JP2015191806A - 非水電解液用添加剤、非水電解液、及び、蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供する。【解決手段】式(1−1)又は式(1−2)で表されるスルファニルチオフェン化合物を含有する非水電解液用添加剤。【選択図】なし
Description
本発明は、非水電解液用添加剤に関する。また、本発明は、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスに関する。
近年、環境問題の解決、持続可能な循環型社会の実現に対する関心が高まるにつれ、リチウムイオン電池に代表される非水電解液二次電池の研究が広範囲に行われている。なかでも、リチウムイオン電池は高い使用電圧とエネルギー密度から、ノート型パソコン、携帯電話等の電源として用いられている。これらのリチウムイオン電池は、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較してエネルギー密度が高く、高容量化の実現が期待されている。
しかしながら、リチウムイオン電池には、充放電サイクルの経過に伴って電池の容量が低下するという問題がある。これは、長期間の充放電サイクルの経過に伴い、電極反応による電解液の分解や電極活物質層への電解質の含浸性の低下、更にリチウムイオンのインターカレーション効率の低下が生じること等が要因に挙げられる。
しかしながら、リチウムイオン電池には、充放電サイクルの経過に伴って電池の容量が低下するという問題がある。これは、長期間の充放電サイクルの経過に伴い、電極反応による電解液の分解や電極活物質層への電解質の含浸性の低下、更にリチウムイオンのインターカレーション効率の低下が生じること等が要因に挙げられる。
充放電サイクルの経過に伴う電池の容量の低下を抑制する方法として、電解液に各種添加剤を加える方法が検討されている。添加剤は、最初の充放電時に分解され、電極表面上に固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜を形成する。SEIは、充放電サイクルの最初のサイクルにおいて形成するため、電解液の分解に電気が消費されることはなく、リチウムイオンはSEIを介して電極を行き来することができる。すなわち、SEIの形成は充放電サイクルを繰り返した場合の非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの劣化を防ぎ、電池特性、保存特性又は負荷特性等を向上させることに大きな役割を果たすと考えられている。
SEIを形成する電解液用添加剤として、例えば、特許文献1〜3には、環状モノスルホン酸エステル、特許文献4には、含硫黄芳香族化合物、特許文献5にはジスルフィド化合物、特許文献6〜9にはジスルホン酸エステルがそれぞれ開示されている。
また、特許文献10〜13には、ビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネートを含有する電解液が開示されており、特許文献14、15には、1,3−プロパンスルトンやブタンスルトンを含有する電解液が開示されている。
また、特許文献10〜13には、ビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネートを含有する電解液が開示されており、特許文献14、15には、1,3−プロパンスルトンやブタンスルトンを含有する電解液が開示されている。
電解液に用いる添加剤によって電極表面に被膜として形成する固体電解質界面(SEI)は、サイクル特性、充放電効率、内部抵抗等、多くの電池特性に深く関与している。
例えば、特許文献10〜15に開示されているビニレンカーボネート系化合物やスルトン系化合物を添加剤として用いた電解液は、負極表面上に電気的還元分解を生じて生成したSEIによって、不可逆的容量低下を抑制することが可能となっている。しかしながら、これらの化合物は、負極に対しては作用するものの、正極に対しての効果は小さいため、正極表面上では電解液の分解反応によりガスが発生しやすかった。更に、高温条件下では電解液の分解反応が起きやすいため、多量のガスが発生するという問題があった。ガスの発生によりリチウムイオン電池等の蓄電デバイスに膨れが生じるため、安全性の観点から、ガスの発生を抑制することが求められていた。
例えば、特許文献10〜15に開示されているビニレンカーボネート系化合物やスルトン系化合物を添加剤として用いた電解液は、負極表面上に電気的還元分解を生じて生成したSEIによって、不可逆的容量低下を抑制することが可能となっている。しかしながら、これらの化合物は、負極に対しては作用するものの、正極に対しての効果は小さいため、正極表面上では電解液の分解反応によりガスが発生しやすかった。更に、高温条件下では電解液の分解反応が起きやすいため、多量のガスが発生するという問題があった。ガスの発生によりリチウムイオン電池等の蓄電デバイスに膨れが生じるため、安全性の観点から、ガスの発生を抑制することが求められていた。
本発明は、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面(SEI)を形成し、正極上での電解液分解に伴うガスの発生を抑制することができる非水電解液用添加剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明は、下記式(1−1)又は下記式(1−2)で表され、最高被占分子軌道エネルギーが−6.8〜3.8eVであり、かつ、最低空分子軌道エネルギーが−2.7〜0.0eVであるスルファニルチオフェン化合物(以下、「本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物」ともいう)を含有する非水電解液用添加剤である。
なお、本発明の非水電解液用添加剤は、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物のみを含有するものに限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。
なお、本発明の非水電解液用添加剤は、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物のみを含有するものに限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。
式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ独立し、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。但し、R1、R2、R3、及び、R4のうち少なくとも1つは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、又は、置換されていてもよいベンジルチオ基である。式(1−2)中、R5、R6、R7、R8、R9、及び、R10は、それぞれ独立し、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。
以下に本発明を詳細に説明する。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、非水溶媒を用いた電解液に、これまで非水電解液用添加剤として用いられることがなかった特定のスルファニルチオフェン化合物を添加することにより、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面(SEI)を形成することを見出した。その結果、高温条件下においても正極上での電解液の分解に伴うガス発生を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物を非水電解液用添加剤として用いることにより、ガス発生が抑制される理由としては、以下のように考えられる。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、チオフェン環に隣接する硫黄原子を持つことから電子供与性が高く、電気化学的酸化反応を受けやすい。したがって、電解液中の溶媒等より先に該スルファニルチオフェン化合物が分解し、電極表面上に固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜を形成し、その結果、正極上での電解液中の溶媒等の分解を効果的に防ぎ、ガス発生を抑制することが可能となると考えられる。また、定かではないが、複数個の硫黄原子を分子内に含むため、電気的分解により正極に形成されるSEIは硫黄原子がより密集したものとなり、電解液の分解を効果的に防ぐことができると考えられる。
なお、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、非水電解液用添加剤として電解液中に添加され、電気的分解により電極表面上にSEIを形成することで前記ガス発生の抑制等の効果を発揮するものであり、電解液中に添加せず、直接電極材料として用いたり、塗布等により電極表面にコーティングしたりした場合と比較して、顕著な効果が認められる。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、チオフェン環に隣接する硫黄原子を持つことから電子供与性が高く、電気化学的酸化反応を受けやすい。したがって、電解液中の溶媒等より先に該スルファニルチオフェン化合物が分解し、電極表面上に固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜を形成し、その結果、正極上での電解液中の溶媒等の分解を効果的に防ぎ、ガス発生を抑制することが可能となると考えられる。また、定かではないが、複数個の硫黄原子を分子内に含むため、電気的分解により正極に形成されるSEIは硫黄原子がより密集したものとなり、電解液の分解を効果的に防ぐことができると考えられる。
なお、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、非水電解液用添加剤として電解液中に添加され、電気的分解により電極表面上にSEIを形成することで前記ガス発生の抑制等の効果を発揮するものであり、電解液中に添加せず、直接電極材料として用いたり、塗布等により電極表面にコーティングしたりした場合と比較して、顕著な効果が認められる。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、前記式(1−1)又は前記式(1−2)で表される。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ独立し、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。但し、R1、R2、R3、及び、R4のうち少なくとも1つは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、又は、置換されていてもよいベンジルチオ基である。
なお、本明細書において前記「それぞれ独立し」とは、「同一であってもよいし、異なっていてもよい」ことを意味する。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4は、それぞれ独立し、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。但し、R1、R2、R3、及び、R4のうち少なくとも1つは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、又は、置換されていてもよいベンジルチオ基である。
なお、本明細書において前記「それぞれ独立し」とは、「同一であってもよいし、異なっていてもよい」ことを意味する。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4が、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルチオ基である場合、該アルキルチオ基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。前記アルキルチオ基の炭素数の好ましい下限は1であり、好ましい上限は3である。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4で示される、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基が置換されている場合、3つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていることが好ましい。また、ハロゲン原子としてフッ素原子で置換されていることが好ましい。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4で示される、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、1−メチルエチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−へキシルチオ基、モノフルオロメチルチオ基、2−モノフルオロエチルチオ基、3−モノフルオロプロピルチオ基、4−モノフルオロブチルチオ基、5−モノフルオロペンチルチオ基、6−モノフルオロヘキシルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、2,2−ジフルオロエチルチオ基、3,3−ジフルオロプロピルチオ基、4,4−ジフルオロブチルチオ基、5,5−ジフルオロペンチルチオ基、6,6−ジフルオロヘキシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基、3,3,3−トリフルオロプロピルチオ基、4,4,4−トリフルオロブチルチオ基、5,5,5−トリフルオロペンチルチオ基、6,6,6−トリフルオロヘキシルチオ基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチルチオ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルチオ基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチルチオ基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルチオ基、5,5,6,6,6−ヘキサフルオロヘキシルチオ基等が挙げられる。なかでも、メチルチオ基、エチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチルチオ基が好ましい。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4が、置換されたフェニルチオ基又は置換されたベンジルチオ基である場合、置換基としては、例えば、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4で示される、置換されていてもよいフェニルチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、2−エチルフェニルチオ基、3−エチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、2−メトキシフェニルチオ基、3−メトキシフェニルチオ基、4−メトキシフェニルチオ基、2−エトキシフェニルチオ基、3−エトキシフェニルチオ基、4−エトキシフェニルチオ基、2−(ジメチルアミノ)フェニルチオ基、3−(ジメチルアミノ)フェニルチオ基、4−(ジメチルアミノ)フェニルチオ基、2−フルオロフェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基、4−フルオロフェニルチオ基、2−クロロフェニルチオ基、3−クロロフェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、2−ブロモフェニルチオ基、3−ブロモフェニルチオ基、4−ブロモフェニルチオ基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、フェニルチオ基、2−フルオロフェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基、4−フルオロフェニルチオ基であることが好ましく、フェニルチオ基、4−フルオロフェニルチオ基であることがより好ましい。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4で示される、置換されていてもよいベンジルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基、2−メチルベンジルチオ基、3−メチルベンジルチオ基、4−メチルベンジルチオ基、2−エチルベンジルチオ基、3−エチルベンジルチオ基、4−エチルベンジルチオ基、2−メトキシベンジルチオ基、3−メトキシベンジルチオ基、4−メトキシベンジルチオ基、2−エトキシベンジルチオ基、3−エトキシベンジルチオ基、4−エトキシベンジルチオ基、2−(ジメチルアミノ)ベンジルチオ基、3−(ジメチルアミノ)ベンジルチオ基、4−(ジメチルアミノ)ベンジルチオ基、2−フルオロベンジルチオ基、3−フルオロベンジルチオ基、4−フルオロベンジルチオ基、2−クロロベンジルチオ基、3−クロロベンジルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、2−ブロモフェニルチオ基、3−ブロモフェニルチオ基、4−ブロモフェニルチオ基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、ベンジルチオ基、2−フルオロベンジルチオ基、3−フルオロベンジルチオ基、4−フルオロベンジルチオ基であることが好ましい。
前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4で示される、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでもフッ素原子が好ましい。
なお、但し、前記式(1−1)中、R1、R2、R3、及び、R4のうち少なくとも1つは、前記した1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、前記した置換されていてもよいフェニルチオ基、又は、前記した置換されていてもよいベンジルチオ基である。
式(1−2)中、R5、R6、R7、R8、R9、及び、R10は、それぞれ独立し、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。
前記式(1−2)中の、R5、R6、R7、R8、R9、及び、R10における、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、及び、ハロゲン原子としては、それぞれ前記式(1−1)で例示したものと同様のものが挙げられる。
本発明の非水電解液用添加剤は、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物として、前記式(1−1)で表され、最高被占分子軌道エネルギーが−6.8〜3.8eVであり、かつ、最低空分子軌道エネルギーが−2.7〜0.0eVであるスルファニルチオフェン化合物、及び、前記式(1−2)で表され、最高被占分子軌道エネルギーが−6.8〜3.8eVであり、かつ、最低空分子軌道エネルギーが−2.7〜0.0eVであるスルファニルチオフェン化合物のうちの少なくともいずれか1種を含有すればよいが、2種以上を含有してもよい。
本発明の非水電解液用添加剤は、高温条件下における電解液の分解によるガス発生を抑制する効果により優れることから、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物として、下記式(2−1)で表される化合物及び/又は下記式(2−2)で表される化合物を含有することが好ましい。
式(2−1)中、R11及びR12は、それぞれ独立し、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。但し、R11及びR12のうち少なくとも1つは、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、又は、置換されていてもよいベンジルチオ基である。式(2−2)中、R13は、水素原子、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、又は、ハロゲン原子を示す。
前記式(2−1)中のR11及びR12、並びに、前記式(2−2)中のR13における、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、置換されていてもよいフェニルチオ基、置換されていてもよいベンジルチオ基、及び、ハロゲン原子としては、それぞれ前記式(1−1)で例示したものと同様のものが挙げられる。
本発明の非水電解液用添加剤は、高温条件下における非水電解液の分解によるガス発生を抑制する効果に更に優れることから、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物として、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物、下記式(7)で表される化合物、及び、下記式(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物を製造する方法としては、例えば、スルファニルチオフェン骨格を有するグリニャール化合物とハロゲン化物との反応を行う方法等が挙げられる。具体的には例えば、前記式(5)で表されるスルファニルチオフェン化合物を製造する場合、ジエチルエーテル等の溶媒中で、スルファニルチオフェングリニャール化合物とクロロベンゼンとを反応させる方法等を用いることができる。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、最高被占分子軌道(HOMO)エネルギーの下限が−6.8eV、上限が3.8eVである。前記HOMOエネルギーが−6.8eV未満であると、過剰な分解を起こし、正極表面に高い抵抗を示す被膜を形成するおそれがある。前記HOMOエネルギーが3.8eVを超えると、正極表面に安定なSEIを形成することができなくなるおそれがある。前記HOMOエネルギーの好ましい下限は−6.6eV、好ましい上限は1.8eVである。
また、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、最低空分子軌道(LUMO)エネルギーの下限が−2.7eV、上限が0.0eVである。前記LUMOエネルギーが−2.7eV未満であると、過剰な分解を起こし、負極表面上に高い抵抗を示す被膜を形成するおそれがある。前記LUMOエネルギーが0.0eVを超えると、負極表面に安定なSEIを形成することができなくなるおそれがある。前記LUMOエネルギーの好ましい下限は−1.5eV、好ましい上限は−0.3eVである。
なお、前記「最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー」及び前記「最低空分子軌道(LUMO)エネルギー」は、半経験的分子軌道計算法であるPM3と密度汎関数法であるB3LYP法とを組み合わせて算出される。具体的に本発明では、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社製ソフトウェア)を用いて算出された値を用いる。
また、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、最低空分子軌道(LUMO)エネルギーの下限が−2.7eV、上限が0.0eVである。前記LUMOエネルギーが−2.7eV未満であると、過剰な分解を起こし、負極表面上に高い抵抗を示す被膜を形成するおそれがある。前記LUMOエネルギーが0.0eVを超えると、負極表面に安定なSEIを形成することができなくなるおそれがある。前記LUMOエネルギーの好ましい下限は−1.5eV、好ましい上限は−0.3eVである。
なお、前記「最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー」及び前記「最低空分子軌道(LUMO)エネルギー」は、半経験的分子軌道計算法であるPM3と密度汎関数法であるB3LYP法とを組み合わせて算出される。具体的に本発明では、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社製ソフトウェア)を用いて算出された値を用いる。
本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、電気化学的酸化を受けやすい高いHOMOエネルギー、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示す。更に、複数個の硫黄原子を化合物内に含むため、該スルファニルチオフェン化合物のうち少なくとも1種以上を含有する本発明の非水電解液用添加剤は、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いる非水電解液に添加された場合に、正極及び負極表面上に安定なSEIを形成して電池特性等を改善することができる。前記HOMOエネルギー及び前記LUMOエネルギーの値が上述した範囲内であっても複数の硫黄原子を化合物内に含まない場合では電池特性等の改善効果は得られない。
本発明の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液もまた、本発明の1つである。
本発明の非水電解液における本発明の非水電解液用添加剤の含有量の好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が0.005質量%未満であると、蓄電デバイスに用いた場合に電極表面での電気的分解によって安定なSEIを充分に形成できなくなることがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が10質量%を超えると、溶解しにくくなるだけでなく非水電解液の粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、電解液の導電性等を充分に確保することができず、蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすことがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量のより好ましい下限は0.01質量%である。
なお、本発明の非水電解液用添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の非水電解液用添加剤を2種以上用いる場合の合計の含有量は、好ましい下限が0.005質量%、好ましい上限が10質量%である。
なお、本発明の非水電解液用添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の非水電解液用添加剤を2種以上用いる場合の合計の含有量は、好ましい下限が0.005質量%、好ましい上限が10質量%である。
本発明の非水電解液は、必要に応じて、本発明の非水電解液用添加剤と共に、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3−プロパンスルトン(PS)等の一般的な添加剤を含有してもよい。
前記非水溶媒は、得られる非水電解液の粘度を低く抑える等の観点から、非プロトン性溶媒を含有することが好ましい。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネートがより好ましく用いられる。
前記非水溶媒としては、具体的には例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の環状カーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等の脂肪族カルボン酸エステルや、γ−ブチロラクトン等のラクトンや、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等のラクタムや、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルや、1,2−エトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテルや、スルホラン等のスルホンや、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等のハロゲン誘導体等が挙げられる。これらの非水溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記電解質は、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩を含有することが好ましい。なかでも、LiAlCl4、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、及び、LiSbF6からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、LiBF4及び/又はLiPF6を含有することがより好ましい。これらの電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記LiBF4、LiPF6が用いられる場合、非水溶媒としては、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをそれぞれ1種以上混合することが好ましく、炭酸エチレン及び炭酸ジエチルを混合することがより好ましい。
本発明の非水電解液における前記電解質の濃度の好ましい下限は0.1mol/L、好ましい上限は2.0mol/Lである。前記電解質の濃度が0.1mol/L未満であると、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすことがある。前記電解質の濃度が2.0mol/Lを超えると、粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすことがある。前記電解質の濃度のより好ましい下限は0.5mol/L、より好ましい上限は1.5mol/Lである。
本発明の非水電解液、正極、及び、負極を備えた蓄電デバイスもまた、本発明の1つである。
図1は、本発明の蓄電デバイスの一例を模式的に示した断面図である。
図1において、蓄電デバイス1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されており、全体をラミネートフィルム10で覆い、真空状態としている。
なお、図1では、蓄電デバイスとして扁平形ラミネート二次電池を示したが、本発明の蓄電デバイスはこの扁平形ラミネート二次電池に限定されない。
図1は、本発明の蓄電デバイスの一例を模式的に示した断面図である。
図1において、蓄電デバイス1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されており、全体をラミネートフィルム10で覆い、真空状態としている。
なお、図1では、蓄電デバイスとして扁平形ラミネート二次電池を示したが、本発明の蓄電デバイスはこの扁平形ラミネート二次電池に限定されない。
前記正極集電体2及び前記負極集電体5としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる金属箔を用いることができる。
前記正極活物質層3に用いる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物が好ましく用いられ、具体的には例えば、LiMnO2、LiFeO2、LiCoO2、LiMn2O4、Li2FeSiO4等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
前記負極活物質層6に用いる負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料や、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる多孔質フィルムを用いることができる。また、前記ラミネートフィルム10としては、例えば、厚さ120μmのものを使用することができるが、特に限定はされない。
本発明の蓄電デバイスは、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタとして好適に用いられる。
本発明によれば、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成し、正極上での電解液の分解に伴うガスの発生を抑制することができる非水電解液用添加剤を提供することができる。また、本発明によれば、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(3)で表される化合物(化合物1)を、含有割合が0.5質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(3)で表される化合物(化合物1)を、含有割合が0.5質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例2)
化合物1の含有割合を1.0質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1の含有割合を1.0質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(実施例3)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(4)で表される化合物(化合物2)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(4)で表される化合物(化合物2)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例4)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(5)で表される化合物(化合物3)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(5)で表される化合物(化合物3)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例5)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(6)で表される化合物(化合物4)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(6)で表される化合物(化合物4)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例6)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(7)で表される化合物(化合物5)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(7)で表される化合物(化合物5)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(実施例7)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(8)で表される化合物(化合物6)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として前記式(8)で表される化合物(化合物6)を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
(比較例1)
化合物1を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例2)
化合物1に代えて、1,3−プロパンスルトンを含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、1,3−プロパンスルトンを含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例3)
化合物1に代えて、ビニレンカーボネート(VC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、ビニレンカーボネート(VC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例4)
ビニレンカーボネート(VC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例3と同様にして非水電解液を調製した。
ビニレンカーボネート(VC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例3と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例5)
化合物1に代えて、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例6)
フルオロエチレンカーボネート(FEC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例5と同様にして非水電解液を調製した。
フルオロエチレンカーボネート(FEC)の含有割合を2.0質量%となるようにしたこと以外は、比較例5と同様にして非水電解液を調製した。
(比較例7)
化合物1に代えて、ベンゾチオフェンを含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
化合物1に代えて、ベンゾチオフェンを含有割合が1.0質量%となるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
<評価>
(HOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの測定)
実施例で用いた化合物1〜6について、HOMO(最高被占分子軌道)エネルギー及びLUMO(最低空分子軌道)エネルギーを測定するため、Gaussian03ソフトウェアにより、半経験的分子軌道計算を行った。軌道計算により得られた化合物1〜6のHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーを表1に示した。
(HOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの測定)
実施例で用いた化合物1〜6について、HOMO(最高被占分子軌道)エネルギー及びLUMO(最低空分子軌道)エネルギーを測定するため、Gaussian03ソフトウェアにより、半経験的分子軌道計算を行った。軌道計算により得られた化合物1〜6のHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーを表1に示した。
表1より、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物(化合物1〜6)は、高いHOMOエネルギー、及び、低いLUMOエネルギーを有していることがわかる。そのため、化合物1〜6を非水電解液用添加剤として非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合、非水電解液の溶媒(例えば、環状カーボネートや鎖状カーボネート:HOMOエネルギー約−8.2eV、LUMOエネルギー約1.2eV)の分解よりも先に負極上での化合物1〜6の電気化学的還元、及び、正極上で化合物1〜6の電気化学的酸化が起こり、それぞれの電極上にSEIが形成される。そのため、電解液中の溶媒の分解及びそれにより生じるガスの発生を抑制することが期待される。
以上より、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、充分に高いHOMOエネルギー、及び、充分に低いLUMOエネルギーを有しており、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの正極及び負極表面上に安定なSEIを形成する新規の非水電解液用添加剤として有効であることを示している。
以上より、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物は、充分に高いHOMOエネルギー、及び、充分に低いLUMOエネルギーを有しており、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの正極及び負極表面上に安定なSEIを形成する新規の非水電解液用添加剤として有効であることを示している。
(電池膨れ及び内部抵抗比の測定)
正極活物質としてLiMn2O4、及び、導電性付与剤としてカーボンブラックを乾式混合し、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを正極集電体となるアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)上に塗布した後、NMPを蒸発させることにより正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で、正極活物質:導電性付与剤:PVDF=80:10:10とした。
一方、負極シートとして、市販の黒鉛塗布電極シート(宝泉社製)を用いた。
負極シートと正極シートとを、ポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、実施例及び比較例で得られた各非水電解液とともにラミネートフィルムからなる外装材に封入し、扁平形ラミネート二次電池を作製した。
得られた扁平形ラミネート型二次電池に対して、25℃において、充電レートを0.3Cとして4.2Vに充電した。その後、扁平形ラミネート型二次電池を85℃の恒温槽に入れ、充電状態を維持したまま24時間保温(高温保存)した後取り出し、室温まで冷却した。
高温保存前後の扁平形ラミネート型二次電池の中心点の厚さを測定し、高温保存後の厚さから高温保存前の厚さを減ずることにより電池の膨れを求めた。結果を表2に示した。
また、高温保存後の扁平形ラミネート型二次電池の抵抗を測定し、高温保存後の抵抗を高温保存前の抵抗で除することにより内部抵抗比を求めた。結果を表2に示した。
正極活物質としてLiMn2O4、及び、導電性付与剤としてカーボンブラックを乾式混合し、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを正極集電体となるアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)上に塗布した後、NMPを蒸発させることにより正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で、正極活物質:導電性付与剤:PVDF=80:10:10とした。
一方、負極シートとして、市販の黒鉛塗布電極シート(宝泉社製)を用いた。
負極シートと正極シートとを、ポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、実施例及び比較例で得られた各非水電解液とともにラミネートフィルムからなる外装材に封入し、扁平形ラミネート二次電池を作製した。
得られた扁平形ラミネート型二次電池に対して、25℃において、充電レートを0.3Cとして4.2Vに充電した。その後、扁平形ラミネート型二次電池を85℃の恒温槽に入れ、充電状態を維持したまま24時間保温(高温保存)した後取り出し、室温まで冷却した。
高温保存前後の扁平形ラミネート型二次電池の中心点の厚さを測定し、高温保存後の厚さから高温保存前の厚さを減ずることにより電池の膨れを求めた。結果を表2に示した。
また、高温保存後の扁平形ラミネート型二次電池の抵抗を測定し、高温保存後の抵抗を高温保存前の抵抗で除することにより内部抵抗比を求めた。結果を表2に示した。
表2から、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物を含有する実施例の非水電解液を用いた扁平形ラミネート型二次電池は、比較例の非水電解液を用いたラミネート型二次電池と比較して、電池膨れ及び内部抵抗比の評価結果が良好であり、正極及び負極表面に安定なSEIを形成していることが分かる。なお、比較例7に用いたベンゾチオフェン(HOMOエネルギー約−5.88eV、LUMOエネルギー約−0.64eV)は、本発明にかかるスルファニルチオフェン化合物と同等のHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーを有しているが、分子内に複数の硫黄原子を含まない構造であるため、正極及び負極表面に効果的なSEIを形成できず電池特性等の改善効果が充分に得られなかったと考えられる。
本発明によれば、蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成し、正極上での電解液分解に伴うガスの発生を抑制することができる非水電解液用添加剤を提供することができる。また、本発明によれば、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することができる。
1 蓄電デバイス
2 正極集電体
3 正極活物質層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 負極板
8 非水電解液
9 セパレータ
10 ラミネートフィルム
2 正極集電体
3 正極活物質層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 負極板
8 非水電解液
9 セパレータ
10 ラミネートフィルム
Claims (13)
- 下記式(1−1)又は下記式(1−2)で表され、
最高被占分子軌道エネルギーが−6.8〜3.8eVであり、かつ、最低空分子軌道エネルギーが−2.7〜0.0eVであるスルファニルチオフェン化合物を含有する
ことを特徴とする非水電解液用添加剤。
- スルファニルチオフェン化合物として、下記式(2−1)で表される化合物及び/又は下記式(2−2)で表される化合物を含有する請求項1記載の非水電解液用添加剤。
- スルファニルチオフェン化合物は、最高被占分子軌道エネルギーが−6.6〜1.8eVである請求項1又は2記載の非水電解液用添加剤。
- スルファニルチオフェン化合物は、最低空分子軌道エネルギーが−1.5〜−0.3eVである請求項1、2又は3記載の非水電解液用添加剤。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液。
- 非水溶媒は、非プロトン性溶媒を含有する請求項6記載の非水電解液。
- 非プロトン性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項7記載の非水電解液。
- 電解質は、リチウム塩を含有する請求項6、7又は8記載の非水電解液。
- リチウム塩は、LiAlCl4、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、及び、LiSbF6からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項9記載の非水電解液。
- 請求項6、7、8、9又は10記載の非水電解液、正極、及び、負極を備えた蓄電デバイス。
- 蓄電デバイスがリチウムイオン電池である請求項11記載の蓄電デバイス。
- 蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタである請求項11記載の蓄電デバイス。
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CN105870501A (zh) * | 2016-04-12 | 2016-08-17 | 华南师范大学 | 一种高压功能电解液及其制备方法与应用 |
WO2020021749A1 (ja) * | 2018-07-27 | 2020-01-30 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 二次電池およびその製造方法 |
CN113690488A (zh) * | 2021-08-10 | 2021-11-23 | 惠州锂威新能源科技有限公司 | 一种电解液及含有该电解液的锂离子电池 |
-
2014
- 2014-03-28 JP JP2014068812A patent/JP2015191806A/ja active Pending
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