図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタ(以下、プリンタ1とする)の概略構成図である。インクジェットプリ
ンタ1は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
プリンタ1は、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1は、液体吐出ヘッド2あるいは給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出す。
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118a,118b,119a,119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラ118a,118b,119a,119bによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106,107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106,107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラ106,107に巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラ106,107の共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
ベルトローラ106は、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転する。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106,107を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。ニップローラ138およびニップ受けローラ139は回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体2aを有している。ヘッド本体2aの下面は、液体を吐出する多数の吐出孔8(図4参照)が設けられている吐出孔面となっている。
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた吐出孔8からは、同じ色の液体(インク)が吐出される。各液体吐出ヘッド2には図示しない外部液体タンクから液体が供給される。各液体吐出ヘッド2の吐出孔8は、吐出孔面に開口しており、長手方向に等間隔で配置されているため、長手方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、例えば、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、液体吐出ヘッド本体13の下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aから印刷用紙Pの上面に向けて液体が吐出される。これにより、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121a,121b,122a,122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a,121b,122a,122bにより、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子(不図視)および受光素子(不図視)により構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2あるいは搬送モータ174等を制御している。
次に、液体吐出ヘッド2について説明する。図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した平面図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため図3とは異なる一部の流路を省略した図である。なお、図3,4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきしぼり6、吐出孔8、加圧室10などを実線で描いている。図5は図3のI−I線に沿った縦断面図である。図6は、図2〜5で示したヘッド本体2aの拡大平面図であり、加圧室10、第2電極である個別電極25および接続電極26の関係を示したものである。また、図4の吐出孔8は、位置を分かりやすくするため、実際の径よりも大きく描いてある。
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外にリザーバ、および金属製の筐体を含んでいる。また。ヘッド本体2aは、流路部材4と、変位素子30(図5参照)が形成された圧電アクチュエータ基板21とを含んでいる。
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、マニホールド5と、マニホールド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備えている。加圧室10は、流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面となっている。また、流路部材4の上面にはマニホールド5と繋がる開口5aが設けられており、開口5aより液体が供給される。
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように設けられている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給するための配線基板であるFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部92が接続されている。図2では、2つの信号伝達部92が圧電アクチュエータ基板21に繋がる状態が分かるように、信号伝達部92の圧電アクチュエータ21に接続される付近の外形を点線で示している。
信号伝達部92は、圧電アクチュエータ基板21に沿って配置されており、信号伝達部92と圧電アクチュエータ基板21との接続は加圧室10以外の部分で行なわれているため、信号伝達部92は変位素子30の変位を抑制しない。信号伝達部92の圧電アクチュエータ基板21に対向している領域には、多数の配線(不図示)が、ヘッド本体2aの短手方向に沿って配置されており、図2の左右の図示されていない部分にまで繋がっている。
制御部100から送られた信号は、必要に応じて他の回路基板などを経た後、信号伝達部92を伝わって、変位素子30に供給される。信号伝達部92の配線の圧電アクチュエータ基板21側は、圧電アクチュエータ21に電気的に接続されている電極になっており、この電極は、信号伝達部92の端部に、矩形状に配置されている。2つの信号伝達部92は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つの信号伝達部92は、中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
また、信号伝達部92にはドライバIC(不図示)が実装されている。ドライバICは金属製の筐体に押し付けられるように実装されており、ドライバICの熱は、金属製の筐体に伝わり、外部に放熱される。圧電アクチュエータ基板21上の変位素子30を駆動する駆動信号は、ドライバIC内で生成される。駆動信号の生成を制御する信号は、制御部100で生成され、信号伝達部92の圧電アクチュエータ基板21と接続された側と反対側の端から入力される。制御部100と信号伝達部92との間には、必要に応じて、液体吐出ヘッド2内に回路基板などが設けられる。
ヘッド本体2aは、1つの平板状の流路部材4と、圧電アクチュエータ基板21とを1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
図2に示すように、流路部材4の内部には2つのマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に延びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口しているマニホールドの開口5aが形成されている。マニホールド5の両端部から流路部材4へ液体を供給することにより、液体の供給不足を起り難くできる。また、マニホールド5の一端から供給する場合と比較して、液体がマニホールド5を流れる際に生じる圧力損失の差を、約半分にできるため、液体吐出特性のばらつきを少なくできる。
また、マニホールド5は、少なくとも加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分が、幅方向に間隔を開けて設けられた隔壁15で仕切られている。隔壁15は、加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分では、マニホールド5と同じ高さを有し、マニホールド5を複数の副マニホールド5bに仕切っている。そのため、隔壁15が設けられた領域には流路部材4が設けられており、副マニホールド5bが形成された領域には液体が供給されるように空間が設けられている。このようにすることで、平面視したときに、隔壁15と重なるように、吐出孔8および吐出孔8から加圧室10に繋がるディセンダを設けることができる。
図2では、マニホールド5の両端部を除く全体が隔壁15で仕切られている。このようにする以外に、両端部のうちのどちらか一端部以外が隔壁15で仕切られていてもよい。また、流路部材4の上面の開口5a付近のみが仕切られておらず、開口5aから流路部材4の深さ方向に向かう間に、隔壁15が設けられるようにしてもよい。いずれにしても、仕切られていない部分があることにより、流路抵抗が小さくなり、液体の供給量を多くできるので、マニホールド5の両端部が隔壁15で仕切られていないことが好ましい。
本実施例においては、マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。また、1つのマニホールド5には、7つの隔壁15が設けられており、1つのマニホールド5は8つの副マニホールド5bに分けられている。副マニホールド5bの幅は、隔壁15の幅より大きくなっており、これにより副マニホールド5bに多くの液体を流すことができる。また、7つの隔壁15は、短手方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、マニホールド5の両端において、短手方向の中央に近い隔壁15ほど、隔壁15の端がマニホールド5の端に近くなっている。これにより、マニホールド5の外側の壁により生じる流路抵抗と、隔壁15により生じる流路抵抗との間の流路抵抗を均一に近づけることができ、各副マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる個別供給流路14(図5参照)が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすることにより吐出ばらつきを低減できる。
流路部材4は、複数の加圧室10が2次元的に広がって形成されている。図3に示すように、加圧室10は、個別供給流路14を介して1つの副マニホールド5bと繋がっている。1つの副マニホールド5bに沿うようにして、副マニホールド5bに繋がっている加圧室10の行である加圧室列11aが、副マニホールド5bの両側に1行ずつ、合計2行設けられている。したがって、1つのマニホールド5に対して、16行の加圧室行11が設けられており、ヘッド本体2a全体では32行の加圧室列11aが設けられている。各加圧室列11aにおける加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。なお、列方向L1および行方向L2の加圧室10の間隔は、等間隔にすることが好ましいが、間隔は±20%程度異なるようにしてもよい。
各加圧室列11aの行方向L2の外側にはダミー加圧室16が設けられており、ダミー加圧室16が列方向L1に直線状に並んだダミー加圧室列16aを形成している。ダミー加圧室列16aは、マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32行の加圧室列11aの列方向L1の外側にも、ダミー加圧室16が設けられており、ダミー加圧室16が行方向L2に直線状に並んだダミー加圧室行16bが設けられている。このダミー加圧室行16bは、マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がっていない。これらのダミー加圧室16により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の剛性が他の領域に設けられた加圧室10の剛性と近くなることため、加圧室10の位置による液体の吐出量および吐出速度(以下、吐出特性と称する場合がある)のばらつきの差を少なくできる。
1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は、液体吐出ヘッド2の長手方向である列方向L1と短手方向である行方向L2とに沿って、行上および列上で、それぞれ略等間隔で配置されている。図2〜4に示すように、第1方向である列方向L1は、マニホー
ルド5の隔壁15が延びる方向であり、行方向L2は、列方向L1に直交する方向である。加圧室10は、図6に示すように、平面視して略菱形の形状をなしており、角部にアールが施されており、2つの鋭角部10aと2つの鋭角部10bを有する略菱形の平面形状を有する中空の領域である。加圧室10の菱形形状は、それぞれの加圧室10の辺の長さ
が10%程度異なっていてもよい。
加圧室10を格子状の配置にして、圧電アクチュエータ基板21を、行および列に沿った外辺を有する矩形状にすると、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じる可能性を低減することができる。
圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、上記変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。加圧室列11aに属する加圧室10は列方向L1に等間隔で配置されており、加圧室列11aに対応する個別電極25も列方向L1に等間隔で配置されている。加圧室列11aは行方向L2に等間隔で配置されており、加圧室列11aに対応する個別電極25の列も行方向L2に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
流路部材4を平面視したとき、1つの加圧室列11aに属する加圧室10が、隣接する加圧室列11aに属する加圧室10と、列方向L1において、重ならないように配置することにより、クロストークを抑制できる。一方、加圧室列11aの行方向L2の間の距離を離間させると、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度や、複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、隔壁15の幅を副マニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。
1つの副マニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2行の加圧室列11aを構成しており、1つの加圧室列11aを構成する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔行9を構成している。2行の加圧室列11aを構成する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、副マニホールド5bの異なる側に開口している。
図4では隔壁15には、2行の吐出孔行9が設けられているが、それぞれの吐出孔行9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側の副マニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接する副マニホールド5bに加圧室列11aを介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2とを長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを小さくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを小さくすることができる。
また、平面視において、加圧室10と副マニホールド5bとを重なるように配置することにより、液体吐出ヘッド2の幅を小さくできる。加圧室10の面積に対する、副マニホールド5bと重なっている面積の割合が、80%以上、さらに90%以上にすることで、液体吐出ヘッド2の幅をより小さくできる。また、加圧室10と副マニホールド5bとが重なっている部分の加圧室10の底面は、副マニホールド5bと重なっていない場合に比べて剛性が低くなっており、その差により液体の吐出特性がばらつくおそれがある。加圧室10全体の面積に対する、副マニホールド5bと重なっている加圧室10の面積の割合を、各加圧室10で略同じにすることで、加圧室10を構成する底面の剛性が変わることによる吐出特性のばらつきを少なくすることができる。ここで略同じとは、面積の割合の差が、10%以下、特に5%以下であることを言う。
1つのマニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により、加圧室群(不図示)が構成されており、マニホールド5が2つ形成されているため、加圧室群は2つ形成されている。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、行方向L2に平行移動させた配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、略全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21と略同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面に開口している吐出孔8に繋がるディセンダが伸びている。ディセンダは、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室行11内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図4に示した仮想直線のSの範囲に、各マニホールド5に繋がっている全部で32個の吐出孔8が、1200dpiの等間隔に配置されている。これにより、全てのマニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に1200dpiの解像度で画像が形成可能となる。なお、1つのマニホールド5に繋がっている1個の吐出孔8は、仮想直線のSの範囲で600dpiの等間隔に配置されている。これにより、各マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で2色の画像が形成可能となる。この場合、2つの液体吐出ヘッド2を用いれば、600dpiの解像度で4色の画像が形成可能となり、液体吐出ヘッド2の印刷精度を高くすることができるとともに、液体吐出ヘッド2のセッティングを容易にすることができる。
図5に示すように、ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4kおよびノズルプレート4lである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12およびマニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介してマニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10となる孔である。第2に、加圧室10の一端からマニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細にはマニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくなっている部位であるしぼり6が含まれている。
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、こ
の連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4l(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。ノズルプレート4lの孔は、吐出孔8として、流路部材4の外部に開口している径が、例えば10〜40μmのもので、内部に向かって径が大きくなっていくものが開けられている。
第4に、マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、副マニホールド5bを構成するように隔壁15が残るように孔が形成されている。各マニホールドプレート4e〜jにおける隔壁15は、マニホールド5となる部分全体を孔にすると、保持できない状態になるので、隔壁15は、ハーフエッチングしたタブで各マニホールドプレート4e〜jの外周と繋がった状態にされる。
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、マニホールド5からの液体の流入口(マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
マニホールド5は、隔壁15により複数の副マニホールド5bに分けられていることから、マニホールド5の隔壁15が設けられた領域と、副マニホールド5bが設けられた領域において、流路部材4の剛性が異なることとなる。より具体的には、隔壁15が設けられた領域における剛性が、副マニホールド5bが設けられた領域の剛性よりも高いこととなる。
さらに、液体吐出ヘッド2は、マニホールド5の開口5aからの液体の供給を安定させるために流路部材4に、リザーバ(不図示)を接合してもよい。リザーバは、外部から供給された液体を分岐させて、2つの開口5aに繋がっているリザーバ流路が設けられているため、流路部材4の2つの開口に液体を安定して供給できる。また、分岐した後の流路長を略等しくすることで、外部から供給される液体の温度変動や圧力変動が、マニホールド5の両端の開口5aに、少ない時間差で伝わるため、液体吐出ヘッド2内の液体の吐出特性のばらつきをより少なくできる。リザーバにダンパ(不図示)を設けることで、さらに液体の供給が安定化できる。さらに、液体中の異物などが流路部材4に向かうのを抑制するように、フィルタを設けてもよい。またさらに、流路部材4に向かう液体の温度を安定化させるようにヒータを設けてもよい。
圧電アクチュエータ基板21は、共通電極24と圧電セラミック層21bと個別電極25とが、流路部材4からこの順に積層されている。そして、圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とが接合されている。圧電アクチュエータ基板21は、マニホールド5の隔壁15上に位置する領域R1と、マニホールド5の副マニホールド5b上に位置する領域R2とを備えている。
図6に示すように、個別電極25は、圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置にそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10と略相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10に対応して設けられている。
そして、略全ての引出電極25bが、第1領域R1に引き出されている。本実施形態においては、全ての個別電極25の引出電極25bが、第1領域R1に引き出されている。なお、略全ての引出電極25bとは、インクジェットヘッド2を構成する引出電極25bの総数のうち90%以上の引出電極25bを意味しており、好ましくは95%以上、さらに好ましくは、100%の引出電極25bを意味する。なお、本実施形態においては、全ての引出電極25bが第1領域R1に引き出された場合を例示して説明する。
また、引出電極25bは、一端部が、加圧室10の鋭角部10aを通って個別電極本体25aに接続されており、他端部が、加圧室列11bを構成する列上の領域Qと重ならないように引き出されている。個別電極25については、詳細は後述する。
図3に示すように、圧電アクチュエータ基板21の上面には、個別電極25と、第1電極である共通電極24とビアホールを介して電気的に接続された共通電極用表面電極28とが形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2行形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。
圧電アクチュエータ基板21を作製する際に、個別電極25と加圧室10との位置ばらつきは吐出特性に大きく影響を与えることがある。また、個別電極25を形成した後、焼成すると圧電アクチュエータ基板21に反りが生じるおそれがある。反りが生じた圧電アクチュエータ基板21を流路部材4に接合すると、圧電アクチュエータ基板21に応力が加わった状態になり、その影響で変位がばらつくおそれがあることから、圧電アクチュエータ基板21は、ビアホールを形成した圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21bを積層し、焼成した後、個別電極25および共通電極用表面電極28を同一工程で形成するのが好ましい。また、共通電極用表面電極28は、個別電極25と同時に形成した方が、位置精度が高くなり、工程も簡略化できるので、個別電極25と共通電極用表面電極28は同一工程で形成されることが好ましい。
このような圧電アクチュエータ基板21を焼成する際に生じるおそれのある、焼成収縮によるビアホールの位置ばらつきは、主に圧電アクチュエータ基板21の長手方向に生じるので、共通電極用表面電極28が偶数個あるマニホールド5の中央、別の言い方をすれば、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央に設けられており、共通電極用表面電極28が圧電アクチュエータ基板21の長手方向に長い形状をしていることにより、ビアホールと共通電極用表面電極28とが位置ずれにより電気的に接続されなくなることを抑制できる。
圧電アクチュエータ基板21には、2枚の信号伝達部92が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。その際、圧電アクチュエータ基板21の引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極(不図示)を形成して接続することで、接続を容易にすることができる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、信号伝達部92の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)にける接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、信号伝達部92が端からはがれ難くできる。
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置されたマニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの
群として圧電アクチュエータ基板21と略同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液体が吐出できる。
圧電アクチュエータ基板21は、圧電体層である2枚の圧電セラミック層21a,21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a,21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a,21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a,21bは、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの他端部の、加圧室10と対向する領域外に引き出された部分には、接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向の略全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホールを介して繋がっており、接地されグランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、個別電極25と共通電極24に教示された圧電セラミック層21bが変位して、個別電極25に対応する加圧室10の体積が変わり、加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これにより、個別流路12を通じて、対応する液体吐出口8から液体が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。
つまり、2枚の圧電セラミック層21a,21bからなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作製されており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は1.5〜4.5pl(ピコリットル)程度である。
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働
く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a,21bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホールド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a,21bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液体が吐出される。つまり、液体を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、加圧
室10内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液体を吐出させることができる。
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液体の数、つまり液体吐出回数で調整される液体量にて階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液体吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液体を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液体を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液体を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液体を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液体の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液体の着弾点が近くなり、好ましい。
以下、図6を用いて個別電極25を詳細に説明する。
個別電極25は、個別電極本体25aと、引出電極25bとを備えている。個別電極本体25aは、平面視して、略菱形形状をなしており、2つの鋭角部25a1と2つの鈍角部25a2とを備えている。また、平面視して、下方に設けられた加圧室10と略相似形状をなしており、加圧室10内に個別電極本体25aが収納されている。引出電極25bは、一端部が、加圧室10の一方の鋭角部10aを通って個別電極本体25aの鋭角部25a1に接続されており、他端部が、列方向L1に沿って接続電極26まで引き出されている。
図6に示すように、加圧室10は、その大部分が第2領域R2に形成されており、一方の鋭角部10aが、第1領域R1に形成されている。また、個別電極本体25aは、第2領域R2に形成されており、第1領域R1には形成されていない。また、引出電極25bは、第1領域R1にのみ形成されており、第2領域R2には形成されていない。
そして、個別電極25は、列方向L1に所定の間隔をあけて等間隔に複数配置されており、行方向L2にも所定の間隔をあけて等間隔に複数配置されている。また、全ての引出
電極25bは、一端部が個別電極本体25aに接続され、他端部が第1領域上R1にて列方向L1における一方側に向けて同じ距離引き出されている。そのため、引出電極25bの他端部に接続された接続電極26も、列方向L1および行方向L2に所定の間隔をあけて等間隔に配置されている。
ここで、液体吐出ヘッド2は、加圧室10に対応する圧電セラミック層21bに電圧を印加して圧電変形させることにより、加圧室10を加圧して吐出孔8から液体を吐出している。加圧室10に対応する圧電セラミック層21bに電圧を印加すると、引出電極25bの下方に位置する圧電セラミック層21bにおいても圧電変形が生じる。流路部材4は、副マニホールド5bとなる領域が空間を形成しているため、副マニホールド5bが形成された領域と、隔壁15が形成された領域とで剛性が異なる。この流路部材4の剛性の違いに起因して、圧電アクチュエータ基板21の第1領域R1の剛性と、圧電アクチュエータ基板21の第2領域R2の剛性とが異なることとなる。それに伴い、引出電極25bが、第1領域R1および第2領域R2のそれぞれに設けられた場合に、引出電極25bの下方に位置する圧電セラミック層21bに生じる圧電変形も異なることとなり、各加圧室10に対応する圧電セラミック層21bの圧電変形の変形量が異なる場合がある。それに伴い、各加圧室10に対応する各吐出孔8から吐出される液体の吐出量あるいは吐出速度にばらつきが生じる場合がある。
しかしながら、本実施形態にかかる液体吐出ヘッド2は、液体吐出ヘッド2を構成する個別電極25の略全ての引出電極25bが、第1領域に引き出されている。そのため、個別電極25ごとの個別電極25の下方に位置する圧電セラミック層21bの変形、言い換えると、個別電極25ごとの引出電極25bに起因する圧電セラミック層21bの変形のばらつきを低減することができる。それにより、各加圧室10に対応する圧電セラミック層21bの変形量のばらつきを低減することができ、各個別電極25に対応する吐出孔8からの液体の吐出量および吐出速度のばらつきを低減することができる。
つまり、個別電極25、圧電セラミック層21b、および共通電極24がこの順に積層される部位が変位素子30として機能するが、加圧室10上の変位素子30(以下、単に変位素子30とい)の引出電極25bに起因する変形を均一に近づけることができる。そのため、各加圧室10を加圧する各変位素子30の変形量が、各個別電極本体25aに起因する変形に依存することとなり、各吐出孔8からの液体の吐出量および吐出速度を容易に制御することができる。
また、全ての引出電極25bが、隔壁15の上方に位置する第1領域R1に引き出されていることから、隔壁15の高い剛性に起因して、各吐出孔8から吐出される液体の液体吐出速度を向上させることができるとともに、各吐出孔8から吐出される液体の吐出量および吐出速度のばらつきを低減することができる。
また、液体吐出ヘッド2は、引出電極25bが、一端部が個別電極本体25aの一方の鋭角部25a1に接続され、他端部が加圧室10の一方の鋭角部10aを通り、列方向L1の一方側へ引き出されている。つまり、第1領域R1上にて、引出電極25bが列方向L1に沿って、列方向L1の一方側へ引き出されている。そのため、幅の狭い第1領域R1上に全ての引出電極25bを引き出した場合においても、引出電極25b1が、列方向L1に沿って配置されているため、行方向L2に対向する引出電極25b同士が、所定の間隔を空けることが可能となり、行方向L2に対向する引出電極25b同士に生じるクロストークの影響を低減することができる。
また、液体吐出ヘッド2においては、加圧室10、および加圧室10の上方に位置する個別電極25の個別電極本体25aが第2領域R2のみに形成されていることから、加圧
室10の流路部材4に起因する剛性を均一に近づけることができるとともに、各個別電極本体25aの下方に位置する圧電セラミック層21bの変形を均一に近づけることができ、加圧室10を正確に加圧することができる。
さらに、引出電極25bが第1領域R1のみに形成されていることから、引出電極25bの下方に位置する圧電セラミック層21bの変形のばらつきを均一に近づけることができ、液体吐出ヘッド2の液体の吐出量および吐出速度のばらつきをさらに低減することができる。
また、加圧室10は、キャビティプレート4aに孔が設けられることにより形成されている。そのため、加圧室10の鋭角部10a近傍には、鋭角部10aを取り囲むようにキャビティプレート4aが設けられることになる。同様に、加圧室10の鈍角部10b近傍には、鈍角部10bを取り囲むようにキャビティプレート4aが設けられることとなる。それにより、鋭角部10a近傍の剛性が鈍角部10b近傍の剛性よりも高くなっている。それゆえ、引出電極25bの加圧室10上方に位置する部位が、剛性の高い加圧室10の一方の鋭角部10aのみを通ることから、加圧室10上に位置する変位素子30の変形量に対する影響を小さくすることができる。
なお、本実施形態にかかる液体吐出ヘッド2は、引出電極25bを第1領域R1上のみに設け、個別電極本体25aを第2領域R2上のみに設けた例を示したがこれに限定されるものではない。例えば、個別電極本体25aの一部が、第1領域R1上に設けられていてもよく、引出電極25bの一部が、第2領域R2上に設けられていてもよい。
図7を用いて液体吐出ヘッド2の変形例について説明する。
液体吐出ヘッド200は、個別電極225の形状が、加圧室列11a1を構成する個別電極225と、加圧室行211a2を構成する個別電極225とで異なっている。なお、加圧室行211a1を構成する個別電極225の形状は、液体吐出ヘッド2を構成する個別電極25と同形状である。
加圧室行211a2を構成する個別電極225は、平面視して、個別電極本体225aの重心を中心として、加圧室行211a1を構成する個別電極225を180°回転させた形状をなしている。そして、行方向L2に隣接した一対の個別電極225は、それぞれの引出電極225bが対向するように個別電極対226を形成している。そして、個別電極対226は、行方向L2に複数設けられている。そのため、個別電極対226を構成するそれぞれの個別電極225の引出電極225bは、列方向L1に沿ってそれぞれ逆向きに引き出されることとなる。
図7に示すように、加圧室行211a2を構成する個別電極225は、引出電極225bが、第1領域R1上をL1方向に沿って、図面では左側となる一方側に向けて引き出されている。それに対して、加圧室行211a1を構成する個別電極225は、引出電極225bが、第1領域R1上をL1方向に沿って、図面では右側となる他方側に向けて引き出されている。そのため、各引出電極225bの他端部が、入れ子式に配置されることとなり、平面視して、接続電極226が千鳥状に配置されることとなる。
それより、面積の狭い第1領域R1上の空き領域に効率よく引出電極225bを引き出すことができ、液体吐出ヘッド200を小型化することができる。また、各引出電極225bの他端部が、入れ子式に配置されることにより、それぞれの引出電極225b同士の離間距離を確保することができ、引出電極225bにより生じるクロストークの影響を低減することができる。
また、液体吐出ヘッド200は、隣接する個別電極対227a,227b(227)のうち、一方の個別電極対227aを構成する個別電極225の個別電極本体225aの下方に位置する加圧室210同士の離間距離W1(以下、離間距離W1)が、一方の個別電極対226aを構成する個別電極本体225aの下方に位置する加圧室210と、当該個別電極本体225aに隣接する、他方の第2電極対226bを構成する第2電極本体225aの下方に位置する加圧室210との離間距離W2(以下、離間距離W2)よりも大きい構成となっている。
そのため、引出電極225b同士が対向する第1領域R1の面積を確保することができ、引出電極225bを引き出すことができる。また、引出電極225b同士の離間距離を大きくすることができ、引出電極225bにより生じるクロストークの影響を低減することができる。
なお、加圧室行211a1,211a2を構成する個別電極225の引出電極225bがそれぞれ列方向L1に沿って延びる例を示したがこれに限定されるものではない。列方向L1と所定の角度をなして延びるようにしてもよい。
図8を用いて、他の実施形態に係る液体吐出ヘッド300について説明する。
液体吐出ヘッド300は、個別電極325の形状は、液体吐出ヘッド2の個別電極25と同様であり説明を省略する。液体吐出ヘッド300において、全ての引出電極325bは、第2領域R2に引き出されている。個別電極本体325aは、全ての部位が第2領域R2上に設けられている。引出電極325bは、全ての部位が第2領域R2上に設けられている。そのため、個別電極325は、全ての部位が第2領域R2上に設けられている。
液体吐出ヘッド300は、液体吐出ヘッド300を構成する個別電極325の全ての引出電極325bが、第2領域R2に引き出されている。そのため、各個別電極325の引出電極325bの下方に位置する圧電セラミック層21bの変形を均一に近づけることができる。それにより、各個別電極325の変位素子30の変形量のばらつきを低減することができる。そのため、各個別電極325に対応する吐出孔8からの液体吐出量のばらつきを低減することができる。なお、液体吐出ヘッド2と同様に全ての引出電極325bが、第2領域R2上に引き出されていなくともよい。
また、引出電極325bの全ての部位が第2領域R2に設けられており、引出電極325bは第1領域R1に設けられていない。また、個別電極本体325aの全ての部位が第2領域R2に設けられており、個別電極本体325aは第1領域R1に設けられていない。そのため、個別電極325の全ての部位が第2領域R2上にのみ設けられる構成となり、個別電極325に起因する圧電セラミック層21bの変形を均一に近づけることができる。さらに、個別電極325の全ての部位が第2領域R2上にのみ設けられるため、引出電極325bに起因する圧電セラミック層21bの変形の影響を小さくすることができる。つまり、変位素子30の変形量の大部分が、第2領域R2上の個別電極325からの影響となり、各個別電極325の引出電極325bに起因する圧電セラミック層21bの変形を均一にすることができ、吐出孔8からの液体の吐出量および吐出速度のばらつきを低減することができる。
なお、図7で示した液体吐出ヘッド200のように、個別電極対(不図示)を構成する個別電極本体325aの下方に位置する加圧室310の離間距離W1(不図示)を、隣り合う個別電極本体225aの下方に位置する加圧室310との離間距離W2(不図示)よりも大きくしてもよい。その場合においても、液体吐出ヘッド200と同様の効果を奏す
ることができる。
図9を用いてさらに他の実施形態に係る液体吐出ヘッド400について説明する。
液体吐出ヘッド400は、加圧室410の形状は、ヘッド2の加圧室410の形状と同等であり説明を省略する。個別電極425は、平面視して、2つの鋭角部425a1と2つの鈍角部425a2を有しており、引出電極425bが、個別電極本体425aの一方の鋭角部425a1から、2つの個別電極425の鋭角部425a1を結んだ対角線方向L3に向けて引き出されている。そして、個別電極425の対角線方向L3が、列方向L1から傾斜している。なお、加圧室410も個別電極425と略相似形状をなしているため、列方向L1から同等の角度分傾斜した状態で配置されている。
引出電極425bは、一方の鋭角部425a1から、加圧室410の一方の鋭角部410aを通り、対角線方向L3に引き出されている。それにより、圧電セラミック層21bが、引出電極425bと共通電極24とに挟持されて、圧電変形する部位と、加圧室410とが重畳する部位が、加圧室410の一方の鋭角部410aのみとなる。上述したように、鋭角部410aは、鈍角部410b等の部位に比べて剛性が高く、また、最も圧電変形する加圧室410の重心からの距離が大きいため、引出電極425bの下方に位置する圧電セラミック層21bに生じた圧電変形が、加圧室410の下方に配置された圧電セラミック層21bに与える影響を小さくすることができる。
また、引出電極425bが、対角線方向L3に沿って引き出されていることから、個別電極425を容易にパターン成形することができる。さらに、引出電極425bが、列方向L1に沿って一方側に引き出されないため、接続電極426を列方向L1にずらして配置することができる。
さらにまた、個別電極425の鋭角部425a1を結ぶ対角線方向L3に引出電極が引き出されており、対角線方向L3が列方向L1から傾斜しているため、個別電極425を格子状に配置し、引出電極425bが対向した状態で向かい合わせに配置しても、引出電極425bが、個別電極425間の領域に向けて延びる構成となる。それにより、引出部425bが対向する個別電極425同士の離間距離を短くすることができ、液体吐出ヘッド400を小型化することができる。
特に、第1領域R1に全ての引出電極425bを引き出す液体吐出ヘッド400においては、引出電極425bを引き出すスペースが小さい可能性があるが、液体吐出ヘッド400は、個別電極425aの対角線方向L3が列方向L1に対して傾斜させることで、互い違いに引出電極425bが引き出される構成となり、容易にスペースを確保することができる。
個別電極425aの対角線方向L3が列方向L1に対して傾斜する角度θ(以下、傾斜角度θ)は、例えば、45〜70°であることが好ましい。なお、加圧室行411a,411bごとに、傾斜角度θを変更してもよい。それにより、各個別電極425同士の離間距離を容易に変更することができる。
また、個別電極425の鋭角部425a1と鈍角部425a2とを結んだ個別電極425の斜辺と、列方向L1との傾斜角度θb(以下、傾斜角度θb)は、例えば、90°未満であることが好ましい。傾斜角度θbが90°未満、つまり鋭角であると、列方向L1に隣り合う個別電極425同士の離間距離を確保することができ、列方向L1に隣り合う個別電極425同士に生じるクロストークを低減させることができる。また、傾斜角度θbを鋭角とすることで、個別電極425の鋭角部425a1方向L3の長さを短くするこ
とができ、液体吐出ヘッド400を小型化することができる。
図10を用いて、液体吐出ヘッド500およびその変形例である液体吐出ヘッド600について説明する。図10(a)に示す液体吐出ヘッド500は、個別電極525の対角線方向L3と列方向L1との傾斜角度θc,θeが、列方向L1における圧電アクチュエータ基板21の両端部と、中央部とで異なっている。その他の構成は液体吐出ヘッド400と同様であり、説明を省略する。
液体吐出ヘッド500は、個別電極525が、列方向L1から傾斜した状態で配置されている。さらに、列方向L1の両端部における個別電極525の傾斜角度θeと、列方向L1の中央部における個別電極525の傾斜角度θcとが異なっている。具体的には、列方向L1の両端部における個別電極525の傾斜角度θeが、列方向L1の中央部における個別電極525の傾斜角度θcよりも大きい構成となっている。
液体吐出ヘッド500においては、圧電アクチュエータ基板21の剛性は列方向L1における位置に起因して、異なる場合がある。特に、列方向L1における両端部の剛性は、列方向L1における中央部の剛性と異なり、列方向L1における両端部において、変位素子(不図示)の変形が小さくなる場合がある。しかしながら、液体吐出ヘッド500は、列方向L1の両端部における個別電極525の傾斜角度θeが、列方向L1の中央部における個別電極525の傾斜角度θcよりも大きいことから、引出電極525bが、剛性の小さい第2領域R2から遠ざかるように引き出されており、引出電極525bの下方に位置する圧電セラミック層21bの変形を小さくすることができ、この圧電セラミック層21bの変形が、列方向L1の両端部における変位素子の変形量に与える影響を小さくすることができる。
列方向L1における端部に位置する個別電極525の傾斜角度θeは、例えば、45〜
65°であることが好ましい。また、列方向L1における中央部に位置する個別電極525の傾斜角度θcは、例えば、50〜70°であることが好ましい。そして、傾斜角度θeと傾斜角度θcとの比としては、θe/θcが1.1〜1.4であることが好ましい。傾斜角度θc,θeをこのような角度とすることで、列方向L1の位置に起因する、変位素子の変形のばらつきを低減することができ、列方向L1において、吐出孔8からの液体吐出量のばらつきを低減することができる。
なお、液体吐出ヘッド500では、列方向L1における両端に位置する個別電極525の傾斜角度θeを、傾斜角度θcよりも大きくした例を示したが、列方向L1における両端から複数個の個別電極525の傾斜角度θeを、傾斜角度θcよりも大きくしてもよい。また、列方向L1の両端に向かうにつれて、漸次、傾斜角度θを小さくしてもよい。
また、図10(b)で示すように、対角線方向L3からL1方向へ傾斜するように、引出電極625を引き出してもよい。この場合においても、同等の効果を奏することができる。
さらにまた、液体吐出ヘッド500においては、圧電アクチュエータ基板21の剛性は行方向L2における位置に起因して、異なる場合もある。特に、行方向L2における両端部の剛性は、行方向L2における中央部の剛性と異なり、行方向L2における両端部において、変位素子(不図示)の変形が小さくなる場合がある。そのため、行方向L2における両端部に位置する個別電極525の傾斜角度(不図示)を、行方向L2における中央部に位置する個別電極525の傾斜角度(不図示)よりも大きくしてもよい。その場合においても、同等の効果を奏することができる。
以上のような液体吐出ヘッド2は、例えば、以下のようにして作製する。ロールコータ法、スリットコーター法などの一般的なテープ成形法により、圧電性セラミック粉末と有機組成物からなるテープの成形を行ない、焼成後に圧電セラミック層21a,21bとなる複数のグリーンシートを作製する。グリーンシートの一部には、その表面に共通電極24となる電極ペーストを印刷法等により形成する。また、必要に応じてグリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体を充填する。
ついで、各グリーンシートを積層して積層体を作製し、加圧密着した後、長方形状に切断し、さらに、高濃度酸素雰囲気下で焼成する。焼成の圧電アクチュエータ素体の表面に有機金ペーストをスクリーン印刷で印刷し、焼成して個別電極25を形成する。スクリーン印刷は、枠に対して45度の角度でメッシュを貼りつけてあるスクリーンを用いて、長方形状の圧電アクチュエータ素体をスクリーンの枠と平行になるように置き、スキージを圧電アクチュエータ素体の長手方向に平行に移動させて印刷する。その後、Agペーストを用いて接続電極26を印刷し、焼成することにより、圧電アクチュエータ基板21を作製する。
次に、流路部材4を、圧延法等により得られプレート4a〜lを、接着層を介して積層して作製する。プレート4a〜lに、マニホールド5、個別供給流路14、加圧室10およびディセンダなどとなる孔を、エッチングにより所定の形状に加工する。
これらプレート4a〜lは、Fe―Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種の金属によって形成されていることが望ましく、特に液体としてインクを使用する場合にはインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましため、Fe−Cr系がより好ましい。
圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ基板21や流路部材4への影響をおよぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを加熱接合することができる。
次に圧電アクチュエータ基板21と制御回路100とを電気的に接続するために、接続電極26に銀ペーストを供給し、あらかじめドライバICを実装した信号伝達部92であるFPCを載置し、熱を加えて銀ペーストを硬化させて電気的に接続させる。なお、ドライバICの実装は、FPCに半田で電気的にフリップチップ接続した後、半田周囲に保護樹脂を供給して硬化させる。
続いて、必要に応じて、開口5aから液体を供給できるようにリザーバを接着し、金属の筐体を、ねじ止めした後、接合部を封止剤等で封止することで液体吐出ヘッド2を作製することができる。