図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている。液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
4つの液体吐出ヘッド2は、搬送ベルト111による搬送方向に沿って互いに近接して配置されている。各液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体13を有している。ヘッド本体13の下面には、液体を吐出する多数の液体吐出孔8が設けられている液体吐出孔面4aとなっている(図4、5および8参照)。
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた液体吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2の液体吐出孔8は一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙P搬送方向に平行でない方向(典型的には、直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向))に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体13の下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体13から印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
次に本発明の液体吐出ヘッド2について説明する。図6は液体吐出ヘッド2の斜視図で
ある。液体吐出ヘッド2は液体吐出ヘッド本体13と筐体90とを含んでいる。筐体90は金属製であり、一部に駆動信号が伝達される信号ケーブルが通る孔90cが開口している。図6の例では上面の一部に孔90cが開口しており、孔90cは制御部100と繋がる駆動信号が伝達される信号ケーブル(不図示)が通っており、樹脂製のふたなどで塞がれる。液体吐出ヘッド本体13には液体導入孔41dが開口しており、液体導入孔41dには接続用パイプ49が付けられており、接続用パイプ49から吐出する液体が供給される。
図7は、図6に示した液体吐出ヘッド2のX−X線断面図である。液体吐出ヘッド本体13には、第1の流路部材4、第2の流路部材40、加圧部を含む圧電アクチュエータユニット21が含まれる。図7では第1の流路部材4の内部構造は省略してある。第2の流路部材40には、詳細を後述する分岐流路41aと液体導入流路41cが形成されている。また、第2の流路部材40には、断熱性弾性部材97が付けられたフレーム96と、コネクタ95が実装された基板94とが固定されている。なお、フレーム96は図7の断面図では、接続していないが、この断面以外の部分で固定されている。制御部100から信号ケーブル(不図示)を介して基板94に送られた駆動信号は、コネクタ95を介して信号伝達部92に送られる。信号伝達部92に実装されたドライバIC55は、駆動信号を処理し、処理後の駆動信号は信号伝達部92を通じて、後述の圧電アクチュエータユニット21の液体吐出素子50を駆動し、第1の流路部材4内部の液体を加圧することにより、液滴が吐出される。なお、基板94は、例えば、吐出信号を複数のドライバIC55に分けたり、吐出信号の整流など行なってもよいが、基板94を設けず、制御部100からの信号ケーブルを直接信号伝達部92に接続するようにしてもよい。信号伝達部92は可撓性を有する帯状のもので、内部に金属の配線を有し、配線の一部は、信号伝達部92の表面に露出しており、露出した配線により、コネクタ95、ドライバIC55および圧電アクチュエータユニット21と電気的に接続される。信号伝達部92は、例えば、フレキシブルフラットケーブルである。
ドライバIC55は、上述の駆動信号処理を行なう際に発熱する。ドライバIC55が断熱性弾性部材97により信号伝達部92を介して押されて、金属製の筐体90に押し当てられているため、発生した熱は主に筐体90に伝わり、さらに筐体90全体に速く広がり、外部に放熱されていく。筐体90は上部筐体90aとサイドプレート90bからなっている。
図8(a)および(b)は液体吐出ヘッド本体13の平面図であり、(c)は縦断面図である。全ての内部構造を示すと複雑になるため、図8(a)および(b)ではそれぞれ一部を示している。図8(a)では内部構造のうち、液体導入流路41cの上側の流路および液体吐出孔8が形成されている液体吐出孔開口領域16を示している。液体吐出孔開口領域16は、図8(a)おいて左右方向である一方方向に長い領域である。本実施例においては、液体吐出ヘッド2の長手方向と液体吐出孔開口領域16の長手方向が一致しているが、必ずしもそうである必要はない。図8(b)では内部構造のうち、液体導入流路41cおよび中央流路41bを示している。また、液体吐出孔開口領域16の存在する範囲の一方の端を直線A、他方の端を直線Bで示している、また、液体吐出孔開口領域16の直線A側の端を一方の端A、直線B側の端を他方の端Bと呼ぶことにする。
液体吐出ヘッド本体13では、第1の流路部材4の上に第2の流路部材40が積層されており、内部に加圧部を含む圧電アクチュエータ21が収められている。第2の流路部材40には、分岐流路41a、中央流路41b、液体導入流路41cおよび液体導入孔41dを含む液体流路41が形成されている。液体流路41のうち中央流路41bは、液体吐出孔開口領域16の長手方向の中央部に形成されており、液体吐出孔面4aに直交する方向に開口している。液体導入孔41dは外部液体タンク(図示せず)に繋がる部分で、液
体導入孔41dから中央流路41bまでの部分が液体導入流路41cである。中央流路41bから先は、分岐流路41aであり、分岐流路41aは、途中で複数の流路に分岐し、マニホールド5と複数の部分で繋がる。
液体流路41のうち中央流路41bは、液体吐出孔開口領域16の長手方向の中央部に形成されているため、複数の部分で繋がるマニホールド5までの流路長を比較的近くすることができるので、液体の供給を安定化させることができる。ここでいう中央部とは液体吐出孔開口領域16の長手方向の長さ、つまり直線Aと直線Bの間の距離をLx(m、以下単位を省略することがある)とした際、直線Aと直線Bとの中央からの長手方向のズレがLx/10以下である範囲のことである。なお、短手方向においても中心に近い方が好ましく、液体吐出孔開口領域16の短手方向の長さLyに対して、短手方向のズレがLy/4以下であることが好ましい。
液体吐出孔面4aに直交する方向から見たとき、液体導入流路41cは、液体吐出孔開口領域16の一方の端Aから他方の端Bまで延在する空間を有している。この空間は他方の端Bで折り返され、中央流路41bに繋がっている。折り返してから中央流路41bに繋がるまでの液体導入流路41cを折り返し部41c−1と呼ぶ。
外部から供給された液体は、前記空間を液体吐出孔開口領域16の一方の端Aから他方の端Bに流れるため、供給される液体の温度の影響は、液体吐出ヘッド2の液体吐出孔開口領域16の全体に与えられるので、液体吐出ヘッド2の温度の長手方向の均熱化が図れ、ひいては液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のバラツキを少なくできる。
また、液体吐出孔面4aに直交する方向から見たときに、液体導入孔41dが、液体吐出孔開口領域16の外で前記空間の一方の端Aと接続しているため、供給される液体の温度の影響を最も受ける液体導入孔41dを液体吐出孔開口領域16の外にできるので、外部から供給された液体の温度の受ける影響を少なくすることができる。また、この際、液体導入孔41dを一方の端Aの近傍に開口させれば、液体導入孔41dから一方の端Aまでの距離が長くなって、その部分が温度の影響を受け一方の端A側の温度の影響が大きくなることを抑制できる。ここで、近傍とは、液体吐出孔開口領域16の一方の端Aからの距離が直線Aと直線Bの間の距離をLxの1/5以下であることをあり、1/10以下であるとより好ましい。
さらに、液体導入流路41cを他方の端B側で折り返す際には、液体導入流路孔41cの折り返す端を他方のBの近傍にすれば、他方の端Bまでの距離が長くなって、その部分が温度の影響を受け他方の端V側の温度の影響が大きくなることを抑制できる。ここで、近傍とは、液体吐出孔開口領域16の一方の端Bからの距離が直線Aと直線Bの間の距離をLxの1/5以下であることをあり、1/10以下であるとより好ましい。
またさらに、液体吐出孔面4aに直交する方向から見たときに、前記空間の形成されている領域が液体吐出孔開口領域16より大きい場合、液体吐出ヘッド2の長手方向だけでなく短手方向にも均熱化が図れ、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のバラツキをより少なくできる。
またさらに、液体導入流路4cの長手方向に直交する断面の総断面積は、液体吐出孔面4aに直交する方向から見た場合の液体吐出孔開口領域16の存在する範囲、すなわち直線Aから直線Bの中で略一定である場合、液体吐出ヘッド2に与える温度の影響が長手方向内でより平均化されるため、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のバラツキをより少なくできる。ここで断面積は、折り返し部41c−1が存在する部分では折り返し部41c−1も含んだ面積である。また、ここで面積が略一定であるとは、最も断面積の広い断
面の断面積に対して、最も断面積が低い断面の断面積が60%以上であることであり、70%以上であるとより好ましく、80%以上であると特に好ましい。また、別の言い方をすれば、中央流路41aから一方の端までの平均断面積と、他方の端までの平均断面積とが略等しいのが好ましい。つまり、中央流路41aの中心から一方の端の直線Aまでの液体導入路41cの体積を、中央流路41aの中心から一方の端の直線Aまでの距離で除して求めた直線A側の平均断面積と、同様に求めた直線B側の平均断面積との差が少ないことが好ましい。具体的には、小さい方の平均断面積が大きい方の平均断面積の60%以上であることが好ましいく、70%以上であるとより好ましく、80%以上であると特に好ましい。
さらにまた、液体は液体流路41を進んでいくうちに、徐々に液体吐出ヘッド2との温度差が少なくなっていくので、上述の範囲内で、折り返して中央流路41bに向かう側の総断面積を広くすることで、その影響度合いの差を少なくすることができる。具体的には、上述の略一定の範囲内で、液体流路41のうち液体吐出孔開口領域16の一方方向の中心から一方の端Aまでの体積に対して、液体吐出孔開口領域16の一方方向の中心から他方の端Bまでの体積を大きく、かつ1.2倍以下にするのが好ましい。
液体導入流路41cの内壁の一部は弾性変形可能な材質のダンパ45になっている。ダンパ45の液体導入流路41cと反対の面が面する部分には空気室46が設けられているので、ダンパ45は弾性変形することで液体導入流路41cの体積を変化させることができ、液体吐出量が急激に多くなった場合などに、安定して液体が供給できるようになる。
また、第2の流路部材40には、前記空間の他端Bに繋がっている気体排出孔41eが開口している。最初に液体吐出ヘッド13内に液体を入れる際や、使用中に液体導入孔41dから液体に混じって気体が入ってきた際に、液体流路41内の気体が排出されやすくなり、第1の流路部材4のマニホールド5に入った気体により、液体吐出の動作が影響されにくくなる。
第2の流路部材40は複数の長方形状の平板(プレート)40a〜40eを積層して構成されている。図9は、プレート40a〜40eの平面図である。分岐流路41aは、まず中央流路41bの直下で左右に分岐し、分岐した先それぞれで5方向に分岐した後下側に向かい、第1の流路部材4のマニホールド5に繋がる。最終的に10本に分岐する分岐流路41aでは、中央流路41bからマニホールド5までの流路長はそれぞれ略等しくなっている。これにより、外部から供給される液体の温度変動や圧力変動が、液体流路40とマニホールド5との複数の連結部に、少ない時間差で伝わるため、それらの影響が液体吐出ヘッド2全体に同じように加わるので、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のバラツキをより少なくできる。なお、ここでいう略等しいとは、最も長い流路長に対して、最も短い流路長が80%以上であることであり、90%以上であるとより好ましい。また、分岐流路41aは、それぞれの長さが略等しいだけでなく、断面積も略等しいことが好ましい。ここで断面積が略等しいとは、中央流路41bから同じ流路長である場所での流路の断面積の差が20%以下であることであり、10%以下であるとより好ましい。
次に本発明の液体吐出ヘッドを構成する第1の流路部材4について説明する。図2は、液体吐出ヘッド本体13のうち第1の流路部材4および圧電アクチュエータ21を示す平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大平面図であり、液体吐出ヘッド本体13の一部である。図4は、図3と同じ位置の拡大透視図で、液体吐出孔8の位置が分かりやすいように、一部の流路を省略して描いている。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき液体加圧室10(液体加圧室群9)、しぼり12および液体吐出孔8を実線で描いている。図5は図3のV−V線に沿った縦断面図である。
ヘッド本体13は、平板状の第1の流路部材4と、第1の流路部材4上に、加圧部を含む圧電アクチュエータユニット21および第2の流路部材40を有している。圧電アクチュエータユニット21は台形形状を有しており、その台形の1対の平行対向辺が第1の流路部材4の長手方向に平行になるように第1の流路部材4の上面に配置されている。また、第1の流路部材4の長手方向に平行な2本の仮想直線のそれぞれに沿って2つずつ、つまり合計4つの圧電アクチュエータユニット21が、全体として千鳥状に第1の流路部材4上に配列されている。第1の流路部材4上で隣接し合う圧電アクチュエータユニット21の斜辺同士は、第1の流路部材4の短手方向について部分的にオーバーラップしている。このオーバーラップしている部分の圧電アクチェータユニット21を駆動することにより印刷される領域では、2つの圧電アクチュエータユニット21により吐出された液滴が混在して着弾することになる。
第1の流路部材4の内部にはマニホールド5が形成されている。マニホールド5は第1の流路部材4の長手方向に沿って延び細長い形状を有しており、第1の流路部材4の上面にはマニホールド5の開口5bが形成されている。開口5bは、第1の流路部材4の長手方向に平行な2本の直線(仮想線)のそれぞれに沿って5個ずつ、合計10個形成されている。開口5bは、4つの圧電アクチュエータユニット21が配置された領域を避ける位置に形成されている。マニホールド5には開口5bを通じて図示されていない液体タンクから液体が供給されるようになっている。
第1の流路部材4内に形成されたマニホールド5は、複数本に分岐している(分岐した部分のマニホールド5を副マニホールド5aということがあり、開口5bから副マニホールド5aまでのマニホールド5を液体供給路5cということがある)。開口5bに繋がる液体供給路5cは、圧電アクチュエータユニット21の斜辺に沿うように延在しており、第1の流路部材4の長手方向と交差して配置されている。2つの圧電アクチュエータユニット21に挟まれた領域では、1つのマニホールド5が、隣接する圧電アクチュエータユニット21に共有されており、副マニホールド5aがマニホールド5の両側から分岐している。これらの副マニホールド5aは、第1の流路部材4の内部の各圧電アクチュエータユニット21に対向する領域に互いに隣接してヘッド本体13の長手方向に延在している。すなわち、副マニホールド5aの両端は、液体供給路5cに繋がっている。
第1の流路部材4は、複数の液体加圧室10がマトリクス状(すなわち、2次元的かつ規則的)に形成されている4つの液体加圧室群9を有している。液体加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。液体加圧室10は第1の流路部材4の上面に開口するように形成されている。これらの液体加圧室10は、第1の流路部材4の上面における圧電アクチュエータユニット21に対向する領域のほぼ全面にわたって配列されている。したがって、これらの液体加圧室10によって形成された各液体加圧室群9は圧電アクチュエータユニット21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各液体加圧室10の開口は、第1の流路部材4の上面に圧電アクチュエータユニット21が接着されることで閉塞されている。
本実施形態では、図3に示されているように、マニホールド5は、第1の流路部材4の短手方向に互いに平行に並んだ4列のE1〜E4の副マニホールド5aに分岐し、各副マニホールド5aに繋がった液体加圧室10は、等間隔に第1の流路部材4の長手方向に並ぶ液体加圧室10の列を構成し、その列は、短手方向に互いに平行に4列配列されている。副マニホールド5aに繋がった液体加圧室10の並ぶ列は副マニホールド5aの両側に2列ずつ配列されている。
全体では、マニホールド5から繋がる液体加圧室10は、等間隔に第1の流路部材4の
長手方向に並ぶ液体加圧室10の列を構成し、その列は、短手方向に互いに平行に16列配列されている。各液体加圧室列に含まれる液体加圧室10の数は、加圧部である変位素子50の外形形状に対応して、その長辺側から短辺側に向かって次第に少なくなるように配置されている。液体吐出孔8もこれと同様に配置されている。これによって、全体として長手方向に600dpiの解像度で画像形成が可能となっている。
つまり、液体吐出孔開口領域16の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように液体吐出孔8を投影すると、図3に示した仮想直線のRの範囲に、各副マニホールド5aに繋がっている4つの液体吐出孔8、つまり全部で16個の液体吐出孔8が600dpiの等間隔になっている。また、各副マニホールド5aには平均すれば150dpiに相当する間隔で個別流路32が接続されている。これは、600dpi分の液体吐出孔8を4つ列の副マニホールド5aに分けて繋ぐ設計をする際に、各副マニホールド5aに繋がる個別流路32が等しい間隔で繋がるとは限らないため、マニホールド5aの延在方向、すなわち主走査方向に平均170μm(150dpiならば25.4mm/150=169μm間隔である)以下の間隔で個別流路32が形成されている。
圧電アクチュエータユニット21の上面における各液体加圧室10に対向する位置には後述する個別電極35がそれぞれ形成されている。個別電極35は液体加圧室10より一回り小さく、液体加圧室10とほぼ相似な形状を有しており、圧電アクチュエータユニット21の上面における液体加圧室10と対向する領域内に収まるように配置されている。
第1の流路部材4の下面の液体吐出面には多数の液体吐出孔8が形成されている。これらの液体吐出孔8は、第1の流路部材4の下面側に配置された副マニホールド5aと対向する領域を避けた位置に配置されている。
また、これらの液体吐出孔8は、第1の流路部材4の下面側における圧電アクチュエータユニット21と対向する領域内に配置されている。これらの液体吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータユニット21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータユニット21の変位素子50を変位させることにより液体吐出孔8から液滴が吐出できる。そして、4つの液体吐出孔8形成された領域を合わせて液体吐出孔開口領域16と呼ぶ。液体吐出孔開口領域16は、液体吐出孔8のうち最も外側に液体吐出孔8を繋げた線で囲まれた領域で、本実施例においては、ほぼ4つの台形を繋げた領域である。図4においては、液体吐出孔8の上に液体吐出孔開口領域16の境界線を示すと分かりにくくなるため、少し外側に示してある。液体吐出孔8の配置については後で詳述する。そして、それぞれの領域内の液体吐出孔8は、第1の流路部材4の長手方向に平行な複数の直線に沿って等間隔に配列されている。
液体吐出ヘッド本体13に含まれる第1の流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、第1の流路部材4の上面から順に、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャ(しぼり)プレート24、サプライプレート25、26、マニホールドプレート27、28、29、カバープレート30およびノズルプレート31である。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路32および副マニホールド5aを構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体13は、図5に示されているように、液体加圧室10は第1の流路部材4の上面に、副マニホールド5aは内部の下面側に、液体吐出孔8は下面にと、個別流路32を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、液体加圧室10を介して副マニホールド5aと液体吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある
。第1に、キャビティプレート22に形成された液体加圧室10である。第2に、液体加圧室10の一端から副マニホールド5aへと繋がる流路を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート23(詳細には液体加圧室10の入り口)からサプライプレート25(詳細には副マニホールド5aの出口)までの各プレートに形成されている。なお、この連通孔には、アパーチャプレート24に形成されたしぼり12と、サプライプレート25、26に形成された個別供給流路6とが含まれている。
第3に、液体加圧室10の他端から液体吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート23(詳細には液体加圧室10の出口)からノズルプレート31(詳細には液体吐出孔8)までの各プレートに形成されている。
第4に、副マニホールド5aを構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート27〜29に形成されている。なお、副マニホールド5aの位置によっては、マニホールドプレート29には孔が形成されていない部分があり、これにより、副マニホールド5aの断面積が変えられている。
このような連通孔が相互に繋がり、副マニホールド5aからの液体の流入口(副マニホールド5aの出口)から液体吐出孔8に至る個別流路32を構成している。副マニホールド5aに供給された液体は、以下の経路で液体吐出孔8から吐出される。まず、副マニホールド5aから上方向に向かって、個別供給流路6を通り、しぼり12の一端部に至る。次に、しぼり12の延在方向に沿って水平に進み、しぼり12の他端部に至る。そこから上方に向かって、液体加圧室10の一端部に至る。さらに、液体加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、液体加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した液体吐出孔8へと進む。
第2の流路部材40も、第1の流路部材4と同様には圧延法等により得られプレート40a〜40eに、エッチングにより所定の形状に加工されて、空気室46の上にダンパ45を貼り付けた後、積層接着され、液体流路41、空気室46および圧電アクチュエータが収納される凹部47が設けられる。プレート40dは形状が複雑なので、研削加工を行なっても良い。また、第1の流路部材4の流路に要求される精度は第1の流路部材4の流路に要求される精度より低いため、各プレートをそれぞれ、あるいは第2の流路部材40全体をプラスチックの射出成形などで作製してもよい。
圧電アクチュエータユニット21は、図5に示されるように、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータユニット21全体の厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の液体加圧室10を跨ぐように延在している(図3参照)。これらの圧電セラミック層21a、21bは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータユニット21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極34およびとAu系などの金属材料からなる個別電極35を有している。個別電極35は上述のように圧電アクチュエータユニット21の上面における液体加圧室10と対向する位置に配置されている。個別電極35の一端は、液体加圧室10と対向する領域外に引き出されて接続電極36が形成されている。この接続電極36は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極36は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極35には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。
駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極34は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極34は、圧電アクチュエータユニット21に対向する領域内の全ての液体加圧室10を覆うように延在している。共通電極34の厚さは2μm程度である。共通電極34は図示しない領域において接地され、グランド電位に保持されている。本実施形態では、圧電セラミック層21b上において、個別電極35からなる電極群を避ける位置に個別電極35とは異なる表面電極(不図示)が形成されている。表面電極は、圧電セラミック層21bの内部に形成されたスルーホールを介して共通電極34と電気的に接続されているとともに、多数の個別電極35と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
図5に示されるように、共通電極34と個別電極35とは、最上層の圧電セラミック層21bのみを挟むように配置されている。圧電セラミック層21bにおける個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域は活性部と呼称され、その部分の圧電セラミックスには分極が施されている。本実施形態の圧電アクチュエータユニット21においては、最上層の圧電セラミック層21bのみが活性部を含んでおり、圧電セラミック21aは活性部を含んでおらず、振動板として働く。この圧電アクチュエータユニット21はいわゆるユニモルフタイプの構成を有している。
なお、後述のように、個別電極35に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極35に対応する液体加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路32を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータユニット21における各液体加圧室10に対向する部分は、各液体加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子50(アクチュエータ)に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層からなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子50が液体加圧室10毎に、液体加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極34、圧電セラミック層21b、個別電極35により作り込まれており、圧電アクチュエータユニット21には加圧部である変位素子50が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は5〜7pl(ピコリットル)程度である。
多数の個別電極35は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。
本実施形態における圧電アクチュエータユニット21においては、個別電極35を共通電極34と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この時圧電セラミック層21bは、その厚み方向すなわち積層方向に伸長または収縮し、圧電横効果により積層方向と垂直な方向すなわち面方向には収縮または伸長しようとする。一方、残りの圧電セラミック層21aは、個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域を持たない非活性層であるので、自発的に変形しない。つまり、圧電アクチュエータユニット21は、上側(つまり、液体加圧室10とは離れた側)の圧電セラミック層21bを、活性部を含む層とし、かつ下側(つまり、液体加圧室10に近い側)の圧電セラミック層21aを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。
この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極35を共通電極34に対して正または負の所定電位とすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制し
ようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは液体加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極35を共通電極34より高い電位とする第1の電圧V1V(ボルト、以下で省略することがある)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極35を共通電極34とを一旦、第1の電圧V1よりも低い第2の電圧を加えて低電位、例えば同じ電位にし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極35が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、bが元の形状に戻り、液体加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、液体加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホールド5側から液体加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極35を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、bが液体加圧室10側へ凸となるように変形し、液体加圧室10の容積減少により液体加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極35に供給することになる。このパルス幅は、液体加圧室10内において圧力波がマニホールド5から液体吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、液体加圧室10内部が負圧状態から正圧
状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
また、階調印刷においては、液体吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行なわれる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する液体吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり、好ましい。
なお、本実施例では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子50を示したが、これに限られるものでなく、液体加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、例えば、液体加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたものでも良い。
図10(a)および(b)は本発明の他の液体吐出ヘッドに用いることのできる液体吐出ヘッド本体213の平面図であり、(c)は縦断面図である。全ての内部構造を示すと複雑になるため、図10(a)および(b)ではそれぞれ一部を示している。図10(a)では内部構造のうち、液体導入流路241c、および液体吐出孔8が形成されている前記液体吐出孔開口領域16を示している。図10(b)では内部構造のうち、液体導入流路241cおよび中央流路241bを示している。第2の流路部材240は、外形が第2の流路部材40と同じであり、第1の流路部材4の構造は同じある。第2の流路部材40においては折り返し部41c−1が下側に折り返していたのに対して、第2の流路部材240では、折り返し部241c−1が短手側に折り返しされている。中央流路241bの短手方向の位置は中心からずれるが、元々短手方向は短いため、温度差の影響は出にくい。また、図10(b)において、中央流路241bの右側にある、折り返し部241c−1のある液体導入流路241cの短手方向の全幅に対して、左側にある液体導入流路241cの短手方向の全幅(間に複数の流路が含まれる場合は、その全体の幅)は短くなっている。これにより、中央流路241bの右側の液体導入流路241cと左側の液体導入流
路241cの断面積がほぼ同じになり、より温度ばらつきを低減できる。
図11(a)および(b)は本発明の他の液体吐出ヘッドに用いることのできる液体吐出ヘッド本体313の平面図であり、(c)は縦断面図である。全ての内部構造を示すと複雑になるため、図11(a)および(b)ではそれぞれ一部を示している。図11(a)では内部構造のうち、液体導入流路341cの上側の流路、および液体吐出孔8が形成されている前記液体吐出孔開口領域16を示している。図11(b)では内部構造のうち、液体導入流路341cおよび中央流路341bを示している。
図11は本発明の他の液体吐出ヘッドに用いることのできる第2の流路部材340の平面図である。第2の流路部材340は、外形的には第2の流路部材40と同じであり、第1の流路部材4の構造は同じある。第2の流路部材340では、折り返し部341c−1の上側の面は、他方の端B側が高い傾斜面である場合、液体に混じった気体が、折り返し部341c−1の上側の面に沿って中央流路41bと反対側に向かうため、気体が第1の流路部材4のマニホールド5に入ることを抑制できる。この場合角度は、液体吐出孔面4aに対して0.5度以上であるのが好ましく、さらに1度以上、特に2度以上であるのが好ましい。
また、液体導入流路341cのうち一方の端Aから他方の端Bに向かう液体導入流路341cの中央流路341bのある部分から流路の下側の面を他方の端B側が高い傾斜面にするのが好ましい。このようにすることで、液体よりも重い異物が斜面に留まり、中央流路41bに向かうことを抑制できる。この場合角度は、液体吐出孔面4aに対して0.5度以上であるのが好ましく、さらに1度以上、特に2度以上であるのが好ましい。
また、このようにすることで、下側に折り返した折り返し部341c−1の上面と、その上の流路の下面の角度が近くなり、空間の利用効率がよくなり、液体吐出ヘッド2を小さくできる。
またさらに、ダンパ345を、折り返し部341c−1と中央流路341bを挟んで反対側に形成すれば、折り返し部341c−1の厚さの分の空気室346を確保でき、空間の利用効率がよくなり、液体吐出ヘッド2を小さくできる。
以上は、1つの液体吐出ヘッド2により印刷されたものの印刷ばらつきについて説明してきたが、複数の液体吐出ヘッド2により印刷する場合は、次の点を考慮するのが好ましい。複数の液体吐出ヘッド2は、プリンタ1に直接固定するようにしてもよいが、ここでは、図12(a)、(b)に示すようにヘッドフレーム60、560に固定して、ヘッドフレーム60、560を取り付ける例で説明する。
図12(a)に示すヘッドフレーム60は、4つの開口65を備えており、開口65にそれぞれ液体吐出ヘッド2が入れられ、その両端にある図示しない固定部で固定される。さらに、ヘッドフレーム60は取り付け部67を備えており、これでプリンタ1に取り付けられる。ヘッドフレーム60に取り付けられた4つの液体吐出ヘッド2は、液体吐出孔開口領域16が液体吐出孔開口領域16の長手方向が同じ方向に向くとともに、図12(a)における搬送方向である図の上下方向から見た場合に、液体吐出孔開口領域16が長手方向である一方方向に連続するように配置されている。このように配置されていることにより、4つの液体吐出ヘッド2により、一方方向に連続した領域に印刷することができる。なお、液体吐出孔開口領域16が繋がっているとは、次のいずれでの状態でもよい。すなわち、図12(a)に示すように、液体吐出孔開口領域16の端の三角形の領域が重なるように配置して、その重なっている部分により印刷される領域は、2つの液体吐出ヘッド2から吐出される液滴が混在して、着弾するようにする。あるいは、液体吐出孔開口
領域16の端の三角形の領域からは吐出を行なわず、残りの液体吐出孔開口領域16が隣接するように液体吐出ヘッド2を配置する。
液体吐出ヘッド2では、供給チューブ42を流れてきた液体が、液体吐出ヘッド2(液体吐出孔開口領域16)の長手方向の一端の液体導入孔41dから入り、液体吐出ヘッド2の他端まで流れて折り返し、中央で下側に落ちるように流れることで、液体吐出ヘッド2の長手方向の温度分布を少なくすることができるが、それでもまだ温度差を残っているおそれがある。その影響は、比較的少なくなっているので、一つの液体吐出ヘッド2内においては、あまり目立たないと考えられるが、隣接する液体吐出ヘッド2との境界では目立つ可能性がある。すなわち、比較的低温となっている液体吐出ヘッド2の端と比較的高温となっている液体吐出ヘッド2の端とが隣接していると、その2つの間では液体吐出特性に差が生じるので、境界が目立つ可能性がある。
そこで、搬送方向から見て、液体吐出孔開口領域16の端同士が繋がっている2つの前記液体吐出ヘッド2は、液体吐出孔開口領域16の一端同士または他端同士が繋がるように配置する。別の言い方をすれば、搬送方向から見て、液体吐出孔開口領域16の端同士が繋がっている2つの前記液体吐出ヘッド2は、液体導入孔41dのある側が、逆になっているようにする。これにより、比較的低温の液体吐出ヘッド2の端同士、あるいは比較的高温の液体吐出ヘッド2の端同士が隣接していることになるので、その境界を目立たなくさせることができる。
図12(b)に示すヘッドフレーム560は、8つの開口65を備えており、開口65にそれぞれ液体吐出ヘッド2が入れられて、その両端にある図示しない固定部で固定される。ヘッドフレーム60に取り付けられた8つの液体吐出ヘッド2は、液体吐出孔開口領域16が液体吐出孔開口領域16の長手方向が同じ方向に向いており、図12(b)において、上側の4つの液体吐出ヘッド2の位置の関係は、図12(a)の4つの液体吐出ヘッド2の位置の関係と同じであり、下側の4つの液体吐出ヘッド2の位置の関係も同様である。搬送方向から見て、上側の4つの液体吐出ヘッド2の液体吐出孔開口領域16が繋がった領域は、全体として、上側の4つの液体吐出ヘッド2の液体吐出孔開口領域16が繋がった領域はと重なるようになっている。このような配置は、図12(b)において、上側の4つの液体吐出ヘッド2と下側の4つの液体吐出ヘッド2とは、記録媒体上での画素を搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度を2倍にしたり、搬送方向に直交する方向に僅かにずらして配置して、長手方向の解像度を2倍にして印刷したりするのに用いられる。
そして、搬送方向から見て、液体吐出孔開口領域16が搬送方向に重なるように配置された複数の液体吐出ヘッド2では、液体吐出孔開口領域16の一端および他端が同じ側になるように、液体吐出ヘッド2を配置する。別の言い方をすれば、重なるように配置された液体吐出ヘッド2では、液体導入孔41dの位置が、各液体吐出ヘッド2に対して、同じ側になるように配置する。これにより、ヘッドフレーム60の場合と同様に長手方向に繋がっている液体吐出孔開口領域16の境界が目立たなくできるとともに、上側の4つの液体吐出ヘッド2と下側の4つの液体吐出ヘッド2の長手方向の温度分布が近くなっているので、上側の4つの液体吐出ヘッド2と下側の4つの液体吐出ヘッド2との印刷の差も目立ち難くできる。これは、重なるように配置されている液体吐出ヘッド2が違う色を印刷する場合は、単に濃度のばらつきを少なくできるだけではなく、色合いのばらつきを少なくできるので好ましい。
以上のような液体吐出ヘッド2は、例えば、以下のようにして作製する。
ロールコータ法、スリットコーター法などの一般的なテープ成形法により、圧電性セラ
ミック粉末と有機組成物からなるテープの成形を行ない、焼成後に圧電セラミック層21a、21bとなる複数のグリーンシートを作製する。グリーンシートの一部には、その表面に共通電極34となる電極ペーストを印刷法等により形成する。また、必要に応じてグリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体を充填する。
ついで、各グリーンシートを積層して積層体を作製し、加圧密着を行なう。加圧密着後の積層体を高濃度酸素雰囲気下で焼成し、その後有機金ペーストを用いて焼成体表面に個別電極35を印刷して、焼成した後、Agペーストを用いて接続電極36を印刷し、焼成することにより、圧電アクチュエータユニット21を作製する。
次に、第1の流路部材4を、圧延法等により得られプレート22〜31を接着層を介して積層して作製する。プレート22〜31に、マニホールド5、個別供給流路6、液体加圧室10およびディセンダなどとなる孔を、エッチングにより所定の形状に加工する。
これらプレート22〜31は、Fe―Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種の金属によって形成されていることが望ましく、特に液体としてインクを使用する場合にはインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましため、Fe−Cr系がより好ましい。
第2の流路部材40も同様にさまざまな孔を開けたプレート40a〜40eとダンパ45となる樹脂フィルムを積層接着して作製する。
圧電アクチュエータユニット21と第1の流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータユニット21や第1の流路部材4への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータユニット21と第1の流路部材4とを加熱接合することができる。
次に圧電アクチュエータユニット21と制御回路100とを電気的に接続するために、接続電極36に銀ペーストを供給し、あらかじめドライバIC55を実装した信号伝達部92であるFPCを載置し、熱を加えて銀ペーストを硬化させて電気的に接続させる。なお、ドライバIC55の実装は、信号伝達部92に半田で電気的にフリップチップ接続した後、半田周囲に保護樹脂を供給して硬化させた。
続いて、第2の流路部材40と第1の流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータユニット21や第1の流路部材4への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、第2の流路部材40と第1の流路部材4とを加熱接合することができる。
続いて、フレーム96の所定の位置に断熱性弾性部材95を樹脂などで取り付ける。断熱性弾性部材95としてゴムを取り付けたフレーム96と第2の流路部材40の間に、あらかじめコネクタ95を実装した基板94を挟み、ねじでフレーム96と第2の流路部材40とを接合するとともに、基板94を固定した。
さらに、信号伝達部92をまげて、信号伝達部92の一端をコネクタ95に差し込んで
固定する。その後、サイドプレート90bをねじで第2の流路部材に付け、上部筐体90aをはめ、上部筐体90aをフレーム96にねじで固定して、液体吐出ヘッド2を作製することができる。