JP2015002181A - 熱電変換材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】600℃という温度領域においてn型の熱電変換素子に好適に用いられる新規な熱電変換材料を提供する。
【解決手段】本発明にかかる熱電変換材料は、BaGaAlSi系クラスレート化合物を主体とし、前記クラスレート化合物の母相中に、SmまたはBiからなる相が分散している熱電変換材料であって、前記クラスレート化合物が化学式BaGaAlSi(X=SmまたはBi、7≦a≦9,7≦b≦15,1≦c≦8,28≦d≦33,0≦e≦1、a+b+c+d+e=54)で表される。
【選択図】図1

Description

本発明はクラスレート化合物にかかり、特にそれを用いた熱電変換材料およびその製造方法に関する。
ゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することを可能とする。その性質を利用し、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、熱電変換素子は、環境問題に配慮した省エネルギー技術として注目されている。
ゼーベック効果を利用した熱電変換素子の無次元性能指数ZTは、下記の式(1)で表すことができる。
ZT=ST/ρκ … (1)
式(1)中、S、ρ、κおよびTは、それぞれ、ゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導度および測定温度を表す。
式(1)から明らかなように、熱電変換素子の性能を向上させるためには、素子のゼーベック係数を大きくすること、電気抵抗率を小さくすること、熱伝導度を小さくすることが重要である。
高い性能指数を示す熱電変換材料として、従来、ビスマス・テルル系材料、シリコン・ゲルマニウム系材料、鉛・テルル系材料などを用いた熱電変換素子が知られている。
ところで、従来の熱電変換素子は、それぞれ解決すべき課題を有する。
たとえば、ビスマス・テルル系材料は室温では大きなZT値を有するが、100℃を越えれば急激にそのZT値が小さくなり、廃熱発電のような200℃〜600℃程度では、熱電変換材料として利用できなくなる。また、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系は環境負荷物質の鉛とテルルを含んでいる。
そこで、熱電性能が良好で環境負荷が少なく、さらに軽量な新しい熱電変換材料が求められている。そして、そのような新しい熱電変換材料の1つとしてクラスレート化合物が注目されている。
Ba、Ga、Al、Siからなるクラスレート化合物の組成や合成法については既に開示されており、特許文献1には、単位格子あたりx個(10.8≦x≦12.2)のSi原子が、Al原子とGa原子のいずれかで置換されているBa(Al,Ga)Si46−xの単結晶とその製造方法が開示されている。特許文献2には、P型のBa−Al−Siクラスレート化合物において700KでのZTが1.01であることが開示されている。
また、特許文献3には、Ba−Ga−Al−Siクラスレート化合物において800℃でのZTが0.4以上であることが開示されている。特許文献4には組成比BaGaAlSiPd(7≦H≦8、9≦I≦12、0≦J≦2、33≦K≦35、0<L≦2、H+I+J+K+L=54)を有するクラスレート化合物およびこれを用いた熱電変換材料は、室温〜600℃という温度領域において、Pdを含まない同系の材料よりも高いZTを有することが開示されている。
特開2004−67425号公報 特許第4413323号公報(段落0048など) 特開2012−033867号公報 特開2012−256759号公報
しかし、これらのクラスレート化合物には以下の課題がある。
すなわち、特許文献1に記載の技術では、ZTが明らかではなく、性能が低いことが懸念される。特許文献2に記載の技術では、p型については開示されているが、n型についてのZTは明らかではなく、性能が低いことが懸念される。
特許文献3に記載の技術では、600℃でのZTが明らかではなく、たとえば廃熱発電にも利用可能とするなど、さらなる性能向上が望まれる。特許文献4に記載の技術では、希少元素であるPdが使用されており、高価なことが懸念される。
したがって、本発明の主な目的は、有害元素を含まず、安価な材料で、発熱発電にも利用可能な600℃という温度領域において熱電変換素子に好適に用いられる新規な熱電変換材料およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
クラスレート化合物を主体とし、
前記クラスレート化合物の母相中に、SmまたはBiからなる相が分散している熱電変換材料が提供される。
好ましくは、前記熱電変換材料は、
BaGaAlSi系クラスレート化合物を主体とし、
前記クラスレート化合物が化学式BaGaAlSi(X=SmまたはBi、7≦a≦9,7≦b≦15,1≦c≦8,28≦d≦33,0≦e≦1、a+b+c+d+e=54)で表され、前記SmまたはBiの分散の密度n(1/mm)が0を超え1000未満であるn型の熱電変換材料である。
本発明の他の態様によれば、
前記熱電変換材料を製造する製造方法であって、
Ba,Ga,Al,Si,SmまたはBiを原料として混合・溶融・凝固して所定の組成のクラスレート化合物を調製する調製工程と、
前記クラスレート化合物を粉砕して微粒子とする粉砕工程と、
前記微粒子を焼結する焼結工程と、
を有する熱電変換材料の製造方法が提供される。
本発明によれば、優れた熱電変換特性を有する熱電変換材料およびその製造方法を提供することができる。
特に、有害元素を含まず、安価な材料で、廃熱発電にも利用可能な600℃という温度領域においてn型の熱電変換素子に好適に用いられる新規な熱電変換材料、さらにはその熱電変換材料の製造方法を提供することができる。
熱電変換材料の実施例にかかるEPMAによる元素マッピング画像である。 熱電変換材料(Smを含む。)における分散粒子の密度nとゼーベック係数の絶対値|S|との関係を概略的に表した図である。図中、「○」が実施例であり、「×」が比較例である。 熱電変換材料(Biを含む。)における分散粒子の密度nとゼーベック係数の絶対値|S|との関係を概略的に表した図である。図中、「○」が実施例であり、「×」が比較例である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
(A)クラスレート化合物および熱電変換材料
本発明の好ましい実施形態にかかるクラスレート化合物は、組成比BaGaAlSi(X=SmまたはBi、7≦a≦9,7≦b≦15,1≦c≦8,28≦d≦33,0≦e≦1、a+b+c+d+e=54)で表され、少なくともBaとGaとAlとSiとが同時に含まれた化合物を主体とし、SmまたはBiを含有する第2相が分散している、n型の熱電変換材料である。
本実施形態にかかるクラスレート化合物は、主に、基本的な格子がSiのクラスレート格子から構成され、Ba元素がその内部に内包され、クラスレート格子を構成する原子の一部がGa,Alで置換された構造を有している。
本実施形態にかかる「クラスレート化合物」は、Siクラスレート相を主体(母相)とし、Siクラスレート相には該当しないSmまたはBiからなる他の相(第2相)を有している。上記組成比BaGaAlSiにおける「0≦e」との条件に関し、「e=0」とはSiクラスレート相にSmまたはBiが含まれないことを意味し、「0<e」とはSiクラスレート相中にSmまたはBiが含まれる(固溶している)ことを意味する。本実施形態にかかるクラスレート化合物では、SmまたはBiは、Siクラスレート相に固溶していてもよいが(固溶の有無は不問である。)、第2相として分散していることが必要である。
化学式BaGaAlSiの組成比のうち、Ga,Al,Si,Xの各組成比b,c,d,eは概ね、次のような関係を有する。
b+c+d+e=46
このような関係を満たせば、当該クラスレート化合物はSiクラスレート相を主体とするものとして実現され、理想的な結晶構造をとりうる。
本実施形態にかかる熱電変換材料は、600℃におけるゼーベック係数の絶対値|S|が50以上である。
さらに本実施形態にかかる熱電変換材料では、EPMAによる元素マッピング画像を取得した場合において、450μm×450μm以上の視野の画像上で1μmより大きい分散粒子(SmまたはBi)の数を計測したとき、分散粒子の密度n(1/mm)が0を超え1000未満(0<n<1000)であり、好ましくは200<n<500であり、より好ましくは250<n<450である。
なお、本実施形態にかかる熱電変換材料は、上記クラスレート化合物を主成分とし、少量の他の添加物が含まれてもよい。
(B)製造方法
本発明の好ましい実施形態にかかる熱電変換材料の製造方法は、
(1)Ba,Ga,Al,Si,SmまたはBiを原料として混合・溶融・凝固して所定の組成のクラスレート化合物を調製する調製工程と、
(2)前記クラスレート化合物を粉砕して微粒子とする粉砕工程と、
(3)前記微粒子を焼結する焼結工程と、
を有する。
これらの工程を経ることにより、所定の組成を有し、ポア(空隙)が少ない材料が得られるという利点がある。
(1)調製工程
調製工程では、所定の組成を有しかつ均一な組成のクラスレート化合物のインゴットを製造する。
まず、所望のクラスレート化合物の組成となるように、所定量の原料(Ba,Ga,Al,Si,SmまたはBi)を秤量し混合させる。原料は、単体であってもよいし、合金や化合物であってもよく、その形状は、粉末でも片状でも塊状であってもよい。
溶融時間としては、すべての原料が液体状態で均質に混ざり合う時間が必要とされるが、製造に要するエネルギーを考慮すると、溶融時間はできるだけ短時間であることが望まれる。そのため、溶融時間は、好ましくは1〜100分であり、さらに好ましくは1〜10分であり、特に好ましくは1〜5分である。
原料混合物からなる粉末を溶融する方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
溶融方法としては、たとえば、抵抗発熱体による加熱、高周波誘導溶解、アーク溶解、プラズマ溶解、電子ビーム溶解などが挙げられる。
ルツボとしては、グラファイト、アルミナ、コールドクルーシブルなどが、加熱方法に対応して適宜用いられる。
溶融の際は、材料の酸化を防ぐために、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気下でおこなわれるのが好ましい。
短時間で均質に混ざり合った状態とするためには、好ましくは微細な粉末状の原料が混合されるのがよい。ただし、Baとしては、酸化を防ぐために、好ましくは塊状を呈するものを使用する。また、溶融時に機械的な攪拌または電磁的な攪拌を加えるのも好ましい。
溶融後、インゴットにするためには、鋳型を用いて鋳造してもよいし、ルツボ中で凝固させてもよい。できあがったインゴットの均質化のためには、溶融後にアニール処理をおこなってもよい。
アニール処理の処理時間は、製造時の省エネルギーを考慮すると、なるべく短時間とされることが望まれるが、アニール効果を考慮すると、長い時間が必要とされる。アニール処理の処理時間は、好ましくは1時間以上であり、さらに好ましくは1〜10時間がさらに好ましい。
アニール処理の処理温度は、好ましくは700〜950℃であり、さらに好ましくは850〜930℃である。処理温度が700℃未満であると、均質化が不十分になるという問題が生じ、処理温度が950℃を超えると、再溶融による濃度偏析が生じるという問題が生じる。
(2)粉砕工程
粉砕工程では、調製工程によって得られたインゴットを、ボールミルなどを用いて粉砕し、微粒子状のクラスレート化合物を得ることができる。得られる微粒子としては、焼結性を向上するために粒度が細かいことが望まれる。本実施形態では、微粒子の粒径は、好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上75μm以下である。
所望の粒径の微粒子とするためには、ボールミルなどによってインゴットを粉砕した後、粒度を調製する。粒度の調製方法は、ISO3310−1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いたふるい分けによりおこなえばよい。なお、この粉砕工程に代えて、ガスアトマイズ法などの各種アトマイズ法やフローイングガスエバポレーション法などを用いて微粉末を製造することもできる。
(3)焼結工程
焼結工程では、前記粉砕工程で得られた微粉末状のクラスレート化合物を焼結して、均質で空隙の少ない、所定の形状の固体を得ることができる。焼結方法としては、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、熱間等方圧加圧焼結法などを用いることができる。
放電プラズマ焼結法を用いる場合、その焼結の1条件となる焼結温度は、好ましくは600〜1000℃であり、より好ましくは900〜1000℃である。焼結時間は好ましくは1〜10分であり、より好ましくは3〜7分である。圧力は好ましくは40〜80MPaであり、より好ましくは50〜70MPaである。
焼結温度が600℃未満では焼結せず、焼結温度が1100℃以上では溶解する。焼結時間が1分未満では密度が低く、焼結時間が10分を超えると焼結が完了・飽和し、それ以上時間をかける意義がないと考えられる。
特に、焼結工程では、微粉末状のクラスレート化合物を上記焼結温度まで加熱してその温度で上記焼結時間保持し、その後に当該クラスレート化合物を加熱前の温度まで冷却する。この場合、微粉末状のクラスレート化合物を焼結温度まで加熱する工程とその温度で保持している工程とでは加圧状態とし、その後当該クラスレート化合物を冷却する工程では加圧状態を解除する。
かかる圧力操作によれば、微粉末状のクラスレート化合物の焼結工程での割れを抑制することができる。
(C)クラスレート化合物相の生成の確認
前記の製造方法によって、クラスレート化合物が生成されたかどうかは、粉末X線回折(XRD)により確認することができる。具体的には、焼結後のサンプルを再度粉砕して粉末X線回折測定し、得られるピークがタイプ1クラスレート相(Pm−3n、No.223)を示すものであれば、タイプ1クラスレート化合物が合成されたことを確認できる。
しかし、実際にはタイプ1クラスレート相のみからなるものと、不純物相を含むものとがあるため、不純物のピークも観察される。本実施形態にかかるクラスレート化合物におけるSiクラスレート化合物相の最強ピーク比は85%以上であり、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
なお、最強ピーク比とは、粉末X線回折測定において測定されたSiクラスレート化合物相の最強ピーク(IHS)、不純物相A(BaGa4―Y(Al,Si)(0≦Y≦4))の最強ピーク強度(IA)、不純物相B(BaAlSiなど)の最強ピーク強度(IB)より、下記の式(2)で定義される。
「最強ピーク比」=IHS/(IHS+IA+IB)×100(%) … (2)
(D)特性評価試験
次に、上記の方法で製造される熱電変換材料の無次元性能指数ZTを算出するための特性評価について説明する。
特性評価項目は、ゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導度κである。
特性評価試験では、電子線マイクロアナライザー(島津製作所製EPMA−1610)による組成分析とミクロ組織観察、焼結密度測定をおこなう。各種特性評価用サンプルは、20mmφ(直径20mm)×5〜20mm(高さ5〜20mm)の円柱状焼結体から、切り出し、整形する。
「ゼーベック係数S」および「電気抵抗率ρ」は、四端子法によりアルバック理工(株)製の熱電特性評価装置 ZEM−3を用いて測定する。
「熱伝導度κ」は、比熱c、密度δ、熱拡散率αの測定結果から、下記の式(3)により算出する。
κ=cδα … (3)
「比熱c」は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法により測定する。測定装置として、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計 EXSTAR6000DSCを用いる。
「密度δ」は、アルキメデス法により測定する。測定装置として、(株)島津製作所製の精密電子天秤 LIBROR AEG−320を用いる。
「熱拡散率α」は、レーザーフラッシュ法により測定する。測定装置として、アルバック理工(株)製の熱定数測定装置 TC−7000を用いる。
以上の測定結果から、式(1)を用いて熱電変換材料の性能を評価する指数である無次元性能指数ZTを算出することができる。算出された無次元性能指数から、その熱電変換材料の特性を評価することができる。
もちろん、式(1)に示すとおり、無次元性能指数ZTはゼーベック係数Sの値にも依存することから、ゼーベック係数Sの値の増大は無次元性能指数ZTの増大につながり、結果的に熱電変換材料の特性の向上につながる。本実施形態にかかる熱電変換材料では、600℃におけるゼーベック係数の絶対値|S|が50以上である。
以下、本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
(1)サンプルの作製
純度2N以上の高純度のBaとSmまたはBiと、純度3N以上の高純度のAl,Gaと、純度3N以上の高純度のSiとを、所定の配合比率で秤量し(表1および表3参照)、原料混合物を調製した。
この原料混合物を、Ar(アルゴン)雰囲気中において、水冷銅ハース上で300Aの電流で1分間アーク溶解した後、原料の不均一を解消するためにインゴットを反転して、再度アーク溶解を行う工程を5回繰り返し、そのまま水冷銅ハース上で常温まで冷却することによりクラスレート化合物を有するインゴットを得た。
その後、インゴットの均一性を高めるために、アルゴン雰囲気で、900℃で6時間のアニール処理をおこなった。得られたインゴットを、メノウ製遊星ボールミルを用いて粉砕し、微粒子を得た。このとき、得られた粒子の粒径の平均が75μm以下となるようにISO3310−1規格のレッチェ社製試験ふるいとレッチェ社製ふるい振とう機AS200デジットを用いて粒度を調製した。
得られた焼結用粒子を、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて、圧力50MPaまで加圧した後に1000℃まで加熱を行い、その後1000℃で5分間焼結した。焼結が終了してから、加圧状態を解除し、1000℃から室温まで冷却を行った。
なお、焼結用粒子の焼結が終了してから、加圧状態を保持し続けて冷却を行うと、割れが生じてしまったが、上記のとおりに焼結後に加圧状態を解除して1000℃から室温まで冷却を行うと、そのような割れを抑制することができた。得られるサンプルやダイスの劣化を考慮すると、冷却温度が500℃以上では真空雰囲気で保持することが好ましいが、500℃未満では大気雰囲気で保持してもかまわない。
このようにして得られたサンプルの焼結体を、組成分析するとともに、前記の「(C)クラスレート化合物の生成の確認」のX線回折と、前記の「(D)特性評価試験」とに供した。
(2)サンプルの評価
(2.1)組成分析
組成分析の結果を表2および表4に示す。
表2および表4から、実施例1−1〜1−9,2−1〜2−9のサンプルにおいて、所望の組成BaGaAlSi(X=SmまたはBi、7≦a≦9,7≦b≦15,1≦c≦8,28≦d≦33,0≦e≦1、a+b+c+d+e=54)の化合物が得られたことがわかる。
(2.2)X線回折分析
得られたサンプルを、粉末X線回折で分析した。
得られた結果から、式(2)に基づき最強ピーク比を算出し、すべてのサンプルで90%以上であることを確認した。
(2.3)特性評価
得られたサンプルについて、上記「(D)特性評価試験」の記載のとおりに、600℃におけるゼーベック係数を測定した。測定の結果、すべてのサンプルでゼーベック係数が負となり、各サンプルがn型であることがわかった。
さらに、450μm×450μm以上の視野の画像上で1μmより大きい分散粒子の数を計測し、これにより、分散粒子の密度n(1/mm)を算出した。
図1には、Smの分散状態の一例として、実施例1−5のEPMAによる元素マッピング画像を示す。図1では、白色で示される相がSmからなる相であり、このSm相が母相中に分散している様子が示されている。
表1〜表4に、各サンプルの配合量や組成比(a,b,c,d,e)、分散粒子の密度n、ゼーベック係数の測定値を示す。
併せて、図2に、実施例1−1〜1−9および比較例1−1〜1−3のサンプルの分散粒子の密度nとゼーベック係数の測定値の絶対値|S|との関係を表すグラフを示す。図3に、実施例2−1〜2−9および比較例2−1〜2−3のサンプルの分散粒子の密度nとゼーベック係数の測定値の絶対値|S|との関係を表すグラフを示す。図中で示した「○」がそれぞれの実施例であり、「×」が比較例である。
表2および表4に示すとおり、比較例1−1(2−1)と実施例1−1〜1−3(2−1〜2−3)とはそれぞれがほぼ同一の組成比を有しており、これと同様に、比較例1−2(2−2)と実施例1−4〜1−6(2−4〜2−6)、比較例1−3(2−3)と実施例1−7〜1−9(2−7〜2−9)もそれぞれほぼ同一の組成比を有している。これらの傾向を調べるために、ほぼ同一の組成比を有するサンプル群ごとに、第2相の分散密度値とゼーベック係数の値の近似曲線(破線)を、図2および図3に示した。図2および図3に示すとおり、SmまたはBiからなる相(第2相)が母相中に分散した実施例のサンプルでは、ゼーベック係数の絶対値|S|が向上している。
(3)まとめ
以上から、特定の組成比BaGaAlSi(X=SmまたはBi、7≦a≦9,7≦b≦15,1≦c≦8,28≦d≦33,0≦e≦1、a+b+c+d+e=54)を有するクラスレート化合物を主体とし、かつ、SmまたはBiからなる相が母相中に分散した熱電変換材料が、n型の熱電特性を示しかつ600℃という温度領域において性能を向上させるのに、有用であることがわかる。

Claims (7)

  1. クラスレート化合物を主体とし、
    前記クラスレート化合物の母相中に、SmまたはBiからなる相が分散していることを特徴とする熱電変換材料。
  2. 前記クラスレート化合物がBaGaAlSi系クラスレート化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換材料。
  3. 前記クラスレート化合物は、化学式BaGaAlSi(X=SmまたはBi、7≦a≦9,7≦b≦15,1≦c≦8,28≦d≦33,0≦e≦1、a+b+c+d+e=54)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換材料。
  4. 前記SmまたはBiの分散の密度n(1/mm)が、0を超え1000未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電変換材料。
  5. n型の熱電変換特性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱電変換材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱電変換材料を製造する製造方法であって、
    Ba,Ga,Al,Si,SmまたはBiを原料として混合・溶融・凝固して所定の組成のクラスレート化合物を調製する調製工程と、
    前記クラスレート化合物を粉砕して微粒子とする粉砕工程と、
    前記微粒子を焼結する焼結工程と、
    を有する熱電変換材料の製造方法。
  7. 前記焼結工程は、
    前記微粒子を一定の焼結温度まで加熱する加熱工程と、
    前記微粒子を前記焼結温度で一定時間保持する温度保持工程と、
    前記微粒子を加熱前の温度まで冷却する冷却工程を有し、
    前記加熱工程および前記温度保持工程では加圧雰囲気とし、
    前記冷却工程では加圧雰囲気を解除することを特徴とする請求項6に記載の熱電変換材料の製造方法。
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