<第1の実施形態>
図1〜3を用いて液体供給装置X1について説明する。
液体供給装置X1は、リザーバ流路部材40を備えている。リザーバ流路部材40は、供給流路であるリザーバ流路41となる溝が形成された第1リザーバ流路部材40aと、供給流路である分岐流路61となる溝が形成された第2リザーバ流路部材60bと、第1リザーバ流路部材40aと第2リザーバ流路部材60bとを接続する第3リザーバ流路部材60cとを有している。
第1リザーバ流路部材40a上に、リザーバ流路41と対向してプレート40bが配置されており、第2リザーバ流路部材60b上に、分岐流路61と対向してプレート60aが配置されている。そのため、第1リザーバ流路部材40aとプレート40bにより、リザーバ流路41が形成されており、第2リザーバ流路部材60bとプレート60aにより、分岐流路61が形成されている。
第1リザーバ流路部材40aは、リザーバ流路41を形成する第1壁51aと、リザーバ流路41以外の部位を形成する第2壁51bとを有している。同様に、第2リザーバ流路部材60bは、分岐流路61を形成する第1壁51aを有している。第1リザーバ流路
部材40aにおいて、第1壁51aと第2壁51bとは、離間して配置されており、それぞれ分離した状態で設けられている。第2リザーバ流路部材60bは、分岐流路61を形成する第1壁51aを有している。なお、溝は、第1リザーバ流路部材40aおよび第2リザーバ流路部材60bを貫通するように構成してもよく、第1壁51aと、上下に配置したプレート40b,60aとによりリザーバ流路41または分岐流路61を形成してもよい。
第1リザーバ流路部材40aは、中央部にリザーバ流路41の液体導出孔41aを有しおり、プレート40bに形成された液体導入孔41bから供給された液体を、リザーバ流路41の液体導出孔41aから導出する。リザーバ流路41の液体導出孔41aから導出した液体は、第3リザーバ流路部材60cに形成された分岐流路61の液体導入孔61bに導入され、分岐流路61に供給されることとなる。分岐流路61に供給された液体は、分岐流路61により分岐した複数の流路にそれぞれ分岐され、プレート60aに設けられた分岐流路61の液体導出孔61aから、マニホールド(不図示)へそれぞれ供給される。
第2リザーバ流路部材60bに形成された分岐流路61は、まず分岐流路61の液体導入孔60bの直下で左右に分岐し、分岐した先でそれぞれ5方向に分岐した後、下側に向かい、分岐流路の液体導出孔60aで流路部材4のマニホールド5に繋がっている。最終的に10本に分岐する分岐流路61では、分岐流路61の液体導入孔60bからマニホールド5までの流路長はそれぞれ略等しくなっている。これにより、外部から供給される液体の温度変動あるいは圧力変動が、マニホールド5との複数の連結部に、少ない時間差で伝わるため、それらの影響が液体吐出ヘッド2全体に同じように加わるので、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のバラツキをより少なくできる。なお、ここでいう略等しいとは、最も長い流路長に対して、最も短い流路長が80%以上であることであり、90%以上であるとより好ましい。また、分岐流路61は、それぞれの長さが略等しいだけでなく、断面積も略等しいことが好ましい。ここで断面積が略等しいとは、分岐流路の液体導入孔60bから同じ流路長である場所での、分岐流路61の断面積の差が20%以下であることであり、10%以下であるとより好ましい。
第1リザーバ流路部材40a、第2リザーバ流路部材60b、および第3リザーバ流路部材60cは、金属または合金の部材を用いて形成することができる。また、樹脂によりこれらの部材を作製することもできる。樹脂により形成することで、リザーバ流路41および分岐流路61が複雑な形状であった場合においても、安価に作成することができる。プレート40b,60aも金属または合金の部材、あるいは樹脂により形成することができる。
なお、第1リザーバ流路部材40a、第2リザーバ流路部材60b、および第3リザーバ流路部材60cをそれぞれ別体として作製して接着剤により接着してリザーバ流路部材40を形成してもよく、樹脂により第1リザーバ流路部材40a、第2リザーバ流路部材60b、および第3リザーバ流路部材60cを一体的に形成してもよい。
第1リザーバ流路部材40aが樹脂により形成されており、第2リザーバ流路部材60bが金属であると、熱膨張係数の差に起因して、液体吐出ヘッド本体13が反ったり、第1リザーバ流路部材40aにクラックが生じるおそれがある。しかしながら、分岐流路61とリザーバ流路41とが、長手方向の中央のみで繋がっているととともに、第2リザーバ流路部材60bと第1リザーバ流路部材40aとが、第3リザーバ流路部材40cを介して、長手方向の中央部のみで固定されているようにすることで、熱膨張差の影響を少なくできる。ここで中央部とは、平面視したときに、長手方向に第2リザーバ流路部材60bと第1リザーバ流路部材40aとが重なっている長さをLとした時に、固定されている
部分がその長さLの中心から両端に向かってL/5の範囲内に収まるようにすることが好ましい。これは別の言い方をすれば、中央の長さL/2.5の範囲に収まるようにすることであり、より好ましくは、中央の長さL/5の範囲に収まるようにするのが良い。
第1リザーバ流路部材40aおよび第2リザーバ流路部材60bと、プレート40b,60aとは、接着部材53により接続されている。図3に示すように、接着部材53は、第1リザーバ流路部材40a,第2リザーバ供給部材60bの接続面の全域にわたって形成されている。接続方法は、例えば、リザーバ流路部材40に接着部材53を塗布した後、プレート40b,60aを押圧して、乾燥させることにより液体供給装置X1を作製することができる。接着部材53の厚みは、例えば、1〜20μmとすることができる。
接着部材53としては、周知のものを使用することができるが、液体吐出ヘッド2の他の部材に影響を及ぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。
第1リザーバ流路部材40aにおいて、第1壁51aは、接着部材53が配置される第1接着領域52aを有しており、第2壁51bは、接着部材53が配置される第2接着領域52bを有している。そして、第1壁51aと第2壁51bとが離間して設けられていることから、第1接着領域52aに配置された接着部材53は、第2接着領域52bに配置された接着部材53とが離間することとなる。
ここで、第1接着領域および第2接着領域に接着部材を塗布して液体供給装置を作成する場合、第1接着領域に配置された接着部材が第2接着領域に流入して、第1接着領域に配置された接着部材が不足する可能性がある。また、リザーバ流路を形成する接着部材が、押圧されることにより、接着部材が第2接着領域にまで広がってしまい、接着部材が形成される領域が大きくなることに起因して、第1接着領域に配置された接着部材の厚みにばらつきが生る可能性、あるいは一部、接着部材が形成されない可能性が生じることとなり、リザーバ流路の封止性が低下する可能性がある。
これに対して、液体供給装置X1は、リザーバ流路41を形成する第1接着領域52aが、第2接着領域52bと離間することにより、第1接着領域52aに配置された接着部材53が第2接着領域52bに流入する可能性を低減することができる。それにより、リザーバ流路41の封止性が低下する可能性を低減することができる。
また、第1壁51aと第2壁51bとが離間して配置されることから、第1接着領域52aと第2接着領域52bとの間に、断面視して間隙が生じることとなる。それゆえ、第1接着領域52aに配置された接着部材53が、押圧された際に、第1接着領域52aから他の領域に拡がった場合においても、間隙により第2接着領域52bまで広がる可能性を低減することができる。それにより、リザーバ流路41の封止性が低下する可能性を低減することができる。
特に、第1リザーバ流路部材40aを樹脂により形成すると、第1リザーバ流路部材40aの表面に凹凸等が形成されていたり、あるいは第1リザーバ流路部材40aが反っていたりする可能性があるが、このような場合においても、第1壁接着領域52aと、第2接着領域52bとが離間しているため、リザーバ流路41の封止性が低下する可能性を低減することができる。
図4を用いて、液体供給装置X1の変形例である液体供給装置X2について説明する。
液体供給装置X2は、プレート40bから第1接着領域52aまでの距離d1が、プレート60aから第2接着領域52bまでの距離d2よりも短い構成を有している。その他の点は液体供給装置X1と同様である。
このように、プレート40bから第1接着領域52aまでの距離d1が、プレート60aから第2接着領域52bまでの距離d2よりも短いことから、リザーバ流路41となる第1接着領域52aに配置された接着部材53が、他の領域に拡がりにくい構成となる。そのため、第1接着領域52aに配置された接着部材53が不足することを低減することができる。また、第1接着領域52aに配置された接着部材53の接続面積が大きくなる可能性を低減することができる。これにより、リザーバ流路41の封止性が低下する可能性を低減することができる。
また、第1壁51aは、リザーバ流路41を形成する機能を有しており、第2壁51bは、リザーバ流路部材40とプレート40bとを接続する機能を有している。そのため、リザーバ流路部材40とプレート40bとを接続する第2接着領域52bに多くの量の接着部材53を配置することができ、接着部材53が不足する可能性を低減させることができる。
プレート40bから第1接着領域52aまでの距離d1は1〜10μmとすることが好ましく、プレート40bからおよび第2接着領域52bまでの距離d2は2〜20μmとすることが好ましい。またd1/d2を0.5以下とすることで、リザーバ流路41の封止性を向上させることができる。
<第2の実施形態>
図5〜7を用いて第2の実施形態に係る液体供給装置X3について説明する。
液体供給装置X3は、第2リザーバ流路部材60bが第1壁52aと第2壁51bとを有しており、第1壁51aが、分岐流路61および分岐流路61以外の領域を仕切る第3壁51cと、分岐流路61同士を仕切る第4壁51dとを備えている。第3壁51cは接着部材53が配置される第3接着領域52cを有しており、第4壁51dは接着部材53が配置される第4接着領域52dを有している。また、第2リザーバ流路部材60bの内部同士を仕切っている第5壁51eを有している。
つまり、第2リザーバ流路部材60bは、第2壁51bが外部と第2リザーバ流路部材60bの内部を仕切っており、第3壁51cが分岐流路61と第2リザーバ流路部材60bの内部を仕切っており、第4壁51dが分岐流路61同士を仕切る構成となる。
図6(b)に示すように、第2リザーバ流路部材60bは、第2壁51b、第3壁51cおよび第4壁51dの各高さが異なる構成を有している。具体的には、プレート60aから第3接着領域52cまでの距離d3が、プレート60aから第4接着領域52dまでの距離d4よりも短い構成となっている。
そのため、第4接着領域52dにおける封止性よりも、第3接着領域52cにおける封止性を向上させることができる。第3壁51cは、分岐流路61および分岐流路61以外の領域を仕切っているため、第3壁51cの封止性が低いと、分岐流路61から液体が漏出することとなり、所定量の液体を供給できない可能性が生じるが、液体供給装置X3は、第3壁51cの封止性を向上させることができるため、分岐流路61の封止性を向上することができる。
また、第4壁51dも分岐流路61を構成していることから、封止性が必要とされるが
、第4壁51dにて液体を封止できずに、第4壁51dから液体が漏出した場合においても、第4壁51dが、分岐流路61同士を仕切っていることから分岐流路61から液体が漏出することはない。第4壁51dは、分岐された各分岐流路61を流れる液体の量を均一に近づける機能を有しているため、封止性を有することが好ましい。そのため、第3壁51cの封止性が最も高く、第4壁51dの封止性が次いで高いことが好ましい。
プレート40bから第3接着領域52cまでの距離d3は1〜5μmとすることが好ましく、プレート40bからおよび第4接着領域52dまでの距離d4は2〜10μmとすることが好ましい。またd3/d4を0.5以下とすることで、分岐流路61の封止性を向上させることができる。
液体供給装置X3は、プレート60aから第4接着領域52dまでの距離d4が、プレート60aから第2接着領域52bまでの距離d2よりも短い構成を有している。そのため、分岐流路61同士の封止性を確保することができる。また、プレート60aから第2接着領域52bまでの距離d2が、プレート60aから第5接着領域52eまでの距離d5よりも短い構成となっており、液体供給装置X3から外部に液体が漏出する可能性を低減することができる。
つまり、各壁の封止性は、第3壁51c、第4壁51d、第2壁51b、第5壁51eの順に高いことが好ましい。そのため、プレート60aから各接着領域52までの距離は、d3,d4,d2,d5の順に短いことが好ましい。
さらにまた、液体供給装置X3は、断面視して、第2接着領域52bよりも第1接着領域52aの面積が小さいことが好ましい。このような構成を有することから、第1接着領域52a上に配置された接着部材53が、他の領域に拡がる可能性を低減することができ、第1接着領域52aの封止性を向上させることができる。
特に、第4接着領域52dよりも第3接着領域52cの面積が小さいことがさらに好ましい。これにより、第3接着領域52cの封止性を向上させることができ、分岐流路61の封止性を向上させることができる。
図7(a)を用いて液体供給装置X3の変形例について説明する。
液体供給装置X4は、第4壁51dの第4接着領域52dに穴部56が設けられている。第4接着領域52dに穴部56を形成することにより、第4接着領域52dの穴部56以外の領域と、プレート60aとが接着部材53により接続されることとなる。そのため、接着面積を狭くすることができるため、第4接着領域52d上に配置された接着部材53の厚みのばらつきを抑えることができる。そのため、第4接着領域52dの封止性を向上させることができる。
つまり、図7(a)に示すように、第4壁51dの厚みが厚い場合、または分岐流路61の形状により、第4接着領域52dの面積が大きい部位に、穴部56を設けることにより、第4接着領域52dが連続して大きい面積を有さない構成となる。そのため、第2リザーバ流路部材61bまたはプレート60aに凹凸があった場合においても、穴部56に余剰の接着部材53が流れ込み、接着部材53の厚みのばらつきを抑えることができる。それにより、第4接着領域52dの封止性を向上させることができる。
穴部56は、平面視して楕円形状の例を例示したが、どのような形状でもよい。例えば、円形状であってもよく、矩形状、あるいは多角形状であってもよい。穴部56は、第4接着領域52dよりも低い位置を形成すればよく、穴部56の深さは強度、封止性を考慮
して適宜設定すればよい。
なお、穴部56を第4接着領域52dのみではなく、第3接着領域52cにも設けてもよい。また、第3接着領域52cにのみ設けてもよい。
図7(b)を用いて液体供給装置X3の変形例について説明する。
液体供給装置X5は、第2壁51aの第2接着領域52bに、第2壁51bの形成方向に沿った溝部57が設けられている。なお、図示していないが、溝部57は、第2接着領域52bの全体にわたって周回するように設けられている。そのため、第2壁51bの第2接着領域52bが溝部57上に形成された空隙により2分割されることとなる。それにより、疑似的に第2壁51bを2つ設けた構成となる。
つまり、第2接着領域52bに溝部57を設けることで、第2壁51bを、厚みが半分となった2枚の第2壁51b1,51b2とみなすことができる。すなわち、第2壁51bは、溝部57を挟持するように第2壁51b1と、第2壁51b2とを備えることとなり、第2接着領域52bは、溝部57上に設けられた空隙により、第2壁51b1上の第2接着領域52bと、第2壁51b2上の第2接着領域52bとに空隙を挟持する構成となる。
そのため、第2壁51b1の第2接着領域52bに剥離が生じた場合においても、分岐流路61から流れ込む流体が、第2壁51b2によりせき止められ、第2壁51bの形成方向に沿った溝部57、あるいは溝部57上に形成された空隙に流れ込むこととなる。このようにして、接着部材53が、第2壁51b1から剥離した場合においても、第2壁51b2から流体が漏出する可能性を低減することができ、分岐流路61からの流体の漏出を低減することができる。
また、高い封止性が要求される第3壁51cに溝部57を設けてもよい。その場合においても第3壁51cの封止性を向上させることができる。また、溝部57は、第2接着領域52bの全域にわたって設けられなくともよい。例えば、第2接着領域52bの平面視して、屈曲している部位等の封止性の低い領域にのみ設けてもよい。この場合においても、溝部57、あるいは溝部57上に形成された空隙により、流体の漏出する可能性を低減することができる。
<第3の実施形態>
図8を用いて第3の実施形態に係る液体供給装置X6について説明する。
液体供給装置X6は、第1リザーバ流路部材40aの長手方向の両端部における第2壁51bにスリット形成領域58aが設けられており、スリット形成領域58aには格子状のスリット58bが複数設けられている。図8(a)に示すように第2壁51bの長手方向の端部には、面積の大きな第2接着領域52bが形成されている。
このように、面積の大きな第2接着領域52bと、接着部材53との接着強度は弱くなる可能性があるが、面積の大きな第2の接着領域52bにスリット形成領域58aが設けられており、スリット形成領域58aにスリット58bが設けられているため、図8(b)に示すようにスリット58bの隙間に、接着部材53が入り込む構成となる。そのため、接着部材53が毛細管現象によりスリット58bの隙間に入り込むこととなり、接着部材53と第1リザーバ流路部材40aとの接着強度を向上させることができる。
格子状のスリット58bは、格子が200〜600μmの深さ、線幅が200〜600
μmで形成されている。スリット形成領域58aは、平面視して、長さが0.5〜10mm、幅が0.5〜10mmの大きさで形成されている。なお、スリット58bの格子の形状は矩形でもよく、ひし形でもよい。また、スリット形成領域58aは、平面視して、矩形状をなしている例を示したが、円形状、三角形状、あるいは多角形状でもよい。
なお、液体供給装置X1〜X6まで別々に設けた例を示したが、これらを組み合わせて実施してもよい。
図9は、本発明の一実施形態による液体供給装置X1を有する液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。カラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている。液体吐出ヘッド2は、図9の手前から奥へ向かう方向に細長い形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2あるいは給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118a,118b、ならびに、119a,119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラ118a,118bによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106,107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106,107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラ106,107に巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラ106,107の共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
ベルトローラ106には、図9に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
4つの液体吐出ヘッド2は、搬送ベルト111による搬送方向に沿って互いに近接して配置されている。各液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体13を有している。ヘッド本体13の下面には、液体を吐出する多数の吐出孔8が設けられている吐出孔面4aとなっている(図5,7,8参照)。
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた吐出孔8からは、同じ色の液体(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2の吐出孔8は一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙P搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体13の下面の吐出孔開口平面4aと搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体13から印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これにより、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121a,121b,122a,122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a,121b,122a,122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
次に、液体吐出ヘッド2について説明する。図10は液体吐出ヘッド2の斜視図である。液体吐出ヘッド2は液体吐出ヘッド本体13と筐体90とを含んでいる。筐体90は金属製であり、一部に駆動信号が伝達される信号ケーブルが通る孔90cが開口している。図10の例では上面の一部に孔90cが開口しており、孔90cは制御部100と繋がる駆動信号が伝達される信号ケーブル(不図示)が通っており、樹脂製の蓋体などで塞がれる。液体吐出ヘッド本体13にはリザーバ流路部材40の液体導入孔41bが開口しており、リザーバ流路41の液体導入孔41bから吐出する液体が供給される。
図11は、図10に示した液体吐出ヘッド2のV−V線断面図である。液体吐出ヘッド本体13には、流路部材4、リザーバ流路部材40、加圧部を含む圧電アクチュエータ基板21、ヒータ65が含まれる。図11では流路部材4の内部構造は省略してある。
第2リザーバ流路部材60bには、分岐流路61(図2参照)が設けられており、その一端の分岐流路の液体導入孔61bは、第1リザーバ流路部材40aの中のリザーバ流路41(図2参照)の液体導出孔41aと繋がっており、途中で分岐して、流路部材4の中のマニホールドの開口5bに複数の場所で繋がっている。
第1リザーバ流路部材40aには、リザーバ流路41が設けられており、分岐流路61に繋がっている。また、リザーバ部材40には上下に貫通する貫通孔42が設けられており、圧電アクチュエータを駆動する信号を伝達する信号伝達部92がその中を通っている。さらにリザーバ流路部材40には側面保護板43が設けられており、これが、流路部材4の長辺の側面と接している。これにより、圧電アクチュエータ21に収納されている凹部63は閉じた空間になり、外部と通じているのは、上方の貫通孔42の開口だけになる。側面保護板43と流路部材4の長辺の側面とは接着してあっても良いし、側面保護板43を樹脂として、その弾性変形で抑えるようにしても良いし、間にインクなどの液体の侵入を防ぐように流動するが粘度の高い薬剤などを入れて良い。第2リザーバ流路部材60aと、第1リザーバ流路部材40aとの接続を長手方向の中央部のみで行なった場合、その弾性変形で抑えるようにしたり、粘度の高い薬剤などを入れたりすることにより、液体の侵入を抑制することと、熱膨張係数差に起因する応力の緩和を両立させることができる。
また、リザーバ流路部材40には、断熱性弾性部材97が付けられたフレーム96と、コネクタ95が実装された基板94とが固定されている。なお、フレーム96は図15の断面図では、接続していないが、この断面以外の部分で固定されている。制御部100(図9参照)から信号ケーブル(不図示)を介して基板94に送られた駆動信号は、コネクタ95を介して信号伝達部92に送られる。信号伝達部92に実装されたドライバIC55は、駆動信号を処理し、処理後の駆動信号は信号伝達部92を通じて、後述の圧電アクチュエータ基板21の液体吐出素子50を駆動し、流路部材4内部の液体を加圧することにより、液滴が吐出される。なお、基板94は、例えば、吐出信号を複数のドライバIC55に分けたり、吐出信号の整流など行なってもよいが、基板94を設けず、制御部100からの信号ケーブルを直接信号伝達部92に接続するようにしてもよい。信号伝達部92は可撓性を有する帯状のもので、内部に金属の配線を有し、配線の一部は、信号伝達部92の表面に露出しており、露出した配線により、コネクタ95、ドライバIC55および圧電アクチュエータ基板21と電気的に接続される。信号伝達部92は、例えば、フレキシブルフラットケーブルを例示することができる。
ドライバIC55は、上述の駆動信号処理を行なう際に発熱する。ドライバIC55が断熱性弾性部材97により信号伝達部92を介して押されて、金属製の筐体90に押し当てられているため、発生した熱は主に筐体90に伝わり、さらに筐体90全体に速く広がり、外部に放熱されていく。
図12(a)は液体吐出ヘッド本体13の縦断面図であり、図12(b)は側面図である。全ての内部構造を示すと複雑になるため、図12(a)では一部を抜粋して示している。
液体吐出ヘッド本体13では、流路部材4の上に第2リザーバ流路部材60aが積層されており、その上にさらに、第1リザーバ流路部材40aが積層されている。第2リザー
バ流路部材60bの凹部63には加圧部を含む圧電アクチュエータ21が収められている。第2リザーバ流路部材60bには、分岐流路61が設けられており、第1リザーバ流路部材40aには、リザーバ流路41が設けられている。
リザーバ流路41の液体導入孔41bは外部液体タンク(図示せず)に繋がる部分で、リザーバ流路41の液体導入孔41bから入った液体は、リザーバ流路41の液体導出孔41aを通り、分岐流路61の液体導入孔61bからリザーバ流路61に入り、途中で分岐する複数の流路にそれぞれ流れ、分岐流路61の液体導出孔61aを通り、複数のマニホールドの開口5bから共通流路であるマニホールド5に流れ込む。
分岐流路61の液体導入孔61bは、長手方向の中央部に形成されているため、複数の部分で繋がるマニホールド5までの流路長を比較的近くすることができるので、液体の供給を安定化させることができる。ここでいう中央部とは吐出孔が開口している領域の長手方向の長さLx(m、以下単位を省略することがある)とした際、その中央からの長手方向のズレがLx/10以下である範囲のことである。なお、短手方向においても中心に近い方が好ましく、吐出孔開口領域16の短手方向の長さLyに対して、短手方向のズレがLy/4以下であることが好ましい。
リザーバ流路41の液体導入孔41bは2箇所あるが、一方は基本的には最初に液体を入れる際の空気あるいは液体を抜くために使用されだけで、印刷時には、液体はどちらか一方から供給され他方は閉じられる。そのようにするとリザーバ流路41内の液体は、液体が導入されるほうのリザーバ流路41の液体導入孔41bから中央のリザーバ流路41の液体導出孔41aまでの流れが主になり、閉じられている方の側ではあまり液体は流動しない。外部から入ってくる液体の温度が、液体吐出ヘッド本体13の温度と異なる場合、液体吐出ヘッド本体13の温度が変動するが、前述の液体の動きのアンバランスさにより、液体が入ってくる側の温度の変動が大きくなる。
リザーバ流路41の内壁の一部は弾性変形可能な材質のダンパ47になっている。ダンパ47のリザーバ流路41と反対の面が面する方向に変形できるようになっているため、ダンパ47は弾性変形することでリザーバ流路41の体積を変化させることができ、液体吐出量が急激に多くなった場合などに、安定して液体が供給できるようになる。なお、ヒータ65を収めるようにするために、ダンパ47を第1リザーバ流路部材40aに設けた空間に面するようにすればスペース効率がよくなり、液体吐出ヘッド2を小型化できる。さらに、液体の導入をダンパ47のある側から行なうことで、熱伝導がさらに抑制できる。
また、リザーバ流路41の中にフィルタ45を設けて、液体の中に含まれる異物が分岐流路部材4に入っていき難いようにするのが好ましく、異物が詰まることによって起こる不吐出を抑制できる。
次に本発明の液体供給装置を備える液体吐出ヘッドを構成する流路部材4について説明する。図13は、液体吐出ヘッド本体13のうち流路部材4および圧電アクチュエータ21を示す平面図である。図14は、図13の一点鎖線で囲まれた領域の拡大平面図であり、液体吐出ヘッド本体13の一部である。図15は、図14と同じ位置の拡大透視図で、吐出孔8の位置が分かりやすいように、一部の流路を省略して描いている。なお、図14,15において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべき液体加圧室10(加圧室群9)、しぼり12および吐出孔8を実線で描いている。図16は図14のVi−Vi線に沿った縦断面図である。
ヘッド本体13は、平板状の流路部材4と、流路部材4上に、加圧部を含む圧電アクチ
ュエータ基板21、リザーバ流路部材40を有している。圧電アクチュエータ基板21は台形形状をなしており、台形の1対の平行対向辺が流路部材4の長手方向に平行になるように流路部材4の上面に配置されている。また、流路部材4の長手方向に平行な2本の仮想直線のそれぞれに沿って2つずつ、つまり合計4つの圧電アクチュエータ基板21が、全体として千鳥状に流路部材4上に配列されている。流路部材4上で隣接し合う圧電アクチュエータ基板21の斜辺同士は、流路部材4の短手方向について部分的にオーバーラップしている。オーバーラップしている部分の圧電アクチェータユニット21を駆動することにより印刷される領域では、2つの圧電アクチュエータ基板21により吐出された液滴が混在して着弾することになる。
流路部材4の内部にはマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向に沿って延び細長い形状を有しており、流路部材4の上面にはマニホールド5の開口5bが形成されている。開口5bは、流路部材4の長手方向に平行な2本の直線(仮想線)のそれぞれに沿って5個ずつ、合計10個形成されている。開口5bは、4つの圧電アクチュエータ基板21が配置された領域を避ける位置に形成されている。マニホールド5には開口5bを通じて図示されていない液体タンクから液体が供給されている。
流路部材4内に形成されたマニホールド5は、複数本に分岐している(分岐した部分のマニホールド5を副マニホールド5aということがあり、開口5bから副マニホールド5aまでのマニホールド5を液体供給路5cということがある)。開口5bに繋がる液体供給路5cは、圧電アクチュエータ基板21の斜辺に沿うように延在しており、流路部材4の長手方向と交差して配置されている。2つの圧電アクチュエータ基板21に挟まれた領域では、1つのマニホールド5が、隣接する圧電アクチュエータ基板21に共有されており、副マニホールド5aがマニホールド5の両側から分岐している。これらの副マニホールド5aは、流路部材4の内部の各圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に互いに隣接してヘッド本体13の長手方向に延在している。すなわち、副マニホールド5aの両端は、液体供給路5cに繋がっている。
流路部材4は、複数の液体加圧室10がマトリクス状(すなわち、2次元的かつ規則的)に形成されている4つの液体加圧室群9を有している。液体加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。液体加圧室10は流路部材4の上面に開口するように形成されている。これらの液体加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域のほぼ全面にわたって配列されている。したがって、これらの液体加圧室10によって形成された各液体加圧室群9は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各液体加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接着されることで閉塞されている。
本実施形態では、図15に示されているように、マニホールド5は、流路部材4の短手方向に互いに平行に並んだ4列のE1〜E4の副マニホールド5aに分岐し、各副マニホールド5aに繋がった液体加圧室10は、等間隔に流路部材4の長手方向に並ぶ液体加圧室10の列を構成し、その列は、短手方向に互いに平行に4列配列されている。副マニホールド5aに繋がった液体加圧室10の並ぶ列は副マニホールド5aの両側に2列ずつ配列されている。
全体では、マニホールド5から繋がる液体加圧室10は、等間隔に流路部材4の長手方向に並ぶ液体加圧室10の列を構成し、その列は、短手方向に互いに平行に16列配列されている。各液体加圧室列に含まれる液体加圧室10の数は、加圧部である変位素子50の外形形状に対応して、その長辺側から短辺側に向かって次第に少なくなるように配置されている。吐出孔8もこれと同様に配置されている。これによって、全体として長手方向
に600dpiの解像度で画像形成が可能となっている。
つまり、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図15に示した仮想直線のRの範囲に、各副マニホールド5a繋がっている4つの吐出孔8、つまり全部で16個の吐出孔8が600dpiの等間隔になっている。また、各副マニホールド5aには平均すれば150dpiに相当する間隔で個別流路32が接続されている。これは、600dpi分の吐出孔8を4つ列の副マニホールド5aに分けて繋ぐ設計をする際に、各副マニホールド5aに繋がる個別流路32が等しい間隔で繋がるとは限らないため、マニホールド5aの延在方向、すなわち主走査方向に平均170μm(150dpiならば25.4mm/150=169μm間隔である)以下の間隔で個別流路32が形成されている。
圧電アクチュエータ基板21の上面における各液体加圧室10に対向する位置には後述する個別電極35がそれぞれ形成されている。個別電極35は液体加圧室10より一回り小さく、液体加圧室10とほぼ相似な形状を有しており、圧電アクチュエータ基板21の上面における液体加圧室10と対向する領域内に収まるように配置されている。
流路部材4の下面の液体吐出面には多数の吐出孔8が形成されている。これらの吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置された副マニホールド5aと対向する領域を避けた位置に配置されている。
また、これらの吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子50を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。吐出孔8は、流路部材4の長手方向に平行な複数の直線に沿って等間隔に配列されている。
液体吐出ヘッド本体13に含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャ(しぼり)プレート24、サプライプレート25、26、マニホールドプレート27,28,29、カバープレート30およびノズルプレート31である。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路32および副マニホールド5aを構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体13は、図16に示されているように、液体加圧室10は流路部材4の上面に、副マニホールド5aは内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路32を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、液体加圧室10を介して副マニホールド5aと吐出孔8とが繋がる構成を有している。
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート22に形成された液体加圧室10である。第2に、液体加圧室10の一端から副マニホールド5aへと繋がる流路を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート23(詳細には液体加圧室10の入り口)からサプライプレート25(詳細には副マニホールド5aの出口)までの各プレートに形成されている。なお、この連通孔には、アパーチャプレート24に形成されたしぼり12と、サプライプレート25、26に形成された個別供給流路6とが含まれている。
第3に、液体加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート23(詳細には液体加圧室10の出口)からノズルプレート31(詳
細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。
第4に、副マニホールド5aを構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート27〜29に形成されている。
このような連通孔が相互に繋がり、副マニホールド5aからの液体の流入口(副マニホールド5aの出口)から吐出孔8に至る個別流路32を構成している。副マニホールド5aに供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、副マニホールド5aから上方向に向かって、個別供給流路6を通り、しぼり12の一端部に至る。次に、しぼり12の延在方向に沿って水平に進み、しぼり12の他端部に至る。そこから上方に向かって、液体加圧室10の一端部に至る。さらに、液体加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、液体加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
第2リザーバ流路部材60aも、流路部材4と同様には圧延法等により得られプレート60bに、エッチングにより所定の形状に加工されて、フィルタ45およびダンパ47を貼り付けた後、積層接着され、液体流路61および圧電アクチュエータが収納される凹部63が設けられる。
圧電アクチュエータ基板21は、図16に示されるように、2枚の圧電セラミック層21a,21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a,21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21全体の厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a,21bのいずれの層も複数の液体加圧室10を跨ぐように延在している(図14参照)。これらの圧電セラミック層21a,21bは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極34およびとAu系などの金属材料からなる個別電極35を有している。個別電極35は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における液体加圧室10と対向する位置に配置されている。個別電極35の一端は、液体加圧室10と対向する領域外に引き出されて接続電極36が形成されている。この接続電極36は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極36は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極35には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
共通電極34は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極34は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての液体加圧室10を覆うように延在している。共通電極34の厚さは2μm程度である。共通電極34は図示しない領域において接地され、グランド電位に保持されている。本実施形態では、圧電セラミック層21b上において、個別電極35からなる電極群を避ける位置に個別電極35とは異なる表面電極(不図示)が形成されている。表面電極は、圧電セラミック層21bの内部に形成されたスルーホールを介して共通電極34と電気的に接続されているとともに、多数の個別電極35と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
図16に示されるように、共通電極34と個別電極35とは、最上層の圧電セラミック層21bのみを挟むように配置されている。圧電セラミック層21bにおける個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域は活性部と呼称され、活性部に対応する圧電セラミッ
クスには分極が施されている。本実施形態の圧電アクチュエータ基板21においては、最上層の圧電セラミック層21bのみが活性部を含んでおり、圧電セラミック21aは活性部を含んでおらず、振動板として働く。圧電アクチュエータ基板21はいわゆるユニモルフタイプの構成を有している。
なお、後述のように、個別電極35に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、個別電極35に対応する液体加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路32を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各液体加圧室10に対向する部分は、各液体加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子50(アクチュエータ)に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層からなる積層体中には、図16に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子50が液体加圧室10毎に、液体加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極34、圧電セラミック層21b、個別電極35により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子50が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は5〜7pl(ピコリットル)程度である。
多数の個別電極35は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。
本実施形態における圧電アクチュエータ基板21においては、個別電極35を共通電極34と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この時圧電セラミック層21bは、その厚み方向すなわち積層方向に伸長または収縮し、圧電横効果により積層方向と垂直な方向すなわち面方向には収縮または伸長しようとする。一方、残りの圧電セラミック層21aは、個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域を持たない非活性層であるので、自発的に変形しない。つまり、圧電アクチュエータ基板21は、上側(つまり、液体加圧室10とは離れた側)の圧電セラミック層21bを、活性部を含む層とし、かつ下側(つまり、液体加圧室10に近い側)の圧電セラミック層21aを非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。
この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極35を共通電極34に対して正または負の所定電位とすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは液体加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
本実施の形態における実際の駆動手順は、予め個別電極35を共通電極34より高い電位とする第1の電圧V1V(ボルト、以下で省略することがある)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極35を共通電極34とを一旦、第1の電圧V1よりも低い第2の電圧を加えて低電位、例えば同じ電位にし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極35が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a,bが元の形状に戻り、液体加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、液体加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホールド5側から液体加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極35を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a,bが液体加圧室10側へ凸となるように変形し、液体加圧室10の容積減少により液体加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動
信号を個別電極35に供給することになる。このパルス幅は、液体加圧室10内において圧力波がマニホールド5から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、液体加圧室10内部が負圧状態から正圧状態に反転
するときに両者の圧力が合成され、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり好ましい。
図17は本発明の他の液体吐出ヘッド本体である。リザーバ流路部材40に一部切り欠きが設けられている以外は、上述の実施例と同じである。切りかかれた部分は金属製のプレート201a,201b,203a,203bが入れられ、これをねじ205で締め付けて固定してある。プレート201a,203aにはV型の切り欠きとL型の切り欠きが設けられておりこの切り欠き部がプリンタに設けられたピン250に押し当てられて液体吐出ヘッドが固定される。これにより、プリンタに固定される部分が金属になり、取り付け位置精度が高くなる。
なお、本実施例では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子50を示したが、これに限られるものでなく、液体加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、例えば、液体加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたものでも良い。
以上のような液体吐出ヘッド2は、例えば、以下のようにして作製する。ロールコータ法、スリットコーター法などの一般的なテープ成形法により、圧電性セラミック粉末と有機組成物からなるテープの成形を行ない、焼成後に圧電セラミック層21a,21bとなる複数のグリーンシートを作製する。グリーンシートの一部には、その表面に共通電極34となる電極ペーストを印刷法等により形成する。また、必要に応じてグリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体を充填する。
ついで、各グリーンシートを積層して積層体を作製し、加圧密着を行なう。加圧密着後の積層体を高濃度酸素雰囲気下で焼成し、その後有機金ペーストを用いて焼成体表面に個別電極35を印刷して、焼成した後、Agペーストを用いて接続電極36を印刷し、焼成することにより、圧電アクチュエータ基板21を作製する。
次に、流路部材4を、圧延法等により得られプレート22〜31を接着層を介して積層して作製する。プレート22〜31に、マニホールド5、個別供給流路6、液体加圧室10およびディセンダなどとなる孔を、エッチングにより所定の形状に加工する。
これらプレート22〜31は、Fe―Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種の金属によって形成されていることが望ましく、特に液体としてインクを使用する場合にはインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましため、Fe−Cr系がより好ましい。
リザーバ流路部材40は樹脂を射出成形して形成した第1リザーバ流路部材40aと、
フィルタ45およびダンパ47とを組み合わせて接着し、様々な孔をあけて、樹脂を射出成形した第2リザーバ流路部材60bおよび第3リザーバ流路部材60cと接続した。そして、リザーバ流路部材40に、金属により形成したプレート40b,60aを接着部材53により接着して液体供給装置を作製した。
圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ基板21や流路部材4への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを加熱接合することができる。
次に圧電アクチュエータ基板21と制御回路100とを電気的に接続するために、接続電極36に銀ペーストを供給し、あらかじめドライバIC55を実装した信号伝達部92であるFPCを載置し、熱を加えて銀ペーストを硬化させて電気的に接続させる。なお、ドライバIC55の実装は、信号伝達部92に半田で電気的にフリップチップ接続した後、半田周囲に保護樹脂を供給して硬化させた。
続いて、リザーバ流路部材40と流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ基板21や流路部材4への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、リザーバ流路部材40と流路部材4とを加熱接合することができる。