる鉱物中の本発明の第二のリン浄化剤に相当する化合物の含有量が上述した本発明の第二のリン浄化剤の好ましい添加量を満たすような量であることが好ましい。
本発明の第二の処理方法において、本発明の第二のリン浄化剤と化合物(I)とを併用する場合、本発明の第二のリン浄化剤と化合物(I)との配合割合は、リン除去効率の観点から、1/10〜5/1(本発明の第二のリン浄化剤/化合物(I))であることが好ましい。より好ましくは、1/5〜3/1であり、更に好ましくは、1/2〜2/1である。
本発明の処理方法においては、上記接触工程を連続式の接触により行うこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、上記接触工程は、本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽にリン酸イオン含有処理対象水を通過させる工程であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記反応槽は、砂及び上記第二のリン浄化剤を収容しており、反応槽の上部から注水された処理対象水が下部に向かって流通する過程で上記第二のリン浄化剤と接触することにより、リン浄化剤にリンが固定化されて処理対象水からリンが除去される。リン浄化剤との接触により処理対象水からリンが除去されて得られる処理水は、排水口から排出される。
上記反応槽の形状、大きさ、材質等は特に限定されず、処理対象水の処理量、処理対象水のリン濃度等によって、適宜決定すればよい。槽の形状としては、例えば、円筒状、箱状等が挙げられる。槽の材質としては、例えば、プラスチック、塩化ビニール、アクリル、樹脂、金属等が挙げられる。
上記反応槽の中には少なくとも3つの層を構成するように砂及び本発明の第二のリン浄化剤が収容されており、槽の上部から順に、第一の砂層、本発明の第二のリン浄化剤を含むリン浄化剤層、及び、第二の砂層が設けられている。処理対象水は、第一の砂層、リン浄化剤層、第二の砂層の順に通過して処理される。したがって、上記反応槽を用いることで、簡便かつ効率よく処理対象水中のリンを除去することができるとともに、長期に亘って透水性を確保することができ、更に、リン浄化剤の流出を防止することができるため、使用後のリン浄化剤を簡便かつ高い回収率で回収することができる。
例えば、網等を用いてリン浄化剤の流失を防止することも考えられるが、網はしだいに劣化していくし、また、実用的な設備に導入した場合には操作性が悪く、交換作業が困難である。
このように、上記反応槽は上記構成を有するものであるため、リン浄化剤が凝固せず、透水性に優れている。
上記反応槽における各層は、隣り合う2層の境界が明確でなくてもよく、隣り合う2つの層の間に、該2つの層を構成する成分が混在する領域が存在していてもよい。例えば、第一の砂層とリン浄化剤層との間に、第一の砂とリン浄化剤とが混在する領域が存在していてもよい。
上記リン浄化剤層の厚みは特に限定されるものではなく、処理対象水の処理量、処理対象水のリン濃度等によって、所望するリン除去量が達成されるように適宜設定すればよい。例えば、10cm以上であることが好ましい。
上記反応槽に収容される砂としては、処理対象水と反応しない不活性なものであることが好ましい。また、次に挙げる特性の少なくとも1つを満たすものであることが好ましく、次に挙げる特性の全てを満たすものであることがより好ましい。
(1)ごみ、粘土質等の不純物、又は、偏平若しくは脆弱な砂等を多く含まず、石英質を多く含有し、堅く均等である、(2)砂鉄や脆弱な砂等の含有量が少ない、(3)洗浄濁度が30度以下である、(4)比重(密度)が、2.57〜2.67(g/cm)である、(5)強熱減量が、0.75%以下である、(6)摩滅率が、3%以下である、(7)鉄及び鉄含有化合物の含有量が、0.03(mg/L)以下である、(8)マンガン及びマンガン含有化合物の含有量が、0.005(mg/L)以下である、(9)塩酸可溶率が、3.5%以下である。
第一の砂層は、有効径が粒子(B)よりも小さい第一の砂からなる。第一の砂の有効径が、粒子(B)よりも小さいことで、リン浄化剤の飛散を防止することができる。これにより、使用後のリン浄化剤を回収する効率が向上する。
第一の砂の有効径は、粒子(B)の有効径よりも小さいものであれば限定されないが、例えば、0.3〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.6mmであることがより好ましい。
第一の砂は、実質的に、粒子径が0.3〜0.6mmの粒子であることが好ましく、実質的に粒子径が0.3〜0.6mmの粒子のみからなることがより好ましい。すなわち、第一の砂としては、第一の砂全体の90質量%以上の粒子が0.3〜0.6mmの粒子径を有するものであることが好ましく、より好ましい比率は95質量%以上であり、更に好ましい比率は99質量%以上である。第一の砂は、粒子径が0.3mm未満である粒子を含まず、粒子径が0.6mmを超える粒子を含まないことが特に好ましい。粒子径が上記範囲であることによって、リン浄化剤の飛散をより効果的に防止することができる。
第一の砂は、均等係数が1.5以下であることが好ましい。均等係数が上記範囲であることによって、リン浄化剤の飛散をより効果的に防止することができる。
なお、第一の砂の有効径、粒子径及び均等係数は、粒子(B)と同じ方法で測定することができる。
第一の砂層は、本発明の目的を損なわない範囲で、所望により第一の砂以外の成分を含むものであってもよいが、第一の砂が合計で90質量%以上を占めるものが好ましい。
第一の砂層の厚みは特に限定されるものではないが、通常、リン浄化剤層よりも小さく設定される。リン浄化剤の飛散を効率的に防止する観点から、1cm以上であることが好ましい。厚みの上限には、特に制限はないが、反応槽から使用後のリン浄化剤を簡便に回収することができる点で、10cm以下であることが好ましい。
第二の砂層は、有効径が粒子(B)よりも小さい第二の砂からなる。第二の砂の有効径が、粒子(B)よりも小さいことで、リン浄化剤層を構成するリン浄化剤が反応槽から流出することを抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
第二の砂の有効径は、粒子(B)の有効径よりも小さいものであれば限定されないが、例えば、0.3〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.6mmであることがより好ましい。上記範囲に設定することで、リン浄化剤の流出をより抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
第二の砂は、実質的に、粒子径が0.3〜0.6mmの粒子であることが好ましく、実質的に粒子径が0.3〜0.6mmの粒子のみからなることがより好ましい。すなわち、第二の砂としては、第二の砂全体の90質量%以上の粒子が0.3〜0.6mmの粒子径を有するものであることが好ましく、より好ましい比率は95質量%以上であり、更に好ましい比率は99質量%以上である。第二の砂は、粒子径が0.3mm未満である粒子を含まず、粒子径が0.6mmを超える粒子を含まないことが特に好ましい。粒子径が上記範囲であることによって、リン浄化剤の流出をより抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
第二の砂は、均等係数が1.5以下であることが好ましい。均等係数が上記範囲であることによって、リン浄化剤の流出をより抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
なお、第二の砂の有効径、粒子径及び均等係数は、粒子(B)と同じ方法で測定することができる。
第二の砂層は、本発明の目的を損なわない範囲で、所望により第二の砂以外の成分を含むものであってもよいが、第二の砂が合計で90質量%以上を占めるものが好ましい。
第二の砂層の厚みは特に限定されるものではないが、通常、リン浄化剤層よりも小さく設定される。リン浄化剤の流出を効率的に防止する観点から、5cm以上であることが好ましい。厚みの上限には、特に制限はないが、反応槽から使用後のリン浄化剤を簡便に回収することができる点で、30cm以下であることが好ましい。
上記反応槽は、上記構成を有することによって、リン浄化剤の流出を防止することができ、結果として、使用後のリン浄化剤の回収効率を向上させることができる。
上記反応槽は、更に第三の砂層を有することが好ましく、該第三の砂層が第二の砂層の下に設けられることがより好ましい。そして、第三の砂層は、有効径が第二の砂よりも大きい第三の砂からなることが好ましい。第三の砂の有効径が、第二の砂よりも大きいことで、第二の砂層を構成する第二の砂の流出を抑制することができ、ひいては、リン浄化剤の流出を抑制することができる。これにより、使用後のリン浄化剤の回収効率を更に高めることができる。
第三の砂の有効径は、第二の砂の有効径よりも大きいことが好ましいが、その範囲としては特に限定されず、例えば、0.5〜3.0mmであることが好ましく、0.6〜1.0mmであることがより好ましい。上記範囲に設定することで、リン浄化剤の流出をより抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
第三の砂は、実質的に、粒子径が0.5〜3.0mmの粒子であることが好ましく、実質的に粒子径が0.5〜3.0mmの粒子のみからなることがより好ましい。すなわち、第三の砂としては、第三の砂全体の90質量%以上の粒子が0.5〜3.0mmの粒子径を有するものであることが好ましく、より好ましい比率は95質量%以上であり、更に好ましい比率は99質量%以上である。第三の砂は、粒子径が0.5mm未満である粒子を含まず、粒子径が3.0mmを超える粒子を含まないことが特に好ましい。粒子径が上記範囲であることによって、リン浄化剤の流出をより抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
第三の砂は、均等係数が1.5以下であることが好ましい。均等係数が上記範囲であることによって、リン浄化剤の流出をより抑制することができ、使用後のリン浄化剤の回収効率を高めることができる。
なお、第三の砂の有効径、粒子径及び均等係数は、粒子(B)と同じ方法で測定することができる。
第三の砂層は、本発明の目的を損なわない範囲で、所望により第三の砂以外の成分を含むものであってもよいが、第三の砂が合計で90質量%以上を占めるものが好ましい。
第三の砂層の厚みは特に限定されるものではないが、リン浄化剤層よりも小さく設定されることが好ましい。リン浄化剤の流出を効率的に防止する観点から、5cm以上であることが好ましい。厚みの上限には、特に制限はないが、反応槽から使用後のリン浄化剤を簡便に回収することができる点で、30cm以下であることが好ましい。
上記反応槽は、更に砂利を収容したものであることが好ましく、上記砂利から構成される砂利層が第二の砂層の下、又は、上記反応槽が第三の砂層を有する場合には第三の砂層の下、に設けられたものであることがより好ましい。上記砂利層が積層されたものであることによって、第二の砂層を構成する第二の砂、又は、上記反応槽が第三の砂層を有する場合には第三の砂層を構成する第三の砂、が流出することを抑制することができ、ひいては、リン浄化剤が反応槽から流出することを抑制することができる。砂利は、第二の砂、又は、上記反応槽が第三の砂層を有する場合には第三の砂、よりも粒子径が大きいことが好ましい。
砂利層は、粒度が2〜50mmである砂利からなるものであることが好ましい。上記粒度の砂利層を有することによって、第二の砂層を構成する第二の砂、又は、上記反応槽が第三の砂層を有する場合には第三の砂層を構成する第三の砂、が流出することをより抑制することができ、ひいては、リン浄化剤が反応槽から流出することを抑制することができる。これにより、リン浄化剤の回収効率をより高めることができる。リン浄化剤の回収効率をより高める観点から、砂利の粒度は2〜20mmであることが好ましく、2〜12mmであることが更に好ましい。
砂利の粒度は、日本水道協会規格 JWWA A103−4:2006に準拠して測定することができる。
上記反応槽に収容される砂利としては、処理対象水と反応しない不活性なものであることが好ましい。また、次に挙げる特性の少なくとも1つを満たすものであることが好ましく、次に挙げる特性の全てを満たすものであることがより好ましい。
(1)ごみ、粘土質等の不純物、又は、偏平若しくは脆弱な粒子等を多く含まず、堅く丸みがある、(2)洗浄濁度が30度以下である、(3)最長軸が最短軸の5倍以上である砂利粒子が砂利粒子全体に対して2重量%以下である、(4)比重が、表面乾燥飽和状態で2.50(g/cm)以上である、(5)塩酸可溶率が、3.5%以下である。
上記砂利は、粒度内%が85%以上であることが好ましく、より好ましくは、95%以上である。砂利が上記粒度内%を有することによって、第二の砂層を構成する第二の砂、又は、上記反応槽が第三の砂層を有する場合には第三の砂層を構成する第三の砂、が反応槽から流出することをより抑制することができ、ひいては、リン浄化剤が反応槽から流出することを抑制することができる。これにより、リン浄化剤の回収効率をより高めることができる。
砂利の粒度内%は、日本水道協会規格 JWWA A103−4:2006に準拠して測定することができる。
砂利層の厚みは特に限定されるものではないが、リン浄化剤層よりも小さく設定されることが好ましい。リン浄化剤の流出を効率的に防止する観点から、5cm以上であることが好ましい。厚みの上限には、特に制限はないが、反応槽から使用後のリン浄化剤を簡便に回収することができる点で、30cm以下であることが好ましい。
本発明の処理方法において、リン浄化剤として非特許文献3及び4に開示のアクトリンを用いると、アクトリンの作用メカニズムからアクトリンへのリン酸イオンの吸着に伴って不可避的に塩化物イオンが生成し、処理後の水溶液(本明細書においては、「処理水」ともいう。)中に残存することとなる。処理水中に塩化物イオンが残存してしまうと、更に別途、塩化物イオンを除去する必要が出てくることから好ましくない。すなわち、本発明の処理方法においては、塩化物イオンが生成しないことが好ましい。
上記処理対象水は、リン酸イオンを含む限り特に制限されず、例えば、各種工業分野における工業生産過程において用いられた水溶液であってもよいし、当該過程により生じた工業排水であってもよいし、工業排水等の処理過程においてリン酸イオンの発生した水溶液であってもよい。または、一般の水道水、自然環境水であってもよい。また、他の気体又は液体成分を含んでいてもよいし、固形分を含むものであってもよい。
中でも、処理対象水が、フッ素を含有する水溶液をリン酸水素カルシウム二水和物と接触させて得られるリン酸イオン含有水溶液であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。フッ素を含有する水溶液をリン酸水素カルシウム二水和物と接触させることで、当該水溶液からフッ素を除去することができるが、処理に用いるリン酸水素カルシウム二水和物に由来してフッ素を除去した後の水溶液にはリン酸イオンが残存することとなるため、当該水溶液中のリン酸イオンを除去する際に、本発明のリン酸イオン含有水溶液の処理方法が好適に利用される。
上記フッ素を含有する水溶液をリン酸水素カルシウム二水和物と接触させてリン酸イオン含有水溶液を得る方法としては、例えば、上述した上記接触工程を連続式の接触により行う際に用いることができる本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽における第二のリン浄化剤をリン酸水素カルシウム二水和物に置き換えた反応槽に、フッ素を含有する水溶液を通過させる方法が挙げられる。当該反応槽の構成としては、上述した本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽のリン浄化剤層を、リン酸水素カルシウム二水和物を含む処理剤からなる処理剤層に置き換える以外は、上述の本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽と同様の構成とすることができる。
すなわち、フッ素を含有する水溶液を、上述した本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽における第二のリン浄化剤をリン酸水素カルシウム二水和物に置き換えた反応槽に通過させてリン酸イオン含有水溶液を得、当該リン酸イオン含有水溶液を、上述した本発明の第二のリン浄化剤を収容した反応槽に通過させることで、処理水を得ることができる。
そして更には、上述のように、フッ素を含有する水溶液を処理する反応槽と、リン酸イオン含有水溶液を処理する反応槽とを別箇に設けずに、1つの反応槽にまとめて処理することも可能である。
上記1つの反応槽にまとめて処理する場合の反応槽の構成としては、例えば、槽の上部から順に、第一の砂層、リン酸水素カルシウム二水和物を含む処理剤からなる処理剤層、砂層、本発明の第二のリン浄化剤を含むリン浄化剤層、及び、第二の砂層が設けられた構成が挙げられる。なお、上記砂層は、第二の砂層と同様の層であってよい。そして更に、第二の砂層の下に、第三の砂層及び/又は砂利層が設けられていてもよい。
上記処理対象水のリン酸イオン濃度としては、特に制限はなく、リン酸イオンが高濃度に含まれる処理対象水から、低濃度の処理対象水まで本発明の処理方法を適用することができる。中でも、処理効率の観点から、処理対象水のリン酸イオン濃度は、30〜50ppmであることが好ましく、50〜200ppmであることがより好ましく、更に好ましくは、100〜200ppmである。
上記処理対象水のリン酸イオン濃度は、下記装置を用いたイオンクロマトグラフィー法により測定することができる。測定装置及び測定条件は次のとおりである。
装置:
SYSTEM UNIT NUMBER 16002(製品名、DIONEX社製)
測定条件:
・移動相溶媒:NaCO 2.5mmol/NaHCO 1.0mmol/水1L
・カラム:DIONEX社製IonPac AS4A−SC 4×250mm
上記処理対象水は、更にカルシウムイオンを含有するものであってもよい。処理対象水がカルシウムイオンを含有する場合には、リン浄化剤との相乗効果によって、処理対象水から充分にリンが除去される。
特に、本発明の第二の処理方法において、本発明の第二のリン浄化剤として水酸化マグネシウム粒子を用いる場合には、処理対象水にカルシウムイオンが含まれていることによって、処理対象水から充分にリンを除去することが可能となる。このように、リン酸イオン及びカルシウムイオンを含有する水溶液と、水酸化マグネシウム粒子とを接触させる工程を含むリン酸イオン含有水溶液の処理方法もまた、本発明の1つである。
上記処理対象水が更にカルシウムイオンを含有する場合の、処理対象水のカルシウムイオン濃度は、40ppm以上であることが好ましい。処理対象水のカルシウムイオン濃度がこのような範囲である場合、上述した処理対象水がカルシウムイオンを含有することによる効果が充分に発揮されることとなる。より好ましくは、100〜300ppmである。
なお、上記処理対象水のカルシウムイオン濃度を上述した範囲とするために、処理対象水にカルシウム塩を添加してもよい。
上記カルシウム塩としては、例えば、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、硫酸カルシウムが好ましい。上記カルシウム塩としては、これら化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
上記処理対象水のカルシウムイオン濃度は、キャピラリー電気泳動法により測定することができる。測定装置及び測定条件は次のとおりである。
装置:
3D CE(製品名、Agilent Technologies社製)
測定条件:
・移動相溶媒:Buffer solution pH3.0 for Cation HPCE (Fuluka) 4.0mM copper(II)sulphate
・キャピラリーカラム:Fused silica 75μm 56cm
・電圧:Positive、20kV
本発明の処理方法は、本発明の第一の処理方法における添加工程又は本発明の第二の処理方法における接触工程の前に、若しくは、並行して、処理対象水に含まれる固形分を除去する固形分除去工程を含んでいてもよい。特に、処理対象水が固形分を含んでいる場合であって、固形分が多量であるために処理効率に影響が出ることが懸念される場合には、当該添加工程又は接触工程の前に固形分除去工程を行うことが好ましい。
上記固形分除去工程は、処理対象水に含まれる固形分を除去することができればその除去方法は特に制限されず、濾過等の、固形分の除去に通常用いられる方法を適用することができる。
また、本発明の処理方法は、本発明の第一の処理方法における添加工程又は本発明の第二の処理方法における接触工程と並行して、若しくは、後に、処理水中の本発明のリン浄化剤を除去する工程を含んでいてもよい。また特に、本発明の第二の処理方法において、本発明の第二のリン浄化剤と共に化合物(I)を併用して接触工程を行った場合には、本発明の第二のリン浄化剤及び化合物(I)を除去する工程を含んでいてもよい。
本発明のリン浄化剤、または、本発明の第二のリン浄化剤及び化合物(I)を除去する方法としては特に限定されないが、例えば、濾過、沈降分離、遠心分離、凝集剤による分離などの公知の方法を採用することができる。
本発明の処理方法を施した後の処理水のリン酸イオン濃度は、1ppm以下であることが好ましい。処理水のリン酸イオン濃度がこのような範囲であれば、特に充分にリンを除去することができたといえ、リン酸イオンの高度除去処理が達成されているといえる。リン酸イオンを含有する水溶液からリン酸イオンを除去する際に本発明の処理方法を適用することにより、リン酸イオンの高度除去処理が可能となる。処理水のリン酸イオン濃度としてより好ましくは、0.5ppm以下であり、更に好ましくは、0.1ppm以下である。
本発明の処理方法を施した後の処理水のリン酸イオン濃度も、上述した処理対象水のリン酸イオン濃度の測定方法と同様の方法により測定することができる。
本発明の処理方法における単位当たりのリン酸イオンの除去量としては、10〜100mg/gの範囲であることが好ましい。単位当たりのリン酸イオンの除去量がこのような範囲であれば、充分に効率的にリンを除去することができたといえる。単位当たりのリン酸イオンの除去量としてより好ましくは、20〜80mg/gであり、更に好ましくは、30〜50mg/gである。
単位当たりのリン酸イオンの除去量は、下記式により算出することができる。
Figure 2015033697
本発明の処理方法を施した後の処理水のpHは、6.8〜13であることが好ましい。処理水のpHがこのような弱アルカリ性となるような処理であると、リン酸イオンの除去が充分に進む。処理水のpHとしてより好ましくは、7.5〜11であり、更に好ましくは、7.7〜10.5である。特に好ましくは、8〜10である。
本発明の処理方法は、リン酸イオンを含有する水溶液、排水の処理・浄化等に好適に利用可能である。
本発明の処理方法は、上述の構成よりなり、リン酸イオンを含有する処理対象水からリン酸イオンが除去された処理水を簡便にかつ極めて高効率に得ることができる。
図1は、実施例1〜11における、リン浄化剤の添加量と、残留リン酸イオン濃度との関係をプロットしたグラフである。 図2は、実施例1〜11における、残留リン酸イオン濃度と、リン酸イオンの除去量との関係をプロットしたグラフである。 図3は、実施例12〜22及び比較例1〜2における、リン浄化剤の添加量と、残留リン酸イオン濃度との関係をプロットしたグラフである。 図4は、実施例12〜22及び比較例1〜2における、残留リン酸イオン濃度と、リン酸イオンの除去量との関係をプロットしたグラフである。 図5は、作製例1に記載の反応槽の断面模式図である。
次に本発明を、実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例においては、下記の測定方法により測定が行われた。
(1)カルシウムイオン濃度測定
下記装置を用いたキャピラリー電気泳動法によりカルシウムイオン濃度を測定した。測定装置及び測定条件は次のとおりである。
装置:
3D CE(製品名、Agilent Technologies社製)
測定条件:
・移動相溶媒:Buffer solution pH3.0 for Cation HPCE (Fuluka) 4.0mM copper(II)sulphate
・キャピラリーカラム:Fused silica 75μm 56cm
・電圧:Positive,20kV
(2)リン酸イオン濃度測定
下記装置を用いたイオンクロマトグラフィー法によりリン酸イオン濃度を測定した。測定装置及び測定条件は次のとおりである。
装置:
SYSTEM UNIT NUMBER 16002(製品名、DIONEX社製)
測定条件:
・移動相溶媒:NaCO 2.5mmol/NaHCO 1.0mmol/水1L
・カラム:DIONEX社製IonPac AS4A−SC 4×250mm
(3)pH測定
pH計 セブンイージー(製品名、メトラー・トレド社製)を用いて、pHを測定した。
硫酸バンド処理水の調製
(調製例1)
水道水に、フッ素イオン濃度が19.3ppmとなるようにフッ化ナトリウムを4.27mg添加して、容器中にフッ素含有排水0.1kgを得た。得られたフッ素含有排水のpHを、NaOH水溶液(4%)により7.2に調整した。容器中のフッ素含有排水に、8質量%の硫酸アルミニウム水溶液を、処理するフッ素含有排水の量に対して3000ppmとなるように添加した。アルミニウムイオンを添加したフッ素含有排水を、容器中で温度22℃で10分間攪拌した。攪拌後、フッ素含有排水にpH調整剤として、NaOH水溶液(4%)を添加してpHを7.2に調整した。pH調整後のフッ素含有排水に、高分子凝集剤として、アニオン性ポリアクリルアミド(商品名:スミフロックFA40H 住友化学工業社製)を、処理するフッ素含有排水の量に対して1000ppmとなるように添加した。温度22℃で5分間攪拌して、フッ素含有アルミニウム汚泥を生成した。
生成したフッ素含有アルミニウム汚泥をフィルター濾紙で濾過し、処理排水を得た。得られた処理排水のフッ素イオン濃度は3.3ppmであった。
続いてこのフッ素含有排水に、リン酸水素カルシウム二水和物(太平化学産業社製)を0.50g添加し、温度22℃で24時間攪拌した。反応したリン酸水素カルシウム二水和物をフィルター濾紙で濾過し、処理排水(硫酸バンド処理水1)を得た。得られた硫酸バンド処理水1のフッ素イオン濃度は0.1ppm、リン酸イオン濃度は131.11ppmであった。また、カルシウムイオン濃度は272ppmであった。
(調製例2)
調製例1と同様にしてフッ素イオン濃度が3.3ppmのフッ素含有排水を得た。
続いてこのフッ素含有排水に、リン酸水素カルシウム二水和物(太平化学産業社製)を0.30g添加し、温度22℃で24時間攪拌した。反応したリン酸水素カルシウム二水和物をフィルター濾紙で濾過し、処理排水(硫酸バンド処理水2)を得た。得られた硫酸バンド処理水2のフッ素イオン濃度は0.1ppm、リン酸イオン濃度は81.75ppmであった。また、カルシウムイオン濃度は180ppmであった。
(実施例1)
調製例1で調製した硫酸バンド処理水1(試験前リン酸イオン濃度:131.11ppm、カルシウムイオン濃度:272ppm)を100.0036g用意し、そこにリン浄化剤として水酸化マグネシウム粒子(宇部マテリアルズ社製、品種:UD−65、純度:96.3%、粒子径:0.5〜2.0mm)を0.1035g添加した。リン浄化剤を含む硫酸バンド処理水1を室温下、振とう速度を150rpmに設定した振とう機((株)井内盛栄堂/品名 シェイキングバス/型番 SB−20)を用いて、24時間振とう撹拌した。
振とう撹拌終了後、静置した後、上澄み液を採取してフィルター(孔径0.20μm;アドバンテック東洋社製/ディスポーザブルメンブレンフィルター/品名 13CP020AN)にかけ、フィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表1に示す。
また、リン酸イオンの除去量を、次式を用いて算出した。算出結果を表1に示す。
Figure 2015033697
(実施例2〜3)
リン浄化剤である水酸化マグネシウム粒子の添加量、及び、用意する硫酸バンド処理水1の量を表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表1に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例1と同様に算出した。算出結果を表1に示す。
(実施例4〜5)
硫酸バンド処理水1に代えて、調製例2で調製した硫酸バンド処理水2(試験前リン酸イオン濃度:81.75ppm、カルシウムイオン濃度:180ppm)を表1に記載の量用意し、リン浄化剤である水酸化マグネシウム粒子の添加量を表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表1に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例1と同様に算出した。算出結果を表1に示す。
(実施例6〜8)
リン浄化剤として、水酸化マグネシウム粒子に加えて炭酸カルシウムを表1に記載の量添加し、硫酸バンド処理水1を表1に記載の量用意した以外は、実施例1と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表1に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例1と同様に算出した。算出結果を表1に示す。
(実施例9〜11)
リン浄化剤として、水酸化マグネシウム粒子に加えて硫酸アルミニウムを表1に記載の量添加し、硫酸バンド処理水1を表1に記載の量用意した以外は、実施例1と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表1に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例1と同様に算出した。算出結果を表1に示す。
なお、硫酸アルミニウムは、水に可溶であった。
Figure 2015033697
また、実施例1〜11における、リン浄化剤の添加量と、残留リン酸イオン濃度との関係をプロットしたグラフを図1に、実施例1〜11における、残留リン酸イオン濃度と、リン酸イオンの除去量との関係をプロットしたグラフを図2に、それぞれ示す。
なお、本明細書中、試験後リン酸イオン濃度を残留リン酸イオン濃度とも表している。
リン酸含有水の調製
(調製例3)
純水に、フッ素イオン濃度が5.0ppmとなるようにフッ化ナトリウムを1.1mg添加して、容器中にフッ素含有水0.1kgを得た。容器中のフッ素含有水に、1000ppmのリン酸イオン標準液(キシダ化学社製)を、フッ素含有水の量に対して100.23ppmとなるように添加し、リン酸含有水1を得た。なお、リン酸含有水1のカルシウムイオン濃度は0ppmであった。
(調製例4)
純水に、フッ素イオン濃度が5.0ppmとなるようにフッ化ナトリウムを1.1mg添加して、容器中にフッ素含有水0.1kgを得た。
続いてこのフッ素含有水に、リン酸水素カルシウム二水和物(太平化学産業社製)を0.05g添加し、温度22℃で24時間攪拌した。反応したリン酸水素カルシウム二水和物をフィルター濾紙で濾過し、処理水(リン酸含有水2)を得た。得られたリン酸含有水2のフッ素イオン濃度は0.1ppm、リン酸イオン濃度は81ppmであった。また、カルシウムイオン濃度は68ppmであった。
(調製例5)
純水に、フッ素イオン濃度が5.0ppmとなるようにフッ化ナトリウムを1.1mg添加して、容器中にフッ素含有水0.1kgを得た。
続いてこのフッ素含有水に、リン酸水素カルシウム二水和物(太平化学産業社製)を0.03g添加し、温度22℃で24時間攪拌した。反応したリン酸水素カルシウム二水和物をフィルター濾紙で濾過し、処理水(リン酸含有水3)を得た。得られたリン酸含有水3のフッ素イオン濃度は0.1ppm、リン酸イオン濃度は70.9ppmであった。また、カルシウムイオン濃度は49ppmであった。
(実施例12)
調製例3で調製したリン酸含有水1(試験前リン酸イオン濃度:100.23ppm、カルシウムイオン濃度:0ppm)を100.0172g用意し、そこにリン浄化剤として水酸化マグネシウム粒子(宇部マテリアルズ社製、品種:UD−65、純度:96.3%、粒子径:0.5〜2.0mm)を0.1018g添加した。このリン浄化剤を含むリン酸含有水を実施例1と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、次式を用いて算出した。算出結果を表2に示す。
Figure 2015033697
(実施例13〜14)
リン浄化剤である水酸化マグネシウム粒子の添加量、及び、用意するリン酸含有水1の量を表2に記載の量とした以外は、実施例12と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例12と同様に算出した。算出結果を表2に示す。
(実施例15〜16)
リン浄化剤として、水酸化マグネシウム粒子に加えて炭酸カルシウムを表2に記載の量添加し、リン酸含有水1を表2に記載の量用意した以外は、実施例12と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例12と同様に算出した。算出結果を表2に示す。
(実施例17〜18)
リン酸含有水1に代えて、調製例4で調製したリン酸含有水2(試験前リン酸イオン濃度:81ppm、カルシウムイオン濃度:飽和濃度68ppm)を表2に記載の量用意し、リン浄化剤として、水酸化マグネシウム粒子に加えて硫酸カルシウム二水和物を表2に記載の量添加した以外は、実施例12と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例12と同様に算出した。算出結果を表2に示す。
(実施例19〜20)
リン浄化剤として工業用水酸化マグネシウム粒子(宇部マテリアルズ社製、品種:UD−65、純度:96.3%、粒子径:0.5〜2.0mm)を表2に記載の量添加し、リン酸含有水2を表2に記載の量用意した以外は、実施例12と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例12と同様に算出した。算出結果を表2に示す。
(比較例1〜2)
リン浄化剤としてアクトリン(トーケミ社製)を表2に記載の量添加し、リン酸含有水2を表2に記載の量用意した以外は、実施例12と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例12と同様に算出した。算出結果を表2に示す。
(実施例21〜22)
リン酸含有水1に代えて、調製例5で調製したリン酸含有水3(試験前リン酸イオン濃度:70.9ppm、カルシウムイオン濃度:飽和濃度49ppm)を表2に記載の量用意し、リン浄化剤として、硫酸カルシウム二水和物を表2に記載の量添加した以外は、実施例12と同様にして処理し、処理後のフィルター濾液のリン酸イオン濃度(試験後リン酸イオン濃度)、及び、pHを測定した。測定結果を表2に示す。また、リン酸イオンの除去量を、実施例12と同様に算出した。算出結果を表2に示す。
Figure 2015033697
また、実施例12〜22及び比較例1〜2における、リン浄化剤の添加量と、残留リン酸イオン濃度との関係をプロットしたグラフを図3に、実施例12〜22及び比較例1〜2における、残留リン酸イオン濃度と、リン酸イオンの除去量との関係をプロットしたグラフを図4に、それぞれ示す。
実施例1〜22、比較例1〜2の結果から、次のことが分かった。
実施例1〜5、12〜14、17〜22の結果から、本発明のリン浄化剤とリン酸イオン含有水溶液とを接触させることにより、リン浄化剤の添加量を微量としても、リン酸イオン含有水溶液からリン酸イオンを簡便かつ充分に除去することができることが確認された。特に、実施例1〜3、5、18では、処理後のリン酸イオン濃度が0.10ppmとなっており、このことから、残存リン酸イオン濃度が1ppm以下という低濃度までリン酸イオンを除去する高度処理が可能となっていることが分かる。
また、実施例6〜11、15〜16の結果から、水酸化マグネシウムと共に本発明における化合物(I)を併用する形態においても、リン酸イオン含有水溶液からリン酸イオンを簡便かつ充分に除去できることが分かった。
特に、実施例6〜11では、処理後のリン酸イオン濃度が0.10ppmとなっており、このことから、残存リン酸イオン濃度が1ppm以下という低濃度までリン酸イオンを除去する高度処理が可能となっていることが分かる。
なお、比較例1〜2においては、リン浄化剤としてアクトリンを用いた場合、添加量によっては、リン酸イオンを充分に除去することができることが示されている。しかしながら、非特許文献3及び4に記載されているように、アクトリンは、アクトリン中に存在するClイオンがリン酸イオンと置換することで処理対象水中のリン酸イオンを吸着、除去するものであるため、リン浄化剤としてアクトリンを用いた場合には、不可避的に塩化物イオンが処理水中に生成することとなる。すなわち、処理水は、リン酸イオンは除去されているが塩化物イオンを含んだものとなる。したがって、実際には、リン酸イオン除去を行った後、更に別途塩化物イオンを除去することが必要となる。
(製造例1)
傾胴型重力式ミキサー(容量110L)に、急速濾過用砂(トーケミ社製、「日本水道協会規格 JWWA A103−1:2006規格品、有効径:0.6mm、均等係数:1.5以下、最大径2.8mm以下、最小径0.3mm以上」)及び水酸化マグネシウム粒状品(宇部マテリアルズ社製、品種:UD−650、純度:68%、平均粒子径:3.5μm)の合計100質量部当たり、急速濾過用砂を95質量部、水酸化マグネシウム粒子を5質量部の割合で投入し、3分間混合を行って、リン浄化剤を得た。
(作製例1)
製造例1で得られたリン浄化剤と下記に示す砂及び砂利を用いて、反応槽を作製した。
第一の砂(急速濾過用砂、トーケミ社製、「日本水道協会規格 JWWA A103−1:2006規格品、有効径:0.5mm、均等係数:1.5以下、最大径2mm以下、最小径0.3mm以上」)
第二の砂(急速濾過用砂、トーケミ社製、「日本水道協会規格 JWWA A103−1:2006規格品、有効径:0.5mm、均等係数:1.5以下、最大径2mm以下、最小径0.3mm以上」)
第三の砂(急速濾過用砂、トーケミ社製、「日本水道協会規格 JWWA A103−1:2006規格品、有効径:1mm、均等係数:1.5以下、最大径2.8mm以下、最小径0.5mm以上」)
砂利(濾過用砂利、トーケミ社製、「日本水道協会規格 JWWA A103−4:2006規格品、粒度:4〜8mm、粒度内%:85%以上」)
反応槽として、充填容積295cm、内径5cm、高さ50cmのアクリル製容器を用いた。この反応槽では、処理対象水が反応槽を通過して得られる処理水は排水口から排出される。
上記反応槽に、砂利、第三の砂、第二の砂、リン浄化剤(425g)、及び、第一の砂をこの順に投入し、図5に示す反応槽を得た。反応槽10には上部から順に、第一の砂層11(1cm)、リン浄化剤層12(15cm)、第二の砂層13(5cm)、第三の砂層14(5cm)、及び、砂利層15(5cm)が設けられている。
(調製例6)
純水に、フッ素イオン濃度が5.0ppmとなるようにフッ化ナトリウムを1.1mg添加して、容器中にフッ素含有水0.1kgを得た。
続いてこのフッ素含有水に、リン酸水素カルシウム二水和物(太平化学産業社製)を添加し、反応したリン酸水素カルシウム二水和物をフィルター濾紙で濾過し、リン酸イオン濃度を30ppmに調整した処理対象水を得た。
(実施例23)
作製例1の反応槽に、調製例6で調製した処理対象水(リン酸イオン濃度:30ppm)200Lを、通水速度25mL/分で投入し、処理対象水を処理した。処理後、反応槽から排出された処理水を一部採取し、そのリン酸イオン濃度を測定したところ、1ppm未満であった。また、処理中の液位(反応槽中の第一の砂層の上部界面から液面までの高さ)は処理開始時から一定して10cmであった。
(実施例24〜26)
反応槽に投入する処理対象水の量を表3の通りとした以外は、実施例23と同様にして、処理対象水を処理した。処理後、反応槽から排出された処理水を一部採取し、そのリン酸イオン濃度を測定した。結果を表3に示す。また、処理中の液位はいずれの実施例においても処理開始時から一定して10cmであった。
Figure 2015033697
実施例23〜26の結果から、次のことが分かった。
処理量が500Lとなっても、液位に変化がなく、通水性が維持されていた。また、処理水におけるリン酸イオン濃度低減効果からリン浄化剤の流出は行っていないと推測される。
本発明の処理方法は、リン酸イオンを含有する水溶液、排水の処理・浄化等に好適に利用可能である。
1:処理対象水
2:ポンプ
10:反応槽
11:第一の砂層
12:リン浄化剤層
13:第二の砂層
14:第三の砂層
15:砂利層
16:排水口

Claims (1)

  1. リン酸イオンを含有する水溶液に、リン浄化剤を添加する工程を含み、該リン浄化剤はリン酸イオンを含有する水溶液中にマグネシウムイオン及びカルシウムイオンを生成させる、リン酸イオン含有水溶液の処理方法。
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