JP2010239094A - 電解コンデンサ用セパレータおよび電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】 電解コンデンサのセパレータとして、紙厚が薄くてもショート発生が無く、かつ引っ張り強度、引き裂き強度が充分なセパレータを提供する。
【解決手段】 繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維と、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維を混合し、長網抄紙することで、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維が骨格となり、この骨格の間を繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維によって緻密な紙層が形成される。そして、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維の骨格によって、セパレータの引っ張り強度、引き裂き強度が向上し、繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維が、薄いながらも緻密な紙層を形成するために、電解コンデンサのショート発生を防止する。
【選択図】 図1
【解決手段】 繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維と、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維を混合し、長網抄紙することで、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維が骨格となり、この骨格の間を繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維によって緻密な紙層が形成される。そして、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維の骨格によって、セパレータの引っ張り強度、引き裂き強度が向上し、繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維が、薄いながらも緻密な紙層を形成するために、電解コンデンサのショート発生を防止する。
【選択図】 図1
Description
この発明は陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回した電解コンデンサに用いるセパレータと、そのセパレータを用いた電解コンデンサに関する。
一般に巻回型のアルミニウム電解コンデンサは、アルミニウムからなる陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子に電解液を含浸し、このコンデンサ素子を金属製の外装ケースに収納し、開口部を封口して製作している。すなわち、図1とともに説明すると、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子2を作成する。なお、陽極箔、陰極箔にはそれぞれ電極タブが取り付けられ、電極タブ7,7と電気的に接続された外部リード線8,8がコンデンサ素子2の巻回端面から導出されている。そして、コンデンサ素子2には所定の電解液が含浸され、封口体9とともに外装ケース3に収納され、外装ケース3の開口端部のカーリング加工によって、封口がなされている。
電解液としては通常エチレングリコール又はγ−ブチロラクトン等を溶媒とし、これらの溶媒に硼酸やアジピン酸,アゼライン酸又はこれらのアンモニウム塩等の溶質を溶解したものを用いた電解液が多用されている。
これらアルミニウム電解コンデンサは、セパレータ中に電解液を含浸させ、この電解液が陽極箔の誘電体酸化皮膜と接触することで、電解液をコンデンサの真の陰極として機能させている。しかしながら、その真の陰極としても伝導経路は、電解液中のイオン伝導となる。このため、固体電解質を用いて伝導経路を電子伝導とした電解質と比較すると、コンデンサとしてのインピーダンス特性、特に等価直列抵抗(以下ESRと略する)が高くなり易い。又、電解液を用いた電解コンデンサは、その使用中にも経時劣化するおそれがある。電解コンデンサのインピーダンス特性を良くするためには電解液の抵抗値を下げること、セパレータの厚さを薄くする、あるいはセパレータの密度を低くすることが考えられる。しかしながら、電解液の抵抗値を下げると、アルミニウム箔に対して腐蝕性を与える原因となりやすく、電解コンデンサの経時劣化を引き起こしやすくなるという問題がある。さらに、セパレータの厚さを薄くする、あるいはセパレータの密度を低くすると、コンデンサ素子に巻き取る際にショート不良率が増大し、仮にショートしなかった場合でも製品化されて市場に出された後のショート不良率が高くなる難点がある。
そこで、インピーダンス特性を良くするために、セパレータについては構成する繊維の形状や配向性が検討され、セパレータの原料を通常の木材クラフトパルプからマニラ麻パルプ、エスパルトパルプに変更する手段が用いられている。このような原料によれば低密度のセパレータを簡単に抄紙することができるため、インピーダンス特性が良く、しかも低密度のセパレータであっても十分な引張強度を有しており、広く使用されている。
また、さらなるセパレータの低密度化を測るとともに、引っ張り強度を改善するために、セパレータの原料として叩解可能な再生セルロースに着目したものもある。
特許文献1には、セパレータの原料として叩解可能な再生セルロース繊維に着目し、セパレータは原料として少なくとも10重量%以上の叩解可能な再生セルロース繊維の叩解原料を使用して抄造されているセパレータが開示されている。また、再生セルロース繊維の叩解原料はCSF600cc〜0ccまで叩解されていること、更にセパレータは厚さが20〜60μm,密度が0.25〜0.70g/cm3であることが開示されている。
上記のようなセパレータでは、叩解可能な再生セルロース繊維は比重が天然繊維とほぼ同じであり、叩解することによりフィブリルが発生するとともに柔軟性が増すため、天然繊維との相性が良好で、比較的密度の高く、かつ、引張強度の良好なセパレータを製作することができる。また、叩解可能な再生セルロース繊維は高重合度で高度に発達したフィブリルの網状構造を有しているため、抄造工程に設置された叩解機で叩解処理を施すことにより均一なフィブリル化が可能である。得られたフィブリル化微細繊維は天然繊維のフィブリル化微細繊維のように、紙にしたときにフィルム状にはならず、互いに独立した微細繊維が無数の点接着により構成されるため、極めて緻密性の高いセパレータが得られるにもかかわらず、その構造上、微多孔質状の紙質となり、しかもフィブリル断面径は真円であるため電気の流れを阻害することがなく、これら再生セルロース繊維の叩解原料を配合したセパレータを用いて製作した電解コンデンサは、ESR及びショート不良率の両特性を改善することができるとされる。
しかしながら、特許文献1で開示された発明によるセパレータでは、引っ張り強度の観点では、充分な特性を得ることができるものの、引き裂き強度の観点の検討がなされていない。
上記のような文献に記載されたセパレータを用いた電解コンデンサは、電解コンデンサの電気的特性の向上が図れることが明らかにされた。しかしながら、実際に上記のようなセパレータを用いて電解コンデンサを作成する際には、別の不都合が発生することが判明した。
まず一般的な電解コンデンサに用いるコンデンサ素子の作成工程を説明するが、コンデンサ素子の作成工程としては、図1に示すように、先端にすり割り92を備えた巻軸91を用いて、この巻軸91のすり割り92に2枚のセパレータ6を挿入し、巻軸91を回転させてセパレータ6のみを数回空巻きした後、陽極箔4と陰極箔5をそれぞれセパレータ6の間に挿入して、さらに巻回していくことによりコンデンサ素子1を形成している。そして、コンデンサ素子を巻軸で巻き取った後、巻軸からコンデンサ素子を抜き取って、コンデンサ素子を次の工程に搬送する。
このようなコンデンサ素子の巻回工程では、搬送ロールの上にロール状に巻き取られたセパレータを、陽極箔、陰極箔とともにコンデンサ素子の巻回装置に供給し、巻回装置の巻き軸で巻き取ってコンデンサ素子が巻回される。そして、この巻回装置では、陽極箔、陰極箔、セパレータには主に長尺方向に引っ張りトルクが加わる。しかし、引っ張りトルクだけではなく、搬送ロール上でのセパレータの位置が左右にぶれることにより、セパレータの幅方向にも少なからず、応力が加わることがある。そして、このセパレータの幅方向への応力は、セパレータを破断するように力が加わる。この際に、セパレータの引き裂き強度が弱いと、セパレータが破断してしまうという不都合が発生する。従って、セパレータの幅方向での引き裂き強度が強いことも電解コンデンサ用セパレータに求められる要件となる。
そこで、この発明では、電解コンデンサのセパレータとして、紙厚が薄くてもショート発生が無く、かつ引っ張り強度、引き裂き強度が充分なセパレータを提供することを目的とする。
この出願の請求項1に係る発明は、繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維と、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維を、長網抄紙した電解コンデンサ用セパレータを特徴とする。
また、この出願の請求項2に係る発明は、上記のセパレータを電解コンデンサに用いたもので、陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を、外装ケースに収納し、該外装ケースの開口端部を封口してなる電解コンデンサにおいて、前記セパレータとして、繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維と、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維を、長網抄紙したセパレータを用いた電解コンデンサを特徴とする。
この発明のセパレータでは、2種類の繊維が混合されて抄紙された後、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維が骨格となり、その骨格の間を叩解された再生セルロース繊維が、緻密な構造の紙層を構成する。このため、引っ張り強度、引き裂き強度がともに強く、しかも、緻密なセパレータを得ることができる。このため、コンデンサ素子の巻回工程で、セパレータが破断することなく、コンデンサ素子を形成することができるとともに、完成した電解コンデンサの低ESR化を図ることができる。また、セパレータが緻密であることから、電解コンデンサのショートの防止を図ることができる。
以下に本発明の構成について説明する。
本発明はセパレータの原料として低酸浴紡糸による高重合度の再生セルロース繊維(通称ポリノジックレーヨン)やアミン・オキサイド系等による溶剤紡糸レーヨン等の通常の抄紙工程に設置された叩解機で叩解(フィブリル化)可能な再生セルロース繊維を用いる。
本発明はセパレータの原料として低酸浴紡糸による高重合度の再生セルロース繊維(通称ポリノジックレーヨン)やアミン・オキサイド系等による溶剤紡糸レーヨン等の通常の抄紙工程に設置された叩解機で叩解(フィブリル化)可能な再生セルロース繊維を用いる。
再生セルロース繊維の叩解はCSF600cc〜0ccまでの範囲で叩解することが適当である。本発明で使用されるポリノジックレーヨン、溶剤紡糸レーヨンはともに未叩解でのCSFは800cc程度であり、叩解によりフィブリルは徐々に発生するが、叩解が浅い場合にはフィブリルによる接着点が少なく強度が弱くなる。そのため、必要なフィブリルを得るためにはCSF600cc程度以下まで叩解することが適当である。また、ポリノジックレーヨン、溶剤紡糸レーヨンはともにCSFの数値が0ccまで高叩解しても繊維の捩れによる地合崩れや乾燥時におけるフィルム状の生成はなく、高叩解の再生セルロース繊維の叩解原料を用いるほど緻密性の向上と強度増強を図ることができる。そして、このような叩解を進めることで繊維径が3μm以下の繊維となる。
叩解された再生セルロース繊維と混合する天然セルロース繊維の種類としては特に限定はなく、マニラ麻パルプ、サイザルパルプ、針葉樹クラフトパルプ等の何れであってもよい。また、その叩解の程度は必要に応じてCSFが400ml〜600mlの範囲で叩解すれば良い。このような叩解によっても、天然セルロースの繊維径は5μm以上のものとなる。
そして、再生セルロース繊維と天然セルロース繊維の混合比は、得られた天然セルロースに繊維径にもよるが、天然セルロースが10〜30重量%で残部が再生セルロース繊維であると適当である。天然セルロースが10重量%以下とした場合には、天然セルロース繊維が紙層の中で骨格をつくることができず、セパレータの引き裂き強度が向上しない。一方で、天然セルロース繊維が30重量%を超えると、再生セルロース繊維による低密度で緻密な構造な紙層構造の割合が減り、電解コンデンサの低ESR化が図れないようになる。
これらの叩解原料を適宜混合して、長網抄紙機にて抄紙する。長網抄紙機は、再生セルロース繊維と天然セルロース繊維を混合して調整されたパルプスラリーをヘッドボックス内で安定な分散状態を保持しつつ、このヘッドボックスから、エンドレス走行するフォーミングワイヤー(長網)の上へ吐出し、このフォーミングワイヤーに載って水平に移送される過程で除々に脱水させて、湿紙層に転化させ、次のプレス及びドライヤー工程に送るように構成された抄紙機である。
電解コンデンサ用セパレータの抄造工程では、脱水速度が速いと、フォーミングワイヤーの上で脱水が行われる箇所と、脱水が行われない部分での紙層の密度に差が発生し、漉きムラが発生することがしられている。しかし、長網抄紙機では、この脱水は徐々に行われるため、紙層の密度が均一となり、漉きムラが発生しづらくなる。
そして、このように抄紙されたセパレータは、繊維径が5μm以上の天然セルロースが骨格となり、その骨格の間を叩解された再生セルロース繊維が、低密度で緻密な構造の紙層を構成する。この天然セルロースが骨格を作ることで、引っ張り強度と引き裂き強度がともに強いセパレータとなる。さらに、この天然セルロースの骨格の間隙に叩解された再生セルロース繊維が配置される。ポリノジックレーヨン、溶剤紡糸レーヨン等の叩解可能な再生セルロース繊維は叩解処理によって結晶単位の均一なフィブリルまで叩解することができる。この叩解原料を天然繊維パルプへ混合することによって天然繊維間の空隙を適度に埋め、地合が均一で、しかも極めて高い緻密性を有するものの、微多孔質状のシート形成であるため、電解液含浸後の電気の流れが良好であり、しかも引張強度が良好となるので、ショート不良率の減少とともにESRを改善した電解コンデンサが得られる。このため、引っ張り強度、引き裂き強度がともに強く、しかも、緻密で低密度のセパレータを得ることができる。
このようにして得られたセパレータを陽極箔と陰極箔との間に介在させて巻回してコンデンサ素子を形成した後、電解液を含浸させ、封口して電解コンデンサを製作する。
次にこの発明についてより具体的な実施例に基づいて説明する。
(実施例)
セパレータとして、まず、2〜5mmに裁断した溶剤紡糸レーヨン繊維を所定の叩解機によって、CSFが200ccになるまで叩解した。また、木材クラフトパルプを、CSFが500ccとなるまで叩解した。これらの原料を混合し、パルプスラリーとした後に、長網抄紙機にて抄紙して、その後乾燥して厚さ30μmのセパレータを得た。
(従来例1)
セパレータとして、まず、2〜5mmに裁断した溶剤紡糸レーヨン繊維を所定の叩解機によって、CSFが200ccになるまで叩解した。この原料を、長網抄紙機にて抄紙して、その後乾燥して厚さ30μmのセパレータを得た。
(従来例2)
セパレータとして、木材クラフトパルプを所定の叩解機によって、CSFが500ccになるまで叩解した。この原料を、長網抄紙機にて抄紙して、その後乾燥して厚さ30μmのセパレータを得た。
(実施例)
セパレータとして、まず、2〜5mmに裁断した溶剤紡糸レーヨン繊維を所定の叩解機によって、CSFが200ccになるまで叩解した。また、木材クラフトパルプを、CSFが500ccとなるまで叩解した。これらの原料を混合し、パルプスラリーとした後に、長網抄紙機にて抄紙して、その後乾燥して厚さ30μmのセパレータを得た。
(従来例1)
セパレータとして、まず、2〜5mmに裁断した溶剤紡糸レーヨン繊維を所定の叩解機によって、CSFが200ccになるまで叩解した。この原料を、長網抄紙機にて抄紙して、その後乾燥して厚さ30μmのセパレータを得た。
(従来例2)
セパレータとして、木材クラフトパルプを所定の叩解機によって、CSFが500ccになるまで叩解した。この原料を、長網抄紙機にて抄紙して、その後乾燥して厚さ30μmのセパレータを得た。
上記の実施例、従来例1,2のセパレータを5mm幅に裁断し、リード端子を取付けた陽極箔(箔幅4.5mm)、陰極箔(箔幅4.5mm)とともに巻回して、コンデンサ素子を作成した。コンデンサ素子の素子径は5.5mmである。
このコンデンサ素子の作成工程においては、実施例および従来例2のセパレータを用いた場合には、10000個のコンデンサ素子の作成を行ったが、作成工程でセパレータが破断することは無かった。一方、従来例1のセパレータを用いた場合には、10000個のコンデンサ素子の作成工程の中で、セパレータの破断が40回発生した。
次に、完成したコンデンサ素子の陽極、陰極のリード端子間に電圧を印加し、陽極、陰極間でのショートの発生の有無の検査(ショート検査)を行った。
このショート検査では、実施例のセパレータを用いたコンデンサ素子では、ショート発生は10000個中3個であった。一方、従来例1のセパレータを用いたコンデンサ素子では、ショート発生は10000個中5個であり、従来例2のセパレータを用いたコンデンサ素子では、ショート発生は10000個中25個であった。
以上の結果より、実施例のセパレータを用いた場合には、コンデンサ素子の巻回工程でのセパレータの破断が発生せず、その後のショート検査でもショートの発生頻度は低いことが明らかとなった。一方で、従来例1のセパレータを用いた場合には、コンデンサ素子の巻回工程で、セパレータの破断が発生した。また、従来例2のセパレータを用いた場合には、ショート検査でのショートの発生頻度が高いことが明らかとなった。
この結果より、本願発明の実施例のセパレータを用いた電解コンデンサは、コンデンサ素子の巻回工程でのセパレータの破断が発生せず、しかもショート検査でのショートの発生頻度が低いことが明らかとなった。
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 外装ケース
4 陽極箔
5 陰極箔
6 セパレータ
7 電極タブ
8 外部リード線
9 封口体
91 巻軸
92 すり割り
2 コンデンサ素子
3 外装ケース
4 陽極箔
5 陰極箔
6 セパレータ
7 電極タブ
8 外部リード線
9 封口体
91 巻軸
92 すり割り
Claims (2)
- 繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維と、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維を、長網抄紙した電解コンデンサ用セパレータ。
- 陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を、外装ケースに収納し、該外装ケースの開口端部を封口してなる電解コンデンサにおいて、
前記セパレータとして、繊維径が3μm以下の再生セルロース系繊維と、繊維径が5μm以上の天然セルロース繊維を、長網抄紙したセパレータを用いた電解コンデンサ。
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