図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含む記録装置である(カラーインクジェット)プリンタ1の概略の側面図であり、図1(b)は、概略の平面図である。プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pを搬送ローラ80aから搬送ローラ80bへと搬送することにより、印刷用紙Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部88は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、印刷用紙Pに液滴を着弾させて、印刷用紙Pに印刷などの記録を行なう。
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。本発明の記録装置の他の実施形態としては、液体吐出ヘッド2を、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に往復させるなどして移動させる動作と、印刷用紙Pの搬送を交互に行なう、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
プリンタ1には、印刷用紙Pとほぼ平行するように平板状の(ヘッド搭載)フレーム70が固定されている。フレーム70には図示しない20個の孔が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔の部分に搭載されていて、液体吐出ヘッド2の、液体を吐出する部位が印刷用紙Pに面するようになっている。液体吐出ヘッド2と印刷用紙Pとの間の距離は、例えば0.5〜20mm程度とされる。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
液体吐出ヘッド2は、図1(a)の手前から奥へ向かう方向、図1(b)の上下方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向、例えば、ほぼ直交する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つ液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、印刷用紙Pの幅方向に(印刷用紙Pの搬送方向に交差する方向に)繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、印刷用紙Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
4つのヘッド群72は、記録用紙Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクから液体(インク)が供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群で4色のインクが印刷できる。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。このようなインクを、制御部88で制御して印刷すれば、カラー画像が印刷できる。
プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッドの群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数や、ヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッドの群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度(搬送速度)を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、印刷用紙Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、印刷用紙Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
プリンタ1は、記録媒体である印刷用紙Pに印刷を行なう。印刷用紙Pは、給紙ローラ80aに巻き取られた状態になっており、2つのガイドローラ82aの間を通った後、フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通り、その後2つの搬送ローラ82bの間を通り、最終的に回収ローラ80bに回収される。印刷する際には、搬送ローラ82bを回転させることで印刷用紙Pは、一定速度で搬送され、液体吐出ヘッド2によって印刷される。回収ローラ80bは、搬送ローラ82bから送り出された印刷用紙Pを巻き取る。搬送速度は、例えば、75m/分とされる。各ローラは、制御部88によって制御されてもよいし、人によって手動で操作されてもよい。
記録媒体は、印刷用紙P以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、印刷用紙Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙や裁断された布、木材、タイルなどにしてもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部88が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
また、引用用紙Pは図1(a)に示されているように平面上を搬送する以外に、円筒形上のドラムの上を搬送してもよい。
次に、本発明の液体吐出ヘッド2について説明する。図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した平面図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明
のため図3とは異なる一部の流路を省略した図である。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきしぼり6、吐出孔8、加圧室10などを実線で描いている。また、図4の吐出孔8は、位置を分かりやすくするため、実際の径よりも大きく描いてある。図5は、図3のV−V線に沿った縦断面図である。図6は、図1に示した液体吐出ヘッド2の斜視図である。図7は、図6の液体吐出ヘッド2のX−X線縦断面図であり、図7(b)は、図6の液体吐出ヘッド2から第1側板90b、フレキシブル配線基板60および接続基板66を除いたものを第1側板90b側から見た側面図である。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a、筐体90、および筐体90内においてヘッド本体2aを駆動する駆動信号を伝達する回路や、それらを保持する部材が含まれる。液体吐出ヘッド2は、さらにリザーバ40などを含んでいてもよい。また、ヘッド本体2aは、流路部材4と、変位素子(加圧部)30が作り込まれている圧電アクチュエータ基板21とを含んでいる。
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、共通流路であるマニホールド5と、マニホールド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備え、加圧室10は流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面4−2となっている。また、流路部材4の上面にはマニホールド5と繋がる開口5aを有し、この開口5aにより液体が供給されるようになっている。
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように設けられている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給する信号伝達部であるFPC(Flexible Printed Circuit、フレキシブル配線基板)60が接続されている。図2には、2つのFPC60が圧電アクチュエータ基板21に繋がる状態が分かるように、FPC60の圧電アクチュエータ基板21に接続される付近の外形を点線で示した。圧電アクチュエータ基板21に電気的に接続されている、FPC60に形成されている電極は、FPC60の端部に、矩形状に配置されている。2つのFPC60は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つのFPC60は、中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
筐体90は、金属、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性の高い材料で構成されており、ヘッド本体2aの一部を覆っている。筐体90は、直方体状の形状を有しており、一つの面が開口しており、その開口が(一部はリザーバ40を介して)ヘッド本体2aと接続されている。筺体90は、その開口を下に向けた場合、開口に繋がっている4個の側板と、開口と対向する天板を有している。4個の側板は、対向した2個の側板からなる側板の組2組からなっている。1組の側板は、ヘッド本体2aの長手方向に沿っており、第1側板90bと呼ぶ。他の1組の側板は、ヘッド本体2aの長手方向における両端部にそれぞれ位置しており、第2側板90aaと呼ぶ。筐体90は、天板と第2側版90aaを含む筐体本体90aに、2個の第1側板90bをネジ止めして構成されている。
筐体90には、リザーバ40の一部、(内部)フレーム62、FPC60、ドライバIC(Integrated Circuit)55、配線基板64、接続基板66、および押さえ部67などを収容している。筐体90は、リザーバ40に固定されている金属製のフレームにねじ止めされて固定されている。必要に応じて、筐体90と他の部材との間の生じるおそれのある隙間は、樹脂で塞がれて、液体のミストが筐体90の内部に入り難いようにされる。フレーム62は、筐体90内における、ヘッド本体2aの長手方向の両方の端部に1つずつ配置されており、リザーバ40から上方に向かって伸びている。フレーム62には、配線基板66がねじ止めされて固定されている。
筺体90の天板には接続基板66の外部コネクタ66aを介して信号が入力できるように孔が開いている。制御部88から信号ケーブル(不図示)を介して送られてきた駆動信号は、接続基板66、回路基板64、FPC60およびFPC60に実装されたドライバIC55を通り、後述の圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を駆動し、流路部材4内部の液体を加圧することにより、液滴を吐出する。接続基板66は、筐体90内部を仕切るように、4個の側板付近まで広がっており、天板の孔から侵入するおそれのあるミストが、さらに筐体90の下側に行き難いようにしている。接続基板66には、基本的にはコネクタだけが実装されている。外部コネクタ66aはスルーホール実装し、内部コネクタを表面実装すれば、接続基板66の配線は、ほぼ接続基板66の下側の面だけとなるので、上面にはミストが付着しても、電気的な障害を起こし難い。回路基板64は、例えば、駆動信号を複数の圧電アクチュエータ基板21に分ける他に、駆動信号の整流など行なってもよい。FPC60は可撓性を有する帯状のもので、内部に金属の配線を有し、配線の一部は、FPC60の表面に露出しており、露出した配線により、回路基板64、ドライバIC55および圧電アクチュエータ基板21と電気的に接続される。
ドライバIC55は、駆動信号の処理を行なう際に発熱する。ドライバIC55は、駆動回路などが構成されている能動面側をFPC60に向けて、FPC60にフリップチップ実装されている。ドライバIC55の能動面と反対側の面である裏面は、筐体90の第1側板90bに接しており、熱は第1側板90bを介して外部に排熱される。ドライバIC55の能動面は、FPC60を介して押さえ部67と接している。ドライバIC55は、押さえ部67と第1側板90bとの間に挟まれており、位置が固定されている。第1側板90bは、筐体90内を、ヘッド本体2aの長手方向に伸びており、第2側板90aaに接続されている。より詳細には、押さえ部67は、第1側板90bと第2側板90aaをねじ止めする際に、間に押さえ部67の端部が挟み込まれることで固定される。押さえ部67は、金属のアルミニウムや銅など、熱伝導性の高い材料で構成されており、熱が生じる部分である能動部から熱を、第2側板90aaに伝えて、外部に排熱させる。
ドライバIC55の熱は、能動面で発生する。熱が発生するのは能動面であるが、能動面側は、フリップチップ実装部およびFPC60の熱伝導性が低いので、裏面に伝わる熱が最も多くなり、ついで能動面が多くなる。つまり、ドライバIC55を、裏面と能動面とで挟み、両方の面から排熱することで、ドライバIC55の冷却を効率よく行なうことができる。裏面の熱は、第1側板90bに広がって排熱され、能動面の熱は、押さえ部67を伝って第2側板90aa(一部は第1側板90b)に広がって排熱される。押さえ部67は、基本的には、フレーム62や、リザーバ40と直接繋がっていないので、筐体90内に熱が籠り難く、熱は速やかに外部に排熱される。
ただし、配線基板64にレギュレータや、他のICなどの発熱部品が実装されている場合、それらと押さえ部67を接続して、それらの熱も第2側板90aaに排熱するようにしてもよい。
リザーバ40は、ヘッド本体2aの長手方向の両端部で、ヘッド本体2aと接合されている。リザーバ40には、開口40aを通じて外部から供給された液体を分岐させて、2つの開口5aに送る流路が設けられている。これにより、2つの開口5aに液体を安定して供給できる。分岐してからの流路長をほぼ等しくすることで、外部から供給される液体の温度変動や圧力変動が、マニホールド5の両端の開口5aに、少ない時間差で伝わるため、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のばらつきをより少なくできる。リザーバ40にダンパを設けることで、さらに液体の供給が安定化できる。さらに、液体中の異物などが流路部材4に向かうのを抑制するように、フィルタを設けてもよい。またさらに、流路部材4に向かう液体の温度を安定化させるようにヒータを設けてもよい。
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に接続された変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
流路部材4の内部には2つのマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に延びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口しているマニホールドの開口5aが形成されている。
また、マニホールド5は、長さ方向の中央部分、少なくとも加圧室10に繋がる流路が配置されている範囲において、幅方向に間隔を開けて設けられた隔壁15で仕切られている。隔壁15は、加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分では、マニホールド5と同じ高さを有し、マニホールド5を複数の副マニホールド5bに完全に仕切っている。このようにすることで、平面視したときに、隔壁15と重なるように、吐出孔8および吐出孔8から加圧室10に繋がっている流路を設けることができる。
複数に分けられた部分のマニホールド5を副マニホールド5bと呼ぶことがある。本実施形態においては、マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。また、1つのマニホールド5には、7つの隔壁15が設けられており、8つの副マニホールド5bに分けられている。副マニホールド5bの幅は、隔壁15の幅より大きくなっており、これにより副マニホールド5bに多くの液体を流すことができる。また、7つの隔壁15は、幅方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、マニホールド5の両端において、幅方向の中央に近い隔壁15ほど、隔壁15の端がマニホールド5の端に近くなっている。これにより、マニホールド5の外側の壁により生じる流路抵抗と、隔壁15により生じる流路抵抗との間のバランスがとれ、各副マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる部分である個別供給流路14が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。この個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすれば、吐出ばらつきを低減できる。
流路部材4は、複数の加圧室10が2次元的に広がって形成されている。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形あるいは楕円形状の平面形状を有する中空の領域である。
加圧室10は、1つの副マニホールド5bと個別供給流路14を介して繋がっている。1つの副マニホールド5bに沿うようにして、この副マニホールド5bに繋がっている加圧室10の行である加圧室行11が、副マニホールド5bの両側に1列ずつ、合計2列設けられている。したがって、1つのマニホールド5に対して、16行の加圧室11が設けられており、ヘッド本体2a全体では32行の加圧室行11が設けられている。各加圧室行11における加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。
各加圧室行11の端にはダミー加圧室16が設けられている。このダミー加圧室16は、マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32行の加圧室行11の外側には、ダミー加圧室16が直線状に並んだダミー加圧室行が設けられている。このダミー加圧室16は、マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がっていない。これらのダミー加圧室16により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくでき
る。なお、周囲の構造の差の影響は、距離の近い、長さ方向に隣接する加圧室10の影響が大きいため、長さ方向には、両端にダミー加圧室16を設けてある。幅方向については、影響が比較的小さいため、ヘッド本体21aの端に近い方のみに設けている。これにより、ヘッド本体21aの幅を小さくできる。
1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は、矩形状の圧電アクチュエータ基板21の各外辺に沿った行および列をなす格子上に配置されている。これにより、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じ難くできる。圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、この変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。また、最も外辺に近い加圧室行11の外側にダミー加圧室16のダミー加圧室行が設けられているために、変形の影響をより受け難くできる。加圧室行11に属する加圧室10は等間隔で配置されており、加圧室行11に対応する個別電極25も等間隔で配置されている。加圧室行11は短手方向に等間隔で配置されており、加圧室行11に対応する個別電極25の行も短手方向に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
本実施形態では、加圧室10は格子状に配置したが、隣接する加圧室列11に属する加圧室10の間に角部が位置するように千鳥状に配置してもよい。このようにすると、隣接加する圧室行11に属する加圧室10の間の距離がより長くなるので、よりクロストークを抑制できる。
加圧室行11をどのように並べるかによらず、流路部材4を平面視したとき、1つの加圧室行11に属する加圧室10が、隣接する加圧室行11に属する加圧室10と、液体吐出ヘッド2の長手方向において、重ならないように配置することにより、クロストークを抑制できる。一方、加圧室行11の間の距離を離すと、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度や、複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、隔壁15の幅を副マニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。
1つの副マニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2列の加圧室行11を成しており、1つの加圧室行11に属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔行9を成している。2列の加圧室行11に属する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、副マニホールド5bの異なる側に開口している。図4では、隔壁15には、2行の吐出孔行9が設けられているが、それぞれの吐出孔行9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側の副マニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接する副マニホールド5bに加圧室行11を介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを少なくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを少なくすることができる。
また、平面視において、加圧室10と副マニホールド5bとが重なるように配置することにより、液体吐出ヘッド2の幅を小さくできる。加圧室10の面積に対する、重なっている面積の割合が80%以上、さらに90%以上にすることで、液体吐出ヘッド2の幅をより小さくできる。また、加圧室10と副マニホールド5bとが重なっている部分の加圧室10の底面は、副マニホールド5bと重なっていない場合と比較して剛性が低くなって
おり、その差により吐出特性がばらつくおそれがある。加圧室10全体の面積に対する、副マニホールド5bと重なっている加圧室10の面積の割合を、各加圧室10で略同じにすることで、加圧室10を構成する底面の剛性が変わることによる吐出特性のばらつきを少なくすることができる。ここで略同じとは、面積の割合の差が、10%以下、特に5%以下であることを言う。
1つのマニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により加圧室群が構成されており、マニホールド5が2つあるため、加圧室群は2つある。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、短手方向に平行移動させたに配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなった部分があるものの、ほぼ全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がる流路が伸びている。流路は、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室行11内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図4に示した仮想直線のRの範囲に、各マニホールド5に繋がっている16個の吐出孔8、全部で32個の吐出孔8が、1200dpiの等間隔となっているということである。これにより、すべてのマニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に1200dpiの解像度で画像が形成可能となる。また、1つのマニホールド5に繋がっている1個の吐出孔8は、仮想直線のRの範囲で600dpiの等間隔になっている。これにより、各マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で2色の画像が形成可能となる。この場合、2つの液体吐出ヘッド2を用いれば、600dpiの解像度で4色の画像が形成可能となり、600dpiで印刷可能な液体吐出ヘッドを用いるよりも、印刷精度が高くなり、印刷のセッティングも簡単にできる。なお、ヘッド本体2aの短手方向に並んでいる1列の加圧室列に属する加圧室10から繋がっている吐出孔8で、仮想直線のRの範囲がカバーされている。
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24とビアホールを介して電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2列形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。
圧電アクチュエータ基板21は、後述のようにビアホールを形成した圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21bを積層し、焼成した後、個別電極25および共通電極用表面電極28を同一工程で形成するのが好ましい。個別電極25と加圧室
10との位置ばらつきは吐出特性に大きく影響を与えること、個別電極25を形成した後、焼成すると圧電アクチュエータ基板21に反りが生じるおそれがあり、反りが生じた圧電アクチュエータ基板21を流路部材4に接合すると、圧電アクチュエータ基板21に応力が加わった状態になり、その影響で変位がばらつくおそれがあることから、個別電極25は、焼成後に形成される。共通電極用表面電極28も同様に反りを生じされるおそれがあることと、個別電極25と同時に形成した方が、位置精度が高くなり、工程も簡略化できるので、個別電極25と共通電極用表面電極28は同一工程で形成される。
このような圧電アクチュエータ基板21を焼成する際に生じるおそれのある、焼成収縮によるビアホールの位置ばらつきは、主に圧電アクチュエータ基板21の長手方向に生じるので、共通電極用表面電極28が偶数個あるマニホールド5の中央、別の言い方をすれば、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央に設けられており、共通電極用表面電極28が圧電アクチュエータ基板21の長手方向に長い形状をしていることにより、ビアホールと共通電極用表面電極28とが位置ずれにより電気的に接続されなくなることを抑制できる。
圧電アクチュエータ基板21には、2枚のFPC60が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。その際、圧電アクチュエータ基板21の引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極を形成して接続することで、接続が容易になる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、FPC60の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)における接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、FPC60が端からはがれ難くできる。
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置されたマニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4kおよびノズルプレート4lである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12およびマニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。加圧室10は流路部材4の上面に、マニホールド5は流路部材4の内部の下面側に、吐出孔8は流路部材4の下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、ヘッド本体2aには、加圧室10を介してマニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端からマニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細にはマニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくな
っている部位であるしぼり6が含まれている。
第3に、加圧室10の個別供給路14が繋がっている端と反対の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔である。この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称されることがある。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4l(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。
第4に、マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、副マニホールド5bを構成するように隔壁15となる仕切り部が残るように孔が形成されている。各マニホールドプレート4e〜jにおける仕切り部は、ハーフエッチングした支持部17で各マニホールドプレート4e〜jと繋がった状態にされる。
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、マニホールド5からの液体の流入口(マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。加圧室10からディセンダに入った液体は、水平方向にも移動しつつ、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8に至って、外部に吐出される。
図3では、しぼり6となる部位を含むアパーチャプレート4cの孔(以下でしぼりとなる孔ということがある)は、同じ副マニホールド5bから繋がっている他の加圧室10とわずかに重なるようになっている。しぼり6となる部位を含むアパーチャプレート4cの孔は、平面視した場合に、副マニホールド5b内に含まれるように配置すれば、しぼり6をより密集して配置できるので好ましい。しかし、そのようにするとしぼり6となる孔全体が、副マニホールド5b上の、他の部位と比較して厚さの薄い部分に配置されることになり、周囲からの影響を受け易くなってしまう。そのような場合、平面視したときに、しぼり6となる孔が、該孔に直接的に繋がっている加圧室10以外の加圧室10と重ならないようにすれば、しぼり6となる孔が副マニホールド5b上の薄い部位に配置されていても直上にある他の加圧室10からの振動の影響を直接的に受け難くできる。このような配置は、しぼり6となる孔のあるプレート(複数のプレートで構成されている場合は、それらの内で最も上のプレート)と加圧室10となる孔のあるプレート(複数のプレートで構成されている場合は、それらの内で最も下のプレート)との間のプレートが1枚であって、振動が伝わり易い場合に、特に必要とされる。また、しぼり6となる孔のあるプレートと加圧室10となる孔のあるプレートとの間の距離が200μm以下、さらには100μm以下である場合に、特に必要とされる。重ならないように配置するには、例えば、図3に示したしぼり6となる孔の角度をヘッド本体2aの短手方向に沿った方向に近づけるか、しぼり6となる孔の一端を少し短くするなどすればよい。
圧電アクチュエータ基板21は、圧電体である2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、FPC60に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部88からFPC60を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内のすべての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21b上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、FPC60上の別の電極と接続されている。
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極25に対応する加圧室10の体積が変わり、加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路12を通じて、対応する吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層体中には、図5(a)に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって吐出口8から吐出される液体の量は1.5〜4.5pl(ピコリットル)程度である。
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれがFPC60および配線を介して、個別に制御部88に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部88により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下、高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下、低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホール
ド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、
加圧室10内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行なわれる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり、好ましい。
図8は、本発明の他の液体吐出ヘッド2のドライバIC55付近の部分縦断面図である。図8に示した液体吐出ヘッド2の基本的な構成は、図2〜7で示した液体吐出ヘッド2と同じであり、差異の少ない部位については、同じ符号を付けて説明を省略する。また。図8の部分縦断面図は、図7(a)に示した断面図と同じ部分の断面であり、図7(a)に示されているドライバIC55と同じ部分の付近を示している。
ドライバIC55は、押さえ部167と第1側板90bとに挟まれている。押さえ部167はヘッド本体2aの長手方向に伸びており、両端部で第2側板90aaと接続されている。
押さえ部167の長手方向に直交する断面はL字状になっており、ドライバIC55を押さえる面が変形し難くなっており、ドライバIC55をより確実に押さえつけられるようになっている。断面形状は、コの字状、すなわちドライバIC55を押さえる面の上側と下側の両端からそれぞれ、その面から支える面が立ち上がるようにしてもよい。さらに、断面形状は、中空の長方形状にしてもよい。さらに、断面が環状の押さえ部167の中に流体(液体や気体)を流すことで排熱するようにしてもよい。流体は、一方の第2側板90aaから入れて、他方の第2側板90aaから出すようにすれば、液体吐出ヘッド2の幅を大きくせずに、流体による排熱が可能になる。
押さえ部167の表面の、ドライバIC55と(FPC60を介して)接している部分以外の面の一部は、押さえ部コーティング層167aで覆われている。具体的には、押さえ部167の長手方向に沿っている面の中で、ドライバIC55と接している面以外の面は、押さえ部コーティング層167aで覆われている。押さえ部コーティング層167aは、押さえ部167よりも熱伝導率が小さくなっている。これにより、コーティング層167aの表面の温度が押さえ部167よりも低くなり、対流や輻射によって筐体90内の温度が高くなることが抑制できる。コーティング層167aにより、押さえ部167の表面から外に熱が出にくいため、熱は、押さえ部167を長手方向に伝わり易くなり、押さえ部167を伝って、第2側板90aaを介して、外部に排熱されやすくなる。コーティング層167aは、例えば、ウレタン、シリコーン、メラニンなどの樹脂であり、両面テープなどで押さえ部167に貼り付けてもよいし、一体成型してもよい。
筐体90の内壁のドライバIC55が接触している部分以外の一部も、筐体内壁コーティング層90cで覆われている。図8では、第1側板90bの内側部分だけを図示しているが、筐体90の、ドライバIC55が接触している部分以外の内壁全体に形成してもよい。筐体内壁コーティング層90cは、筐体90よりも熱伝導率が小さくなっている。これにより、コーティング層90cの表面の温度が筐体90よりも低くなり、対流や輻射によって筐体90内の温度が高くなることが抑制できる。コーティング層90cは、例えば、ウレタン、シリコーン、メラニンなでの樹脂であり、両面テープなどで筐体90に貼り付けてもよいし、一体成型してもよい。
押さえ部167とFPC60との間には、第1伝熱材68が配置されている。第1伝熱材68は、熱伝導率が高く、弾性があるものを用いる。熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であるのは好ましく、硬度が小さいか、ヤング率が小さいものが好ましい。これにより、FPC60から押さえ部167への熱伝導が高くなり、ドライバIC55からの排熱がより効率よくできる。また、第1伝熱材68は、金属粉末などを含ませるなどして、導電性のあるものを用いるのが好ましい。配線基板64などに実装されている電子部品などから発生するノイズの影響をシールド効果により低減することができる。ドライバIC55の能動面に近い位置に配置されている第1伝熱材68でシールドすることになるので、ノイズ抑制の効果を高くできる。また、第1伝熱材68は、60℃程度までの温度で溶融したり、内容成分が抽出しないものであるのが好ましい。第1伝熱材68の一部が液状化した場合、FPC60を伝って、圧電アクチュエータ基板21に到達して不具合を起こすおそれがあるからである。
第1側板90bとドライバIC55との間には、第2伝熱材69が配置されている。第2伝熱材69は、熱伝導率が高く、弾性があるもの用いる。熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であるのは好ましく、硬度が小さいか、ヤング率が小さいものが好ましい。これにより、ドライバIC55から第1側板90bへの熱伝導が高くなり、ドライバIC55からの排熱がより効率よくできる。また、第2伝熱材69があることで、第1側板90bが金属の場合など、ドライバIC55が直接接触する際にドライバIC55の保護にもなり、ドライバIC55の保護可能となる。更にまた、第2伝熱材69は、金属粉末などを含ませるなどして、導電性のあるものを用いるのが好ましい。配線基板64などに実装されている電子部品などから発生するノイズの影響をシールド効果により低減することができる。また、第2伝熱材69は、60℃程度までの温度で溶融したり、内容成分が抽出しないものであるのが好ましい。第2伝熱材69の一部が液状化した場合、FPC60を伝って、圧電アクチュエータ基板21に到達して不具合を起こすおそれがあるからである。
第2伝熱材69は、熱伝導率の高いものが用いられるが、現実的には、金属製の筐体90の熱伝導率の方が高く、隙間(熱伝導の低い空気)をできるだけ少なく接触させることによる、熱伝導性の向上の方が大きく影響する。そのため、第2電熱材69と筐体内壁コーティング層90cは同じ材質にしてもよい。その場合、ドライバIC55の接触する部分を含めて、その周囲を筐体内壁コーティング層90cで覆ってもよいし、筐体90の内壁全体を覆ってもよい。
ドライバIC55から第1側板90bへの排熱効率を高くするためには、第1側板90bのドライバIC55に接触している部分の平面度が小さいことが好ましく、0.1mm以下であるのが好ましい。また、第1側板90bのドライバIC55に接触している部分の表面粗さは小さいことが好ましく、表面粗さRaは1.6μm以下であることが好ましい。
また、他の実施形態として、筐体90内に、ドライバIC55を挟んでいる挟み部を設
けて、挟み部を筐体90に接続して、ドライバIC55の熱を筐体90に伝えるようにしてもよい。
挟み部は、ドライバIC55の能動面と、能動面の反対側の面である裏面とを挟むようにすれば、効率的に排熱することができる。挟み部は、例えばヘッド本体2aの長手方向に伸びる形状であり、その両端部のそれぞれで第2側面90aaと接続し、さらに、両端部の間で第1側板90bと接続するようにすれば、多くの側板に熱を伝えることができて効率的に排熱できる。挟み部と第1側板90bとの接続は、第1側板90bを、ヘッド本体2aの長手方向にわたって連続的に接続してもよいし、略等間隔に断続的に接続してもよい。このようにすれば、第1側板90bに熱を広く均等化して伝えることができ、外部への排熱効率を高くできる。
挟み部の中に流体を流すことで排熱する場合、挟み部は第1側版90bには接続せずに、一方の第2側板90aaと接続している部分から、他方の第2側板90aaに接続している部分の間を流体に流せば、筐体90への熱伝導を少なくして、流体による排熱ができるので好ましい。
挟み部においても、ドライバIC55と接している部分以外の表面を、挟み部よりも熱伝導性の低い挟み部コーティング層で覆うことで、筐体90内温度上昇を抑制できる。筐体90も、筐体内壁コーティング層90cで覆ってもよい。