JPH10172867A - 電解コンデンサ - Google Patents
電解コンデンサInfo
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- JPH10172867A JPH10172867A JP8342452A JP34245296A JPH10172867A JP H10172867 A JPH10172867 A JP H10172867A JP 8342452 A JP8342452 A JP 8342452A JP 34245296 A JP34245296 A JP 34245296A JP H10172867 A JPH10172867 A JP H10172867A
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Abstract
に緻密性を有して気密度が高い新規な電解紙を用いるこ
とで、インピーダンス特性とショート不良率の双方を高
いレベルで効果的に改善する。 【解決手段】 電解紙は、セルロースを原料として湿紙
を製造し、湿紙に存在する空隙構造を保持したまま乾燥
させることにより、微細な貫通孔を有するようにする。
湿紙は、繊維径が1μm以下の微細なセルロースを原料
として製造する。この微細なセルロースとして、セルロ
ース繊維をJIS法CSFの値(JIS P8121の
規定により測定した値)で200ml以下に叩解したも
のを使用するか、あるいは(変法CSFの値(JIS
P8121に規定する測定法において試料3gを試料
0.3gとして測定した値)で700ml以下に叩解し
たものを使用する。
Description
電解紙を介在させて構成した電解コンデンサに係り、特
には微細な貫通孔を有して多孔質であるとともに、緻密
性を有して気密度が高い新規な電解紙を用いることによ
って、インピーダンス特性とショート不良率の双方を高
いレベルで効果的に改善するものでる。
タンタルなどの弁作用金属よりなる陽極箔と陰極箔との
間に電解紙を介在させて巻付け形成してコンデンサ素子
を作成し、このコンデンサ素子を液状の電解液中に浸漬
して電解質を含浸させ、封口して製作している。電解液
としては通常エチレングリコール(EG)、ジメチルホ
ルムアミド(DMF)又はγ−ブチロラクトン(GB
L)等を溶媒とし、これらの溶媒に硼酸やアジピン酸ア
ンモニウム、マレイン酸水素アンモニウム等の有機酸塩
を溶解したものを用いてコンデンサ素子の両端から浸透
させて製作している。
に、ショート不良率が低いこと及びコンデンサとしての
インピーダンス特性、特に等価直列抵抗(以下ESRと
略する)が低いことがあり、この2つは電解紙によって
大きく左右される。
品として市場での使用時のふたつのショート不良率があ
り、いずれの場合もショートの発生する箇所は電解紙の
弱い箇所であり、例えばピンホールがあればそこからシ
ョートする。そこで、ショート不良率を低減するにはで
きるだけ均一でピンホールなどの貫通孔が無い緻密性の
高い電解紙、換言すれば気密度の高い電解紙とすること
が要求される。
不良率の改善とは逆に、イオンが通る経路としての貫通
孔を確保するために多孔質の電解紙、換言すれば気密度
の低い電解紙とすることが要求される。これは電解コン
デンサの伝導方式はイオン伝導であって、電荷を持った
イオンが移動することで電荷が移動するためである。こ
のようにショート不良率を低減するには緻密性を高めて
気密度を高くすることが、一方ESRの改善のためには
多孔質なものとして気密度を低くするという相反する特
性が電解紙には求められているのである。
サの性能を決定する重要な要素として電解紙の気密度の
コントロールがあり、ショート不良率とESRの双方を
高いレベルで改善するには、微細な貫通孔を有する多孔
質であって、かつ、高い気密度、具体的には1000秒
/100cc以上の気密度を有する電解紙が望ましい。
気密度が数百秒/100ccのレベルの電解紙では全体
としては緻密性を有していてもピンホールが存在するた
めである。
の二つの方法により行われている。一つは原料となるセ
ルロース繊維の叩解の度合い進めて、より密度の高い電
解紙を製造する方法であり、もう一つは電解紙を厚くす
る方法である。
は、叩解の浅いセルロース繊維を用いて低密度の電解紙
に抄紙すると気密度は低く、叩解を進めたセルロース繊
維を用いて密度を高く抄紙すると気密度を高くすること
ができる。セルロース繊維の叩解の程度がJIS P8
121に規定するCSF(カナダ標準形口水度、Can
adian Standard Freeness、以
下、JIS法CSFという)の値で770mlとほとん
ど叩解していないバージンパルプを用いて、密度を0.
3g/cm3、厚さ50μm程度の電解紙を抄紙すれ
ば、気密度を約1秒/100ccにコントロールするこ
とができ、JIS法CSFの値で400ml程度まで叩
解を進めて抄紙すれば、同一厚さの電解紙であっても叩
解を進めることによって、密度を0.3g/cm3から
0.55g/cm3に高めることができ、気密度を数百
秒/100ccにコントロールすることができる。
を数千秒/100ccから数万秒/100ccまで、あ
るいはそれ以上までコントロールすることが可能ではな
いかと考えられる。しかしながら、ある程度以上叩解を
進めた原料を使用した場合、電解紙の表裏間の貫通孔が
存在しなくなってしまい、従来の電解紙では1000秒
/100cc以上の気密度を実現することをコントロー
ルすることはできなかった。これはJIS法CSFの値
で約200mlより叩解を進めて抄紙をすると、繊維間
の空隙がなくなってしまい、電解紙にはもはや貫通孔が
存在しなくなり、気密度は無限大となって実際上測定で
きなくなるからである。これは電解紙が自己接着力をも
つセルロースで製造されることに起因する避け難い性質
である。貫通孔が存在しなくなることはイオンが通る経
路がなくなることであり、ESRが極端に悪化してしま
う。
よる湿紙中の繊維間に働く力は大きくなる。このことは
キャンプベル効果(Campbell効果)として知ら
れている。キャンプベルの計算によると繊維径30μm
の繊維間の引力は6.1Kg/cm2、であるのに対
し、繊維径2μmでは繊維間の引力は38Kg/cm2
となり、更に繊維径0.2μmとなると繊維間の引力は
174Kg/cm2になる。高度に叩解された植物繊維
は繊維径が元の大きさに比べ小さくなっており、その繊
維間に働く力も大きく、繊維間の距離も小さくなってい
る。そこで、湿紙の状態から乾燥工程に入ると水が蒸発
し、このとき水の表面張力が大きいため、隣同志の繊維
を強力に引き付ける。繊維間距離が小さくなるとワンデ
ルウァールス力が働き、更に繊維相互を引き付け、つい
には水素結合により密着することとなり、繊維間の空隙
が減少してしまう。そのため、JIS法CSFの値で2
00ml以下に叩解を進めると得られた電解紙の繊維間
の空隙がなくなってしまうため、気密度が測定できなく
なるのである。よって、イオンが通る経路としての貫通
孔が無くなってしまうこととなる。一方、叩解の程度が
浅く大きな繊維の形状が保持されている場合には、繊維
の接触点で水素結合が発生しても全体としてみると空隙
が多く存在するのである。
到る前に、JIS法CSFの値の微調整を試みることに
よっても、1000秒/100cc以上の気密度をコン
トロールすることはできない。上記したように、繊維径
が小さくなると、繊維間に働く力が急激に大きくなる。
しかもセルロース繊維を叩解するとセルロース繊維は1
/2や1/3に段階的に開裂して行くのではなく、直径
0.4μm程度のフィブリルが繊維の外部から段階的に
ひげ状に発生して行く。即ち、叩解の程度は0.4μm
のフィブリルの発生状況のことであり、叩解が進むこと
はフィブリルの比率が増加することを示している。一
方、基となるセルロース繊維、例えば針葉樹パルプの繊
維は長径40μm、短径10μm程度の楕円形であり、
マニラ麻パルプの繊維は直径20μm程度のほぼ円形で
ある。そのため、叩解の程度はマニラ麻パルプであれ
ば、直径20μmの繊維と、直径0.4μmのフィブリ
ルの比率の変化として捉えることができる。よって、J
IS法CSFの値で200mlに到る前の微妙なJIS
法CSFの値の調整で気密度をコントロールすることは
できないのである。また、試みたとしても目標値に対
し、±数千秒〜数万秒/100ccのバラツキが発生す
ることとなると考えられる。
って、気密度として数百秒/100ccの電解紙を製造
することはできても、イオンが通る経路としての貫通孔
を維持して気密度を上げるために1000〜数万秒/1
00ccの気密度をコントロールしながら製造すること
はできなかった。即ち、微細な貫通孔を有する多孔質で
あって、かつ、高い気密度を有する電解紙を製造するこ
とはできなかったのである。
して電解紙を厚くする方法がある。理論的には空気の通
過する距離が長くなればなるほど気密度は高くなり、電
解紙を厚くすれば高気密度の電解紙を製造することが可
能である。しかし、電解紙としては15〜90μmが主
に使われており、これより厚いものは実際上使用するこ
とができないため、できるだけ薄い方が良い。特に現在
ではより高容量化、小型軽量化が望まれており、従来よ
り更に薄くすることが期待されている。よって、電解紙
として要求される100μm以下の厚さの範囲では、厚
さを調整することによって、或は叩解の程度と厚さの調
整を併用することによって気密度を1000秒/100
cc以上でコントロールすることはできなかった。
する多孔質の電解紙を得るためには、ショート不良率の
改善とは逆に電解紙を薄く、その密度を低くする必要が
ある。しかしながら、電解紙を薄くしたり密度を低くす
ると必然的に気密度は低下してしまう。また、気密度を
高めるために電解紙を厚くすると一次式的にESRが悪
化し、密度を高めると二次式的にESRが悪化するので
ある。
っても左右される。例えば、エチレングリコール(E
G)系とγ−ブチロラクトン(GBL)系の電解液では
事情が異なる。EG系電解液は水系の溶媒であるEGを
使用しているため電解紙を膨潤させる。そのため、電解
液を含浸する前の乾紙の状態の密度が高く気密度が測定
できないほど大きくて、イオンが通る経路としての貫通
孔を確保されていなくても、EG系電解液の含浸後は繊
維が膨潤して繊維のフィブリル間に隙間ができ、イオン
伝導のための経路が作りだされる。しかしながら、GB
L系電解液では非水系の溶媒であるGBLを使用してい
るため電解紙が膨潤しない。そのため、電解液を含浸す
る前の乾紙の状態の密度が高く気密度が大きい電解紙を
使用すると、電解紙の膨潤によってイオン伝導のための
経路が作りだされることがないため、そのままESRが
高くなってしまう。
から500WV程度までの種々の製品があり、一般に1
00WV程度までのものが低圧用電解コンデンサとし
て、又それ以上のもの、具体的には150WV程度以上
のものが中高圧用電解コンデンサとして認識されてい
る。低圧用電解コンデンサの場合は低密度の電解紙を使
用することができるため、GBL系電解液を使用するこ
とが多い。これはGBL系電解液を使用した方がEG系
電解液を使用する場合に比べてESRを良いためであ
る。また、EG系電解液を使用するには水を添加する必
要があり、水を添加すると85℃までしか使用できない
ため、105℃タイプではGBL系電解液が使用されて
いる。
路等に使用されており、この中高圧用電解コンデンサの
おいてもESRの改善や105℃タイプを製造するため
にはGBL系電解液を使用することが望まれている。し
かしながら、中高圧用電解コンデンサとしての耐電圧を
維持するためには密度の高い、厚さの厚い電解紙を使用
する必要があるが、GBL系電解液を使用すると前記し
たように電解紙が膨潤しないため、極端にESRが悪く
なるため使用することができない。そのため、GBL系
の電解液を使用するこのできる実用可能な電解紙は提供
されていない。
る場合には、電解液含浸後の電解紙の膨潤を考慮して、
ショート不良率を下げるために叩解を進めた原料を使用
して長網抄紙機で抄紙した気密度が高い高密度一重紙
や、円網長網コンビネーションマシンで抄紙した気密度
が高い高密度紙と気密度が低い低密度紙より構成された
二重紙からなる電解紙が採用されている。
ート不良率を下げるために気密度を高くする方法として
円網抄紙機による多槽抄きが実用化されている。これは
気密度が低い複数の紙層を重ねることで電解紙の緻密性
を増すことを目的としている。しかし、多槽抄きを行っ
ても気密度は数秒から数十秒の範囲であり、大幅な気密
度の向上は果たせていない。そこで、GBL系電解液の
使用は低圧用電解コンデンサに留まり、GBL系電解液
を使用した中高圧用電解コンデンサは製造することがで
きなかったのである。
しての貫通孔を維持するために多孔質であって、かつ、
高い気密度を有する電解紙を得ることはできず、ショー
ト不良率とESRの双方を高いレベルで改善することは
できなかった。
孔質フィルムがあり、この多孔質フィルムを使用した電
解コンデンサも提供されている。この多孔質フィルムで
は気密度が数千秒/100ccから数万秒/100cc
のものを得ることができるのである。
の熱可塑性樹脂や酢酸セルロースのようなセルロース誘
導体が使われている。石油系樹脂の熱可塑性樹脂として
ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)が主
に使われている。これらの樹脂は耐薬品性には優れてい
るもののPEの耐熱温度は高くても120℃、PPの耐
熱温度は160℃であり、耐熱性に乏しい。一方、セル
ロース誘導体である酢酸セルロースは230℃近辺まで
の耐熱性を有しているものの、酢酸、アセトンなどの薬
品に溶解するため、耐薬品性に乏しい。特にGBL系電
解液に対する耐薬品性に欠けることから、電解コンデン
サに使用することはできない。このように多孔質フィル
ムには耐薬品性に優れていれば耐熱性に乏しく、耐熱性
に優れていれば耐薬品性に乏しく、両者を合せ持つもの
がなかった。また、多孔質フィルムは原料とする熱可塑
性樹脂が高価であり、製造工程も複雑であることから製
造単価を引き下げることが困難である。また、PE、P
Pいずれにしても石油系資源であり、昨今の環境に対す
る配慮から新たな素材が求められている。
スを叩解して抄紙した電解紙を使用した電解コンデンサ
も提案されている。この溶融紡糸セルロースを叩解する
とフィブリルを多く発生するが、天然パルプを叩解した
ものと比べると、気密度が高い割にはESRが良い。し
かし、溶融紡糸セルロースは繊維の表層部しかフィブリ
ル化しないので、薄く抄紙することができない。また、
逆に薄い紙を抄紙しようとすると気密度を高くすること
ができない。よって、イオンが通る経路としての貫通孔
を維持するために多孔質であって、かつ、高い気密度を
有する電解紙を製造することはできなかったのである。
度とESRに対する要求を満足させようという試みがな
されているが、いずれもパルプを使用した電解コンデン
サ紙に比べ高価であり、上述したような欠点も有り工業
的に採用されていない。
耐熱性を有しており、セルロースを溶かす薬剤が今も探
索されていることからも分るように薬品に対して安定で
あり、耐熱性も耐薬品性を合せ持っていると言える。一
方、多孔質フィルムは本質的に耐熱性、耐薬品性に欠け
ている。そこで、叩解の程度を進めた原料で製造され、
気密度が無限大となって測定不能となる高密度紙を多孔
質のものとすることができれば、従来不可能とされてい
た高気密度であって低密度の電解紙を得ることができ
る。即ち、叩解を進めた原料を使用しても、空気が通過
することのできる微細な貫通孔を有する電解紙を製造す
ることができれば、高気密度であってもイオンが通る経
路としての貫通孔を確保した電解紙を得ることができる
のである。この高気密度であって低密度の電解紙によれ
ば、気密度を高いレベルでコントロールすることがで
き、従来の気密度を上げると密度が高くなってESRが
悪く、密度を下げてESRを良くすると気密度が下がり
緻密性に欠けてショート不良率が増加することとなり、
ショート不良率とESRの双方を同時に高いレベルで満
足させることが困難であった電解紙の欠点を解消するこ
とができる。また、セルロースは再生産可能な天然資源
であり、産業廃棄物の問題も少ないため、石油資源の利
用から再生産可能な天然資源への利用へと転換を図るこ
とができて望ましい。
き、耐熱性、耐薬品性に優れた再生産の可能な天然資源
であるセルロースを原料として、微細な貫通孔を有する
多孔質で低密度であるとともに、緻密性を有して気密度
が高い新規な電解紙、即ち、イオンが通る経路としての
貫通孔を維持するために多孔質であって、かつ、高い気
密度を有する電解紙を用いることによって、インピーダ
ンス特性とショート不良率の双方を高いレベルで効果的
に改善する電解コンデンサを提供することを課題とす
る。
するために、陽極箔と陰極箔との間に電解紙を介在して
なる電解コンデンサにおいて、前記電解紙はセルロース
を原料として湿紙を製造し、該湿紙に存在する空隙構造
を保持したまま乾燥させた電解コンデンサ及び該湿紙に
存在する空隙構造を保持したまま乾燥させることによ
り、微細な貫通孔を有する電解コンデンサを基本として
提供する。また、湿紙は原料を水に分散させて抄紙し、
又は原料を水より表面張力の小さい有機溶媒に分散させ
て抄紙する。湿紙中の水分は水と相溶性のある表面張力
の小さい溶媒と置換し、又は凍結乾燥させることにより
乾燥させる。また、湿紙中の有機溶媒は揮発させること
により乾燥させる。湿紙は原料をキャスティング製膜す
ることもできる。原料のセルロースとしては繊維径が1
μm以下の微細なセルロースを使用し、微細なセルロー
スとしてはセルロース繊維をJIS法CSF(JIS
P8121)の値で200ml以下に叩解したセルロー
ス、或は変法CSF(JIS P8121に規定する測
定法において、試料3gを試料0.3gとして測定す
る)の値で700ml以下に叩解したセルロースを使用
する。また、微細なセルロースとしてセルロース繊維を
高圧下剪断力で解繊したマイクロフィブリル化セルロー
スを使用することもできる。更に、湿紙に無機フィラー
を混抄し、無機フィラーとしてホウ酸アルミニウム又は
チタン酸カリウムを使用する。そして、得られた多孔質
高気密度紙は厚さが100μm以下、気密度が1000
秒/100cc以上が好ましい。
セルロース繊維間の空隙構造に保持された水を溶媒置換
又は凍結乾燥によって乾燥させ、或はセルロース繊維を
有機溶媒に分散させて抄紙することにより湿紙を製造
し、湿紙中の有機溶媒を揮発させることにより乾燥させ
るため、従来の抄紙法のように湿紙からの乾燥工程で水
が蒸発するときに隣同志の繊維を強力に引き付けて水素
結合により密着することがない。そのため、湿紙に存在
する空隙構造をそのまま保持することにより、微細な貫
通孔を有する多孔質で低密度であるとともに、緻密性を
有して気密度が高い新規な電解紙、具体的には厚さが1
00μm以下、気密度が1000秒/100cc以上の
多孔質高気密度の電解紙を得ることができる。即ち、シ
ョート不良率を改善するために高い気密度を有し、か
つ、ESRを改善するためにイオンが通る経路としての
貫通孔を維持した多孔質の電解紙を得ることができる。
よって、この電解紙を用いることによって、インピーダ
ンス特性とショート不良率の双方を高いレベルで効果的
に改善する電解コンデンサ、更に具体的には従来の電解
紙では製造できなかったGBL系電解液を使用した中高
圧用電解コンデンサを提供することができる。
ンサの各実施形態を説明する。本発明にかかる電解紙は
セルロースを原料として湿紙を製造し、該湿紙に存在す
る空隙構造を保持したまま乾燥させることにより、イオ
ンが通る経路としての微細な貫通孔を維持するために多
孔質であって、かつ、高い気密度を有することに特徴を
有する。
ルロース繊維の叩解を進めていくと得られる電解紙の気
密度は高くなるが、前記したようにJIS法CSFの値
で約200ml以下に叩解を進めて密度0.75g/c
m3以上に抄紙をすると繊維間の空隙なくなってしま
い、電解紙には貫通孔がもはや存在しなくなり、気密度
は無限大となって実際上測定できなくなってしまう。し
かしながら、その場合であっても湿紙の状態においては
空隙構造を有する。即ち、乾燥した電解紙には貫通孔が
存在しなくても、乾燥前の湿紙には貫通孔が存在する。
乾燥することによって、水分が蒸発し、セルロース繊維
相互の水素結合によって空隙が癒されて貫通孔が存在し
なくなるが、湿紙の状態ではどんなに叩解の程度を進め
たとしても水分が保持されている空隙が存在するのであ
る。例えば、JIS法CSFの値で約200ml以下ま
で叩解を進めて抄紙したとしても、湿紙の状態ではプレ
スすることにより脱水することができる。このことは湿
紙中に連続した水の流路が存在することを示しているに
他ならない。本発明は乾燥時における湿紙の空隙構造に
与える水の影響を極力小さくすることによって、換言す
れば水素結合の発生を抑制することによって、この湿紙
状態の空隙構造、即ち水の流路を保持したまま乾燥させ
て、微細な貫通孔を有する多孔質で高気密度の電解紙を
使用した電解コンデンサを提供するものである。
再生産可能な天然資源であるセルロースを原料とする。
使用するセルロースそのものには限定がなく、針葉樹木
材パルプ、広葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、マニ
ラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、コットンパルプ等の天
然セルロース繊維、或はこれら天然セルロース繊維を冷
アルカリ処理して得たマーセル化パルプ、更には普通レ
ーヨン繊維、ポリノジックレーヨン繊維、有機溶剤紡糸
レーヨン繊維等の再生セルロース繊維などのいずれでも
よい。なお、使用するセルロースは洗浄・脱水・除塵な
ど公知の方法で不純物を除去しておく。
は繊維径が1μm以下の微細なセルロースを原料とす
る。具体的には高度に叩解したセルロース、或はマイク
ロフィブリル化セルロース(MFC)を使用する。高度
に叩解したセルロースは、基のセルロースの繊維の形状
が破壊されて、外部フィブリル化が進み、直径0.4μ
m程度のフィブリルの占有率が高くなっているものであ
り、繊維径としては1μm以下のものである。なお、本
発明でいう繊維径が1μm以下の微細なセルロースは、
フィブリルの占有率が高いもの、即ちフィブリルが繊維
の主たる要素となっていればよく、フィブリルだけのも
のと共に、一部にフィブリル化されていない繊維径1μ
mを越える基の繊維が残存しているものであってもよ
い。
とセルロース繊維は1/2や1/3に段階的に開裂して
行くのではなく、直径0.4μm程度のフィブリルが繊
維の外部から段階的にひげ状に発生して行く。従って、
天然セルロース繊維を叩解或は他の手段によって、開裂
させて繊維径を小さくすることはできないのである。叩
解の程度は0.4μmのフィブリルの発生状況のことで
あり、叩解が進むことはフィブリルの比率が増加するこ
とを示している。本発明ではこのフィブリルの占有率の
高い微細な天然セルロースを原料とするものである。因
に天然セルロース繊維で繊維径の小さいものとしてエス
パルト繊維があるが、このエスパルト繊維でも繊維径は
10μm程度である。
ルロースを原料とすることによって、得られる電解紙の
緻密性が高まり地合が均一となってESRも改善され
る。従来においても電解紙の原料を通常の木材クラフト
パルプから針葉樹木材パルプ,マニラ麻パルプ,エスパ
ルトパルプ等の繊維径のより小さなパルプへ変更するこ
とによって、薄く、かつ、低密度で緻密な電解紙を製造
する試みがなされてきている。しかしながら、従来は繊
維径が1μm以下まで高度に叩解した原料を使用すると
乾燥時の水素結合によって貫通孔が存在しなくなり、E
SRが極端に悪化するのである。本発明では従来より繊
維径が小さい1μm以下の繊維径の微細なセルロースを
原料としてもイオンが通る経路としての貫通孔を維持し
た多孔質の電解紙を製造することができるため、繊維径
が小さいことと、多孔質であるとの相乗効果によってE
SRを改善することができるのである。
の微細なセルロースとするための手段の一つとして、J
IS法CSFの値で200ml以下に、或は変法CSF
の値で700ml以下まで高度に叩解を行う。通常、叩
解の程度はJIS法CSF(JIS P8121)の値
で測定される。しかしながら、本発明ではより正確に気
密度をコントロールするための叩解の程度の基準とし
て、JIS法CSFとともに、JIS法CSFの変法と
して、変法CSFにより叩解の程度を特定する。そこ
で、JIS法CSFの内容及び本発明で基準とする変法
CSFの内容について以下に説明する。
規定されている測定手段である。先ず測定するパルプ3
gを水で良く離解して正確に1000mlの試料液と
し、この試料液を図7(A)に示すカナダ標準型フリー
ネステスターのロ水筒31に入れて上蓋32を閉める。
次に下蓋33を開けて、上蓋のコック34を開けると、
ロ水筒31の下部に配置された80メッシュの網35を
通じてロ水が流れ出る。このとき80メッシュの網35
上には繊維がマット状に堆積して行く。試料液はこのマ
ット状の繊維間を通過して、ロ水としては図7(B)に
示すロ水筒31の下方に位置する漏斗36に入り下部排
出口37から流出する。このとき漏斗36へ一度に多く
のロ水が入れば、ロ水は排出口37だけでなく、漏斗3
6の横に取付けた側管38からも排水される。この側管
38からの排水をメスシリンダーに受け、この排水の量
をもってCSFの値とする。なお、図7(C)は架台3
9を示すものであり、上台40にロ水筒31を載置し、
下台41に漏斗36を載置して、ロ水筒31と漏斗36
の高さと中心を合わせて測定するものである。
筒31からロ水として漏斗36に一度に流入する量によ
って決定される。漏斗36に一度に多量のロ水が流入し
た場合は、下部排出口37から全量を排出することがで
きず、溜ったロ水が側管38からあふれ出ることとな
る。一方、ロ水が少しずつ流出すると全量が下部排出口
37から排出されることとなり、側管38から流出する
ことはない。この場合CSFは0mlとなる。また、叩
解の程度が浅いとマット状の繊維間を水が通過すること
ができ、ロ水の量が多く流入速度も早いため、CSFの
値が高くなる。一方、叩解の程度が高いとマット状の繊
維間を水が通過しにくくなり、ロ水の量が減り流入速度
も遅くなるため、CSFの値が低くなるのである。
と規定している。この方法は叩解度の低いパルプを想定
しており、低気密度の電解紙を抄紙するには、JIS法
CSFは叩解の程度の変化が値として判り易くて都合が
良い。しかしながら、高気密度の電解紙を抄紙するため
叩解を進めていくと、ある時点からJIS法CSFの値
が0mlとなって、叩解の進行度を把握することができ
なくなる。本発明の課題とする多孔質高気密度の電解紙
を得るためにはJIS法CSFで規定する0ml前後か
らそれ以降の原料叩解が重要である。そこで、本発明で
は、高度に叩解を進めた原料の叩解の程度をより正確に
測定するために、JIS法CSFを基準として次のよう
な変法を用いた。
する方法を基本とし、パルプ量のみを3gから0.3g
に変更して測定した。採取パルプの量以外は全てJIS
法CSFと同様とした。
めた原料であっても叩解の程度の差をCSFの値として
捉えることができる。このJIS法CSFによる測定値
と変法CSFによる測定値を比較検討するため、図1に
叩解を進めたときのJIS法CSFと変法CSFの値の
変化をグラフとして示すと共に、図2に縦軸に変法CS
Fの値を、横軸にJIS法CSFの値を取って、両者の
関係をグラフとして示す。図1に示すように、変法CS
Fで700mlの値は、JIS法CSFで略200ml
の値となり、変法CSFで300mlの値はJIS法C
SFでは0mlとなって、もはや叩解の程度をCSFの
値として測定することができない。また、図2に示すよ
うに叩解の浅い初期の段階、即ちJIS法CSFの値で
200ml以上の状態(200〜800ml)ではJI
S法CSFの測定値が大きく変化するのに対し変法CS
Fの値の測定値は変化が乏しい。この段階ではJIS法
CSFの方が叩解の深浅の程度を把握しやすい。逆に、
叩解が進んだ段階、即ちJIS法CSFで200ml以
下の値となると、変法CSFでの測定値の方が変化が大
きくなって捉らえやすくなる。一方、JIS法CSFの
値では0mlになった場合においても変法CSFの値で
は300mlであり、更に叩解を進めた場合JIS法C
SFでは測定不可能であるが、変法CSFでは叩解の程
度を数値として測定することができる。
ことにより、JIS法CSFの値から換算することがで
きる。なお、換算式は図2に示すように、JIS法CS
Fの値で、200ml以下の値、200〜600mlの
範囲の値、600〜800の範囲の値の3種類のゾーン
にて係数を異にしている。なお、表3においてrは相関
係数であり、JIS法CSFの値から換算式によって求
めた変法CSFの値が実際の値と一致していることを示
している。
の1/10である0.3gとすることによって、パルプ
の絶対量の減少と共に、試料液の濃度が低下することと
なり、ロ水の流入量が増加し流入速度も大きくなる。そ
のため、JIS法CSFに比較してCSFの値が高くな
るのである。例えばJIS法CSFの値で0mlまで叩
解したパルプではJIS法CSFの測定方法である3g
で測定すると、試料液の粘度が高くなり、80メッシュ
の網35の上に小量で緻密なマット状の繊維が形成され
て、ロ水の流出が止まってしまうため、それ以上に叩解
を進めたパルプのCSFの測定を行うことができなくな
る。これに対し、変法CSFの0.3gでは試料液の粘
度が低く、80メッシュの網35の上にマット状の繊維
が形成される前に一定量のロ水がロ水筒31から漏斗3
6に流入するため、側管38からあふれ出たロ水の量を
測定することができ、JIS法CSFで0ml以下に更
に叩解を進めたパルプのCSFの値を変法CSFとして
測定できるのである。
おける繊維径が1μm以下の微細なセルロースとするた
めには、JIS法CSFの値で200ml以下に、或は
変法CSFの値で700ml以下まで高度に叩解を行う
必要があり、更に求める高気密度に応じて変法CSFの
値で700ml〜0mlまでの叩解を行う。
以下の微細なセルロースとしてセルロース繊維を高圧下
剪断力で解繊したマイクロフィブリル化セルロース(M
FC)を使用することもできる。MFCとしては商品
名:ダイセル化学株式会社製のセリッシュKY−110
Sが市販されている。更に、現在工業的に使用はされて
いないが、バクテリアセルロースを使用することもでき
る。バクテリアセルロースとはバクテリアが生産するセ
ルロースのことで、繊維径が数nm(ナノメーター)〜
数十nmである。
以下の微細なセルロース或はマイクロフィブリル化セル
ロース等からなる原料を水に分散させて、抄紙機上で抄
紙を行うことにより、湿紙を製造する。抄紙機として
は、繊維径が1μm以下の微細なセルロースであるため
長網抄紙機を用いる。なお、製造した多孔質高気密度紙
の強度向上のため叩解の浅い原料を用い円網抄紙機で抄
紙したものを抄き合せる長網円網コンビネーションマシ
ンで抄紙することも有効であるが、少なくとも1層は高
度に叩解した原料を長網抄紙機で抄紙した湿紙が含まれ
ていることが必要である。
使用することなく、平板上に原料としてのセルロース繊
維の水系ドープ液をドクターブレード等でキャスティン
グして湿紙としての膜を形成することもできる。本発明
における湿紙はキャスティング製膜による湿膜を含むも
のである。
CSFの値で700ml〜0mlに叩解した繊維径が1
μm以下のフィブリル化した微細なセルロースを原料と
していても、水の存在するセルロース繊維間の空隙構造
を有している。本発明はこの湿紙中の空隙構造を保持し
たまま乾燥させるものである。そのために、湿紙中の空
隙構造に保持された水を表面張力の小さい他の溶媒で置
換して乾燥させる。この溶媒置換乾燥に用いる溶媒とし
ては水と相溶性があり、表面張力の小さいものが適して
いる。一般にはメチルアルコール、エチルアルコール、
イソプロピルアルコールなどのアルコール類やアセト
ン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが適してい
る。また、置換は浸漬・プレス脱液あるいは噴霧・脱液
等の方法で行う。目的とする気密度により、置換操作は
1回もしくは複数回行う。溶媒置換は抄紙機上で行って
もよいし、湿紙のまま巻き取り別途行ってもよい。な
お、製造された湿紙は溶媒置換の前に予め、プレスロー
ルにより余分な水分を脱水しておくとよい。
燥前の、即ち乾燥により繊維間に水素結合が形成する前
に溶媒置換により水を取り除くことである。特に叩解を
高度に進めた原料を使って抄紙し、フィルム状の外観を
呈するような密度が0.75g/cm3以上の高密度の
電解紙は一度乾紙になるとセルロース間の水素結合は強
固であり、水に浸漬しても膨潤はするが、抄紙機上の湿
紙の状態まで戻すことは困難である。乾紙を水に浸漬
し、その後溶媒置換乾燥したものは未乾燥の湿紙、即ち
抄紙機上で溶媒置換、あるいは湿紙のまま巻き取り別の
装置で溶媒置換して乾燥したものに比べESRが悪い。
そのため、抄紙機から湿紙のまま巻き取り別途に溶媒置
換を行う場合には特に乾燥により繊維間に水素結合が形
成しない十分な水分を含んでおく必要がある。
を採用することもできる。この凍結乾燥は湿紙を凍結さ
せた後に、減圧下の条件で凍結した水分を昇華させて乾
燥させる方法である。なお、本発明において凍結後、減
圧下で凍結した氷を昇華させるのは、凍結した水分が再
度融け、水の状態になった後に乾燥したのでは水の影響
によるセルロース繊維相互の水素結合を防止して湿紙の
空隙構造を維持できないためである。
湿紙中に残っている溶媒及び水は乾燥することにより取
り除く。乾燥は従来のドラム式ドライヤーでもよいし、
送風や赤外線などを用いることもできる。
初から使用せずに、繊維径が1μm以下の微細なセルロ
ースを水より表面張力の小さい有機溶剤に分散させて、
抄紙又はキャスティング製により湿紙を製造し、該湿紙
中の有機溶剤を揮発・乾燥させることにより、湿紙に存
在する空隙構造を保持したまま乾燥させるようにしても
よい。
解紙にはセルロース繊維にホウ酸アルミニウム又はチタ
ン酸カリウム等の無機フィラーを添加することもでき
る。これは無機フィラーとセルロースはもともと水が介
在しても水素結合を形成せず、湿紙中の空隙が大きいた
め、電気特性を改善することができるためである。
法、電解紙の厚さ、密度等の組合わせにより気密度をコ
ントロールして多孔質高気密度の電解紙を製造すること
ができる。得られた多孔質高気密度の電解紙は湿紙の状
態のときの空隙構造をそのまま維持しているため、微細
な貫通孔を有しており、原料となるセルロース繊維の叩
解の程度等に応じて高気密度を有する。また、原料とし
てのセルロース繊維の叩解の程度をJIS法CSFで2
00ml以下、変法CSFの値で700〜0mlとして
も、叩解の程度に応じて微細な貫通孔を維持しており、
気密度が無限大となることはない。即ち、従来製造でき
なかった厚さが100μm以下の紙で、1000秒/1
00ccの気密度を有する多孔質高気密度の電解紙を得
ることができた。
紙の製造方法について説明する。先ず、原料となるセル
ロース繊維をビーターあるいはダブルディスクリファイ
ナー等の製紙用叩解機で所定のJIS法CSF又は変法
CSFの値まで叩解し、これを原料紙料2として図4に
示すように長網インレット1に収納し、長網インレット
1の下部で回転する長網ワイヤー3の表面に供給して、
長網ワイヤー3の表面に連続した湿紙4を形成する。形
成された湿紙4はウェットフェルト5に移送されて搬送
され、プレスロール6にて過剰の水分が取り除かれる。
その後所定の溶媒8を収納した第1の溶媒バット7に湿
紙4を浸漬して、湿紙4中の水分と溶媒8を置換し、そ
の後プレスロール9により余分な溶媒8を取り除いて、
再び溶媒8が収納された第2の溶媒バット10に湿紙4
を浸漬して、湿紙4中に残存する水分と溶媒8を置換す
る。その後プレスロール11により余分な溶媒8を取り
除くと共に、ドライフェルト12に移送されて搬送さ
れ、蒸気あるいは熱媒体によって加熱された円筒形状の
ドライヤー13の外表面に接触させて乾燥させて、巻取
ロールに巻き取られて多孔質高気密度の電解紙14が製
造される。この乾燥工程において、セルロース繊維を水
素結合させて空隙構造を癒してしまう水分が存在せず、
溶媒に置換されているため、乾燥後にも湿紙の空隙構造
がそのまま維持された多孔質で高気密度の電解紙を製造
することができる。この図4の例は長網抄紙機で抄紙後
に抄紙機上で溶媒置換し、乾燥させて巻き取る例であ
る。
て、湿紙4上に溶媒8を噴霧することによって、湿紙4
中の水分と溶媒を置換するものである。前記図4と同一
構成の部分については同一の符号を付して説明を省略す
る。なお、図5は図4と同様の長網抄紙機で抄紙された
湿紙4を乾燥することなく巻き取り(ウエットワインデ
ィング)、長網抄紙機とは別の装置で溶媒置換する例を
示している。即ち、ロール状に巻き取られた湿紙4はウ
ェットフェルト5に移送されて搬送され、プレスロール
6で過剰な水分が取り除かれ、その後湿紙4上に溶媒8
が第1の溶媒噴霧器16により噴霧されて、湿紙4中の
水分と溶媒8が置換される。噴霧された溶媒8は吸引脱
液装置17によって吸引脱液されると共に、湿紙4から
過剰な溶媒がプレスロール9にて取り除かれ、再び溶媒
8が第2の溶媒噴霧器液18により噴霧され、湿紙4中
に残存する水分と溶媒8が置換される。噴霧された溶媒
8は吸引脱液装置19によって吸引脱液されると共に、
その後湿紙4から過剰な溶媒がプレスロール11にて取
り除かれる。以後は図4の例と同様である。このように
溶媒置換は抄紙機上で行ってもよいし、又別途行っても
よい。なお、図4における浸漬による溶媒置換、及び図
5における噴霧による溶媒置換は2回行ったが、その回
数は溶媒の種類や、原料、製造された湿紙等に必要に応
じて選択するものである。
よって湿紙中の空隙構造を保持したまま乾燥する例を示
すものである。先ず湿紙4を冷凍庫21内にて−70℃
の温度で凍結させて凍結湿紙4aとする。次に凍結湿紙
4aを凍結乾燥器22内に収納し、凍結乾燥器22内の
空気を脱気して減圧する。減圧によって凍結湿紙4a中
の凍結した水分が昇華して脱水されて、多孔質高気密度
の電解紙14aが製造される。尚、昇華を促進するため
に凍結乾燥器22内に昇温棚23を設置して、該昇温棚
23に凍結湿紙4aを載置することが好ましい。なお、
この際、凍結した氷が水に戻ることなく、氷から昇華す
ることで乾燥することが肝要である。
解した原料を抄紙し乾燥する場合、多筒式のドライヤー
が必要であるが、本発明のように湿紙中の水分を溶媒置
換したものを乾燥する場合は、単筒式のドライヤーで十
分である。これは従来の抄紙法では乾燥時の水分が蒸発
する際、メニスカスの後退と同時に繊維を引きつけ合
い、これがヒジワ(乾燥ジワ)となるため多筒式ドライ
ヤーにより徐々に乾燥する必要があるからである。本発
明の場合、乾燥時には、ヒジワ(乾燥ジワ)の原因とな
る水分がないため、又使用した溶媒が容易に飛散するた
め単筒式のドライヤーにより乾燥を行うことができる。
更に、ドライヤーも従来のドラム式ドライヤーに限定す
ることなく、赤外線ドライヤーや送風ドライヤーなど各
種の乾燥方法が利用できる。
解紙を陽極箔と陰極箔の間に介在させて巻取り、コンデ
ンサ素子を作製した後、液状の電解質を含浸させ、封口
を施して製作した電解コンデンサの具体的な各種実施例
と、比較のために製造した従来品の比較例を示す。各実
施例および比較例の各測定値は次の方法で測定したもの
である。なお、JIS法CSF及び変法CSFの測定法
は前記した通りである。
うに電解紙を介在させ、巻き取りして電解コンデンサ素
子を作成した後、所定の電解液を含浸させてケースに封
入し、エージングを行って、アルミ乾式電解コンデンサ
を製作した。
紙)に規定された方法で測定した。
方法)に規定する“12.1 気密度”の項に従い、B
型試験器(ガーレーデンソメータ)によって測定した。
但し穴の部分の直径が6mmであるアダプターを使用し
た。
極に挟み20℃、1kHzの周波数でLCRメーターに
よって測定した。
ング時に測定した。素子巻時のショートの有無は電解紙
を陽極箔及び陰極箔と共に巻き取りして電解コンデンサ
素子を作成した後、電解液を含浸しないままで両極間の
ショートによる導通をテスターで確認した。約1000
個の素子について検査し、ショートしたものの検査総数
に対する割合をショート不良率とした。更に、エージン
グ処理した後に検査をして、ショートしたものの検査総
数に対する割合を以てエージング時の不良率とした。
LCRメーターによって測定した。
パルプをダブルディスクリファイナーを用いて変法CS
Fの値で700ml〜50mlまで叩解の程度を段階的
に変化させた原料を水に分散させて、長網抄紙機により
湿紙を製造し、該湿紙に図5に示すようにアセトンを噴
霧して湿紙中の水分とアセトンとを置換する作業を2度
繰り返した後に、ドライヤーでアセトン及び残渣として
の水を乾燥させて、実施例1〜5の多孔質高気密度の電
解紙を得た。実施例6は実施例5と同一の原料で同様に
製造した湿紙を、実施例1〜5の溶媒置換乾燥に代え
て、図6に示す凍結乾燥法によって湿紙を凍結させた後
に、減圧下の条件で凍結した水分を昇華させて乾燥さ
せ、残った水をドライヤーで乾燥させたものである。こ
の実施例1〜6の厚さ、密度、気密度、ESR等を表1
に示す。また、実施例1〜5の叩解の程度と気密度との
関係をグラフ化したものを図3に示す。
0μm前後、密度0.500g/cm3前後であって、
叩解が進むにつれ、得られる電解紙が緻密となって10
00秒/100ccの高気密度を実現している。しか
し、叩解が高度に進んでも気密度は実際上測定できない
ほど大きくなることはない。実施例1は変法CSFの値
で700ml(JIS法CSFで200ml)まで叩解
した原料を使用したものであって、その気密度は110
0秒/100ccであり、外観は不透明感があった。こ
れは湿紙中に存在した空隙構造がそのまま紙層内に残存
しているため、光を乱反射するためである。変法CSF
の値700ml(JIS法CSFで200ml)まで叩
解を進めると基のセルロースの繊維の形状が破壊され
て、外部フィブリル化が進み、直径0.4μm程度のフ
ィブリルの占有率が高くなっているものであり、100
0秒/100cc以上の気密度を実現するためには、基
のセルロース繊維の形状が無くなるまで、即ち変法CS
Fの値700ml(JIS法CSFで200ml)まで
叩解する必要があることが判る。
l(JIS法CSFでは測定不可)まで叩解しており、
気密度は7000秒/100ccである。よって、従来
気密度が測定不可能な無限大となるJIS法CSFの値
で200ml以下まで叩解を進めても、イオンが通る経
路としての貫通孔が存在していることが判る。このよう
に本発明によれば、叩解の程度を進めても多孔質を維持
することができて、気密度が無限大となることがないた
め、1000秒/100cc以上の気密度をコントロー
ルすることができる。更に高気密度の電解紙が要求され
れば原料叩解を進めたり、厚さを厚くしたり、密度を高
くしたりすることでイオンが通る経路としての貫通孔を
維持して気密度を上げた電解紙を容易に製造することが
可能である。なお、叩解が進むにつれ電解紙に不透明感
が強く表れてくる。これは叩解が進むにつれ繊維間の空
隙が小さくなり光の散乱が多くなり不透明感が強くなる
からと考えられる。
との関係をグラフ化したものであり、横軸が叩解の程度
を、左軸が変法CSFの値を、右軸が気密度を示してい
る。例えば、変法CSFの値のグラフにおいて、実施例
1は左軸に示すように変法CSFの値が700mlであ
り、気密度を示すグラフにおいて実施例1は右軸に示す
ように1100秒/100ccである。図に示すよう
に、叩解が進むにつれ変法CSFの値が下がっている。
一方、気密度は叩解が進むにつれ高くなることが判る。
むに連れて低下している。例えば、変法CSFの値で7
00mlまで叩解した原料を使用した実施例1のESR
が2.450Ω/1kHzであるのに対し、変法CSF
の値で50mlまで叩解した原料を使用した実施例5の
ESRは0.604Ω/1kHzと大きく低下してい
る。これは従来の電解紙とは全く逆の結果であり、叩解
を進めることにより、ESRを改善できることは画期的
な効果である。従来の電解紙では叩解を進める連れて気
密度が上がるが、ESRの値も高くなって悪化してしま
う。しかし、本発明によればその関係が逆転し、高気密
度で、同時にESRを改善することのできる電解紙を製
造することができるのである。これは叩解を進めるに連
れて、基のセルロースの繊維の形状が破壊されて、外部
フィブリル化が進み、直径0.4μm程度のフィブリル
の占有率が高くなって、繊維径が小さくなって行き、得
られる電解紙の緻密性が高まり地合が均一となるととも
に、イオンが通る経路としての微細な貫通孔を維持した
多孔質であるためである。即ち、本発明は繊維径が小さ
いく繊維がそれぞれ独立して電解紙を構成していること
と、多孔質であるとの相乗効果によってESRを改善す
ることができるのである。
を行った例であるが、この実施例6も外観は不透明感が
あって、光を乱反射しており、紙層内に多数の空隙を有
していることが判る。この実施例6は同一原料を使用し
た実施例5に対して、気密度が17600秒/100c
cと略2.5倍向上しているが、ESRの方は2.35
6Ω/1kHzと略4倍悪化している。これは通常乾燥
に比べると湿紙状態の空隙が保持されているものの、乾
燥時に水が存在することから繊維同志の引き付けが起っ
たものと考えられる。しかしながら、実施例1と同程度
のESRの値で、実施例1の略17倍の高い気密度を実
現している。更に高気密度の電解紙が要求されれば原料
叩解を進めたり、厚さを厚くしたり、密度を高くしたり
することにより容易に製造することができる。
(NUKP:針葉樹未晒クラフトパルプ)をダブルディ
スクリファイナーを用いて変法CSFの値で100ml
まで高度に叩解したものを水に分散させて、長網抄紙機
により湿紙を抄紙し、プレスロールにて過剰な水分を取
り除いた後にロール状に巻き取った。このロール状の湿
紙を繰り出して図4に示すように、エチルアルコールに
浸漬して湿紙中の水分とエチルアルコールとを置換する
作業を2度繰り返した後に、ドライヤーでエチルアルコ
ール及び残渣としての水を乾燥させて、厚さ30.3μ
m、密度0.508g/cm3の一重紙の電解紙を得
た。実施例8は実施例7と同一の原料の調成を行った
後、無機フィラーであるホウ酸アルミニウムを10重量
%添加して同一の製造方法により得た厚さ29.9μ
m、密度0.505g/cm3の一重紙の電解紙であ
る。この実施例7,8の電解紙を使用して容量220μ
F,定格電圧50WVのGBL系電解液を使用した電解
コンデンサを製作した。
ける湿紙中の水分をエチルアルコールで溶媒置換するこ
となく、通常の抄紙法におけるドライヤーで乾燥させた
ものであり、厚さは20.8μm、密度0.745g/
cm3となった。比較例2は実施例7と略同一厚さ、同
一密度とするために、実施例7の原料の叩解の程度を変
法CSFの値で600mlとして、円網抄紙機で湿紙を
製造し、該湿紙中の水分をエチルアルコールで溶媒置換
することなく、通常の抄紙法におけるドライヤーで乾燥
させたものであり、厚さは30.1μm、密度0.50
5g/cm3となった。この比較例1,2の電解紙を使
用して実施例7,8と同様の電解コンデンサを製作し
た。これら実施例7,8及び比較例1,2の電解紙の厚
さ、密度、気密度及び得られた電解コンデンサのショー
ト不良率とESRを表2に示す。
ラフトパルプを使用しているため、本来ならば茶色の外
観を呈するはずであるが、実際の外観は色目も白く、不
透明感があった。このように白く不透明感があるのは溶
媒置換乾燥を行っているために、湿紙中に存在した空隙
構造がそのまま紙層内に残存しているため、光を乱反射
するためである。実施例7の気密度は2250秒/10
0ccであって、極めて緻密ではあるが、空気が通り抜
けることから貫通孔が存在していることが分る。よっ
て、高い気密度であってもイオンが通る経路が確保され
ている。このように実施例7は従来製造できなかった1
000秒/100cc以上の気密度を実現している。そ
の結果得られた電解コンデンサのショート不良率は素子
巻時及びエージング時の双方ともに0%である。しか
も、厚さは30.3μmであり、密度も0.508g/
cm3と変法CSFの値で100mlと高度に叩解して
いるにもかかわらず、比較例1より格段に低密度となっ
ている。比較例1は溶媒置換を行っていないため、実施
例1と同じ湿紙から製造したにもかかわらず、厚さが2
0.8μmであって、実施例1より薄くなり、密度も
0.745g/cm3と高くなって、色は茶色でフィル
ム状になっている。また、貫通孔が存在せず気密度も無
限大となって測定することができない。その結果ショー
ト不良率は素子巻時及びエージング時の双方ともに0%
であるが、後述するようにESRが極端に悪化してい
る。実施例7と比較例1は原料調成が同じ原料である
が、抄紙された紙の厚さ、密度には大きな差がある。こ
れは溶媒置換を行わなかった比較例1が乾燥の際、表面
張力の大きい水が蒸発し繊維同志をひき付け合い、繊維
間に強固な結合ができたのに対し、溶媒置換した実施例
7は水の蒸発に伴う繊維間のひき付け合いが弱く、密度
の低い紙となったためである。よって、実施例7によれ
ば、叩解の程度を進めた原料を使用しても貫通孔を有す
る多孔質で低密度であるとともに、緻密性を有して高気
密度の電解紙を得ることができている。
る比較例2を実施例7を比較すると、比較例2の気密度
は16秒/100mlであって、貫通孔は存在するが、
緻密性がないことが判る。よって、目的とする気密度を
達成することができない。これは表面張力の大きい水が
乾燥時に蒸発することにより、繊維間を引合うが、原料
叩解が浅いため繊維径が大きく、繊維同志の密着度が低
いためである。その結果ショート不良率は素子巻時が
4.8%、エージング時が3.4%となっている。
較すると実施例7は2250秒/100ccの高い気密
度を有するにもかかわらず、ESRは0.1315Ω/
1kHzと、気密度16秒/100ccの比較例2と略
同等の値を示している。このように本発明によれば非常
に高い気密度であっても、多孔質であるためイオンが通
る経路としての貫通孔を確保することができること、及
び原料繊維の繊維径が小さいためESRが良好な電解コ
ンデンサ、即ち、ショート不良率とESRを極めて高い
次元で満足させる電解コンデンサを提供することができ
るのである。比較例1は溶媒置換を行っていないため、
実施例1と同じ湿紙から製造したにもかかわらず、気密
度が測定不可能な無限大であって、貫通孔が存在しない
ため、ESRは実施例7の略50倍である6.3897
Ω/1kHzと極端に悪化しており、使用することがで
きない。
不透明感がある。これも実施例7と同様紙層内に空隙が
存在し、光を乱反射するためである。気密度は1060
秒/100ccと緻密ではあるが、実施例1には及ばな
い。これは無機フィラーを混抄したため、湿紙状態での
無機フィラーとパルプ繊維の引き付けが弱かったためと
考えられる。しかし、無機フィラーを混抄した分だけ更
にESRが改善されている。
ーションマシンで製造する二重紙の電解紙を使用するも
のであり、木材パルプ(NUKP:針葉樹未晒クラフト
パルプ)をダブルディスクリファイナーを用いて変法C
SFの値で80mlまで高度に叩解したものを水に分散
させて長網抄紙機により湿紙を抄紙すると共に、同様に
JIS法CSFの値で500mlまで叩解したものを水
に分散させて円網抄紙機により湿紙を抄紙したものを抄
紙機上で重ね合わせて湿紙の状態でロール状に巻き取っ
た。このロール状の湿紙を繰り出して図4に示すよう
に、エチルアルコールに浸漬して湿紙中の水分とエチル
アルコールとを置換する作業を2度繰り返した後に、ド
ライヤーでエチルアルコール及び残渣としての水を乾燥
させて、厚さ50.6μm、密度0.510g/cm3
の二重紙の電解紙を得た。この実施例9の電解紙を使用
して容量440μF,定格電圧150WVのEG系電解
液を使用した電解コンデンサを製作した。
ける湿紙中の水分をエチルアルコールで溶媒置換するこ
となく、通常の抄紙法におけるドライヤーで乾燥させた
ものであり、厚さは40.2μm、密度0.654g/
cm3となった。比較例4は実施例9と略同一厚さ、同
一密度とするために、実施例7の原料の叩解の程度を変
法CSFの値で600mlとして、円網抄紙機で一重紙
からなる湿紙を製造し、該湿紙中の水分をエチルアルコ
ールで溶媒置換することなく、通常の抄紙法におけるド
ライヤーで乾燥させたものであり、厚さは49.7μ
m、密度0.515g/cm3となった。この比較例
3,4の電解紙を使用して実施例9と同様の電解コンデ
ンサを製作した。これら実施例9及び比較例3,4の電
解紙の厚さ、密度、気密度及び得られた電解コンデンサ
のショート不良率とESRを表3に示す。
が、気密度が無限大であって貫通孔が存在しないため、
ESRは4.622Ω/1kHzと高くなっている。一
方比較例4は円網抄紙品であり、気密度3.4秒/10
0ccであり、ESRは0.1967Ω/1kHzと良
好であるが、ショート不良率が素子巻時が1.7%、エ
ージング時が2.2%と高くなっている。これに対し、
実施例9は叩解を進めた原料を用い長網で抄紙したもの
を溶媒置換したものであり、気密度が3470秒/10
0ccと高く、ショート不良率は0%であって、しかも
貫通孔を有しているためイオンが通る経路を確保してい
るため、ESRも0.2053Ω/1kHzとよい結果
が得られた。
ビネーションマシンで製造する二重紙の電解紙を使用す
るものであり、マニラ麻パルプをダブルディスクリファ
イナーを用いて変法CSFの値で50mlまで高度に叩
解したものを水に分散させて長網抄紙機により湿紙を抄
紙すると共に、同様にJIS法CSFの値で650ml
まで叩解したものを水に分散させて円網抄紙機により湿
紙を抄紙したものを抄紙機上で重ね合わせて湿紙の状態
でロール状に巻き取った。このロール状の湿紙を繰り出
して図4に示すように、エチルアルコールに浸漬して湿
紙中の水分とエチルアルコールとを置換する作業を2度
繰り返した後に、ドライヤーでエチルアルコール及び残
渣としての水を乾燥させて、厚さ60.4μm、密度
0.560g/cm3の二重紙の電解紙を得た。この実
施例10の電解紙を使用して容量33μF,定格電圧3
50WVのGBL系電解液を使用した電解コンデンサを
製作した。
おける湿紙中の水分をエチルアルコールで溶媒置換する
ことなく、通常の抄紙法におけるドライヤーで乾燥させ
たものであり、厚さは50.1μm、密度0.683g
/cm3となった。比較例6はJIS法CSFの値で6
50mlまで叩解したものを水に分散させて円網抄紙機
により抄紙した湿紙を2層重ねたもの(円網2槽抄き)
を通常の抄紙法におけるドライヤーで乾燥させたもので
あり、厚さは89.7μm、密度0.606g/cm3
と実施例10よりも厚く、密度の高いものである。この
比較例5,6の電解紙を使用して実施例10と同様に容
量33μF,定格電圧350WVのGBL系電解液を使
用した電解コンデンサを製作した。これら実施例10及
び比較例5,6の電解紙の厚さ、密度、気密度及び得ら
れた電解コンデンサのショート不良率とESRを表4に
示す。
の場合、電解液が含浸しても電解紙が膨潤しないため、
ショート不良率とESRのバランスを取った実用可能な
中高圧用電解コンデンサは提供されていない。比較例6
に示すものが目的とするESRを実現するためにショー
ト不良率を犠牲にして密度の低い円網抄紙品(円網2槽
抄き)を使用した例であるが、叩解の程度がJIS法C
SFの値で650mlと浅いため二層を重ね合わせて
も、気密度は31.8秒/100ccであり緻密性が低
く、エージング時のショート不良率が2.2%発生して
いる。しかも31.8秒/100ccの気密度を実現す
るために、又耐電圧を持たすために89.7μmと厚く
している。よって、比較例6に示すものは中高圧用電解
コンデンサとして実用されていない。
電解紙を構成する2層のうち1層が長網抄紙品であるた
め、気密度が無限大であって貫通孔が存在せず、ショー
ト不良率は0%である。しかし、イオンが通る経路とし
ての貫通孔が存在せず、かつ、電解液を含浸しても電解
紙が膨潤しないためESRは33.58Ω/1kHzと
極端に悪く、使用することができない。従来はこの比較
例5をGBL系電解液からEG系電解液に代えて電解紙
を膨潤させることにより、350WVの中高圧用電解コ
ンデンサとして使用しているのである。よって、ショー
ト不良率とESRをバランス良く実現した実用可能なG
BL系電解液を使用した中高圧用電解コンデンサは未だ
提供されていない。これに対し実施例10は気密度が4
210秒/100ccでありショート不良率を0%とす
るとともに、ESRも1.173Ω/1kHzと気密度
31.8秒/100ccの比較例6のESR1.334
Ω/1kHzよりも良好な値を示しており、中高圧用電
解コンデンサとして十分に実用可能である。しかも厚さ
も60.4μmであり、比較例6の89.7μmよりも
薄く、電解コンデンサを小型化することが可能である。
これはイオンが通る経路としての貫通孔を維持するため
に多孔質であって、かつ、高い気密度を有する本発明に
かかる電解紙を使用しているためである。よって、実施
例10に示すように従来不可能であったGBL系電解液
を使用した中高圧用電解コンデンサを提供することがで
きる。
ば湿紙の状態においてセルロース繊維間の空隙構造に保
持された水を溶媒置換又は凍結乾燥によって乾燥し、或
はセルロース繊維を有機溶媒に分散させて抄紙すること
により湿紙を製造し、湿紙中の有機溶媒を揮発させるこ
とにより乾燥させるため、従来の抄紙法のように湿紙か
らの乾燥工程で水が蒸発するときに隣同志の繊維を強力
に引き付けて水素結合により密着することがない。その
ため、繊維径が1μm以下の微細なセルロース繊維を原
料として、高気密度であって多孔質の電解紙を、厚さを
厚くすることなく得ることができる。具体的には厚さが
100μm以下、気密度が1000秒/100cc以上
の多孔質高気密度の電解紙を得ることができる。即ち、
本発明にかかる多孔質高気密度の電解紙は叩解の程度を
進めた原料を使用しても、貫通孔が存在するため、低密
度であるとともに、緻密性を有して気密度が高いもので
ある。外観的にも白色で不透明感があり、このことは紙
中に多くの空隙を有していることを示している。
に高い気密度を有し、かつ、ESRを改善するためにイ
オンが通る経路としての貫通孔を維持した多孔質の電解
紙を得ることができる。また、電解液を含浸させたとき
に、イオンの通過に対する抵抗も小さい。このためま
た、水、油やその他の溶媒に対する馴染みも良い。これ
は水などの親水性溶媒についてはセルロース中のOH基
により、非水溶媒に対しては微細な貫通孔へ浸入するた
めである。よって、この電解紙を用いることによって、
低圧用から中高圧用までインピーダンス特性とショート
不良率の双方を高いレベルで効果的に改善する電解コン
デンサを提供することができ、更には従来の電解紙では
製造できなかったGBL系電解液を使用した中高圧用電
解コンデンサを提供することができる。
の関係を示すグラフ。
の関係を示すグラフ。
フ。
よる製造方法の一例を示す説明図。
よる製造方法の他例を示す説明図。
よる製造方法を示す説明図。
(A)、漏斗を示す説明図(B)、架台を示す説明図
(C)。
Claims (15)
- 【請求項1】 陽極箔と陰極箔との間に電解紙を介在し
てなる電解コンデンサにおいて、前記電解紙はセルロー
スを原料として湿紙を製造し、該湿紙に存在する空隙構
造を保持したまま乾燥させたことを特徴とする電解コン
デンサ。 - 【請求項2】 陽極箔と陰極箔との間に電解紙を介在し
てなる電解コンデンサにおいて、前記電解紙はセルロー
スを原料として湿紙を製造し、該湿紙に存在する空隙構
造を保持したまま乾燥させることにより、微細な貫通孔
を有することを特徴とする電解コンデンサ。 - 【請求項3】 原料を水に分散させて抄紙することによ
り湿紙を製造する請求項1又は2記載の電解コンデン
サ。 - 【請求項4】 原料を水より表面張力の小さい有機溶媒
に分散させて抄紙することにより湿紙を製造する請求項
1又は2記載の電解コンデンサ。 - 【請求項5】 湿紙中の水分を水と相溶性のある表面張
力の小さい溶媒と置換することにより、湿紙の状態にお
いて空隙構造に存在する水を空隙を癒すことなく乾燥さ
せる請求項1,2又は3記載の電解コンデンサ。 - 【請求項6】 湿紙中の水分を凍結乾燥させることによ
り、湿紙に存在する空隙構造を癒すことなく乾燥させる
請求項1,2又は3記載の電解コンデンサ。 - 【請求項7】 湿紙中の有機溶媒を揮発させることによ
り、湿紙の状態において空隙構造に存在する水を空隙を
癒すことなく乾燥させる請求項4記載の電解コンデン
サ。 - 【請求項8】 抄紙に代えて、原料をキャスティング製
膜することにより湿紙を製造する請求項3,4,5,6
又は7記載の電解コンデンサ。 - 【請求項9】 繊維径が1μm以下の微細なセルロース
を原料として湿紙を製造する請求項1,2,3,4,
5,6,7又は8記載の電解コンデンサ。 - 【請求項10】 微細なセルロースとしてセルロース繊
維をJIS法CSFの値で200ml以下に叩解したセ
ルロースを使用する請求項9記載の電解コンデンサ(但
し、JIS法CSFの値はJIS P8121の規定に
より測定した値とする)。 - 【請求項11】 微細なセルロースとしてセルロース繊
維を変法CSFの値で700ml以下に叩解したセルロ
ースを使用する請求項9記載の電解コンデンサ(但し、
変法CSFの値はJIS P8121に規定する測定法
において、試料3gを試料0.3gとして測定した値と
する)。 - 【請求項12】 微細なセルロースとしてセルロース繊
維を高圧下剪断力で解繊したマイクロフィブリル化セル
ロースを使用する請求項9記載の電解コンデンサ。 - 【請求項13】 湿紙に無機フィラーを混抄する請求項
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11又は
12記載の電解コンデンサ。 - 【請求項14】 無機フィラーとしてホウ酸アルミニウ
ム又はチタン酸カリウムを使用する請求項13記載の電
解コンデンサ。 - 【請求項15】 得られた多孔質高気密度紙は厚さが1
00μm以下、気密度が1000秒/100cc以上で
ある請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,1
0,11,12,13又は14記載の電解コンデンサ。
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- 1996-12-05 JP JP34245296A patent/JP3872853B2/ja not_active Expired - Fee Related
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