JP2015032559A - 固体酸化物形燃料電池スタック及びセパレータ付インターコネクタ - Google Patents

固体酸化物形燃料電池スタック及びセパレータ付インターコネクタ Download PDF

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Abstract

【課題】金属材料の表面に導電性セラミックをコーティングしたインターコネクタ本体と第1のセパレータからなるインターコネクタを用い、インターコネクタに加わる応力の緩和と、カソードのクロム被毒の抑制が可能な固体酸化物形燃料電池スタックを提供する。【解決手段】本発明の固体酸化物形燃料電池スタックは、燃料極層20と空気極層22と固体電解質層21とを含む単セルCを、インターコネクタ1を介して複数個積層される。インターコネクタ1は、表面に導電性セラミック10aをコーティングしたインターコネクタ本体10と、可撓性を有する金属板からなる第1のセパレータ11とを備えている。インターコネクタ本体10と第1のセパレータ11は、開口部11aの全周を取り囲む接合部30を介して互いに接合されている。インターコネクタ1は、第1のセパレータ11の部分を固定することにより積層されている。【選択図】図3

Description

本発明は、インターコネクタを介して単セルを複数個積層した固体酸化物形燃料電池スタックと、この固体酸化物形燃料電池スタックに含まれるセパレータ付インターコネクタと、に関するものである。
従来から、電解質に固体酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。SOFCの構成単位である単セルは、例えば、平板状の固体電解質層の両面に配置した燃料極層と空気極層のそれぞれに燃料ガス及び酸化剤ガスを供給することで電力を発生する。また、このような単セルを複数個積層し、隣接する単セル間にインターコネクタを配置することで、固体酸化物形燃料電池スタック(以下、燃料電池スタックと呼ぶ)が構成される。SOFCに含まれるインターコネクタは、良好なガス気密性と導電性が要求されるので、金属材料を用いて形成することが可能である。例えば、熱膨張率がセルに近いフェライト系ステンレス材を用いたインターコネクタが提案されている(特許文献1参照)。一方、SOFCの使用温度域は相当の高温になるので、インターコネクタの金属材料からのクロム蒸散に起因するカソードのクロム被毒が問題となる。そのため、導電性とクロムに対するバリア性とを兼ね備えたスピネル型酸化物等の導電性セラミックを金属材料の表面にコーティングしたインターコネクタが提案されている(特許文献2)。
特開平10−92446号公報 特許第3712733号公報
しかしながら、上記従来のインターコネクタは、その全体がそのまま単セルとともに積層されてスタックを構成し、インターコネクタが積層方向に拘束される構造であるため、SOFCの運転中の起動停止の際に加わる熱応力やスタック組み付け時の機械的な応力により、インターコネクタが変形を起こす恐れがある。そして、インターコネクタの金属材料の表面に導電性セラミックがコーティングされている場合は、一般にセラミック材料が応力によって割れやすいことから、上述のインターコネクタの変形によってクラックを生じることになり、コーティングの機能を喪失するという問題があった。
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、金属材料の表面に導電性セラミックをコーティングすることでカソードのクロム被毒を抑制しつつ、インターコネクタに対して加わる応力を緩和して耐久信頼性の向上が可能な固体酸化物形燃料電池スタックを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の固体酸化物形燃料電池スタックは、燃料極層と、空気極層と、固体電解質層とを含む単セルを、インターコネクタを介して、複数個積層した固体酸化物形燃料電池スタックであって、前記インターコネクタは、表面に導電性セラミックをコーティングした金属材料からなるインターコネクタ本体と、可撓性を有する金属板からなる第1のセパレータとを備え、かつ、前記インターコネクタ本体は、前記第1のセパレータと、当該第1のセパレータの略中央に形成された開口部の全周を取り囲む接合部を介して、互いに接合されており、かつ、前記インターコネクタは、前記第1のセパレータの部分を固定することにより積層されることを特徴としている。
本発明の固体酸化物形燃料電池スタックによれば、インターコネクタ本体は、中央の開口部の全周を取り囲む接合部を介して第1のセパレータと互いに接合され、金属材料の表面に導電性セラミックをコーティングした構造を有する。そして、隣接する単セルの間に第1のセパレータの部分を固定することで、複数の単セルが積層されている。従って、単セルに拘束されないインターコネクタに対して応力が加わったとき、単セルに固定されている第1のセパレータが変形することで応力を逃がすことができる。さらに、熱膨張率が燃料電池セルに近い金属材料を用いてインターコネクタ本体を形成しつつ、その表面の導電性セラミックによりクロム酸化物の蒸散を阻止することができる。このとき、第1のセパレータとインターコネクタ本体との接合構造により導電性セラミックのクラック等の不具合を防止することができる。
第1のセパレータは、インターコネクタ本体よりも薄い金属板により形成することが望ましい。すなわち、第1のセパレータの形成に用いる金属板は、インターコネクタ本体よりも厚いと応力緩和の機能が低下するので、インターコネクタ本体よりも薄くすることにより応力緩和の機能を高めるものである。例えば、第1のセパレータの厚さを0.05mm以上0.5mm以下に設定することができる。また、第1のセパレータは、アルミニウムを1重量%以上10重量%以下含有する合金により形成することが望ましい。これにより、第1のセパレータの表面に耐酸化性の高いアルミナの被膜を形成することができる。第1のセパレータのアルミニウムの含有量が1重量%に満たないと、アルミナの被膜形成が不十分になるため、長期に渡って耐久性が得られない。また、第1のセパレータのアルミニウムの含有量が10重量%を超えると、常温で第1のセパレータが硬くなり過ぎ、応力緩和に支障を来す。
インターコネクタ本体の表面にコーティングされる導電性セラミックは、1μm以上30μm以下の厚さで形成することが望ましい。導電性セラミックの厚さが1μmに満たないと、均質なコーティング層の形成に支障を来す。また、導電性セラミックの厚さが30μmを超えると、コーティング層が割れやすくなり、信頼性が低下する。
第1のセパレータは、応力を緩和可能な凹状又は波状の断面形状で形成することができる。このような断面形状を第1のセパレータに持たせることで、応力が加わったときに凹状又は波状の部分が変形し、それにより応力を緩和する効果を十分に高めることができる。
接合部は、溶接、ロウ付け、ガラス封止のいずれか1つ又はこれらの組み合わせを用いて形成することができる。例えば、レーザ溶接機を用いて接合部を形成することでコスト低減を図ることができる。また、ロウ付けで接合部を形成することで接合部の強度を高めることができる。また、ガラス封止で接合部を形成することでガスシール性の向上が可能となる。これらを組み合わせることで、より接合部の信頼性を向上させることも可能となる。
本発明において、固体電解質層を挟んで一方の側に前記燃料極層が配置され他方の側に前記空気極層が配置されたセル本体と、可撓性を有する金属板からなる第2のセパレータとを更に備え、前記セル本体と前記第2のセパレータとを、前記第2のセパレータの略中央に形成された開口部の全周を取り囲むセル接合部を介して互いに接合してもよい。これにより、燃料電池セルに関してもインターコネクタと同様の応力緩和構造を設けることで、積層方向に対する熱応力に対して応力緩和の効果が得られ、インターコネクタに加えて、燃料電池セルの変形や割れを効果的に防止することが可能となる。
また、上記課題を解決するために、本発明のセパレータ付インターコネクタは、燃料極層と、空気極層と、固体電解質層とを含む単セルを複数個積層した固体酸化物形燃料電池スタック用のセパレータ付インターコネクタであって、表面に導電性セラミックをコーティングした金属材料からなるインターコネクタ本体を備え、前記インターコネクタ本体は、可撓性を有する金属板からなる第1のセパレータと、前記第1のセパレータの略中央に形成された開口部の全周を取り囲む接合部を介して、互いに接合されていることを特徴としている。本発明のセパレータ付インターコネクタを用いて前記固体酸化物形燃料電池スタックを構成することにより、上述の作用効果を実現することができる。
以上説明したように、本発明によれば、固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、インターコネクタ本体と第1のセパレータとを互いに接合してインターコネクタを形成するとともに、インターコネクタ本体の金属材料の表面に導電性のセラミック材料をコーティングした構造を採用した。よって、インターコネクタに加わる応力を第1のセパレータの変形により逃がすことができるとともに、金属材料を用いたインターコネクタ本体の表面の導電性セラミックの作用によりクロム酸化物の蒸散を阻止することができる。よって、積層方向の応力に起因するインターコネクタの割れ等の不具合を防止し、かつカソードのクロム被毒を十分に抑制することで、耐久信頼性の向上が可能な固体酸化物形燃料電池スタックを実現することができる。
本実施形態の固体酸化物形燃料電池としての燃料電池スタックの斜視図である。 図1に示す燃料電池スタックを矢印A方向から見た模式断面図である 1個の単セルに関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造図である。 本実施形態のセパレータ付インターコネクタを構成するインターコネクタ本体及びインターコネクタ用セパレータの具体的な構造を示す図である。 インターコネクタの第3の実施例における接合部の構造を示す図である。 インターコネクタの第4の実施例における接合部の構造を示す図である。 インターコネクタの第5の実施例における接合部の構造を示す図である。
以下、本発明を適用した固体酸化物形燃料電池の一実施形態について具体的に説明する。図1は、本実施形態の固体酸化物形燃料電池としての燃料電池スタックSの斜視図を示している。また、図2は、図1に示す燃料電池スタックSを矢印A方向から見た模式断面図である。本実施形態においては、基本的な構成単位である単セルCを複数個積層した燃料電池スタックSが構成される。図1及び図2では、燃料電池スタックSが4つの単セルC(1)、C(2)、C(3)、C(4)を積層した構造を有する例を示しているが、一般には、より多数の単セルCを積層して燃料電池スタックSを構成することができる。
図1及び図2に示すように、燃料電池スタックSは、複数のボルトB1〜B10及び複数のナットNによって一体的に固定されている。燃料電池スタックSは、複数のボルトB1〜B10に対応する位置に貫通孔Hが形成され、上下1対のエンドプレートPによって上記4つの単セルCが挟まれた状態で固定されている。各ボルトB1〜B10のうち、図1の方形平面内の四隅に位置する4個のボルトB1、B4、B6、B9は、燃料電池スタックSを固定する連結部材としてのみ用いられる。一方、それ以外の6個のボルトB2、B3、B5、B7、B8、B10の各々は、上記連結部材に加えて、燃料ガス又は酸化剤ガスの流路の一部(入口又は出口)として機能する。
次に、図1の単セルCの基本構造について説明する。図3は、図2の1個の単セルCに関し、各構成要素を分解した状態の模式的な断面構造を示している。なお、図3においては、図2の両側の流路構造については省略している。図3に示す単セルCは、上側及び下側の2個のインターコネクタ本体10と、上側及び下側の2個のインターコネクタ用セパレータ11(本発明の第1のセパレータ)と、空気極側集電体12と、枠部13と、セル本体14と、燃料極側集電体15とを備えている。図3に示すように、インターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11は、一体的にセパレータ付インターコネクタ1(以下、単にインターコネクタ1と呼ぶ)として機能する。図3に示す単セルCは、図1においてエンドプレートPに接していない単セルC(2)、C(3)に対応する。このように、図3の単セルCの上下において、それぞれインターコネクタ本体10及びインターコネクタ用セパレータ11からなる2個のインターコネクタ1(セパレータ付インターコネクタ)は互いに同じ構造である。よって、以下の説明は、単セルCの上下の2個のインターコネクタ1について共通である。
単セルCの発電機能を担うセル本体14は、下層側から順に、燃料極層20と、固体電解質層21と、空気極層22とが積層形成されてなる。燃料極層20は、水素源となる燃料ガスに接触し、単セルCのアノードとして機能する。燃料極層20の材料としては、金属が好ましく、例えば、Ni、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金を用いることができる。固体電解質層21は、イオン導電性を有する各種の固体電解質からなる。固体電解質層21の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト系酸化物等を用いることができる。空気極層22は、酸素源となる酸化剤ガス(空気)に接触し、単セルCのカソードとして機能する。空気極層22の材料としては、例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)等のペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットを用いることができる。
インターコネクタ1は、図3の単セルCとその上層に隣接する単セルCとの間の電気的接続を担う。インターコネクタ用セパレータ11は、可撓性を有する金属製の薄板である。インターコネクタ用セパレータ11は、中央に形成された開口部11aを取り囲む接合部30を介してインターコネクタ本体10と接合され、隣接する2つの単セルCの間で燃料ガスと酸化剤ガスを隔離する役割がある。インターコネクタ本体10は、板状の金属部材の表面の全体に、導電性セラミックからなるコーティング層10aを形成した構造を有する。なお、インターコネクタ本体10とその表面のコーティング層10a、及びインターコネクタ用セパレータ11のそれぞれの材料及び構造の詳細については後述する。
空気極側集電体12は、セル本体14の空気極層22と、上側のインターコネクタ1との間の導通を確保する役割がある。空気極側集電体12の材料としては、例えば、Ag−Pd等の金属材料を用いることができる。また、燃料極側集電体15は、セル本体14の燃料極層20と、下側のインターコネクタ1との間の導通を確保する役割がある。燃料極側集電体15の材料としては、例えば、通気性を有するニッケルフェルト等を用いることができる。
枠部13は、セル本体14を単セルCに固定する役割があり、燃料極フレーム23と、セル本体用セパレータ24(本発明の第2のセパレータ)と、絶縁フレーム25と、空気極フレーム26とにより構成される枠体状の部材である。このうち、燃料極フレーム23は、積層方向で燃料極層20の側に配置され、セラミック等の絶縁材料を用いて形成される。絶縁フレーム25は、上下のインターコネクタ1の間を電気的に絶縁する役割があり、セラミック等の絶縁材料を用いて形成される。空気極フレーム26は、積層方向で空気極層22の側に配置され、金属材料を用いて形成される。これらの燃料極フレーム23、絶縁フレーム25、空気極フレーム26は、いずれも中央に比較的大きい同サイズの開口が形成され、平面視でセル本体14が開口に取り囲まれる位置関係にある。
また、枠部13のセル本体用セパレータ24は、上述のインターコネクタ用セパレータ11と同様、可撓性を有する金属製の薄板であり、中央に形成された開口を取り囲む接合部31を介してセル本体14の固体電解質層21の外周側の上面と接合されている。従って、セル本体14とセル本体用セパレータ24を平面視で見たとき、固体電解質層21はセル本体用セパレータ24よりも小さく、かつセル本体用セパレータ24の開口部よりも大きいサイズの方形に形成され、空気極層22はセル本体用セパレータ24の開口部よりも小さいサイズの方形に形成されている。
次に、本実施形態のインターコネクタ1(セパレータ付インターコネクタ)を構成するインターコネクタ本体10及びインターコネクタ用セパレータ11の具体的な構造について図4を参照して説明する。図4(A)は、インターコネクタ本体10及びインターコネクタ用セパレータ11の平面図を示し、図4(B)は、図4(A)に対応する側断面図を示している。
図4に示すように、インターコネクタ本体10の上面(コーティング層10a)とインターコネクタ用セパレータ11の下面は接合部30を介して接合されている。具体的には、インターコネクタ用セパレータ11の中央には、平面視でインターコネクタ本体10より小さいサイズの開口部11aが形成されるので、この開口部11aを取り囲んで全周に接合部30が配置されている。よって、接合部30によりインターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11との間を気密に封止することができる。この場合、開口部11aには、インターコネクタ本体10の表面のコーティング層10aが露出した状態になる。
インターコネクタ用セパレータ11は、既に述べたように可撓性を有する金属製の薄板であるため、積層方向の応力を逃がす程度の厚さに形成する必要がある。具体的には、インターコネクタ用セパレータ11は、例えば、0.05〜0.5mmの範囲内の厚さ(例えば、0.1mmの厚さ)に形成することが望ましい。インターコネクタ用セパレータ11の厚さが0.5mmを超えると、複数の単セルCを積層した状態で各々のインターコネクタ用セパレータ11に印加される応力を逃がすことが困難になる結果、応力に起因する割れ等の不具合を招く恐れがある。インターコネクタ用セパレータ11の厚さが0.05mmに満たないと、耐酸化性や耐食性が劣化して十分な耐久性を確保できなくなる。なお、図4(A)に示すように、インターコネクタ用セパレータ11には、図1のボルトB1〜B10に対応する各位置に円形の貫通孔が形成されている。
インターコネクタ用セパレータ11は、例えば、主成分が鉄(Fe)であり、かつ1〜10重量%程度のアルミニウムを含有する金属材料を用いて形成することが望ましい。すなわち、インターコネクタ用セパレータ11の表面にアルミナの被膜を形成することにより、耐酸化耐久性を向上させることができる。ただし、アルミニウムの含有量が1重量%に満たない程度の金属材料を用いる場合は、被膜形成が不十分となって上述の効果が弱くなる。一方、アルミニウムの含有量が10重量%を超える程度の金属材料を用いる場合は、インターコネクタ用セパレータ11が常温で硬くなり過ぎ、応力の緩和が困難になる。
また、図4(B)に示すように、インターコネクタ用セパレータ11は、インターコネクタ本体10を吊り下げた構造であって変形可能であるため、インターコネクタ用セパレータ11をインターコネクタ本体10よりも薄く形成するのが望ましい。この場合、インターコネクタ本体10の厚さは、上述のインターコネクタ用セパレータ11の厚さを考慮すると、0.5〜1.5mmの範囲内にすることが望ましい。
一方、インターコネクタ本体10は、既に述べたように、金属材料の表面が導電性セラミックからなるコーティング層10aにより覆われた構造を有する。インターコネクタ本体10の金属材料としては、例えば、フェライト系ステンレス材を用いることができる。フェライト系ステンレスの熱膨張率は、セル本体14の熱膨張率に近いため、燃料電池スタックSにおける熱応力を緩和するのに適している。
インターコネクタ本体10の表面のコーティング層10aとしては、例えば、スピネル型酸化物等の導電性セラミックが用いられる。具体的には、MnCoスピネルやNiCoスピネルなどを挙げることができる。このようなコーティング層10aによりインターコネクタ本体10を覆うことにより、金属製のインターコネクタ本体10の表面に形成されるクロム酸化物の蒸散を阻止することが可能となる。よって、本実施形態において、コーティング層10aの役割は、インターコネクタ本体10の導電性を維持しつつ、インターコネクタ本体10が露出しているときに問題となるカソードのクロム被毒を抑制することにある。また、コーティング層10aは、1〜30μmの範囲内の厚さで形成することが望ましい。すなわち、1μmに満たない程度の厚さのコーティング層10aは均質に形成することが困難であるとともに、30μmを超える程度の厚さのコーティング層10aは割れやすくなるためである。
次に、本実施形態のインターコネクタ1の具体的な構造に関し、5つの実施例を挙げて順次説明する。インターコネクタ1の第1の実施例は、図4(B)の側断面図に示す接合部30を形成する材料として、Niロウを用いた構造である。具体的には、接合部30を形成するロウ材として、BNi−2、BNi−3、BNi−5などを用いることができる。接合部30の材料としてロウ材を用いることで、インターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11との間を十分な接合強度で互いに接合する効果が得られる。
インターコネクタ1の第2の実施例は、図4(B)の側断面図に示す接合部30を形成する材料として、ガラスを用いた構造である。ガラスを用いて接合部30を形成する場合は、熱膨張率の差による応力印加時の割れを防止するため、インターコネクタ本体10及びインターコネクタ用セパレータ11と比較的近い熱膨張率を有するガラスを採用することが望ましい。接合部30の材料としてガラスを用いることで、インターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11との間を封止して、燃料ガスや酸化剤ガスのリークを防止する効果が得られる。
本実施形態のインターコネクタ1のうちの接合部30に関しては、図4(B)を用いて説明した第1及び第2の実施例には限られず、多様な構造を適用可能である。図5は、インターコネクタ1の第3の実施例における接合部30aの構造を示している。第3の実施例の接合部30aは、上部のインターコネクタ用セパレータ11と下部のインターコネクタ本体10の金属部分とを所定箇所で溶接接合することにより形成される。図5に示すように、溶接接合により形成された接合部30aは、その径が上方から下方に行くにつれて細くなるテーパ状となっている。例えば、レーザ溶接機を用いて、インターコネクタ用セパレータ11の上方から所定位置にレーザを照射することにより、インターコネクタ用セパレータ11とインターコネクタ本体10とを一体的に溶接接合することができる。
次に、本実施形態のインターコネクタ1のうちのインターコネクタ用セパレータ11に関しても、上述の第1〜第3の実施例には限られず、多様な構造を適用可能である。図6は、インターコネクタ1の第4の実施例におけるインターコネクタ用セパレータ11の構造を示している。第4の実施例のインターコネクタ用セパレータ11は、図6に示すように、インターコネクタ本体10の外縁の近傍で下方に突出した断面形状の凹状部11bを形成したものである。この凹状部11bは、平面視で開口部11aの全体を取り囲むように配置される。第4の実施例の構造を採用することにより、インターコネクタ用セパレータ11に応力が加わったとき、それを凹状部11bの変形により逃がすことで応力を緩和する効果がある。なお、インターコネクタ用セパレータ11に凹状部11bを形成するには、例えば、プレス加工を用いればよい。
また図7は、第5の実施例におけるインターコネクタ用セパレータ11の構造を示している。第5の実施例は、第4の実施例の変形例であり、図7に示すように、インターコネクタ用セパレータ11に対し、図6の凹状部11bに代えて、上下に突出した波状の断面形状を有する波状部11cを形成したものである。この波状部11cも、上述の凹状部11bと同様、平面視で開口部11aの全体を取り囲むように配置される。第5の実施例の構造を採用することにより、第4の実施例と同様、波状部11cの変形により応力を緩和する効果がある。なお、インターコネクタ用セパレータ11に波状部11cを形成するには、第4の実施例と同様、例えば、プレス加工を用いればよい。
なお、第4及び第5の実施例において、接合部30の材料及び構造については特に制約はなく、例えば、第1〜第3の実施例を自在に適用することができる。第4及び第5の構造を採用する場合、インターコネクタ用セパレータ11は、凹状部11b及び波状部11cの加工が可能である限り、第1〜第3の実施例と同様の厚さで形成することができる。
本実施形態の燃料電池スタックSに関し、インターコネクタ1(インターコネクタ本体10及びインターコネクタ用セパレータ11が互いに接合されてなるセパレータ付インターコネクタ)の製造方法の概略について補足的に説明する。まず、周知の手法で、例えば、上述の比率でアルミニウムを含有するフェライト系ステンレスからなる金属板を形成する。そして、この金属板の表面に対し、コーティング層10aの材料をめっきにより付けた後、800〜1000℃の熱処理により酸化物を形成し、コーティング層10aで覆われたインターコネクタ本体10を得る。一方、例えば、上述の比率でアルミニウムを含有するフェライト系ステンレス材からなる板材を打ち抜くことにより、開口部11a(図4)を有するインターコネクタ用セパレータ11を形成する。
次いで、インターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11とを互いに接合するための接合部30の形成を行う。例えば、第3の実施例(図5)を例にとると、インターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11を図4(B)のように配置した状態で、周知の手法で、例えば、レーザ溶接機を用いて平面視でインターコネクタ用セパレータ11の上方から開口部11aを取り囲む所定箇所に一定間隔で順次レーザを照射する。その結果、図5に示すような断面構造を有する複数の接合部30aが形成され、インターコネクタ1が完成する。なお、他の実施例の接合部30を備えるインターコネクタ1に関しても、周知の手法で形成することができる。
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタックSにおいては、隣接する単セルC同士の間にインターコネクタ1を介在させる場合、いわゆる吊り下げ構造を採用してインターコネクタ本体10をインターコネクタ用セパレータ11に接合したので、インターコネクタ本体10の割れを抑制して信頼性を高めることができる。この場合、インターコネクタ本体10は、金属材料の表面に導電性セラミックをコーティングした構造を有するので、クロム蒸散に起因するカソードのクロム被毒を確実に抑制することができる。そして、上述の吊り下げ構造と、インターコネクタ本体10における導電性セラミックのコーティング層10aとを組み合わせたので、インターコネクタに熱応力や機械的応力が加わった際、それをインターコネクタ用セパレータ11の変形により吸収することにより、コーティング層10aに発生するクラック等を有効に防止することができる。また、接合部30の構造により、燃料ガスと酸化剤ガスとを確実に隔離しつつ、インターコネクタ本体10とインターコネクタ用セパレータ11とを一体的に接合することができる。
なお、インターコネクタ用セパレータ11は、セル本体用セパレータ24と同一の材料及び同一の構造で形成してもよい。これにより、燃料電池スタックSの製造性の向上及び低コスト化に効果がある。
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で多様な変更を施すことができる。例えば、インターコネクタ用セパレータ11は、可撓性を有する金属板を用いる限り、金属材料や形状を自在に変更することができる。また、接合部30の形成方法についても、その機能を維持できる限り、多様な選択がある。また、それ以外のインターコネクタ1、空気極側集電体12、枠部13、セル本体14、燃料極側集電体15等の構成部材についても、本発明の目的を達成できる限り、本実施形態の内容に限定されることなく、多様な材料や構造を採用することができる。
1…インターコネクタ(セパレータ付インターコネクタ)
10…インターコネクタ本体
10a…コーティング層
11…インターコネクタ用セパレータ
11a…開口部
12…空気極側集電体
13…枠部
14…セル本体
15…燃料極側集電体
20…燃料極層
21…固体電解質層
22…空気極層
23…燃料極フレーム
24…セル本体用セパレータ
25…絶縁フレーム
26…空気極フレーム
30、30a、31…接合部
S…燃料電池スタック
C…単セル
B1〜B10…ボルト
N…ナット
H…貫通孔
P…エンドプレート

Claims (8)

  1. 燃料極層と、空気極層と、固体電解質層とを含む単セルを、インターコネクタを介して、複数個積層した固体酸化物形燃料電池スタックであって、
    前記インターコネクタは、
    表面に導電性セラミックをコーティングした金属材料からなるインターコネクタ本体と、
    可撓性を有する金属板からなる第1のセパレータと、
    を備え、
    かつ、前記インターコネクタ本体は、前記第1のセパレータと、当該第1のセパレータの略中央に形成された開口部の全周を取り囲む接合部を介して、互いに接合されており、
    かつ、前記インターコネクタは、前記第1のセパレータの部分を固定することにより積層されることを特徴とする固体酸化物形燃料電池スタック。
  2. 前記第1のセパレータは、前記インターコネクタ本体よりも薄い金属板からなることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
  3. 前記第1のセパレータは、アルミニウムを1重量%以上10重量%以下含有する合金により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
  4. 前記インターコネクタ本体の表面にコーティングされる前記導電性セラミックの厚さは、1μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
  5. 前記第1のセパレータは、応力を緩和可能な凹状又は波状の断面形状を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
  6. 前記接合部は、溶接、ロウ付け、ガラス封止のいずれか1つ又はこれらの組み合わせを用いて形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
  7. 前記固体電解質層を挟んで一方の側に前記燃料極層が配置され他方の側に前記空気極層が配置されたセル本体と、
    可撓性を有する金属板からなる第2のセパレータと、
    を更に備え、
    前記セル本体と前記第2のセパレータとは、前記第2のセパレータの略中央に形成された開口部の全周を取り囲むセル接合部を介して互いに接合されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
  8. 燃料極層と、空気極層と、固体電解質層とを含む単セルを複数個積層した固体酸化物形燃料電池スタック用のセパレータ付インターコネクタであって、
    表面に導電性セラミックをコーティングした金属材料からなるインターコネクタ本体を備え、
    前記インターコネクタ本体は、可撓性を有する金属板からなる第1のセパレータと、前記第1のセパレータの略中央に形成された開口部の全周を取り囲む接合部を介して、互いに接合されていることを特徴とするセパレータ付インターコネクタ。
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