JP2017208246A - 非水電解液二次電池用非水電解液、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解液二次電池用非水電解液、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温保存後の電池厚みの増加が少なく、直流抵抗が小さい非水電解液二次電池を提供する。【解決手段】非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、非水溶媒が、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを含み、さらに環状硫酸エステル化合物を含む非水電解液。正極、負極、及び前記非水電解液を備え、正極電位が4.4V(vs.Li/Li+)以上となる非水電解液二次電池及びその製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解液二次電池用非水電解液、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器の電源として用いられてきたが、近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源としても用いられている。
非水電解液二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、非水溶媒及びリチウム塩を含有する非水電解液とを備えている。
非水電解液二次電池を構成する正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、負極活物質としてはグラファイトに代表される炭素材料が、非水電解液としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネートとジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを主構成成分とする非水溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を溶解し、4.2V級の電池電圧で使用されているものが広く知られている。しかし、今後は、さらなる高容量化、充放電サイクル性能の向上が求められている。
高容量化の一手段として、より高電圧で使用可能な電池系が探求されており、高電圧に耐える電極活物質の検討とともに、高電圧用非水溶媒として、フッ素化鎖状カルボン酸エステルとフルオロエチレンカーボネートの混合溶媒を用いることが提案されている(特許文献1〜6参照)。
特許文献1には、「Li2MnO3−LiMO2固溶体(MはNi、Co、Fe、Al、Mg、Ti、Sn、Zr、Nb、Mo、W、及びBiから選択される少なくとも1つ)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物である第1正極活物質と、少なくともNiを有し、Liを除く金属元素のモル総量に対するNiの割合が50モル%以上であり、層状構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物である第2正極活物質と、を含む正極と、構造式1で表されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルを含む非水電解質と、
[構造式1]

(Rは炭素数1〜4のアルキル基、XはF、H、炭素数1〜4のアルキル基、当該アルキル基のHの少なくとも一部をFに置換したもの、又はこれらの組み合わせである)を備えた、非水電解質二次電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
また、特許文献1には、「上記フッ素化鎖状カルボン酸エステルの具体例としては、‥3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルが好ましい。」(段落[0033])、「非水溶媒としては、上記フッ素化鎖状カルボン酸エステルのみを用いてもよいが、これ以外のフッ素系溶剤、例えばフッ素化環状炭酸エステル又はフッ素化鎖状炭酸エステルを併用することが好適であり、フッ素化環状炭酸エステルを併用することが特に好適である。‥上記フッ素化環状炭酸エステルには、フルオロエチレンカーボネート又はその誘導体を用いることが好ましい。フルオロエチレンカーボネートとしては、4−フルオロエチレンカーボネート‥が挙げられる。」(段落[0034]、[0035])と記載されている。
そして、非水電解質の実施例として、「4−フルオロエチレンカーボネートと、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルとを体積比で1:3となるように調整し、この溶媒にLiPF6を1.0mol/lとなるように加えて非水電解質を作製した。」(段落[0050])と記載されている。
特許文献2には、「リチウム遷移金属複合酸化物の表面にフッ素元素を含む化合物が付着された正極活物質を含む正極と、負極と、フッ素を含むカルボン酸エステルが含有された非水電解液と、を備えることを特徴とする非水電解質二次電池。」(請求項1)についての発明が記載されており、非水電解液の実施例として、「フルオロエチレンカーボネート(FEC)と3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを、2:8の体積比で混合した混合溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解させて、非水電解液を調製した。」(段落[0013])と記載されている。
特許文献3には、「リチウムイオンを吸蔵・放出する正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質を有する負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、前記正極活物質はニッケル、マンガン、アルミニウム及びゲルマニウムを含有するリチウムコバルト複合酸化物を含み、前記リチウムコバルト複合酸化物に占めるコバルトの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル量に対して80モル%以上である、非水電解質二次電池。」(請求項1)、「前記正極の電位がリチウム基準で4.6Vとなるように充電される、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。」(請求項5)に用いる非水電解液として、「非水溶媒として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、フッ素化プロピオンカーボネート(FMP)を用意した。25℃における体積比で、FEC:FMP=20:80となるように混合した。この非水溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウムを濃度が1mol/Lとなるように溶解して、非水電解質を調製した。」(段落[0032])と記載されている。
特許文献4には、「ナトリウムイオンを吸蔵及び放出できる正極活物質を含む正極と、前記ナトリウムイオンを吸蔵及び放出できる負極活物質を含む負極と、一般式(1)で表されるフルオロ基を有する鎖状カルボン酸エステルを含有する非水溶媒、および前記非水溶媒に溶解したナトリウム塩を含む非水電解液と、を備える、ナトリウム二次電池。



(式中、R1は芳香族基、不飽和脂肪族基又は飽和脂肪族基を表し、R2、R3及びR4は水素、芳香族基、不飽和脂肪族基又は飽和脂肪族基を表し、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つは1以上のフルオロ基を含む。)」(請求項1)についての発明が記載されている。
そして、実施例として、「FECとメチル3,3,3−トリフルオロプロピオネート(FMP)(CAS番号:18830−44−9)との混合溶媒(体積比25:75)に0.9mol/リットルの濃度でNaPF6が溶解される」参考例1−3の電解液(段落[0127])、及び参考例1−3の電解液を用いた実施例2−2のナトリウム二次電池(段落[0138])が記載されている。
特許文献5には、「非水系溶媒に電解質のリチウム塩が含有され、上記の非水系溶媒に、下記の式(1)に示したフッ素化鎖状カルボン酸エステルと、金属リチウムとリチウムイオンとの平衡電位を基準として+1.0〜3.0Vの範囲で分解される被膜形成化合物とを含む二次電池用非水電解液。
R1−CH2−COO−R2 (1)
(式中、R1は水素又はアルキル基、R2はアルキル基を表し、R1とR2とにおける炭素数の和が3以内であり、R1が水素である場合には、R2における水素の少なくとも一部がフッ素で置換され、R1がアルキル基である場合には、R1及び/又はR2における水素の少なくとも一部がフッ素で置換されている。)」(請求項1)、「請求項1に記載の二次電池用非水電解液において、上記のフッ素化鎖状カルボン酸エステルが、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルCF3CH2COOCH3‥である二次電池用非水電解液。」(請求項2)、「請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液において、上記の被膜形成化合物が、4−フルオロエチレンカーボネート及びその誘導体‥である二次電池用非水電解液。」(請求項5)についての発明が記載されている。
また、実施例1,3〜7として、非水系溶媒が3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルと4−フルオロエチレンカーボネートとを含む電解液が記載されている(段落[0029]〜[0077])。
特許文献6には、「正極と、負極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備えた非水電解質二次電池において、前記正極の表面にはフッ化リチウム(LiF)が、前記負極の表面には硫黄(S)化合物がそれぞれ固着しており、 前記非水溶媒は、少なくともフッ素化プロピオン酸メチル(FMP)を含み、前記非水溶媒の総重量に占める含フッ素系溶媒の割合が55重量%以上である、非水電解質二次電池。」(請求項1)に係る発明が記載されている。
また、実施例1〜12には、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)を含む溶媒にLiFP6を加えた非水電解質に1,3−プロパンスルトン(PS)、1,3−プロペンスルトン(PRS)等のスルトン系化合物を添加した非水電解質を有する非水電解質二次電池が記載されている(段落[0039]〜[0048]、表1,2)。
特許文献7には、「環状硫酸エステル化合物及び不飽和スルトン化合物の少なくとも一方と、ホスファゼン化合物及びハロゲン化リン酸エステル化合物の少なくとも一方と、を含有する非水電解液。」(請求項1)についての発明が記載され、実施例1〜9、13〜20、比較例2,3には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、及びメチルエチルカーボネート(EMC)を1:1:1(体積比)に混合した溶媒に、環状硫酸エステル化合物である例示化合物1(段落[0052])、及び例示化合物22(段落[0054])を添加した非水電解液を用いたリチウム二次電池が記載されている(段落[0131]〜[0187])。
特開2015−128044号公報 特開2014−49286号公報 国際公開2015/098064号 特開2015−179659号公報 特開2009−289414号公報 特開2016−27548号公報 特開2014−170689号公報
特許文献1〜6には、非水溶媒としてフルオロエチレンカーボネート(以下、「FEC」という。)と、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(以下、「FMP」という。)を含む非水電解液を用いるリチウム二次電池について、充放電サイクル性能や保存性能が改善されることが記載されている。
また、特許文献6には、FECとFMPを含む非水電解液に1,3−プロパンスルトン(以下、「PS」という。)又は1,3−プロペンスルトン(以下、「PRS」という。)を添加することも記載されている。
しかし、FECとFMPとを含む非水電解液を用いた二次電池について、高温保存試験後の電池厚みの増加が大きく、直流抵抗が大きいという課題については、何ら示されていない。
一方、特許文献7には、環状硫酸エステル化合物である例示化合物1(4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)や、例示化合物22(4,4’−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン))を添加した非水電解液を用いるリチウム二次電池について記載されている。しかし、実施例、及び比較例には、EC:DMC:EMC=1:1:1である溶媒に、前記の環状硫酸エステル化合物を添加した非水電解液が記載されているのみであって、これらの環状硫酸エステル化合物をFECとFMPを含む非水電解液に添加することは記載されていない。また、環状硫酸エステル化合物と高温保存試験後の電池厚みの増加との関係についても示されていない。
本発明は、FECとFMPとを含む非水電解液を用いた二次電池についての上記の課題に鑑み、非水電解液を改良することにより、高温保存後の電池厚みの増加が少なく、直流抵抗が小さい非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
本発明において、上記課題を解決するための一態様は、非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒が、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを含み、さらに下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される化合物を含む非水電解液である。
(なお、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
本発明においては、FECとFMPを含む非水溶媒に一般式(1)又は一般式(2)で表される環状硫酸エステル化合物を添加してなる非水電解液を用いることにより、高温保存後の電池厚みの増加が抑制され、直流抵抗が低い非水電解液二次電池を得ることができる。
本発明に係る非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図 本発明に係る非水電解液二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
本発明に係る非水電解液は、非水電解液二次電池に用いられるものである。図1に、本発明に係る非水電解液二次電池の一実施形態である矩形状の非水電解液二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解液二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。非水電解液はセパレータに保持されている。
<非水電解液>
本発明の一側面に係る非水電解液は、溶媒と前記非水溶媒に溶解した電解質塩とを含むものであり、前記非水溶媒は、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを含み、さらに、一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする。以下に、FMPの化学構造式を示す。
前記一般式(1)又は一般式(2)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
ハロゲン原子としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
炭素数1〜6のアルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記一般式(1)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。ハロゲン原子及び炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、前述のとおりである。
炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基としては、前記炭素数1〜6のアルキル基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたものであり、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、4−フルオロスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン、4−トリフルオロメチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−5−フルオロ−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−5−メチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランが挙げられる。なかでも、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランが好ましい。
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)、4,4’−ビス(5−フルオロ−2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)、4,4’−ビス(5−メチル−2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)、4,4’−ビス(5−エチル−2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)が挙げられ、なかでも4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)が好ましい。
FECは、高電圧下において、負極に安定な被膜を形成することにより、充放電サイクル特性を向上させる。負極上にFECに由来する安定な皮膜を形成するために、非水溶媒に占めるFECの割合は2体積%以上が好ましく、5体積%以上がさらに好ましい。ガス発生による電池厚み増加を抑制し、非水電解液の粘度を高めないためには、非水溶媒の30質量%以下とすることが好ましい。非水溶媒の20体積%以下とすることがさらにより好ましい。
FMPは、耐酸化性が高く、高電圧充電時にも分解し難いので、高電圧充放電サイクル性能を向上させる。FMPの割合は、非水溶媒の10体積%以上90体積%以下とすることが好ましい。
非水溶媒に占めるFECとFMPの含有量の和は、高電圧下において、充放電サイクル性能を改善するためには、60体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましい。
環状硫酸エステル化合物である一般式(1)又は(2)で表される化合物は、特許文献7に記載されるように、二次電池用非水電解液の添加物として公知であるが、FECとFMPを含む非水電解液に添加することで、非水電解液二次電池の高温保存後の電池厚みの増加が小さく、直流抵抗が低いという効果を奏することを、本発明者は初めて見出した。
このような効果が得られる詳細な作用機構は不明であるが、一般式(1)又は(2)で表される化合物は、FEC及びFMPよりも貴な電位で還元分解を受け、FECやFMPの分解により生成する抵抗の高い被膜の成長を適度に抑制し、かつ、他の溶媒成分又は活物質との不所望な反応を抑制し、電池厚み増加の原因となるガス発生を抑制することができる安定な被膜を負極上に形成するためと推定される。
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを併用すると、高温保存後の電池厚み及び直流抵抗が低減するため、好ましい。その含有量(2種以上の場合は総含有量)は、負極上に安定な皮膜を形成するために、非水溶媒に対して0.01質量%以上添加することが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。他の溶媒成分又は活物質と反応して発生するガス量を抑制し、電池膨れを抑制するためには、非水溶媒に対して添加量が5質量%以下添加することが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
本実施形態の非水溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、FECとFMP以外の非水溶媒を含んでいてよい。他の非水溶媒としては、一般に非水電解液二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
本実施形態の非水溶媒には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)、一般式(2)で表される化合物以外の添加剤を添加してもよい。添加剤として、一般に非水電解液二次電池に使用される添加剤が使用でき、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、プロペンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等を単独で又は二種以上混合して非水電解質に加えることができる。
非水溶媒中のこれらの化合物の含有割合は特に限定はないが、非水溶媒全体に対し、それぞれ、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、上限は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。これらの化合物を添加することにより、安全性をより向上させたり、高温保存後の容量維持性能やサイクル性能を向上させたりすることができる。
本実施形態の非水電解液に含有される電解質塩としては、限定されるものではなく、一般に非水電解液二次電池に用いられる電解質塩を用いることができる。例えば、LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CHNBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n−CNClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(CN−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
非水電解液における電解質塩の濃度としては、優れた高率放電性能を有する非水電解液二次電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5.0mol/lが好ましく、1.0mol/l〜2.0mol/lがより好ましい。
<正極活物質>
本実施形態に係る非水電解液二次電池を構成する正極に使用する正極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能であればよく、特に制限はないが、一態様として、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となるものであることが好ましい。一般に非水電解液二次電池の正極活物質に使用されるリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物等が使用できる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。リチウムニッケルマンガン複合酸化物としては、例えば、LiNi0.5Mn1.5等のLiNiMn2−y4−δ(0<x<1.1、0.45<y<0.55、0≦δ<0.4)、LiNi1/2Mn1/2等のLiMeO(MeはNi、及びMnを含む遷移金属)、又はLi1.11Ni0.29Mn0.60(Li/Me=1.25)等のLi1+αMe1−α(0<α、MeはNi、Mnを含む遷移金属)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のLiMeO(MeはNi、Co及びMnを含む遷移金属)、又はLi1.09Co0.11Ni0.18Mn0.62(Li/Me=1.2)、Li1.11Co0.11Ni0.18Mn0.60(Li/Me=1.25)等のLi1+αMe1−α(0<α、MeはNi、Co及びMnを含む遷移金属)を使用することができる。ポリアニオン化合物としては、例えば、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF、LiMnSiO等を使用することができる。
<負極活物質>
本実施形態の非水電解液二次電池を構成する負極に使用する負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能なものであればよく、一態様として、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる正極と組み合わせて高電圧で使用できるものが好ましい。一般に非水電解液二次電池の負極活物質に使用される炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が使用できる。炭素質材料としては、天然グラファイト、人造グラファイト、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。中でも炭素質材料が安全性の点から好ましい。
<正極・負極>
本実施形態に係る正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極活物質は、一態様として、平均粒子サイズ100μm以下の粉体であることが好ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解液電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVdF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料を用いることができる。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極活物質)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより作製することが好ましい。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
正極集電体及び負極集電体の材質としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
負極集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも銅が加工し易さとコストの点から好ましい。
<セパレータ>
正極と負極を隔離するセパレータとしては、微多孔性膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。中でもポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂を主成分とする微多孔性膜であることが好ましい。
<非水電解液二次電池及び蓄電装置>
本発明の実施形態に係る非水電解液二次電池は、その他の構成要素として、端子、絶縁板、電池容器等を有するが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
本発明の実施形態に係る非水電解液二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が挙げられる。
本発明は、上記の非水電解液二次電池を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解液二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
<非水電解液の調製>
(比較例1)
体積比で、FEC:FMP=10:90のFEC及びFMPを混合した非水溶媒に、電解質塩としてのLiPFの濃度が1.2mol/LとなるようにLiPFを溶解させた非水電解液を、比較例1に係る比較電解液1とする。
(実施例1)
比較電解液1に、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランを2.0質量%添加した以外は比較例1−1と同様の非水電解液を、実施例1に係る本発明電解液1とする。
(実施例2)
比較電解液1に、4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)を2.0質量%添加した非水電解液を、実施例2に係る本発明電解液2とする。
(実施例3)
比較電解液1に、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランを1.0質量%、及び4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)を1.0質量%添加した非水電解液を、実施例3に係る本発明電解液3とする。
(比較例2)
比較電解液1に、エチレンサルファイト(以下、「ES」という。)を2.0質量%添加した非水電解液を、比較例2に係る比較電解液2とする。
(比較例3)
比較電解液1に、1,3−プロペンスルトン(以下、「PRS」という。)を2.0質量%添加した非水電解液を、比較例3に係る比較電解液3とする。
(比較例4)
体積比で、FEC:EMC=10:90のFEC、EMCを混合した非水溶媒に、電解質塩としてのLiPFを濃度が1.2mol/Lとなるように溶解させた非水電解液を、比較例4に係る比較電解液4とする。
(比較例5)
比較電解液4に、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランを1.0質量%、及び4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)を1.0質量%添加した非水電解液を、比較例5に係る比較電解液5とする。
<正極板の作製>
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。質量比で、正極活物質:ポリフッ化ビニリデン(PVdF):アセチレンブラック(AB)=93:4:3の割合(固形物換算)の割合で含み、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする正極ペーストを作製し、該正極ペーストを正極活物質が単位電極面積あたり17mg/cm含まれるように、厚さ15μmの帯状のアルミニウム箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して正極活物質層を成型した後、100℃で14時間、減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして正極板を作製した。
<負極板の作製>
負極活物質として、黒鉛を用いた。質量比で、黒鉛:スチレン−ブタジエン・ゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)=97:2:1の割合(固形分換算)で含み、水を溶剤とする負極ペーストを作製し、厚さ10μmの帯状の銅箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して負極活物質層を成型した後、100℃で12時間、減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして負極板を作製した。
<非水電解液二次電池の組立>
ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して前記正極板と前記負極板を積層し、扁平形状に巻回して、図1に示す電極群2を作製し、アルミニウム製の電池容器3に収納し、正負極端子4,5を取り付けた。電池容器3内部に、それぞれ本発明電解液1〜3、及び比較電解液1〜5を注入したのちに封口し、実施例1〜3、及び比較例1〜5に係る非水電解液二次電池(以下、それぞれ、「実施例電池1〜3、及び比較例電池1〜5」という。)を組み立てた。
<初期充放電工程>
上記のようにして組み立てた実施例電池1〜3、及び比較例電池1〜5について、温度25℃にて、2サイクルの初期充放電工程に供した。なお、電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。ここで、負極に黒鉛を用いた場合、正極電位(vs.Li/Li)の値は端子間電圧の値に対して約0.1V大きいものとなることがわかっている。
1サイクル目の充電は、電流0.2CmA、電圧4.35V、8時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流0.2CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。2サイクル目の充電は、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。
初期充放電工程における2サイクル目の放電容量を、初期の放電容量とした。
また、25℃にて、電流1CmA、終止電圧3.70Vの定電流充電を行い、電池のSOC(State of Charge)を50%にした後、25℃にて電流0.2CmA、0.5CmA、1.0CmAの順で、30秒間ずつ放電した。各放電電流における電流と放電開始後10秒目の電圧との関係をプロットし、3点のプロットから得られた直線の傾きから直流抵抗を初期DCR(mΩ)として求めた。
<45℃保存試験>
前記の初期充放電工程を終えた後、まず、25℃にて、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電を行った。次に、電池を開回路状態とし、45℃の恒温槽中に150日間保存した。次に、25℃にて、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電を行った。再び、25℃にて、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電を行った後、25℃にて、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電を行い、保存後の放電容量と、電池厚みを測定した。
45℃保存試験後の各例の電池について、容量維持率(%)を、[保存後の放電容量/初期の放電容量]として求めた。
また、初期DCRと同様の手法により、150日後の直流抵抗(DCR)を求めた。
以上の結果を表1に示す。添加剤Aは、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、添加剤Bは、4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)である。
表1より、以下のことがわかる。
FECとFMPを含む非水電解液である点で共通し、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン含有の有無で相違する実施例電池1と比較例電池1とを対比すると、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランの添加により、電池厚みの増加を少なく、高温保存後の直流抵抗(以下、「保存後抵抗」という。)を低くすることができる。
同様の効果は、’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)を含有する実施例電池2でも生じており、中でも、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオランと4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)とをともに含有する実施例電池3が、最も効果的に電池厚みの増加を抑制し、保存後抵抗を低くすることができる。
添加剤がエチレンサルファイト(ES)である比較例電池2では、電池厚み増加の低減効果がなかった。
添加剤が1,3−プロペンスルトンである比較例電池3では、初期の直流抵抗が高い上に、保存後抵抗も高かった。
FECとEMCを含む非水電解液に4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン及び4,4’−ビス(2,2−ジオキソ―1,3,2−ジオキサチオラン)を含有する比較例電池5では、FECとEMCを含む非水電解液に添加剤を含まない比較例電池4と比べると、電池厚みの低減や保存後抵抗の低下に効果がみられるが、実施例電池1〜3にみられる電池厚み減少の顕著な効果が得られず、容量維持率も下回っていた。
本発明に係る非水電解液を備えた非水電解液二次電池は、高温保存後の電池厚みの増加が抑制され、直流抵抗が低いので、厳しい作動環境に置かれるモバイル機器用電源、又は電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などの自動車用電源として有用である。
1 非水電解液二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. 非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒が、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを含み、さらに下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする非水電解液二次電池用非水電解液。

    (なお、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
  2. 正極、負極、及び非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が請求項1に記載の非水電解液であることを特徴とする非水電解液二次電池。
  3. 正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 正極、負極、及び非水電解液を備えた非水電解液二次電池の製造方法であって、非水溶媒と電解質塩を含み、前記非水溶媒が、4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)とを含み、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
    (なお、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
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