<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2あるいは給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118a,118b,119a,119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラ118a,118b,119a,119bによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106,107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106,107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラ106,107に巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラ106,107の共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。ニップローラ138は回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体2aを有している。ヘッド本体2aの下面は、液体を吐出する多数の吐出孔が設けられている吐出孔面4−1となっている。
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2には図示しない外部液体タンクから液体が供給される。各液体吐出ヘッド2の吐出孔8は、吐出孔面4−1に開口しており、一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、例えば、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aの下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aから印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121a,121b,122a,122bとが配置されている。カラー画像が印刷さ
れた印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a,121b,122a,122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2あるいは搬送モータ174等を制御することができる。
次に、本発明の液体吐出ヘッド2について図2〜8を用いて説明する。
図6は、図1の液体吐出ヘッド2の斜視図である。図7は、図6の液体吐出ヘッド2のII−II線縦断面図である。図7では流路部材4などの流路の内部構造は省略してある。図8は、ヘッド本体2a、ヒータ81、断熱材83、および押圧部材96を示す分解斜
視図、および平面図である。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、接続基板80と、回路基板82と、フレキシブル基板60と、ドライバIC(Integrated Circuit)55と、筐体90とを含んでいる。
図7に示すように、ヘッド本体2aは、流路部材4と、流路部材4の上面に設けられた圧電アクチュエータ基板21と、流路部材4に液体を供給するためのリザーバ40を有している。ヘッド本体2a上に枠体92を介して筐体90が設けられている。なお、ヘッド本体2aは、リザーバ40および筐体90を備えていなくてもよい。
筺体90は、金属あるいは合金等により形成することができ、形状は直方体状である。筺体90は、液体吐出ヘッド2の長手方向の両端側の側面を構成している筺体本体90aと、筺体本体90aに取り付けられている筺体側板90bと、天板部90cとにより構成されている。天板部90cには接続基板80の外部コネクタ80aを介して信号が入力できるように孔90dが開いている。
筐体90とリザーバ40との間には、平板上で中央部に開口92cを備える枠体92が設けられている。枠体92は、図8に示すように、一対の長辺92aと、一対の短辺92bと、一対の長辺92aおよび一対の短辺92bにより形成された開口92cとにより構成されている。
筐体本体90aは、天板部90cと筺体側板90bとがネジ等で側方から取り付けられている。この際、あらかじめ筺体側板90bの取り付け位置よりも外側に押し出されていたドライバIC55は、筺体側板90bに押し付けられるようになる。枠体92より下側の、枠体92とリザーバ40と流路部材4とで構成された開口部は、側板94をネジなどで取り付けることにより塞がれる。以上の各部材の間には必要に応じて樹脂などが塗られて硬化されて、液体のミストが筐体90の内部に入り難いようにされる。
リザーバ40には、リザーバ流路が設けられている。リザーバ流路の一端は液体供給孔40aとして、液体吐出ヘッド2の外部に開口している。また、リザーバ40は流路部材4の長手方向の両端で接続されており、リザーバ流路はマニホールド5の開口5aに繋が
っている。つまり、液体供給孔40aから供給された液体は、リザーバ流路に入り、内部で分岐して、マニホールド5の両端に供給される。
また、リザーバ流路の内壁の一部は弾性変形可能な材質のダンパになっている。ダンパのリザーバ流路と反対の面が面する方向に変形できるようになっているため、ダンパは弾性変形することにより、リザーバ流路の体積を変化させることができる。そのため、液体吐出量が急激に多くなった場合などに、安定して液体が供給できるようになる。また、リザーバ流路の中にフィルタを設けて、液体の中に含まれる異物が流路部材4に入って行き難いようにするのが好ましく、異物が詰まることによって起こる不吐出を抑制できる。
接続基板80は、筐体90の上部に配置されており、外部の配線と接続される外部コネクタ80aと、回路基板82に接続される内部コネクタ80bとが実装されており、電気を流すための配線80cを有している。外部コネクタ80aは、一部が筐体90の開口90dから突出しており、外部と接続容易な構成となっている。内部コネクタ80bは、配線80cに電気的に接続されており、接続基板80に表面実装されている。
リザーバ40には、一部に断熱性部材98が付けられた押圧部材96と、筺体90aおよびヘッド本体2aから液体を吐出させる駆動信号を処理する回路基板82を固定するためのガイドフレーム84とが固定されている。これにより、ヘッド本体2aに押圧部材9
6が固定されることとなる。
制御部100(図1参照)から信号ケーブル(不図示)を介して送られてきた駆動信号は、外部コネクタ80a、接続基板80、内部コネクタ80b、回路基板82、フレキシブル基板60およびフレキシブル基板60に実装されたドライバIC55に供給され、後述の圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を駆動し、流路部材4の内部の液体を加圧することにより、液滴が吐出される。
ドライバIC55は、駆動する際に発熱する。ドライバIC55は押圧部材96をたわませることにより筺体90の内側に押圧されているため、ドライバIC55に発生した熱は、筺体90に伝わることとなる。そして、筺体90全体に速やかに広がり、外部に放熱されていく。ドライバIC55はフリップチップ実装にして、電極が配置されている面と反対側の面を筺体90に接触させれば、熱が伝わり易くできる。放熱を促進するために筐体側板90bは外側の表面を凹凸にすることが好ましい。
断熱性部材98は、押圧部材96に熱が伝わり難くしている。それにより、押圧部材96を介して、リザーバ40に熱が伝わり難くなり、ヘッド本体2aに熱が伝わり難い構成
となる。断熱性部材98は、弾性を有するものにより形成することにより、ドライバIC55を金属製の筺体90に押し当てやすくすることができる。
また、ドライバIC55と筐体90との間には熱伝導材を充填してもよい。熱伝導材が充填されていると、熱伝導材により接触する面積が増えるので、さらに熱伝導性を高くすることができる、熱伝導材は、熱伝導性の高粘度を有するグリス、あるいは高熱伝導を有するフィラーを入れた樹脂が挙げられる。樹脂はある程度粘度の高い状態でもよいし、硬化させてもよい。
ガイドフレーム84は、縦断面視して、上下方向に延びる一対の測板部と、一対の測板部とを接続する接続部とを有している。一対の測板部には、それぞれ回路基板82が設けられており、回路基板82は立設した状態でガイドフレーム84に保持固定されている。
押圧部材96は、ドライバIC55を筐体90の内側に押圧するための部材であり、図
7に示すように、断熱性部材98を介して、ドライバIC55を、筐体90の内側に押圧している。
フレキシブル基板60は、圧電アクチュエータ基板21に設けられた加圧部となる各変位素子30に、信号を供給するために電気的に接続されている。図2に示すように、2つのフレキシブル基板60が圧電アクチュエータ基板21に繋がっている。圧電アクチュエータ基板21に電気的に接続された、フレキシブル基板60に形成されている配線の電極は、フレキシブル基板60の一方の端部の圧電アクチュエータ基板21との接続領域60cに矩形状に配置されている。2つのフレキシブル基板60は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つのフレキシブル基板60は、短手方向の中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
図8を用いて、液体吐出ヘッド2を構成する、ヘッド本体2aと、枠体92と、ヒータ81と、押圧部材96とについて説明する。なお、図8では、フレキシブル基板60の図示は省略している。
ヒータ81は、リザーバ40上に配置されており、ヘッド本体2aを流れる液体の温度を一定に近づけるために設けられている。平面視して、枠体92の開口92cの内部に配置されており、枠体92とは所定の距離をあけて離間した状態で配置されている。そして、この枠体92とヒータ81との間にフレキシブル基板(不図示)が挿通されている。ヒータ81とリザーバ40とは、接着剤(不図示)あるいは両面テープ(不図示)で接着してもよい。
ヒータ81としては、厚み方向に大きくなることを抑制するために、フィルムヒータを用いることが好ましい。また、図示していないが、ヒータ81は、内部に抵抗配線を有し、発熱する発熱部281b(図12参照)と、抵抗配線と外部とを電気的に接続するためのリード電極281a(図12参照)とを備えている。
押圧部材96は、ヒータ81上に設けられた平板状の平板部96aと、枠体92の長辺92aに隣接して設けられ、平板部96aから上方向へ突出した一対の突出部96bとを備えている。また、押圧部材96は、平板部96aと突出部96bとにより形成される角部96dを備えている。
平板部96aおよび突出部96bは、長手方向に延在するように設けられており、平板部96aの両端が、枠体92の短辺92b上まで設けられており、枠体92を介して、リザーバ40とネジ等により接続されている。それにより、押圧部材96は、ヒータ81を押圧した状態で、リザーバ40に接続されている。
図7に示すように、平板部96aは、ヒータ81上に設けられており、押圧部材96がリザーバ40に接続されている。そのため、押圧部材96は、ヒータ81をリザーバ40に押圧することができ、ヒータ81をヘッド本体2aに押圧している。
また、突出部96bは、フレキシブル基板60上に設けられたドライバIC55が設けられた位置まで、上方へ向けて延在している。それにより、ドライバIC55は、押圧部材96の突出部96bにより、筐体90の内側に押圧される構成となっている。
ここで、近年、印刷装置は、印刷速度の高速化が求められており、印刷速度の高速化に伴い、ドライバICに供給される駆動周波数も高くなる傾向にある。ドライバICに供給される駆動周波数が高くなると、ドライバIC、フレキシブル基板、回路基板、および接
続基板が高温となり、ヒータとリザーバとの密着力が低下し、ヒータがヘッド本体から剥離する可能性がある。ヒータとヘッド本体とを接着剤あるいは両面テープで接着した場合においても、ドライバICの熱により、接着剤あるいは両面テープが熱により接着力が低下し、リザーバから剥離する可能性がある。それに伴い、ヘッド本体を流れる液体の温度を一定の温度に保つことができず、吐出速度あるいは吐出量にばらつきが生じる可能性がある。つまり、各吐出孔の吐出特性にばらつきが生じる可能性がある。
これに対して、液体吐出ヘッド2は、ヒータ81をリザーバ40に押圧するための押圧部材96を備えている。それにより、ヒータ81がヘッド本体2aに押しつけられることとなり、ヒータ81とヘッド本体2aとの密着性を向上させることができる。その結果、ヒータ81がヘッド本体2aを流れる液体を温めることができ、液体吐出ヘッド2の各吐出孔8(図5参照)の吐出特性のばらつきが大きくなる可能性を低減することができる。特に、リザーバ40は多くの量の液体を保持することから、リザーバ40の内部の液体の温度を均一に保つことにより、液体吐出ヘッド2の各吐出高8の吐出特性を均一に近づけることができる。
なお、ヘッド本体2aがリザーバ40上に設けられた例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、ヘッド本体2aの圧電アクチュエータ基板21上にヒータ81を設け、押圧部材96を圧電アクチュエータ基板21にヒータ81を押圧するように、ヒータ81上に設けてもよい。このような構成とすることにより、ヒータ81により、流路部材4を流れる液体を温めることができ、液体吐出ヘッド2の吐出特性を安定させることができる。
また、流路部材4上にヒータ81および押圧部材96を設けてもよい。このような構成とすることにより、ヒータ81により、流路部材4を流れる液体を温めることができ、液体吐出ヘッド2の吐出特性を安定させることができる。
また、ヘッド本体2aの流路部材4は、液体の吐出に伴って、厚み方向に振動が生じる場合や、幅方向に振動が生じる場合がある。この場合に、圧電アクチュエータ基板21または流路部材4にヒータ81を押圧するように押圧部材96設けると、押圧部材96により流路部材4の変形を阻害することができ、ヘッド本体2aの振動を抑制させることができる。
また、液体吐出ヘッド2は、ドライバIC55の熱を放熱するための筐体90をさらに備え、押圧部材96が、ドライバIC55を筐体90に押圧している。より詳細には、押圧部材96が、ドライバIC55を筐体90の筺体側板90bに押圧している。そのため、ドライバIC55に発生した熱は、筺体側板90bから筺体90の全体に伝わることとなる。それにより、ドライバIC55の熱が筐体90に速やかに広がり、外部に放熱されることとなり、ドライバIC55を放熱することができる。その結果、ヒータ81にドライバIC11の熱が伝わりにくくなり、ヒータ81とヘッド本体2aとの密着性を向上させることができる。
なお、ドライバIC55の熱を放熱するための放熱体として、筐体90を用いた例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、アルミニウム、鉄、あるいは銅等の金属または合金の板で放熱体を形成してもよい。
また、液体吐出ヘッド2は、押圧部材96が、ヘッド本体2aの上に位置する平板部96aと、平板部96aよりも上方に突出する突出部96bとを備え、平板部96aがヒータ81をヘッド本体2aに押圧し、突出部96bがドライバIC55を筐体90に押圧している。
それにより、突出部96bがドライバIC55を押圧したことによる反作用により、ガイドフレーム84側に変形した場合に、平板部96aが下方に向けて凸形状に変形することとなり、さらにヒータ81をリザーバ40に押圧することができる。その結果、ヒータ81とヘッド本体2aとの密着性をさらに向上させることができる。
また、平板部96aがリザーバ40を押圧したことによる反作用により、上方に向けて凸形状に変形した場合に、突出部96bがドライバIC55に向けて変形することとなり、さらにドライバIC55を筐体90に押圧することができる。それにより、ドライバIC55の放熱性を向上させることができ、ヒータ91に伝わる熱量を低減することができる。その結果、ヒータ81とヘッド本体2aとの密着性をさらに向上させることができる。
図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の構造を省略した平面図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため図3とは異なる一部の構造を省略した図である。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきしぼり6、吐出孔8、加圧室10などを実線で描いている。また、図4の吐出孔8は、位置を分かりやすくするため、実際の径よりも大きく描いてある。図5は図3のI−I線に沿った縦断面図である。
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に接続された変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
流路部材4の内部には2つのマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に延びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口しているマニホールドの開口5aが形成されている。マニホールド5の両端部から流路部材4へ液体を供給することにより、液体の供給不足が起り難くできる。また、マニホールド5の一端から供給する場合と比較して、マニホールド5を液体が流れる際に生じる圧力損失の差を約半分にできるため、吐出特性のばらつきを少なくできる。
また、マニホールド5は、少なくとも加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分が、幅方向に間隔を開けて設けられた隔壁15で仕切られている。隔壁15は、加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分では、マニホールド5と同じ高さを有し、マニホールド5を複数の副マニホールド5bに完全に仕切っている。このようにすることで、平面視したときに、隔壁15と重なるように、吐出孔8および吐出孔8から加圧室10に繋がっているディセンダを設けることができる。
図2では、マニホールド5の両端部を除く全体が隔壁15で仕切られている。両端部を含んで全体が隔壁15で仕切られているようにしてもよい。その場合、流路部材4の上面に開口している開口5a付近のみが仕切られておらず、開口5aから流路部材4の深さ方向に向かう間に隔壁が設けられるようにすれば、リザーバ40との接続が容易になる。
複数に分けられた部分のマニホールド5を副マニホールド5bと呼ぶことがある。本実施例においては、マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。また、1つのマニホールド5には、7つの隔壁15が設けられており、8つの副マニホールド5bに分けられている。副マニホールド5bの幅は、隔壁
15の幅より大きくなっており、これにより副マニホールド5bに多くの液体を流すことができる。また、7つの隔壁15は、幅方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、マニホールド5の両端において、幅方向の中央に近い隔壁15ほど、隔壁15の端がマニホールド5の端に近くなっている。これにより、マニホールド5の外側の壁により生じる流路抵抗と、隔壁15により生じる流路抵抗との間のバランスがとれ、各副マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる部分である個別供給流路14が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。この個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすれば、吐出ばらつきを低減できる。
流路部材4は、複数の加圧室10が2次元的に広がって形成されている。加圧室10は、角部にアールが施されている、2つの鋭角部と2つの鈍角部とを有する略菱形の平面形状を有する中空の領域である。
加圧室10は1つの副マニホールド5bと個別供給流路14を介して繋がっている。1つの副マニホールド5bに沿うようにして、この副マニホールド5bに繋がっている加圧室10の列である加圧室列11が、副マニホールド5bの両側に1列ずつ、合計2列設けられている。したがって、1つのマニホールド5に対して、16列の加圧室11が設けられており、ヘッド本体2a全体では32列の加圧室列11が設けられている。各加圧室列11における加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。
各加圧室列11の端にはダミー加圧室16が設けられている。このダミー加圧室16は、マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32列の加圧室列11の外側には、ダミー加圧室16が直線状に並んだダミー加圧室列が設けられている。このダミー加圧室16は、マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がっていない。これらのダミー加圧室により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくできる。なお、周囲の構造の差の影響は、距離の近い、長さ方向に隣接する加圧室10の影響が大きいため、長さ方向には、両端にダミー加圧室を設けてある。幅方向については、影響が比較的小さいため、ヘッド本体2aの端に近い方のみに設けている。これにより、ヘッド本体2aの幅を小さくできる。
1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は、液体吐出ヘッド2の長手方向である行方向と短手方向である列方向とに沿って、行上および列上で、それぞれ略等間隔で配置されている。行方向は、菱形形状の加圧室10の鈍角部同士を結ぶ対角線と同じ方向であり、列方向は、菱形形状の加圧室10の鋭角部同士を結ぶ対角線と同じ方向である。つまり、加圧室10の菱形形状の対角線が行および列と角度がついていない状態になっている。加圧室10を格子状に配置し、そのような角度の菱形形状の加圧室10を配置することにより、クロストークを小さくできる。
これは1つの加圧室10に対して、行方向、列方向のいずれの方向においても、角部同士が対向する状態になっているため、辺同士で対向して場合よりも、流路部材4を通じて、振動伝わり難いためである。なお、この場合、鈍角部同士を長手方向に対向させることにより長手方向における、加圧室10の密度を高くして配置でき、これにより、長手方向の吐出孔8の密度を高くできるので、高解像度の液体吐出ヘッド2とできるからである。行上および列上での加圧室10の間隔は、等間隔にすれば、間隔が他より狭いところがなくなりクロストークを小さくできるが、間隔は±20%程度異なるようにしてもよい。
加圧室10を格子状の配置にして、圧電アクチュエータ基板21を、行および列に沿っ
た外辺を有する矩形状にすると、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じ難くできる。圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、この変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。また、最も外辺に近い加圧室列11の外側にダミー加圧室16のダミー加圧室列が設けられているために、変形の影響をより受け難くできる。加圧室列11に属する加圧室10は等間隔で配置されており、加圧室列11に対応する個別電極25も等間隔で配置されている。加圧室列11は短手方向に等間隔で配置されており、加圧室列11に対応する個別電極25の列も短手方向に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
流路部材4を平面視したとき、1つの加圧室列11に属する加圧室10が、隣接する加圧室列11に属する加圧室10と、液体吐出ヘッド2の長手方向において、重ならないように配置することにより、クロストークを抑制できる。一方、加圧室列11の間の距離を離すと、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度、あるいは複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、隔壁15の幅を副マニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。
1つの副マニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2列の加圧室列11を構成しており、1つの加圧室列11に属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔列9を構成している。2列の加圧室列11に属する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、副マニホールド5bの異なる側に開口している。図4では隔壁15には、2列の吐出孔列9が設けられているが、それぞれの吐出孔列9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側の副マニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接する副マニホールド5bに加圧室列11を介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを小さくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを小さくすることができる。
また、平面視において、加圧室10と副マニホールド5bとが重なるように配置することにより、液体吐出ヘッド2の幅を小さくできる。加圧室10の面積に対する、重なっている面積の割合が80%以上、さらに90%以上にすることで、液体吐出ヘッド2の幅をより小さくできる。また、加圧室10と副マニホールド5bとが重なっている部分の加圧室10の底面は、副マニホールド5bと重なっていない場合と比較して剛性が低くなっており、その差により吐出特性がばらつくおそれがある。加圧室10全体の面積に対する、副マニホールド5bと重なっている加圧室10の面積の割合を、各加圧室10で略同じにすることで、加圧室10を構成する底面の剛性が変わることによる吐出特性のばらつきを少なくすることができる。ここで略同じとは、面積の割合の差が、10%以下、特に5%以下であることを言う。
1つのマニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により加圧室群が構成されており、マニホールド5が2つあるため、加圧室群は2つある。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、短手方向に平行移動させた配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなった部分があるものの、略全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ
基板21と略同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がるディセンダが伸びている。ディセンダは、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室列11内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10と略相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。引出電極25bは、一端部が個別電極本体25aに接続されており、他端部が加圧室10の鋭角部10aを通り、加圧室10の外側で、加圧室10の2つの鋭角部10aを結ぶ対角線を延長した列と重ならない領域に引き出されている。これによりクロストークが低減できる。引出電極25bの形状については、後で詳述する。
また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24とビアホールを介して電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2列形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。
圧電アクチュエータ基板21は、後述のようにビアホールを形成した圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21bを積層し、焼成した後、個別電極25および共通電極用表面電極28を同一工程で形成するのが好ましい。個別電極25と加圧室10との位置ばらつきは吐出特性に大きく影響を与えこと、個別電極25を形成した後、焼成すると圧電アクチュエータ基板21に反りが生じるおそれがあり、反りが生じた圧電アクチュエータ基板21を流路部材4に接合すると、圧電アクチュエータ基板21に応力が加わった状態になり、その影響で変位がばらつくおそれがあることから、個別電極25は、焼成後に形成される。共通電極用表面電極28も同様に反りを生じされるおそれがあることと、個別電極25と同時に形成した方が、位置精度が高くなり、工程も簡略化できるので、個別電極25と共通電極用表面電極28は同一工程で形成される。
このような圧電アクチュエータ基板21を焼成する際に生じるおそれのある、焼成収縮によるビアホールの位置ばらつきは、主に圧電アクチュエータ基板21の長手方向に生じるので、共通電極用表面電極28が偶数個あるマニホールド5の中央、別の言い方をすれば、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央に設けられており、共通電極用表面電極28が圧電アクチュエータ基板21の長手方向に長い形状をしていることにより、ビアホールと共通電極用表面電極28とが位置ずれにより電気的に接続されなくなることを抑制できる。
圧電アクチュエータ基板21には、2枚のフレキシブル基板60が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。そ
の際、圧電アクチュエータ基板21aの引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極(不図示)を形成して接続することで、接続が容易になる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、フレキシブル基板60の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)にける接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、フレキシブル基板60が端からはがれ難くできる。
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置されたマニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21と略同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4kおよびノズルプレート4lである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12およびマニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介してマニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端からマニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細にはマニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくなっている部位であるしぼり6が含まれている。
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4l(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。ノズルプレート4lの孔は、吐出孔8として、流路部材4の外部に開口している径が、例えば10〜40μmのもので、内部に向かって径が大きくなっていくものが開けられている。第4に、マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、副マニホールド5bを構成するように隔壁15が残るように孔が形成されている。各マニホールドプレート4e〜jにおける隔壁15は、マニホールド5となる部分全体を孔にすると、保持できない状態になるので、隔壁15は、ハーフエッチングしたタブで各マニホールドプレート4e〜jの外周と繋がった状態にされる。
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、マニホールド5からの液体の流入口(マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、マニホールド5から上方向に向
かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
圧電アクチュエータ基板21は、圧電体である2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出され部分には接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、フレキシブル基板60に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部100(図1)からフレキシブル基板60を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21b上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、フレキシブル基板60上の別の電極と接続されている。
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極25に対応する加圧室10の体積が変わり、加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路12を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は1.5〜4.5pl(ピコリットル)程度である。
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれがフレキシブル基板60および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部と
して働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホールド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、加圧
室10内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。
<第2の実施形態>
図9,10を用いて液体吐出ヘッド102について説明する。液体吐出ヘッド102は、ヒータ81と押圧部材96との間に断熱材83が配置されている点で液体吐出ヘッド2と異なっており、その他の点では同一であり説明を省略する。なお、同一の部材については同一の符号を付し、以下同様とする。
断熱材83は、ヒータ81上に設けられており、ヒータ81と押圧部材96との間に配置されている。平面視して、断熱材83は、ヒータ81と略同形状をなしており、ヒータ81の全面にわたって断熱材83が設けられている。断熱材83は、平面視して、枠体92の開口92cの内部に配置されており、枠体92とは所定の距離をあけて離間した状態で配置されている。
そのため、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a、ヒータ81、断熱材83、および押圧部材96がこの順に配置されており、押圧部材96が断熱材83を介してヒータ81をヘッド本体2aに押圧している。
断熱材83としては、発泡率の高い海綿体状のものを用いることができ、例えば、メラミンシートを用いることができる。断熱材83の厚みは、2〜5mmとすることにより、
断熱することができるとともに、液体吐出ヘッド2が大型化することを抑えることができる。
液体吐出ヘッド2は、ヒータ81と押圧部材96との間に断熱材83が配置されており、押圧部材96が、断熱材83を介してヒータ81をヘッド本体2aに押圧している。すなわち、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a、ヒータ81、断熱材83、および押圧部材96が、この順に配置されており、押圧部材96が、断熱材83も押圧する構成となっている。それにより、断熱材83を介して、ヒータ81を押圧することができ、ヒータ81とリザーバ40との密着力が低下する可能性を低減させることができる。そのため、液体吐出ヘッド2は、ヒータ81によりリザーバ40を流れる液体を温めることができ、各吐出孔8(図5参照)の吐出特性のばらつきが大きくなる可能性を低減することができる。
このように、押圧部材96が、断熱材83を介してヒータ81を押圧することにより、平板部96aがリザーバ40の上面に対して傾斜した状態で、押圧部材96がリザーバ40を押圧した場合においても、断熱材83が弾性変形することにより、押圧部材96がヒータ81に対して均一に押圧することができる。それにより、局所的にリザーバ40とヒータ81とが剥離する可能性を低減することができ、リザーバ40とヒータ81との密着性を向上させることができる。
また、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、押圧部材96との間に断熱材83が設けられていることから、筐体90の内部の熱がヘッド本体2aに伝わる可能性を低減することができる。特に、液体吐出ヘッド2は、高速印刷に伴ってドライバIC55の温度が上昇し、筐体90の内部が高温になる可能性があるが、断熱材83により断熱することにより、液体吐出ヘッド2が高温になる可能性を低減することができる。
液体吐出ヘッド2は、図9,10に示すように、断熱材83が、平板部96aと突出部96bとにより形成される角部96dを覆うように配置されている。そのため、角部96dとヒータ81とが接触することにより、ヒータ81が破損する可能性を低減することができる。
特に、押圧部材96が、筐体90(図6参照)またはリザーバ40を押圧する際に変形した場合、角部96dが変位してヒータ81を破損させる可能性があるが、液体吐出ヘッド2は、断熱材83がヒータ81を保護するように機能し、ヒータ81が破損する可能性を低減することができる。
また、ヒータ81の厚み、および断熱材83の厚みの和が、枠体92の厚みよりも大きいことが好ましい。それにより、枠体92を介して押圧部材96をリザーバ40に接続すると、断熱材83が厚み方向に圧縮されることとなり、断熱材83がヒータ81へ押圧力を与えることができる。そのため、押圧部材96が断熱材83をより押圧することができる。
また、押圧部材96は、断熱材83を介して、ヒータ81の全面を押圧することが好ましい。それにより、ヒータ81の全面にわたって、ヒータ81とヘッド本体2aとの密着力が低下する可能性を低減することができる。
また、ヒータ81および断熱材83が、枠体92の開口92cの内部に配置されていることが好ましい。さらに、ヒータ81と枠体92と押圧部材96に囲まれた空間に、断熱材83が充填されていることが好ましい。それにより、ヒータ81の密着力が低下することを低減しつつ、ヒータ81に位置ずれが生じる可能性を低減することができる。
なお、ヒータ81と枠体92と押圧部材96に囲まれた空間に、断熱材83が充填されているとは、ヒータ81と枠体92と押圧部材96に囲まれた空間に、断熱材83が隙間なく配置されているのみならず、断熱材83の平面視面積が、開口92cの平面視面積の90%以上占める場合も含む概念である。
また、断熱材83の位置ずれを抑えるために、枠体92の長辺92aおよび短辺92bに、平面視して、開口92cの中央部に向けて突出した凸部を設けてもよい。それにより、枠体92の開口92cに、断熱材83を配置する際に、断熱材83の位置決めを容易にすることができる。また、断熱材83の配置を正確にすることにより、断熱材83の位置ずれを抑制することができ、ヒータ81に対して均一に押圧力を加えることができる。
また、断熱材83は、弾性を有する弾性部材により形成することが好ましい。それにより、ヒータ81を一定の押圧力で押圧することができる。なお、断熱材83とは別に、弾性部材をヒータ81と押圧部材96との間に配置してもよい。それにより、断熱材83を介してヒータ81をより押圧することができる。さらに、弾性部材は、断熱材83と枠体92との間に配置してもよい。それにより、断熱材83の位置決めを容易にすることができる。
また、ヒータ81と断熱材83との間に熱伝導部材を設けてもよい。それにより、リザーバ40へのヒータ81の熱を均一に近づけることができる。熱伝導部材としては、例えば、アルミ箔等の金属箔を用いることができ、例えば、ヒータ81と断熱材83との間の全域にわたって、金属箔を配置することを例示することができる。
<第3の実施形態>
図11,12を用いて液体吐出ヘッド202について説明する。液体吐出ヘッド202は、ヒータ281と、断熱材283と押圧部材296の形状が液体吐出ヘッド102と異なっており、その他の点は同様であるため、説明を省略する。
ヒータ281は、図11(b),12(a),12(b)に示すように、リード電極281aと発熱部281bとを備えている。リード電極281aは、外部に引き出されており、外部に設けられた電源と電気的に接続されている。発熱部281bは、電気抵抗値の高い材料により形成された配線により構成されている。発熱部281bは、ヒータ281の略全面にわたって形成されており、リード電極281aと電気的に接続されている。そのため、リード電極281aに電圧が印加されると、発熱部281bが発熱する。
断熱材283は、平面視して、長手方向の一端が、ヒータ281よりも短く構成されている。押圧部材296は、断熱材283の一端側に、切欠部296cが設けられている。そして、図11(b)に示すように、押圧部材296の切欠部296cにより開口が形成されている。この開口から、ヒータ281のリード電極281aが引き出されている。そして、平面視して、開口の一部に、断熱材283が配置されている。
図12(b)に示すように、ヒータ281は、発熱部281bが、ヘッド本体2a上に設けられており、枠体92の短辺92bに隣接するように、リード電極281aが引き出されている。断熱材283は、ヒータ281の発熱部281bの全面にわたって設けられており、断熱材283の一端は、リード電極281aに接触している。そのため、図12(b)に示すように、リード電極281aは、断熱材283と枠体92とにより挟持される構造となる。
このように、液体吐出ヘッド202は、押圧部材296および枠体92により形成され
た開口から、ヒータ281のリード電極281aが引き出されており、平面視して、開口の一部に断熱材283が設けられている。それにより、リード電極281aが、断熱材283と枠体92とにより固定され、液体吐出ヘッド2を搬送する際に振動が生じた場合においても、リード電極281aが、枠体92との接触を繰り返す可能性を低減することができ、リード電極281aが断線する可能性を低減することができる。
また、液体吐出ヘッド202は、押圧部材296が、断熱材283を押圧した状態で、ヘッド本体2aに固定されているため、断熱材283は、押圧部材296に与えられる押圧力により圧縮され、枠体92にリード電極281aを押圧することができる。つまり、押圧部材296をヘッド本体2aに固定するともに、リード電極281aを枠体92に固定することができる。
なお、断熱材283の長手方向の長さと、ヒータ281の長手方向の長さを略同じ長さとし、リード電極281aを引き出す側の断熱材283の一端を、上方へ向けて折り曲げる構成としてもよい。このように、断熱材283の一端を上方へ向けて折り曲げることにより、押圧部材96の切欠部296cと、リード電極281aとの間に断熱材283を配置することができ、リード電極281aが断線する可能性を低減することができる。また、切欠部296cにより形成された開口を断熱材283が充填する構成となり、断熱性も向上させることができる。
<第4の実施形態>
図13を用いて液体吐出ヘッド302について説明する。液体吐出ヘッド302は、断熱材383の形状が液体吐出ヘッド202と異なっており、その他の点は同様であるため、説明を省略する。
断熱材383は、孔383aと平坦部383bとを備えている。孔383aは、長手方向の一端に設けられており、孔383aと押圧部材296の切欠部296cとが重なるように配置されている。
図13(b)に示すように、孔383aにはヒータ281のリード電極281aが挿通されている。枠体92と押圧部材296とにより形成された開口には、断熱材383の平坦部383bの一部が配置されている。
液体吐出ヘッド302は、断熱材383が、リード電極281aを挿通するための孔383aを備えている。孔383aには、リード電極281aが挿通されており、断熱材383は、押圧部材296により押圧されている。
そのため、孔383aをリード電極281aの径よりも大きく形成した場合においても、押圧力が加えられた断熱材383が変形することにより、孔383aとリード電極281aの隙間を埋めるように作用する。それにより、孔383aとリード電極281aとの隙間を、断熱材383により埋めることができ、ヘッド本体2aと押圧部材296との断熱性を向上させることができる。つまり、孔383aをリード電極281aよりも大きくすることで、液体吐出ヘッド2を組み立てやすくすることができるとともに、ヘッド本体2aと押圧部材296との断熱性を向上させることができる。
また、リード電極281aが、押圧部材296および枠体92に、断熱材383を介して押圧されることとなり、押圧部材296および枠体92に接触することによる断線の生じる可能性を低減することができる。また、断熱材383の孔383aにリード電極281aを挿通するため、ヒータ281と断熱材383との位置合わせを容易にすることができる。
なお、孔383aを1つ設けた例を示したが、リード電極281aが複数ある場合は、孔383aを複数設けてもよく、1つの孔383aに複数のリード電極281aを挿通してもよい。
<第5の実施形態>
図14を用いて液体吐出ヘッド402について説明する。液体吐出ヘッド402は、断熱材483の形状が液体吐出ヘッド102と異なっており、その他の点は同様であるため、説明を省略する。
液体吐出ヘッド402は、断熱材483の平面視幅が、枠体92の開口92cの平面視幅よりも大きい構成となっている。なお、断熱材483の平面視幅が、枠体92の開口92cの平面視幅よりも大きいとは、断熱材483を枠体92の開口92cの内部に配置していない状態で、断熱材483の平面視幅が、枠体92の開口92cの平面視幅よりも大きい状態を意味する。
そして、図14に示すように、枠体92と押圧部材96とにより開口が形成されており、フレキシブル基板60が、枠体92と押圧部材96とにより形成された開口から上方へ引き出されている。そして、フレキシブル基板60は、断熱材483により枠体92に押圧されている。
それにより、液体吐出ヘッド402は、フレキシブル基板60が枠体92と断熱材483により挟持されることとなり、フレキシブル基板60が枠体92近傍で立設することとなる。そのため、押圧部材96を配置しやすくなり、液体吐出ヘッド2の組み立てを容易にすることができる。
また、液体吐出ヘッド402は、断熱材483の平面視幅が、枠体92の開口92cの平面視幅よりも大きい構成であることから、断熱材483が開口92cに収容された場合に、開口92cを挿通するフレキシブル基板60を、枠体92の長辺92aに向けて押圧するように機能する。そのため、押圧部材96を配置しやすくなり、液体吐出ヘッド2の組み立てを容易にすることができる。
また、断熱材483の平面視幅が、枠体92の開口92cの平面視幅よりも大きい構成であることから、押圧部材96の平板部96aと、突出部96bとにより形成される角部96dを覆うように断熱材483を設けることができる。それにより、フレキシブル基板60が角部96dと接触する可能性を低減することができ、フレキシブル基板60の内部に形成された配線が断線する可能性を低減することができる。
なお、液体吐出ヘッド2の組み立ては、例えば以下のように行うことができる。
まず、ヘッド本体2aのリザーバ40に側板94および枠体92をネジ止めする。その際に、圧電アクチュエータ基板21に接続されたフレキシブル基板60は、側板94および枠体92の内側を通るように挿通する。次に枠体92の開口92cにヒータ81を配置して、ヒータ81の全面を覆うように断熱材483を配置する。この時、フレキシブル基板60は、断熱材483により枠体92に押圧されて、立設することとなる。そして、押圧部材96を断熱材483上に配置し、断熱材483を押圧しながら、リザーバ40にネジ止め固定する。その後、ガイドフレーム84、回路基板82、および接続基板80を配置して、回路基板82のコネクタ82aに、フレキシブル基板60を嵌めこみ、最後に筐体本体90aをかぶせることにより作製することができる。
このように、液体吐出ヘッド2は、フレキシブル基板60が、枠体92に接した状態で立設することとなり、製造する際のハンドリング性を向上させることができる。
<第6の実施形態>
図15を用いて液体吐出ヘッド502について説明する。液体吐出ヘッド502は、測温素子584をさらに備えるとともに、ヒータ581の形状が液体吐出ヘッド202と異なっており、その他の点は同様であるため、説明を省略する。
ヒータ581は、リード電極521aと、平坦部521bと、切欠部521cとを備えている。切欠部521cは、平坦部521bに形成されており、長手方向における中央部に配置されている。切欠部521cは、平坦部521bを貫通するように設けられている。切欠部521cには測温素子584が配置されている。
測温素子584は、ヘッド本体2aの温度を測定する機能を有しており、リード電極584aと、素子部584bと、配線部584cとを備えている。素子部584bは、切欠部521cの内部に配置されており、ヘッド本体2a上に設けられている。そのため、素子部584bの周囲は、ヒータ581により取り囲まれている。
測温素子584のリード電極584aは、ヒータ581のリード電極581aに隣り合うように引き出されている。そのため、リード電極581a,584aをまとめて外部に引き出すことができる。配線部584cは、リード電極584aと素子部584bとを電気的に接続している。そして、制御部100(図1参照)が、素子部584bで検知した温度をもとに、ヒータ281を駆動させ、ヘッド本体2aを流れる液体の温度を均一に制御している。
測温素子584としては、例えば、熱電対、あるいはサーミスタを例示することができる。
液体吐出ヘッド502は、ヘッド本体2a上に設けられた測温素子584を備えており、押圧部材296が、測温素子584をヘッド本体2aに押圧している。それにより、測温素子584がヘッド本体2aに押しつけられることとなり、測温素子584とヘッド本体2aとの密着性を向上させることができる。その結果、測温素子584がヘッド本体2aを流れる液体の温度を正確に検知することができ、ヘッド本体2aを流れる液体の温度を均一に制御することができる。それゆえ、液体吐出ヘッド2の各吐出孔8(図5参照)の吐出特性のばらつきが大きくなる可能性を低減することができる。
また、素子部584bは、切欠部521cの内部に配置されており、ヘッド本体2a上に設けられている。そのため、素子部584bの周囲は、ヒータ581により取り囲まれている。そのため、素子部584bの周囲におけるヒータ581の環境を一定にすることができ、正確な温度検知を行うことができる。
なお、ヒータ581に切欠部581cを形成し、切欠部581cに素子部584を収容する例を示したがこれに限定されるものではない。ヒータ581上に測温素子584を配置してもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、第1の実施形態である液体吐出ヘッド2を用いたプリンタ100を示したが、これに限定されるものではなく、液体吐出ヘッド102,202,302,402,502をプリンタ100に用いてもよい。また、液体吐出ヘッド2,102,202,302,402,50
2を組み合わせてもよい。
本明細書では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子30を示したが、これに限られるものでなく、液体加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、例えば、液体加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるもの、あるいはMEM(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたものでも良い。
また、筐体90の内部に回路基板82および接続基板80を設けた例を示したが、必ずしも設ける必要はない。例えば、フレキシブル基板60を筐体90の開口90dまで引き出す構造として、外部と直接接続する構造としてもよい。
また、押圧部材96を平板部96aおよび突出部96bにより構成した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、平板部96aの代わりに断熱材83に向けて湾曲した湾曲部を有するものでもよい。この場合、断熱材83を押圧する押圧力を大きくすることができ、さらにヒータ81が剥離する可能性を低減することができる。
なお、本実施形態では、枠体92を備える液体吐出ヘッド2を用いて説明したが、枠体92を必ず備えてなくともよい。また、枠体92と押圧部材96とにより形成された開口からフレキシブル基板60を挿通する例を示したが、フレキシブル基板60が、枠体92の外側と筐体90との間を挿通してもよい。