JP3853864B2 - アルミ電解コンデンサ用電解紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアルミ箔等で成る陽極箔と陰極箔との間に介在させて電解液を含浸させる電解コンデンサ用の電解紙にかかり、特にはその耐電圧を低下させること無く電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)特性を改善する為に電解液に対する膨潤度を高めたアルミ電解コンデンサ用電解紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミ電解コンデンサにおいては、陰・陽両極の各アルミニウム箔の間に電解紙を介在させ、巻き付け形成してコンデンサ素子を形成し、この素子を電解液の中に浸漬して電解液を含浸させ、封口して制作している。従ってアルミ電解コンデンサは電解液を含浸させているので、コンデンサとしてのインピ−ダンス特性、特に等価直列抵抗(以下ESRと略称する)が高くなり易いことが問題である。
【0003】
ESRを低下させる手段としては、電解液の抵抗値を下げる、電解紙を薄くする(特開昭61−29118号)、セルロ−スを誘導体化する(特開昭63−254717号、特開昭63−226020号、特開昭63−104317号)、異種の繊維の混抄による(特開昭61−45372号、特開昭62−126622号、特開平4−242913号、特開平5−267103号、特開平6−165848号)、無機成分の添加(特開平5−251273号、特開平5−251274号)などの方法が取られている。
【0004】
しかしながら電解紙を薄くすることは本来の目的である隔離機能を低下させることにもなり、ショ−ト不良率増加の危険を高めることとなる。セルロ−スの誘導体化については、誘導体とする工程に手間がかかり、生産性が悪化する。又、誘導体の種類によっては廃棄の際に問題が生ずるものも有る。異種繊維の混抄では、目的に合う繊維の選定に手間がかかる上、配合、抄造においても、複数の繊維種の使用の為、管理が大変である。無機成分の添加では、目的とする成分の添加方法、紙中への均一分散法、同定着法が繁雑となる。更に電解紙本来の用途からすれば、繊維以外の成分を紙中に添加すること自体も望ましくない。
【0005】
一方製紙用繊維の酵素処理については、針葉樹パルプ或は広葉樹パルプを高度叩解する際の補助的手段としての利用(例えば特開平6−316899号、特開平7−331588号)、脱墨の補助的手段(特開平2−80683号)、漂白工程の補助手段(例えば特開平2−293486号)等の例があるが、何れも従来技術の補完的な利用になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
電解紙においてはそのインピ−ダンス特性を向上させる為には、繊維径が出来るだけ細く、且つ繊維の断面は円形に近いことが望ましい。合成繊維の中には比較的この要求に合う種類もあるが、合成繊維はその基本となる高分子の性質により、抄造法に工夫が必要であったり、原料となる高分子の性質とアルミ電解コンデンサに使用される電解液の成分との関係、或は耐熱性等のコンデンサの使用条件等の関係から電解紙の用途には不向きであったりする。更に合成繊維は一般には天然繊維との混抄ではセルロ−スとの馴染みが悪く、出来上がった紙の地合の悪化や強度の低下の問題もある。
【0007】
再生セルロ−ス繊維では合成繊維程の欠点は無いものの、細い径の繊維の入手が難しく、又、ビスコ−スレ−ヨンでは紡糸時の口金の形状から繊維の断面は円形には程遠い形である。溶剤紡糸型レ−ヨンやポリノジックレ−ヨンでは円形断面の繊維もあるが、これらのレ−ヨンでは繊維の特徴としてフィブリル化が生じやすく、工程中で結束となって生産に阻害を生じやすい。
【0008】
又、何れのレ−ヨンも通常はそのまま使用されるので、供給された繊維の性質がそのまま電解紙の性能に影響を及ぼすことになり、それ故に使用する繊維の選択が重要になる。
【0009】
木材パルプは抄造しやすい繊維であるがその繊維形態は偏平であり、又、低インピ−ダンスを達成させる為にろ水度を低くして抄造しようとすると低強度化が先行し、目的達成は困難である。現在の電解紙の原料の主流となっているマニラ麻繊維は比較的入手し易く、抄造も容易であり、得られた紙もかなり低インピ−ダンスではあるが、更に低インピ−ダンス化が望まれる。他の天然セルロ−ス系繊維も電解紙に使用されるが、その性質、入手の点でマニラ麻繊維に劣る。
【0010】
前述のように現在電解紙に使用されている原料としてはマニラ麻が最も良いものであるが、インピ−ダンス特性の点からはまだ問題が残る。又、マニラ麻繊維、木材パルプ等の天然繊維に対して従来技術である機械的な叩解処理を行なうと、繊維はある程度細くなるが真円とすることは出来ず、逆に叩解処理の結果繊維のろ水度が低下し、製紙特性が変化するので、得られる電解紙は、例えばグラシン紙のような高密度の紙となり、結果として高ESRで電解液の保液率は低いものとなる。従ってこのような電解紙では一部の高電圧用途のアルミ電解コンデンサには使用出来るものの、一般の低電圧用途のアルミ電解コンデンサにはとても使用出来ないものである。
【0011】
再生セルロ−ス繊維にあっては、前述のように紡糸法と口金の形状で真円に近い断面を有する繊維もあるが、それでも細さについては現在の技術ではポリノジックレ−ヨンの0.5デニ−ルが最も細いものである。一般的に使用されるビスコ−スレ−ヨンでは細さの下限は0.7デニ−ルであり、且つ繊維断面は真円には程遠い。
【0012】
以上のように従来の技術では繊維径が細く、その断面が真円に近い繊維を得ることは非常に困難であるので、他の手段にてアルミ電解コンデンサのインピ−ダンス特性を改善する方法を検討する必要がある。例えば電解コンデンサの製造工程では、素子巻きを行なった後に所定の電解液を含浸させるので、含浸前の状態では電解紙が適当な密度と厚さを保持しており、電解液の含浸により電解紙を構成する繊維が膨潤して実質的に電解紙の密度が低下することによりインピ−ダンス特性を低下させられれば、電解コンデンサの製造上で有利である。
【0013】
そこで本発明ではこのような観点から天然繊維、再生セルロ−ス繊維の膨潤性を改良し、電気特性の良い、低インピ−ダンスの電解紙を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミ電解コンデンサ用電解紙は、アルミ電解コンデンサの陽極と陰極との間に使用される電解紙を構成する繊維の全部又は一部に、叩解処理されずかつ酵素処理された繊維が使用してあることを特徴としている。
【0015】
この結果、酵素にて処理した繊維を使用することにより繊維の膨潤性を高め、酵素処理をしない繊維を使用した場合よりも低インピ−ダンス化された電解紙となる。
【0016】
本発明にかかる電解紙は叩解処理されず、酵素処理された繊維を使用して抄造されたものである。電解紙のインピ−ダンス特性、特にESR特性を低下させる為には、前述のように繊維の膨潤性を改善することが有効であるが、既存の機械的処理ではこのような要求を満たすことは極めて困難なので、発明者らは生物化学的手法に着目し、適当な酵素を選択・使用することによりESR特性が低い電解紙を発明した。
【0017】
本発明で処理の対象となる繊維は、天然繊維、再生セルロ−ス繊維の区別は無く、電解紙に使用できるセルロース繊維であればどのような繊維でも良い。そして、これら酵素処理された繊維を一種で使用又は複数種で混抄して使用しても良い。
【0018】
本発明に使用される酵素は、天然繊維では、セルロ−ス分解酵素、ヘミセルロ−ス分解酵素、ペクチン質分解酵素、リグニン分解酵素等が挙げられる。再生セルロ−ス繊維ではセルロ−ス分解酵素が使用できる。
【0019】
本発明にかかる酵素とはセルロ−ス分解酵素、ヘミセルロ−ス分解酵素、ペクチン質分解酵素、リグニン分解酵素である。これら各酵素は何れも高分子物質の分解酵素であるので、酵素によってはその作用様式がエンド型とエクソ型に大別されるものもあるが、本発明を実施するにあたってはどちらの型を使用しても良い。或は両者の型を混合使用しても良い。
【0020】
酵素はその由来により基質特異性、作用pH域、作用温度域に特徴があるが、本発明を実施するにあたっては特に酵素の性質や由来の限定は無い。
処理の対象となる繊維についても、電解紙の原料として使用可能な繊維であれば、天然繊維、再生セルロ−ス繊維の区別無く利用できる。天然繊維にあっては、その繊維のろ水度、晒しパルプ・未晒しパルプの別、木材パルプ・非木材パルプの別等に限定は無い。再生セルロ−ス繊維にあってはその製造方法、繊維径、繊維長等に限定は無い。
【0021】
本発明においては天然繊維、又は再生セルロ−ス繊維に対して、pH3〜13、温度10〜70℃の範囲で、望ましくはpH4〜12、温度20〜60℃の範囲で上記の酵素の一種類又は二種類以上を作用させ、繊維の処理を行なう。処理の内容と程度は目的とする電解紙の種類・用途により決定されるので、使用する酵素の種類・量もこれに従って選択する。
【0022】
そして、アルミ電解コンデンサの電解紙に使用される繊維の処理において、該繊維の酵素処理を行う際の酵素の添加率が、当該繊維に対して0.1重量%以上100重量%以下であることが好ましい。
【0023】
0.1重量%未満では所定のESR低下を実現させるのに処理時間が大幅に延長されることとなる。また、100重量%を越えると、処理時間の短縮に対する酵素処理費用の点で経済的に不利となる。
【0024】
即ち、繊維が蒸煮直後の高アルカリ性の状態であれば、アルカリセルラ−ゼ等のアルカリ域に至適pHを有する酵素を使用し、既にパルプ化されその分散液が中性乃至は酸性である場合は中性・酸性域に至適pHを有する酵素を使用する。又、未晒しパルプの場合はヘミセルロ−ス分解酵素、リグニン分解酵素を、ペクチン質が存在する場合はペクチン質分解酵素を単独或は他の酵素と併用して使用すれば良い。再生セルロ−ス繊維の場合も同様に処理内容・目的に合う酵素を使用する。高価な酵素であれば低添加量・長処理時間とする。
【0025】
天然繊維はその殆どが植物由来である為、繊維内に残存するリグニンやヘミセルロ−スを除去する為にヘミセルロ−ス分解酵素、リグニン分解酵素が使用される。これらの成分の除去には各酵素の単独使用でも混合使用でも、又はセルロ−ス分解酵素を含めた混合使用でも良い。
【0026】
以上のような繊維、酵素を用いて酵素処理した繊維を作り、酵素処理繊維単独或は酵素処理を行なっていない繊維と混抄することにより、膨潤性を改良した電解紙、即ち電解コンデンサ組込み時の電解液の含浸により低インピ−ダンス特性を発揮出来る電解紙を抄造する。
【0027】
このようにして酵素により処理された繊維はコンデンサ電解紙に使用される全ての繊維に対して10重量%以上100重量%以下の配合で含むことがESR特性の観点から好ましい。酵素により処理された繊維は繊維が10重量%未満であると、好適なESR特性を得ることができなくなる。
〔作用〕
天然、再生を問わずセルロ−スの分子は多くの水酸基(OH基)を有しており、繊維を構成するフィブリルは水酸基間に形成される水素結合で強固に結合している。このようなセルロ−ス繊維は、電解コンデンサの電解液の成分として使用されるγ−ブチロラクトンのような親水性に乏しい溶媒に浸漬しても、その水素結合の部分には溶媒は浸入できず、その為繊維の膨潤が期待出来ない。又、同じ理由で、セルロ−ス繊維が絡み合って形成されている紙においても、繊維が絡み合った部分に形成される水素結合により溶媒の浸入が阻害されるので、紙としての膨潤についても不利である。
【0028】
一般に再生セルロ−ス繊維も含めて、セルロ−ス繊維にセルロ−ス分解酵素を作用させると、酵素作用により繊維のセルロ−ス鎖が切断される。セルロ−ス鎖の切断は通常表面より生ずるので、エンド型のセルラ−ゼを使用した場合は、叩解による繊維のフィブリル化とは異なった表面処理効果が得られる。例えばセルロ−ス分解酵素により処理されたマニラ麻繊維においては、繊維の表面に存在するシワが除去されて、繊維表面が平滑化が観察された。再生セルロ−ス繊維や他のセルロ−ス繊維についても表面の改質が為されることは同様である。
【0029】
即ち、セルロ−ス分子表面の非結晶領域のセルロ−ス鎖が前述のようにセルラ−ゼの作用により切断されるので、セルロ−ス分子間に切れ目が生じ、この結果セルロ−ス繊維を構成しているミクロフィブリル間の水素結合も切断され、ミクロフィブリル間に溶媒が浸透し易い間隙が形成されると推定される。従って酵素の作用を受けた非結晶領域のみならず、ここからセルロ−ス分子中の結晶領域への溶媒の浸透性が向上することになる。これは電解紙においては実施例で示されるように電解液の浸透性が向上することを意味するので、非常に望ましい作用である。この現象も再生セルロ−ス繊維や天然セルロ−ス繊維の差無く生ずるものである。
【0030】
天然繊維はその殆どが植物由来である為、漂白工程を経た繊維でも微量のリグニンやヘミセルロ−スを含有している。これら成分を除去する為にヘミセルロ−ス分解酵素、リグニン分解酵素の使用の必要性が認められている。特にセルロ−ス、ヘミセルロ−ス、リグニンの三者はLCC(リグニン・炭水化物複合体)と呼ばれる複合体を形成している場合が知られているが、このような複合体の除去にはセルロ−ス分解酵素、ヘミセルロ−ス分解酵素、リグニン分解酵素の混合使用が有効と考えられる。もちろん個々の成分の除去には各酵素の単独使用でも、又はセルロ−ス分解酵素を含めた混合使用でも良い。
【0031】
上記構成の発明によれば、酵素で処理された繊維はその酵素の基質となり得る成分の一部又は全部が分解、或は繊維より除去されるという改質作用を受け、従来の繊維とは異なった形状、性質が付与される。更に酵素に依る処理は従来の機械に依る処理とは異なって、処理条件が温和なので、例えば酵素処理したマニラ麻の製紙特性は未処理マニラ麻と差が無く、その結果未処理マニラ麻と同等の抄紙条件で、密度を変化させることなく低インピ−ダンスの電解紙の抄造が可能となる。
【0032】
【実施例】
以下に本発明の構成を各種実施例、及び得られた電解紙の下に記す特性を測定した結果を示すことにより説明する。なお、各試料の作成と測定は次の測定方法及び装置により行なった。
(1) 使用原料
本実施例においては、電解紙の構成繊維として現在最も一般的に電解紙原料として使用されているマニラ麻を使用した。又、再生セルロ−ス繊維としては、電解紙に使用が適すると考えられる、溶剤紡糸レ−ヨン(商品名:テンセル、コートルズ社製)を用いた。
(2) 使用酵素
使用酵素は、中性セルロ−ス分解酵素としてはノボ・ノルディスク社のNovozym 342を、酸性セルロ−ス分解酵素としては天野製薬(株)のセルラ−ゼTアマノを、アルカリ性セルロ−ス分解酵素としては花王の花王CFDを使用した。又、ペクチン質分解酵素としては天野製薬(株)のペクチナ−ゼPL、ヘミセルラ−ゼ分解酵素としてはノボ・ノルディスク社のPulpzymeHCを、リグニン分解酵素としてはシグマ社のTYROSINASEをそれぞれ用いた。(なお、各酵素の名前はそれぞれの会社の製品名或は商品名である。)
(3) 試験試料の抄造
試験試料の抄造は、手抄品にあっては25cm×20cmの角型シ−トマシンを使用し、機械抄にあってはテスト抄紙機にて円網2層抄にて抄紙した。
(4) 厚さ、密度の測定
測定項目中の厚さと密度についてはJISC2111(電気絶縁紙試験方法)、JISC2301(電解コンデンサ紙)、JISP8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に従った。測定はマイクロメ−タ−を使用した。又、密度を求める際に必要な、試験片の坪量の測定はJISP8124(紙のメ−トル坪量測定方法)に従った。
(5) ESR(等価直列抵抗)
ESRの測定は以下のようにして行なった。電解紙試料から10cm×10cmの試験片を切り取り、アルミ箔を重ね、全体を二つ折りとする。電解紙の内側に5cm×10cmのアルミ箔を入れ、全体を支持体で挟み、セロハンテ−プにて固定する。このモデルコンデンサを4−ブチロラクトン(γ−ブチロラクトン)を含む電解液中に10分間浸漬する。電解液を浸漬させたモデルコンデンサは25℃の温度条件下でLCRメ−タ−にて100KHzでのESRを測定する。
【0033】
ESRについては厚さによるバラツキを補正するため、測定値を試料片の厚さで除して1μm当たりのESR値として表記する。
(6) 膨潤度
膨潤度の測定においては、電解紙試料を10枚重ねにして試験片とし、その厚さを(4)の方法にて測定する(この厚さをAμmとする)。続いてJISP8101(溶解パルプ試験法)中のαセルロ−ス分測定に用いる17.5%の水酸化ナトリウム水溶液中に、試験片を10枚重ねのまま正確に10分間浸漬する。10分後に試験片を取り出し、膨潤後の厚さを同じく(4)の方法にて測定する(この厚さをBμmとする)。膨潤度は次式により求めた。
【0034】
Figure 0003853864
膨潤度の測定においては、セルロ−スの膨潤が最大近くになる17.5%の水酸化ナトリウム水溶液を試験液として用いた。
(7) 保液率
電解紙が電解液を保持する割合の指標として電解液の保液率を測定した。電解液は4−ブチロラクトン(γ−ブチロラクトン)を含む電解液を使用した。
【0035】
電解紙試料から5cm×5cmの試験片を切り取り、化学天秤でその重量を正確に小数点以下4桁まで測定する(この重量をCgとする)。次に上記の電解液中に試験片を正確に30分間浸漬する。30分後に試験片を取り出し、自然落下により電解液が試験片から滴下しなくなるまでピンセットにて試験片を保持する。電解液の自然落下が終了したら、試験片を適当なガラス板に10秒間密着させて余分な電解液を完全に除去する。このようにして余分の電解液を除去した試験片の重量を化学天秤で正確に小数点以下4桁まで測定する(この重量をDgとする)。
【0036】
保液率は次式にて求めた。
Figure 0003853864
(8) ろ水度
ろ水度の測定はJIS P8121(パルプのろ水度試験方法)に従い、カナダ標準ろ水度(以下CSFと略記)を測定した。なお、実施例12から実施例15までと比較例4については2種原料の混合例又は再生セルロ−ス繊維使用例なので、これらの原料についてのろ水度の測定は行わなかった。但し、実施例12から実施例14までの混合前の原料についてはそれぞれ実施例1及び比較例1にて測定した。
【0037】
(実施例1)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を3g加えて40℃にて120分間処理した。
【0038】
処理終了後マニラ麻を取り出し、5リットルの水に入れて洗浄後80メッシュの金網にてろ過した。更に洗浄後のマニラ麻を再度10リットルの水に入れて洗浄し、80メッシュの金網にてろ過を行なった。このようにして得た酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法にて手抄し、厚さ65.2μm、密度0.388g/cm3 の手抄シ−トを得た。
(実施例2)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を0.15g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ64.2μm、密度0.393g/cm3 の手抄シ−トを得た。
(実施例3)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)と中性セルラーゼのNovozym 342を0.15g加えて40℃にて1200分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ64.8μm、密度0.390g/cm3 の手抄シ−トを得た。
(実施例4)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を15g加えて40℃にて120分間処理した。
【0039】
処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ67.9μm、密度0.370g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0040】
(実施例5)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mクエン酸−リン酸緩衝液500ml(pH4.5)と酸性セルラ−ゼのセルラ−ゼTアマノを3g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ68.1μm、密度0.367g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0041】
(実施例6)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液500ml(pH9.5)とアルカリセルラ−ゼの花王CFDを3g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ68.9μm、密度0.369g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0042】
(実施例7)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mクエン酸−リン酸緩衝液500ml(pH4.5)とペクチン質分解酵素のペクチナ−ゼPLを3g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ63.6μm、密度0.400g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0043】
(実施例8)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)とヘミセルラ−ゼ分解酵素のPulpzymeHCを3g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ66.2μm、密度0.385g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0044】
(実施例9)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.5)とリグニン分解酵素のTYROSINASEを3g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ64.2μm、密度0.386g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0045】
(比較例1)
マニラ麻30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)を加えて酵素は未添加として40℃にて120分間処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ63.6μm、密度0.395g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0046】
(実施例10)
マニラ麻100gを実験用小型ビーターに入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液2.5リットル(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を10g加えて50〜40℃にて120分間回流処理した。なお、この実施例を含め、後記する実施例(実施例11,及び16)及び比較例(比較例2,3,及び5)において実験用小型ビーター又は小型ビータを使用するのは、叩解のためではなく、攪拌のためであり、叩解作用はないように使用するものである。処理終了後マニラ麻を取り出し、処理終了後マニラ麻を取り出し、15リットルの水に入れて洗浄後80メッシュの金網にてろ過した。更に洗浄後のマニラ麻を再度15リットルの水に入れて洗浄し、80メッシュの金網にてろ過を行なった。このようにして得た酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法にて手抄し、厚さ63.0μm、密度0.410g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0047】
(実施例11)
マニラ麻100gを実験用小型ビーターに入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液2.5リットル(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を5g加えて50〜40℃にて120分間回流処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例10と同じように15リットルの水にて2回洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ65.0μm、密度0.391g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0048】
(比較例2)
マニラ麻100gを実験用小型ビーターに入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液2.5リットル(pH7.0)を加えて酵素は未添加とし、50〜40℃にて120分間回流処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例10と同じように15リットルの水にて2回洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ64.1μm、密度0.398g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0049】
(比較例3)
マニラ麻100gを実験用小型ビーターに入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液2.5リットル(pH7.0)と100℃にて10分間加熱して酵素活性を失活させた中性セルラ−ゼのNovozym 342を10g加えて50〜40℃にて120分間回流処理した。処理終了後マニラ麻を取り出し、実施例10と同じように15リットルの水にて2回洗浄操作を行なった後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)の方法で手抄し、厚さ67.0μm、密度0.379g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0050】
(実施例12)
実施例1の酵素処理マニラ麻を25重量%と比較例1の未処理マニラ麻を75%とを混合し、上記(3)の方法で手抄し、厚さ64.0μm、密度0.388g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0051】
(実施例13)
実施例1の酵素処理マニラ麻を50重量%と比較例1の未処理マニラ麻を50%とを混合し、上記(3)の方法で手抄し、厚さ63.0μm、密度0.397g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0052】
(実施例14)
実施例1の酵素処理マニラ麻を75重量%と比較例1の未処理マニラ麻を25%とを混合し、上記(3)の方法で手抄し、厚さ69.0μm、密度0.372g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0053】
(実施例15)
溶剤紡糸レ−ヨン(商品名テンセル)30gをチャック付きのポリ袋に入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液500ml(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を3g加えて40℃にて120分間処理した。処理終了後テンセルを取り出し、実施例1と同じ洗浄操作を行なった後、
この酵素処理テンセルを50重量%と比較例1の未処理マニラ麻を50%とを混合し、上記(3)の方法で手抄し、厚さ106μm、密度0.242g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0054】
(比較例4)
酵素処理を行なっていない溶剤紡糸レ−ヨン(商品名テンセル)を50重量%と比較例1の未処理マニラ麻を50%とを混合し、上記(3)の方法で手抄し、厚さ108μm、密度0.241g/cm3 の手抄シ−トを得た。
【0055】
(実施例16)
マニラ麻10Kgを300リットル容量の小型ビーターに入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液250リットル(pH7.0)と中性セルラ−ゼのNovozym 342を1Kg加えて50〜40℃にて120分間回流処理した。処理終了後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)に示すテスト抄紙機にて円網2層抄にて抄紙し、厚さ51.1μm、密度0.552g/cm3 のシ−トを得た。
【0056】
(比較例5)
マニラ麻10Kgを300リットル容量の小型ビーターに入れ、ここに0.01Mリン酸緩衝液250リットル(pH7.0)を加えて酵素は未添加で50〜40℃にて120分間回流処理した。処理終了後、この酵素処理マニラ麻を用いて上記(3)に示すテスト抄紙機にて円網2層抄にて抄紙し、厚さ48.9μm、密度0.548g/cm3 のシ−トを得た。
【0057】
上記の実施例、比較例の各々の測定結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2に示す如く、本発明による酵素処理を行った繊維を使用した電解紙では、例えば実施例1では厚さ65.2μmで密度0.388g/cm3 で比較例1の厚さ63.6μm、密度0.395g/cm3 と比べても紙として殆ど差は無いにも係らず、膨潤度では比較例1の189%に対して実施例1では214%と25%増加し、また、電解液の保液率は比較例1における291%から実施例1では380%と89%の増加となっている。ESRの測定値は比較例1の4.79×10-3Ω/μmから実施例1の2.70×10-3Ω/μmと実に43.6%の低下となっている。又、製紙特性の指標となるろ水度では比較例1の655mlが実施例1の675mlで僅か20mlの変化であり、これは実際上は製紙特性は変化していないことを示している。従って、酵素未処理の原料の抄紙条件で酵素処理した原料を抄紙すると、厚さと密度は従来の酵素未処理原料から得られる電解紙と同一でありながら、膨潤度、保液率が高められてその結果ESR特性が低下した電解紙が得られることとなる。これは本発明が電解紙のESR特性向上に有効であることを示すのみならず、電解紙の抄紙上においても従来の抄紙技術がそのまま使用出来ることを示しており、本発明の有用性の証明である。
【0058】
実施例2と実施例3は中性セルロース分解酵素のマニラ麻に対する添加量を同じにして、処理時間を変化させた例である。実施例2の如く同じ添加量0.15gでも、実施例1と同じ120分間の処理では、ESR特性の低下は極めて少ないが、実施例3のように処理時間を延長すると、酵素添加量が少なくてもESR特性の低下を実現させることができる。
【0059】
実施例1、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9はそれぞれ中性、酸性、アルカリ性セルロ−ス分解酵素及びペクチン質分解酵素、ヘミセルロ−ス分解酵素、リグニン分解酵素の使用例を示したものである。比較例1との対比において各実施例は何れも厚さ、密度ろ水度は殆ど変化してい無いにかかわらず、ESR、膨潤度、保液率の向上が認められ、各酵素により繊維を処理することが電解紙の特性向上に有効であることを示している。
【0060】
実施例10、実施例11と比較例2、比較例3は実際の生産に近い条件を想定しての試験例である。ビーターに依る回流操作にても酵素処理の効果は充分認められ、ろ水度の変化は僅かである。更に比較例3にて加熱により酵素作用を失活させた酵素液を使用した例を示したが、この例ではESR、膨潤度、保液率の向上が認められず、従ってこの例より繊維の改質効果は酵素の作用に依るものであることが証明された。
【0061】
実施例12から実施例14は酵素未処理の原料と酵素処理した原料との混合例である。実施例1と比較例1をも含めて対比させると、酵素処理した原料を未処理の原料に混合すれば、混合原料より抄紙された電解紙は酵素処理された原料の配合比率にほぼ見合ったESR、膨潤度、保液率の向上が認められる。このことは電解紙の実際の生産において酵素未処理原料と酵素処理原料を混合することにより、酵素処理原料100%で抄紙された電解紙のESR特性と酵素未処理原料100%で抄紙された電解紙のESR特性との間の任意のESR特性の電解紙が抄紙出来ることを示している。電解紙生産に本発明は有利である。
【0062】
実施例15と比較例4は原料に再生セルロ−ス繊維を使用した実験例である。両者を対比させると厚さと密度は差が無いもののESR、膨潤度、保液率については何れも酵素処理した再生セルロ−ス繊維を配合した実施例14の結果が優れている。従って本発明は天然繊維だけで無く、再生セルロ−ス繊維に対しても有効である。
【0063】
実施例16と比較例5は実生産と同じ方式でテスト抄紙機にて本発明を試験した例である。
本2例ではJIS C2301(電解コンデンサ紙)に規定されるME2.5−50を実際に抄紙し、本発明の効果を確認した。その結果厚さと密度とろ水度はほぼ同一であるが、ESR、膨潤度、保液率については比較例5の8.56×10-3 Ω/μm、295%、158%に対して実施例16では4.68×10-3 Ω/μm、378%、223%とESR値では約45%の低下、膨潤度、保液率ではそれぞれ約28%、約41%の増加となり、実生産においても本発明の効果が実現可能であることを証明している。
【0064】
以上各例に示す如く、本発明によるアルミ電解コンデンサ用電解紙では、従来の酵素処理をされていない繊維のみで抄造されたアルミ電解コンデンサ用電解紙よりもインピ−ダンス特性が向上している。又、酵素処理の効果は天然繊維のみならず、再生セルロ−ス繊維に対しても有効である。
【0065】
記実施例から把握できる技術的思想について以下にその効果とともに記載する。
(1)アルミ電解コンデンサの陽極と陰極との間に使用される電解紙を構成する繊維の全部又は一部に、叩解されず、酵素処理のみされた繊維が使用してあることを特徴とするアルミ電解コンデンサ用電解紙。マニラ麻繊維、木材パルプ等の天然繊維に対して機械的な叩解処理を行なうと、繊維はある程度細くなるが真円とすることは出来ず、逆に叩解処理の結果繊維のろ水度が低下し、製紙特性が変化するので、得られる電解紙は、例えばグラシン紙のような高密度の紙となり、結果として高ESRで電解液の保液率は低いものとなる。しかし、本願の構成によれば、叩解処理が行われていないため、繊維のろ水度が低下せず、製紙特性が変化することがなく、結果として低ESRで電解液の保液率を高くすることができる。
【0066】
(2) 請求項1乃至請求項4の電解紙のうち何れかの電解紙を使用したアルミ電解コンデンサ。アルミ電解コンデンサに実施例1乃至実施例16のいずれかの電解コンデンサ用電解紙を使用すれば、アルミ電解コンデンサのインピーダンス特性を改善することができる。
【0067】
【発明の効果】
以上詳細に説明した通り、本発明にかかる電解紙は叩解処理されずかつ酵素で処理された繊維を使用するものである。酵素処理により繊維が改質された結果、原料のろ水度はほぼ同一の状態にあって抄紙後の厚さと密度は変化しないにも係らず、膨潤度、保液率が向上している為、得られた電解紙は未処理繊維使用の電解紙と比べて、低インピ−ダンス化されたものとなっていることが特徴である。従って以下に記す作用効果がもたらされる。
【0068】
電解コンデンサの製造工程では、素子巻きを行なった後に所定の電解液を含浸させるので、含浸前の状態では電解紙が適当な密度と厚さを保持しているが、電解液を構成する繊維は酵素処理により膨潤度が向上しているので、電解液を含浸させると繊維は顕著に膨潤する。この結果素子巻き工程ではショ−ト不良を起こさない状態に電解紙の密度を保ちながら、電解液の含浸により、繊維の膨潤による実質的な電解紙の密度低下が生じてインピ−ダンス特性を低下させることが可能となり、アルミ電解コンデンサの性能向上に寄与出来る。
【0069】
酵素による繊維の改質の結果、膨潤度のみならず保液性の向上も得られている。現在電解コンデンサの製造に使用されている4−ブチロラクトン(γ−ブチロラクトン)はエチレングリコ−ル等に比して親水性が低い溶媒であるが、本発明による電解紙では同溶媒の保液率が向上しているので同一重量の従来の電解紙に比べて電解液含浸量が増え、これにより電解液のドライアップ効果の防止効果が高まり、アルミ電解コンデンサの寿命の向上にも寄与出来る。
【0070】
本発明による電解紙は酵素処理された原料のろ水度が未処理の原料と殆ど同じなので、既存の抄紙条件で従来品と同一の品種が抄造出来る。又、誘導体化、異種成分の添加等を行っておらず、繊維成分100%で供給可能である。このことは電解紙の製造に非常に有利であるだけでなく、アルミ電解コンデンサの製造工程においても、従来品との置き換えが容易であることを意味している。
【0071】
一定の厚さと、一定の密度を有するセルロース繊維紙のESR値が33%低下すると、従来3個使用していたアルミ電解コンデンサを2個の使用とすることが可能とされている。このことは電子回路小型化や軽量化に大きく貢献することになるといえる。
【0072】
更に、本発明による電解紙は環境に有害な成分を含まないので、アルミ電解コンデンサの廃棄の際、電解紙については環境に対する特別の配慮、処理は不要である。
【0073】
以上のように本発明によるアルミ電解コンデンサ用電解紙は、アルミ電解コンデンサの製造において従来の電解紙よりも著しく有益なものである。
【表1】
Figure 0003853864
【表2】
Figure 0003853864

Claims (5)

  1. アルミ電解コンデンサの陽極と陰極との間に使用される電解紙を構成する繊維の全部又は一部に、叩解処理されずかつ酵素処理された繊維が使用してあることを特徴とするアルミ電解コンデンサ用電解紙。
  2. 前記アルミ電解コンデンサの電解紙に使用される繊維で、酵素処理の対象となる繊維が、天然繊維又は再生セルロ−ス繊維中の一種又は複数である請求項1に記載のアルミ電解コンデンサ用電解紙。
  3. 前記アルミ電解コンデンサの電解紙に使用される繊維の処理に用いられる酵素が、セルロ−ス分解酵素、ヘミセルロ−ス分解酵素、ペクチン質分解酵素、リグニン分解酵素の中の一種又は複数である請求項1又は請求項2に記載のアルミ電解コンデンサ用電解紙。
  4. 前記アルミ電解コンデンサの電解紙に使用される繊維の処理において、該繊維の酵素処理を行う際の酵素の添加率が、当該繊維に対して0.1重量%以上100重量%以下である請求項1乃至請求項3のうちいずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用電解紙。
  5. 前記アルミ電解コンデンサ電解紙において、使用されている電解紙中で酵素で処理された繊維の配合比率が、当該電解紙に使用される総ての繊維に対して10重量%以上100重量%以下である請求項1乃至請求項4のうちいずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用電解紙。
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