JP2013201406A - アルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサ - Google Patents

アルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】 アルミ電解コンデンサ用セパレータとして、耐ショート性に優れた複層構造シートを提供することを目的とすると共に、小形化及び/又は高容量化したアルミ電解コンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】 陽極箔と陰極箔との間に介在し、再生セルロースからなるセルロースフィルム層と基材とを含有した複層構造シートであって、前記複層構造シートのセルロースフィルム層が、アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解し再生することにより得られたセルロースフィルム層である電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを使用する電解コンデンサを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明はアルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサに関し、例えば再生セルロースからなるセルロースフィルム層を含有する複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを用いるアルミ電解コンデンサに関するものである。
一般にアルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間にセパレータを介在させて捲回してコンデンサ素子を製作し、このコンデンサ素子に電解液を含浸させ、ケースに入れた後、封口しエージングして製作している。
アルミ電解コンデンサに含浸させる誘電体は、陽極アルミ箔の表面に電解酸化(化成)によって形成された極めて薄い酸化皮膜である。コンデンサ素子中のセパレータに電解液を含浸することで電解液が真の陰極となり、陽極アルミ箔表面の酸化皮膜が誘電体となる。
コンデンサの静電容量は下記式(1)で表される。
(数1)
C=ε・S/d・・・式(1)
C:静電容量(F)
ε:誘電体の比誘電率(F/m)
S:電極の面積(m2
d:電極間の距離(m)
比誘電率[式(1)のε(イプシロン)]は誘電体の種類に依存するため、アルミ電解コンデンサの静電容量[式(1)のC]を大きくするためには電極の面積[式(1)のS]を大きくし、電極間の距離[式(1)のd]を小さくすることが有効である。酸化皮膜は単位厚み当たりの耐電圧が高く、また任意の厚みの酸化皮膜を形成できるため、アルミ電解コンデンサはセラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどの他のコンデンサに比べて電極間の距離dが小さい。また陽極アルミ箔をエッチングすることにより、見かけ面積に比べて実効面積を20〜120倍程度に拡大できるため、電極の面積Sが大きい。したがってアルミ電解コンデンサは他のコンデンサに比べて小形かつ大容量を実現できることが最大の特徴となっている。
アルミ電解コンデンサにおいて、セパレータの主な役割は、両電極箔の隔離と電解液の保持である。セパレータの素材には電気絶縁性が要求され、また様々な種類の電解液の保持のために親水性、親油性が要求される。これらの特性を併せ持つものとしてセルロースがあり、セパレータにはセルロース紙である電解紙が多く使用されている。
近年、日本のみならず世界各国の省エネルギー政策、石油代替エネルギー政策により、風力発電、太陽電池、ハイブリッド車、電気自動車、各種省エネルギー機器など環境に関わるあらゆる分野でエネルギー効率のよいインバータ回路などの利用拡大が続いている。また、家電用製品でも省エネルギー化を目的として家庭用空調機器(エアコン)、冷蔵庫、洗濯機、照明機器など多くの機器がインバータ回路を備えている。
インバータ(Inverter)とは、直流電力から交流電力を電気的に生成する(逆変換する)電源回路、またはその回路を持つ電力変換装置のことである。逆変換回路、逆変換装置などとも呼ばれ、制御装置と組み合わせることなどにより、省エネルギー効果をもたらすことも可能なため、近年、利用分野が拡大している。例えば、周波数と電圧を制御することによってモーターの回転を高度に制御することができる。
インバータ回路では整流器から出力される直流に含まれている変動分の平滑を目的に、アルミ電解コンデンサが使用される。アルミ電解コンデンサはインバータ構成部材の中では大きな体積比率を占めており、さらなる小形化への要望が強い。
また、アルミ電解コンデンサはスイッチング電源回路などの入力平滑用としても用いられる。スイッチング電源回路は商用電源から入力された交流電流を任意の直流電流に変換して出力するインバータ回路とは逆の作用をする変換装置である。スイッチング電源などの電源においてもアルミ電解コンデンサの設置スペースに制約がある場合や電源の小形化の要求がある。
またアルミ電解コンデンサは同一の回路・装置に複数個使用される場合も多く、同じサイズにおいて容量を大きくすれば搭載員数の削減が可能になるため、小形化と併せて高容量化の要望も強い。アルミ電解コンデンサにおいてさらなる小形化あるいは高容量化は様々な分野に共通した重要な開発ポイントである。
アルミ電解コンデンサの素子は、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔の間にセパレータを介在させて捲回して製作するため、セパレータを薄くすると同体積の素子では陽極アルミ箔の長さを増やせるため誘電体である酸化皮膜の面積[上記の式(1)のS]を増やすことができ、アルミ電解コンデンサの高容量化が実現できる。また、同容量においては酸化皮膜の面積[上記の式(1)のS]を変更せずにセパレータを薄くすることで素子の体積が小さくなるため、アルミ電解コンデンサの小形化が実現できる。
アルミ電解コンデンサの電気的なショートの原因としては、タブ部分、電極箔端部のバリ、あるいは電極箔とリード線接続部のバリなどによるセパレータの貫通や破損、振動や衝撃などの機械的ストレスによるセパレータの破損、火花放電等の電気的ストレス、コンデンサ製造の際のエージング工程、酸化皮膜欠陥部に由来する酸化皮膜絶縁破壊などが挙げられる。
セパレータを薄くすることはこれらのショート原因に対する耐性(以下「耐ショート性」という。)を低下させる。セパレータを薄くしても同等の耐ショート性を維持するためには、セパレータをより均一かつ緻密な地合にすることや密度を上げることが有効である。
中高圧用アルミ電解コンデンサの場合、耐ショート性を確保するために十分な高い密度と厚さを有する電解紙がセパレータとして使用されている。使用電圧が高くなるほどショートの危険性が増加するため、繊維を高叩解した原料を長網抄紙機で抄紙したピンホールの存在しない密度0.70〜1.00g/cm3の高密度電解紙(以下「長網一重紙」という。)や前記長網抄紙機にて紙層形成された高密度層と円網抄紙機にて紙層形成された低密度層とを抄紙機上で重ねて抄き合わせた電解紙(以下「長網円網二重紙」という。)が使用されている(特許文献1)。
これらの長網一重紙や長網円網二重紙の高密度層には一般的に多量の電力と叩解時間をかけて高叩解された針葉樹クラフトパルプが原料として使用される。針葉樹クラフトパルプの断面は未叩解の状態では約10μm×40μmの大きさの扁平状であるが、叩解によりフィブリルを発生させることで、数十nm〜数μmの大きさにまで細分化することができる。紙は繊維を水に分散させて抄紙網上で紙層を形成するため、繊維を叩解して繊維直径を細分化するほど均一で緻密な紙層を形成することができる。
しかし、さらなる高叩解を行っても全ての繊維の直径と長さを揃えることは難しい。そのため紙は様々な大きさの繊維が物理的絡み合いおよび水素結合により結合したシートとなり、紙の内部を完全に均一な構造にすることは困難で、均一性および緻密性の向上には限界がある。
紙の密度は下記式(2)で算出されるため、同じ坪量(1m2当たりの紙の重量:g/m2)の紙で厚さが薄くなると密度が高くなる。
(数2)
密度(g/cm3)=坪量(g/m2)/厚さ(μm)・・・式(2)
しかし、最も叩解されている長網一重紙や長網円網二重紙の高密度層の密度約1.00g/cm3の高叩解原料よりさらに叩解しても、抄紙時に網下に抜け落ちる繊維の割合が多くなるのみで紙層を形成する繊維形態はほとんど変化しないため、さらに薄くして密度を向上させることは難しい。
抄紙後に後加工でカレンダー処理を行うと高密度化できるが、この手法で高密度化しても紙を構成する繊維が厚さ方向に圧縮されるのみで繊維の大きさや面方向の緻密性には変化がないため、耐ショート性は向上しない。
低圧用アルミ電解コンデンサの場合、インピーダンス特性の改善の要望が強く、より薄い、又はより密度の低い電解紙が新しく採用される傾向がある。電解紙を薄く、又は低密度にした場合、耐ショート性は低下する。
低インピーダンス化とショート不良率の低減という相反する目的の達成のため、抄紙原料を針葉樹クラフトパルプからマニラ麻パルプ、エスパルトパルプ等に変更することによって、薄く低密度でありながら緻密な紙層を形成する手段が用いられてきた(特許文献2)。
また、叩解可能な再生セルロース繊維を高度に叩解すると、剛性が高く繊維径の小さいフィブリルが発生することが知られている。高度に叩解した再生セルロース繊維を用いて抄紙することで、微多孔状で緻密性の高い紙を製作することができる。天然繊維を原料とする従来の電解紙から叩解可能な再生セルロース繊維を用いた紙にセパレータを変更することで、電解コンデンサのインピーダンス特性とショート不良率を同時に改善する手段が開発された(特許文献3)。
均一なシート状成形物の代表的なものとしてフィルムがある。アルミ電解コンデンサ用のセパレータは電解液を保持する必要があるため、ポリエチレン(PE)フィルムやポリプロピレン(PP)フィルムなどの電解液を内部に含浸することができないフィルムや、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムのような電解液に溶解するフィルムはセパレータとして使用することはできない。
なお、アルミ電解コンデンサ用セパレータには100℃以上の温度において寸法安定性や化学的安定性が要求される。このため、PEフィルムやPPフィルム、PVAフィルムなどは耐熱性の面からもセパレータとしての使用は困難である。
電解紙と同じセルロースを主成分とするフィルムの代表的なものに、セルロースを水酸化ナトリウムなどのアルカリと二硫化炭素で溶解したビスコースを成膜し、硫酸などの酸で中和してセルロースとして再生することにより製作したセルロースフィルム(ビスコース法により作製したセルロースフィルム)がある。
このビスコース法により作製したセルロースフィルムはフィルムであるため、緻密な構造となり電解紙よりも密度が高くなる。またセルロースであるため、親水性および親油性を有する。電解紙の場合、電解液の保持の役割は主に長網円網二重紙の低密度層が担うが、長網一重紙や長網円網二重紙の高密度層も電解液に浸すと繊維間あるいはセルロース分子間の水素結合が切断されて膨潤するため、電解液を保持することができる。ビスコース法により作製したセルロースフィルムは密度が高いため乾燥状態では空隙部分は存在しないが、電解液に浸すとセルロース分子間の水素結合が切断されて膨潤するため、電解液を保持することができる。
他の代表的な再生セルロース製造法として銅アンモニアレーヨン法がある。銅アンモニアレーヨンの製造に使用される銅アンモニア溶液は、硫酸銅にアンモニア溶液と水酸化ナトリウムを加えて製作する。銅アンモニア溶液にセルロースを溶解し、希硫酸に押出し成形することで銅アンモニアレーヨン法のセルロースフィルムが製作される。
その他のセルロース溶剤として、塩化リチウム/ジメチルアセトアミド系セルロース溶剤や、水酸化リチウム/尿素系セルロース溶剤(非特許文献1)、水酸化ナトリウム/尿素系セルロース溶剤(特許文献4)、水酸化ナトリウム/チオ尿素系セルロース溶剤(特許文献5)、イオン液体などが知られている。
特許第3693299号公報 特公昭61−45372号公報 特開平5−267103号公報 特表2008−542560号公報 特表2009−508015号公報
セルロースの実験と解析法 第15回 アルカリ−尿素系溶剤へのセルロースの溶解と再生ゲル化 空閑重則、CAI Jie Cellulose Communications Vol.15 No.2(2008) シーエムシー出版 イオン液体II 第13章 難溶性物質の可溶化 深谷幸信、大野弘幸
しかしながら、上記したビスコース法により作製したセルロースフィルムは、セルロースを再生する工程で二硫化炭素のガスを発生する化学反応を伴うため、ピンホールができやすい。厚さが約20μmのビスコース法により作製したセルロースフィルムには直径10μm以上のピンホールが約10個/cm2程度存在し、厚さが薄くなるほどピンホール数が増加する。ビスコース法により作製したセルロースフィルムにはピンホールがあるため、同じ厚さの電解紙と比較した場合、ビスコース法により作製したセルロースフィルムの方が密度の低い電解紙よりも耐ショート性は低くなる。
また、ビスコース法により作製したセルロースフィルムは、製法上、硫酸塩を含有している。硫酸塩含有量が多いセパレータを用いた場合、電解液中に硫酸イオンが溶出し、アルミ電解コンデンサの陽極アルミ箔の絶縁体となる酸化皮膜を腐食する。酸化皮膜の欠損部はショート不良や漏れ電流増加の原因となる。
また、ビスコース法により作製したセルロースフィルムは、製作時のセルロース溶液の粘度を適切にするためにセルロースの重合度を低下させる必要がある。しかしながら、重合度の低下はセルロースフィルムの強度や電解液に対する耐性を低下させる。以上の理由から、ビスコース法により作製したセルロースフィルムは、アルミ電解コンデンサ用のセパレータとして使用することは適さないといえる。
同じく上記した銅アンモニアレーヨン法で製作したセルロースフィルムは、硫酸イオンを含有することに加え、銅イオンを多く含有する。銅イオン含有量が多いセパレータを用いた場合、銅イオンが電解液に溶け出し、コンデンサが充放電を繰り返す中で逆電圧がかかった際に陽極アルミ箔の酸化皮膜の欠損部に酸化銅として析出し、デンドライトとなってセパレータを貫通してショートに至る故障が発生する。以上の理由から、銅アンモニアレーヨン法のセルロースフィルムをアルミ電解コンデンサ用セパレータとして使用することは適さない。
同様に、その他のセルロース溶剤として、塩化リチウム/ジメチルアセトアミド系セルロース溶剤を使用したセルロースフィルムは塩素含有量が多く、水酸化リチウム/尿素系セルロース溶剤、水酸化ナトリウム/尿素系セルロース溶剤、水酸化ナトリウム/チオ尿素系セルロース溶剤は実用上、アルカリの中和のために凝固浴に希硫酸が使用されるため、硫酸塩含有量が多くなる。
イオン液体はアニオンとしてCl-、Br-、SCN-、BF4 -、PF6 -などを持つ1−ブチル−3メチルイミダゾリウム塩がセルロースを溶解することが知られているが(非特許文献2)、セルロースを溶解するイオン液体は反応性のよい塩素やその他のハロゲンをアニオンに使用する。
しかしながら、塩素やハロゲンの残留成分は硫酸イオン以上に陽極アルミ箔の酸化皮膜を腐食するため、これらのイオン液体を用いて製作されたセルロースフィルムをセパレータとして使用することは適さない。またイオン液体は非常に高価なため、安価であることを特徴とするアルミ電解コンデンサの構成部材の製造には適さない。
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、紙又は不織布等の基材に再生セルロースからなるセルロースフィルム層を付与することにより、アルミ電解コンデンサ用セパレータとして、耐ショート性に優れた複層構造シートを提供することを目的とする。また前記複層構造シートをセパレータとして用いることで小形化及び/又は高容量化したアルミ電解コンデンサを提供することを目的とする。
上記目的を達成する一手段として、本発明の電解コンデンサ用セパレータは、例えば以下の構成を備える。即ち再生セルロースからなるセルロースフィルム層と基材とを含有した複層構造シートであって、前記複層構造シートのセルロースフィルム層が、アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解し再生することにより得られたセルロースフィルム層である電解コンデンサ用セパレータとすることを特徴とする。
そして、前記複層構造シートが、基材の少なくとも片側にセルロースフィルム層を有する構造であることを特徴とする。あるいは、例えば、前記複層構造シートが、セルロースフィルム層を基材で挟持した構造であることを特徴とする。
また例えば、前記複層構造シートが、基材をセルロースフィルム層で挟持した構造であることを特徴とする。あるいは、前記アミンオキシド系溶媒は、主成分がN‐メチルモルホリン‐N‐オキシドであることを特徴とする。
さらに例えば、前記セルロースフィルム層の坪量が30g/m2以下であることを特徴とする。また例えば前記基材が製紙用原料として使用可能な植物由来のパルプ、再生セルロース繊維、セルロース系繊維、動物繊維、無機繊維、合成繊維の少なくとも一種類からなる、紙又は不織布であることを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、以上のいずれかに記載の電解コンデンサ用セパレータを用いた電解コンデンサであることを特徴とする。
本発明によれば、耐ショート性に優れ、またコンデンサの小形化及び/又は高容量化を実現可能なアルミ電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを用いるアルミ電解コンデンサを提供することができる。
実施例1、2及び従来例1、参考例1のセパレータを用いた160WVのアルミ電解コンデンサの不良率の測定結果を示す図である。 実施例1、2及び従来例1、参考例1のセパレータを用いた160WVのアルミ電解コンデンサの静電容量の測定結果を示す図である。 実施例1、2及び従来例1、参考例1のセパレータを用いた160WVのアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性の測定結果を示す図である。
実施例3乃至9、比較例1乃至4及び従来例2、参考例2乃至4のセパレータを用いた450WVのアルミ電解コンデンサの不良率の測定結果を示す図である。 実施例3乃至9、比較例1乃至4及び従来例2、参考例2乃至4のセパレータを用いた450WVのアルミ電解コンデンサの不良率の測定結果を示す図である。 実施例3乃至9、比較例1乃至4及び従来例2、参考例2乃至4のセパレータを用いた450WVのアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性の測定結果を示す図である。
本発明に係る一実施の形態例では、アルミ電解コンデンサを構成するセパレータを、アミンオキシド系溶媒を用いて製作したセルロースフィルム層と、紙又は不織布等の基材とを一体化させた複層構造シートを、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間に介在させる構成とする。
本発明に係る一発明の実施の形態例に用いられるアミンオキシド系溶媒の主成分であるアミンオキシドには第三級アミンオキシドを用いることが好ましい。例えば、第三級アミンオキシドとしては、セルロースを溶解し水と混合するもので、かつ水に対し安定であればいずれの第三級アミンオキシドも用いることができるが、入手のしやすさ、使用済み溶剤の回収精製のしやすさ等から、N‐メチルモルホリン‐N‐オキシド(以下「NMMO」という。)を用いることが特に好ましい。ここで、水に対して安定な第三級アミンオキシドとは、水と化学反応を起こさないという意味である。
アミンオキシド系溶媒を用いて製作したセルロースフィルム層と、紙又は不織布等の基材とを一体化させる本実施の形態例で採用する方法として、
(1)アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解したセルロース溶液を膜状に成形し、水またはアミンオキシド系溶媒の貧溶媒に浸漬することによりセルロースを凝固して再生し、再生したセルロースを水で洗浄してアミンオキシド系溶媒を除去して得られた含水セルロースフィルムと前記基材とを重ね合わせて乾燥する方法、
(2)アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解したセルロース溶液を膜状に成形し、水またはアミンオキシド系溶媒の貧溶媒に浸漬することによりセルロースを凝固して再生し、再生したセルロースを水で洗浄してアミンオキシド系溶媒を除去した後乾燥して得られたセルロースフィルムと前記基材とを重ね合わせ、水で湿潤させた後プレスして再乾燥する方法、
(3)アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解したセルロース溶液を基材上で膜状に成形し、又は膜状に成形したセルロース溶液と基材とを重ね合わせて、水またはアミンオキシド系溶媒の貧溶媒に浸漬することによりセルロースを凝固して再生し、再生したセルロースを水で洗浄してアミンオキシド系溶媒を除去した後乾燥する方法、
(4)セルロースを含む基材にアミンオキシド系溶媒を塗布し加熱処理を行うことで基材のセルロースの一部を溶解し、再生することで基材上にセルロースフィルム層を形成する方法、
などを用いることができる。しかしながら、本発明はかかる方法に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で他の方法も採用しうる。
(1)乃至(3)の方法では、アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解したセルロース溶液を使用する。本実施の形態例に用いられるセルロース溶液の組成は、NMMOが70〜95重量%、水が2〜28重量%、セルロースが2〜20重量%の濃度範囲が好ましい。
これは、NMMOの割合が70重量%を下回るとセルロースの溶解が困難になり、溶液中のセルロースの濃度が2重量%を下回るとセルロースフィルム層を作製する際に多くのセルロース溶液が必要になるため生産効率が悪くなり、20重量%を超えるとセルロース溶液の粘度が高くなり、薄膜の製作に不適となるためである。
上記の範囲であればセルロースを良好に溶解することができ、均一な溶液が得られるが、溶媒の種類、成形装置、成形条件によっても溶解条件は異なるため、セルロース溶液の組成はこれに限定されるものではない。
溶解温度は75℃以上150℃以下の範囲が好ましい。75℃以下の場合は良好なセルロース溶液が得られず、150℃以上の場合はNMMOおよびセルロースの分解が起こる場合があるからである。特に120℃以下で溶解を行うことがより好ましい。
溶解するセルロース材料は複層構造シートの塩素含有量を2ppm以下にするため、無塩素(TCF)漂白、あるいは未漂白のものを使用することが好ましいが、複層構造シートの塩素含有量が2ppm以下となるセルロース材料であれば使用可能である。
これは、セパレータ中の塩素含有量が2ppmより多くなると、酸化皮膜に対する腐食性が強くなり、ショート不良や漏れ電流の増大を引き起こすためであり、アルミ電解コンデンサ用セパレータとして適さない。なお、ここでの塩素含有量はJIS C 2300 電気用セルロース紙 第2部 試験方法の塩素含有量 イオンクロマトグラフ法(抽出法)に記載の方法で測定した値とする。
また、複層構造シートの硫酸塩含有量を10ppm以下にするため、硫酸塩含有量が200ppm以下のセルロースを用いることが好ましい。硫酸塩は後述するセルロース再生後の洗浄工程などで減少するが、200ppm以上の含有量のセルロースを使用すると洗浄が不十分な場合に複層構造シートの硫酸塩含有量が10ppmを超える可能性があるからである。セパレータ中の硫酸塩含有量が10ppmを超えると酸化皮膜に対する腐食性が強くなるため、ショート不良や漏れ電流の増大を引き起こす。なお、ここでの硫酸塩含有量は前述の塩素含有量測定に用いる抽出液をイオンクロマトグラフ法で測定した値とする。
セルロース材料としては木材パルプ、非木材パルプ、マーセル化パルプ、溶解パルプ、再生セルロースを使用することができる。これらの中から1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができ、これらのセルロース材料から製作した紙も使用することができる。
特に溶解パルプあるいはコットンリンターパルプをセルロース基材として用いることが好ましい。溶解パルプおよびコットンリンターパルプは、α−セルロース含有量が90%以上であり、セルロース純度が高いため、均一かつ均質なセルロース溶液の製作に適している。セルロース材料の化学的性質、物理的性質の違いにより得られるセルロースフィルム層の特性を調整することが可能である。
本実施の形態例の成膜方法としては、加熱押出ダイを使用することが好ましいが、所定のクリアランスでキャスティングを行う方法や、加熱したロールを用いて支持体や基材に転写し成膜する方法などを用いてもよい。本実施の形態例はかかる方法に限定されるものではなく、均一な薄膜を形成できる方法であれば他の方法も採用しうる。
上記(1)の方法は、セルロース溶液を膜状に成形し、凝固再生、溶媒除去して得られた含水セルロースフィルムと、前記基材とを重ね合わせて乾燥する方法である。(1)の方法を採用する場合、例えば、セルロース溶液は加熱押出ダイを通して押し出され、加熱押出ダイと凝固浴との間の僅かな空気間隙を通って水またはNMMOの貧溶媒で構成された凝固浴に投入される。
空気間隙を設けない場合は、凝固浴により加熱押出ダイが冷却され、セルロース溶液が押出ダイ内部で固化して詰まりが発生する。凝固浴でセルロースを再生し、イオン交換水で洗浄して得られた含水セルロースフィルムと基材とを重ね合わせ、プレスした後乾燥することでセルロースフィルム層と前記基材とを一体化させた複層構造シートが得られる。
複層構造シートはセルロースフィルム層の少なくとも片側に基材が存在すればよく、両側に基材が存在する形態あるいはセルロースフィルム層で基材を挟む形態とすることもできる。基材として電解紙などのセルロース系の紙又は不織布を使用することが好ましい。乾燥時にセルロースフィルム層と基材表面のセルロースとの間で水素結合が発生するため、バインダーを使用することなく層間を接着させることが可能になる。
上記(2)の方法は、セルロースフィルムと前記基材とを重ね合わせ、水で湿潤させた後プレスして再乾燥する方法である。(2)の方法を採用する場合、例えばセルロース溶液は加熱押出ダイを通して押し出され、加熱押出ダイと凝固浴との間の僅かな空気間隙を通って水またはNMMOの貧溶媒で構成された凝固浴に投入される。
凝固浴でセルロースを再生し、イオン交換水で洗浄し、その後乾燥して得られたセルロースフィルムと基材とを重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスして乾燥することでセルロースフィルム層と前記基材とを一体化させた複層構造シートが得られる。
複層構造シートは、セルロースフィルム層の少なくとも片側に基材が存在すればよく、両側に基材が存在する形態あるいはセルロースフィルム層で基材を挟む形態とすることもできる。
基材としては、電解紙などのセルロース系の紙又は不織布を使用することが好ましい。セルロース系の紙又は不織布を使用することにより、乾燥時にセルロースフィルム層と基材表面のセルロースとの間で水素結合が発生するため、バインダーを使用することなく層間を接着させることが可能になる。
上記(3)の方法は、膜状に成形したセルロース溶液と基材とを一体化させた後、凝固再生、溶媒除去して乾燥する方法である。(3)の方法を採用する場合、例えばセルロース溶液は加熱押出ダイを通して基材上に押し出され、又は加熱押出ダイを通して支持体上に押出された状態で前記基材と重ね合わせられた後に、加熱押出ダイと凝固浴との間の僅かな空気間隙を通って水またはNMMOの貧溶媒で構成された凝固浴に投入される。
凝固浴でセルロースを再生した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥することによってセルロースフィルム層と前記基材とを一体化させた複層構造シートが得られる。複層構造シートはセルロースフィルム層の少なくとも片側に基材が存在すればよく、両側に基材が存在する形態あるいはセルロースフィルム層で基材を挟む形態とすることもできる。
基材として低密度紙や、不織布等を用いた場合、基材にセルロース溶液が浸透するため、基材の厚さとセルロースフィルムの厚さの合計よりも薄い厚さの複層構造シートを製作することができる。
上記(4)の方法は、セルロースを含む基材にアミンオキシド系溶媒を塗布し加熱処理を行うことで基材のセルロースの一部を溶解し、再生することで基材上にセルロースフィルム層を形成する方法である。(4)の方法を採用する場合、基材表面のセルロースの一部を溶解しフィルムとして再生する必要があるため、基材はアミンオキシド系溶媒が裏抜けしないものを用いる必要がある。例えばアミンオキシド系溶媒はグラビアコーターロールを用いて基材表面に塗布され、ロール式ドライ又は連続式乾燥炉などを用いて熱処理が行われる。熱処理後に水浴でアミンオキシド系溶媒を洗浄して除去した後、乾燥することで複層構造シートを得ることができる。
基材は、セルロースフィルム層の少なくとも片側に存在すればよく、セルロースフィルム層で基材を挟む形態とすることもできる。また熱処理の際、アミンオキシド系溶媒を除去することなくそのまま乾燥を行って複層構造シートを得ることもできる。この場合、乾燥される際にアミンオキシド系溶媒が濃縮されるため、基材を溶解する程度に応じて、任意の濃度のアミンオキシド系溶媒を使用することができる。
前記基材には、製紙用原料として使用可能な植物由来のパルプ、再生セルロース繊維、セルロース誘導体からなるセルロース系繊維、動物繊維、無機繊維、合成繊維の少なくとも一種類以上からなる紙又は不織布を使用する。
合成繊維としては、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、半芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリケトン繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリ尿素繊維などが使用できる。
基材として特に好ましいのは、アルミ電解コンデンサ用セパレータとして使用されている、製紙用原料として使用可能な植物由来のパルプあるいは再生セルロース繊維から製作された電解紙である。
セルロースフィルム層の坪量は30g/m2以下が好ましい。セパレータはアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性に大きく影響する。セルロースフィルム層と長網一重紙や長網円網二重紙の高密度層とを比較した場合、セルロースフィルム層の密度の方が高いため、セルロースフィルム層は同じ厚さの長網一重紙や長網円網二重紙の高密度層よりもインピーダンス特性は悪くなる傾向がある。
しかしセルロースフィルム層は長網一重紙や長網円網二重紙の高密度層と比較して耐ショート性に優れるため、同等の耐ショート性が要求される場合には長網一重紙や長網円網二重紙よりも厚さが薄くて低坪量のセルロースフィルム層を使用することができる。そのためインピーダンス特性は良くなり、密度上昇による悪化分を相殺することができる。ただしセルロースフィルム層の坪量が多くなるとインピーダンス特性は二次関数的に悪化するため、セパレータとして実用可能なセルロースフィルム層の坪量は30g/m2以下である。
このようにして得られた複層構造シートをセパレータとして陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間に介在させて捲回してコンデンサ素子を製作し、このコンデンサ素子を液状の電解液中に浸漬して電解質を含浸させ、ケースに入れた後、封口しエージングして製作することで小形化及び/又は高容量化したアルミ電解コンデンサを製作することができる。
本実施の形態例では、セルロース材料を溶解しセルロースを分子鎖レベルに分離した後にセルロースを再生するため、非常に緻密で均一なセルロースフィルム層を作製することができる。またセルロースフィルム層は高密度の電解紙と異なり空隙部分が存在しないため、電解紙と比べてさらなる高密度化が可能となる。そのため本実施の形態例により得られる複層構造シートは基材と比べて、緻密性、均一性が向上し、密度が高くなるため、耐ショート性は大幅に向上する。
アミンオキシド系溶媒を用いて製作した再生セルロースは製法上、アルミ電解コンデンサの陽極酸化皮膜を腐食する不純物を含有しない。そのため、基材として不純物の少ない紙又は不織布を用いることで、アルミ電解コンデンサ用セパレータとして使用可能な塩素含有量が2ppm以下かつ硫酸塩含有量が10ppm以下の複層構造シートを得ることができる。
前記基材の不純物量としては塩素含有量2ppm以下かつ硫酸塩含有量10ppm以下が好ましいが、付与するセルロースフィルム層の坪量によっても複層構造シートの不純物量は変化するため、特にこの値に限定するものではない。
アミンオキシド系セルロース溶液からセルロースを凝固再生する際には、化学反応を伴わないためビスコース法のようにガスが発生せず、セルロースフィルム層中に気泡を含まない。そのため薄いセルロースフィルム層でもピンホールは存在せず、耐ショート性を確保できる。
セルロースフィルムを単独で作製した場合、坪量が低くなると機械的強度が著しく低くなるため、フィルム製造工程およびアルミ電解コンデンサ素子製造工程で破断するなど、製造工程での問題が発生する。
本実施の形態例では、基材上でセルロースを再生する方法や基材表面のセルロースの一部を溶解しフィルム層として再生する方法を用いることができるため、低坪量のセルロースフィルム層を持つ複層構造シートを製作することも可能である。
セルロースフィルム層の密度は基材の密度よりも高くなる。表面を溶解する場合、複層構造シートの全体密度は基材の密度より高くなるため、基材よりも薄い複層構造シートを得ることができる。
本実施の形態例の複層構造シートは、基材の機械的強度をセルロースフィルム層が補強する形になるため、坪量が0.5g/m2以下のわずかなセルロースフィルム層を付与した場合でも耐ショート性向上効果が発現する。セルロースフィルム層は非常に緻密かつ均一、高密度であるため、電解紙と比較して耐ショート性に優れる。電解紙よりも薄い複層構造シートで同等の耐電圧を確保できるため、アルミ電解コンデンサの小形化及び/又は高容量化を実現できる。
本実施の形態例の複層構造シートは、紙又は不織布とセルロースフィルムを一体化することで引張強さ及び引裂強さを強くすることができる。そのため、本実施の形態例の複層構造シートはセルロースフィルム又は基材と比較して、工程でのハンドリング性が大幅に向上し、製造工程でのセパレータの破断トラブルを激減させることができる。
また、セルロース系繊維、動物繊維、無機繊維、合成繊維などからなる紙又は不織布においても、本実施の形態例の複層構造シートを製作することができる。これらの紙又は不織布を基材として用いた場合、基材の性質を利用したセパレータ、例えば耐熱性に極めて優れたセパレータなどを製作することができる。
〔実施例〕
〔セパレータ特性の測定方法及び評価方法〕
各実施例、比較例、従来例及び参考例において説明するセパレータとしての各実験結果の測定方法、評価方法は以下の通りである。
厚さ、密度、引張強さ、吸水度、塩素含有量は、JIS C 2300[電気用セルロース紙]の試験方法に準じて行った。厚さの測定では、試料を10枚重ね、自動停止式の外側マイクロメータを用いて厚さを3点以上測定し、1枚当たりの平均値を算出し、試料の厚さとした。密度の測定では、B法(絶乾状態の密度を求める方法)に準じて測定を行った。塩素含有量の測定では、「17.2.4.2」抽出第5法に準じて、製作した抽出液を、「17.2.4.3」イオンクロマトグラフ法を用いて測定した。硫酸塩含有量も塩素含有量と同様の方法を用いて測定した。
〔アルミ電解コンデンサの製作方法〕
エッチング処理および酸化皮膜形成処理を行った陽極アルミ箔と陰極アルミ箔が接触しないようにセパレータを介在させて捲回してコンデンサ素子を製作し、このコンデンサ素子に所定の電解液を含浸させ、ケースに入れた後、封口し直径10mm、高さ20mm、定格電圧160WVあるいは450WVのアルミ電解コンデンサを製作した。
〔コンデンサエージング後の不良率〕
各コンデンサ試料1000個について、定格電圧の約110%まで徐々に昇圧していき、エージングを行った。エージングショート、防爆弁の作動、液漏れ、封口部の膨れなどの外観異常も含めた不良コンデンサの個数を1000で除して百分率をもって不良率とした。
〔アルミ電解コンデンサの静電容量〕
電解コンデンサの静電容量は20℃、120Hzの周波数でLCRメータを用いて測定した。
〔アルミ電解コンデンサのインピーダンス〕
電解コンデンサのインピーダンスは20℃、1kHzの周波数でLCRメータを用いて測定した。
〔参考例1〕
未漂白針葉樹クラフトパルプを叩解機でCSF5ml以下まで叩解した原料を長網抄紙機で抄紙して厚さ15.1μm、密度0.75g/cm3の長網一重紙を製作した。得られた長網一重紙の塩素含有量は0.6ppm、硫酸塩含有量は4.5ppm、引張強さは24.5N/15mm、吸水度は0mm/10minであった。
〔参考例2〕
マニラ麻パルプ50%とエスパルトパルプ50%とからなる原料を叩解機でCSF500mlまで叩解し円網二層抄紙機で抄紙して厚さ40.3μm、密度0.50g/cm3の円網二重紙を製作した。得られた円網二重紙の塩素含有量は0.7ppm、硫酸塩含有量は0.5ppm、引張強さは29.4N/15mm、吸水度は45mm/10minであった。
〔参考例3〕
針葉樹クラフトパルプを叩解機でCSF5ml以下まで叩解したものを長網の抄紙原料とし、厚さ20.1μm、密度0.85g/cm3の高密度紙を長網部分で抄紙しつつ、円網部分では針葉樹クラフトパルプをCSF400mlに叩解した原料で厚さ20.1μm、密度0.65g/cm3の紙を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ40.2μm、全体密度0.75g/cm3の長網円網二重紙を製作した。得られた長網円網二重紙の塩素含有量は0.5ppm、硫酸塩含有量は5.4ppm、引張強さは66.6N/15mm、吸水度は8mm/10minであった。
〔参考例4〕
叩解可能な再生セルロース繊維である溶剤紡糸レーヨンを叩解機でCSF5ml以下まで叩解した原料を長網抄紙機で抄紙して厚さ25.0μm、密度0.44g/cm3の長網一重紙を製作した。得られた長網一重紙の塩素含有量は0.3ppm、硫酸塩含有量は1.2ppm、引張強さは10.8N/15mm、吸水度は30mm/10minであった。
〔実施例1〕
参考例1で製作した長網一重紙の片側表面にグラビアコーターロールを用いて80重量%NMMOを塗布し、連続式乾燥炉を用いて110℃で30秒間の熱処理を行い長網一重紙表面のセルロースを溶解した後、イオン交換水の凝固浴に浸漬してセルロースを長網一重紙表面上で再生した。さらに3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが14.9μm、密度が0.76g/cm3であり、算出したセルロースフィルム層の坪量は0.3g/m2であった。塩素含有量は1.6ppm、硫酸塩含有量は6.7ppm、引張強さは27.4N/15mm、吸水度は0mm/10minであった。
〔実施例2〕
重合度1500のTCFコットンリンターパルプ150gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら76℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース2.6重量%、NMMO84.9重量%、水12.5重量%であった。参考例1で製作した長網一重紙の表面に上記セルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて0.05mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが15.7μm、密度が0.77g/cm3であり、算出したセルロースフィルム層の坪量は0.8g/m2であった。塩素含有量は1.1ppm、硫酸塩含有量は3.3ppm、引張強さは33.3N/15mm、吸水度は0mm/10minであった。
〔実施例3〕
重合度700のTCFコットンリンターパルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら105℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.1重量%、NMMO74.3重量%、水16.6重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、セルロースフィルムを作製した。得られたセルロースフィルムの坪量は13.5g/m2であった。
このセルロースフィルムと参考例2で製作した円網二重紙を重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが50.2μm、密度が0.81g/cm3であった。塩素含有量は0.8ppm、硫酸塩含有量は5.8ppm、引張強さは58.8N/15mm、吸水度は40mm/10minであった。
〔実施例4〕
重合度700のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース10.2重量%、NMMO83.3重量%、水6.5重量%であった。
参考例2で製作した円網二重紙の表面に上記セルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが45.1μm、密度が0.89g/cm3であり、算出したセルロースフィルム層の坪量は13.9g/m2であった。セルロース/NMMO溶液が基材に浸透し、基材の一部と一体となってセルロースフィルム層を形成したため、複層構造シートの厚さは、坪量から予測されるセルロースフィルム層の厚さと、基材として用いた円網二重紙の厚さの合計よりも薄い厚さとなった。なお、塩素含有量は1.0ppm、硫酸塩含有量は7.7ppm、引張強さは64.1N/15mm、吸水度は25mm/10minであった。
〔実施例5〕
重合度600のTCF溶解パルプ1000gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら120℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース15.8重量%、NMMO77.4重量%、水6.8重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.30mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した。この含水セルロースフィルムと参考例2で製作した円網二重紙を重ね合わせ、プレスした後ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが60.1μm、密度が0.82g/cm3であり、セルロースフィルム層の坪量は29.5g/m2であった。塩素含有量は1.7ppm、硫酸塩含有量は3.1ppm、引張強さは97.0N/15mm、吸水度は38mm/10minであった。
〔実施例6〕
重合度900のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.8重量%、NMMO80.0重量%、水10.2重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.15mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した。この含水セルロースフィルムと参考例3で製作した長網円網二重紙を重ね合わせ、プレスした後ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが45.3μm、密度が0.83g/cm3であり、セルロースフィルム層の坪量は7.3g/m2であった。塩素含有量は0.8ppm、硫酸塩含有量は8.3ppm、引張強さは86.2N/15mm、吸水度は6mm/10minであった。
〔実施例7〕
重合度800のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら90℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース10.3重量%、NMMO84.1重量%、水5.6重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した。この含水セルロースフィルムと参考例4で製作した長網一重紙を重ね合わせ、プレスした後ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが36.4μm、密度が0.67g/cm3であり、セルロースフィルム層の坪量は13.5g/m2であった。塩素含有量は1.5ppm、硫酸塩含有量は4.4ppm、引張強さは34.3N/15mm、吸水度は25mm/10minであった。
〔実施例8〕
重合度600のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.3重量%、NMMO76.0重量%、水14.7重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.15mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、セルロースフィルムを作製した。得られたセルロースフィルムの坪量は7.1g/m2であった。
このセルロースフィルムを2枚用いて、参考例4で製作した長網一重紙を挟んで重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが36.2μm、密度が0.69g/cm3であった。塩素含有量は1.4ppm、硫酸塩含有量は8.9ppm、引張強さは37.2N/15mm、吸水度は16mm/10minであった。
〔実施例9〕
重合度600のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.9重量%、NMMO80.9重量%、水9.2重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、セルロースフィルムを作製した。得られたセルロースフィルムの坪量は13.9g/m2であった。
参考例4で製作した長網一重紙を2枚用いて、セルロースフィルムを挟んで重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが60.5μm、密度が0.59g/cm3であった。塩素含有量は1.2ppm、硫酸塩含有量は4.8ppm、引張強さは49.0N/15mm、吸水度は29mm/10minであった。
〔実施例10〕
全芳香族ポリイミド繊維60%と全芳香族ポリイミドバインダー繊維40%とからなるCSF200mlの原料を円網一層抄紙機で抄紙して厚さ40.1μm、密度0.35g/cm3の円網一重紙を製作した。
重合度800のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.9重量%、NMMO80.9重量%、水9.2重量%であった。
得られた円網一重紙の表面に上記セルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが46.1μm、密度が0.61g/cm3であり、セルロースフィルム層の坪量は14.0g/m2であった。塩素含有量は1.8ppm、硫酸塩含有量は7.9ppm、引張強さは34.3N/15mm、吸水度は10mm/10minであった。
〔実施例11〕
ホウ酸浴を用いて紡糸したポリビニルアルコール繊維85%とポリビニルアルコールバインダー繊維15%とからなるCSF200mlの原料を円網短網抄紙機で抄紙して厚さ40.2μm、密度0.31g/cm3の円網短網二重紙を製作した。
重合度800のTCF溶解パルプ600gを70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.9重量%、NMMO80.9重量%、水9.2重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、セルロースフィルムを作製した。得られたセルロースフィルムの坪量は14.2g/m2であった。
このセルロースフィルムと得られた円網短網二重紙を重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが50.3μm、密度が0.53g/cm3であった。塩素含有量は1.6ppm、硫酸塩含有量は8.3ppm、引張強さは39.2N/15mm、吸水度は15mm/10minであった。
〔実施例12〕
アクリル繊維50%とアクリルバインダー繊維50%とからなるCSF200mlの原料を円網一層抄紙機で抄紙して厚さ40.4μm、密度0.30g/cm3の円網一重紙を製作した。
重合度800のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース8.9重量%、NMMO72.7重量%、水18.4重量%であった。
得られた円網一重紙の表面に上記セルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが45.4μm、密度が0.58g/cm3であり、算出したセルロースフィルム層の坪量は14.4g/m2であった。なお、塩素含有量は1.4ppm、硫酸塩含有量は6.5ppm、引張強さは32.3N/15mm、吸水度は15mm/10minであった。
〔実施例13〕
ポリプロピレンを原料としてメルトブロー不織布製造装置を用い、厚さ39.7μm、密度0.28g/cm3のメルトブロー不織布を製作した。
重合度800のTCF溶解パルプ600gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース10.4重量%、NMMO84.9重量%、水4.7重量%であった。
得られたメルトブロー不織布の表面に上記セルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて0.20mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生し、3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが44.3μm、密度が0.48g/cm3であり、算出したセルロースフィルム層の坪量は14.2g/m2であった。なお、塩素含有量は1.1ppm、硫酸塩含有量は5.7ppm、引張強さは35.3N/15mm、吸水度は5mm/10minであった。
〔比較例1〕
重合度700のTCF溶解パルプ1000gを、70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース15.4重量%、NMMO75.5重量%、水9.1重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.30mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、セルロースフィルムを作製した。得られたセルロースフィルムの坪量は31.2g/m2であった。
このセルロースフィルムと参考例2で製作した円網二重紙を重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが61.5μm、密度が0.83g/cm3であった。塩素含有量は1.4ppm、硫酸塩含有量は6.2ppm、引張強さは100.9N/15mm、吸水度は37mm/10minであった。
〔比較例2〕
硫酸塩含有量が250ppmである重合度800のTCF溶解パルプ600gを70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース9.5重量%、NMMO77.6重量%、水12.9重量%であった。参考例3で製作した長網円網二重紙の高密度側表面に上記セルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて0.30mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが56.1μm、密度が0.91g/cm3であり、算出したセルロースフィルム層の坪量は20.7g/m2であった。塩素含有量は1.3ppm、硫酸塩含有量は11.3ppm、引張強さは135.9N/15mm、吸水度は7mm/10minであった。
〔比較例3〕
重合度800のECF溶解パルプ600gを70重量%のNMMO水溶液7000gに添加した。このパルプとNMMOとの混合液を撹拌しながら95℃まで昇温し、さらに水を蒸発させることで、セルロース/NMMO溶液を得た。溶液の組成はセルロース10.5重量%、NMMO85.7重量%、水3.8重量%であった。
このセルロース/NMMO溶液をTダイ式の押出成形機を用いて、0.30mmのスリット幅で押出し、10mmの空気間隙を通した後、20重量%のNMMOの貧溶媒の凝固浴に浸漬しセルロースを再生した。再生したセルロースを3槽のイオン交換水の洗浄浴で洗浄した後、ドラム式乾燥機で乾燥することにより、セルロースフィルムを作製した。得られたセルロースフィルムの坪量は25.6g/m2であった。
このセルロースフィルムと参考例3で製作した長網円網二重紙を重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが59.2μm、密度が0.94g/cm3であった。塩素含有量は2.2ppm、硫酸塩含有量は7.5ppm、引張強さは148.8N/15mm、吸水度は7mm/10minであった。
〔比較例4〕
溶解パルプを用いてビスコース法により作製したセルロースフィルムの坪量は27.6g/m2であった。
このセルロースフィルムと参考例2で製作した円網二重紙を重ね合わせ、水で湿潤させた後、プレスしドラム式乾燥機で乾燥することにより、複層構造シートを作製した。
得られた複層構造シートは厚さが58.9μm、密度が0.81g/cm3であった。塩素含有量は45.5ppm、硫酸塩含有量は312ppm、引張強さは87.2N/15mm、吸水度は37mm/10minであった。
〔従来例1〕
未漂白針葉樹クラフトパルプを叩解機でCSF5ml以下まで叩解した原料を長網抄紙機で抄紙して厚さ25.3μm、密度0.85g/cm3の長網一重紙を製作した。得られた長網一重紙の塩素含有量は0.3ppm、硫酸塩含有量は5.7ppm、引張強さは47.0N/15mm、吸水度は0mm/10minであった。
〔従来例2〕
針葉樹クラフトパルプを叩解機でCSF5ml以下まで叩解したものを長網の抄紙原料とし、厚さ25.1μm、密度0.85g/cm3の高密度紙を長網部分で抄紙しつつ、円網部分では針葉樹クラフトパルプをCSF400mlに叩解した原料で厚さ33.7μm、密度0.68g/cm3の紙を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ58.8μm、全体密度0.75g/cm3の長網円網二重紙を製作した。得られた長網円網二重紙の塩素含有量は0.4ppm、硫酸塩含有量は6.3ppm、引張強さが102.9N/15mmであった。
実施例1及び2で得た複層構造シート、従来例1及び参考例1で得た電解紙を用いて、160WVのアルミ電解コンデンサを1000個製作し、不良率を計測し、インピーダンス及び静電容量を測定した。
実施例1及び2で得た複層構造シート、従来例1及び参考例1で得た電解紙の諸物性及びアルミ電解コンデンサの評価結果を表1に示す。表1は実施例1及び2、従来例1及び参考例1の特性測定結果一覧を示す表である。
Figure 2013201406
実施例1及び2で得た複層構造シート、従来例1及び参考例1で得た電解紙を用いた160WVのアルミ電解コンデンサの不良率の測定結果を図1に示す。図1は160WVのアルミ電解コンデンサのセパレータの厚さとエージング後の不良率の関係を抽出して示したプロット図である。
図1に示すように、実施例1で得られた厚さ14.9μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は1.1%、実施例2で得られた厚さ15.7μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0.2%だった。従来例1で得られた
厚さ25.3μmの長網一重紙を用いたアルミ電解コンデンサの不良率は1.4%であった。0.3g/m2のセルロースフィルム層を持つ実施例1は従来例1と比較してセパレータ厚さを約41%薄くしたにも関わらず、不良率も従来例1より低減させることができた。さらに0.8g/m2のセルロースフィルム層を持つ実施例2は従来例1と比較してセパレータ厚さを約38%薄くしたにも関わらず、不良率を大幅に低下させることができた。
参考例1は実施例1及び2の基材として用いた厚さ15.1μmの長網一重紙であるが、この長網一重紙を用いたアルミ電解コンデンサの不良率は10.2%であった。実施例1及び2では参考例1の表面に1μm以下の薄いセルロースフィルム層を形成することで、セパレータ厚さをほとんど変化させることなく、耐ショート性を大幅に向上させることができた。
実施例1及び2で得た複層構造シート、従来例1及び参考例1で得た電解紙を用いた160WVのアルミ電解コンデンサの静電容量の測定結果を図2に示す。図2は160WVのアルミ電解コンデンサの静電容量とエージング後の不良率の関係を抽出して示したプロット図である。
セパレータが薄くなると同じサイズの素子において陽極アルミ箔の面積を増加することができるため、アルミ電解コンデンサの静電容量は増加する。図2に示す様に、従来例1で得られた厚さ25.3μmの長網一重紙を用いたアルミ電解コンデンサの静電容量は25.1μFであったが、実施例1で得られた厚さ14.9μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの静電容量は27.9μF、実施例2で得られた厚さ15.7μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの静電容量は27.7μFとなり、それぞれ約10%静電容量が向上した。
参考例1で得られた厚さ15.1μmの長網一重紙を用いたアルミ電解コンデンサは従来例1と比較して静電容量は実施例1及び2と同等程度向上したものの、不良率が高くなったため、実用上は使用することができない。従来例1と参考例1の関係からも明らかなように、アルミ電解コンデンサの高容量化と不良率低減は相反する特性がセパレータに要求されるが、本実施の形態例の複層構造シートを用いることでアルミ電解コンデンサの高容量化と不良率低減を両立させることが可能となった。
実施例1及び2で得た複層構造シート、従来例1及び参考例1で得た電解紙を用いた160WVのアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性(1kHz)の測定結果を図3に示す。図3は160WVのアルミ電解コンデンサの静電容量とインピーダンス特性(1kHz)の関係を抽出して示したプロット図である。
実施例1及び2で得られた複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの1kHzにおけるインピーダンスはそれぞれ6.12Ω、6.45Ωであった。従来例1で得られた長網一重紙を用いたアルミ電解コンデンサの1kHzにおけるインピーダンスは8.80Ωであった。
本実施の形態例に係る複層構造シートは、耐ショート性に優れるため、アルミ電解コンデンサ用セパレータとして、従来の電解紙よりも薄い複層構造シートを用いることができる。そのため極間距離が短くなり、インピーダンス特性を改善することができる。また、同サイズのコンデンサ素子を製作する場合は高容量化によるインピーダンス低減効果も発生するため、本実施の形態例の複層構造シートを使用することで高容量化と低インピーダンス化の効果を同時に得ることができる。
実施例3乃至9で得た複層構造シート、比較例1乃至4で得た複層構造シート、従来例2及び参考例2乃至4で得た電解紙を用いて、450WVのアルミ電解コンデンサを1000個製作し、不良率を計測し、インピーダンス及び静電容量を測定した。
実施例3乃至9及び比較例1乃至4で得た複層構造シート、従来例2及び参考例2乃至4で得た電解紙の諸物性及びアルミ電解コンデンサの評価結果を表2に示す。表2は実施例3乃至9、比較例1乃至4、従来例2及び参考例2乃至4の特性測定結果一覧を示す表である。
Figure 2013201406
実施例3乃至9及び比較例1乃至4で得た複層構造シート、従来例2及び参考例2乃至4で得た電解紙を用いた450WVのアルミ電解コンデンサの不良率の測定結果を図4に示す。図4は、450WVのアルミ電解コンデンサのセパレータの厚さとエージング後の不良率の関係を抽出して示したプロット図である。
図4に示すように、実施例3で得られた厚さ50.2μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0.3%、実施例4で得られた厚さ45.1μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0.4%であった。
従来例2で得られた厚さ58.8μmの長網円網二重紙を用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0.6%だった。実施例3及び4の複層構造シートを用いることで従来例2と比較し薄いセパレータを用いながらアルミ電解コンデンサの不良率を低減させることができた。また従来例2と同程度の厚さの実施例5で得られた厚さ60.1μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0%となった。
また、実施例3乃至5の基材として用いた参考例2の厚さ40.3μmの円網二重紙を用いたアルミ電解コンデンサの不良率は95.7%であった。参考例2の円網二重紙は高密度層を持たず厚さも約40μmと薄いため、450WVという高圧用アルミ電解コンデンサ用のセパレータとしては適さない。実施例3乃至5を用いたアルミ電解コンデンサの不良率はそれぞれ0.3%、0.4%、0%であり、基材にセルロースフィルム層を付与することでアルミ電解コンデンサの不良率を激減させることができた。
実施例3乃至5の複層構造シートは従来例2の長網円網二重紙と比較して、吸水度も優れる。吸水度の値が大きいとアルミ電解コンデンサ製造の際、電解液含浸工程での含浸時間を短くすることができ、生産性を向上させることができる。
セルロースフィルム層は非常に緻密で均一であり、また電解紙よりも高密度になるため、高密度電解紙よりも薄いセルロースフィルム層で同等以上の耐ショート性を持つ。電解紙と同等程度の厚さと耐ショート性を持つ本実施の形態例の複層構造シートと長網円網二重紙とを比較した場合、複層構造シートの方が高密度層を薄く、低密度層を厚くすることができる。
また、長網円網二重紙では長網抄紙機で抄紙された高密度層のみで耐ショート性を確保できない場合、円網抄紙機で抄紙する低密度層の密度を向上させてセパレータの全体を向上させ、耐ショート性を確保する場合がある。この場合、電解液の含浸性や保持量、インピーダンス特性はいずれも悪化する。
本実施の形態例の複層構造シートでは、セルロースフィルム層が十分な耐ショート性を持つため、低密度層は電解液の含浸性と保持量、インピーダンス特性を優先してより低密度の電解紙を使用することが可能になる。
実施例6で得られた厚さ45.3μmの複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0.1%であった。実施例6には参考例3の厚さ40.2μmの長網円網二重紙を基材として用いた。参考例3の長網円網二重紙は高密度層を有するが、今回評価に用いた450WVのアルミ電解コンデンサ用のセパレータとしては耐ショート性が不足するため、不良率は20.3%となった。
実施例6で付与したセルロースフィルム層の坪量は7.3g/m2であり、厚さは約5μmである。450WVのような電圧の高いアルミ電解コンデンサに使用される際においても、基材がある程度の耐ショート性を有する場合、薄いセルロースフィルム層を付与した複層構造シートとすることで耐ショート性を大幅に改善することができる。
実施例7で得られた厚さ36.4μmの複層構造シート、実施例8で得られた厚さ36.2.μmの複層構造シート、実施例9で得られた厚さ60.5μmの複層構造シートをそれぞれ用いたアルミ電解コンデンサの不良率は全て0%であった。実施例7乃至9で得られた複層構造シートには参考例4で得られた厚さ25.0μmの長網一重紙を基材として使用している。
実施例7は基材の片面に13.5g/m2のセルロースフィルム層を、実施例8は基材の両面にそれぞれ7.1g/m2のセルロースフィルム層を、実施例9は13.9g/m2のセルロースフィルム層の両面に基材を有している。いずれの形態でもアルミ電解コンデンサの不良率は0%となった。セルロースフィルム層の坪量が同じであれば、複層構造シートの形態は耐ショート性に影響しない。
実施例7乃至9の基材として用いた参考例4の長網一重紙の原料には溶剤紡糸レーヨンして使用している。参考例4の長網一重紙は、参考例2の円網二重紙と比較して厚さが薄く密度も低いが、緻密な紙層を持つためアルミ電解コンデンサの不良率は36.9%となり、参考例2で得られた円網二重紙を用いたアルミ電解コンデンサの不良率95.7%よりも低くなった。
実施例3と実施例7で得られた複層構造シートは、それぞれ参考例2と参考例4で得られた電解紙を基材として用い、セルロースフィルム層の坪量はともに13.5g/m2であるが、アルミ電解コンデンサの不良率は厚さが薄い実施例7の複層構造シートの方が実施例3よりも低くなった。本実施の形態例の複層構造シートの耐ショート性は基材の特性によっても影響される。
比較例1で得られたセルロースフィルム層の坪量が31.2g/m2である複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は0%だった。
比較例2で得られた硫酸塩含有量が11.3ppmである複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は39.4%、比較例3で得られた塩素含有量が2.2ppmである複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率は78.5%であった。比較例2及び3は参考例3で得られた長網円網二重紙を基材として用いており、セルロースフィルム層の坪量はそれぞれ20.7g/m2、25.6g/m2である。
同じく参考例3で得られた長網円網二重紙を基材として用いた実施例6のセルロースフィルム層の坪量は7.3g/m2で、アルミ電解コンデンサの不良率は0.1%だった。セパレータ中の塩素含有量が2ppmより多い、あるいは硫酸塩含有量が10ppmより多いとアルミ電解コンデンサの不良率が大幅に高くなる。
比較例4で得られた複層構造シートには、ビスコース法で製作したセルロースフィルムを用いた。複層構造シートの塩素含有量および硫酸塩含有量が多かったため、アルミ電解コンデンサの不良率は100%となった。本実施の形態例の複層構造シートのセルロースフィルム層にビスコース法で製作したセルロースフィルム層は適さない。
実施例3乃至9及び比較例1乃至4で得た複層構造シート、従来例2及び参考例2乃至4で得た電解紙を用いた450WVのアルミ電解コンデンサの不良率の測定結果を図5に示す。図5は450WVのアルミ電解コンデンサの静電容量とエージング後の不良率の関係を抽出して示したプロット図である。
前述したように、セパレータが薄くなると同じサイズの素子において陽極アルミ箔の面積を増加することができるため、アルミ電解コンデンサの静電容量は増加する。アルミ電解コンデンサのセパレータを、従来例2で得られた厚さ58.8μmの長網円網二重紙から参考例3で得られた厚さ40.2μmの長網円網二重紙に置き換えた場合、アルミ電解コンデンサの静電容量は約17%向上したが、不良率も0.6%から20.3%まで上昇した。
実施例3及び4、6乃至9の複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサはいずれも不良率を悪化させることなく静電容量を増加させることができた。静電容量を増加させるために電解紙の厚さを薄くした場合、一般的にはアルミ電解コンデンサの不良率は悪化するが、本実施の形態例の複層構造シートを用いることでアルミ電解コンデンサの高容量化と不良率低減を両立させることが可能となった。
実施例3乃至9及び比較例1乃至4で得た複層構造シート、従来例2及び参考例2乃至4で得た電解紙を用いた450WVのアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性(1kHz)の測定結果を図6に示す。図6は450WVのアルミ電解コンデンサの静電容量とインピーダンス特性(1kHz)の関係を抽出して示したプロット図である。
実施例5で得られた複層構造シートのセルロースフィルム層の坪量は29.5g/m2、比較例1で得られた複層構造シートのセルロースフィルム層の坪量は31.2g/m2である。実施例5と比較例1はともに参考例2の円網二重紙を基材として用いており、また複層構造シートの厚さはともに約60μmである。
実施例5で得られた複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサ、比較例1で得られた複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサのインピーダンスはそれぞれ37.96Ω、47.29Ωとなった。従来例2で得られた厚さ58.8μmの長網円網二重紙を用いたアルミ電解コンデンサのインピーダンスは46.33Ωであった。セルロースフィルムの坪量が多くなるとアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性は二次関数的に悪化するため、セパレータとして実用可能なセルロースフィルムの坪量は30g/m2以下である。
実施例3乃至9で得られた複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサは、従来例2で得られた長網円網二重紙を用いたアルミ電解コンデンサと比較して、インピーダンスが低下し、静電容量が向上した。160WVのアルミ電解コンデンサの場合と同様に、本実施の形態例の複層構造シートは耐ショート性に優れるため、従来の電解紙よりも薄い複層構造シートを用いることができ、また同サイズの素子を製作する場合は高容量化によるインピーダンス低減効果も発生するため、本実施の形態例の複層構造シートを使用することで高容量化と低インピーダンス化の効果を同時に得ることができた。
実施例3乃至5で得られた複層構造シートは参考例2の円網二重紙を、実施例6で得られた複層構造シートは参考例3の長網円網二重紙を、実施例7乃至9で得られた複層構造シートは参考例4の長網一重紙をそれぞれ基材として用いている。同一の基材を用いた場合、静電容量が大きくなるほど、インピーダンス特性は改善する傾向があった。
また参考例4の長網一重紙を用いたアルミ電解コンデンサは、参考例2の円網二重紙や参考例3の長網円網二重紙を用いた場合と比較して、インピーダンスは低かった。参考例4の長網一重紙を用いた実施例7乃至9の複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサのインピーダンスも参考例2及び3を基材とした他の実施例よりも低い傾向があった。すなわち、アルミ電解コンデンサのインピーダンス特性には基材の特性も影響する。
実施例10乃至13で得た複層構造シートの諸物性及びアルミ電解コンデンサの評価結果を表3に示す。表3は実施例10乃至13の特性測定結果一覧を示す表である。
Figure 2013201406
実施例10乃至13は合成繊維からなる紙又は不織布を基材として用いた複層構造シートである。実施例10乃至13で得られた複層構造シートを用いたアルミ電解コンデンサの不良率はそれぞれ0.2%、0.4%、0.4%、0.3%となり、表2に示す従来例2で得られた長網円網二重紙を用いたアルミ電解コンデンサの不良率0.6%よりも低くなった。
合成繊維を用いた紙又は不織布を基材として用いた場合でも、電解紙を用いた場合と同等程度の耐ショート性を持つ複層構造シートを得ることができる。また、インピーダンス特性は実施例3乃至9で得られた電解紙を基材として用いたアルミ電解コンデンサと同等範囲内となり、従来例2で得られた長網円網二重紙よりも低くなった。
本実施の形態例及び実施例等から明らかな様に、セルロース材料を溶解しセルロースを分子鎖レベルに分離した後にセルロースを再生するため、非常に緻密で均一なセルロースフィルム層を作製することができる。またセルロースフィルム層は高密度の電解紙と異なり空隙部分が存在しないため、電解紙と比べてさらなる高密度化が可能となる。そのため本実施の形態例により得られる複層構造シートは基材と比べて、緻密性、均一性、密度が向上するため、耐ショート性は大幅に向上する。
アミンオキシド系溶媒を用いて製作した再生セルロースは製法上、アルミ電解コンデンサの陽極酸化皮膜を腐食する不純物を含有しない。そのため、基材として不純物の少ない紙又は不織布を用いることで、アルミ電解コンデンサ用セパレータとして使用可能な塩素含有量が2ppm以下かつ硫酸塩含有量が10ppm以下の複層構造シートを得ることができる。
アミンオキシド系セルロース溶液からセルロースを凝固再生する際には、化学反応を伴わないためビスコース法のようにガスが発生せず、セルロースフィルム層中に気泡を含まない。そのため薄いセルロースフィルム層でもピンホールは存在せず、アルミ電解コンデンサ用セパレータとしての耐ショート性を確保できる。
本実施の形態例は基材上でセルロースを再生する方法や基材表面のセルロースの一部を溶解しフィルム層として再生する方法を用いることができるため、坪量が0.5g/m2未満のセルロースフィルム層を持つ複層構造シートを製作することも可能である。またセルロースを含む材料で構成された基材の表面を溶解してセルロースフィルム層を形成することもでき、その場合は基材よりも薄い複層構造シートを得ることができる。
本実施の形態例の複層構造シートは、基材の機械的強度をセルロースフィルム層が補強する形になるため、0.5g/m2以下のわずかなセルロースフィルム層を付与した場合でも耐ショート性の向上効果が発現する。一方、坪量が30g/m2以上のセルロースフィルム層を付与した場合はアルミ電解コンデンサのインピーダンス特性が悪化する。
複層構造シートの耐ショート性は、セルロースフィルム層の坪量に大きく依存し、複層構造シートを製作する方法には依存しない。セルロースフィルム層は非常に緻密かつ均一、高密度であるため、電解紙と比較して耐ショート性に優れる。電解紙よりも薄い複層構造シートで同等の耐電圧を確保できるため、アルミ電解コンデンサの小形化及び/又は高容量化を実現できる。また電解紙と同じ厚さの複層構造シートを用いた場合、耐ショート性が大幅に向上するため、アルミ電解コンデンサの不良率低減や高耐電圧化を実現することができる。
本実施の形態例では低密度紙や低密度層を持つ紙、不織布を基材として使用することができるため、含浸速度に優れた複層構造シートを製作することができる。また、含浸速度に優れるため、アルミ電解コンデンサ製造の際に含浸時間を短縮することができ、生産性が向上する。
中高圧用アルミ電解コンデンサ用セパレータとして用いられる長網円網二重紙は、高密度層のみで耐ショート性を確保できない場合、低密度層の密度を向上させてセパレータ全体として耐ショート性を確保する場合がある。この場合、電解液の含浸性や保持量、インピーダンス特性はいずれも悪化する。
本実施の形態例の複層構造シートでは、セルロースフィルムで構成された高密度層が十分な耐ショート性を持つため、低密度層は電解液の含浸性と保持量、インピーダンス特性を優先してより低密度の基材を使用することが可能になる。
また、基材の特性が複層構造シートの電解液含浸性や耐ショート性、インピーダンス特性に影響するため、適切な基材を選択することで、任意の特性を持つ複層構造シートを製作することができる。
また、セルロース系繊維、動物繊維、無機繊維、あるいはポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、半芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリケトン繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリ尿素繊維などの合成繊維からなる紙又は不織布を使用することによっても、本実施の形態例の複層構造シートを製作することができる。これらの合成繊維等からなる紙又は不織布を基材として用いた場合、基材の合成繊維等の性質を利用したセパレータ、例えば耐熱性に極めて優れたセパレータなどを製作することができる。

Claims (8)

  1. 再生セルロースからなるセルロースフィルム層と基材とを含有した複層構造シートであって、
    前記複層構造シートのセルロースフィルム層が、アミンオキシド系溶媒にセルロースを溶解し再生することにより得られたセルロースフィルム層であることを特徴とするアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  2. 前記複層構造シートが、前記基材の少なくとも片側に前記セルロースフィルム層を有する構造であることを特徴とする請求項1記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  3. 前記複層構造シートが、前記セルロースフィルム層を前記基材で挟持した構造であることを特徴とする請求項1記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  4. 前記複層構造シートが、前記基材を前記セルロースフィルム層で挟持した構造であることを特徴とする請求項1記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  5. 前記アミンオキシド系溶媒は、主成分がN‐メチルモルホリン‐N‐オキシドであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  6. 前記セルロースフィルム層の坪量が30g/m2以下であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  7. 前記基材が製紙用原料として使用可能な植物由来のパルプ、再生セルロース繊維、セルロース系繊維、動物繊維、無機繊維、合成繊維の少なくとも一種類からなる、紙又は不織布であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  8. 請求項1乃至7いずれかに記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータを用いたことを特徴とする電解コンデンサ。
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