JP2014194870A - ホウ素含有スルホン酸エステル化合物、非水電解液用添加剤、非水電解液、及び、蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウム:イオン電池の電極の表面の固体電解質界面(SEI)の形成に用いられる添加剤の性能は不充分であった。安全性に優れ、サイクル特性、充放電効率、内部抵抗等を向上させるSEIを電極表面上に形成し、非水電解液二次電池の電池特性を向上させる新規な電解液用添加剤の提供。
【解決手段】式(1)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物。
式(1)中、R1及びR2は、水素、ハロゲン、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、R1とR2とは連結しても良い基を示す。蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができる。
【選択図】なし
【解決手段】式(1)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物。
式(1)中、R1及びR2は、水素、ハロゲン、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、R1とR2とは連結しても良い基を示す。蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、新規のホウ素含有スルホン酸エステル化合物に関する。また、本発明は、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤に関する。更に、本発明は、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスに関する。
近年、環境問題の解決、持続可能な循環型社会の実現に対する関心が高まるにつれ、リチウムイオン電池に代表される非水電解液二次電池の研究が広範囲に行われている。なかでもリチウムイオン電池は高い使用電圧とエネルギー密度から、ノート型パソコン、携帯電話等の電源として用いられている。これらリチウムイオン電池は、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較してエネルギー密度が高く、高容量化が実現されるため期待されている。
しかしながら、リチウムイオン電池には、充放電サイクルの経過に伴って電池の容量が低下するという問題がある。これは長期間の充放電サイクルの経過に伴い、電極反応による電解液の分解や電極活物質層への電解質の含浸性の低下、更にリチウムイオンのインターカレーション効率の低下が生じること等が要因に挙げられる。
充放電サイクルの経過に伴う電池の容量の低下を抑制する方法として、電解液に各種添加剤を加える方法が検討されている。添加剤は、最初の充放電時に分解され、電極表面上に固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜を形成する。SEIは、充放電サイクルの最初のサイクルにおいて形成するため、電解液の分解に電気が消費されることはなく、リチウムイオンはSEIを介して電極を行き来することができる。すなわち、SEIの形成は充放電サイクルを繰り返した場合の二次電池の劣化を防ぎ、電池特性、保存特性又は負荷特性等を向上させることに大きな役割を果たすと考えられている。
SEIを形成する電解液用添加剤として、例えば、特許文献1〜3には、環状モノスルホン酸エステルが開示されている。また、特許文献4には、含硫黄芳香族化合物が開示されており、特許文献5にはジスルフィド化合物が開示されている。更に、特許文献6〜9にはジスルホン酸エステルが開示されている。
また、特許文献10〜13には、ビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネートを含有する電解液が提案されており、特許文献14、15では1,3−プロパンスルトンやブタンスルトンを含有する電解液が提案されている。
また、特許文献10〜13には、ビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネートを含有する電解液が提案されており、特許文献14、15では1,3−プロパンスルトンやブタンスルトンを含有する電解液が提案されている。
電解液に用いる添加剤によって電極表面に被膜として形成するSEIは、サイクル特性、充放電効率、内部抵抗等、多くの電池特性に深く関与している。
例えば、特許文献10〜15に開示されているビニレンカーボネート系化合物や1,3−プロパンスルトン等のスルトン系化合物を添加剤として用いた電解液は、負極表面上に電気的還元分解を生じて生成したSEI被膜によって、不可逆的容量低下を抑制することが可能となっている。そのため、ビニレンカーボネート系化合物やスルトン系化合物は電解液用添加剤として多用されている。しかしながら、これらの化合物によるSEI被膜は電極保護作用として機能するものの、Liイオンのイオン伝導性が低いため、内部抵抗を低下させる性能は小さかった。更に、長期間の使用に耐えうるほどの強度がないため、使用中にSEI被膜が分解したり亀裂が生じたりすることによって負極表面が露出し、電解液溶媒の分解が生じて電池特性が低下するという問題があった。また、高温条件下でのSEIの劣化により亀裂が生じ、被膜の肥大に伴って内部抵抗が上昇するという問題があった。
このように、従来の非水電解液用添加剤は充分な性能が得られておらず改善の余地があった。即ち、安定性に優れ、サイクル特性、充放電効率、内部抵抗等を向上させるSEIを電極表面上に形成し、非水電解液二次電池の電池特性を向上させる新規な電解液用添加剤の開発が望まれていた。
例えば、特許文献10〜15に開示されているビニレンカーボネート系化合物や1,3−プロパンスルトン等のスルトン系化合物を添加剤として用いた電解液は、負極表面上に電気的還元分解を生じて生成したSEI被膜によって、不可逆的容量低下を抑制することが可能となっている。そのため、ビニレンカーボネート系化合物やスルトン系化合物は電解液用添加剤として多用されている。しかしながら、これらの化合物によるSEI被膜は電極保護作用として機能するものの、Liイオンのイオン伝導性が低いため、内部抵抗を低下させる性能は小さかった。更に、長期間の使用に耐えうるほどの強度がないため、使用中にSEI被膜が分解したり亀裂が生じたりすることによって負極表面が露出し、電解液溶媒の分解が生じて電池特性が低下するという問題があった。また、高温条件下でのSEIの劣化により亀裂が生じ、被膜の肥大に伴って内部抵抗が上昇するという問題があった。
このように、従来の非水電解液用添加剤は充分な性能が得られておらず改善の余地があった。即ち、安定性に優れ、サイクル特性、充放電効率、内部抵抗等を向上させるSEIを電極表面上に形成し、非水電解液二次電池の電池特性を向上させる新規な電解液用添加剤の開発が望まれていた。
本発明は、新規のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、非水溶媒を溶媒として用いた電解液において、特定の構造を有する新規のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を添加することにより、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、下記式(1)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物である。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、構造中にホウ素原子を含むため、非水電解液用添加剤として用いた場合、形成されるSEIが電極への密着性がよく、充放電サイクル時に生じる微細なクラックに対してもすぐに修復することができる可能性が考えられる。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、構造中にホウ素原子を含むため、非水電解液用添加剤として用いた場合、形成されるSEIが電極への密着性がよく、充放電サイクル時に生じる微細なクラックに対してもすぐに修復することができる可能性が考えられる。
式(1)中、R1及びR2は、水素、ハロゲン、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、R1とR2とが連結してなる下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)、若しくは、(2−4)で表される基を示す。R3は、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。
式(2−1)〜(2−4)中、R4は、置換されていてもよい炭素数0〜6のアルキレン基を示し、*は、式(1)におけるホウ素との結合部分を示す。式(2−4)中、R5及びR6は、それぞれ独立し、水素、又は、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
以下に、本発明について詳述する。
以下に、本発明について詳述する。
前記式(1)中、R1及びR2で示される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
また、R1及びR2で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
また、R1及びR2で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
前記式(1)中、R3で示される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、1−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキサレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基が好ましい。
前記式(1)中、R3で示されるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
また、R3で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
前記式(1)中、R3で示されるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
また、R3で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
前記式(1)中、R1とR2とが連結して、前記式(2−1)、(2−2)、(2−3)、又は、(2−4)で表される基を示す場合、本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、具体的には、下記式(3−1)、(3−2)、(3−3)、又は、(3−4)で表される。
式(3−1)〜(3−4)中、R4は、置換されていてもよい炭素数0〜6のアルキレン基を示す。式(3−4)中、R5及びR6は、それぞれ独立し、水素、又は、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
式(2−1)〜(2−4)、及び、式(3−1)〜(3−4)中、R4は、炭素数0〜6のアルキレン基を示す。R4が「炭素数0のアルキレン基」である場合とは、式(2−1)及び式(3−1)において、R4を介した2つのカルボニル基の炭素同士が直接結合している場合、式(2−2)及び式(3−2)において、R4を介した2つのスルホニル基の硫黄同士が直接結合している場合、式(2−3)及び式(3−3)において、R4を介した2つの酸素同士が直接結合している場合、式(2−4)及び式(3−4)において、R4を介した2つの窒素同士が直接結合している場合を意味する。
R4で示されるアルキレン基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。R4で示されるアルキレン基の炭素数の好ましい上限は2である。
前記式(2−1)〜(2−4)、及び、式(3−1)〜(3−4)中、R4で示される、炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、1−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキサレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、エチレン基であることが好ましい。
また、R4で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、又は、置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていることが好ましく、ハロゲンで置換されていることがより好ましい。
前記式(2−1)〜(2−4)、及び、式(3−1)〜(3−4)中、R4で示される、炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、1−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキサレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、エチレン基であることが好ましい。
また、R4で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換されていてもよいフェニル基、又は、置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていることが好ましく、ハロゲンで置換されていることがより好ましい。
前記式(2−4)及び式(3−4)中、R5及びR6で示される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
また、R5及びR6で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
また、R5及びR6で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物としては、下記式(4)で表される化合物も挙げられる。
式(4)中、R7及びR8は、それぞれ独立し、ハロゲン、又は、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
前記式(4)中、R7及びR8で示されるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。なかでも、フッ素が好ましい。
前記式(4)中、R7及びR8で示される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることが好ましい。
また、R7及びR8で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
また、R7及びR8で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物としては、下記式(5)で表される化合物も挙げられる。
式(5)中、R9は、ハロゲン、又は、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
前記式(5)中、R9で示されるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。なかでも、フッ素が好ましい。
前記式(5)中、R9で示される置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基であることが好ましい。
また、R9で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
また、R9で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を製造する方法としては、例えば、メタンジスルホン酸とリチウムテトラフルオロボラートを反応させる方法等が挙げられる。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物からなる非水電解液用添加剤もまた、本発明の1つである。本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すため、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いる非水電解液に添加された場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる。また、本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、水分や温度変化に対して安定であるため、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、長期間、室温で保存することが可能である。
本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、最低空分子軌道(LUMO)エネルギーの好ましい下限が−2.8eV、好ましい上限が0.0eVである。前記LUMOエネルギーが−2.8eV未満であると、過剰な分解を起こし、電極上に高い抵抗を示す被膜を形成することがある。前記LUMOエネルギーが0.0eVを超えると、非水電解液二次電池等の電極表面上に安定なSEIを形成することができないことがある。前記LUMOエネルギーのより好ましい下限は−1.4eV、より好ましい上限は−0.1eVである。
なお、前記「最低空分子軌道(LUMO)エネルギー」は、半経験的分子軌道計算法:PM3と密度汎関数法:B3LYP法とを組み合わせて算出される。具体的に本発明では、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社製ソフトウェア)を用いて算出された値を用いる。
なお、前記「最低空分子軌道(LUMO)エネルギー」は、半経験的分子軌道計算法:PM3と密度汎関数法:B3LYP法とを組み合わせて算出される。具体的に本発明では、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社製ソフトウェア)を用いて算出された値を用いる。
上述したように、本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、水分や温度変化に対して安定であるため、該非水電解液用添加剤を含有する非水電解液も、長期間の保存及び使用に耐えることができる。
本発明の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液もまた、本発明の1つである。
本発明の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液もまた、本発明の1つである。
本発明の非水電解液における本発明の非水電解液用添加剤の含有量(即ち、前記式(1)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物の含有量)は特に限定されないが、好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が0.005質量%未満であると、蓄電デバイスに用いた場合に電極表面での電気化学反応によって安定なSEIを充分に形成できないおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が10質量%を超えると、溶解しにくくなるだけでなく非水電解液の粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、電解液の導電性等を充分に確保することができず、蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量のより好ましい下限は0.01質量%である。
前記非水溶媒としては、得られる非水電解液の粘度を低く抑える等の観点から、非プロトン性溶媒が好適である。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記非水溶媒としては、具体的には例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の環状カーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等の脂肪族カルボン酸エステルや、γ−ブチロラクトン等のラクトンや、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等のラクタムや、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルや、1,2−エトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテルや、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等のハロゲン誘導体等が挙げられる。これらの非水溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
前記電解質としては、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩が好ましい。なかでも、LiAlCl4、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、及び、LiSbF6からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、LiBF4、LiPF6であることがより好ましい。これらの電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の非水電解液における前記電解質の濃度は特に限定されないが、好ましい下限は0.1mol/L、好ましい上限は2.0mol/Lである。前記電解質の濃度が0.1mol/L未満であると、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度が2.0mol/Lを超えると、粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度のより好ましい下限は0.5mol/L、より好ましい上限は1.5mol/Lである。
本発明の非水電解液、正極、及び、負極を備えた蓄電デバイスもまた、本発明の1つである。前記蓄電デバイスとしては、非水電解液二次電池や電気二重層キャパシタ等が挙げられる。これらの中でもリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタが好適である。
図1は、本発明の蓄電デバイスの一例を模式的に示した断面図である。
図1において、蓄電デバイス1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されている。
図1において、蓄電デバイス1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されている。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極集電体2及び負極集電体5としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる金属箔を用いることができる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極活物質層3に用いる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物が好ましく用いられ、具体的には例えば、LiMnO2、LiFeO2、LiCoO2、LiMn2O4、Li2FeSiO4等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
本発明の蓄電デバイスにおいて、負極活物質層6に用いる負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料や、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、酸化亜鉛、及び酸化リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の蓄電デバイスにおいて、セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる多孔質フィルムを用いることができる。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の蓄電デバイスにおいて、セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる多孔質フィルムを用いることができる。
本発明によれば、新規のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を提供することができる。また、本発明によれば、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することができる。更に、本発明によれば、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた300mL容の4つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.1モル)、リチウムテトラフルオロボラート12.2g(0.13モル)、テトラクロロシラン0.85g(0.005モル)、及び、トルエン80.0gを仕込み80℃で8時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン30gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(6)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物1)12.5gを取得した。化合物1の収率は、メタンジスルホン酸に対して56%であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた300mL容の4つ口フラスコに、メタンジスルホン酸17.6g(0.1モル)、リチウムテトラフルオロボラート12.2g(0.13モル)、テトラクロロシラン0.85g(0.005モル)、及び、トルエン80.0gを仕込み80℃で8時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン30gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(6)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物1)12.5gを取得した。化合物1の収率は、メタンジスルホン酸に対して56%であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物1を、含有割合が0.5質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物1を、含有割合が0.5質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例2)
「非水電解液の調製」において、化合物1の含有割合を1.0質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
「非水電解液の調製」において、化合物1の含有割合を1.0質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(実施例3)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた300mL容の4つ口フラスコに、エタン1,1−ジスルホン酸19.0g(0.1モル)、リチウムテトラフルオロボラート12.2g(0.13モル)、テトラクロロシラン0.85g(0.005モル)、及び、トルエン80.0gを仕込み80℃で8時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン25gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(7)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物2)12.1gを取得した。化合物2の収率は、エタン1,1−ジスルホン酸に対して42%であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた300mL容の4つ口フラスコに、エタン1,1−ジスルホン酸19.0g(0.1モル)、リチウムテトラフルオロボラート12.2g(0.13モル)、テトラクロロシラン0.85g(0.005モル)、及び、トルエン80.0gを仕込み80℃で8時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン25gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(7)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物2)12.1gを取得した。化合物2の収率は、エタン1,1−ジスルホン酸に対して42%であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物2を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物2を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例4)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例1と同様にして作製した化合物1を2.2g(0.01モル)、シュウ酸を0.9g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン10gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(8)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物3)1.1gを取得した。化合物3の収率は、化合物1に対して40%(メタンジスルホン酸に対して23%)であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例1と同様にして作製した化合物1を2.2g(0.01モル)、シュウ酸を0.9g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン10gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(8)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物3)1.1gを取得した。化合物3の収率は、化合物1に対して40%(メタンジスルホン酸に対して23%)であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物3を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物3を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例5)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、シュウ酸を0.9g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン10gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(9)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物4)1.1gを取得した。化合物4の収率は、化合物2に対して37%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して16%)であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、シュウ酸を0.9g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン10gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(9)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物4)1.1gを取得した。化合物4の収率は、化合物2に対して37%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して16%)であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物4を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物4を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例6)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、マロン酸を1.0g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(10)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物5)1.2gを取得した。化合物5の収率は、化合物2に対して48%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して20%)であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、マロン酸を1.0g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(10)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物5)1.2gを取得した。化合物5の収率は、化合物2に対して48%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して20%)であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物5を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物5を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例7)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、メタンジスルホン酸を1.76g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(11)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物6)1.1gを取得した。化合物6の収率は、化合物2に対して30%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して13%)であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、メタンジスルホン酸を1.76g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(11)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物6)1.1gを取得した。化合物6の収率は、化合物2に対して30%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して13%)であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物6を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物6を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例8)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、エチレングリコールを0.62g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(12)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物7)1.0gを取得した。化合物7の収率は、化合物2に対して30%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して13%)であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、エチレングリコールを0.62g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(12)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物7)1.0gを取得した。化合物7の収率は、化合物2に対して30%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して13%)であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物7を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物7を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例9)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミンを0.88g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(13)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物8)0.8gを取得した。化合物8の収率は、化合物2に対して28%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して12%)であった。
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた50mL容の3つ口フラスコに、実施例3と同様にして作製した化合物2を2.4g(0.01モル)、N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミンを0.88g(0.01モル)、テトラクロロシランを0.01g(0.0005モル)、及び、トルエンを10.0g仕込み、続いて加熱還流下10時間撹拌した後、トルエンを留去した。続いて、ヘプタン8gを添加し、1時間加熱還流した後、室温まで冷却することで、下記式(13)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物8)0.8gを取得した。化合物8の収率は、化合物2に対して28%(エタン1,1−ジスルホン酸に対して12%)であった。
(非水電解液の調製)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物8を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として作製した化合物8を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(比較例1)
化合物1を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例2)
化合物1に代えて、1,3−プロパンスルトンを含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、1,3−プロパンスルトンを含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例3)
化合物1に代えて、ビニレンカーボネート(VC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、ビニレンカーボネート(VC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例4)
ビニレンカーボネート(VC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例3と同様にして非水電解液を調製した。
ビニレンカーボネート(VC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例3と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例5)
化合物1に代えて、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例6)
フルオロエチレンカーボネート(FEC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例5と同様にして非水電解液を調製した。
フルオロエチレンカーボネート(FEC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例5と同様にして非水電解液を調製した。
<評価>
(LUMOエネルギーの測定)
実施例で得られた化合物1〜8について、LUMO(最低空分子軌道)エネルギーを測定するため、Gaussian03ソフトウェアにより、半経験的分子軌道計算を行った。軌道計算により得られた化合物1〜8のLUMOエネルギーを表1に示した。
(LUMOエネルギーの測定)
実施例で得られた化合物1〜8について、LUMO(最低空分子軌道)エネルギーを測定するため、Gaussian03ソフトウェアにより、半経験的分子軌道計算を行った。軌道計算により得られた化合物1〜8のLUMOエネルギーを表1に示した。
表1より、式(1)で表されるホウ素含有スルホン酸エステル化合物(化合物1〜8)のLUMOエネルギーは負の値を示す約−0.72eVから約−1.52eVであり、これらホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、低いLUMOエネルギーを有していることがわかる。そのため、化合物1〜8を非水電解液用添加剤として非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合、非水電解液の溶媒(例えば、環状カーボネートや鎖状カーボネート:LUMOエネルギー約1.2eV)よりも先に化合物1〜8の電気化学的還元が起こり、電極上にSEIが形成されるため電解液中の溶媒の分解を抑制することができる。その結果、高い抵抗を示す溶媒の分解被膜が電極上に形成されにくくなり電池特性の向上が期待される。
以上より、本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は充分に低いLUMOエネルギーを有しており、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電極上に安定なSEIを形成する新規の非水電解液用添加剤として有効であることを示している。
以上より、本発明のホウ素含有スルホン酸エステル化合物は充分に低いLUMOエネルギーを有しており、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電極上に安定なSEIを形成する新規の非水電解液用添加剤として有効であることを示している。
(電池の作製)
正極活物質としてLiMn2O4、及び、導電性付与剤としてカーボンブラックを乾式混合し、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを作製した。得られたそのスラリーを正極集電体となるアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)上に塗布後、NMPを蒸発させることにより正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で、正極活物質:導電性付与剤:PVDF=80:10:10とした。
一方、負極シートとして、市販の黒鉛塗布電極シート(宝泉社製)を用いた。
各実施例及び各比較例で得られた非水電解液中にて、負極シートと正極シートとを、ポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、円筒型二次電池を作製した。
正極活物質としてLiMn2O4、及び、導電性付与剤としてカーボンブラックを乾式混合し、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを作製した。得られたそのスラリーを正極集電体となるアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)上に塗布後、NMPを蒸発させることにより正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で、正極活物質:導電性付与剤:PVDF=80:10:10とした。
一方、負極シートとして、市販の黒鉛塗布電極シート(宝泉社製)を用いた。
各実施例及び各比較例で得られた非水電解液中にて、負極シートと正極シートとを、ポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、円筒型二次電池を作製した。
(放電容量維持率及び内部抵抗比の測定)
得られた各円筒型二次電池に対して、25℃において、充電レートを0.3C、放電レートを0.3C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を2.5Vとして充放電サイクル試験を行った。200サイクル後の放電容量維持率(%)及び内部抵抗比を表2に示した。なお、200サイクル後の「放電容量維持率(%)」とは、200サイクル試験後の放電容量(mAh)を、10サイクル試験後の放電容量(mAh)で割った値に100をかけたものである。また、200サイクル後の「内部抵抗比」とは、サイクル試験前の抵抗を1としたときの、200サイクル試験後の抵抗を相対値で示したものである。
得られた各円筒型二次電池に対して、25℃において、充電レートを0.3C、放電レートを0.3C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を2.5Vとして充放電サイクル試験を行った。200サイクル後の放電容量維持率(%)及び内部抵抗比を表2に示した。なお、200サイクル後の「放電容量維持率(%)」とは、200サイクル試験後の放電容量(mAh)を、10サイクル試験後の放電容量(mAh)で割った値に100をかけたものである。また、200サイクル後の「内部抵抗比」とは、サイクル試験前の抵抗を1としたときの、200サイクル試験後の抵抗を相対値で示したものである。
表2から、実施例のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を含む非水電解液を用いた円筒型二次電池は、比較例の非水電解液を用いた円筒型二次電池と比較して、電極表面上に充放電サイクルに対して安定なSEIを形成していることがわかる。また、実施例のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を用いた非水電解液は、比較例の非水電解液に比べて、内部抵抗比が低い値を維持しており、サイクル時による内部抵抗の増加を抑制できることが分かる。
本発明によれば、新規のホウ素含有スルホン酸エステル化合物を提供することができる。また、本発明によれば、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成して電池の寿命や容量等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することができる。更に、本発明によれば、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することができる。
1 蓄電デバイス
2 正極集電体
3 正極活物質層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 負極板
8 非水電解液
9 セパレータ
2 正極集電体
3 正極活物質層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 負極板
8 非水電解液
9 セパレータ
Claims (14)
- 請求項1、2、3又は4記載のホウ素含有スルホン酸エステル化合物からなることを特徴とする非水電解液用添加剤。
- ホウ素含有スルホン酸エステル化合物は、最低空分子軌道エネルギーが−2.8〜0.0eVであることを特徴とする請求項5記載の非水電解液用添加剤。
- 請求項5又は6記載の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有することを特徴とする非水電解液。
- 非水溶媒は、非プロトン性溶媒であることを特徴とする請求項7記載の非水電解液。
- 非プロトン性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載の非水電解液。
- 電解質は、リチウム塩を含有することを特徴とする請求項7、8又は9記載の非水電解液。
- リチウム塩は、LiAlCl4、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、及び、LiSbF6からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項10記載の非水電解液。
- 請求項7、8、9、10又は11記載の非水電解液、正極、及び、負極を備えたことを特徴とする蓄電デバイス。
- 蓄電デバイスがリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項12記載の蓄電デバイス。
- 蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタであることを特徴とする請求項12記載の蓄電デバイス。
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