次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。尚、図1に示す搬送方向を前後方向と定義する。水平面と平行、且つ、搬送方向と直交する方向を左右方向と定義する。また、搬送方向及び左右方向と直交する方向を上下方向と定義する。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
<プリンタの概略構成>
図1に示すように、プリンタ1は、筐体2内に収容されたプラテン3、インクジェットヘッド4、2つの搬送ローラ5,6、及び、制御装置7等を備えている。
プラテン3は、その上面において、2つの搬送ローラ5、6によって搬送される記録媒体である記録用紙100を支持する。2つの搬送ローラ5,6は、このプラテン3に対して後側と前側にそれぞれ配置されている。2つの搬送ローラ5,6は、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン3上の記録用紙100を前方へ搬送する。
インクジェットヘッド4は、プラテン3の上方において、左右方向に記録用紙100の全長にわたって延びた、いわゆるラインヘッドであり、画像記録時には、その位置が固定された状態で記録用紙100に対してインクを吐出する。インクジェットヘッド4には、図示しないインクタンクから4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクが供給される。つまり、インクジェットヘッド4は、4色のインクを吐出可能なインクジェットヘッドである。
図2に示すように、インクジェットヘッド4は、8つのヘッドユニット11a~11h(以降、ヘッドユニット11a~11hを区別しない場合には、「ヘッドユニット11」と称す。)、支持部材12、共通ヒートシンク13、及び個別ヒートシンク14を備えている。
8つのヘッドユニット11は、左右方向に配列されており、互いに同じ構造を有する。8つのヘッドユニット11のうちの4つのヘッドユニット11a,11c,11e,11gが、搬送方向において前側に配置されており、他の4つのヘッドユニット11b,11d,11f,11hが搬送方向において後側に配置されている。したがって、8つのヘッドユニット11は、左右方向に沿って2列の千鳥状に配置されている。
ここで、左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11(例えば、ヘッドユニット11aとヘッドユニット11b)について着目する。隣接する2つのヘッドユニット11は、前後方向にずれて配置されている。また、左側のヘッドユニット11の後述するユニット本体部20の右端部と、右側のヘッドユニット11のユニット本体部20の左端部とは前後方向に沿って並んだ状態となっている。つまり、隣接する2つのヘッドユニット11の左右方向における互いに隣接する端部同士は、左右方向に関して同じ位置に配置されている。
図3に示すように、各ヘッドユニット11は、その下面に、左右方向に配列された複数のノズル15から構成される4つのノズル列を有する。4つのノズル列は前後方向に並んで配置されている。この4つのノズル列は、イエローのインクを吐出するノズル列16Yと、マゼンタのインクを吐出するノズル列16Mと、シアンのインクを吐出するノズル列16Cと、ブラックのインクを吐出するノズル列16Kとからなる。これら4つのノズル列は、搬送方向上流側(後側)から、ノズル列16Y、ノズル列16M、ノズル列16C、ノズル列16Kの順に並んでいる。
支持部材12は、SUS430などの比較的剛性が高い金属材料からなる。支持部材12は、水平面と平行、且つ、左右方向に延びた略矩形の板状体であり、その両端が筐体2に固定されている。そして、支持部材12は、8つのヘッドユニット11を、上述の位置関係となるように支持する。また、支持部材12は、共通ヒートシンク13を支持する。
共通ヒートシンク13、及び、個別ヒートシンク14は、8つのヘッドユニット11の後述するドライバIC52を放熱しつつ、これらヘッドユニット11のドライバIC52間の温度を均熱するためのヒートシンクである。共通ヒートシンク13は、8つのヘッドユニット11に共通のヒートシンクである一方で、個別ヒートシンク14は、ヘッドユニット11毎に個別に設けられたヒートシンクである。
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)を備える。また、制御装置7は、PC等の外部装置8とデータ通信可能に接続されており、外部装置8から送られた画像データに基づいて、プリンタ1の各部を制御する。
より具体的には、制御装置7は、搬送ローラ5,6を駆動するモータを制御して、2つの搬送ローラ5,6に記録用紙100を搬送方向に搬送させる。また、これとともに、制御装置7は、インクジェットヘッド4を制御して記録用紙100に向けてインクを吐出させる。これにより、記録用紙100に画像が記録される。
<ヘッドユニットの詳細構成>
次に、ヘッドユニット11の構成について詳細に説明する。図4~図9に示すように、ヘッドユニット11は、ユニット本体部20、及び2つのCOF21(Chip On Film)等を備えている。
(ユニット本体部)
図4に示すように、ユニット本体部20は、流路部材31、4つのアクチュエータ32、リザーバ形成部材33等を備えている。
流路部材31は、シリコンで形成された平板状の部材である。図4に示すように、流路部材31の下面には複数のノズル15が形成されている。一方で、流路部材31の上面には、リザーバ形成部材33からインクが供給される4つのインク供給口(図示省略)が形成されている。また、流路部材31の内部には、4色のインク色に対応する4つのインク流路41が形成されている。各インク流路41は、インク供給口と連通し、左右方向(図4の紙面垂直方向)に延びるマニホールド41aと、マニホールド41aと連通する複数の圧力室41bを含む。各圧力室41bはノズル15と連通している。また、各インク流路41の複数の圧力室41bは、左右方向に配列されており、1つの圧力室列を構成している。すなわち、流路部材31には、4色のインク色に対応する4つの圧力室列が形成されている。
4つのアクチュエータ32は、流路部材31の上面に前後方向に並んで配置されている。4つのアクチュエータ32は、4色のインク色に対応している。換言すれば、4つのアクチュエータ32は、4つの圧力室列に対応している。各アクチュエータ32は、対応する圧力室列の複数の圧力室41bを覆うように流路部材31に形成された絶縁膜と、この絶縁膜の上面の、複数の圧力室41bと重なる位置に配置された複数の圧電素子を有する。アクチュエータ32は、後述するドライバIC52により電圧が印加されたときに、各圧電素子の逆圧電効果による変形で圧力室41bの体積を変化することで、圧力室41b内のインクに、それぞれノズル15から吐出するための吐出エネルギーを付与する。
前側2つのアクチュエータ32からは、配線(不図示)が前方に延びており、当該配線を介して、前側2つのアクチュエータ32は後述するCOF21aに電気的に接続されている、一方で、後側2つのアクチュエータ32からは、配線(不図示)が後方に延びており、当該配線を介して、後側2つのアクチュエータ32は後述するCOF21bに電気的に接続されている。
リザーバ形成部材33は、アクチュエータ32を挟んで、流路部材31と反対側(上側)に配置され、アクチュエータ32の上面に接合されている。リザーバ形成部材33は、例えば、金属材料や合成樹脂材料で形成された略直方体状の部材である。
リザーバ形成部材33の上半部には、4色のインクに対応する4つのリザーバ45(図4では1つのリザーバ45のみを図示)が左右方向に並んで形成されている。この4つのリザーバ45それぞれの上部には、チューブ接続部46が形成されている。4つのリザーバ45は、チューブ接続部46に接続されるチューブ(図示省略)を介して、それぞれインクタンクに接続されている。
リザーバ形成部材33の下半部には、4つのリザーバ45それぞれから下方に延びる4つのインク供給流路47が形成されている。各インク供給流路47は、流路部材31のインク供給口とそれぞれ連通している。これにより、インクタンクのインクは、リザーバ45、及び、インク供給流路47を介して、複数の圧力室41bに供給される。
リザーバ形成部材33の前面壁33aには、左右方向に沿って溝33a1が形成されており、この溝33a1に弾性部材68aが嵌め設けられている。リザーバ形成部材33の後面壁33bにも、左右方向に沿って溝33b1が形成されており、この溝33b1に弾性部材68bが嵌め設けられている。弾性部材68a,68bは、スポンジやゴム等から構成されており、左右方向を長手方向とする長尺な外形形状を有する。このように、本実施形態では、弾性部材68a,68bを嵌めるための溝33a1,33b1がリザーバ形成部材33に形成されているため、限られたスペースで弾性部材68a,68bの厚みを大きくすることができ、弾性部材68a,68bの弾性力を大きくすることができる。なお、リザーバ形成部材33の溝33a1,33b1は必須ではなく、例えば、弾性部材68a,68bの厚みが薄い場合には、リザーバ形成部材33に溝33a1,33b1が形成されていなくてもよい。
また、図6~図9に示すように、リザーバ形成部材33の左面壁33cの前端部及び後端部には、左方に突出した係合部65a,66aがそれぞれ形成されている。リザーバ形成部材33の右面壁33dの前端部及び後端部には、右方に突出した係合部65b,66b(図9参照)がそれぞれ形成されている。これら係合部65a,65b,66a,66bの上下方向の高さ位置は同じである。左面壁33cの前端部に形成された係合部65aは、後方に向かうに従い左側に傾斜する傾斜面と、当該傾斜面と左面壁33cとを接続する左右方向に沿って延びる背面とを有する、平面視で直角三角形状の突起である。なお、係合部65bは、前後方向に沿った線に対して係合部65aと線対称となる形状の突起である。係合部66aは、左右方向に沿った線に対して係合部65aと線対称となる形状の突起である。また、係合部66bは水平面(左右方向及び前後方向と平行な面)において係合部65aを180度回転させた形状と同一形状の突起である。変形例として、係合部65a,65b,66a,66bの形状は、爪状の形状であってもよい。
また、リザーバ形成部材33の左面壁33cには、係合部65a,66aの形成位置に対して下方に離間した位置において、左方に突出して前後方向に沿って延びるリブ67aが形成されている。同様に、リザーバ形成部材33の右面壁33dには、係合部65b,66bの形成位置に対して下方に離間した位置において、右方に突出して前後方向に沿って延びるリブ67bが形成されている。
(COF)
図4に示すように、2つのCOF21は、それぞれ、配線部材であるフレキシブル基板51と、フレキシブル基板51に実装された、2つのドライバIC52及び複数の回路素子53とを有する。
2つのCOF21のうちの一方のCOF21aは、そのフレキシブル基板51の端部が、前側2つのアクチュエータ32から前方に延びる配線に電気的に接続されている。そして、このCOF21aのフレキシブル基板51は、アクチュエータ32の接続位置から前方へと引き出された後、上方へ折り返されて、リザーバ形成部材33の前面壁33aに沿って上方へ延び、制御装置7へと接続されている。フレキシブル基板51における、この前面壁33aに沿って上方へ延びている部分の前面に、2つのドライバIC52及び複数の回路素子53が設けられている。つまり、COF21aの2つのドライバIC52及び複数の回路素子53は、ユニット本体部20に対して前側に配置されている。なお、複数の回路素子53それぞれの前端位置は、フレキシブル基板51の前面よりも前側であり、且つ、ドライバIC52の前端位置よりも前側に配置されている。
2つのCOF21のうちの他方のCOF21bは、そのフレキシブル基板51の端部が、後側2つのアクチュエータ32から後方に延びる配線に電気的に接続されている。そして、このCOF21bのフレキシブル基板51は、アクチュエータ32の接続位置から後方へと引き出された後、上方へ折り返されて、リザーバ形成部材33の後面壁33bに沿って上方へ延び、制御装置7へと接続されている。フレキシブル基板51における、この後面壁33bに沿って上方へ延びている部分の後面に、2つのドライバIC52及び複数の回路素子53が設けられている。つまり、COF21bの2つのドライバIC52及び複数の回路素子53は、ユニット本体部20に対して後側に配置されている。なお、複数の回路素子53それぞれの後端位置は、フレキシブル基板51の後面よりも後側であり、且つ、ドライバIC52の後端位置よりも後側に配置されている。
各COF21が備える2つのドライバIC52は、それぞれ、左右方向を長手方向とする直方体形状を有しており、左右方向に並んで配置されている。これらドライバIC52は、制御装置7から送られてきた制御信号に基づいて、アクチュエータ32を駆動するための駆動信号を生成して出力する。また、複数の回路素子53は、ノイズ低減用の抵抗やコンデンサなどの回路素子である。
以上のように、1つのヘッドユニット11は、各COF21に2つずつドライバIC52が設けられることで、計4つのドライバIC52を備えている。これら各ドライバIC52は、4列のノズル列16Y,16M,16C,16Kのうちの2列のノズル列に対応しており、対応する2列のノズル列に属するノズル15から液体を吐出させるアクチュエータ32を駆動する。つまり、4つのドライバIC52は、それぞれ2色のインク色に対応付けられている。
本実施形態では、ヘッドユニット11に対して前側に配置される、COF21aの2つのドライバIC52は、いずれも、前側2列のノズル列16Y,16Mに対応している。一方で、ヘッドユニット11に対して後側に配置される、COF21bの2つのドライバIC52は、いずれも、後側2列のノズル列16C,16Kに対応している。
また、図2に示すように、ヘッドユニット11a,11c,11e,11gにおける、ユニット本体部20に対して後側に配置される2つのドライバICのうちの少なくとも1つのドライバIC52は、その一部が左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11のユニット本体部20に前後方向に関して挟まれている。例えば、ヘッドユニット11aのユニット本体部20に対して後側に配置される2つのドライバICのうちの右側のドライバICは、その一部がヘッドユニット11aのユニット本体部20、及び、ヘッドユニット11bのユニット本体部20に前後方向に関して挟まれている。同様に、ヘッドユニット11b,11d,11f,11hにおける、ユニット本体部20に対して前側に配置される2つのドライバICのうちの少なくとも1つのドライバIC52は、その一部が左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11のユニット本体部20に前後方向に関して挟まれている。
ところで、ドライバIC52で発生した熱が、アクチュエータ32や流路部材31に伝わると、アクチュエータ32の動作不良や、粘度変化による吐出特性の変化など、ヘッドユニット11のインク吐出動作に様々な悪影響が及ぶ。また、インクジェットヘッド4では、ヘッドユニット11毎に駆動態様が異なるため、ドライバIC52の発熱量もヘッドユニット11毎に異なることになる。このようにドライバIC52の温度がヘッドユニット11毎に異なると、インクの吐出態様にもヘッドユニット11間で差が生じるため、記録用紙100に記録される画像に濃度ムラが生じて、記録品質が劣化しうる。例えば、隣接する2つのヘッドユニット11のドライバIC52間の温度が異なっている場合には、記録用紙100上において、これら2つのヘッドユニット11それぞれにより形成される画像領域の繋ぎ目部分での濃度ムラが目立つ。
そこで、本実施形態では、共通ヒートシンク13、及び個別ヒートシンク14により、各ドライバIC52の熱を放熱しつつ、8つのヘッドユニット11のドライバIC52間の温度差を小さくするように構成されている。以下、共通ヒートシンク13、及び個別ヒートシンク14について詳細に説明する。
<個別ヒートシンクの詳細構成>
図2に示すように、個別ヒートシンク14は、熱伝導率の高い金属やセラミックス等で形成された部材であり、各ヘッドユニット11に対して2つずつ設けられる。以下、1つのヘッドユニット11に設けられる2つの個別ヒートシンク14a,14bについて説明する。また、以下では、個別ヒートシンク14の後述する平板部61が、鉛直面と平行に配置されているものとして説明する。
1つのヘッドユニット11に設けられる2つの個別ヒートシンク14のうちの、一方の個別ヒートシンク14aはヘッドユニット11に対して前側に配置され、他方の個別ヒートシンク14bはヘッドユニット11に対して後側に配置される。
図5~図9に示すように、個別ヒートシンク14aは、リザーバ形成部材33の前面壁33aに沿って左右方向に延在する矩形状の平板部61と、平板部61の左右方向両端部からそれぞれ後方に延出する側板部62,63とから構成されている。平板部61は、COF21aの2つのドライバIC52を覆うように配置されている。そして、平板部61の後面は、COF21aの2つのドライバIC52と熱的に接触している。一方で、平板部61の前面は、共通ヒートシンク13と対向して直接接触する対向面61aである。このように、個別ヒートシンク14aが、平面状の対向面61aを有することで、共通ヒートシンク13との間で効果的に熱の伝導を行うことができる。ところで、上述したように、COF21aに実装された複数の回路素子53の前端位置は、フレキシブル基板51の前面よりも前側に配置されている。このため、複数の回路素子53が、平板部61に接触して破損する可能性がある。そこで、本実施形態では、平板部61には、前後方向に貫通する3つの貫通孔61bが形成されている。そして、COF21aに実装された複数の回路素子53は、3つの貫通孔61bの何れかの孔内に配置されている。これにより、回路素子53が個別ヒートシンク14と接触することで、破損する可能性を低減することができる。
平板部61の左右方向幅は、前面壁33aの左右方向幅よりも若干長い。個別ヒートシンク14aの側板部62,63は、リザーバ形成部材33を左右方向に関して挟むように配置される。
図6~図8に示すように、個別ヒートシンク14aの左側の側板部62の上下方向の中央領域には左右方向に貫通する挿入孔62aが形成されている。また、個別ヒートシンク14aの右側の側板部63の上下方向の中央領域には左右方向に貫通する挿入孔63a(図6のみ図示)が形成されている。これら挿入孔62a,63aは、上下方向に長い長孔である。この挿入孔62a,63aには、リザーバ形成部材33に形成された上記突起状の係合部65a,65bがそれぞれ挿入されて係合する。これにより、個別ヒートシンク14aがリザーバ形成部材33に対して支持される。このように、挿入孔62a,63aに係合部65a,65bを挿入して係合させるという簡易な構成で個別ヒートシンク14aをリザーバ形成部材33に支持させることができる。加えて、個別ヒートシンク14aをリザーバ形成部材33により支持させることにより、インクジェットヘッド4の他の部材で支持させる場合と比べて構成を簡易化させることができる。
図7及び図8に示すように、挿入孔62a,63aは、上記突起状の係合部65a,65bよりも大きく、係合部65a,65bは挿入孔62a,63aに緩やかに挿入されている。つまり、挿入孔62a,63aの孔壁面と係合部65a,65bとの間には間隙が形成されている。個別ヒートシンク14aは、挿入孔62a,63aに突起状の係合部65a,65bが挿入されることのみでリザーバ形成部材33に支持される構成であるため、個別ヒートシンク14aはリザーバ形成部材33に対して移動可能に緩く固定されていることになる。従って、個別ヒートシンク14aは、リザーバ形成部材33に支持されつつ、この間隙により、前後方向の間隙分だけ前後方向に移動可能であり、且つ、図8に示すように、係合部65a及び係合部65bを結ぶ直線を回動軸として回動可能である。
ここで、上述の弾性部材68aは、COF21aの2つのドライバIC52とリザーバ形成部材33の前面壁33aとの間に挟まれた形で溝33a1に位置決めされている。また、前後方向から視たときに、COF21aの2つのドライバIC52は、弾性部材68aの形成範囲内に配置される。
COF21aの2つのドライバIC52は、この弾性部材68aにより前方の個別ヒートシンク14aに付勢されている。これにより、COF21aの2つのドライバIC52は個別ヒートシンク14aと熱的に接触している。なお、弾性部材68aは、COF21aの2つのドライバIC52を介して個別ヒートシンク14aも前方に付勢する。従って、図7に示すように、個別ヒートシンク14aが共通ヒートシンク13からの荷重が付加されていない状態では、個別ヒートシンク14aは、リザーバ形成部材33に対して前後方向に最も離間した離間位置に配置される。この離間位置では、挿入孔62a,63aの後側の孔壁面と、係合部65a,65bの背面とが接触する。
また、本実施形態では、COF21aの2つのドライバIC52は、係合部65a及び係合部65bを結ぶ直線上に配置されている。つまり、個別ヒートシンク14aは、COF21aの2つのドライバIC52を回動軸として回動可能であり、且つ、その回動軸は、ドライバIC52の長手方向に沿った軸である。換言すれば、リザーバ形成部材33は、ドライバIC52の長手方向に沿った軸である回動軸上の位置を支持位置として、個別ヒートシンク14aを回動可能に支持している。従って、図10に示すように、個別ヒートシンク14aが上記回動軸周りを回動したとしても、個別ヒートシンク14aとCOF21aの2つのドライバIC52とが熱的に接触した状態を維持することができる。なお、リザーバ形成部材33の個別ヒートシンク14aの支持位置は上記回動軸上の位置である必要はないが、支持位置を回動軸上に配置することで、個別ヒートシンク14aを回動可能に支持する支持構成を簡易化することができる。また、ドライバIC52を付勢する弾性部材68aも、回動軸の軸方向を長手方向としてドライバIC52に沿って延在している。つまり、弾性部材68aも、個別ヒートシンク14aの回動軸上又はその近接位置に配置されている。これにより、個別ヒートシンク14aは、弾性部材68aと接触せずに回動することが可能となる。
図4に示すように、COF21aの2つのドライバIC52と個別ヒートシンク14aとの間及びその周囲には、弾性部材69が設けられている。この弾性部材69により、ドライバIC52の一部(例えば、角部)に対して、個別ヒートシンク14aからの応力が集中したとしても、ドライバIC52が損傷することを抑制することができる。なお、この弾性部材69は、例えば、ポッティング材やグリスを、個別ヒートシンク14aやドライバIC52に塗布することで容易に形成することができる。また、弾性部材69を熱伝導性材料のポッティング材で形成すれば、ドライバIC52から個別ヒートシンク14aへの熱伝導を効率よく行うことも可能となる。なお、弾性部材69は、ドライバIC52と個別ヒートシンク14aとの間及び周囲の何れか一方のみに設けられていてもよい。
ところで、本実施形態では、個別ヒートシンク14aを、前後方向に移動可能とし、且つ、係合部65a及び係合部65bを結ぶ直線を回動軸として回動可能な構成とすべく、挿入孔62a,63aの孔壁面と係合部65a,65bとの間には上下方向にも間隙が形成されている。しかしながら、この構成だと個別ヒートシンク14aが上下方向に大きく移動することで、個別ヒートシンク14aとCOF21aの2つのドライバIC52との接触が不十分となる可能性がある。
そこで、本実施形態では、図6に示すように、側板部62,63それぞれにおける、挿入孔62a,63aよりも下方の領域には、その後外縁から前方に向かって切り欠かれる切欠部62b,63bが形成されている。この切欠部62b,63bには、リザーバ形成部材33の左面壁33c及び右面壁33dそれぞれに形成された上記リブ67a,67bの前端部が挿入される。切欠部62b,63bの上下方向幅は、リブ67a,67bの上下方向幅よりも長く、切欠部62b,63bの内壁面と、リブ67a,67bとの間には、上下方向の間隙が形成されている。
切欠部62b,63bの内壁面と、リブ67a,67bとの間の上下方向の間隙は、挿入孔62a,63aの孔壁面と係合部65a,65bとの間の上下方向の間隙よりも狭い。これにより、個別ヒートシンク14aは、切欠部62b,63bの内壁面と、リブ67a,67bとの間の上下方向の間隙分のみ上下方向に移動可能となり、その上下方向の移動範囲がリブ67a,67bにより規制される。その結果として、個別ヒートシンク14aが上下方向に大きく移動することを抑制することができ、個別ヒートシンク14aとCOF21aの2つのドライバIC52とが接触した状態を維持することができる。変形例として、上記切欠部62b,63bは、側板部62,63における挿入孔62a,63aよりも上方の領域に形成されており、リブ67a,67bは、係合部65b,66bの形成位置に対して上方に離間した位置に形成されていてもよい。この場合でも、個別ヒートシンク14aが上下方向に大きく移動することを抑制することができる。
なお、個別ヒートシンク14aが上記離間位置(図7参照)に配置されているとき、リブ67a,67bの前端と、切欠部62b,63bの切欠きの底である上下方向に延びる内側壁との間には前後方向に間隙が形成されている。この間隙は、挿入孔62a,63aの孔壁面と係合部65a,65bとの間の前後方向の間隙以上に設定されている。従って、個別ヒートシンク14aは、前後方向の移動に関しては、リブ67a,67bにより移動範囲が規制されることなく、挿入孔62a,63aの孔壁面と係合部65a,65bとの間の前後方向の間隙分だけ移動可能となる。
次に、個別ヒートシンク14bについて説明する。個別ヒートシンク14bは、個別ヒートシンク14aを水平面において180度回転させた形状と同一形状である。このため、個別ヒートシンク14a及び個別ヒートシンク14bは、共通の製造装置を用いて共通の製造工程で製造することが可能となる。その結果として、これらの製造コストを安く抑えることができる。例えば、個別ヒートシンク14a及び個別ヒートシンク14bを押出成形により製造する場合には、個々に成形金型を用意する必要がなく、共通の成形金型を用いて成形することが可能となるため、製造コストを安く抑えることができる。なお、個別ヒートシンク14bの各構成については、個別ヒートシンク14aと同一の符号を付して説明を適宜省略する。
個別ヒートシンク14bは、その側板部62,63に形成された挿入孔62a,63aに、リザーバ形成部材33に形成された上記係合部66a,66bを挿入することで、リザーバ形成部材33に対して支持されている。COF21bの2つのドライバIC52は、弾性部材68bにより個別ヒートシンク14bに付勢されている。なお、弾性部材68bは、COF21bの2つのドライバIC52を介して個別ヒートシンク14bも後方に付勢する。リザーバ形成部材33における個別ヒートシンク14bの支持構成については、リザーバ形成部材33の個別ヒートシンク14aの支持構成と同じであるため、説明を省略する。
<共通ヒートシンクの詳細構成>
共通ヒートシンク13は、アルミADC12などの熱伝導率の高い金属やセラミックスなどから形成されている。共通ヒートシンク13は、図2に示すように、8つのヘッドユニット11に対して前側に配置された第1均熱体71と、8つのヘッドユニット11に対して後側に配置された第2均熱体72とを有する。これら第1均熱体71と第2均熱体72とは、別個独立した部材により形成されている。
第1均熱体71は、左右方向に延在しており、4つのベース壁81、及び、ベース壁81よりも後方に突き出した5つの突出部82を有する。第1均熱体71において、ベース壁81及び突出部82は、左右方向に交互に並んでいる。
4つのベース壁81は、鉛直面と平行であり、且つ、左右方向に延在する平板状の壁である。このベース壁81の左右方向幅は、ヘッドユニット11の左右方向幅よりも長い。4つのベース壁81は、前側に配列された4つのヘッドユニット11a,11c,11e,11gに対応している。各ベース壁81は、対応するヘッドユニット11の前側に配置される。そして、各ベース壁81の後面は、対応するヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14aにおける平板部61の対向面61a全域と対向して、直接接触している。従って、ヘッドユニット11a,11c,11e,11gに設けられた個別ヒートシンク14aは、当該ヘッドユニット11のCOF21aのドライバIC52とベース壁81との間に配置されて、ドライバIC52及びベース壁81の双方に対して熱的に接触している。
5つの突出部82は、ヘッドユニット11a,11c,11e,11gと左右方向に並ぶように配置されている。詳細には、左右方向に隣接する2つの突出部82でヘッドユニット11a,11c,11e,11gのうちの1つのヘッドユニット11を挟むように配置されている。つまり、左右方向に関して、突出部82とヘッドユニット11が交互に配置されている。
5つの突出部82は、それぞれ、対向壁83、及び少なくとも1つの接続壁84をそれぞれ有している。
対向壁83は、ベース壁81よりも後方に配置された、鉛直面と平行であり、且つ、左右方向に延在する平板状の壁である。接続壁84は、対向壁83と隣接するベース壁81とを接続する、前後方向に延在する平板状の壁である。従って、第1均熱体71の後縁には、5つの突出部82それぞれの対向壁83及び接続壁84と、4つのベース壁81とにより、連続した壁が形成されている。なお、突出部82の対向壁83及び接続壁84は、熱伝導面積を大きくすべく、ベース壁81よりも肉厚にされている。
図11及び図12に示すように、第1均熱体71の左右方向両側の2つの突出部82の対向壁83は、中央にある3つの突出部82の対向壁83よりも、左右方向の幅が長い。そして、左右方向両側の2つの突出部82の対向壁83には、それぞれ前後方向に貫通する貫通孔88a,88bが形成されている。最左側の突出部82の貫通孔88aは、8つのヘッドユニット11よりも左側の位置に形成され、最右側の突出部82の貫通孔88bは、8つのヘッドユニット11よりも右側の位置に形成されている。貫通孔88a、及び第2均熱体72の後述する貫通孔98bに螺子89が挿通され、且つ、貫通孔88b、及び第2均熱体72の後述する貫通孔98aに螺子89が挿通されることで、第1均熱体71と第2均熱体72とが互いに熱的に接触して固定される。
図2に示すように、5つの突出部82のうち右側4つの突出部82は、8つのヘッドユニット11のうちの、後方に配列された4つのヘッドユニット11b,11d,11f,11hに対応している。そして、この右側4つの突出部82の対向壁83は、対応するヘッドユニット11の前側に配置されている。右側4つの突出部82の対向壁83の後面は、対応するヘッドユニット11の個別ヒートシンク14aの平板部61の対向面61aの一部領域と対向して直接接触している。また、ヘッドユニット11b,11d,11f,11hに設けられた個別ヒートシンク14aは、当該ヘッドユニット11のCOF21aのドライバIC52と対向壁83との間に配置されて、ドライバIC52と対向壁83と熱的に接触している。
以上のように、第1均熱体71の右側4つの突出部82は、対応するヘッドユニット11に向けて後方に突き出して、対応するヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14aと熱的に接触している。そして、第1均熱体71は、8つのヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14aに対して直接接触(熱的に接触)している。これにより、各ヘッドユニット11のCOF21aのドライバIC52の熱は、各ヘッドユニット11の個別ヒートシンク14a及び第1均熱体71を介して、互いに伝導することが可能となる。その結果として、8つのヘッドユニット11のCOF21aのドライバIC52間の温度差を小さくすることができる。
また、本実施形態では、隣接するヘッドユニット11により、前後方向に関して、少なくとも一部が挟まれるドライバIC52が存在する。ここで、インクジェットヘッド4が、個別ヒートシンク14を備えておらず、共通ヒートシンク13のみでドライバIC52の熱を放熱する構成の場合には、隣接するヘッドユニット11により挟まれるドライバIC52全体を、共通ヒートシンク13に対して接触させることは困難である。従って、ドライバIC52の熱を効率良く、共通ヒートシンク13に伝導することができない。しかしながら、本実施形態では、ヘッドユニット11に個別ヒートシンク14aが設けられ、この個別ヒートシンク14aはドライバIC52全体を覆うように設けられている。従って、隣接するヘッドユニット11により挟まれるドライバIC52の熱を、この個別ヒートシンク14aを介して共通ヒートシンク13に効率良く伝導することができる。このように、本実施形態では、前後方向から視たときに、突出部82の対向壁83が、対応するヘッドユニット11のドライバIC52に対して一部のみ重なっている場合、又はドライバIC52に対して全く重なっていない場合でも、個別ヒートシンク14を介して、ドライバIC52の熱を共通ヒートシンク13に効率良く伝導することができる。
また、本実施形態では、突出部82の対向壁83は、ベース壁81と比べて、個別ヒートシンク14aとの接触面積が小さい。しかしながら、図2に示すように、突出部82の対向壁83及び接続壁84は、ベース壁81よりも肉厚にされて熱伝導面積が大きくされているため、突出部82は、対応するヘッドユニット11のドライバIC52との間で熱を効率よく伝導することができる。
また、左右方向両側の2つの突出部82の対向壁83の前面(ヘッドユニット11とは反対側の外周面)、及び4つのベース壁81それぞれの前面には、前方に突出して上下方向に沿って延在する放熱フィン85が形成されている。各放熱フィン85の前端位置は、互いに一致する。これら複数の放熱フィン85により、第1均熱体71を継続して空冷することができる。
また、図12に示すように、5つの突出部82の対向壁83の前面、及び4つのベース壁81の前面には、それぞれ、前方に突出して左右方向に沿って延在する板部86aが形成されている。この複数の板部86aは、互いに接続されており、第1均熱体71の左端から右端に亘って連続するリブ86を形成している。このリブ86により、第1均熱体71の剛性を向上させることができる。
また、図10に示すように、リブ86の上下方向に関する形成位置は、COF21aの2つのドライバIC52の上下方向に関する配置位置と同じである。従って、2つのドライバIC52の熱を、このリブ86を介してより効果的に放熱することができる。また、リブ86は、上述したように、第1均熱体71の左端から右端に亘って連続している。換言すれば、リブ86は、ヘッドユニット11aの左側のドライバIC52の左端位置から、ヘッドユニット11hの右側のドライバICの右端位置にかけて、左右方向に沿って延びている。これにより、8つのヘッドユニット11hのCOF21aのドライバIC52の温度差をより低減することができる。
次に、第2均熱体72について説明する。なお、第2均熱体72は、水平面において、第1均熱体71を180度回転させた形状と同一形状である。このため、第1均熱体71及び第2均熱体72は、共通の製造装置を用いて共通の製造工程で製造することが可能となる。その結果として、これらの製造コストを安く抑えることができる。例えば、第1均熱体71及び第2均熱体72を押出成形により製造する場合には、個々に成形金型を用意する必要がなく、共通の成形金型を用いて成形することが可能となるため、製造コストを安く抑えることができる。なお、第2均熱体72の各構成については、第1均熱体71と対応する構成の符号に「10」を加算した符号を付して説明を適宜省略する。
図2に示すように、第2均熱体72は、第1均熱体71と同様に、4つのベース壁91、及び、5つの突出部92を有する。4つのベース壁91は、後側に配列された4つのヘッドユニット11b,11d,11f,11hに対応している。各ベース壁91は、対応するヘッドユニット11の後側に配置される。そして、各ベース壁91の前面は、対応するヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14bにおける平板部61の対向面61a全域と対向して、直接接触している。
5つの突出部92は、ヘッドユニット11b,11d,11f,11hと左右方向に並ぶように配置されている。5つの突出部92のうち左側4つの突出部92は、4つのヘッドユニット11a,11c,11e,11gに対応している。この左側4つの突出部92の対向壁93は、対応するヘッドユニット11の後側に配置されている。そして、左側4つの突出部92の対向壁93の前面は、対応するヘッドユニット11の個別ヒートシンク14bの平板部61の対向面61aの一部領域と対向して直接接触している。このように、左側4つの突出部92は、対応するヘッドユニット11に向けて前方に突き出して、対応するヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14bと熱的に接触している。
以上の構成により、第2均熱体72は、8つのヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14bに対して直接接触している。これにより、各ヘッドユニット11のCOF21bのドライバIC52の熱は、各ヘッドユニット11の個別ヒートシンク14b及び第2均熱体72を介して、互いに伝導することになる。その結果として、8つのヘッドユニット11のCOF21bのドライバIC52間の温度差を小さくすることができる。
また、本実施形態では、第1均熱体71と第2均熱体72とは、それぞれ別個独立した部材で形成されているが、これらは互いに熱接触するように固定されている。これにより、第1均熱体71と第2均熱体72との間でも熱伝導を行うことができる。その結果として、8つのヘッドユニット11のCOF21aのドライバIC52及びCOF21bのドライバIC52の温度差も小さくすることができる。つまり、インクジェットヘッド4が備える全てのドライバIC52の温度差を小さくすることができる。
なお、第1均熱体71と第2均熱体72とを固定する構成は、特に限定されない。但し、本実施形態では、上述したように、8つのヘッドユニット11が、左右方向に沿って配置されており、且つ、左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11のユニット本体部20の隣接する端部同士は、左右方向に関して同じ位置に配置されている。この場合、第1均熱体71及び第2均熱体72の左右方向中央領域同士を接触させて固定する構成では、ヘッドユニット11の存在により、複雑化するとともに、接触面積が小さくなる虞がある。そこで、本実施形態では、第1均熱体71及び第2均熱体72は、それぞれの左右方向の両端で互いに固定されている。第1均熱体71及び第2均熱体72それぞれの左右方向の両端では、これら第1均熱体71及び第2均熱体72の間にはヘッドユニット11が配置されていないため、接触面積を大きくして互いに固定することが可能となる。その結果として、第1均熱体71及び第2均熱体72との間での熱伝導性を高めることができる。
具体的には、第1均熱体71の最左側の突出部82の対向壁83と、第2均熱体72の最左側の突出部92の対向壁93とは互いに対向して直接接触し、且つ、対向壁83に形成された貫通孔88a及び対向壁93に形成された貫通孔98bには螺子89(図12参照)が挿通されている。同様に、第1均熱体71の最右側の突出部82の対向壁83と、第2均熱体72の最右側の突出部92の対向壁93とは互いに対向して直接接触し、且つ、対向壁83に形成された貫通孔88b及び対向壁93に形成された貫通孔98aに螺子89が挿通されている。以上のように、第1均熱体71と第2均熱体72とは螺子89により固定されている。従って、この螺子89を介しても第1均熱体71と第2均熱体72との間で熱を伝導することができる。
また、第1均熱体71及び第2均熱体72は、別個独立した部材により形成されているため、第1均熱体71については、8つのヘッドユニット11の前側から装着し、第2均熱体72については8つのヘッドユニット11の後側から装着することが可能となるため、第1均熱体71及び第2均熱体72が一体的に形成されている場合と比べて、組み付け作業が容易となる。
共通ヒートシンク13は、その底面が支持部材12の載置面12aに接触して固定されている。支持部材12は、比較的剛性が高い部材であるため、共通ヒートシンク13を安定して支持固定することができる。
ところで、共通ヒートシンク13が高温になると、この共通ヒートシンク13からの熱により支持部材12が熱膨張して変形する。その結果として、各ヘッドユニット11の支持位置が設計位置からずれて、記録用紙100に記録される画像の記録品質が劣化する虞がある。
そこで、本実施形態では、図11及び図12に示すように、第1均熱体71における左右方向両側の2つの突出部82それぞれの底面には、下方に突出する円弧状の突起87が形成されている。そして、第1均熱体71は、支持部材12の載置面12aに対してこの突起87のみが接触して固定されている。つまり、第1均熱体71は、その左右方向の両端が、支持部材12の載置面12aに対して点接触で固定されている。同様に、第2均熱体72における左右方向両側の2つの突出部92それぞれの底面には、下方に突出する円弧状の突起97が形成されている。そして、第2均熱体72は、支持部材12の載置面12aに対してこの突起97のみが接触して固定されている。ここで、8つのヘッドユニット11のドライバIC52の発熱密度の観点から、共通ヒートシンク13は左右方向中央付近と比べて左右方向両端の方が、温度が低い。このため、共通ヒートシンク13の左右方向の両端のみを支持部材12に対して接触させて固定することで、共通ヒートシンク13からの熱による支持部材12の熱膨張を抑制することができる。加えて、第1均熱体71は、支持部材12に対して点接触で固定されているため、第1均熱体71の熱が支持部材12に伝わりにくい。また、本実施形態では、支持部材12は、第1均熱体71よりも熱膨張が小さい部材で形成されており、具体的には、支持部材12の熱膨張係数は、10.4×10-6/℃であり、均熱体71の熱膨張係数は、21×10-6/℃である。以上の構成により、共通ヒートシンク13が高温になったとしても、支持部材12は変形しにくいため、記録品質が劣化することを抑制することができる。
また、各ヘッドユニット11のドライバIC52から共通ヒートシンク13への熱伝導性を向上させるためには、個別ヒートシンク14と共通ヒートシンク13との密着性が重要である。しかしながら、組付誤差などにより各ヘッドユニット11に位置ずれが生じている場合、個別ヒートシンク14と共通ヒートシンク13との密着性が不十分となる虞がある。この点、本実施形態では、上述したように各ヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14が、弾性部材68a,68bにより前後方向外側に付勢されており、且つ、ドライバIC52を回動軸として回動可能に構成されているため、個別ヒートシンク14と共通ヒートシンク13との密着性を維持、向上することが可能である。以下、個別ヒートシンク14aと、第1均熱体71の突出部82の対向壁83との密着性を例にして、具体的に説明する。
なお、本実施形態では、個別ヒートシンク14a,14bが上記離間位置(図7参照)に配置されているときの、これら個別ヒートシンク14a,14bの互いの平板部61の離間距離よりも、ベース壁81及び対向壁83の前後方向の離間距離、並びにベース壁91及び対向壁93の前後方向の離間距離それぞれの方が、若干短くなるように設定されている。このため、各ヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14aは、第1均熱体71から荷重を受けて、弾性部材68aの付勢力に抗して上記離間位置よりも後方に配置されている。同様に、各ヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14bは、第2均熱体72から荷重を受けて、弾性部材68bの付勢力に抗して上記離間位置よりも前方に配置されている。
支持部材12のヘッドユニット11の支持位置が前後方向にずれていた場合、ヘッドユニット11と第1均熱体71との前後方向の距離が変わることになる。しかしながら、個別ヒートシンク14aは弾性部材68aにより前方に付勢されているため、個別ヒートシンク14aは、ドライバIC52との密着性を維持しつつ、当該平板部61の対向面61aが対向壁83に対して直接接触する位置に移動することができる。つまり、弾性部材68aの付勢力により、ヘッドユニット11の支持位置の前後方向のずれ分を吸収して、個別ヒートシンク14aと第1均熱体71とを直接接触させることができる。
また、図10に示すように、ヘッドユニット11が前後に傾いて支持部材12に支持されていた場合には、個別ヒートシンク14aは、COF21aのドライバIC52を回動軸として回動することで、ドライバIC52との密着性を維持しつつ、平板部61の対向面61aを対向壁83と平行にして接触させることができる。つまり、個別ヒートシンク14aの回動により、ヘッドユニット11の傾き分を吸収して、個別ヒートシンク14aと第1均熱体71とを直接接触させることができる。
以上のように、本実施形態では、各ヘッドユニット11に位置ずれが生じている場合でも、弾性部材68a,68bの付勢力により、個別ヒートシンク14の共通ヒートシンク13及びドライバIC52の双方の密着性を維持、向上させることができる。その結果として、ヘッドユニット11のドライバIC52の熱を、この個別ヒートシンク14a,14bを介して共通ヒートシンク13に効率よく伝導することが可能となり、共通ヒートシンク13の放熱性能を向上させることができる。
加えて、本実施形態のように、各ヘッドユニット11において、ユニット本体部20に対して前側及び後側の双方にドライバIC52が配置する場合には、ユニット本体部20に対して前側及び後側の双方に個別ヒートシンク14を配置する構成にする。これにより、ヘッドユニット11に位置ずれが生じている場合でも、ユニット本体部20に対して前側に配置されたドライバIC52の熱は個別ヒートシンク14aを介して、ユニット本体部20に対して後側に配置されたドライバIC52の熱は個別ヒートシンク14bを介して、それぞれ、共通ヒートシンク13に伝導することが可能となる。
以上、個別ヒートシンク14がヘッドユニット11の位置ずれを吸収可能であることを説明したが、本実施形態の個別ヒートシンク14は、ヘッドユニット11の位置ずれだけに限らず、共通ヒートシンク13のヘッドユニット11に対する位置ずれや、ドライバIC52が実装されるCOF21の位置ずれ等についても、同様に、その位置ずれを吸収することができる。つまり、各ヘッドユニット11に個別ヒートシンク14を設けることにより、ヘッドユニット11、共通ヒートシンク13、及びCOF21の少なくとも何れか1つに位置ずれが生じている場合でも、当該個別ヒートシンク14によりその位置ずれを吸収することができる。その結果として、各ドライバIC52の熱を、当該個別ヒートシンク14を介して共通ヒートシンク13に伝導することが可能である。
また、上述したように、各ヘッドユニット11は、個別ヒートシンク14を介して共通ヒートシンク13から荷重を受けることになる。ここで、共通ヒートシンク13が支持部材12に対して螺子止めなどで強固に固定されていた場合、例えば、上述のように支持位置がずれたヘッドユニット11のドライバIC52に対しては、共通ヒートシンク13から大きな荷重が付加されて、ドライバIC52が破損する虞がある。加えて、共通ヒートシンク13からの荷重により、支持部材12のヘッドユニット11の支持位置がずれる虞がある。
そこで、本実施形態では、共通ヒートシンク13は、支持部材12の載置面12aに対して、緩やかに固定されている。具体的には、第1均熱体71の突起87及び第2均熱体72の突起97それぞれと、載置面12aとが、熱かしめや接着剤で固定されている。このため、共通ヒートシンク13は載置面12aに対して若干量だけ移動可能となる。その結果として、各ヘッドユニット11に対して過大な荷重がかからない位置に共通ヒートシンク13を移動させることができる。つまり、8つのヘッドユニット11の弾性部材68a,68bの弾性力の大きさが略同じ値となる位置に共通ヒートシンク13を移動させることができる。これにより、ドライバIC52が破損することを抑制することができ、且つ、支持部材12のヘッドユニット11の支持位置がずれることを抑制することができる。なお、共通ヒートシンク13を載置面12aに対して接着剤で固定する場合には、共通ヒートシンク13から支持部材12への熱を伝わりにくくするために、接着剤は断熱性の接着剤であることが好ましい。また、共通ヒートシンク13と、載置面12aとの間に弾性部材が介在されており、この弾性部材により共通ヒートシンク13が支持部材12に対して緩やかに固定されていてもよい。この弾性部材についても、共通ヒートシンク13から支持部材12への熱を伝わりにくくするために、断熱性の弾性部材であることが好ましい。
以上、本実施形態では、ヘッドユニット11個々に個別ヒートシンク14が設けられているため、ヘッドユニット11、共通ヒートシンク13、COF21の少なくとも何れかに位置ずれが生じている場合でも、各ヘッドユニット11のドライバIC52の熱を、この個別ヒートシンク14を介して共通ヒートシンク13に効率よく伝動することが可能となる。その結果として、共通ヒートシンク13の放熱性能を向上させることができる。
また、ドライバIC52は弾性部材68a,68bにより個別ヒートシンク14に付勢されているため、個別ヒートシンク14のドライバIC52及び共通ヒートシンク13の双方への密着性を向上させることができる。
加えて、個別ヒートシンク14は、ドライバIC52の長手方向を回転軸として、回転可能に配置されているため、ヘッドユニット11が傾いて配置されていたとしても、個別ヒートシンク14がドライバIC52に熱的に接触した状態を維持しつつ、個別ヒートシンク14の共通ヒートシンク13に対する密着性を維持、向上させることができる。
以上説明した実施形態において、インクジェットヘッド4が、「液体吐出ヘッド」に相当する。左右方向が「第1方向」に相当する。前後方向が「第2方向」に相当し、前側が「第2方向の一方側」に相当し、後側が「第2方向の他方側」に相当する。左右方向に隣接する2つのヘッドユニット11のうち、後側に配置されたヘッドユニット11が「第1ヘッドユニット」に相当し、前側に配置されたヘッドユニット11が「第2ヘッドユニット」に相当する。個別ヒートシンク14aが「第1個別放熱体」に相当し、個別ヒートシンク14bが「第2個別放熱体」に相当する。第1均熱体71が「第1共通放熱体」に相当し、第2均熱体72が「第2共通放熱体」に相当する。弾性部材68aが「第1弾性部材」に相当し、弾性部材69が「第2弾性部材」に相当する。係合部65a,65bが「第1係合部」に相当し、挿入孔62a,63aが「第1被係合部」に相当する。リブ67a,67bが「第1係合部」に相当し、切欠部62b,63bが「第2被係合部」に相当する。COF21aのドライバIC52が「第1ドライバIC」に相当し、COF21bのドライバIC52が「第2ドライバIC」に相当する。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
前記実施形態では、個別ヒートシンク14は、ユニット本体部20に支持されていたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、筐体2に支持されていてもよい。また、個別ヒートシンク14自身が熱伝導性を有する弾性材料であってもよい。この場合、個別ヒートシンク14自身の弾性で、支持部材12のヘッドユニット11の支持位置のずれのずれ分を吸収可能となるため、弾性部材68a,68bは必須ではない。また、個別ヒートシンク14が回動可能に構成されていなくてもよい。
各ヘッドユニット11は、ドライバIC52を4つ備えていたが、これに限定されず、1以上であればよい。また、インクジェットヘッド4は、4色のインクを吐出可能なインクジェットヘッドであったが、これに限定されず、1色のインクのみを吐出可能なインクジェットヘッドであってもよい。
また、8つのヘッドユニット11のドライバIC52は、ユニット本体部20に対して前側又は後側の何れか一方側にのみに配置されていてもよい。例えば、8つのヘッドユニット11全てのドライバIC52が、ユニット本体部20に対して前側に配置されていてもよい。この場合、共通ヒートシンク13は、8つのヘッドユニット11に対して前側に配置される第1均熱体71のみを有していてもよく、また、各ヘッドユニット11には、個別ヒートシンク14aのみが設けられていてもよい。
個別ヒートシンク14bは、個別ヒートシンク14aを水平面に対して180度回転させた形状と同一形状にされていたが、異なる形状にされていてもよい。また、個別ヒートシンク14aと個別ヒートシンク14bとは、左右方向に沿った線に対し線対称の形状であってもよい。
前記実施形態のドライバIC52の形状は直方体であるが、特にこれに限定されず、例えば、立方体であってもよい。また、個別ヒートシンク14は、ドライバIC52の長手方向を回動軸として回動可能に構成されていたが、ドライバIC52を軸として回動するのであれば、ドライバIC52の長手方向と交差する方向を回動軸として回動してもよい。
ヘッドユニット11の数は2以上であれば、その数は限定されない。8つのヘッドユニット11は、千鳥状に配列されていたが、特にこれに限定されず、一直線上に配列されていてもよい。また、共通ヒートシンク13は、各ヘッドユニット11に設けられた個別ヒートシンク14各々に熱的に接触する構成であるならば、上述の実施形態には限定されない。例えば、共通ヒートシンクは、第1均熱体71と第2均熱体72とが一体的に形成されたヒートシンクであってもよい。
前記実施形態のインクジェットヘッド4は、画像記録中には位置が固定されて記録用紙100に対して移動しない、いわゆるラインタイプのヘッドである。これに対して、記録用紙100に対してその幅方向に移動しながらインクを吐出する、いわゆるシリアルタイプのヘッドに、本発明を適用することも可能である。
以上説明した実施形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を記録するインクジェットヘッドに適用したものであるが、画像等の記録以外の様々な用途で使用される液体吐出ヘッドにおいても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出ヘッドにも、本発明を適用することは可能である。