JP6017803B2 - 非水電解液用添加剤、非水電解液、及び、蓄電デバイス - Google Patents
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Description
また、特許文献10〜13には、ビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートを含有する電解液が開示されており、特許文献14、15では1,3−プロパンスルトン及びブタンスルトンを含有する電解液が開示されている。
例えば、特許文献10〜15に記載されているビニレンカーボネート系化合物や1,3−プロパンスルトン等のスルトン系化合物を添加剤として用いた電解液は、負極表面上に電気的還元分解を生じて生成したSEIによって、不可逆的容量低下を抑制することが可能となっている。しかし、これらの添加剤によって形成されたSEIは電極を保護する性能に優れるものの、リチウムイオンのイオン伝導性が低いため、内部抵抗を低下させる性能は小さかった。更に、形成されたSEIは、長期間の使用に耐える強度がなく、使用中にSEIが分解したり、SEIに亀裂が生じたりすることによって負極表面が露出し、電解液溶媒の分解が生じて電池特性が低下するといった問題点があった。
このように、従来の非水電解液用添加剤は、電極を保護する性能や内部抵抗を低下させる性能において、長期に亘って充分な性能を有するものではなく、改善の余地があった。即ち、電極表面上に安定で、かつ、サイクル特性、充放電容量、内部抵抗等を向上させるSEIを形成させ、非水電解液二次電池等の電池特性を向上させる新規な電解液用添加剤の開発が望まれていた。
本発明は、特に非水電解液用添加剤として好適に用いられる環状ジスルホン酸アミド化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該化合物を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成して、サイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、該非水電解液用添加剤を用いた非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、上記式(1)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示し、かつ、化学的に安定であることを見出した。そこで本発明者らは、該環状ジスルホン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を非水電解液に用い、更に該非水電解液を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成して、サイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立し、置換されていてもよい炭素数0〜6のアルキレン基を示す。R1及びR2で示されるアルキレン基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。R1及びR2で示されるアルキレン基の炭素数の好ましい上限は3である。
なお、上記式(1)中、R1及びR2について「炭素数0のアルキレン基である」とは、R1やR2と結合している窒素がX1やX2と直接結合していることを意味する。
また、R1及びR2で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
また、R3で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
R4がアルキレン基である場合、R4で示されるアルキレン基の炭素数が6以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。R4で示されるアルキレン基の炭素数の好ましい上限は4である。
また、R4で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
X1及びX2の少なくとも1つが置換されていてもよいアルキル基である場合、X1及びX2で示されるアルキル基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。X1及びX2で示されるアルキル基の炭素数の好ましい上限は4である。
また、X1及びX2で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
前記非水溶媒は、例えば、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ等に好ましく用いられる。
図1は、本発明にかかる非水電解液二次電池の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、非水電解液二次電池1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されている。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。上記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、本実施形態においては、非水電解液二次電池を例示したが、これに限定されることはなく、本発明は、その他の電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスに適用できる。
(2,5−Diphenyl−[1,6,2,5]dithiadiazepane 1,1,6,6−tetraoxide(化合物1:式(4)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた300mL容の4つ口フラスコに、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン4.25g(0.020モル)及びジクロロメタン120.0gを仕込み、ジクロロメタン40.0gに混合させたメタンジスルホニルクロライド4.26g(0.020モル)を、0℃に維持しながら1時間かけて滴下した。引き続き、同温度に維持しながら、ジクロロメタン40.0gに溶解させたトリエチルアミン4.5g(0.044モル)を、1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン200.0g及び水100.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥した。この結晶をジクロロメタン及びヘプタンを用いて再結晶し、ろ過して得られた結晶を乾燥して化合物1(式(4)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物)1.8g(0.005モル)を取得した。得られた化合物1の収率は、メタンジスルホニルクロライドに対して25.0%であった。
なお、得られた化合物1は、下記の物性を有することから同定することができた。
1H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)δ(ppm):7.63−7.65(m、4H)、7.45−7.49(m、4H)7.41−7.42(m、2H)、5.20(s、2H)、4.18(s、4H)
LC/MS(m/z[M−H]+):351
(5,9−Dihydro−6,8−dithia−5,9−diaza−benzocycloheptene 6,6,8,8−tetraoxide(化合物2:式(5)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた500mL容の4つ口フラスコに、1,2−ジメトキシエタン140.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン80.0gに溶解させたメタンジスルホニルクロライド21.3g(0.10モル)及び1,2−ジメトキシエタン80.0gに溶解させたo−フェニレンジアミン11.9g(0.11モル)を、−20℃に維持しながら1時間かけて同時に滴下した。引き続き、同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン50.0gに溶解させたトリエチルアミン21.3g(0.21モル)を、1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン200.0g及び水100.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒を25℃で減圧留去し、析出した結晶をジクロロメタン200.0gでリパルプ後、結晶をろ過、乾燥した。続いて、この結晶をメタノール及びトルエンで再結晶し、ろ過して得られた結晶を乾燥して化合物2(式(5)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物)4.8g(0.019モル)を取得した。化合物2の収率は、メタンジスルホニルクロライドに対して19.1%であった。
なお、得られた化合物2は、下記の物性を有することから同定することができた。
1H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CD3CN)δ(ppm):8.05(s、2H)、7.36−7.37(m、2H)、7.26−7.27(m、2H)、5.03(s、2H)
LC/MS(m/z[M−H]+):247
1,3−プロパンスルトン(アルドリッチ社製)を化合物3とした。
(エチレンメタンジスルホネート(化合物4)の作製)
N,N’−ジフェニルエチレンジアミン4.25g(0.020モル)に代えて、エチレングリコール1.24g(0.020モル)を用いた以外は実施例1と同様にして化合物4(エチレンメタンジスルホネート)1.11g(0.0055モル)を取得した。化合物4の収率は、メタンジスルホニルクロライドに対して27.5%であった。
(2,3−Dimethyl−[1,4,2,3]dithiadiazolidine 1,1,4,4−tetraoxide(化合物5)の作製)
N,N’−ジフェニルエチレンジアミン4.25g(0.020モル)に代えてN,N’−ジメチルヒドラジン1.20g(0.020モル)を用いた以外は実施例1と同様にして化合物5(2,3−Dimethyl−[1,4,2,3]dithiadiazolidine 1,1,4,4−tetraoxide)0.88g(0.0044モル)を取得した。化合物5の収率は、メタンジスルホニルクロライドに対して22.0%であった。
(LUMOエネルギーの測定)
実施例及び比較例で得られた化合物1〜5について、LUMO(最低空分子軌道)エネルギーを測定するため、Gaussian03ソフトウェアにより、半経験的分子軌道計算を行った。軌道計算により得られた化合物1〜5のLUMOエネルギーを表1に示した。
一方、従来用いられている1,3−プロパンスルトン(化合物3)、エチレンメタンジスルホネート(化合物4)、及び式(1)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物以外の環状ジスルホン酸アミド化合物である化合物5は約−0.12eVから約0.97eVと比較的高いLUMOエネルギーを示すことがわかる。即ち、化合物3〜5は電気化学的還元に対して比較的安定であり、電極上にSEIが形成され難い。
以上より、本発明の非水電解液用添加剤にかかる式(1)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物は充分に低いLUMOエネルギーを有しており、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池等の電極上に安定なSEIを形成する新規の非水電解液用添加剤として有効であることを示している。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として各実施例、各比較例における化合物1〜5を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。得られた非水電解液、及び、電極としてグラッシーカーボンからなるディスク電極、対極として白金を用い、5mV/secの走査電位速度で分極測定を行った。参照電極として銀電極を用い、100μAの電流が流れる時の参照電極に対する電位を酸化電位、−100μAの電流が流れる時の参照電極に対する電位を還元電位とし、還元開始電圧を算出した。また、参考例1として、非水電解液用添加剤を添加せずに得られた非水電解液についても同様にして還元開始電圧を算出した。結果を表2に示した。
正極活物質としてLiMn2O4、及び、導電性付与剤としてカーボンブラックを乾式混合し、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを作製した。得られたそのスラリーを正極集電体となるアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)上に塗布後、NMPを蒸発させることにより正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で、正極活物質:導電性付与剤:PVDF=80:10:10とした。
一方、負極シートとして、市販の黒鉛塗布電極シート(宝泉社製)を用いた。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPF6を1.0mol/Lで溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として各実施例、各比較例で得られた環状ジスルホン酸アミド化合物を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
得られた非水電解液中にて、負極シートと正極シートとを、ポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、円筒型二次電池を作製した。また、参考例1として、非水電解液用添加剤を添加せずに得られた非水電解液についても同様にして円筒型二次電池を作製した。
得られた各円筒型二次電池に対して、25℃において、充電レートを0.3C、放電レートを0.3C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を2.5Vとして充放電サイクル試験を行った。200サイクル後の放電容量維持率(%)及び内部抵抗比を表3に示した。
なお、200サイクル後の「放電容量維持率(%)」とは、200サイクル試験後の放電容量(mAh)を、10サイクル試験後の放電容量(mAh)で割った値に100をかけたものである。また、200サイクル後の「内部抵抗比」とは、サイクル試験前の抵抗を1としたときの、200サイクル試験後の抵抗を相対値で示したものである。
また、実施例で得られた環状ジスルホン酸アミド化合物を用いた非水電解液は、比較例で得られた環状ジスルホン酸アミド化合物を用いた非水電解液に比べて、内部抵抗比が小さいことから、サイクル時による内部抵抗の増加を抑制できることが分かる。
2 正極集電体
3 正極活物質層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 負極板
8 非水電解液
9 セパレータ
Claims (9)
- 下記式(1)で表される環状ジスルホン酸アミド化合物からなることを特徴とする非水電解液用添加剤。
- 請求項1記載の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含むことを特徴とする非水電解液。
- 非水溶媒は、非プロトン性溶媒であることを特徴とする請求項2記載の非水電解液。
- 非プロトン性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の非水電解液。
- 電解質は、リチウム塩を含有することを特徴とする請求項2、3又は4記載の非水電解液。
- リチウム塩は、LiAlCl4、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、及び、LiSbF6からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の非水電解液。
- 請求項2、3、4、5又は6記載の非水電解液、正極、及び、負極を備えたことを特徴とする蓄電デバイス。
- 蓄電デバイスがリチウムイオン電池である、請求項7記載の蓄電デバイス。
- 蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタである、請求項7記載の蓄電デバイス。
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