JP6338449B2 - アルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサ - Google Patents

アルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、本発明は陽極箔と陰極箔との間に電解液を介在させて構成したアルミ電解コンデンサに使用されるアルミ電解コンデンサ用セパレータ、及びこのセパレータを有するアルミ電解コンデンサに係わる。
一般に、電解コンデンサ、特にアルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間にセパレータとして、電解紙を介在させてコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子に電解液を含浸させ、封口して製作している。
コンデンサの静電容量は、下記式(1)で表される。
C=ε・ε・S/d・・・式(1)
C:静電容量(F)
ε:真空の誘電率(8.85×10−12
ε:誘電体の比誘電率(F/m)
S:電極の面積(m
d:電極間の距離(m)
アルミ電解コンデンサでは、コンデンサ素子中のセパレータに電解液を含浸させることにより、セパレータに含浸させた電解液が真の陰極となり、陽極アルミ箔の表面に電解酸化(化成)によって形成された極めて薄い陽極酸化皮膜(Al)が誘電体となる。
比誘電率[式(1)のε]は誘電体の種類に依存するため、アルミ電解コンデンサの静電容量[式(1)のC]を大きくするためには、電極の面積[式(1)のS]を大きくし、電極間の距離[式(1)のd]を小さくすることが有効である。酸化皮膜は単位厚み当たりの耐電圧が高く、また任意の厚みの酸化皮膜を形成できるため、アルミ電解コンデンサは、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどの他のコンデンサに比べて電極間の距離dが小さい。
また、アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔をエッチングすることにより、見かけ面積に比べて実効面積を20〜120倍程度に拡大できるため、電極の面積Sが大きい。
従って、アルミ電解コンデンサは、他のコンデンサに比べて小形かつ大容量を実現できることが最大の特徴となっている。
アルミ電解コンデンサの電解液としては、通常エチレングリコール(EG),ジメチルホルムアミド(DMF)又はγ−ブチロラクトン(GBL)などを溶媒とし、これらの溶媒に溶質として硼酸やアジピン酸、マレイン酸、又はこれらのアンモニウム塩などを溶解したものを用いる。この電解液をコンデンサ素子の両端から含浸させて、コンデンサを製作している。
セパレータの役割は、陽極箔と陰極箔の間に介在し、電解液を保持すると共に、陽極箔と陰極箔の短絡を防止することが要求される。さらに、セパレータには、良好なイオン透過性を持ち、電解液を長期間にわたり保持し、化学的に安定であって電極箔を腐食するような不純物を含有しないことも要求される。
一般に、アルミ電解コンデンサ用セパレータには、構成材料としてセルロースが用いられる。
セルロースは、植物細胞壁の主成分であり、リグニン、ヘミセルロースと共存して植物体を支える役割をする多糖類である。セルロースは、熱及び種々の溶媒に対し安定である。
また、セルロースは、分子内に親水性の水酸基と親油性のメチン基を持っており、水及び有機溶媒に対して良好な濡れ性を示す。
パルプとなる植物繊維は、ミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維の集合体であり、繊維の比表面積が大きく、また、繊維の内部にも水や有機溶媒が浸透できる。これらの繊維を堆積したシートは、良好な親溶媒性を有し、また繊維の微細な隙間があることからイオン透過性が良好で、更に長期にわたり溶媒を保持することができる。
また、セルロースは、セルロース分子が有する水酸基の相互作用によって水素結合を生じるので、セルロース分子間あるいは互いの繊維間を結合し、繊維間を接着するバインダー成分を使用することなく、強度の高いシートを得られることができる。
このような理由から、セルロースでできたシートは、アルミ電解コンデンサ用セパレータに適しており、アルミ電解コンデンサ用セパレータには、木材や非木材などからサルフェート(クラフト)法、サルファイト法あるいはアルカリ法によって蒸解し抽出された天然植物繊維である製紙用化学パルプが用いられてきた。
化学パルプに使用する植物は、特に種類を限定せず、木材パルプでは、トウヒ、モミ、マツ、ツガなどの針葉樹やブナ、ナラ、カバ、ユーカリなどの広葉樹が利用できる。一方、非木材パルプでは、マニラ麻、サイザル麻、バナナ、パイナップルなどの葉脈繊維、コウゾ、三椏、ガンピ、ジュート、ケナフ、ヘンプ、フラックス、などのジンピ繊維、エスパルト、竹、バガス、稲ワラ、麦ワラ、アシなどの禾(カ)本科植物繊維、綿、リンター、カポックなどの種毛繊維、椰子などの果実繊維、その他の植物としてイグサやサバイ草など種々の植物が利用できる。
近年、電気・電子機器のグローバル化や省エネルギーのためのインバータ化が進み、また、太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギー関連の需要が拡大している。これらの機器に使用されるアルミ電解コンデンサには、400WVを超える電圧が求められるようになってきた。更に、これらの機器にはメンテナンス頻度が少ないことが強く望まれており、これらの機器に使用されるアルミ電解コンデンサには、長寿命であること、特にはESR性能が良いコンデンサが求められるようになってきた。
400WVを超える電圧でESR性能が良いアルミ電解コンデンサを得るためには、セパレータの厚さ及び密度が関係する。セパレータを厚くすると、耐電圧特性を向上させることができ、電解液の保液性改善やエージングショートを防止する上でも有効である。しかし、セパレータを厚くすると、陽極箔と陰極箔との距離が大きくなり、ESRの上昇に繋がる。また、コンデンサの容量を確保するには、所定の面積の電極箔を巻回する必要があり、厚いセパレータを使用して所定の容量を確保しようとすると、コンデンサ素子が大径化し、ケースに収容できなくなるなどの不具合が発生する。一方、セパレータの密度を高くすると、耐電圧特性の向上には有効であるが、セパレータを構成する繊維間の空隙が減少するためESR性能は低下する。
特許文献1では、高密度層を厚さ10.0〜50.0μm、密度0.880〜1.000g/cmとし、低密度層を厚さ10.0〜50.0μm、密度0.200〜0.400g/cmの範囲として、これら高密度層と低密度層を重ねた構成とすることが開示されている。
この特許文献1では、高密度層の密度を0.880〜1.000g/cmに上げることで、高い耐電圧を得て、それにESR性能に優れる低密度層と組み合わせることで、セパレータ全体として従来よりも高い耐電圧と低いESR性能を実現しているものの、前述したように高密度層は繊維間の空隙が減少するため、ESRの悪化は避けられない。そのため、ESR性能に優れる低密度層と組み合わせても、コンデンサのESR性能の向上は十分とはいえなかった。
特開平6−168848号公報
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、セパレータを高密度化しても、ESRの悪化を防ぐことで、耐電圧特性、及びESR特性の優れたセパレータを提供するものである。また、本発明は、このセパレータを用いることで、アルミ電解コンデンサのESR特性の向上と、エージングショート不良率の低減を可能にする、アルミ電解コンデンサを提供するものである。
本願の発明者は、アルミ電解コンデンサ用セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの高密度層をもつセパレータを構成する部材の表面電位に着目し、セルロース繊維であるパルプを主体とするセパレータ構成材料の表面電位の指標として、ゼータ電位を用いた。
本発明では、使用するパルプのろ水度は「JIS P8121−2 パルプ−ろ水度試験法−第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定した値を用いた。
カナダ標準ろ水度は、カナダ標準ろ水度計のサイドオリフィスから集めたろ水の容量をmlで表したものである。具体的には直径0.5mm孔を1cm2当たり97個持つふるい板上に形成された繊維マットを通過して、計測漏斗の中のサイドオリフィスから排出されるろ水の量を測定する。
パルプは叩解により微細化される。当該微細化されたパルプをふるい板上でろ過しようとすると、ふるい板上に形成される初期に堆積する繊維マットの影響を受け、その後、通過しようとするパルプ懸濁液の抵抗が大きくなるため、叩解によりパルプを微細化していくと、ろ水度の値は次第に小さくなり、0mlとなる。
ここで、叩解を更に進めると、ふるい板の孔を通過する程度の微細な繊維が増加し、ろ水度の値は上昇に転じる。
上述した、ろ水度の変化を図示すると、図10のようになる。図10において、横軸は叩解時のエネルギー(E)と時間(T)の積を示し、縦軸はCSF(ml)の値を示す。
図10のaの状態では、CSFの値が800mlである。aの状態から、叩解によりパルプが微細化されることにより、ろ水度の値が次第に小さくなり、いったん0ml(bの状態)まで低下する。その後、叩解を進めることにより、ふるい板の孔を通過する程度の微細な繊維が増加することによって、CSFの値は上昇に転じる。そして、図10のcの状態では、CSFの値が800mlまで上昇している。
本発明では、CSFの値が一旦0ml(下限値;図10のbの状態)まで低下した後、更に叩解を進め、CSFの値が上昇に転じた原料を使用する。具体的にはパルプのろ水度は0ml(図10のbの状態)〜800ml(図10のcの状態)である。
そして、0.700〜1.400g/cmの密度の層を少なくとも1層有するセパレータを使用するアルミ電解コンデンサにおいて、0.700〜1.400g/cm3の密度の層のゼータ電位の絶対値を50.0mVよりも小さくすることにより、セパレータの密度が高くてもESR性能の良いコンデンサが得られることを見いだした。
従って、0.700〜1.400g/cmの密度の層を少なくとも1層有するセパレータであっても、ゼータ電位の絶対値を0〜50.0mVにすることで、エージングショート不良率を抑制し、なおかつ低ESRであるコンデンサを実現できることを見出した。
通常、植物から得られるセルロースを主体とするパルプは、繊維表面にアニオン性官能基であるカルボキシル基などを有している。セルロース繊維を水に分散させた場合、繊維の表面電位はアニオン性官能基によりマイナスを示す。アルミ電解コンデンサ用セパレータはこれらのパルプを原料とするが、耐電圧特性に優れた高密度層を得るためにパルプを叩解した場合、パルプは叩解により、内部フィブリル化を経て、外部フィブリル化が起こり、繊維径が1μm以下の極めて小さい無数のミクロフィブリルが発生する。この時、パルプ中に含まれるアニオン性官能基がミクロフィブリルの表面に多く露出し、電位はマイナス側に大きく移行する。
針葉樹クラフトパルプやマニラ麻パルプを、叩解機で叩解の程度を示すJISP8121−2によるCSF(Canadian Standard Freeness)10ml程度まで叩解したセルロース繊維表面のゼータ電位は、約−50.0〜−60.0mVである。セパレータの耐電圧特性を確保する目的で、より密度の高いセパレータを得るために叩解を進めていくと、ゼータ電位の絶対値はさらに大きくなる。
アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間にセパレータとして、電解紙を介在させてコンデンサ素子を作製し、このコンデンサ素子に電解液を含浸させて作成しているが、電解液中に含まれる溶質イオンがセパレータ中を透過することにより、その性能を発揮する。ゼータ電位の絶対値が大きいセパレータをアルミ電解コンデンサ用セパレータとして使用した場合、セパレータに含浸された電解液中の溶質から電離したイオンはセパレータ内部を移動する時に繊維の表面に存在するアニオン性官能基の電位の影響を受け、電解質イオンの透過が阻害される。
セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくする、言い換えると繊維表面の電位を小さくすることで、電解質イオン透過時の阻害を抑制し、耐電圧性能を向上させるために密度を高くしたセパレータであっても、ESR性能の良いアルミ電解コンデンサが実現可能である。
アルミ電解コンデンサ用セパレータを製造するには、密度を制御するために所定のCSFに叩解した各種パルプの水分散体をろ過することでウェブを得て、その後乾燥してシートを製作する。
ここで、叩解が進み表面電位が絶対値で大きくなったミクロフィブリル繊維は、水中で互いに強く反発しながら分散している。この様な状態で得られたシートに、カチオン性官能基をもつ物質を導入することで、セパレータのゼータ電位を制御することが可能となる。
即ち、本発明のアルミ電解コンデンサ用セパレータは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔の間に介在させて、ショートの防止と駆動用電解液を含浸及び保持するために使用されるアルミ電解コンデンサ用セパレータであって、表面電位の指標であるゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVであり、かつ、密度が0.700g/cm〜1.400g/cmである層を、少なくとも1層有する構成である。
また、本発明のアルミ電解コンデンサは、上述したアルミ電解コンデンサにおいて、セパレータとして本発明のアルミ電解コンデンサ用セパレータを用いた構成である。
ものである。
ゼータ電位の絶対値を0〜50.0mVとした、密度が0.700〜1.400g/cmの層を少なくとも1層有する、本発明のアルミ電解コンデンサ用セパレータは、優れたESR性能と耐電圧特性を示す。
また、本発明のアルミ電解コンデンサ用セパレータを使用した、本発明のアルミ電解コンデンサは、ESR性能の向上及びエージングショート不良率の低減を実現することができる。
アルミ電解コンデンサの一形態の概略断面図である。 図1のアルミ電解コンデンサのコンデンサ素子部分の構成を示す斜視図である。 本発明の第1の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)である。 本発明の第2の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)である。 図4のアルミ電解コンデンサに対する変形例の概略構成図(要部の断面図)である。 本発明の第3の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)である。 図6のアルミ電解コンデンサに対する変形例の概略構成図(要部の断面図)である。 本発明の第4の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)である。 図8のアルミ電解コンデンサに対する変形例の概略構成図(要部の断面図)である。 叩解時のエネルギーと時間の積に対する、ろ水度の変化を示す図である。
以下、発明を実施するための形態について説明する。
本発明では、セルロース繊維表面のゼータ電位に着目して、セパレータに使用するセルロース繊維表面のゼータ電位の絶対値を小さくする。特に、これにより、セパレータの性能を向上させることができる。
ゼータ電位の絶対値を小さくする手法としては、例えば、水に溶解あるいは分散させた時にプラスの電荷をもつ物質を用いる。このプラスの電荷をもつ物質(カチオン性の物質)を、セパレータに導入させて、セパレータを構成する繊維の表面に露出するイオン性を中和することで、ゼータ電位の絶対値を0〜50.0mVとする。
水に溶解あるいは分散させた時にプラスの電荷をもつ物質(カチオン性の物質)は、アルミ電解コンデンサの電極箔を腐食するような、塩素などのハロゲンや、硫酸イオン、硝酸イオンなどの腐食性イオンを含まない物質であればよく、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアミン系、ポリアミドエポキシ樹脂、カチオン性ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、特殊アルミナなどの物質が使用できる。これらの物質は、単独あるいは複数を組み合わせても良い。また、カチオン性の物質は、上述した物質に限定されるものではない。
カチオン性の物質の付与は、抄紙工程にて各種パルプの水分散体に内添、定着させてもよく、また、シート化後乾燥前に噴霧したり、乾燥後に含浸塗工、あるいは塗工したりしても良い。
本発明のセパレータは、密度が0.700g/cm〜1.400g/cmである層(高密度層)が1層以上あれば良く、この高密度層のゼータ電位の絶対値を0〜50.0mVとする。高密度層を2層以上とする場合には、各高密度層のゼータ電位の絶対値を0〜50.0mVの範囲内とする。
高密度層の密度としては、0.750g/cm〜1.250g/cmの範囲がより好ましい。
密度が0.700g/cm未満の場合は、ゼータ電位の絶対値が0〜50mVの範囲であっても、セパレータの耐電圧特性が低下し、コンデンサのエージングショート不良率が悪化するので、改善効果が十分とは言えない。
密度が1.400g/cmを超える場合は、ゼータ電位の絶対値が0〜50mVの範囲であっても、セパレータを構成する繊維間の空隙が減少し、ESR性能の低下に影響し、ESRの改善効果は十分とは言えない。
本発明のセパレータは、さらに密度が0.700g/cm未満である層(低密度層)を有していても良い。即ち、1層の高密度層のみ、高密度層と低密度層の積層体、のどちらも可能である。なお、低密度層のゼータ電位は特に限定されない。
高密度層と低密度層の積層体の場合に、高密度層と低密度層の少なくとも一方を2層以上設けて、合計3層以上としても良い。
また、積層体の一端の層が高密度層で他端の層が低密度層である場合、陽極アルミ箔側を高密度層としても、陽極アルミ箔側を低密度層としても、どちらでも構わない。
本発明のセパレータの高密度層には、各種の繊維を使用することが可能である。この高密度層に使用する材料としては、例えば、針葉樹や広葉樹などの木材や、マニラ麻、サイザル麻、亜麻、フラックス、ヘンプ、コットンリンター、ジュート、ケナフ、エスパルト、竹、バガス、などの非木材繊維をクラフト法(サルフェート法)、サルファイト法、ソーダ法によりパルプ化したものを使用することができる。これらのパルプは1種あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明ではCSFの値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じた原料を使用する。具体的には、パルプのろ水度はCSF値で0〜800mlである。
パルプのろ水度は、CSF値で150〜800mlの範囲であることがより好ましい。
CSFの値が0ml(下限値)までであれば、ゼータ電位の絶対値が0〜50mVの範囲であっても、セパレータの耐電圧特性が十分とは言えず、コンデンサのエージングショート不良率が悪化するので、改善効果が十分とは言えない。
また、セパレータの低密度層に使用する材料としては、例えば、針葉樹や広葉樹などの木材や、マニラ麻、サイザル麻、亜麻、フラックス、ヘンプ、コットンリンター、ジュート、ケナフ、エスパルト、竹、バガス、などの非木材繊維をクラフト法(サルフェート法)、サルファイト法、ソーダ法によりパルプ化したものや、溶剤紡糸セルロースやポリノジックレーヨンなどの再生セルロース繊維などを使用することができる。これらの材料は1種あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
また、高密度層及び低密度層に使用する材料は、上述した材料に限定されるものではない。
本発明のアルミ電解コンデンサ用セパレータ及び本発明のアルミ電解コンデンサは、各種の形態のアルミ電解コンデンサに適用することが可能である。
例えば、陽極及び陰極にそれぞれリード線を接続したリード形や、陽極及び陰極にそれぞれ端子を接続して、この端子を介して回路基板に直接接続するチップ形の、いずれのアルミ電解コンデンサにも、本発明を適用することが可能である。
ここで、本発明を適用することが可能なアルミ電解コンデンサとして、アルミ電解コンデンサの一形態の概略断面図を、図1及び図2に示す。
図1はアルミ電解コンデンサの断面図であり、図2は図1のコンデンサ素子部分を示す斜視図である。図1及び図2に示すアルミ電解コンデンサは、前述したリード形のアルミ電解コンデンサである。
図1に示すアルミ電解コンデンサ10は、駆動用電解液が含浸されている、コンデンサ素子5を有して成る。そして、アルミ電解コンデンサ10は、コンデンサ素子5を有底筒状のアルミニウムから成るアルミケース7に収容し、アルミケース7の開口部をゴムパッキン6で封止している。また、アルミケース7の外側を、スリーブ9が覆っている。
コンデンサ素子5には、2本のリード線1が接続されている。リード線1は、コンデンサ素子5に接合された棒状の接合部と、半田付け可能な外部引出部8とからなる。リード線1の接合部は、ゴムパッキン6で封止されている。
また、コンデンサ素子5は、図2に示すように、陽極アルミ箔2と陰極アルミ箔3との間にセパレータ紙4を介在させて、これらを巻回させて成る。陽極アルミ箔2と陰極アルミ箔3には、それぞれ、リード線1が接続されている。
図1及び図2に示すアルミ電解コンデンサ10に、本発明を適用する場合には、コンデンサ素子5のセパレータ紙4を、本発明のアルミ電解コンデンサ用セパレータの構成とする。即ち、セパレータ紙4を、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVであり、かつ、密度が0.700g/cm〜1.400g/cmである層(高密度層)を、少なくとも1層有する構成とする。
続いて、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)を、図3に示す。
この第1の実施の形態は、セパレータを1層の高密度層のみとした構成である。
図3に示すように、アルミ電解コンデンサ20は、表面に酸化皮膜12を誘電体として形成した陽極アルミ箔11と陰極アルミ箔13との間に、セパレータ14が配置されている。
このセパレータ14は、1層の高密度層15のみで構成され、電解液が含浸されている。
高密度層15は、0.700g/cm〜1.400g/cmの範囲内の密度を有し、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である。
この高密度層15には、前述した高密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。より好ましくは、高密度層15に、CSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じたCSF0〜800mlの範囲まで叩解されたパルプを使用する。
上述の本実施の形態によれば、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である高密度層15を有するセパレータ14を用いて、アルミ電解コンデンサ20が構成されている。
これにより、セパレータ14の耐電圧特性及びESR特性が優れており、このセパレータ14を備えたアルミ電解コンデンサ20において、ESR性能の向上及びエージングショート不良率の低減を実現することができる。
なお、図3ではセパレータ14と酸化皮膜12、陰極アルミ箔13が接触していないが、これらが接触する場合もある。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)を、図4に示す。
この第2の実施の形態は、セパレータが1層の高密度層と1層の低密度層を積層した構成である。
図4に示すように、アルミ電解コンデンサ30は、表面に酸化皮膜22を誘電体として形成した陽極アルミ箔21と陰極アルミ箔23との間に、セパレータ24が配置されている。
このセパレータ24は、1層の高密度層25と1層の低密度層26が積層されて構成され、電解液が含浸されている。そして、このセパレータ24は、その高密度層25が陽極アルミ箔21側に配置され、その低密度層26が陰極アルミ箔23側に配置されている。
高密度層25は、0.700g/cm〜1.400g/cmの範囲内の密度を有し、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である。
この高密度層25には、前述した高密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。より好ましくは、高密度層25に、CSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じたCSF0〜800mlの範囲まで叩解されたパルプを使用する。
低密度層26は、0.700g/cm未満の密度を有する。この低密度層26には、前述した低密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。
上述の本実施の形態によれば、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である高密度層25を有するセパレータ24を用いて、アルミ電解コンデンサ30が構成されている。
これにより、セパレータ24の耐電圧特性及びESR特性が優れており、このセパレータ24を備えたアルミ電解コンデンサ30において、ESR性能の向上及びエージングショート不良率の低減を実現することができる。
(第2の実施の形態の変形例)
図4のアルミ電解コンデンサ30では、セパレータ24の陽極アルミ箔21側を高密度層25としていた。
これに対して、図5に示すように、セパレータ24の配置を図4とは逆にして、陽極アルミ箔側を低密度層26とした、アルミ電解コンデンサ30Aを構成することも可能である。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)を、図6に示す。
この第3の実施の形態は、セパレータが2層の高密度層と1層の低密度層を交互に積層した構成である。
図6に示すように、アルミ電解コンデンサ40は、表面に酸化皮膜32を誘電体として形成した陽極アルミ箔31と陰極アルミ箔33との間に、セパレータ34が配置されている。
このセパレータ34は、2層の高密度層35,37と1層の低密度層36が交互に積層されて構成され、電解液が含浸されている。
高密度層35,37は、0.700g/cm〜1.400g/cmの範囲内の密度を有し、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である。なお、高密度層35と高密度層37は、各層の密度及びゼータ電位がこの範囲内であれば、異なる構成とすることも可能である。
これらの高密度層35,37には、それぞれ前述した高密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。より好ましくは、高密度層35,37に、CSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じたCSF0〜800mlの範囲まで叩解されたパルプを使用する。
低密度層36は、0.700g/cm未満の密度を有する。この低密度層36には、前述した低密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。
上述の本実施の形態によれば、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である高密度層35,37を有するセパレータ34を用いて、アルミ電解コンデンサ40が構成されている。
これにより、セパレータ34の耐電圧特性及びESR特性が優れており、このセパレータ34を備えたアルミ電解コンデンサ40において、ESR性能の向上及びエージングショート不良率の低減を実現することができる。
(第3の実施の形態の変形例)
図6のアルミ電解コンデンサ40では、セパレータ34を、2層の高密度層35,37と1層の低密度層36を交互に積層した構成としていた。
これに対して、図7に示すように、セパレータ34の配置を図6とは逆にして、1層の高密度層35と2層の低密度層36,38を交互に積層した、アルミ電解コンデンサ40Aを構成することも可能である。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態のアルミ電解コンデンサの概略構成図(要部の断面図)を、図8に示す。
この第4の実施の形態は、セパレータが2層の高密度層と2層の低密度層を交互に積層した構成である。
図8に示すように、アルミ電解コンデンサ50は、表面に酸化皮膜42を誘電体として形成した陽極アルミ箔41と陰極アルミ箔43との間に、セパレータ44が配置されている。
このセパレータ44は、2層の高密度層45,47と2層の低密度層46,48が交互に積層されて構成され、電解液が含浸されている。
高密度層45,47は、0.700g/cm〜1.400g/cmの範囲内の密度を有し、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である。なお、高密度層45と高密度層47は、各層の密度及びゼータ電位がこの範囲内であれば、異なる構成とすることも可能である。
これらの高密度層45,47には、それぞれ前述した高密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。より好ましくは、高密度層45,47に、CSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じたCSF0〜800mlの範囲まで叩解されたパルプを使用する。
低密度層46,48は、0.700g/cm未満の密度を有する。この低密度層46,48には、前述した低密度層用の各種の繊維を使用することが可能である。
上述の本実施の形態によれば、ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVの範囲内である高密度層45,47を有するセパレータ44を用いて、アルミ電解コンデンサ50が構成されている。
これにより、セパレータ44の耐電圧特性及びESR特性が優れており、このセパレータ44を備えたアルミ電解コンデンサ50において、ESR性能の向上及びエージングショート不良率の低減を実現することができる。
(第4の実施の形態の変形例)
図8のアルミ電解コンデンサ50では、セパレータ44を、2層の高密度層45,47と2層の低密度層46,48を交互に積層し、陽極アルミ箔41側を高密度層45とした構成としていた。
これに対して、図9に示すように、セパレータ44の配置を図8とは逆にして、2層の高密度層45,47と2層の低密度層46,48を交互に積層し、陽極アルミ箔41側を低密度層48とした、アルミ電解コンデンサ50Aを構成することも可能である。
〔セパレータ特性及びアルミ電解コンデンサの測定方法及び評価方法〕
実際にアルミ電解コンデンサ用セパレータ及びアルミ電解コンデンサを製作して、特性を調べた。本発明の実施例、本発明に対する比較例や参考例、従来公知の構成の従来例のセパレータ及びアルミ電解コンデンサを製作した。
各実施例、比較例、従来例及び参考例において説明するセパレータの測定方法、アルミ電解コンデンサの評価方法、各実験結果は以下の通りである。
(セパレータ特性)
厚さと密度は、「JIS C 2300−2電気用セルロース紙−第2部:試験方法」によって測定した。厚さの測定では、試料を10枚重ね、自動停止式の外側マイクロメータを用いて厚さを3点以上測定し、1枚当たりの平均値を算出し、試料の厚さとした。密度の測定では、B法(絶乾状態の密度を求める方法)に準じて測定を行った。
ゼータ電位は、「Muetek Analytic GmbH社製[SZP06]」を用いて、密度0.700〜1.400g/cmの層の試験片絶乾1.0gを500mlのイオン交換水に十分に離解しスラリーを作製する。そのスラリーを、0.5質量%塩化カリウム(KCl)水溶液で導電率0.20〜0.30mS/cmに調整して繊維の表面電荷量を測定し、この測定を3回繰り返して平均値を算出した。
(アルミ電解コンデンサの製作方法)
エッチング処理および酸化皮膜形成処理を行った陽極アルミ箔と陰極アルミ箔が接触しないようにセパレータを介在させて、捲回してコンデンサ素子を製作した。さらに、このコンデンサ素子に所定の電解液を含浸させ、ケースに入れた後に封口して、直径10〜45mm、高さ20〜30mm、定格電圧400〜450WVのアルミ電解コンデンサを製作した。
〔アルミ電解コンデンサのエージングショート不良率〕
各コンデンサ試料1000個について、定格電圧の約110%まで徐々に昇圧していき、エージングを行った。エージングショート、防爆弁の作動、液漏れ、封口部の膨れなどの外観異常も含めた不良コンデンサの個数を1000で除して百分率をもって不良率とした。
〔アルミ電解コンデンサのESR(等価直列抵抗)〕
アルミ電解コンデンサのESRは20℃、100kHzの周波数でLCRメータを用いて測定した。
(実施例1)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値800mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、プレス後の湿紙にポリアミドエポキシ樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で1.5質量%噴霧し、その後キャレンダー加工により厚さ15.3μm、密度1.395g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−0.2mVであった。
(実施例2)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値0mlとした、ヘンプパルプを用いて抄紙し、ポリエチレンイミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.1質量%内添し、厚さ30.5μm、密度0.706g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−44.0mVであった。
(実施例3)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値650mlとした、マニラ麻パルプを用いて抄紙し、ポリアクリルアミド樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で2.5質量%内添し、厚さ25.3μm、密度0.964g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−10.0mVであった。
(実施例4)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値450mlとした針葉樹クラフトパルプを用いて、厚さ25.0μm、密度0.850g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF600mlとしたマニラ麻パルプ50質量%とコットンリンターパルプ50質量%の混合原料を用いて、厚さ25.1μm、密度0.320g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ50.1μm、全体密度0.585g/cmの2層セパレータを製作した。次に、二次加工で、2層の高密度層側に、ポリエチレンイミン樹脂を高密度層の質量に対し固形分で1.0質量%塗工して乾燥し、全体厚さ50.1μm、全体密度0.589g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−48.0mVであった。
(実施例5)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値40mlとしたマニラ麻パルプを用いて、厚さ20.1μm、密度0.752g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF500mlとしたマニラ麻パルプ60質量%とヘンプパルプ40質量%の混合原料を用いて、厚さ50.9μm、密度0.738g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ71.0μm、全体密度0.742g/cmの2層セパレータを製作した。次に、二次加工で、カチオン化澱粉の希釈液を含浸塗布し、プレスロールでセパレータに対してカチオン化澱粉が固形分で1.0質量%になるように脱液調整後、乾燥し、全体厚さ71.0μm、全体密度0.749g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−25.0mVであった。
(実施例6)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値500mlとした広葉樹クラフトパルプを用いて、ポリアミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で3.0質量%内添し、厚さ20.1μm、密度0.901g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF400mlとしたコットンリンターパルプ70質量%と溶剤紡糸セルロース30質量%の混合原料を用いて、厚さ15.6μm、密度0.378g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ35.1μm、全体密度0.685g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は30.0mVであった。
(実施例7)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値150mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、ポリアクリルアミド樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.5質量%噴霧し、厚さ15.2μm、密度0.806g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−39.0mVであった。
(実施例8)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値720mlとした、マニラ麻パルプを用いて抄紙し、カチオン化澱粉の希釈液をパルプに対し固形分で1.0質量%内添し、その後、キャレンダー加工により、厚さ12.1μm、密度1.251g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−5.0mVであった。
(比較例1)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値790mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、プレス後の湿紙にポリアミドエポキシ樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.08質量%噴霧し、その後キャレンダー加工により厚さ15.1μm、密度1.393g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−54.0mVであった。
(比較例2)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値800mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、プレス後の湿紙にポリアミドエポキシ樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.1質量%噴霧し、その後キャレンダー加工により厚さ15.0μm、密度1.410g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−44.0mVであった。
(比較例3)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値10mlとした、ヘンプパルプを用いて抄紙し、ポリエチレンイミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.1質量%内添し、厚さ29.6μm、密度0.710g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−42.0mVであった。
(比較例4)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値0mlとした、ヘンプパルプを用いて抄紙し、ポリエチレンイミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.07質量%内添し、厚さ30.0μm、密度0.689g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−45.0mVであった。
(比較例5)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF5mlとした、マニラ麻パルプを用いて抄紙し、ポリアクリルアミド樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.1質量%内添し、その後キャレンダー加工により、厚さ25.6μm、密度0.950g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−40.0mVであった。
(比較例6)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値460mlとした針葉樹クラフトパルプを用いて、厚さ25.5μm、密度0.852g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF600mlとしたマニラ麻パルプ50質量%とコットンリンターパルプ50質量%の混合原料を用いて、厚さ25.1μm、密度0.306g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ50.0μm、全体密度0.582g/cmの2層セパレータを製作した。次に、二次加工で、2層の高密度層側に、ポリエチレンイミン樹脂を高密度層の質量に対し固形分で0.5質量%塗工して乾燥し、全体厚さ50.6μm、全体密度0.583g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−55.0mVであった。
(比較例7)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値38mlとしたマニラ麻パルプを用いて、厚さ20.5μm、密度0.749g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF500mlとしたマニラ麻パルプ60質量%とヘンプパルプ40質量%の混合原料を用いて、厚さ.μm、密度0.738g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ71.1μm、全体密度0.742g/cmの2層セパレータを製作した。次に、二次加工で、カチオン化澱粉の希釈液を含浸塗布し、プレスロールでセパレータに対してカチオン化澱粉が固形分で0.1質量%になるように脱液調整後、乾燥し、全体厚さ71.1μm、全体密度0.747g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−54.0mVであった。
(比較例8)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値504mlとした広葉樹クラフトパルプを用いて、ポリアミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で4.0重量%内添し、厚さ20.1μm、密度0.900g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF400mlとしたコットンリンターパルプ70質量%と溶剤紡糸セルロース30質量%の混合原料を用いて、厚さ15.6μm、密度0.378g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ34.7μm、全体密度0.680g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は56.0mVであった。
(比較例9)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値146mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、ポリアクリルアミド樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.08質量%噴霧し、厚さ15.0μm、密度0.798g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−52.0mVであった。
(比較例10)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値716mlとした、マニラ麻パルプを用いて抄紙し、カチオン化澱粉の希釈液をパルプに対し固形分で0.10質量%内添し、厚さ12.0μm、密度1.250g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−51.0mVであった。
(従来例1)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値790mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、プレス後の湿紙にポリアミドエポキシ樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.01質量%噴霧し、その後キャレンダー加工により厚さ15.0μm、密度1.388g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−60.0mVであった。
(従来例2)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値0mlとした、ヘンプパルプを用いて抄紙し、ポリエチレンイミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.06質量%内添し、厚さ30.4μm、密度0.710g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−57.0mVであった。
(従来例3)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値640mlとしたマニラ麻パルプを用いて抄紙し、ポリアクリルアミド樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.05重量%内添し、厚さ24.8μm、密度0.954g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−53.0mVであった。
(従来例4)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値460mlとした針葉樹クラフトパルプを用いて、厚さ24.6μm、密度0.853g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF600mlとしたマニラ麻パルプ50質量%とコットンリンターパルプ50質量%の混合原料を用いて、厚さ26.2μm、密度0.332g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ50.8μm、全体密度0.585g/cmの2層セパレータを製作した。次に、二次加工で、2層の高密度層側に、ポリエチレンイミン樹脂を高密度層の質量に対し固形分で0.1質量%塗工して乾燥し、全体厚さ50.8μm、全体密度0.585g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−56.0mVであった。
(従来例5)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値38mlとしたマニラ麻パルプを用いて、厚さ20.3μm、密度0.760g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF500mlとしたマニラ麻パルプ60質量%とヘンプパルプ40質量%の混合原料を用いて、厚さ50.2μm、密度0.745g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ70.5μm、全体密度0.749g/cmの2層セパレータを製作した。次に、二次加工で、カチオン化澱粉の希釈液を含浸塗布し、プレスロールでセパレータに対してカチオン化澱粉が固形分で0.08質量%になるように脱液調整後、乾燥し、全体厚さ70.5μm、全体密度0.755g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−56.0mVであった。
(従来例6)
長網円網抄紙機を使用し、長網部で叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値500mlとした広葉樹クラフトパルプを用いて、ポリアミン樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.05質量%内添し、厚さ20.1μm、密度0.897g/cmの層を抄紙し、円網部で叩解度CSF400mlとしたコットンリンターパルプ70質量%と溶剤紡糸セルロース30質量%の混合原料を用いて、厚さ14.9μm、密度0.416g/cmの層を抄紙して抄き合わせ、全体厚さ35.0μm、全体密度0.691g/cmの2層セパレータを製作した。この2層セパレータの密度0.700〜1.400g/cmの範囲の層のゼータ電位は−55.0mVであった。
(従来例7)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値148mlとした、針葉樹クラフトパルプを用いて抄紙し、ポリアクリルアミド樹脂の希釈液をパルプに対し固形分で0.05質量%噴霧し、厚さ15.1μm、密度0.800g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−54.0mVであった。
(従来例8)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じてCSF値730mlとした、マニラ麻パルプを用いて抄紙し、カチオン化澱粉の希釈液をパルプに対し固形分で0.05質量%内添し、厚さ12.1μm、密度1.250g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−58.0mVであった。
(参考例1)
長網抄紙機を使用し、叩解度をCSF値0mlとした、ヘンプパルプを用いて抄紙し、厚さ30.1μm、密度0.706g/cmのセパレータを製作した。このセパレータのゼータ電位は−61.0mVであった。
実施例1乃至8、比較例1乃至10、従来例1乃至8、参考例1で得られたセパレータの特性を、まとめて表1に示す。
Figure 0006338449
実施例1、比較例1乃至2、従来例1で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液のアルミ電解コンデンサ(400WV、22μF、φ10×20L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表2に示す。
Figure 0006338449
表2に示す通り、実施例1のセパレータのゼータ電位の絶対値は0.2mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.502Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.2%であった。ゼータ電位の絶対値が60.0mVである従来例1で製作したコンデンサのESRは2.100Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は2%であった。実施例1と従来例1を比較すると、実施例1は、ESR性能が大幅に向上しエージングショート不良率も低減している。これは、ゼータ電位の絶対値を小さくすることで、電離したイオンがセパレータ内部を移動する時に、繊維の表面に存在するアニオン性官能基の電位の影響を抑制するからである。また、ゼータ電位の絶対値を小さくすることで、シート形成時のミクロフィブリルの積層をより密にすることができている。
以上のことより、実施例1では、ESR性能の良いエージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例1のセパレータのゼータ電位の絶対値は54.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.002Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は3%であった。これは、従来例1と同等のレベルであり、実施例1のように改善されていないことが分かる。このことから、ゼータ電位の絶対値が54.0mV程度では、ESR性能とエージングショート不良率の改善効果がないことが明らかである。
また、比較例2のセパレータは、密度が1.410g/cm、ゼータ電位の絶対値は44.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.119Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.3%であった。従来例1と比較してエージングショート不良率は低減しているが、ESR性能は低下している。これはセパレータの密度が1.400g/cm以上の密度では、セパレータを構成する繊維間の空隙が減少しESR性能の低下に影響していることがわかる。このことから、セパレータのゼータ電位の絶対値を50.0mVより小さくしても、密度が1.400g/cm以上ではESRの改善効果は十分でないことがわかる。
実施例2、比較例3乃至4、従来例2、参考例1で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液のアルミ電解コンデンサ(400WV、400μF、φ15×20L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表3に示す。
Figure 0006338449
表3に示す通り、実施例2のセパレータのゼータ電位の絶対値は30.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.688Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.3%であった。従来例2のセパレータのゼータ電位の絶対値は57.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.036Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は3.0%であった。実施例2と従来例2を比較すると、実施例2は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能の良いエージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例3のセパレータは、叩解度CSF値が10ml、ゼータ電位の絶対値は42.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.719Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は10.0%であった。従来例2と比較してESR性能は向上しているがエージングショート不良率は悪化している。これは、セパレータの叩解度のCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じていないため、セパレータの耐電圧特性が低下しコンデンサのエージングショート不良率に影響していることがわかる。このことから、セパレータのゼータ電位の絶対値を50.0mVより小さくしても、叩解度のCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じていなければエージングショート不良率の改善効果が十分でないことがわかる。
また、比較例4のセパレータは、密度が0.689g/cm、ゼータ電位の絶対値は45.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.001Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は8%であった。従来例2と比較してESR性能は同等のレベルであるがエージングショート不良率は悪化している。これは、セパレータの密度が0.700g/cm以下のため、セパレータの耐電圧特性が低下しコンデンサのエージングショート不良率が悪化したことがわかる。このことから、セパレータのゼータ電位の絶対値を50.0mVより小さくしても、密度が0.700g/cm以下ではエージングショート不良率の改善効果が十分でないことがわかる。
更に、参考例1のセパレータのゼータ電位の絶対値は58.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.167Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は5%であった。従来例2と比較してESR性能もエージングショート不良率も悪化している。このことから繊維表面のゼータ電位の絶対値を小さくすることはESR性能の向上、エージングショート不良率の低減に有効であることがわかる。
実施例3、比較例5、従来例3で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液のアルミ電解コンデンサ(400WV、100μF、φ12.5×20L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表4に示す。
Figure 0006338449
表4に示す通り、実施例3のセパレータのゼータ電位の絶対値は10.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.873Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.2%であった。従来例3のセパレータのゼータ電位の絶対値は53.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.256Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は5.0%であった。実施例3と従来例3を比較すると、実施例3は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能の良いエージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例5のセパレータは、叩解度CSF値が5ml、ゼータ電位の絶対値は40.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.919Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は10.0%であった。従来例3と比較してESR性能は向上しているがエージングショート不良率は悪化している。これは、セパレータの叩解度のCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じていないため、セパレータの耐電圧特性が低下したことがコンデンサのエージングショート不良率に影響していることがわかる。このことから、比較例2と同様に、セパレータのゼータ電位の絶対値を50.0mVより小さくしても、叩解度のCSF値が一旦0ml(下限値)まで低下した後、更に叩解を進め、上昇に転じていなければエージングショート不良率の改善効果が十分でないことがわかる。
実施例4、比較例6、従来例4で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液のアルミ電解コンデンサ(400WV、820μF、φ30.0×50L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表5に示す。
Figure 0006338449
表5に示す通り、実施例4のセパレータのゼータ電位の絶対値は48.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.599Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.1%であった。従来例4のセパレータのゼータ電位の絶対値は56.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.886Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は2.0%であった。実施例4と従来例4を比較すると、実施例4は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能の良いエージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例6のセパレータのゼータ電位の絶対値は55.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.821Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は2%であった。これは、従来例4と同等のレベルであり、実施例4のように改善されていないことが分かる。このことから、ゼータ電位の絶対値が55.0mV程度では、ESR性能とエージングショート不良率の改善効果がないことが明らかである。
実施例5、比較例7、従来例5で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液のアルミ電解コンデンサ(450WV、82μF、φ45.0×50L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表6に示す。
Figure 0006338449
表6に示す通り、実施例5のセパレータのゼータ電位の絶対値は25.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.956Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.4%であった。従来例5のセパレータのゼータ電位の絶対値は55.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは3.387Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は1.0%であった。実施例5と従来例5を比較すると、実施例5は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能の良いエージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例7のセパレータのゼータ電位の絶対値は54.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは3.302Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は1%であった。これは、従来例5と同等のレベルであり、実施例5のように改善されていないことが分かる。このことから、ゼータ電位の絶対値が54.0mV程度では、ESR性能とエージングショート不良率の改善効果がないことが明らかである。
実施例6、比較例8、従来例6で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液におけるアルミ電解コンデンサ(450WV、820μF、φ30.0×50L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表7に示す。
Figure 0006338449
表7に示す通り、実施例6のセパレータのゼータ電位の絶対値は30.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.263Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は0.4%であった。従来例6のセパレータのゼータ電位の絶対値は55.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.569Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は3.0%であった。実施例6と従来例6を比較すると、実施例6は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能の良いエージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例8のセパレータは、ゼータ電位をプラス側の56.0mVにしたものであり絶対値は56.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.585Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は4%であった。これは、従来例6と同等のレベルであり、実施例6のように改善されていないことが分かる。このことから、ゼータ電位の絶対値が56.0mV程度では、ESR性能とエージングショート不良率の改善効果がないことが明らかである。
実施例7、比較例9、従来例7で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液におけるアルミ電解コンデンサ(450WV、560μF、φ25.0×50L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表8に示す。
Figure 0006338449
表8に示す通り、実施例7のセパレータのゼータ電位の絶対値は39.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.110Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は、0.5%であった。従来例7のセパレータのゼータ電位の絶対値は54.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.332Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は2.0%であった。実施例7と従来例7を比較すると、実施例7は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能が良好であり、エージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例9のセパレータのゼータ電位の絶対値は52.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは2.269Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は2%であった。これは、従来例7と同等のレベルであり、実施例7のように改善されていないことが分かる。このことから、ゼータ電位の絶対値が52.0mV程度では、ESR性能とエージングショート不良率の改善効果がないことが明らかである。
実施例8、比較例10、従来例8で得られたセパレータをそれぞれ使用して、エチレングリコール系電解液におけるアルミ電解コンデンサ(450WV、1000μF、φ30.0×50L)を製作した。そして、製作したアルミ電解コンデンサについて、ESR、エージングショート不良率を評価した。各試験の評価結果を、表9に示す。
Figure 0006338449
表9に示す通り、実施例8のセパレータのゼータ電位の絶対値は5.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.635Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は、0.1%であった。従来例8のセパレータのゼータ電位の絶対値は58.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.992Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は1.0%であった。実施例8と従来例8を比較すると、実施例8は、セパレータのゼータ電位の絶対値を小さくすることで、ESR性能が良好であり、エージングショート不良率を低減させたアルミ電解コンデンサができていることがわかる。
比較例10のセパレータのゼータ電位の絶対値は51.0mVである。このセパレータを用いて製作したコンデンサのESRは1.903Ω/100kHzであり、エージングショート不良率は1%であった。これは、従来例8と同等のレベルであり、実施例8のように改善されていないことが分かる。このことから、ゼータ電位の絶対値が51.0mV程度では、ESR性能とエージングショート不良率の改善効果がないことが明らかである。
(まとめ)
上述した様に、アルミ電解コンデンサにおいて、密度0.700〜1.400g/cmの層を有するセパレータであっても、表面電位の指標であるゼータ電位の絶対値を0〜50.0mVの範囲に制御すれば、コンデンサのESR性能の向上、ならびにエージングショート不猟率を低減することができる。
セパレータの耐電圧特性を向上させるためには、密度を高くする手法が採られるが、従来用いられてきたセパレータでは、セパレータの密度を高くすると、繊維表面のゼータ電位の影響を受けESRが悪化するが、本発明によれば、これらの問題を解決することが可能となる。
本発明のセパレータを用いれば、従来用いられてきたセパレータと同じ厚さ密度のものであれば、コンデンサのESR性能の向上、ならびにエージングショート不良率を低減可能にすることができる。更には、これまで実現できなかった領域のESR性能及びエージングショート不良率を実現できる可能性がある。
一方、従来用いられてきたセパレータよりも、より低密度であるセパレータ、あるいは、より薄いセパレータを使用することで、アルミ電解コンデンサの小形化、高容量化、低ESR化、長寿命化などを実現することができる。
また、コンデンサの製造においてはエージングショート不良率、市場ショートの改善もできることにより、歩留り向上、コスト削減などのメリットもある。
本発明は、上述の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
1 リード線、2,11,21,31,41 陽極アルミ箔、3,13,23,33,43 陰極アルミ箔、4 セパレータ紙、5 コンデンサ素子、6 ゴムパッキン、7 アルミケース、8 外部引出部、9 スリーブ、10,20,30,30A,40,40A,50,50A アルミ電解コンデンサ、14,24,34,44 セパレータ、15,25,35,37,45,47 高密度層、26,36,38,46,48 低密度層

Claims (3)

  1. アルミ電解コンデンサの陽極アルミ箔と陰極アルミ箔の間に介在させて、ショートの防止と駆動用電解液を含浸及び保持するために使用されるアルミ電解コンデンサ用セパレータであって、
    表面電位の指標であるゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVであり、かつ、密度が0.700g/cm〜1.400g/cmである層を、少なくとも1層有する
    ことを特徴とするアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  2. 前記ゼータ電位の絶対値が0〜50.0mVであり、かつ、密度が0.700〜1.400g/cmである層が、パルプの叩解度を示すCSF値で、0〜800mlまで叩解されたパルプを用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータ。
  3. 陽極アルミ箔と、
    陰極アルミ箔と、
    前記陽極アルミ箔及び前記陰極アルミ箔の間に介在し、駆動用電解液が含浸されたセパレータを有するアルミ電解コンデンサであって、
    前記セパレータとして、請求項1または請求項2に記載のアルミ電解コンデンサ用セパレータを用いた
    ことを特徴とするアルミ電解コンデンサ。
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