図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることが
できる。
液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体2aを有している。ヘッド本体2aの下面は、液体を吐出する多数の吐出孔が設けられている吐出孔面4−1となっている。
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた液体吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2には図示しない外部液体タンクから液体が供給される。各液体吐出ヘッド2の液体吐出孔8は、液体吐出孔面に開口しており、一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、例えば、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、液体吐出ヘッド本体13の下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aから印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
次に、本発明の液体吐出ヘッド2について説明する。図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した平面図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため図3とは異なる一部の流路を省略した図である。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきしぼり6、吐出孔8、加圧室10などを実線で描いている。また、図4の吐出孔8は、位置を分かりやすくするため、実際の径よりも大きく描いてある。図5は図3のV−V線に沿った縦断面図である。図6(a)は、液体吐出ヘッド2の部分縦断面図であり、図6(b)〜(e)は、リザーバ40を構成する部材の平面図である。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aやリザーバ以外に、金属製の筐体を含んでいる。また。ヘッド本体2aは、流路部材4と、変位素子(加圧部)30が作り込まれている圧電アクチュエータ基板21とを含んでいる。
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、共通流路であるマニホールド5と、マニホー
ルド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備え、加圧室10は流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面4−2となっている。また、流路部材4の上面にはマニホールド5と繋がる開口5aを有し、この開口5aより液体が供給されるようになっている。
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように設けられている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部92が接続されている。図2には、2つの信号伝達部92が圧電アクチュエータ基板21に繋がる状態が分かるように、信号伝達部92の圧電アクチュエータ21に接続される付近の外形を点線で示した。圧電アクチュエータ21に電気的に接続されている、信号伝達部92に形成されている電極は、信号伝達部92の端部に、矩形状に配置されている。2つの信号伝達部92は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つの信号伝達部92は、中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
また、信号伝達部92にはドライバICが実装されている。ドライバICは金属製の筐体に押し付けられるように実装されており、ドライバICの熱は、金属製の筐体に伝わり、外部に放散される。圧電アクチュエータ基板21上の変位素子30を駆動する駆動信号は、ドライバIC内で生成される。駆動信号の生成を制御する信号は、制御部100で生成され、信号伝達部92の圧電アクチュエータ基板21と接続された側と反対側の端から入力される。制御部100と信号伝達部92との間には、必要に応じて、液体吐出ヘッド2内に回路基板などが設けられる。
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に接続された変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
流路部材4の内部には2つのマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に伸びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口しているマニホールドの開口5aが形成されている。マニホールド5の両端部から流路部材4へ液体を供給することにより、液体の供給不足が起り難くできる。また、マニホールド5の一端から供給する場合と比較して、マニホールド5を液体が流れる際に生じる圧力損失の差を約半分にできるため、液体吐出特性のばらつきを少なくできる。さらに、圧力損失の差を少なくするために、マニホールド5の中央付近で供給したり、マニホールド5の途中の数か所から供給することも考えられるが、そのような構造では液体吐出ヘッド2の幅が大きくなり、吐出孔8の配置の液体吐出ヘッド2の幅方向への広がりも大きくなってしまう。そのような配置は、液体吐出ヘッド2をプリンタ1に取り付ける角度のずれが印刷結果に与える影響が大きくなるので好ましくない。複数の液体吐出ヘッド2を用いて印刷する場合においても、複数の液体吐出ヘッド2の全体の吐出孔8が配置されている面積が広がるので、複数の液体吐出ヘッド2の相対的な位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなるので好ましくない。そのため、液体吐出ヘッド2の幅を小さくしつつ、圧力損失の差を少なくするためには、マニホールド5の両端から供給するのが好ましい。
また、マニホールド5は、少なくとも加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分が、幅方向に間隔を開けて設けられた隔壁15で仕切られている。隔壁15は、加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分では、マニホールド5と同じ高さを有し、マニホールド5を複数の副マニホールド5bに完全に仕切っている。このよう
にすることで、平面視したときに、隔壁15と重なるように、吐出孔8および吐出孔8と加圧室10とを繋げる流路であるディセンダを設けることができる。
図2では、マニホールド5の両端部を除く全体が隔壁15で仕切られている。このようにする以外に、両端部のうちのどちらか一端部以外が隔壁15で仕切られているようにしてもよい。また、流路部材4の上面に開口している開口5a付近のみが仕切られておらず、開口5aから流路部材4の深さ方向に向かう間に隔壁が設けられるようにしてもよい。いずれにしても、仕切られていない部分があることにより、流路抵抗が小さくなり、液体の供給量を多くできるので、マニホールド5の両端部が隔壁15で仕切られていないのが好ましい。
複数に分けられた部分のマニホールド5を副マニホールド5bと呼ぶことがある。本実施例においては、マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。また、1つのマニホールド5には、7つの隔壁15が設けられており、8つの副マニホールド5bに分けられている。副マニホールド5bの幅は、隔壁15の幅より大きくなっており、これにより副マニホールド5bに多くの液体を流すことができる。また、7つの隔壁15は、幅方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、マニホールド5の両端において、幅方向の中央に近い隔壁15ほど、隔壁15の端がマニホールド5の端に近くなっている。これにより、マニホールド5の外側の壁により生じる流路抵抗と、隔壁15により生じる流路抵抗との間のバランスがとれ、各副マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる部分である個別供給流路14が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。この個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすれば、吐出ばらつきを低減できる。
このような短手方向に並んでいるマニホールド5に液体を供給する開口(供給孔)5aは、ヘッド本体2aの両端部において、流路部材4の長手方向に交差する方向にわたって配置されていることにより、マニホールド5の幅方向(ヘッド本体2aの短手方向)の端にも安定して液体を供給できる。開口5aはマニホールド5の幅と同程度の長さのものが、流路部材4の短手方向に配置されることにより、長い開口が連続して設けられていてもよいし、短い開口が断続的に設けられていてもよい。詳細は後述するが、リザーバ40に設けられている第2のリザーバ流路44と同じ数の開口5aが設けられるのが好ましい。これにより1つの第2のリザーバ流路44と開口5aとの間で、流路の分岐がなくなり、液体の供給がスムーズになる。
流路部材4は、複数の加圧室10が2次元的に広がって形成されている。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。
加圧室10は1つの副マニホールド5bと個別供給流路14を介して繋がっている。1つの副マニホールド5bに沿うようにして、この副マニホールド5bに繋がっている加圧室10の列である加圧室列11が、副マニホールド5bの両側に1列ずつ、合計2列設けられている。したがって、1つのマニホールド5に対して、16列の加圧室11が設けられており、ヘッド本体2a全体では32列の加圧室列11が設けられている。各加圧室列11における加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。
各加圧室列11の端にはダミー加圧室16が設けられている。このダミー加圧室16は、マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32列の加圧室列11の外側には、ダミー加圧室16が直線状に並んだダミー加圧室列が設けられている。このダミー加圧室16は、マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がってい
ない。これらのダミー加圧室により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくできる。なお、周囲の構造の差の影響は、距離の近い、長さ方向に隣接する加圧室10の影響が大きいため、長さ方向には、両端にダミー加圧室を設けてある。幅方向については、影響が比較的小さいため、ヘッド本体21aの端に近い方のみに設けている。これにより、ヘッド本体21aの幅を小さくできる。
1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は、矩形状の圧電アクチュエータ基板21の各外辺に沿った行および列をなす格子上に配置されている。これにより、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じ難くできる。圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、この変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。また、最も外辺に近い加圧室列11の外側にダミー加圧室16のダミー加圧室列が設けられているために、変形の影響をより受け難くできる。加圧室列11に属する加圧室10は等間隔で配置されており、加圧室列11に対応する個別電極25も等間隔で配置されている。加圧室列11は短手方向に等間隔で配置されており、加圧室列11に対応する個別電極25の列も短手方向に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
本実施例では、加圧室10は格子状に配置したが、隣接する圧室列11に属する加圧室10の間に角部が位置するように千鳥状に配置してもよい。このようにすると、隣接加圧室列11に属する加圧室10の間の距離がより長くなるので、よりクロストークを抑制できる。
加圧室列11をどのように並べるかによらず、流路部材4を平面視したとき、1つの加圧室列11に属する加圧室10が、隣接する加圧室列11に属する加圧室10と、液体吐出ヘッド2の長手方向において、重ならないように配置することにより、クロストークを抑制できる。一方、加圧室列11の間の距離を離すと、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度や、複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、隔壁15の幅を副マニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。
1つの副マニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2列の加圧室列11をなしており、1つの加圧室列11に属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔列9をなしている。2列の加圧室列11に属する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、副マニホールド5bの異なる側に開口している。図4では隔壁15には、2列の吐出孔列9が設けられているが、それぞれの吐出孔列9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側の副マニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接する副マニホールド5bに加圧室列11を介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを少なくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを少なくすることができる。
また、平面視において、加圧室10と副マニホールド5bとが重なるように配置することにより、液体吐出ヘッド2の幅を小さくできる。加圧室10の面積に対する、重なっている面積の割合が80%以上、さらに90%以上にすることで、液体吐出ヘッド2の幅を
より小さくできる。また、加圧室10と副マニホールド5bとが重なっている部分の加圧室10の底面は、副マニホールド5bと重なっていない場合と比較して剛性が低くなっており、その差により吐出特性がばらつくおそれがある。加圧室10全体の面積に対する、副マニホールド5bと重なっている加圧室10の面積の割合を、各加圧室10で略同じにすることで、加圧室10を構成する底面の剛性が変わることによる吐出特性のばらつきを少なくすることができる。ここで略同じとは、面積の割合の差が、10%以下、特に5%以下であることを言う。
1つのマニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により加圧室群が構成されており、マニホールド5が2つあるため、加圧室群は2つある。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、一方は他方を短手方向に平行移動させ位置に配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなった部分があるものの、ほぼ全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がるディセンダが伸びている。ディセンダは、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室列11内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図4に示した仮想直線のRの範囲に、各マニホールド5に繋がっている16個の吐出孔8、全部で32個の吐出孔8が、1200dpiの等間隔となっているということである。これにより、全てのマニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に1200dpiの解像度で画像が形成可能となる。また、1つのマニホールド5に繋がっている1個の吐出孔8は、仮想直線のRの範囲で600dpiの等間隔になっている。これにより、各マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で2色の画像が形成可能となる。この場合、2つの液体吐出ヘッド2を用いれば、600dpiの解像度で4色の画像が形成可能となり、600dpiで印刷可能な液体吐出ヘッドを用いるよりも、印刷精度が高くなり、印刷のセッティングも簡単にできる。
液体吐出ヘッド2には、ヘッド本体2aの両端部にあるマニホールドの開口5aに液体を供給するために、リザーバ40が積層されている。リザーバ40は、ヘッド本体2aと同じ方向に長い平板形状をなしている。また、リザーバ40は、平板状のプレート40a、c〜gおよびダンパプレート40bが積層されている構造をしている。ダンパプレート40bは内部に張り付けられる構造としてもよい。リザーバ流路となる凹部あるいは孔が形成されているプレート40d、fは厚さが5〜10mm程度とされており、ダンパプレート40b以外の他のプレートは0.1〜5mm程度とされる。
リザーバ40に設けられているリザーバ流路は、第1のリザーバ流路42と、第1のリザーバ流路42とヘッド本体2aの開口5aとを繋いでいる第2のリザーバ流路44とを含んでいる。第1のリザーバ流路42、リザーバ40の長手方向に沿って伸びているものが、短手方向に複数並んでいる。第1のリザーバ流路42は、リザーバ40の両端部で外
部に繋がっている。
複数の第1のリザーバ流路42は、それぞれ、リザーバ40の長手方向における一方の側に位置する第1部位42aと、他方の側に位置する第2部位42bとを含んでいる。第
1部位の底部42aaは、第2部位の底部42baよりも、ヘッド本体2a側に位置している。なお、ここで底部とは、流路のうち、もっともヘッド本体2a側に位置する部位のことである。
このような構造を有していることにより、液体吐出ヘッド2に最初に液体を入れる際に、第1部位42a側から液体を供給すれば、液体に混ざった気泡を第2部位42bから排出することで、気泡をヘッド本体2a側に行き難くすることができる。最初に液体を入れる際には、液体吐出ヘッド2内にあった空気と混ざり、通常の印刷を行なっている場合と比べて、多くの気泡が混じった液体が、液体吐出ヘッド2を満たすことになる。その際、液体中の気泡は、第1部位42aを第2部位42b側に向かって進む間に、第1部位42aの上方に浮かび上がってくる。さらに、液体が第1部位42aの第2部位42b側の端に達すると、第2部位42bの底部42baが第1部位42aの底部42aaより上方に位置するため、第1部位42aから第2部位42aに向かって液体が上昇する流れが生じ
る。気泡は、この流れに乗って第2部位42bに流れ込むため、第1部位42aに留まり難くなる。
そして、第1のリザーバ流路42と第2のリザーバ流路44とは、第1部位42aで繋がっているので、気泡が第1部位42aに留まり難いことにより、気泡は第2のリザーバ流路44に流れ込み難くなり、ヘッド本体2aにも流れ込み難くなる。第2のリザーバ流路44が繋がっている位置は、第2部位42bの底部42baよりヘッド本体2aに近い位置であれば、気泡はさらにヘッド本体2aに流れ込み難くなる。特に、気泡をヘッド本体2aに流れ込み難くさせるには、第2のリザーバ流路44が繋がっている位置を、第1部位42aの底部42aにすればよい。
さらに、平面視したとき、第1部位42aと第2部位42bとの境界部42cの幅が、前記第1部位42aの本体部の幅および第2部位42bの本体部の幅より狭くなっていることが好ましい。そのような構造にすれば、境界部42cにおける、第1部位42aの第2部位42b側の端から第2部位42bに向かって、上方に進む液体の流速が速まり、気泡が、第1部位42aにより留まり難く、ヘッド本体2aにより流れ込み難くできる。
ヘッド本体2aから吐出する液体の総量が多くなる場合、例えば、各吐出孔8から吐出される液滴量が同程度でも、ヘッド本体2aの短手方向に並ぶ吐出孔8の個数が増えた場合などには、それに対応させてリザーバ流路の総断面積を大きくするのが好ましい。しかし、単純に断面積を大きくすると、境界部42cの、増えた断面の一部において、液体が留まったり逆流するような複雑な液体の流れが生じて、気泡の一部が第2部位42bに排出されず、ヘッド本体2aに流れ込む可能性が高まる。そのため、第1のリザーバ流路42は、複数個設ける。また、複数ある第1のリザーバ流路42は、第1部位42a側の端で結合し、結合した先で外部に開口するようにする。このようにすることで、第1部位42側の一カ所から供給した液体に混ざっている気泡を、複数ある境界部42cにおいて、主に第2部位42bに送ることで、ヘッド本体2aに気泡が入り難くできる。
また、複数ある第1リザーバ流路42bの第2部位側の端も、結合し、結合した先で外部に開口しているのが好ましい。これにより、液体を排出するチューブなどを接続する個数を少なくできるため、接続する手間を減らすことができる。また、第2リザーバ流路44を複数設ける場合には、通常の印刷を行なっている状態において、印刷するパターンの違いなどにより、それら複数の第2リザーバ流路44の流量に差が生じことがあるが、そ
のような際に、複数ある第1のリザーバ流路42間の流量の差が、第1部位42a側で結合している流路を通じて液体が流れることにより緩和されるだけでなく、第2部位42b側で結合している流路を通じて液体が流れることによっても緩和されるので好ましい。 図6(b)では、第1のリザーバ流路42は、両端部の両方において、第1のリザーバ流路の結合流路43に結合されている。結合流路43の第1のリザーバ流路42に繋がっている側と反対の端は、外部に開口している第1のリザーバ流路42の結合流路の供給孔43aとなっている。
第2のリザーバ流路44は、リザーバ40の長手方向に沿って伸びており、短手方向に第1のリザーバ流路42と同数並んでおり、両端部で開口5aと繋がっている。第2のリザーバ流路44は、複数のある第1のリザーバ流路42を出た後1つにまとめられてもよいが、1つの第1のリザーバ流路42から繋がっている1つの第2のリザーバ流路が、そのままリザーバ40の長手方向に伸びて、その両端部で開口5aと繋がっているのが好ましい。そのような構成することで、複数ある第1のリザーバ流路42に分岐することで、液体が液体吐出ヘッド2の短手方向に広がるように分配され、さらに、複数ある第2のリザーバ流路44により、液体が液体吐出ヘッド2の長手方向の両端に分配される。これによりヘッド本体2aの両端部それぞれにおいて、短手方向に沿って分配された液体を安定して供給できるようになる。
また、第2のリザーバ流路44は、詳細には、第1のリザーバ流路44からヘッド本体2a側に向かう中継孔44aと、中継孔44aを通る液体を受けて、リザーバ40の長手方向に伸びる第2のリザーバ流路44bと、第2のリザーバ流路44は両端部から、ヘッド本体2a側に向かい開口5aと繋がる第2のリザーバ流路の流出孔44cを含んでいる。また、別の観点では、液体吐出ヘッド2は、複数の吐出孔8および複数の吐出孔8に繋がっている複数の供給孔5aを備えている、平板状で一方方向に長いヘッド本体2aと、ヘッド本体2aに積層されており、複数の供給孔8に繋がっているリザーバ流路を備えている、平板状で前記一方方向に長いリザーバ40とを備えている液体吐出ヘッド2であって、複数の供給孔5aは、ヘッド本体2aの一方の主面の両端部で、それぞれ前記一方方向に交差する方向にわたって配置されており、前記リザーバ流路は、前記一方方向に沿って伸びている複数の第1のリザーバ流路42と、第1のリザーバ流路42よりヘッド本体2a側に配置されており、前記一方方向に沿って伸びていて、第1のリザーバ流路42とそれぞれ繋がっている複数の第2のリザーバ流路44とを含んでおり、複数の第1のリザーバ流路42は、前記一方方向の両端部のそれぞれで、外部に開口しているか、複数の第1のリザーバ流路42が繋がっており、繋がった先で外部に開口しているかのいずれかであり、さらに前記一方方向における両端部の少なくとも一方で繋がっており、第2のリザーバ流路44は、前記一方方向の両端部で、複数の供給孔5aと繋がっているのが好ましい。
特許文献1に記載の液体吐出ヘッドでは、マニホールドの開口している部分には、圧電アクチュエータ基板が積層されていないので、その直下には、吐出孔が設けられていない。このため、液体吐出ヘッドは短手方向に大きくなってしまい、記録装置に取り付ける際の、取り付け角度の精度が同程度であっても、印刷結果が悪くなってしまうことがあった。短手方向の長さを小さくするには、流路部材の長手方向の両端から液体を供給することが考えられるが、そのような場合のリザーバとしては、特許文献1に記載のリザーバは、適切な構造ではなかった。
上述の構成によれば、リザーバ40における液体吐出ヘッド2の短手方向への大きな分配が、第1のリザーバ流路42から、第1のリザーバ流路42よりヘッド本体2a側に位置する第2のリザーバ流路44に向かう間に行われているため、液体吐出ヘッド2の短手方向へ液体の分配を効率よく行なうことができる。
このような構成、特に中継孔44aで落とし込まれたインクが、1つの平面内で分岐しないことにより、液体の滞留が起き難く、液体の詰まりや、気泡の溜まりが生じ難い。第2のリザーバ流路本体44bの幅が大きくなると、流路内の液体が一様に流れ難くなるので、幅は1.5cm以下、より好ましくは1cm以下にするのがよい。また、第2のリザーバ流路本体44bの幅に対して、マニホールドの開口5aの幅(ヘッド本体2aの短手方向の幅)が大きいと、第2のリザーバ流路本体44bの端でマニホールドの開口5aの幅を大きくしてマニホールドの開口5aに繋いだとしても、マニホールドの開口5aの幅の中の位置によって液体の供給の差が大きくなるので好ましくなく、マニホールドの開口5aの幅は、第2のリザーバ流路44の幅に対して、左右それぞれで、その幅と同程度に広がる範囲、すなわち幅が3倍以下にするのがよい。
他方、第2のリザーバ流路本体44bとマニホールドの開口5aの幅とを同じにすると、第2のリザーバ流路44の数がいたずらに多くなり、リザーバ40の構造が複雑になる。また、プレート同士を接合する領域の面積が小さくなり、接着強度が低くなったり、液体の流出が生じやすくなるおそれがあるので、第2のリザーバ流路本体44bの幅は両端部以外ではほぼ一定幅とし、両端部で広げるのがよい。
両端部で広げる角度は60度以下にすれば、広がった側面に沿って液体が流れ、開口5a全体に液体が供給されるようになるので好ましい。広がる角度が広すぎると、液体の流れ側面から剥離して、リザーバ40の長手方向に直進する液体の流れが多くなり、開口5aの中央への液体の供給が多くなるおそれがある。前述したように広がりの角度が狭いと第2リザーバ流路44の個数が多くなるおそれがあるので両端部で広がる角度は、片側30〜60度の範囲にするのがよい。
逆に言えば、1つの第2のリザーバ流路44でヘッド本体2aに短手方向に全体のマニホールドの開口5aに液体を供給すると、供給が安定し難いので、第2のリザーバ流路44を設ける。液体を平板状のリザーバ40の1つの平面内で分岐させる、すなわち液体の流入と2つ以上の液体の流出が重力の作用しない平面内で行われると、気泡の滞留などが生じ易いが、このような分岐を、外部からの流入するところに近い部分で行なうのがよい。
本実施形態では、分岐は、複数ある第1のリザーバ流路42に分かれるところで行われ、その後、液体は中継孔44aで下方に向かうため、気泡などが流路部材4に流入し難い。さらに、分岐の後にフィルタ48が設けられていることにより、気泡などが流路部材4により流入し難い。
第1のリザーバ流路42は、中継孔44aを向かった後1平面内での分岐が起きないように、第2のリザーバ流路42と同数設けられる。結合流路43は液体が供給される側に設けられる。反対側の端部は、複数の第1のリザーバ流路42が結合流路43に繋がって、その先で外部に開口していてもよいし、複数の第1のリザーバ流路42がそれぞれ外部に開口していてもよい。
結合流路43は、2つの第1のリザーバ流路42に分岐する前に直線部分が設けられていて、それらと成す角度が略同じであれば、分岐する液体の流れがほぼ均等になり好ましい。
また、図6(b)〜(e)に示したプレートには、位置測定孔50が設けられている。位置測定孔50は、プレートを積層するための位置合わせや、積層後の積層精度測定などに使われる。位置測定孔50は、精度を高めるために、プレートの長手方向の両端部にお
ける短手方向の中央部に設けられる。結合流路43は、分岐する前の直線部分を延長すると、位置測定孔50と重なってしまうので、結合流路43は途中で平面方向に曲げてから外部に開口するようにするのが好ましい。
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24とビアホールを介して電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2列形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。
圧電アクチュエータ基板21は、後述のようにビアホールを形成した圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21bを積層し、焼成した後、個別電極25および共通電極用表面電極28を同一工程で形成するのが好ましい。個別電極25と加圧室10との位置ばらつきは吐出特性に大きく影響を与えこと、個別電極25を形成した後、焼成すると圧電アクチュエータ基板21に反りが生じるおそれがあり、反りが生じた圧電アクチュエータ基板21を流路部材4に接合すると、圧電アクチュエータ基板21に応力が加わった状態になり、その影響で変位がばらつくおそれがあることから、個別電極25は、焼成後に形成される。共通電極用表面電極28も同様に反りを生じされるおそれがあることと、個別電極25と同時に形成した方が、位置精度が高くなり、工程も簡略化できるので、個別電極25と共通電極用表面電極28は同一工程で形成される。
このような圧電アクチュエータ基板21を焼成する際に生じるおそれのある、焼成収縮によるビアホールの位置ばらつきは、主に圧電アクチュエータ基板21の長手方向に生じるので、共通電極用表面電極28が偶数個あるマニホールド5の中央、別の言い方をすれば、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央に設けられており、共通電極用表面電極28が圧電アクチュエータ基板21の長手方向に長い形状をしていることにより、ビアホールと共通電極用表面電極28とが位置ずれにより電気的に接続されなくなることを抑制できる。
圧電アクチュエータ基板21には、2枚の信号伝達部92が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。その際、圧電アクチュエータ基板21aの引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極を形成して接続することで、接続が容易になる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、信号伝達部92の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)にける接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、信号伝達部92が端からはがれ難くできる。
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置されたマニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4kおよびノズルプレート4lである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12およびマニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介してマニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端からマニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細にはマニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくなっている部位であるしぼり6が含まれている。
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4l(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。ノズルプレート4lの孔は、吐出孔8として、流路部材4の外部に開口している径が、例えば10〜40μmのもので、内部に向かって径が大きくなっていくものが開けられている。第4に、マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、副マニホールド5bを構成するように隔壁15となる仕切り部が残るように孔が形成されている。
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、マニホールド5からの液体の流入口(マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
圧電アクチュエータ基板21は、圧電体である2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置され
ている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21b上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極25に対応する加圧室10の体積が変わり、加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路12を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は1.5〜4.5pl(ピコリットル)程度である。
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホールド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出
される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、加圧
室10内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり、好ましい。
なお、本実施形態では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子30を示したが、これに限られるものでなく、加圧室10の体積を変化させることができるもの、すなわち、加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、例えば、加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたものでもよい。
液体吐出ヘッド2は、例えば、以下のようにして作製する。ロールコータ法、スリットコーター法などの一般的なテープ成形法により、圧電性セラミック粉末と有機組成物からなるテープの成形を行ない、焼成後に圧電セラミック層21a、21bとなる複数のグリーンシートを作製する。グリーンシートの一部には、その表面に共通電極24となる電極ペーストを印刷法等により形成する。また、必要に応じてグリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体を充填する。
ついで、各グリーンシートを積層して積層体を作製し、加圧密着を行なう。加圧密着後の積層体を高濃度酸素雰囲気下で焼成し、その後有機金ペーストを用いて焼成体表面に個別電極25を印刷して、焼成した後、Agペーストを用いて接続電極26を印刷し、焼成することにより、圧電アクチュエータ基板21を作製する。
次に、流路部材4を、圧延法等により得られプレート4a〜lを、接着層を介して積層して作製する。プレート4a〜lに、マニホールド5、個別供給流路14、加圧室10およびディセンダなどとなる孔を、エッチングにより所定の形状に加工する。
これらプレート4a〜lは、Fe―Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種の金属によって形成されていることが望ましく、特に液体としてインクを使用する場合にはインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましため、Fe−Cr系がより好ましい。
圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ基板21や流路部材4への影響をおよぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを加熱接合することができる。接合した後、共通電極24と個別電極25との間に電圧を加え、圧
電セラミック層21bを厚み方向に分極する。
次に圧電アクチュエータ基板21と制御回路100とを電気的に接続するために、接続電極26に銀ペーストを供給し、あらかじめドライバICを実装した信号伝達部92であるFPCを載置し、熱を加えて銀ペーストを硬化させて電気的に接続させる。なお、ドライバICの実装は、FPCに半田で電気的にフリップチップ接続した後、半田周囲に保護樹脂を供給して硬化させた。
リザーバ40は、リザーバ40を構成する金属にさまざまな孔あるいは凹部を形成したプレート40a、c〜gおよびダンパプレート40bを積層接着し。リザーバ40を作製した。プレート40a、c〜gの材質や、孔の作製、積層方法は、流路部材4と同様である。流路部材4の開口5aから液体を供給できるようにリザーバ40を接着し、接合部を封止剤で封止することで液体吐出ヘッド2を作製することができる。