JP2014222706A - アルミ電解コンデンサ用セパレータおよびアルミ電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】電気特性に優れ、高温環境下での使用による容量低下、漏れ電流の増加あるいはESR特性の悪化を防ぐことができ、寿命特性に優れたアルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】アルミ電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液を含浸、保持するために使用するセパレータにαセルロースの含有率の高い溶解パルプ、マーセル化パルプを使用することにより、セパレータの大幅なコスト上昇を抑えながら従来の製紙用パルプを使用したセパレータの電解液に対するイオン透過性と耐熱性を改善し、該セパレータを使用したアルミ電解コンデンサのESR特性を改善し、高温及び/又は長期間の使用における静電容量の低下や漏れ電流の増加等の特性変化を抑制した寿命特性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】アルミ電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液を含浸、保持するために使用するセパレータにαセルロースの含有率の高い溶解パルプ、マーセル化パルプを使用することにより、セパレータの大幅なコスト上昇を抑えながら従来の製紙用パルプを使用したセパレータの電解液に対するイオン透過性と耐熱性を改善し、該セパレータを使用したアルミ電解コンデンサのESR特性を改善し、高温及び/又は長期間の使用における静電容量の低下や漏れ電流の増加等の特性変化を抑制した寿命特性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、アルミ電解コンデンサ用セパレータおよびアルミ電解コンデンサに関するものである。
一般に、電解コンデンサ、特にアルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間に、セパレータとしての電解紙を介在させてコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子に電解液を含浸させ、封口して製作している。
コンデンサの静電容量は下記式(1)で表される。
コンデンサの静電容量は下記式(1)で表される。
C=ε・S/d・・・式(1)
C:静電容量(F)
ε:誘電体の比誘電率(F/m)
S:電極の面積(m2)
d:電極間の距離(m)
C:静電容量(F)
ε:誘電体の比誘電率(F/m)
S:電極の面積(m2)
d:電極間の距離(m)
アルミ電解コンデンサでは、コンデンサ素子中のセパレータに電解液を含浸させることにより、セパレータに含浸させた電解液が真の陰極となり、陽極アルミ箔の表面に電解酸化(化成)によって形成された極めて薄い酸化皮膜が誘電体となる。
比誘電率[式(1)のε]は誘電体の種類に依存するため、アルミ電解コンデンサの静電容量[式(1)のC]を大きくするためには、電極の面積[式(1)のS]を大きくし、電極間の距離[式(1)のd]を小さくすることが有効である。酸化皮膜は単位厚み当たりの耐電圧が高く、また任意の厚みの酸化皮膜を形成できるため、アルミ電解コンデンサはセラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどの他のコンデンサに比べて電極間の距離dが小さい。
また、陽極アルミ箔をエッチングすることにより、見かけ面積に比べて実効面積を20〜120倍程度に拡大できるため、電極の面積Sが大きい。したがってアルミ電解コンデンサは他のコンデンサに比べて小形かつ大容量を実現できることが最大の特徴となっている。
電解コンデンサ用のセパレータには、陽極箔と陰極箔の間に介在し、電解液を保持すると共に両極の短絡を防止する性能が要求される。また、該セパレータには、単に陽極箔と陰極箔の短絡を防止するだけでなく、良好なイオン透過性を持ち、電解液を長期間にわたり保持し、安定で電極箔を腐食するような不純物を持たないという性能も要求される。
セルロースは植物細胞壁の主成分であり、リグニン、ヘミセルロースと共存して植物体を支える役割を有する多糖類である。セルロースは、熱及び種々の溶媒に対し安定で、分子内に親水性の水酸基(O−H基)と疎水性のメチン基(>CH−基)を持っており、水及び有機溶媒何れの溶媒に対しても高い濡れ性を示す。また、パルプとなる植物繊維はミクロフィブリルという微細な繊維の集合体であり、繊維の表面積が大きく、また、繊維の内部にも水や有機溶媒が浸透できる。
さらに、これらの繊維をシート状に堆積したシートは、繊維の絡まりによる微細な隙間と、良好な親溶媒性により、イオン透過性が良好であり、さらに長期にわたり液体を保持することができる。
また、セルロース分子が持つ水酸基は水素結合により、互いの繊維間を結合し、繊維間を接着するバインダー成分を使用することなく、強度の高いシートを構成することができる。
また、セルロース分子が持つ水酸基は水素結合により、互いの繊維間を結合し、繊維間を接着するバインダー成分を使用することなく、強度の高いシートを構成することができる。
このような理由から、アルミ電解コンデンサ用セパレータには、木材や非木材などからサルフェート(クラフト)法、サルファイト法あるいはアルカリ法によって蒸解し抽出された天然植物繊維である製紙用化学パルプが用いられてきた。
化学パルプに使用する植物は特に樹種を限定せず、木材パルプでは、トウヒ、モミ、マツ、ツガなどの針葉樹やブナ、ナラ、カバ、ユーカリなどの広葉樹、非木材パルプはマニラ麻、サイザル麻、バナナ、パイナップルなどの葉脈繊維、コウゾ、三椏、ガンピ、ジュート、ケナフ、大麻、フラックス、などのジンピ繊維、エスパルト、竹、バガス、稲ワラ、麦ワラ、アシなどの禾本科植物繊維、綿、リンター、カポックなどの種毛繊維、椰子などの果実繊維、その他の植物としてイグサやサバイ草など種々の植物が利用できる。
近年、電気・電子製品の薄型化、小型化、長寿命化に伴い、限られた空間における部品充填率が上昇しており、蓄熱による高温環境下において長時間、特性を維持することができる電子部品が望まれるようになってきた。更に、アルミ電解コンデンサには、低インピーダンスであることや高い耐ショート性などが常に要求される。また、高調波対策回路や車両用に用いられるアルミ電解コンデンサには、従来のアルミ電解コンデンサに求められる以上の耐高リプル電流、高耐熱、長寿命、耐振動性が必要とされるようになってきた。
アルミ電解コンデンサの寿命特性を考えるうえで、熱は重要なファクターとなる。限られた空間における部品充填率の上昇による蓄熱の影響も大きいが、その原因となる熱源のひとつは受動部品であるアルミ電解コンデンサが自ら持つ抵抗値による自己発熱である。
アルミ電解コンデンサは、リプル電流が印加された場合、等価直列抵抗(以下「ESR」と表記)により損失が発生し、温度が上昇する。この時、イオン透過性が良好なセパレータを使用したESRの低いアルミ電解コンデンサを使用すれば、リプル電流による電解コンデンサの自己発熱を抑制でき、機器全体の温度を低温に保つことが可能であると共に電解コンデンサの寿命特性を改善できる。アルミ電解コンデンサにおいて高耐熱化、あるいは低ESR化は様々な分野に共通した重要な開発ポイントである。
電解コンデンサが高温度の環境下で使用された場合、従来の化学パルプで構成されたセパレータは、リグニン、ペクチン、ヘミセルロースなど、セルロースより耐熱性が低い成分が分解し、電解液の組成変化あるいはアルミ電極箔表面の酸化皮膜を破壊することにより、コンデンサの漏れ電流(LC)増加や、容量低下を引き起こしてしまうという問題がある。
特許文献1(特開2002−367863号公報)には、セパレータを構成するパルプの熱劣化に着目し、高温度の電解液中において耐熱性が高い化学繊維を含有させることでコンデンサの寿命特性を改善する方法が開示されている。
しかしながら、これらの化学繊維は、セルロース繊維のような水素結合による自己接着力がなく、繊維単独では強度の高いシート状のセパレータを得ることができない。
セパレータとして使用できる程度の強度を付与するためには、繊維間を結合させるバインダー成分が必要である。バインダーは溶融或いは溶解した成分で繊維間空隙を埋め、繊維間を接着することで強度を発現させるため、このようなセパレータでは電解液含浸後の良好なイオン透過性が得られずコンデンサのESRを低くすることができない。
また、化学繊維を含むセパレータを使用して製作されたアルミ電解コンデンサでは、使用中に電解液が下部に集まり、上部は電解液が不足してアルミ電解コンデンサの容量低下など特性が劣化するという欠点がある。これは、化学繊維は繊維表面が平滑で表面積が小さく、また繊維内部にまで電解液が浸透しないため、電解液の保持性が低いためである。更に、化学繊維は、一般に使用される天然植物繊維と比較すると価格が高く、安価で高容量が得られることが特徴である電解コンデンサ用の材料として使用することは難しい。
針葉樹クラフトパルプは繊維長が長く、安価で強い紙が得られるため、電解コンデンサ用セパレータの材料として多く使用されているが、繊維が太く断面が扁平であるため、電解液を含浸した後のイオン透過性が悪く、コンデンサの抵抗が大きくなるという欠点がある。
一方、マニラ麻やエスパルト草など非木材繊維から得られた化学パルプは繊維が小さく、繊維の断面がやや円に近いため、イオン透過性が良好であることから、主に低抵抗が要求されるコンデンサに使用されてきた。近年のアルミ電解コンデンサの低抵抗化の要求の高まりにより、セパレータはより薄型化、低密度化が進んでいる。しかしながら、セパレータを薄型化、或いは低密度化した場合、緻密性が不足してしまうため、電極箔のエッジ部分やタブ部分存在する金属のバリに対する抵抗性が不足し、電極間の短絡(ショート)が発生してしまい、セパレータとしての重要な役割としての、電極間の隔離能力が不足してしまう。
セパレータの緻密性を確保する手段として、ミクロフィブリルの集合体であるパルプを抄紙前に叩解処理することにより、繊維径が数十nm〜数μmのフィブリルに分割し、緻密なシートを得る方法がある。しかしながら叩解により発生したフィブリルは、叩解時に内部フィブリル化が進行し柔軟になるため、セパレータの密度が上昇する。また、これらのフィブリルは繊維間の空隙をも埋めてしまうため、電解液含浸後セパレータのイオン透過性が悪く、電解コンデンサのESRが悪化してしまう。
本発明は、係る課題を解決することを目的としてなされたもので、高耐熱で保液性が高く、イオン透過性が良好なセパレータを提供し、高温度条件化で寿命特性に優れ、かつ低ESRのアルミ電解コンデンサを安価に提供することを目的とする。
係る課題を解決する一手段として、例えば以下の構成を備える。
即ち、電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液を含浸、保持するために使用するアルミ電解コンデンサ用セパレータであって、αセルロース含有率92%以上の繊維を含有することを特徴とするセパレータであることを特徴とする。
即ち、電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液を含浸、保持するために使用するアルミ電解コンデンサ用セパレータであって、αセルロース含有率92%以上の繊維を含有することを特徴とするセパレータであることを特徴とする。
そして例えば、前記繊維を10重量%〜100重量%含むセパレータであることを特徴とする。また例えば、前記繊維は、10重量%以上の溶解パルプを含むことを特徴とする。更に例えば、前記繊維は、10重量%以上のマーセル化パルプを含むことを特徴とする。
更に例えば、密度0.2〜0.7g/cm3かつ厚さ25〜100μmであることを特徴とする。
または、前記いずれかのセパレータを使用したアルミ電解コンデンサとすることを特徴とする。
または、前記いずれかのセパレータを使用したアルミ電解コンデンサとすることを特徴とする。
本発明によれば、高温度の環境下においても、セパレータの熱劣化を抑制し、漏れ電流の増加や容量の減少、ESRの悪化を抑制できるアルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサを提供できる。
〔概要〕
以下、本発明に係る一発明の実施の形態例を詳細に説明する。
本件発明者は、アルミ電解コンデンサの自己発熱の原因となるESRと高温度環境下におけるセパレータの材料の重量減少に着目し、材料の選択と原材料の精製度について種々検討した。
以下、本発明に係る一発明の実施の形態例を詳細に説明する。
本件発明者は、アルミ電解コンデンサの自己発熱の原因となるESRと高温度環境下におけるセパレータの材料の重量減少に着目し、材料の選択と原材料の精製度について種々検討した。
本実施の形態例では、電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液(以下電解液と略す)を含浸、保持するために使用するセパレータにおいて、αセルロース含有率が92%以上の繊維を含有することにより、低ESRであり、なおかつ耐熱性を改善することで、高温及び/又は長期間の使用における性能を改善した電解コンデンサを提供することが可能となる。
さらに、αセルロース含有率が92%以上の溶解パルプ或いはマーセル化パルプは、製紙用化学パルプと同様叩解によりフィブリル化が可能である。製紙用化学パルプの場合、叩解により発生したフィブリルは、内部フィブリル化が進行し、繊維が柔軟になるため、セパレータの密度が上昇し、フィルム状の紙になってしてしまうが、本実施の形態例の溶解パルプ、マーセル化パルプを叩解することにより得られる微細なフィブリルの剛性が高いため、紙にしたときに互いに独立した微細なフィブリルが接触点で結合するためフィルム状にならず、多数の繊維間空隙を持つ多孔質で密度が低く、きわめて緻密な紙質のセパレータが得られる。
〔セパレータの構成〕
本件発明者等は、従来製紙用には使用されていない繊維である溶解パルプ及びマーセル化パルプに着目し、αセルロース含有率が92%以上の溶解パルプが従来の製紙用化学パルプと異なる繊維断面形状で、繊維自身の剛性が高く、叩解後も多数の繊維間空隙を持つ多孔質できわめて緻密な紙質を有し、加えて高温度の電解コンデンサ用電解液の溶媒中における重量保持性に優れることを発見した。この結果により、セパレータの材料として、従来の製紙用パルプに代えて溶解パルプを使用することで、イオン透過性と保液性に優れ、高温電解液中でのセパレータの熱分解も抑制し、該セパレータを用いることで寿命特性に優れた低ESRの電解コンデンサが得られることを見出した。
本件発明者等は、従来製紙用には使用されていない繊維である溶解パルプ及びマーセル化パルプに着目し、αセルロース含有率が92%以上の溶解パルプが従来の製紙用化学パルプと異なる繊維断面形状で、繊維自身の剛性が高く、叩解後も多数の繊維間空隙を持つ多孔質できわめて緻密な紙質を有し、加えて高温度の電解コンデンサ用電解液の溶媒中における重量保持性に優れることを発見した。この結果により、セパレータの材料として、従来の製紙用パルプに代えて溶解パルプを使用することで、イオン透過性と保液性に優れ、高温電解液中でのセパレータの熱分解も抑制し、該セパレータを用いることで寿命特性に優れた低ESRの電解コンデンサが得られることを見出した。
溶解パルプを用いる場合には、酸性サルファイト法或いは前加水分解に続いて、クラフト蒸解法を行う精製工程により、リグニンやヘミセルロースを除去し、αセルロースの含有率を上昇させる。更にセルロース含有率を高めるために、アルカリを用いた精製工程を行い、ヘミセルロースの除去を行う場合もある。これらの過程において溶解パルプのαセルロース含有率が増加する。
また、リグニンやヘミセルロース成分が除去されることにより溶解パルプの繊維断面の形状は、同じ原材料を用いた製紙用化学パルプに比べて円に近い形状となる。また、パルプの剛性が高くなり、嵩高くなりやすくなる。
マーセル化パルプを用いる場合のマーセル化処理は、パルプ中のヘミセルロース分を除去する方法の一つとして一般に知られている。パルプに苛性ソーダや苛性カリ、アンモニアなどのアルカリによってマーセル化処理を施したあと、水洗しアルカリ分を除去したパルプである。得られたパルプは、結晶構造がセルロースIからセルロースIIに変化する。マーセル化処理により繊維の断面形状は円形に近づき、得られたパルプは溶解パルプと同様、剛性が高く、嵩高くなりやすい性質を持つ。
パルプ中に含まれる、リグニンやペクチン、非晶質のヘミセルロースは結晶質のセルロースに比べ、耐熱性及び耐薬品性に劣る。したがってパルプを精製することでヘミセルロースを除去し、αセルロースの含有率を大きくした、溶解パルプ、あるいはマーセル化パルプは、製紙用化学パルプよりも耐熱性や耐薬品性が向上する。このためこれらのパルプを使用して電解コンデンサ用セパレータを製作すると、高温の電解液中において製紙用化学パルプを使用したセパレータよりも耐熱性を高くできる。
具体的には、溶解パルプ或いはマーセル化パルプを使用して電解コンデンサ用セパレータを製作すると、セパレータ中の繊維に含まれるリグニンやペクチン、非晶質であるヘミセルロースが減少することで、電解液中でのヘミセルロースの分解・溶出による電解液の組成変化を最小限にでき、高温度環境下でのアルミ電解コンデンサの使用において、電極箔の酸化皮膜の劣化や腐食を長期にわたり防ぐことができる。
〔セパレータに使用する溶解パルプ〕
以下、本実施の形態例のセパレータをより具体的に説明する。本実施の形態例の電解コンデンサ用セパレータは、セパレータ中の繊維を溶解パルプ或いはマーセル化パルプの少なくとも一種を含有した構成とすることを基本とする。また、前記溶解パルプ或いはマーセル化パルプは、αセルロース含有率が92%以上であることを必須要件とする。
以下、本実施の形態例のセパレータをより具体的に説明する。本実施の形態例の電解コンデンサ用セパレータは、セパレータ中の繊維を溶解パルプ或いはマーセル化パルプの少なくとも一種を含有した構成とすることを基本とする。また、前記溶解パルプ或いはマーセル化パルプは、αセルロース含有率が92%以上であることを必須要件とする。
ここで、溶解パルプとは、化学的に特別に精製された化学パルプであり、その名の通り主に薬品に溶解して使用することを目的として生産されたパルプである。
溶解パルプは、同じ原材料の製紙用化学パルプに比べ、リグニンやヘミセルロースの含有率が小さく、αセルロースの割合が比較的大きい高純度なパルプである。精製によりαセルロース以外の成分が除去されることにより、結果としてαセルロースの含有率が大きく、繊維の断面形状が丸く変化する。
溶解パルプは、同じ原材料の製紙用化学パルプに比べ、リグニンやヘミセルロースの含有率が小さく、αセルロースの割合が比較的大きい高純度なパルプである。精製によりαセルロース以外の成分が除去されることにより、結果としてαセルロースの含有率が大きく、繊維の断面形状が丸く変化する。
本実施の形態例で配合する溶解パルプとしては、針葉樹及び広葉樹等の木材から得られた溶解パルプあるいは非木材繊維から得られた溶解パルプが使用できる。
溶解パルプは、レーヨンなどの再生セルロース繊維やセロファン或いはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体の原料となるもので、セルロース利用の化学工業の重要な出発原料である。溶解パルプは製紙用パルプと比較するとコストは高くなるものの、特許文献1に記載された耐熱性の高い化学繊維等と比較するとはるかに安価である。
溶解パルプは、レーヨンなどの再生セルロース繊維やセロファン或いはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体の原料となるもので、セルロース利用の化学工業の重要な出発原料である。溶解パルプは製紙用パルプと比較するとコストは高くなるものの、特許文献1に記載された耐熱性の高い化学繊維等と比較するとはるかに安価である。
一方、マーセル化パルプは、溶解パルプと同様にレーヨンなどの再生セルロース繊維用の材料として、或いはコットンパルプの代替材料としてフィルター用途として使用されているパルプである。パルプに苛性ソーダや苛性カリ、アンモニアなどのアルカリによってマーセル化処理を施したあと、水洗しアルカリ分を除去したパルプであり、得られたパルプは剛性が高く、嵩高くなりやすい性質を持つ。マーセル化パルプは、セルロースの結晶構造がセルロースIからセルロースIIに少なくとも一部が変化していることが特徴である。
本実施の形態例において、使用する溶解パルプ或いはマーセル化パルプは、前記したようにαセルロース含有率が92%以上の高純度のものが好ましい。
αセルロース含有率が92%を下回ると、繊維自体の剛性が低くなる。また叩解により発生したフィブリルは内部フィブリル化が進行し、繊維の剛性が更に損なわれることになり、セパレータの密度上昇に繋がり繊維間空隙が確保できずフィルム状になってしまう。
また、αセルロースの含有率が低いと電解液中でのセパレータの耐熱性が低下し、かつ、繊維の剛性が低くセパレータがフィルム状になるとイオン透過性と保液性が損なわれ、寿命特性の優れた低ESRの電解コンデンサとならないことは前記の通りである。
αセルロース含有率が92%を下回ると、繊維自体の剛性が低くなる。また叩解により発生したフィブリルは内部フィブリル化が進行し、繊維の剛性が更に損なわれることになり、セパレータの密度上昇に繋がり繊維間空隙が確保できずフィルム状になってしまう。
また、αセルロースの含有率が低いと電解液中でのセパレータの耐熱性が低下し、かつ、繊維の剛性が低くセパレータがフィルム状になるとイオン透過性と保液性が損なわれ、寿命特性の優れた低ESRの電解コンデンサとならないことは前記の通りである。
〔本発明のセパレータの特性〕
本実施の形態例のセパレータは前記した原料を使用し、一般の抄紙機にて抄紙して製造する。例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜単網抄紙機、フォーマー型抄紙機及びそれらを組み合わせた多層抄紙機によってセパレータを抄紙することができる。尚、得られるセパレータの密度は0.25〜0.70g/cm3の範囲であり、厚さが20(実施例3の厚さが20μm、次段落の説明も20μmが基準。)〜100μmの範囲であることが好ましい。
本実施の形態例のセパレータは前記した原料を使用し、一般の抄紙機にて抄紙して製造する。例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜単網抄紙機、フォーマー型抄紙機及びそれらを組み合わせた多層抄紙機によってセパレータを抄紙することができる。尚、得られるセパレータの密度は0.25〜0.70g/cm3の範囲であり、厚さが20(実施例3の厚さが20μm、次段落の説明も20μmが基準。)〜100μmの範囲であることが好ましい。
セパレータの密度が0.25g/cm3を下回ると引張り強さが不足し、コンデンサ製作時に必要な強度が確保できなくなる。0.70g/cm3を超過するとイオン透過性が悪化しコンデンサのESRの改善ができない。また、セパレータの厚さが20μmを下回ると緻密性の確保が困難となり、コンデンサのショート不良が増加する。100μmを超過するとイオン透過性が悪化し、コンデンサのESRが上昇するという問題がある。
表1に本発明に係る一実施例、比較例及び参考例で使用する溶解パルプ及びマーセル化パルプ、製紙用化学パルプに関して、パルプの種類と、それぞれの繊維断面の形状、αセルロース含有率、電解液の溶媒であるEG及びGBL中、180℃で150時間の加熱劣化処理した際の重量残存率の測定結果を示す。
なお、表1に記載されたパルプの各測定値は次の方法による測定結果である。
(1)繊維断面の形状
走査型電子顕微鏡にて繊維の断面画像を撮影し、繊維断面に二本の平行する直線を外接させた時に二直線間の距離が最も大きくなる値を長径、最も小さくなる値を小径として測定した。
(1)繊維断面の形状
走査型電子顕微鏡にて繊維の断面画像を撮影し、繊維断面に二本の平行する直線を外接させた時に二直線間の距離が最も大きくなる値を長径、最も小さくなる値を小径として測定した。
(2)αセルロース含有率
TAPPI標準法T203に規定の「パルプ中のα,βとγセルロース」の測定方法によってαセルロース含有率を測定した。
(3)加熱劣化試験(EG)
絶乾で約3gとなる大きさ200mm×250mmの手抄シートを作成し、絶乾重量を測定し、約90mlのエチレングリコール(以下EGと略す)と共に180℃で150時間加熱処理を行なう。所定の時間経過後EGをイオン交換水で洗浄し、乾燥後の重量の測定し試験前の重量で除して重量残存率を算出した。
TAPPI標準法T203に規定の「パルプ中のα,βとγセルロース」の測定方法によってαセルロース含有率を測定した。
(3)加熱劣化試験(EG)
絶乾で約3gとなる大きさ200mm×250mmの手抄シートを作成し、絶乾重量を測定し、約90mlのエチレングリコール(以下EGと略す)と共に180℃で150時間加熱処理を行なう。所定の時間経過後EGをイオン交換水で洗浄し、乾燥後の重量の測定し試験前の重量で除して重量残存率を算出した。
(4)加熱劣化試験(GBL)
絶乾で約3gとなる大きさ200mm×250mmの大きさの手抄シートを作成し、絶乾重量を測定し、約90mlのガンマブチロラクトン(以下GBLと略す)と共に180℃で150時間加熱処理を行なう。所定の時間経過後イオン交換水でGBLを洗浄し、乾燥後の重量の測定し試験前の重量で除して重量残存率を算出した。
絶乾で約3gとなる大きさ200mm×250mmの大きさの手抄シートを作成し、絶乾重量を測定し、約90mlのガンマブチロラクトン(以下GBLと略す)と共に180℃で150時間加熱処理を行なう。所定の時間経過後イオン交換水でGBLを洗浄し、乾燥後の重量の測定し試験前の重量で除して重量残存率を算出した。
表1において、材料Aは葉脈繊維であるマニラ麻をアルカリ法で蒸解し、続いてマーセル化処理したパルプである。材料Bは葉脈繊維であるサイザル麻を前加水分解後サルフェート法にて蒸解し、続いて塩素化合物を含む薬品を使用しない無塩素漂白(TCF漂白)した、溶解パルプである。
材料Cは木材である針葉樹を酸性サルファイト蒸解し、続いてアルカリ処理によりヘミセルロース成分を溶解除去した針葉樹サルファイト溶解パルプである。材料Dは木材である針葉樹を前加水分解に続いてサルフェート蒸解し、続いて塩素化合物を含む薬品を使用しない無塩素漂白(TCF漂白)したあと、マーセル化処理して得られた。針葉樹マーセル化溶解パルプである。
材料Eはマニラ麻をアルカリ法で蒸解した製紙用化学パルプである。材料Fはサイザル麻をサルフェート法にて蒸解した製紙用化学パルプ、材料Gは木材である針葉樹をサルフェート法で蒸解し得られた未漂白の製紙用クラフトパルプである。材料Hは針葉樹を前加水分解に続いてクラフト処理して得られた溶解パルプである。材料Iは禾本科植物繊維であるエスパルト草をアルカリ蒸解した製紙用化学パルプである。
材料Jは溶解パルプを材料としてビスコース法を用いて製作された再生セルロース繊維であるビスコースレーヨンを3mmの長さにカットした繊維である。材料Kは耐熱性ナイロンとして市販されている長さ3mmにカットされた繊維である。
表1に示す様に、非木材であるマニラ麻の葉脈繊維から得られたマーセル化パルプである材料Aのαセルロース含有率97.6%に対し、製紙用のマニラ麻パルプEのαセルロース含有率は91.8%と低い。電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験の結果は、材料AのEG中での重量残存率が95.5%、GBLでの重量残存率が93.2%と高かったが、製紙用化学パルプである材料EはEG中での重量残存率が92.1%、GBL中での重量残存率が90.1%と材料Aの値を下回った。また、材料AとEの断面形状を比べると、材料Eをマーセル化処理した材料Aの方が円形に近いことがわかる。
また、サイザル麻を前加水分解後サルフェート法にて蒸解し、続いて塩素化合物を含む薬品を使用しない無塩素漂白(TCF漂白)した材料Bのαセルロース含有率は96.5%と高いが、材料Fのαセルロース含有率は91.0%と低かった。電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験の結果は、材料BのEG中での重量残存率が94.0%、GBLでの重量残存率が93.6%と高かった。一方、製紙用化学パルプである材料FはEG中での重量残存率が91.5%、GBL中での重量残存率が89.9%と材料Bの値を下回った。また、材料BとFの断面形状を比べると、溶解パルプである材料Bの方が円形に近いことがわかる。
針葉樹溶解サルファイトパルプである材料Cのαセルロース含有率は92.5%と高くなっている。さらに、マーセル化針葉樹溶解クラフトパルプである材料Dのαセルロース含有率は98.5%ときわめて高い。一方、製紙用針葉樹クラフトパルプである材料Gのαセルロース含有率は89.9%と低い。電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験を行った結果は、材料CのEG中で残存率が94.5%、GBL中の残存率が93.6%,材料DのEG中での重量残存率は96.5%、GBL中での重量残存率が95.3%と高い。一方、材料GのEG中での重量残存率は91.0%、GBL中での重量残存率が86.4%と材料C、材料Dの値を大きく下回った。
材料Hは針葉樹を前加水分解に続いてクラフト蒸解した溶解パルプであるが、αセルロースの含有率が91.0%と低かった。電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験を行った結果は、材料CのEG中で残存率が92.0%、GBL中の残存率が90.8%と低い値となった。また、材料Cの断面形状は35.0×25.0μm、材料Dは32.0×27.0μmとなっており、材料G、Hに比べ円形に近いことがわかる。
また、禾本科植物繊維であるエスパルトをアルカリ蒸解して得られた製紙用化学パルプである材料Iのαセルロース含有率は88.5%と低く、電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験の結果は、EG中での重量残存率が90.0%、GBLでの重量残存率が88.5%と低かった。
ビスコースレーヨン繊維である材料Jのαセルロース繊維の含有率は、製紙用クラフトパルプと同程度の89.5%であり、電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験の結果は、EG中での重量残存率が92.1%、GBLでの重量残存率が89.0%と製紙用針葉樹パルプと同程度であり低かった。
耐熱性ナイロン繊維である材料Kはセルロースを含まないためαセルロースの含有はない。電解液の溶媒であるEG及びGBLでの180℃の加熱劣化試験の結果は、EG中での重量残存率が98.0%、GBLでの重量残存率が97.5%と高い結果となった。
これらの結果から、αセルロースの含有率が92%以上の溶解パルプ、あるいはマーセル化パルプの方が、電解液の溶媒であるEG及びGBL中の重量残存率が高く耐熱性に優れることが確認できた。
〔アルミ電解コンデンサへの適用〕
セパレータに配合する材料として、表1に記載のパルプA,B,C,D,E,F,G,H,I,Jを使用して、本発明にかかる一実施例、従来例あるいは比較例のアルミ電解コンデンサ用セパレータを製作し、該セパレータを用いてアルミ電解コンデンサを製作した。
セパレータに配合する材料として、表1に記載のパルプA,B,C,D,E,F,G,H,I,Jを使用して、本発明にかかる一実施例、従来例あるいは比較例のアルミ電解コンデンサ用セパレータを製作し、該セパレータを用いてアルミ電解コンデンサを製作した。
電解液としては通常エチレングリコール(EG),ジメチルホルムアミド(DMF)又はγ−ブチロラクトン(GBL)等を溶媒とし、これらの溶媒に硼酸やアジピン酸,マレイン酸又はこれらのアンモニウム塩等の溶質を溶解したものを用いる。この電解液をコンデンサ素子の両端から浸透させてコンデンサを製作している。
以下に本発明に係る一実施例、従来例および比較例について説明する。
各実施例、従来例、比較例で製作したアルミ電解コンデンサは、以下の工程によって製作した。
各実施例、従来例、及び比較例で製作したセパレータを、エッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔の間に介在させ、巻回しコンデンサ素子を形成する。
このコンデンサ素子にEG系あるいはGBL系の電解液を含浸し、アルミニウムよりなる円筒形のケースに収納した後、ブチルゴムからなる弾性封口体を装着し、絞り加工(カシメ)により密閉し、アルミ電解コンデンサを製作した。
各実施例、従来例、比較例で製作したアルミ電解コンデンサは、以下の工程によって製作した。
各実施例、従来例、及び比較例で製作したセパレータを、エッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔の間に介在させ、巻回しコンデンサ素子を形成する。
このコンデンサ素子にEG系あるいはGBL系の電解液を含浸し、アルミニウムよりなる円筒形のケースに収納した後、ブチルゴムからなる弾性封口体を装着し、絞り加工(カシメ)により密閉し、アルミ電解コンデンサを製作した。
〔実施例1〕
表1に記載の材料Aを40重量%と、材料Iを60重量%とを配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、カナディアンスタンダードフリーネス(以下CSFと略す)値で600mlとなるまで、ダブルディスクリファイナー(以下DDRと略す)にて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ50.1μm、坪量12.6g/m2、密度0.251g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Aを40重量%と、材料Iを60重量%とを配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、カナディアンスタンダードフリーネス(以下CSFと略す)値で600mlとなるまで、ダブルディスクリファイナー(以下DDRと略す)にて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ50.1μm、坪量12.6g/m2、密度0.251g/cm3のセパレータを得た。
〔比較例1〕
実施例1と同様な、厚さ50μm,密度0.250g/cm3となるようなセパレータ得るために、表1に記載の材料Eを40重量%、材料Iを60重量%とを配合し、円網二層抄紙機にて抄紙を行ったが、従来例1のような製紙用化学パルプ配合した原料では、叩解処理を行っていない原料であっても、セパレータの密度が0.270g/cm3をより大きくなってしまい、目的のセパレータを得ることはできなかった。
実施例1と同様な、厚さ50μm,密度0.250g/cm3となるようなセパレータ得るために、表1に記載の材料Eを40重量%、材料Iを60重量%とを配合し、円網二層抄紙機にて抄紙を行ったが、従来例1のような製紙用化学パルプ配合した原料では、叩解処理を行っていない原料であっても、セパレータの密度が0.270g/cm3をより大きくなってしまい、目的のセパレータを得ることはできなかった。
〔比較例2〕
表1に記載の材料Aを40重量%、材料Iを60重量%の割合で配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、DDRによる叩解処理は実施せずCSF700mlの原料を得た。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ50.0μm、坪量12.0g/m2、密度0.240g/cm3のセパレータを得た。このセパレータを用いたコンデンサ素子製作時には強度不足による紙切れが多発し素子の巻取りができず、コンデンサを製作することができなかった。
表1に記載の材料Aを40重量%、材料Iを60重量%の割合で配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、DDRによる叩解処理は実施せずCSF700mlの原料を得た。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ50.0μm、坪量12.0g/m2、密度0.240g/cm3のセパレータを得た。このセパレータを用いたコンデンサ素子製作時には強度不足による紙切れが多発し素子の巻取りができず、コンデンサを製作することができなかった。
〔比較例3〕
塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で600mlとなるまで、DDRにて叩解処理した表1に記載の材料Eを40重量%、耐熱性ナイロン繊維である材料Kを50重量%、バインダーとしてビニロン繊維10重量%を配合した。
この原料を円網二層コンビネーション抄紙機にて抄紙し、厚さ50.5μm、坪量12.7g/m2、密度0.251g/cm3のセパレータを得た。
塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で600mlとなるまで、DDRにて叩解処理した表1に記載の材料Eを40重量%、耐熱性ナイロン繊維である材料Kを50重量%、バインダーとしてビニロン繊維10重量%を配合した。
この原料を円網二層コンビネーション抄紙機にて抄紙し、厚さ50.5μm、坪量12.7g/m2、密度0.251g/cm3のセパレータを得た。
〔実施例2〕
表1に記載の材料Bを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で150mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ39.9μm、坪量16.0g/m2、密度0.402g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Bを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で150mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ39.9μm、坪量16.0g/m2、密度0.402g/cm3のセパレータを得た。
〔従来例1〕
表1に記載の材料Eを60重量%、材料Iを40重量%の割合で配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で640mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ40.1μm、坪量16.0g/m2、密度0.399g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Eを60重量%、材料Iを40重量%の割合で配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で640mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ40.1μm、坪量16.0g/m2、密度0.399g/cm3のセパレータを得た。
〔参考例1〕
塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で500mlとなるまで、DDRにて叩解処理した表1に記載の材料Eを60重量%、ビスコースレーヨンである材料Jを40重量%、配合した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ40.2μm、坪量16.1g/m2、密度0.400g/cm3のセパレータを得た。
塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で500mlとなるまで、DDRにて叩解処理した表1に記載の材料Eを60重量%、ビスコースレーヨンである材料Jを40重量%、配合した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ40.2μm、坪量16.1g/m2、密度0.400g/cm3のセパレータを得た。
〔実施例3〕
表1に記載の材料Bを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で200mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を短網抄紙機にて抄紙し、厚さ20.0μm、坪量10.0g/m2、密度0.498g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Bを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で200mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を短網抄紙機にて抄紙し、厚さ20.0μm、坪量10.0g/m2、密度0.498g/cm3のセパレータを得た。
〔従来例2〕
表1に記載の材料Fを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で350mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を短網抄紙機にて抄紙し、厚さ20.2μm、坪量10.1g/m2、密度0.501g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Fを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で350mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を短網抄紙機にて抄紙し、厚さ20.2μm、坪量10.1g/m2、密度0.501g/cm3のセパレータを得た。
〔比較例4〕
表1に記載の材料Bを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で200mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を短網抄紙機にて抄紙し、厚さ17.5μm、坪量8.8g/m2、密度0.450g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Bを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で200mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を短網抄紙機にて抄紙し、厚さ17.5μm、坪量8.8g/m2、密度0.450g/cm3のセパレータを得た。
〔実施例4〕
表1に記載の材料Cを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で200mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網抄紙機にて抄紙し、厚さ49.9μm、坪量33.9g/m2、密度0.680g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Cを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で200mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網抄紙機にて抄紙し、厚さ49.9μm、坪量33.9g/m2、密度0.680g/cm3のセパレータを得た。
〔従来例3〕
表1に記載の材料Gを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で350mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網抄紙機にて抄紙し、厚さ50.3μm、坪量34.3g/m2、密度0.682g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Gを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で350mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網抄紙機にて抄紙し、厚さ50.3μm、坪量34.3g/m2、密度0.682g/cm3のセパレータを得た。
〔比較例5〕
表1に記載の材料Hを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で290mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網抄紙機にて抄紙し、厚さ50.1μm、坪量34.0g/m2、密度0.679g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Hを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で290mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網抄紙機にて抄紙し、厚さ50.1μm、坪量34.0g/m2、密度0.679g/cm3のセパレータを得た。
〔比較例6〕
表1に記載の材料Cを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で0mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を長網抄紙機にて抄紙し、厚さ30.0μm、坪量22.5g/m2、密度0.750g/cm3のセパレータを得た。得られたセパレータを用いてコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子にEG系電解液を含浸させて63V、220μFのアルミ電解コンデンサを製作した。コンデンサ素子巻取り時、及びエージング工程にて発生したショート不良は0.2%だった。
表1に記載の材料Cを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で0mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を長網抄紙機にて抄紙し、厚さ30.0μm、坪量22.5g/m2、密度0.750g/cm3のセパレータを得た。得られたセパレータを用いてコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子にEG系電解液を含浸させて63V、220μFのアルミ電解コンデンサを製作した。コンデンサ素子巻取り時、及びエージング工程にて発生したショート不良は0.2%だった。
〔比較例7〕
表1に記載の材料Gを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で0mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を長網抄紙機にて抄紙し、厚さ30.0μm、坪量22.6g/m2、密度0.753g/cm3のセパレータを得た。得られたセパレータを用いてコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子にEG系電解液を含浸させて63V、220μFのアルミ電解コンデンサを製作した。コンデンサ素子巻取り時、及びエージング工程にて発生したショート不良は0.3%だった。
表1に記載の材料Gを100重量%用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で0mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を長網抄紙機にて抄紙し、厚さ30.0μm、坪量22.6g/m2、密度0.753g/cm3のセパレータを得た。得られたセパレータを用いてコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子にEG系電解液を含浸させて63V、220μFのアルミ電解コンデンサを製作した。コンデンサ素子巻取り時、及びエージング工程にて発生したショート不良は0.3%だった。
〔実施例5〕
表1に記載の材料Dを27重量%、材料Gを73重量%配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で650mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、円網抄紙機用原料とした。
続いて、材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF0mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、長網抄紙機用原料とした。
表1に記載の材料Dを27重量%、材料Gを73重量%配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で650mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、円網抄紙機用原料とした。
続いて、材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF0mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、長網抄紙機用原料とした。
これらの原料を、長網円網コンビネーション抄紙機を用いて抄紙した。長網抄紙機における高密度層の厚さは20μm、密度0.750g/cm3、材料Dが27重量%配合された円網抄紙機で抄紙された低密度層は、0.300g/cm3程度の密度であり、セパレータ全体として厚さ50.1μm、坪量24.0g/m2、密度0.480g/cm3のセパレータを得た。得られたセパレータ全体におけるαセルロース含有率92%以上である材料の配合率は10重量%となる。
〔比較例8〕
表1に記載の材料Dを21重量%、材料Gを79重量%配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で650mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、円網抄紙機用原料とした。
続いて、材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF0mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、長網抄紙機用原料とした。
表1に記載の材料Dを21重量%、材料Gを79重量%配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で650mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、円網抄紙機用原料とした。
続いて、材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF0mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、長網抄紙機用原料とした。
これらの原料を、長網円網コンビネーション抄紙機を用いて抄紙した。長網抄紙機における高密度層の厚さを20μm、密度を0.750g/cm3、円網抄紙機で抄紙された低密度層は、0.450g/cm3程度の密度となり、セパレータ全体として厚さ50.0μm、坪量28.6g/m2、密度0.571g/cm3のセパレータを得た。得られたセパレータ全体におけるαセルロース含有率92%以上である材料の配合率は5重量%となる。
〔従来例4〕
表1に記載の材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で650mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、円網抄紙機用原料とした。
続いて、材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF0mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、長網抄紙機用原料とした。
表1に記載の材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で650mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、円網抄紙機用原料とした。
続いて、材料G100重量%を用いて、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF0mlとなるまで、DDRにて叩解処理し、長網抄紙機用原料とした。
これらの原料を、長網円網コンビネーション抄紙機を用いて、長網抄紙機における高密度層の厚さを20μm、密度を0.750g/cm3として、円網抄紙機で抄紙した低密度層は、0.500g/cm3程度の密度となり、セパレータ全体の厚さは49.9μm、坪量29.9g/m2、密度0.599g/cm3のセパレータを得た。
〔実施例6〕
表1に記載の材料Aを60重量%、材料I40重量%を配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で400mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ99.8μm、坪量60.0g/m2、密度0.601g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Aを60重量%、材料I40重量%を配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で400mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ99.8μm、坪量60.0g/m2、密度0.601g/cm3のセパレータを得た。
〔従来例6〕
表1に記載の材料Eを60重量%、材料I40重量%を配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で550mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ100.1μm、坪量60.0g/m2、密度0.599g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Eを60重量%、材料I40重量%を配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で550mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ100.1μm、坪量60.0g/m2、密度0.599g/cm3のセパレータを得た。
〔比較例9〕
表1に記載の材料Aを60重量%、材料I40重量%を配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で420mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ109.5μm、坪量65.8g/m2、密度0.601g/cm3のセパレータを得た。
表1に記載の材料Aを60重量%、材料I40重量%を配合し、塩素イオンなどパルプに含まれる水溶性の不純物を洗浄除去した後、CSF値で420mlとなるまで、DDRにて叩解処理した。
この原料を円網二層抄紙機にて抄紙し、厚さ109.5μm、坪量65.8g/m2、密度0.601g/cm3のセパレータを得た。
〔コンデンサ特性測定結果〕
以上の実施例、比較例、従来例及び参考例で得たセパレータを用いて、種々のアルミ電解コンデンサを製作し、20℃におけるESRを100kHzの周波数にて計測した。また、高温寿命試験を以下の条件にて実施した。試験条件は125℃にて250時間の定格電圧負荷試験とし、試験実施後の20℃における電解コンデンサの静電容量及び漏れ電流を測定し、試験前の静電容量及び漏れ電流の値と比較した。
以上の実施例、比較例、従来例及び参考例で得たセパレータを用いて、種々のアルミ電解コンデンサを製作し、20℃におけるESRを100kHzの周波数にて計測した。また、高温寿命試験を以下の条件にて実施した。試験条件は125℃にて250時間の定格電圧負荷試験とし、試験実施後の20℃における電解コンデンサの静電容量及び漏れ電流を測定し、試験前の静電容量及び漏れ電流の値と比較した。
実施例1乃至3、比較例2乃至3、従来例1乃至2、参考例1で得られたセパレータをGBL系電解液における低圧用電解コンデンサ(16V、220μF)として評価した。各試験の評価結果を表2に示す。
表2に示す様に、材料Aを40重量%配合した実施例1では、マーセル化パルプは剛性が高く嵩高くなりやすい特性を持つことから、叩解による材料Aのフィブリル化を進めても、0.25g/cm3の低密度の確保が可能で、叩解により繊維径の小さいフィブリルが多数得られ、緻密性が高く素子製作が可能な強度を確保したセパレータを得た。製作されたコンデンサは、ESRが0.21Ωの低ESRを実現しており、さらに125℃、250時間の高温付加試験後の容量低下は2.3%と小さく、漏れ電流の増加も1.1%に抑制されている。
しかしながら、製紙用化学用パルプのみで構成した比較例1は、抄紙において、密度を目的とする0.250g/cm3まで低くすることができず、セパレータを製作することができなかった。
一方、マーセル化マニラ麻パルプAを40重量%配合した、比較例2では0.240g/cm3の密度のセパレータを得ることができたが、セパレータの強度が不足し、コンデンサの素子を巻き取ることができなかった。
一方、マーセル化マニラ麻パルプAを40重量%配合した、比較例2では0.240g/cm3の密度のセパレータを得ることができたが、セパレータの強度が不足し、コンデンサの素子を巻き取ることができなかった。
耐熱性繊維である材料Kを50重量%配合した比較例3は、0.250g/cm3の密度は確保できたものの、緻密性が不足しており、素子巻取り時、及びエージング時のショートが13.1%と高くなった。また、強度確保のために配合したバインダーの影響で、コンデンサのESRが0.31Ωと高かった。また、高温付加試験後の容量低下が30.1%と大きくなったが、これは化学繊維である材料Kの電解液の保持力が低いため、高温負荷試験中に、電解液がコンデンサ素子の下部に集まってしまい、電極箔の容量を引き出せなくなったものと推測される。
材料Eと材料Iを配合した、従来例1は、ESRが0.25Ωとやや高く、125℃、250時間後の高温負荷試験後の容量低下は11.2%とやや大きくなっている。漏れ電量の増加も2.5%となっている。溶解パルプを出発原料とする再生セルロース繊維である材料J(ビスコースレーヨン)を用いた参考例1は、ビスコースレーヨンは叩解によるフィブリルができないため、シートの緻密性が確保できず、ショート不良が11%と高くなっている。
さらに、さらに125℃、250時間の高温付加試験後の漏れ電流及び容量の変化量が極めて大きい。ビスコースレーヨンは、溶解したセルロースを繊維に再生する際に硫酸浴を使用する。その際に繊維中に硫酸イオンが多く残留してしまう。この硫酸イオンはアルミ電解コンデンサの電極に用いられるアルミを腐食してしまうことから、高温負荷試験において特性変化が大きく現れたものと考えられる。
一方、材料Bを使用した実施例2では、剛性が高く、嵩高くなりやすい溶解パルプの特徴を活かし、叩解後も多数の繊維間空隙を持つ多孔質できわめて緻密な紙質を確保し、コンデンサ製作時のショート率低く、ESRが0.19Ωと良好なコンデンサが得られた。さらに、125℃、250時間後の高温負荷試験後の容量低下も3.0%及び漏れ電量の増加も0.5%と低く抑えられている。
材料Fを使用した従来例2は、坪量が10gと低いため、厚さ方向の繊維が少なく、コンデンサ製作時のショート不良が13.5%と多かった。また、目的の厚さ、密度を確保するためには、原料を叩解しなくてはなないが、従来の抄紙用化学パルプは叩解後の繊維間の空隙が十分に確保できず。ESRが0.31Ωと高くなっている。また、125℃、250時間後の高温負荷試験後の容量の低下は15.0%、と大きくなった。
材料Bを使用した実施例3では、叩解後も多数の繊維間空隙を持つ多孔質で緻密な紙質を確保し、コンデンサ製作時のショート率も0.5%と低く、さらにESRが0.23Ωと良好なコンデンサが得られた。125℃、250時間後の高温負荷試験後の容量低下も2%、漏れ電量の増加も0.8%と低く抑えられている。材料Bを使用した比較例4は、実施例3と同様に原料の叩解を進めているが、厚さが17.5μmと薄く、坪量が8.8gと少ないため、十分な緻密性が得られず、コンデンサ製作時のショート不良率が17.5%と多かった。
EG系電解液を用いた電解コンデンサの評価を、実施例4、従来例3、比較例5乃至7で得られたセパレータを用いて、63V、220μFの電解コンデンサの評価を、また、実施例5、比較例8、従来例4で得られたセパレータを用いて、250V、56μFの電解コンデンサの評価を行った。各試験の評価結果を表3に示す。
表3に示すように、従来の製紙用化学パルプである材料Gのみで製作したセパレータを使用した従来例3では125℃250時間の高温負荷試験後のコンデンサ作成時のショート率が2.5%とやや多く、静電容量が11.2%減少、漏れ電流が5.2%増加したが、材料Cを100重量%使用した実施例4は、従来例3よりも大幅に叩解を進めることで、フィブリル化が進んでいるが、多数の繊維間空隙を持つ多孔質で緻密な紙質を確保できており、コンデンサのショート不良率は0.5%と少なくなっている。また、ESRの値は0.15Ωと低く、125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量の減少も3.0%、漏れ電流の増加も0.5%と特性のよいコンデンサが得られた。
一方、溶解パルプではあるが、αセルロースの含有率が91.0%と低い材料Hを用いた比較例5では、原料の叩解を大きく進めることができず。ショート不良率が1.0%とやや大きい。また、容量の減少率が従来の製紙用化学パルプを用いた従来例3と同様10%を超えてしまっている。このことから、本実施の形態例において、使用する溶解パルプ或いはマーセル化パルプは、αセルロース含有率が92%以上の高純度のものが好ましい。
比較例6として溶解パルプである材料Cのみで、厚さ30μm、密度を0.750g/cm3としたセパレータを作成した。同様に比較例7にて製紙用化学パルプである材料G使用したセパレータを作成して、電解コンデンサの特性を評価したが、両者にESRの差はほとんど無なかった。
比較例7において、嵩高くなりやすい、高αセルロース含有率のパルプを用いて0.750g/cm3の高い密度を確保するためには、叩解を大きく進めなければならず、得られたセパレータでは十分な繊維間空隙が確保できないため、従来の製紙用化学パルプを用いた比較例6と同様ESRが高くなったものと考えられる。125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量の減少や漏れ電流の増加は、比較例6よりは良いものの、十分とは言えない。
低密度層に、材料Dを27%(セパレータ全体に占める高αセルロースパルプの含有率が10重量%)配合した実施例5は、高αセルロースパルプの持つ嵩高くなりやすい特徴から、製紙用クラフトパルプを100重量%使用した従来例5の低密度層の密度0.500g/cm3よりも密度が大幅に小さい0.300g/cm3を確保している。
低密度層の密度を低くすることで、セパレータ全体の密度を下げることができるため、実施例3のセパレータを使用したコンデンサは良好なESRの確保と、電極間により多くの電解液を保持することができる。このため、125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量が3.2%と小さい。
一方、低密度層に、マーセル化針葉樹溶解クラフトパルプCを21%(セパレータ全体に占める高αセルロースパルプの含有率が5重量%)配合した比較例8は、低密度層の密度が0.450g/cm3と製紙用クラフトパルプを100重量%使用した従来例5の0.500g/cm3と大きく変わらず。125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量の減少率も11.5%と大きい。
実施例6、比較例9、従来例5で得られたセパレータを用いて、GBL系電解液における電解コンデンサ(350V、47μF)の評価を行った。各試験の評価結果を表4に示す。
表4に示す様に、製紙用化学用パルプのみで構成した従来例5は、ショート不良率は3.0%と高く、125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量の減少率が25.3%と大きく、漏れ電流の増加も4.6%と大きい。一方、マーセル化パルプである材料Aを60重量%配合した実施例6では、抄紙において、叩解を進めることができ、従来例5と同等の密度でもより緻密なセパレータを得ることができる。このため、ショート不良率が0.4%と大幅に改善された。また、125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量の減少率は3.6%と良好で、漏れ電流の増加も2.5%に抑制された。
一方、実施例6と同じ材料の配合であるが、セパレータの厚さを110ミクロンとした比較例9は、ショート不良率は0.2%と低かったものの、ESRが0.98Ωと高く、125℃250時間の高温負荷試験後の静電容量の減少率は12.8%、漏れ電流の増加率も4.0%と悪化し、αセルロース含有率の高い繊維を配合した効果が得られなかった。
〔まとめ〕
以上説明したように、本実施の形態例によるアルミ電解コンデンサにおいては、電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液(以下電解液と略す)を含浸、保持するために使用するセパレータにおいて、高αセルロース含有率のパルプを使用することにより、大幅なコスト上昇を抑えながら従来の製紙用パルプを使用したセパレータのイオン透過性と電解液に対する耐熱性を改善し、該セパレータを使用したアルミ電解コンデンサの低ESR及び高温及び/又は長期間の使用における静電容量の低下や漏れ電流の増加等の特性変化を抑制した高性能で高温度寿命特性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態例によるアルミ電解コンデンサにおいては、電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、両極の短絡の防止と駆動用電解液(以下電解液と略す)を含浸、保持するために使用するセパレータにおいて、高αセルロース含有率のパルプを使用することにより、大幅なコスト上昇を抑えながら従来の製紙用パルプを使用したセパレータのイオン透過性と電解液に対する耐熱性を改善し、該セパレータを使用したアルミ電解コンデンサの低ESR及び高温及び/又は長期間の使用における静電容量の低下や漏れ電流の増加等の特性変化を抑制した高性能で高温度寿命特性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
本実施の形態例によれば、叩解後も多数の繊維間空隙を持つ多孔質なセパレータを得ることができる。さらに、高温度或いは長時間使用した際にセパレータに含まれるリグニンあるいはヘミセルロースなどの一部が分解した成分による電解液の組成変化あるいは電極箔の表面の酸化皮膜の破壊を低減できる。
この結果、本実施の形態例のセパレータを使用したアルミ電解コンデンサは低ESRで長期使用による容量低下、漏れ電流の増加あるいはESR特性の悪化を防ぐことができ、高温寿命特性に優れたコンデンサを提供できる。
この結果、本実施の形態例のセパレータを使用したアルミ電解コンデンサは低ESRで長期使用による容量低下、漏れ電流の増加あるいはESR特性の悪化を防ぐことができ、高温寿命特性に優れたコンデンサを提供できる。
このセパレータは、緻密でありながら繊維間空隙を確保していることから、良好なイオン透過性と保液姓を持ち、かつ電極箔のエッジ部分やタブ部分に存在する金属のバリに対する抵抗性に優れている。
Claims (6)
- 電解コンデンサの正極と負極の間に介在させ、該正極と負極の間の短絡の防止と駆動用電解液を含浸、保持するために使用するアルミ電解コンデンサ用セパレータであって、
αセルロースの含有率が92%以上の繊維を含有することを特徴とするアルミ電解コンデンサ用セパレータ。 - 前記繊維を10重量%〜100重量%含むことを特徴とする請求項1記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
- 前記繊維は、10重量%以上の溶解パルプを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
- 前記繊維は、10重量%以上のマーセル化パルプを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
- 密度0.2〜0.7g/cm3かつ厚さ25〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセパレータを使用したことを特徴とするアルミ電解コンデンサ。
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