JP2014133188A - 水処理方法及び水処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素系物質としてフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水から、これらフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを低コストで効率的かつ効果的に除去する。
【解決手段】実施形態の水処理方法は、反応槽中において、廃水中に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、廃水中に含まれるフッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化する第1のステップと、固液分離槽中において、フッ化カルシウムを含む廃水を固液分離し、廃水よりフッ化カルシウムを除去して、第1の処理水を得る第2のステップとを具える。また、pH調整槽において、第1の処理水に対してpH調整剤を添加して、第1の処理水のpHを酸性域に調整する第3のステップと、アミノポリオール型キレート樹脂を充填した容器内に第1の処理水を通水して、第1の処理水よりテトラフルオロホウ酸イオンを吸着除去して、第2の処理水を得る第4のステップとを具える。
【選択図】図1
【解決手段】実施形態の水処理方法は、反応槽中において、廃水中に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、廃水中に含まれるフッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化する第1のステップと、固液分離槽中において、フッ化カルシウムを含む廃水を固液分離し、廃水よりフッ化カルシウムを除去して、第1の処理水を得る第2のステップとを具える。また、pH調整槽において、第1の処理水に対してpH調整剤を添加して、第1の処理水のpHを酸性域に調整する第3のステップと、アミノポリオール型キレート樹脂を充填した容器内に第1の処理水を通水して、第1の処理水よりテトラフルオロホウ酸イオンを吸着除去して、第2の処理水を得る第4のステップとを具える。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、水処理方法及び水処理装置に関する。
近時、工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められるようになってきている。水資源の有効利用を図るためには、工業廃水や生活廃水などのような各種の廃水を浄化して再利用することが重要である。
廃水を浄化するためには、水中に含まれる水不溶物や不純物を分離除去する必要がある。廃水を浄化する方法として、例えば膜分離法、遠心分離法、活性炭吸着法、オゾン処理法、凝集剤添加による浮遊物質の沈殿除去法がある。これらの水処理方法を用いて、廃水に含まれるリンやフッ素などの環境に及ぼす影響の大きい化学物質を除去し、また水中に分散した油類やクレイなどを除去することができる。
従来、フッ素含有廃水から有害なフッ素系物質を除去するための方法としては、カルシウム剤やアルミニウム剤を用いたものが良く知られているが、ガラス工業などの廃水ではフッ化物イオンの他にホウ素と結合したフルオロホウ酸イオン(BF4 -)が存在していることが多い。このフルオロホウ酸イオンを除去する方法としては、アルミニウム化合物を用いて分解する方法や、キレート樹脂などで吸着する方法が知られている。
例えば、アルミニウム化合物を用いて分解する方法として、特許文献1には、テトラフルオロホウ酸イオンにアルミニウム化合物を添加することによりフッ化アルミニウムイオンに添加し、アルミン酸カルシウムのフッ化物塩として沈殿分離する方法が提案されている。また、グルカミン(アミノポリアルコール)型のキレート樹脂を用いて除去する方法としては、特許文献2に記載のアミノポリオール型キレート吸着剤とフッ素吸着剤を併用する方法や、特許文献3にはアミノポリオール型のキレート樹脂を用いてフルオロホウ酸イオンを分解した後、処理液を蒸発濃縮する方法が知られている。
しかしながら、特許文献1の方法では多量のアルミニウム化合物が必要になるとともに、多量の汚泥が発生するために、薬剤コストの増大及び汚泥の処理コストの増大に関連して、廃水の処理コストが増大してしまうという問題がある。特許文献2の方法では、フッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを同時に吸着するので、回収した物質の純度が低下する問題や、アミノポリオール型キレート樹脂に吸着する時の阻害物質としてフッ化物イオンが働くので、テトラフルオロホウ酸イオンの吸着速度が遅くなる問題がある。また特許文献3では、水中のホウ素を吸着することによりテトラフルオロホウ酸イオンの分解を促進しているが、この方法ではホウフッ化物の分解が律速になり、迅速な除去はおこなえないという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、フッ素系物質としてフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水から、これらフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを低コストで効率的かつ効果的に除去することである。
実施形態の水処理方法は、フッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水の処理方法であって、反応槽中において、前記廃水中に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、前記廃水中に含まれる前記フッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化する第1のステップと、固液分離槽中において、前記フッ化カルシウムを含む廃水を固液分離し、前記廃水より前記フッ化カルシウムを除去して、第1の処理水を得る第2のステップとを具える。また、pH調整槽において、前記第1の処理水に対してpH調整剤を添加して、前記第1の処理水のpHを酸性域に調整する第3のステップと、アミノポリオール型キレート樹脂を充填した容器内に前記第1の処理水を通水して、前記第1の処理水より前記テトラフルオロホウ酸イオンを吸着除去して、第2の処理水を得る第4のステップとを具える。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。
図1に示す水処理装置10は、廃水等の被処理水W0中のフッ化物イオンを除去するための反応槽11と、反応槽11の下流側に位置し、設置面に対して水平な面を有するフィルター121を含み、フィルター121によって内部空間が上下12A及び12Bに分割された固液分離槽(平面ろ過器)12と、固液分離槽12の下流側に位置し、被処理水W0からフッ化物イオンが除去された1次処理水W1のpH調整を行うためのpH調整槽13と、1次処理水W1中に残存しているテトラフルオロホウ酸イオンを除去するための樹脂塔14とを有している。
図1は、本実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。
図1に示す水処理装置10は、廃水等の被処理水W0中のフッ化物イオンを除去するための反応槽11と、反応槽11の下流側に位置し、設置面に対して水平な面を有するフィルター121を含み、フィルター121によって内部空間が上下12A及び12Bに分割された固液分離槽(平面ろ過器)12と、固液分離槽12の下流側に位置し、被処理水W0からフッ化物イオンが除去された1次処理水W1のpH調整を行うためのpH調整槽13と、1次処理水W1中に残存しているテトラフルオロホウ酸イオンを除去するための樹脂塔14とを有している。
反応槽11は、被処理水W0に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、被処理水W0中に含まれるフッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化するためのものあり、固液分離槽(平面ろ過器12)は、フッ化カルシウムを含む被処理水W0を固液分離し、被処理水W0よりフッ化カルシウムを除去して、1次処理水W1を得るためのものである。また、pH調整槽は、1次処理水W1に対してpH調整剤を添加して、1次処理水W1のpHを酸性域に調整するためのものであり、樹脂塔14は、1次処理水を通水して、1次処理水W1よりテトラフルオロホウ酸イオンを吸着除去し、2次処理水W2を得るための、アミノポリオール型キレート樹脂を充填した容器である。
なお、固液分離槽12中のフィルター121を設置面と水平とすることにより、通水方向と被処理水W0に負荷される重力の向きとが一致するので、反応槽11で転化された除去対象物であるフッ化カルシウムを中心とした固形物の層がフィルター121上に均一に形成されるようになる。このフッ化カルシウムの層は、後にあるいは連続的に通水される被処理水W0中のフッ化カルシウムに対してろ過層として機能するので、被処理水W0中に微細なフッ化カルシウムの析出物(反応生成物)が存在する場合においても、当該析出物を捕集して除去することができる。
フィルター121は、例えばろ布や金属メッシュ、多孔質セラミック、多孔質ポリマー等から構成することができるが、特にろ布が好ましく、例えばポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどの材質で、二重織、綾織、平織、朱子織などで編んだものが用いられる。この中でも、柔らかいろ布や高分子からなる精密ろ過膜(MF膜)などを用いると、以下に説明するように、フッ素イオンを除去するために生成するフッ化カルシウムを好適に捕獲することができる。
なお、本実施形態の固液分離槽12は上述した構成のものに限定されず、汎用のものから構成することができる。
また、樹脂塔5内には、例えば平均粒子径0.45〜0.6mmのアミノポリオール型キレート樹脂Rが充填されている。アミノポリオール型キレート樹脂Rとしては、例えばN−メチルグルカミンタイプのキレート樹脂であって、具体的には、ローム・アンドハース社のアンバーライトIRA−743(商品名)の他、三菱化学株式会社のダイヤイオンCBR-03,CBR-05や、キレスト株式会社のキレストファイバーGRY-Lなどを例示することができる。
なお、上記平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定することができ、具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−3100型測定装置(商品名)などにより測定することができる。なお、以下に“平均粒子径”なる文言が出現し、その具体的な数値が記載されている場合、別途説明がある場合を除き、当該“平均粒子径”は上述のようなレーザー回折法によって測定したものである。
反応槽11及び固液分離槽12はポンプ31を介して配管22によって接続されており、固液分離槽12及びpH調整槽13は配管23によって接続されている。なお、配管23上には図示しないポンプを配設することもできる。また、pH調整槽13及び樹脂塔14は配管24によって接続されている。さらに、固液分離槽12の上部12Aには配管26及び27が配設され、それぞれ洗浄水供給ライン及び廃液排出ラインを構成している。
反応槽11の容器形状、容量、材質等は特に制限されないが、少なくとも滞留時間15分を稼げるような容量を有することが好ましい。また、反応槽11内には邪魔板を設けるなど、被処理水W0が供給口から配管22に向けてショートカットできないようにしておくのがよい。
また、反応槽11及びpH調整槽13には攪拌機111及び131が配設されている。
次に、図1に示す水処理装置10を用いた水処理方法について説明する。
最初に、反応槽11内に給水ラインである配管21からフッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水から構成される被処理水W0を供給するとともに、反応槽11内に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、反応槽11内で被処理水W0中に含まれるフッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化する。この際、撹拌機111によって、反応槽11内の被処理水W0及びカルシウム含有無機物を混練する。
最初に、反応槽11内に給水ラインである配管21からフッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水から構成される被処理水W0を供給するとともに、反応槽11内に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、反応槽11内で被処理水W0中に含まれるフッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化する。この際、撹拌機111によって、反応槽11内の被処理水W0及びカルシウム含有無機物を混練する。
本実施形態において、“水に不溶なカルシウム含有無機物”とは、水への溶解度が、1000ml当たり10g以下(25℃)であるカルシウム含有無機物を意味する。
また、カルシウム含有無機物としては、水和物や水酸基を有しない物質が好ましい。水和物や水酸基を有する物質であると他の物質に比べて柔らかい特徴を持ち、フィルターの孔に詰まってしまう場合があるからである。
具体的には、アラゴナイト、ウレキサイト、メリライト、オンファサイト、ウバロバイト、灰重石、ベロブスカイト、ヘデンバージャイト、ゾイサイト、魚眼石、ドロマイト、クリード石、ピーモンタイト、スパー石、二水石膏、チタナイト、チャロアイト、灰長石、透輝石、灰鉄輝石、ヨハンセン輝石、トレモライト、ロードナイト、ピジョン輝石、ホルンブレンド、オージャイト、ベクロタイト、ベスビアナイト、逸見石、カルサイト、霰石、モンモリロナイト、アクチノライト、エピドート、クリノゾイサイト、アパタイト等の天然鉱石を挙げることができる。また、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム等の、合成及び生成過程を経て得たカルシウム化合物を挙げることができる。
上述した中でも、水への溶解度が小さい炭酸カルシウムや、炭酸カルシウムを主成分とする鉱石(例えばアラゴナイト、ドロマイト)が好ましく、特に除去すべきフッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオン以外の陰イオンを発生しない炭酸カルシウムが好ましい。過剰なイオンは、以下に説明する樹脂塔14におけるテトラフルオロホウ酸イオンの吸着速度を低下させ、当該テトラフルオロホウ酸イオンの除去効率を劣化させる。
また、上記カルシウム含有無機物として塩化カルシウムを用いた場合、フッ化物イオンの処理では、同じようにフッ化カルシウムができるものの、代わりに塩化物イオンが被処理水W0中に発生してしまう。このため、配管の腐食などの問題が生じる場合がある。また後段の樹脂塔14での吸着速度を落とす原因となるため、本実施形態の水処理方法のコストを増大させることになる。
上述のようなカルシウム含有無機物は、平均粒子径2〜50μmの粒子を用いることが好ましい。平均粒子径が50μmを超えて大きくなると、カルシウム含有無機物の表面積が小さくなり、上記フッ化物イオンがフッ化カルシウムに転化する際の反応速度が遅くなる場合がある。平均粒子径が2μmよりも小さいと、生成したフッ化カルシウムの径が小さくなり、以下に説明するような固液分離槽12での捕集が困難になる場合がある。
上述した平均粒子径のカルシウム含有無機物を得るには適宜分級を行う。入手したカルシウム含有無機物の粒径が上述した平均粒子径よりも大きい場合は、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ロール等を用いて粉砕する。
なお、反応槽11内で被処理水W0中のフッ化物イオンをカルシウム含有無機物中のカルシウムと反応させてフッ化カルシウムに転化するに際しては、反応槽11内にpH調整剤を添加し、反応槽11内の被処理水W0のpHを2〜4の範囲に設定することが好ましい。これによって、上記反応を促進させることができ、フッ化物イオンのフッ化カルシウムへの転化を促進させることができる。なお、後述するpH調整槽13で添加するpH調整剤と区別するため、反応槽11で添加するpH調整剤を“追加のpH調整剤”という場合がある。
上記追加のpH調整剤としては、硫酸、硝酸、有機酸やフッ化水素を除くハロゲン化水素などを挙げることができる。この中でも特に硫酸が好ましい。硫酸は、被処理水W0中で硫酸イオンとなり、カルシウム含有無機物のカルシウムイオンと反応して比較的溶解度の小さい硫酸カルシウムとなり、過剰なイオンが固形化されるからである。
なお、追加のpH調整剤としてフッ化水素を用いると、フッ化物イオンが発生してしまい、当該フッ化物イオンが過剰となって、樹脂塔14におけるテトラフルオロホウ酸イオンの吸着速度を低下させ、当該テトラフルオロホウ酸イオンの除去効率を低下させる場合がある。
次いで、生成したフッ化カルシウムを含むスラリー状の被処理水W0を、ポンプ31を駆動させることにより、配管22を介して固液分離槽12のフィルター121上に移送し、当該フィルター121を通水させる。これによって、スラリー状の被処理水W0からフッ化カルシウムの大部分が捕集及び除去され、フィルター121を通過して得られた1次処理水W1中のフッ化物イオンの濃度は例えば30mg/L以下にまで低減される。
また、本実施形態では、上述したように、固液分離槽12として、設置面に対して水平な面を有するフィルター121を含む平面ろ過器を用いているので、フィルター121上に除去対象物であるフッ化カルシウムを中心とした固形物の層が形成されるようになる。当該層は、後にあるいは連続的に通水される被処理水W0中のフッ化カルシウムに対してろ過層として機能するので、被処理水W0中に微細なフッ化カルシウムの析出物(反応生成物)が存在する場合においても、当該析出物を捕集して除去することができる。
一方、ある程度ろ過が進行すると、フィルター121上に形成された上記層の厚さが増大してろ過速度が低下する。このような状態になったら、配管22を介した被処理水W0の供給を停止し、洗浄水供給ラインである配管26より洗浄水を供給してフィルター121上の固形物を洗い流し、廃液排出ラインである配管27から固形物を含む濃縮スラリーの廃液を排出する。その後、再度、配管22を介してフィルター121上に被処理水W0を移送して通水し、上記同様にして被処理水W0中のフッ化カルシウムの捕集及び除去を行って一次処理水W1を得る。
なお、固液分離槽12におけるフッ化カルシウムの捕集効率を向上させるために、反応槽11において凝集ポリマーを添加してもよいが、このような凝集ポリマーは被処理水W0中に残存するため、後段の樹脂塔14において、充填されたアミノポリオール型のキレート樹脂間に形成された空隙を詰まらせ、当該樹脂塔14の寿命を縮めてしまう恐れがある。また、凝集剤を使用すると薬剤コストがかかり、また、沈殿物である汚泥を処理するための費用が発生してしまうので、本実施形態における水処理コストを増大させてしまう。
次いで、固液分離槽12で得られた1次処理水W1を、配管23を介してpH調整槽13に導入する。このとき、必要に応じて配管23上にポンプを配設し、当該ポンプの送出力を利用して、1次処理水W1を、配管23を介してpH調整槽13に導入することもできる。
pH調整槽13では、1次処理水W1のpH値が反応槽11において炭酸カルシウム等のカルシウム含有無機物を添加することにより6〜8の範囲の中性領域にあるので、pH調整剤を添加して1次処理水W1のpH値を好ましくは2〜4の酸性領域となるように調整する。これは、以下で説明する樹脂塔14でのアミノポリオール型キレート樹脂による1次処理水W1中に含まれるテトラフルオロホウ酸イオンのキレート化を行うためである。
なお、上記pH調整剤としては硫酸が好ましい。また、1次処理水W1とpH調整剤とは撹拌機131によって十分に混合する。
次いで、pH調整された1次処理水W1を、ポンプ32を駆動させ、配管24を介して樹脂塔14に導入し、樹脂塔14内に充填されたアミノポリオール型キレート樹脂R間の空隙中を通水させる。このとき、アミノポリオール型キレート樹脂Rは被処理水W1中に含まれるテトラフルオロホウ酸イオンと錯形成反応を起こし、当該テトラフルオロホウ酸イオンはアミノポリオール型キレート樹脂中に錯イオンとして取り込まれ錯体を形成する。この結果、1次処理水W1中のテトラフルオロホウ酸イオンはアミノポリオール型キレート樹脂によって吸着されることになり、1次処理水W1からテトラフルオロホウ酸イオンが除去されることにより、2次処理水W2を得る。
なお、2次処理水W2は樹脂塔14の下方に配設された配管25より外部に放出される。2次処理水W2は有害なフッ化物イオンやテトラフルオロホウ酸イオンを含んでいないので、そのまま水資源として再利用に供することができる。
上述したように、反応槽11における転化反応及び固液分離槽12における捕集の過程を経ることにより、樹脂塔14に導入する1次処理水W1からは既にフッ化物イオンが除去されているので、樹脂塔14に1次処理水W1を導入した際には、当該1次処理水W1中に含まれるテトラフルオロホウ酸イオンがフッ化物イオンの存在によって阻害されることがない。したがって、アミノポリオール型キレート樹脂Rによるテトラフルオロホウ酸イオンの吸着速度の増大を図ることができる。
また、凝集剤を使用しないので、薬剤コストがかからず、沈殿物である汚泥を処理するための費用も発生しない。
結果として、本実施形態によれば、フッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む被処理水W0から、これらフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを低コストで効率的かつ効果的に除去することができる。
なお、樹脂塔14内に1次処理水W1の通水を続けて、アミノポリオール型キレート樹脂Rによるテトラフルオロホウ酸の吸着速度が減少してきたら、1次処理水W1の供給を止めて、配管28より樹脂塔14内に脱離液を供給し、アミノポリオール型キレート樹脂に吸着されているテトラフルオロホウ酸を脱離する。この脱離液は、樹脂塔14内をアルカリ性にできれば特に問題ないが、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液とする。脱離液により脱離されたテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水は、配管29より樹脂塔14外に排出され、図示しない廃アルカリ槽へ貯槽される。
このように処理を行うことにより、樹脂塔14内に充填されたアミノポリオール型キレート樹脂は吸着能力を回復しているので、再び配管24を介して1次被処理水W1を供給することにより、再度樹脂塔14内で1次処理水W1中のテトラフルオロホウ酸イオンの吸着を行って、テトラフルオロホウ酸イオンが除去された2次処理水W2を得ることができる。
(第2の実施形態)
図2は、本実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。なお、図1に示す水処理装置10の構成要素と同一あるいは類似の構成要素に関しては、同一の符号を用いている。
図2は、本実施形態の水処理装置の概略構成を示す図である。なお、図1に示す水処理装置10の構成要素と同一あるいは類似の構成要素に関しては、同一の符号を用いている。
図2に示す水処理装置40では、固液分離槽12におけるフィルター121がローラー123によって巻取り可能な水平なろ布122に変更され、洗浄水を導入する配管26等に代えて圧縮空気を導入するための配管(圧縮空気供給ライン)46及び容器16が配設されている点で相違し、その他の構成については図1に示す水処理装置10と同様である。したがって、以下においては、第1の実施形態に対して、上述した装置の相違に基づく水処理方法の相違点に着目して説明する。
なお、上記“水平なろ布”とは、当該ろ布が固液分離槽12の設置面に対して水平に配設されていることを意味する。
本実施形態では、反応槽11においてカルシウム含有無機物の添加によってフッ化物イオンが転化したフッ化カルシウムを含むスラリー状の被処理水W0を、固液分離槽12のろ布122上に供給する。このとき、被処理水W0中に含まれるフッ化カルシウムはろ布122で捕集され、ろ布122上には除去対象物であるフッ化カルシウムを中心とした固形物の層が形成される。
上述したように、上記層は、後にあるいは連続的に通水される被処理水W0中のフッ化カルシウムに対してろ過層として機能するので、被処理水W0中に微細なフッ化カルシウムの析出物(反応生成物)が存在する場合においても、当該析出物を捕集して除去することができる。
しかしながら、通水時間が長くなって上記層の厚さが増大すると、ろ過速度が低下する。このような状態になったら、配管22を介した被処理水W0の供給を停止し、圧縮空気供給ラインである配管46より圧縮空気をろ布122上に吹き付ける。これによって、ろ布122上に残存する被処理水W0のろ布122に対する通水を促進させることができるとともに、ろ布122上に形成された上記層の含水率を低下させることができる。
ろ布122を通水した被処理水W0は1次処理水W1としてpH調整槽13及び樹脂塔14に順次に移送され、第1の実施形態で説明したように、1次処理水W1中のテトラフルオロホウ酸イオンが除去される。一方、ろ布122は、図示しないエアーシリンダー等で、固液分離槽12の上部を持ちあげた後、ローラー123を回転させることにより、ろ布122上に残存した上記層を図示しないスクレーパー等によって掻き落とし、容器16内に収容する。
なお、ろ布122上のフッ化カルシウムを中心とした固形物の層が除去された後は、ローラー123を回転させて新しいろ布122を配設し、固液分離槽12の上部を元に戻す。その後、再度、配管22を介してろ布122上に被処理水W0を移送して通水し、上記同様にして被処理水W0中のフッ化カルシウムの捕集及び除去を行って一次処理水W1を得る。
本実施形態では、ろ布122上に形成された固形物の層を洗浄するに際して洗浄水を用いていないので、被処理水W0の処理における水回収率が向上する。
また、第1の実施形態と同様に、樹脂塔14に1次処理水W1を導入した際には、当該1次処理水W1中に含まれるテトラフルオロホウ酸イオンがフッ化物イオンの存在によって阻害されることがないので、アミノポリオール型キレート樹脂Rによるテトラフルオロホウ酸イオンの吸着速度の増大を図ることができる。さらに、凝集剤を使用しないので、薬剤コストがかからず、沈殿物である汚泥を処理するための費用も発生しない。
結果として、本実施形態によれば、フッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む被処理水W0から、これらフッ素イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを低コストで効率的かつ効果的に除去することができる。
(実施例1)
図1に示す水処理装置10を用いて試験をおこなった。被処理水W0として、フッ化物イオン約1000mg/L,テトラフルオロホウ酸イオン約200mg/Lを含む廃水を用いて、反応槽に供給し、硫酸によりpHを3に調整した後、平均粒子径40μmの炭酸カルシウムの粉末をフッ化物イオンに対してモル比で0.75倍添加して、攪拌機111で15分混合した。この後、ポンプ31を用いて、孔径10μmのポリプロピレン製ろ布がセットされた水平ろ過器からなる固液分離槽12に供給して、固液分離をおこなった。一次処理水W1のイオン濃度は、フッ化物イオンが15mg/Lであり、テトラフルオロホウ酸イオンは約180mg/Lであった。また、水中の固形分は1mg/L未満であった。
図1に示す水処理装置10を用いて試験をおこなった。被処理水W0として、フッ化物イオン約1000mg/L,テトラフルオロホウ酸イオン約200mg/Lを含む廃水を用いて、反応槽に供給し、硫酸によりpHを3に調整した後、平均粒子径40μmの炭酸カルシウムの粉末をフッ化物イオンに対してモル比で0.75倍添加して、攪拌機111で15分混合した。この後、ポンプ31を用いて、孔径10μmのポリプロピレン製ろ布がセットされた水平ろ過器からなる固液分離槽12に供給して、固液分離をおこなった。一次処理水W1のイオン濃度は、フッ化物イオンが15mg/Lであり、テトラフルオロホウ酸イオンは約180mg/Lであった。また、水中の固形分は1mg/L未満であった。
次いで、pH調整槽13において1次処理水W1のpHを硫酸により3に調整した後、アミノポリオールであるN-メチルグルカミンが担持されたキレート樹脂(三井化学株式会社製、商品名(CRB-05))を充填した樹脂塔14に通水し、配管25から排出されるテトラフルオロホウ酸イオン濃度を分析した。
通水量SVを変化させてテトラフルオロホウ酸イオンの除去性能を確認したところ、SV40まではテトラフルオロホウ酸イオンを検出せず、SV50で微量のテトラフルオロホウ酸イオンを検出した。このため、水処理装置10の処理量は、上記樹脂塔14に対しSV40であることが判明した。
(比較例1)
炭酸カルシウムの代わりに塩化カルシウムを用いた以外は実施例1と同様に試験をおこなった。なお、この時生成するフッ化カルシウムの粒子径が小さすぎて固液分離槽12で固液分離できず、反応槽11内に凝集ポリマーを少量添加してフロックを形成してからろ過をおこなった。一次処理水W1のイオン濃度は、フッ化物イオンが13mg/Lであり、テトラフルオロホウ酸イオンは約180mg/Lであった。また、水中の固形分は1mg/L未満であった。
炭酸カルシウムの代わりに塩化カルシウムを用いた以外は実施例1と同様に試験をおこなった。なお、この時生成するフッ化カルシウムの粒子径が小さすぎて固液分離槽12で固液分離できず、反応槽11内に凝集ポリマーを少量添加してフロックを形成してからろ過をおこなった。一次処理水W1のイオン濃度は、フッ化物イオンが13mg/Lであり、テトラフルオロホウ酸イオンは約180mg/Lであった。また、水中の固形分は1mg/L未満であった。
同様に硫酸でpH調整した後樹脂塔14に通水したところ、SV5まではテトラフルオロホウ酸イオンが検出されなかったが、SV10では検出された。このため、水処理装置10の処理量は、上記樹脂塔14に対しSV5であることが判明した。
(比較例2)
被処理水W0を直接pH調整槽13に供給して、カルシウム含有固体で処理をおこなわずに樹脂塔14に通水したところ、SV2でもテトラフルオロホウ酸イオンを除去することができなかった。
被処理水W0を直接pH調整槽13に供給して、カルシウム含有固体で処理をおこなわずに樹脂塔14に通水したところ、SV2でもテトラフルオロホウ酸イオンを除去することができなかった。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10,40 水処理装置
11 反応槽
111 攪拌機
12 固液分離槽
121 フィルター
122 (巻き取り可能な)水平なろ布
13 pH調整槽
131 攪拌機
14 アミノポリオール型キレート樹脂充填塔
16 容器
W0 被処理水
W1 1次処理水
W2 2次処理水
R アミノポリオール型キレート樹脂
21〜29,46 配管
31,32 ポンプ
11 反応槽
111 攪拌機
12 固液分離槽
121 フィルター
122 (巻き取り可能な)水平なろ布
13 pH調整槽
131 攪拌機
14 アミノポリオール型キレート樹脂充填塔
16 容器
W0 被処理水
W1 1次処理水
W2 2次処理水
R アミノポリオール型キレート樹脂
21〜29,46 配管
31,32 ポンプ
Claims (8)
- フッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水の処理方法であって、
反応槽中において、前記廃水中に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、前記廃水中に含まれる前記フッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化する第1のステップと、
固液分離槽中において、前記フッ化カルシウムを含む廃水を固液分離し、前記廃水より前記フッ化カルシウムを除去して、第1の処理水を得る第2のステップと、
pH調整槽において、前記第1の処理水に対してpH調整剤を添加して、前記第1の処理水のpHを酸性域に調整する第3のステップと、
アミノポリオール型キレート樹脂を充填した容器内に前記第1の処理水を通水して、前記第1の処理水より前記テトラフルオロホウ酸イオンを吸着除去して、第2の処理水を得る第4のステップと、
を具えることを特徴とする、水処理方法。 - 前記第1のステップにおいて、前記反応槽中に追加のpH調整剤を添加して、前記廃水のpHを酸性域に調整することを特徴とする、請求項1に記載の水処理方法。
- 前記固液分離装置が、水平ろ過器であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水処理方法。
- 前記カルシウム含有無機物は、炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の水処理方法。
- 前記pH調整剤は、硫酸であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の水処理方法。
- 前記追加のpH調整剤は、硫酸であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一に記載の水処理方法。
- フッ化物イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンを含む廃水の処理装置であって、
前記廃水中に水に不溶なカルシウム含有無機物を添加し、前記廃水中に含まれる前記フッ化物イオンをフッ化カルシウムに転化するための反応槽と、
前記フッ化カルシウムを含む廃水を固液分離し、前記廃水より前記フッ化カルシウムを除去して、第1の処理水を得るための固液分離槽と、
前記第1の処理水に対してpH調整剤を添加して、前記第1の処理水のpHを酸性域に調整するためのpH調整槽と、
前記第1の処理水を通水して、前記第1の処理水より前記テトラフルオロホウ酸イオンを吸着除去し、第2の処理水を得るための、アミノポリオール型キレート樹脂を充填した容器と、
を具えることを特徴とする、水処理装置。 - 前記固液分離装置が、水平ろ過器であることを特徴とする、請求項7に記載の水処理装置。
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