JP2014178365A - 電子写真感光体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成し、その端部の肉厚部を除去して電子写真感光体を製造する方法において、歩留まりを低下させず、飛沫付着による欠陥のない電子写真感光体を高い良品率で製造し得ること。
【解決手段】円筒状被塗布物12の一方の端部を閉塞させかつ他方の端部を開口させ、他方の端部(開口側端部12b)から鉛直方向に円筒状被塗布物を、溶剤を収容した溶剤槽に浸漬させる浸漬工程、円筒状被塗布物を溶剤槽中から引き上げる引き上げ工程、および円筒状被塗布物の内部の空気を一方の端部(閉塞側端部)から吸引する吸引工程を含み、前記浸漬工程の溶剤が6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含み、かつ円筒状被塗布物の開口側端部と溶剤とが溶剤の表面張力により繋がっている間もしくは引き上げ工程により離反した後に吸引工程を実施する。
【選択図】図2

Description

本発明は、導電性支持体上に塗布液を塗布して作製される有機電子写真感光体(以下「電子写真感光体」、単に「感光体」ともいう)の製造方法およびそれにより製造された電子写真感光体に関する。本発明の感光体は、複写機、電子写真方式のプリンター、ファクシミリなどの画像形成装置に好適に用いられる。
C. F. Carlsonの発明による電子写真技術は、(1)感光体の均一な帯電、(2)像露光により静電潜像を形成する露光、(3)トナーにより静電潜像からトナー像を形成する現像、(4)紙などの記録媒体へのトナー像の転写(中間に転写体を経由する場合もある)および(5)記録媒体へのトナー像の定着による画像形成、ならびに(6)感光体上の残留トナーのクリーニングおよび除電という6つの基本プロセスから構成される。このような電子写真技術は、即時性、高品質かつ保存性の高い画像が得られることから、複写機や各種プリンター、ファクシミリなどの分野で広く実用されている。
画像形成装置に用いられる感光体は、一般に円筒状導電性支持体(電子写真感光体用素管)の外周面に有機光導電材料による感光層が形成されている。最近の感光体の多くは、高性能化の要求に応じて研究開発が重ねられた結果、中間層(「下引き層」ともいう)、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成された積層構造を有する機能分離型の感光体が実用化されるに至っている。また、一部の感光体では、その耐久性を向上させるために、最外層に保護層が設けられている。
上記の機能分離型(「積層型」ともいう)の感光体以外にも、それらを構成する電荷発生層と電荷輸送層とが一層で構成された単層型の感光体がある。上記の電荷発生層と電荷輸送層との積層およびそれらが一層で構成された単層は共に感光層という。
導電性支持体の外周面に、感光層や下引き層、保護層を形成する方法としては、従来からスプレー塗布法、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ロールコート法などの塗布法が知られており、これらの中でも浸漬塗布法は、その生産効率の高さから最も多用されている。
感光体に設けられる層、特に感光層は、薄膜でかつ塗布欠陥などがなく、均一な厚さであることが要求される。そのため、より高い精度で薄くかつ厚さを均一に塗布して感光体の高機能化を実現すると同時に、低コストで塗布を可能にするべく塗布方法の検討が行われている。
浸漬塗布法による感光体の製造では、円筒形状を有する被塗布物(円筒状被塗布物)の一方の端部を閉塞し、他方の端部を開口した状態で、開口側の端部から感光層(下引き層、保護層も同様)を形成しようとする部分の深さまで塗布液(「塗工液」ともいう)槽に収容される塗布液中に被塗布物を鉛直方向に浸漬し、その後引き上げることで被塗布物の表面に塗布液を塗布する。
このような塗布方法では、被塗布物の引き上げに伴い、外周面の塗布液が垂れて開口側端部に集中し、塗布層の一部(下端部)に肉厚部が形成される。また、被塗布物内部の空気の膨張、塗布液中の溶剤の蒸発などにより、閉塞された被塗布物内部の気体の体積が増加し、塗布中に開口側端部から気泡が生じることがある。そこで、この気泡発生を抑制するために塗布中に被塗布物内部の空気を閉塞側端部から少量ずつ抜き、塗布液をいくらか内部に回り込ませると、開口側端部の内周側にも塗布層の一部(下端部)に肉厚部が形成される。すなわち、塗布層の肉厚部は、円筒形状の被塗布物の外周側と内周側の総和として発生する。
このような塗布層の肉厚部は、塗布が完了した被塗布物の搬送冶具の汚染や乾燥後のギアフランジ組み立て精度の悪化を引き起こすことから、様々な除去方法が提案されている。例えば、特開2001−157864号公報(特許文献1)には、溶剤を染み込ませた多孔質弾性体を被塗布物の開口側端部に接触、回転させて、形成された塗布層の肉厚部を除去する方法が提案されている。
しなしながら、特許文献1に記載の除去方法は、塗布液の粘度が低い場合や数回程度の処理の場合には効果があるものの、最近では塗布液の粘度が高くなる傾向にあり、生産時には大多数の処理が行われるので、上記の多孔質弾性体など肉厚部の除去に関わる部分が塗布液で汚染されて処理能力が低下し、連続生産性の点が問題になる。
このため、塗布層形成後の肉厚部除去に移行する前に、一旦、開口側端部の肉厚部を溶剤槽中に浸漬し、そこである程度、肉厚部を溶解させてから最終的に除去する方法が提案されている。この肉厚部の前処理は、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層の各層で行うこともできるが、使用する塗布液の粘度が最も高く、その分だけ肉厚部の除去に関わる部材の汚染の程度が高いことから、電荷輸送層の形成工程にのみ行われることが多い。
この肉厚部の前処理は、一方の端部が閉塞され、他方が開口している被塗布物の開口側端部の肉厚部を溶剤槽中に浸漬し、一定時間の経過した後に引き上げることで行われる。換言すれば、この前処理は使用する液体を感光層用塗布液から溶剤に置き換えた、一種の浸漬塗布法である。そのため浸漬塗布法でも問題となった、液体の表面張力により開口側端部に液体の膜が形成され、時間の経過によりそれが弾け、膜を形成していた液体(乾燥前の塗膜)が被塗布物の周囲に飛散するという問題も引き継がれることになる。
ここで、塗膜の飛散とこれまで提案された対応策について以下に説明する。
肉厚部の前処理は、浸漬塗布法における「塗布液」を「溶剤」に、浸漬させる長さの「塗布領域」を「肉厚部」に置き換えることで説明できる。
図3は、従来の浸漬塗布法により被塗布物に塗布層を形成する際に生じる問題点を説明する概略図である。
図3は、複数の被塗布物1、1aが塗布液槽中の塗布液3から引き上げられる際に、開口側の端部に塗布液膜4が形成され、それが弾けて塗布液の飛沫5があらゆる方向に飛散する状態を示す。
図3に示すように、1つの塗布液槽中に複数の被塗布物1、1aを浸漬させて塗布層2の形成を行う場合、被塗布物1と隣り合う被塗布物1aとの間隔dが小さいと、被塗布物1から飛散した塗布液の飛沫5が隣り合う他の被塗布物1aに形成される塗布層2aに付着し、製品としての感光体の外観品質を低下させるという不具合が生じる。さらに、塗布液の飛沫5は、軸線方向が鉛直に保持される被塗布物1aの軸線方向における中心付近にまで達することがあり、感光体として用いる際に出力画像への影響も懸念される。ここでは、便宜上、被塗布物1から被塗布物1aへの塗布液の飛散について説明したが、実際にはその逆も起こる。
そこで、複数の被塗布物を同時に浸漬塗布すると共に、飛散する塗布液の影響を低減するための浸漬塗布装置や塗布方法が提案されている。
例えば、特開平7−155663号公報(特許文献2)には、被塗布物内部に圧縮性流体を強制的に流し込み、被塗布物の開口側端部に形成される塗膜を強制的に破る機構を備えて、塗布液の飛散(飛沫)発生を防止する浸漬塗布装置が提案されている。
また、特開2006−337759号公報(特許文献3)には、塗布液が収容された塗布液槽から被塗布物を引き上げていく際に、その開口側端部と塗布液面とが離反するときに、被塗布物内部の空気を閉塞側端部から吸引して、開口側端部に形成された塗膜を被塗布物内部の空気と共に吸い込み、被塗布物周囲への塗布液の飛沫発生を防止する方法が提案されている。
上記のような塗布液の飛散発生の防止策は、そのまま肉厚部の前処理に適用できる。例えば、特開2007−183485号公報(特許文献4)には、被塗布物の開口側端部の肉厚部を溶剤槽に浸漬して肉厚部を溶解させた後に、被塗布物内部の空気を吸引する方法が提案されている。
特開2001−157864号公報 特開平7−155663号公報 特開2006−337759号公報 特開2007−183485号公報 特開2004−70062号公報 特開2002−72519号公報
上記のように、感光体の生産効率および品質の向上に向けた製造方法や装置が提案されているが、浸漬塗布法のメリットである高い生産効率を維持しつつ、高い外観品質、出力画像品質を有する感光体を製造する点では未だ十分ではない。
例えば、特許文献2および3で提案されている製造方法では、塗布工程では効果的であるものの、溶剤を用いる肉厚部の前処理工程ではそれほど効果的ではない場合が多い。
例えば、特開2004−70062号公報(特許文献5)および特開2002−72519号公報(特許文献6)に記載されているように、対象となる液体が結着樹脂や塗布性向上を目的とした様々なレベリング剤を含有する電荷発生層や電荷輸送層形成用の塗布液では、塗布液の粘度が高く、表面張力が低く抑えられているので、開口側端部に形成される塗膜が安定して存在し、塗膜の吸引処理が効果的に作用する。一方、肉厚部の前処理では、対象となる液体が単に肉厚部を溶解させることを目的とした溶剤であり、溶剤の粘度が低く、表面張力が高いので、吸引処理が効果的に作用しない場合が多い。
すなわち、肉厚部を溶解させるために、開口側端部を溶剤槽の溶剤に浸漬させ、その後引き上げた際に、開口側端部に形成された溶剤膜は、開口側端部が溶剤面を離反して早々に飛散し、被塗布物内部の空気を吸引するときには既に溶剤膜が飛散した後となり、吸引動作を実施しても溶剤膜の飛沫付着による不良が改善されないことが多い。このような現象は、溶剤槽の溶剤が新しい状態に近い生産開始当初や溶剤槽に溶剤を追加補充した生産途中に顕著に現れる。つまり、感光体の生産を重ねていくと、多数回の前処理で肉厚部に含有されていた様々なレベリング剤などが溶剤中に溶け出し、溶剤の表面張力が下がる結果、溶剤膜が安定に形成され、吸引効果が効き始めて歩留まりが向上するのに対し、生産開始当初や追加補充の直後は溶剤膜が安定に形成されないために、吸引効果が発揮されず歩留まりが低下する傾向にあるものと考えられる。
そこで、本発明は、円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成し、その端部の肉厚部を除去して電子写真感光体を製造する方法において、肉厚部を除去する前処理工程に使用する溶剤が新しい状態に近い生産開始や溶剤追加直後であっても歩留まりを低下させず、前処理工程での飛沫付着による欠陥のない電子写真感光体を高い良品率で製造し得る電子写真感光体の製造方法およびそれにより製造された高品質な電子写真感光体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記のような溶剤中へのレベリング剤などの溶出、溶剤の表面張力と吸引効果との関係および感光体の歩留りとの関係に着目して鋭意研究を重ねた結果、6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含む溶剤を用い、かつ吸引動作のタイミングを調整することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
かくして、本発明によれば、円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成した後に、前記円筒状被塗布物の端部に生じた塗布層の肉厚部を除去する処理を含む電子写真感光体の製造方法であり、
前記肉厚部を除去する処理が、
前記円筒状被塗布物の一方の端部を閉塞させかつ他方の端部を開口させ、前記他方の端部(開口側端部)から鉛直方向に前記円筒状被塗布物を、溶剤を収容した溶剤槽に浸漬させる浸漬工程、
前記円筒状被塗布物を前記溶剤槽中から引き上げる引き上げ工程、および
前記円筒状被塗布物の内部の空気を前記一方の端部(閉塞側端部)から吸引する吸引工程を含み、
前記浸漬工程の溶剤が6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含み、かつ前記円筒状被塗布物の開口側端部と前記溶剤とが前記溶剤の表面張力により繋がっている間もしくは前記引き上げ工程により離反した後に前記吸引工程を実施することを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の電子写真感光体の製造方法により製造されてなることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
本発明によれば、円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成し、その端部の肉厚部を除去して電子写真感光体を製造する方法において、肉厚部を除去する前処理工程に使用する溶剤が新しい状態に近い生産開始や溶剤追加直後であっても歩留まりを低下させず、前処理工程での飛沫付着による欠陥のない電子写真感光体を高い良品率で製造し得る電子写真感光体の製造方法およびそれにより製造された高品質な電子写真感光体を提供することができる。
すなわち、6cSt以下の粘度を有する溶媒に22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含有させた溶剤を用いることにより、肉厚部の溶解性を損なうことなく溶剤の表面張力を低下させ、被塗布物の開口側端部に溶剤膜を安定して形成できるようにすることで、被塗布物内部の空気を吸引する吸引動作を効果的に作用させて溶剤膜の飛散を抑制でき、上記の課題を達成できるものと考えられる。
また、従来の画像形成装置では出力画像に現れなかった感光体上の溶剤付着による軽微な(小さな)塗布欠陥は、近年の高解像度の画像形成装置では出力画像に現れ、画像に悪影響を与えるが、本発明は、このような小さな欠陥もなく、高品質な電子写真感光体を提供することができる。
また、本発明によれば、
シリコンオイルが50cSt以下の粘度を有する、
シリコンオイルが溶媒に対して0.1〜20重量%含有する、および
シリコンオイルがポリジメチルシロキサンである
のいずれか1つの条件を満たす場合に、上記の効果がさらに発揮される。
本発明の感光体の製造方法に用いられる前処理装置および浸漬塗布装置の構成を示す模式側面図である。 本発明の感光体の製造方法における前処理(肉厚部の処理)の一実施態様を説明する模式図である。 従来の浸漬塗布法により被塗布物に塗布層を形成する際に生じる問題点を説明する概略図である。 図2の前処理において被塗布物の開口側端部が溶剤液面を離反する前後の状況を説明する模式図である。 本発明の一実施形態である積層型電子写真感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の他の実施形態である単層型電子写真感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
(1)電子写真感光体の製造方法
本発明の電子写真感光体の製造方法は、円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成した後に、前記円筒状被塗布物の端部に生じた塗布層の肉厚部を除去する処理を含む電子写真感光体の製造方法であり、
前記肉厚部を除去する処理が、
前記円筒状被塗布物の一方の端部を閉塞させかつ他方の端部を開口させ、前記他方の端部(開口側端部)から鉛直方向に前記円筒状被塗布物を、溶剤を収容した溶剤槽に浸漬させる浸漬工程、
前記円筒状被塗布物を前記溶剤槽中から引き上げる引き上げ工程、および
前記円筒状被塗布物の内部の空気を前記一方の端部(閉塞側端部)から吸引する吸引工程を含み、
前記浸漬工程の溶剤が6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含み、かつ前記円筒状被塗布物の開口側端部と前記溶剤とが前記溶剤の表面張力により繋がっている間もしくは前記引き上げ工程により離反した後に前記吸引工程を実施することを特徴とする。
以下、図面を用いて本発明の感光体の製造方法について説明する。
図1は、本発明の感光体の製造方法に用いられる前処理装置および浸漬塗布装置の構成を示す模式側面図である。
図1のすべての構成を含む装置は、一般的な浸漬塗布装置であり、塗布液および塗布液槽をそれぞれ溶剤および溶剤槽に置き換え、その溶剤槽に付設される循環系を除いたものが前処理装置に相当する。この装置では、複数の被塗布物が処理できる構成であり、本発明の好ましい実施態様である。
前処理装置11は、被塗布物の端部に形成された肉厚部を溶解させるための溶剤13を収容し、複数の被塗布物12が浸漬される溶剤槽14と、円筒形状の被塗布物12の一方の端部(閉塞側端部)12aを上側にし、かつ閉塞して把持する把持手段15と、把持手段15により把持される被塗布物12を溶剤槽14に対して上下に移動させる昇降手段16とで構成される。また、溶剤の液面(「溶剤面」ともいう)13aを検出するための液面センサーが、溶剤槽に取り付けられる場合もある。図番20は、オーバーフロー槽を示し、前処理装置では付設されていなくてもよい。
上下の移動方向は、鉛直方向、すなわち溶剤面の垂直方向を意味する。
ここで、本発明において「鉛直方向」および「垂直方向」とは、2°程度までの誤差を許容するものとする。
被塗布物12は、その外周面に感光層などの塗布層が形成された対象物であって、詳しくは、外周面に感光層などの塗布層が形成され、開口側端部の外周側と内周側に肉厚部が生じている円筒状導電性支持体である。上記のように一方の端部12aが後述する把持手段15により閉塞されて支持され、他方の端部12bが開口される(開口側端部)。被塗布物12は後述する溶剤槽14中の溶剤13に肉厚部のみを浸漬させて、その後引き上げることにより、溶剤槽14中の溶剤13が被塗布物12の開口側端部の肉厚部を溶解させる。溶剤13には複数の被塗布物12が同時に浸漬される。
溶剤槽14は、被塗布物12の開口側端部に形成された肉厚部を溶解させる溶剤13を収容し、被塗布物12を浸漬するための容器である。
溶剤槽14は、隣り合う被塗布物の間隔がdである被塗布物12を、例えば40本同時に浸漬させることのできる大きさを有する。被塗布物12の開口側端部12aに形成された肉厚部を溶剤槽14に浸漬し、一定時間経過した後に引き上げると、肉厚部が溶解され、その後の端部処理が容易に実施できる状態になる。
把持手段15は、円筒形状の被塗布物12の一方の端部12aを上側にし、かつ閉塞することにより、被塗布物12の軸線を溶剤13の溶剤面13aに対して垂直に把持する。把持手段15としては、例えば、バルーンチャック、Oリングチャック、メカチャックなどを用いることができる。把持手段15は、溶剤槽14に浸漬される被塗布物12の数以上の数が備えられ、複数の把持手段15は、隣り合う被塗布物の間隔がdとなるように、またすべての被塗布物12の開口側端部12bが同じ高さになるように設けられる。
吸引手段21は、被塗布物12の閉塞側端部12aから被塗布物12内部の空気を吸引するために、把持手段15に備えられる。吸引手段21は、被塗布物12の開口側端部12aと溶剤面13aとが溶剤13の表面張力により繋がっている間もしくは被塗布物12を溶剤槽14から引き上げる引き上げ工程により離反した後に、被塗布物12内部の空気を吸引する。
吸引手段21としては、例えば、吸引ポンプと、空気抜きバルブとを含むものを用いることができる。吸引手段21は、空気抜きバルブを開いて被塗布物12内部の空気を吸引する。吸引手段21による被塗布物12内部の空気を吸引するタイミングおよび吸引時間は、装置全体の動作を制御する制御手段22により制御され、その詳細については後述する。
昇降手段16は、軸受23に回転自在に支持されて鉛直方向に延びるおねじ部材24と、おねじ部材24に螺合するめねじ部材25と、おねじ部材24が挿通するようにしてめねじ部材25上に固着される保持部材26と、保持部材26に一端部が固着されて水平方向に延び、被塗布物12を把持する複数の把持手段15を支持する支持体27と、おねじ部材24を回転させるためのモータ28と、モータ28の回転駆動力をおねじ部材24に伝える歯車列29とを含んで構成される。昇降手段16は、溶剤槽14を挟んで1対以上が対向して設けられるが、図1では1つのみを図示する。
モータ28の回転により歯車列29を回転させることにより、おねじ部材24を回転させ、おねじ部材24に螺合するめねじ部材25が矢符30方向(被塗布物移動方向)に移動する。これにより、めねじ部材25に装着される支持体27が上下に移動し、支持体27の移動と共に把持手段15に把持される被塗布物12が矢符30方向に移動する。
被塗布物12を溶剤槽14に浸漬させる場合、支持体27が下降するようにモータ28を回転させ、被塗布物12を溶剤槽14から引き上げる場合、モータ28を逆回転させて支持体27を上昇させる。
モータ28の回転による支持体27の昇降速度は、制御手段22により制御される。また、モータ28の回転により昇降する支持体27に把持手段15を介して支持される被塗布物12の開口側端部12bの高さは、図示しない高さ検知手段により検知され、その検知出力は制御手段22に入力される。
被塗布物12の開口側端部に形成される肉厚部の溶解は、肉厚部を上記の昇降手段により溶剤槽14に浸漬し、一定時間保持した後、引き上げることにより行われる。溶剤槽14中に肉厚部を保持する時間は肉厚部の状態に依存するが、例えば、その保持(浸漬)時間は、20〜100秒間の範囲であることが好ましい。保持(浸漬)時間が20秒未満では、肉厚部の溶解が不完全になることがある。一方、保持(浸漬)時間が100秒を超えると、溶解が進みすぎ、肉厚部の膜が完全に消失し、電荷発生層や下引き層が露出することがある。また長時間の浸漬により溶剤の被塗布物内部への蒸発が進行し被塗布物内部の空気が膨張して開口側端部から気泡が発生し、その際の液面の揺らぎに伴う端部不良が発生することがある。
支持体27の昇降速度、すなわち溶剤槽14に浸漬される被塗布物12の速度の中でも、被塗布物12を溶剤槽14から引き上げる速度は、肉厚部の処理状態に影響する。
引き上げ速度としては、溶剤槽14の大きさ、隣り合う被塗布物の間隔dの大きさにもよるが、例えば、1.0〜10.0mm/秒の範囲であることが好ましい。
引き上げ速度が1.0mm/秒未満では、遅くなりすぎて、製造効率が上がらない上に、肉厚部を除去しすぎ、電荷発生層や下引き層が露出してしまうことがある。一方、引き上げ速度が10.0mm/秒を超えると、溶剤面が大きく揺れることにより端部の不良に繋がることがある。
溶剤槽14に収容される溶剤13は、被塗布物12の端部に形成される肉厚部の材質に応じて選択されるが、粘度が高いものは流動性が低く、肉厚部を溶解させる能力が低下するので、最適な粘度のものを選択する必要がある。
後述するような一般的な感光体では、下引き層、電荷発生層および電荷輸送層がこの順で積層されているが、前者2層がそれぞれ1μm程度の膜厚であるのに対し、後者の電荷輸送層は20〜30μm程度と、大部分が電荷輸送層である。したがって、溶剤槽14に収容される溶剤13中の溶媒としては、電荷輸送層用塗布液に使用される溶媒と同種であるのが適当である。また、電荷輸送層用塗布液はバインダ樹脂や電荷輸送物質などの大量の固形分を溶媒に溶解させて調製されるが、塗布条件に適合するように粘度の微調整も行う必要があることから、溶媒もあまり高粘度のものは使わないのが一般的である。したがって、溶媒粘度の点についても電荷輸送層用塗布液に用いられる溶媒と同種のものであれば前処理溶媒として最適である。電荷輸送層用塗布液に用いられる溶媒の種類については、感光体の項において説明する。
被塗布物12の開口側端部12bに形成された肉厚部を溶剤槽14の溶剤13に浸して溶解させるが、通常の溶媒では表面張力が高いため、被塗布物12の溶剤槽14からの引き上げ時に開口側端部12bに形成される溶剤膜は、表面積が大きい膜の状態を維持することができず、早々に飛散し、表面積の小さい液滴状態になり、周囲の隣接する被塗布物に付着し、感光体の品質不良が発生する。
本発明では、このような溶剤膜の飛散を効果的に抑制するために溶剤槽14中に収納される溶剤13には、6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含むものを用いる。
溶媒の粘度の下限は、通常、0.3cSt程度である。また、溶媒の表面張力の範囲は、通常、24〜40mN/mである。
シリコンオイルは、当該技術分野において一般的なレベリング剤として知られており、上記特許文献5および6に記載されているように各種塗布液の表面張力を下げ、塗布ムラ防止などの塗布性を向上させる目的で用いられる。
本発明では、規定の表面張力を持つシリコンオイルを含有させることで溶剤の表面張力を効果的に下げ、膜状態を安定して形成させることで、吸引動作による溶剤膜の処理を確実なものとしている。
シリコンオイルには、その分子量により様々な粘度ものがあり、本発明ではどのような粘度のものであっても一定の効果が現れるが、好ましい粘度は100cSt以下、より好ましい粘度は50cSt以下である。
本発明において「粘度」とは、25℃における絶対粘度をその物質の密度で除した動粘度(動粘性係数)を意味し、cSt(mm2/秒:センチストークス)の単位で表す。
シリコンオイルの粘度が対象となる溶媒の粘度と比べて極端に異なる場合には、徐々に溶媒とシリコンオイルとが分離してしまい、結果として表面張力を下げる効果が低下する。
したがって、シリコンオイルの粘度は、用いる溶媒の種類により適宜選択すればよく、感光体の塗布膜形成に用いられる溶媒の粘度が通常6cSt程度以下であることから、50cSt以下の粘度であれば、溶媒との分離が発生せずその効果を持続させることができる。
シリコンオイルの粘度の下限は、通常、0.6cSt程度である。
添加するシリコンオイルの表面張力は、22mN/m以下である。この上限値を超えるシリコンオイルでは、溶媒自身の表面張力に近いものとなり、適量を添加しても、実質上、溶剤の表面張力を低下させることができず、溶剤膜の安定形成に繋がらない。一方、シリコンオイルの表面張力の下限値は、入手可能なものとしては、通常、15mN/m程度である。
シリコンオイルは、溶剤に対して0.1〜20重量%であることが好ましい。
シリコンオイルが0.1重量%未満では、溶剤の表面張力を効果的に下げることができず、溶剤膜を安定に形成できないことがある。一方、シリコンオイルが20重量%を超えると、相対的に溶媒が減少して、肉厚部を溶解させ難くなることがある。シリコンオイルの含有量を上記の範囲に限定することで、肉厚部の溶解と溶剤膜の安定形成が可能となり、吸引動作が効果的に作用し、溶剤膜の飛沫発生を確実に抑制することができる。
シリコンオイルの品種としては、特に限定されないが、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびポリメチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。これにより、シリコンオイルを溶媒に含有させたときに、分離することなく添加が容易に行われ、表面張力の低下作用が長期的に維持できる。そのため、初期の設備トラブルなどにより、開始直後に生産を中断することがあっても、溶剤交換、シリコンオイル追加などを行う必要がない。
シリコンオイルを含有する溶媒は、繰り返し使用することにより、塗膜に含有される成分の溶出や溶媒自身の揮発により粘度が上昇し、肉厚部を溶解させる能力が低下する。したがって、溶剤を追加補充、或いは総入れ替えすることで、肉厚部の溶解能力を回復させる必要がある。この時、総入れ替えの場合は生産開始前と同様に投入した溶媒に適量のシリコンオイルを添加する。他方、溶媒の追加補充の場合は、それまでの肉厚部の溶解により塗膜に含有される成分が既に溶出しており、シリコンオイルを同時補充せずとも表面張力が比較的低く維持されている時もあるが、溶出量も一定でなく不安定なため、安定した生産体制を維持するためには、溶媒の追加分に対して適量のシリコンオイルを添加する方が好ましい。
制御手段22は、前述のように、被塗布物12の開口側端部12bの高さおよび溶剤槽14に収容される溶剤面13aの高さを検知する高さ検知手段により、その検知出力が入力される。
また、制御手段22には、時間を計測する図示しない計時手段が備えられる。計時手段としては、例えば、商用電源の周波数に応じて時間を計る手段などをが挙げられる。
制御手段22は、被塗布物12の引き上げ中において、検知される被塗布物12の開口側端部12bの高さと、溶剤槽14に収容される溶剤面13aの高さとが等しくなる時を開始点として、そこから被塗布物12の開口側端部12aと溶剤面13aとが溶剤13の表面張力により繋がっている間もしくは被塗布物12を溶剤槽14から引き上げる引き上げ工程により離反した後に、被塗布物12内部の空気を吸引するように吸引手段21を制御する。
吸引動作の開始高さとしては、被塗布物12の開口側端部12bと溶剤面13aとの間の距離rが0〜10mmの間に吸引動作を行うことが好ましい。
被被塗布物12の開口側端部12bと溶剤面13aとの間の距離が0mm未満では、実質的に被塗布物12の開口側端部12bが溶剤13の中に位置していることになるので、吸引に伴って溶剤自体も吸い込んでしまい、被塗布物12内部や吸引装置を溶剤13により汚染することがある。そのため、本発明の吸引工程は、開口側端部12bと溶剤面13aとの距離が長くとも10mmの位置までに実施することで効果的に不良発生を抑制することができる。一方、被被塗布物12の開口側端部12bと溶剤面13aとの間の距離が10mmを超えると、吸引動作を行う前に溶剤膜40が割れ、飛沫発生することがあり、また吸引効果が十分に得られないことがある。
以下、前処理装置11によって、塗布層が形成された被塗布物12の開口側端部12bの肉厚部を処理し、感光体を製造する本発明の実施の一態様である電子写真感光体の製造方法について説明する。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、前述のように、円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成した後に、前記円筒状被塗布物の端部に生じた塗布層の肉厚部を除去する処理を含む電子写真感光体の製造方法であり、
前記肉厚部を除去する処理が、
前記円筒状被塗布物の一方の端部を閉塞させかつ他方の端部を開口させ、前記他方の端部(開口側端部)から鉛直方向に前記円筒状被塗布物を、溶剤を収容した溶剤槽に浸漬させる浸漬工程、
前記円筒状被塗布物を前記溶剤槽中から引き上げる引き上げ工程、および
前記円筒状被塗布物の内部の空気を前記一方の端部(閉塞側端部)から吸引する吸引工程を含み、
前記浸漬工程の溶剤が6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含み、かつ前記円筒状被塗布物の開口側端部と前記溶剤とが前記溶剤の表面張力により繋がっている間もしくは前記引き上げ工程により離反した後に前記吸引工程を実施することを特徴とする。
図2は、本発明の感光体の製造方法における前処理(肉厚部の処理)の一実施態様を説明する模式図である。
まず溶剤槽への浸漬工程では、モータ28を回転させて把持手段15に把持される被塗布物12を支持する支持体27を下降させ、図2(a)に示すように、溶剤13が満たされる溶剤槽14に被塗布物12の肉厚部を浸漬する。このとき把持手段15に把持される側の被塗布物12の端部12aは把持手段15により閉塞され、被塗布物12は、他方の端部であって、開口側の端部12bから溶剤13中に浸漬される。浸漬する距離は肉厚部のみ、距離でいえば被塗布物0〜5mm程度である。なお、このとき被塗布物12の内部に存在する空気は閉塞される状態となる。被塗布物12の浸漬は、この状態で一時停止され、その間に肉厚部を溶解させる。次いで、図2(b)〜(d)に示すように、引き上げ工程では、モータ28を回転させて把持手段15に把持される被塗布物12を支持する支持体27を上昇させ、被塗布物12を溶剤13中から引き上げる。
以下、吸引工程について図面を用いてさらに詳細に説明する。
図4は、図2の前処理において被塗布物の開口側端部が溶剤液面を離反する前後の状況を説明する模式図である。
図4(a)〜(d)は被塗布物が溶剤面から引き上げにより離れる前後を段階的に示している。図4(a)は被塗布物が溶剤中から引き上げられている途中段階である。
次いで、引き上げが進行し、図4(b)では被塗布物の開口側端部と溶剤面とが一致することとなる。そして、さらに引き上げが進むと、図4(c)のように、被塗布物の開口側端部が溶剤面から離れているが、溶剤の表面張力により繋がっている期間となる。この繋がり部は、さらに引き上げが進行することで、図4(d)のように、不完全ではあるが開口側端部から被塗布物中心にかけての間に溶剤膜を形成することとなる。その後、引き上げが進行し、図4(e)のように、溶剤面とのつながりが完全に切れ、開口側端部のみに溶剤膜が形成されることとなる。
複数の被塗布物12を1つの溶剤槽14に浸漬する感光体の製造方法では、この溶剤膜40が弾け溶剤が飛散することによって、隣り合う被塗布物41に形成される塗布層42が飛散した溶剤の飛沫43に汚染されることを防止するために吸引工程を実施するのであるが、肉厚部を溶解させることを目的とした溶剤では、表面張力が高いため、この溶剤膜が安定して存在することができず、形成されても、即時、飛散発生してしまったり、場合によっては、図4(c)および(d)の様に表面張力で繋がってい場合でも飛散する場合があり、吸引タイミングが合わないことが多い。そのため本発明では、溶媒にシリコンオイルを含有させることで表面張力を下げ、溶剤膜を安定に形成できるようにした上で、吸引動作を稼働させることで、溶剤膜の飛散を抑制している。
吸引工程のタイミングは、図4(b)から(e)に至る間の、図4(c)および(d)のように被塗布物12の開口側の端部12bが溶剤13中から引き上げられた際に、開口側端部12bと溶剤表面13aとが溶剤の表面張力により繋がっている期間、もしくは図4(e)のように被塗布物と溶剤面が完全に離反してから溶剤膜が飛散するまでの期間である。
吸引工程では、吸引手段21によって、閉塞側端部12aから被塗布物12内部の空気を吸引する。なお、吸引工程は、被塗布物12を引き上げながら行ってもよく、引き上げを一時停止して行ってもよい。一時停止する場合、吸引工程は、停止後1〜10秒の間で実施されることが好ましい。本発明の吸引工程は溶剤面の直上で実施するため、10秒を超えると溶媒蒸気により、被塗布物下部の塗布膜厚に影響したり、塗布ムラの発生に繋がる。一時停止期間が1秒未満では、引き上げ速度が速い場合、吸引装置の制御に大きな負荷をかける恐れがある。吸引工程では、図2(d)に示すように、被塗布物12内部の空気を矢符21a方向(吸引方向)に吸引することにより、被塗布物12を引き上げたときに開口側の端部12bと溶剤面13aとの間に発生している溶剤膜40、もしくは溶剤面13aから完全に離反し開口側端部に形成されている溶剤膜40を被塗布物12内部に吸引するものである。このように被塗布物12の内部に溶剤膜40を吸引することにより、溶剤膜の飛散を被塗布物12の内部および開口側の端部12bから溶剤面13aに向かう側に変化させるとともに、飛散した溶剤の飛沫43を被塗布物12内部側に吸引することができる。また開口側の端部12bと溶剤面13aとの間に発生している溶剤膜40は、溶剤の表面張力で開口側端部と溶剤面の双方と繋がっているので、離反時より安定しており、シリコンオイル含有量が少ない場合などの表面張力低下効果が少なく溶剤膜40の安定形成が充分でない場合でも、この期間であれば吸引動作を効果的に作用させることが出来るので、隣合う被塗布物41に形成される塗布層42に付着するのを防止することができる。
吸引手段21によって被塗布物12内部の空気を吸引するタイミングは、前述のように制御手段22により制御され、被塗布物12の引き上げ中において、検知される被塗布物12の開口側端部12bの高さと、溶剤槽14に収容される溶剤面13aの高さとが等しくなる時を開始点として、そこから被塗布物12の開口側端部12aと溶剤面13aとが溶剤13の表面張力により繋がっている間もしくは被塗布物12を溶剤槽14から引き上げる引き上げ工程により離反した後に、被塗布物12内部の空気を吸引するように吸引手段21を制御するものであり、被塗布物12の開口側の端部12bと塗布液面13aとの間の距離が0〜10mmの間に行うことが好ましい。また、吸引手段21による被塗布物12内部の空気の吸引は、0〜5秒間行われることが好ましい。
このようにして被塗布物12の開口側端部に形成された肉厚部を適度に溶解させた後、公知の方法、例えば、被塗布物12の内面と端部を、溶剤をしみ込ませた多孔質部材などの端面処理手段で拭き取ることにより、端部が清浄になる。
その後、自然乾燥および/または熱風、遠赤外線などの加熱手段による乾燥により、塗布層39を形成する塗布液13中の溶媒を蒸発させ、順次必要な感光層を形成し、感光体の製造を完了する。なお、加熱手段を用いる場合、塗布層の乾燥は、例えば、40〜130℃の温度で、10分〜2時間行われることが好ましい。
(2)電子写真感光体
本発明の電子写真感光体は、上記の本発明の電子写真感光体の製造方法により製造されてなることを特徴とする。
すなわち、本発明の感光体は、円筒状被塗布物の表面に感光層などの塗布層を浸漬塗布法により形成し、円筒状被塗布物の端部の肉厚部を除去する本発明の感光体の製造方法により製造される。
浸漬塗布法による塗布層の形成には、例えば、図1のすべての構成を含む浸漬塗布装置を用いることができる。
この装置は、前処理装置の溶剤13および溶剤槽14をそれぞれ塗布液および塗布液槽に置き換え、その溶剤槽に循環系19を付設したものである。
循環系以外は前処理装置と同様であり、循環系19について説明する。
循環系19は、塗布液13を収容する塗布液槽14および撹拌槽31と、塗布液槽14および撹拌槽31の底部を接続する下部循環経路17と、オーバーフローした塗布液13を、傾斜をもって塗布液槽14から撹拌槽31に送液するための、両者の上部を接続する上部循環経路18と、塗布液13を撹拌槽31から塗布液槽14に送液するための、下部循環経路17に設けられたポンプ36およびフィルタ38と、撹拌槽31内の塗布液13を撹拌する、撹拌翼33とモータ32からなる撹拌機と、塗布液槽14の外周上部に設けられたオーバーフロー槽20とを備える。図番37は、塗布液の流れ方向(矢符)を示す。
また、循環系19は、塗布液13の粘度を測定する粘度測定手段34および溶剤供給手段35を備えていてもよい。これにより粘度測定手段34において測定された塗布液13の粘度に基づいて、溶剤供給手段35から塗布液13の溶剤を補充して粘度を予め設定された基準値に維持することができる。
以下、本発明の感光体の実施形態を、図面を用いて説明するが、これらにより本発明は限定されない。
図5および6は、それぞれ本発明の一実施形態である積層型電子写真感光体および他の実施形態である単層型電子写真感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図5の積層型電子写真感光体51aは、導電性支持体52上に、下引き層53および電荷発生層55と電荷輸送層56とがこの順で積層された積層型感光層54aがこの順で形成されている。
図6の単層型電子写真感光体51bは、導電性支持体52上に、下引き層53および単層型感光層54bがこの順で形成されている。
図5および6における図番57は電荷発生物質を、図番58はバインダ樹脂を示す。
以下、感光体の各構成について説明する。
(2−1)導電性支持体(「導電性基体」ともいう)
導電性支持体は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる支持体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
本発明において導電性支持体の形状は、図3に示すような円筒状(ドラム状)である。
(2−2)下引き層(「中間層」ともいう)
本発明の感光体は、導電性支持体上に下引き層が設けられていもよい。
下引き層は、導電性支持体から感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、導電性支持体の表面を被覆する下引き層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、感光層の成膜性を高め、導電性支持体と感光層との密着性(接着性)を向上させて、感光層の導電性支持体からの剥離を抑えることができる。下引き層は1層とは限らず、複数の層で構成されていてもよい。
下引き層には、各種樹脂材料からなる樹脂層、アルマイト層などが用いられる。
樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が特に好ましい。
下引き層には、金属酸化物粒子などの粒子を含有させてもよい。
下引き層にこれらの粒子を含有させることによって、下引き層の体積抵抗値を調節し、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止する効果を高めることができる。また、種々の環境下において感光体の電気特性を維持し、環境安定性を向上させることができる。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子が挙げられる。これらの金属酸化物粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、下引き層には、光干渉による画像欠陥を防ぐための光散乱粒子や導電性を調節するための電子輸送物質などを含有させてもよい。
下引き層は、例えば、上記の樹脂および必要に応じて下引き層に含有させる金属酸化物粒子などを、適当な溶媒中に溶解または分散させて下引き層用塗布液を調製し、得られた塗布液を浸漬塗布法で導電性支持体の表面に塗布することにより形成することができる。
金属酸化物粒子などを下引き層用塗布液中に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライタ、サンドミル、横型サンドミルなどのメディア分散機などを用いる公知の分散方法を使用することができる。
下引き層用塗布液の溶媒としては、水もしくは各種有機溶媒、またはこれらの混合溶媒が用いられる。それらの中でも、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶媒、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶媒とアルコール類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類とアルコール類などの混合溶媒が好適に用いられる。
下引き層における樹脂および金属酸化物粒子の合計含有量(A)は、溶媒の重量(B)に対して、重量比(A/B)で1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。
また、樹脂の重量(C)と金属酸化物の重量(D)との重量比(C/D)は、90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは65/35〜5/95である。
下引き層の膜厚は、0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜5μmである。
下引き層の膜厚が0.01μm未満では、実質的に下引き層として機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を十分に防止することができなくなる可能性があり、感光層の帯電性の低下を抑制できないことがある。一方、下引き層の膜厚が10μmを超えると、浸漬塗布法によって形成する場合には下引き層の形成が困難になると共に、下引き層上に感光層を均一に形成することができず、感光体の感度が低下することがある。
(2−3)電荷発生層
図6に示す積層型感光層54aの電荷発生層は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。
電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、オキソチタニウムフタロシアニン化合物などの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびにアモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛および硫化亜鉛などの無機光導電性材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷発生物質は他の増感染料(増感剤)と併用してもよい。増感剤を添加することによって、感光体の感度が向上し、更に繰返し使用による残留電位の上昇および帯電電位の低下などを抑えることができ、電気的耐久性を向上させることができる。
そのような増感染料としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料が挙げられる。
電荷発生層には、結着性を向上させるために、バインダ樹脂が含有されてもよい。
バインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。
バインダ樹脂は上記のものに限定されず、この分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することもできる。これらのバインダ樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、電荷発生層は、必要に応じてホール輸送材料、電子輸送材料、酸化防止剤、分散安定剤、増感剤などの各種添加剤を含有してもよい。これにより電荷発生層の電気特性の向上、塗布液の保存安定性の向上、さらには感光体の繰返し使用時の疲労劣化の軽減や耐久性の向上が期待できる。
電荷発生層は、例えば、上記の電荷発生物質および必要に応じて電荷発生層に含有させるバインダ樹脂などを、適当な溶媒中に溶解または分散させて電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を浸漬塗布法で導電性支持体の表面またはその上に形成された下引き層の表面に塗布することにより形成することができる。
電荷発生層用塗布液は、57cSt(約50Pa・秒)以下の粘度を有することが好ましい。このような粘度に調製された塗布液を用いることで、本発明の製造方法により欠陥のない、高品質な電荷発生層を形成することができる。
電荷発生層用塗布液の溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、イソホロン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、安息香酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジベンジルエーテル、1,2−ジメトキシエタンジオキサンなどのエーテル類;1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶媒;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いることができる。
電荷発生層における電荷発生物質の含有量は、10〜99重量%であることが好ましい。
電荷発生物質の含有量が10重量%未満では、感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生物質の含有量が99重量%を超えると、バインダ樹脂の含有量が低くなり、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生層における電荷発生物質の分散性が低下して電荷発生物質の粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される、いわゆる黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなることもある。
電荷発生物質は、上記の溶媒中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などが挙げられる。
電荷発生物質を溶媒中に分散させる際に用いられる分散機としては、例えば、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどが挙げられる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択することが望ましい。
電荷発生層の膜厚は、0.05〜5.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0μmである。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、電荷発生量の不足から感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生層の膜厚が5.0μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体の帯電性が低下することがある。
(2−4)電荷輸送層
図6に示す積層型感光層54aの電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ、輸送する能力を有する電荷輸送物質をを主成分とし、任意に公知の添加剤およびバインダ樹脂を含有する。
電荷輸送物質としては、ホール輸送物質および電子輸送物質を用いることができる。
ホール輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体およびベンジジン誘導体、ならびにこれらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセンなど、またはポリシランなどのポリマーが挙げられる。
電子輸送物質としては、例えば、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、キサントン誘導体、フェナントラキノン誘導体、無水フタル酸誘導体、ジフェノキノン誘導体などの有機化合物、アモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン-テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの無機材料が挙げられる。電荷輸送物質は、ここに挙げたものに限定されるものではなく、その使用に際しては単独または2種以上を混合して用いることができる。これらの電荷輸送物質は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダ樹脂には、電荷輸送物質との相溶性に優れるものが選択され、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などの樹脂類、ならびにこれらの樹脂を部分的に架橋させた熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂およびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、また成膜性および電気特性などにも優れているので、好適に用いられる。
電荷輸送層における電荷輸送物質(E)とバインダ樹脂(F)との重量比(E/F)は電荷輸送物質100に対して、100/30〜100/200であることが好ましく、より好ましくは100/60〜100/180である。重量比(E/F)が100/200未満でバインダ樹脂の比率が高くなると、現状の電荷輸送物質の電荷輸送能では、充分な応答性が得られなくなることがある。一方、重量比(E/F)が100/30を超えてバインダ樹脂の比率が低くなると、耐刷性が低下し、感光層の摩耗量が増加することがある。
電荷輸送層は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤および表面改質剤(レベリング剤)などを含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ベンゾフェノン、o−ターフェニル、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、各種フルオロ炭化水素、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などが挙げられる。
表面改質剤としては、シリコンオイル、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、電荷輸送層は、機械的強度の増加および電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を含有してもよく、さらに必要に応じて酸化防止剤および増感剤などの各種添加剤を含有してもよい。これにより電荷輸送層の電気特性の向上、塗布液の保存安定性の向上、さらには感光体の繰返し使用時の疲労劣化の軽減や耐久性の向上が期待できる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。
ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の使用量は、それぞれ電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲であるのが好ましい。また、これらを混合して用いてもよく、この場合、ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計量を電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲とするのが好ましい。
上記の酸化防止剤の使用量(合計使用量)が電荷輸送物質に対して0.1重量%未満では、塗布液の保存安定性の向上および感光体の耐久性の向上の効果が充分に発揮されないことがある。一方、酸化防止剤の使用量(合計使用量)が電荷輸送物質に対して50重量%を超えると、感光体の感度特性に悪影響を及ぼすことがある。
電荷輸送層は、例えば、上記の電荷輸送物質およびバインダ樹脂、必要に応じて電荷輸送層に含有させる添加剤などを、適当な溶媒中に溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を浸漬塗布法で導電性支持体上に形成された電荷発生層の表面に塗布することにより形成することができる。
電荷輸送層用塗布液は、300cSt(約290mPa・秒)〜900cSt(約860mPa・秒)の粘度を有することが好ましい。このような粘度に調製された塗布液を用いることで、本発明の製造方法により欠陥のない、高品質な電荷発生層を形成することができる。
電荷輸送層用塗布液の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンまたはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類、安息香酸メチルまたは酢酸エチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶媒、ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いることができる。また前述した溶媒に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶媒をさらに加えて使用することもできる。
電荷輸送層の膜厚は、5.0〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。一方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下することがある。
(2−5)単層型感光層
図6に示す単層型感光層54bは、電荷発生層と電荷輸送層の機能を併せもつ層であり、電荷発生物質、電荷輸送物質およびバインダ樹脂を主成分として含有し、必要に応じて、電荷発生層および電荷輸送層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
各構成成分は、上記に例示のものが挙げられる。
単層型感光層は、例えば、上記の構成成分を、適当な溶媒中に溶解または分散させて単層型感光層用塗布液を調製し、得られた塗布液を浸漬塗布法で導電性支持体の表面またはその上に形成された下引き層の表面に塗布することにより形成することができる。
単層型感光層の膜厚は特に限定されないが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
(2−6)表面保護層(「保護層」、「オーバーコート層」ともいう)
本発明の感光体は、その最外層として表面保護層が設けられていもよい。
表面保護層は、感光層の摩耗性の改善やオゾン、窒素酸化物などによる化学的悪影響の防止の機能を有する。
表面保護層は、例えば、適当な溶媒にバインダ樹脂、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属酸化物などの無機材料、有機金属化合物および電子受容性物質などの添加剤を溶解または分散させてオ表面保護層用塗布液を調製し、得られた塗布液を浸漬塗布法で導電性支持体上に形成された感光層の表面に塗布することにより形成することができる。
各構成成分は、上記に例示のものが挙げられ、特にバインダ樹脂には熱可塑性樹脂や光または熱硬化性樹脂を用いることができる。
表面保護層層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
[下引き層用塗布液の調製]
横型ビーズミル(シリンダー容積:16500mL、株式会社シンマルエンタープライゼス製、型式:ダイノーミル KD−20B)の攪拌タンクに、第1の金属酸化物微粒子として酸化チタン(酸化チタン90重量%、無水二酸化ケイ素10重量%、昭和電工株式会社製、製品名:マックスライトTS−043)60重量部、第2の金属酸化物微粒子として、Al23、SiO2・nH2O処理を施した酸化チタン(酸化チタン90重量%、Al(OH)3 5重量%、SiO2・nH2O 5重量%、テイカ株式会社製、製品名:MT−500SA)60重量部およびバインダ樹脂としてポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ株式会社(現:ダイセル・エボニック株式会社)製、製品名:ベスタミド X1010)30重量部を、溶媒としてメタノール276重量部、テトラヒドロフラン553重量部およびn−プロパノール92重量部の混合溶媒と共に投入した。
次いで、横型ビーズミル本体のシリンダー内に、分散メディアとして直径0.5mmの窒化ケイ素製ビーズをシリンダー容積の80%まで投入した。続いて、ダイヤフラムポンプを介して、攪拌タンクから横型ビーズミル本体のシリンダーに送液し、再び攪拌タンクに送液する循環を15時間継続し、分散処理した固形分濃度14.0重量%の下引き層用塗布液64000mLを得た。この工程を複数回繰り返して合計128000mLの下引き層用塗布液を得た。
[下引き層の形成]
下引き層の形成には、図1に示す浸漬塗布装置を用いた。
浸漬塗布装置は、隣り合う被塗布物の間隔dが45mm、各塗布液槽の内径が70mmで、被塗布物を一度に(1パレットで)40本処理することができる。
後述する電荷発生層や電荷輸送層の形成においても、同型の浸漬塗布装置を用いた。
具体的には、得られた下引層用塗布液を、塗布液槽14に満たし、引き上げ塗布する際に塗布液がオーバーフローするように流速4L/分で塗布液槽14に塗布液を供給しながら、被塗布物12としてのアルミニウム製の円筒形導電性支持体(内径28.5mm、、肉厚0.75mm、全長340mm)を塗布液槽14内の塗布液13中に、導電性支持体12の上端部を1.0mm残すまで浸漬させてから5秒間保持し、浸漬させた導電性支持体を2.0mm/秒の一定速度で塗布液13から引き上げることにより、導電性支持体の表面上に下引き層用塗布液を塗布して塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を自然乾燥させて膜厚1μmの下引き層を得た。
上記の操作を20回(20パレット分)繰り返し、合計800本の導電性支持体の表面に下引き層を形成した。
[電荷発生層用塗布液の調製と電荷発生層の形成]
次いで、電荷発生物質としてCu−Kα特性X線(波長:1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニン2.3重量部、バインダ樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックBM−2)1.2重量部および溶媒としてジメトキシエタン96.5重量部を混合し、ペイントシェーカ(レッドデビル社製、型式:1400-00t)を用いて分散処理して、固形分濃度3.5重量%の電荷発生層用塗布液2000mLを得た。この分散処理を複数回繰り返して、合計128000mLの電荷発生層用塗布液を得た。
得られた電荷発生層用塗布液を下引き層の形成と同様の浸漬塗布装置に収容し、導電性支持体に形成した下引き層上に電荷発生層用塗布液を塗布して塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜を自然乾燥させて膜厚0.4μmの電荷発生層を得た。
上記の操作を20回(20パレット分)繰り返し、合計800本の導電性支持体の下引き層上に電荷発生層を形成した。
[電荷輸送層用塗布液の調製と電荷輸送層の形成]
次いで、電荷輸送物質として下記構造式[I]のヒドラゾン系化合物10重量部、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、製品名:ユーピロンZ400)16重量部、レベリング剤としてジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96−10cs)0.0032重量部、酸化防止剤としてイオウ系酸化防止剤(住友化学株式会社製、製品名:スミライザーBHT)0.5重量部を、溶媒としてテトラヒドロフラン106重量部に混合して、固形分濃度20重量%、20℃における粘度が540mPa・secの電荷輸送層用塗布液128000mLを得た。
得られた電荷輸送層用塗布液を下引き層の形成と同様の浸漬塗布装置に収容し、導電性支持体に形成した電荷発生層上に電荷輸送層用塗布液を塗布して塗膜を形成した。
上記の操作を20回(20パレット分)繰り返し、合計800本の導電性支持体の電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。
次いで、下引き層および電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層型の感光層を形成したした被塗布物の導電性支持体の開口側端部に形成されている肉厚部を処理した。
図1に示す前処理装置11の溶剤槽14に、溶剤13としてテトラヒドロフラン(粘度:0.55cSt)にシリコンオイルとしてポリジメチルシロキサン(表面張力:20.1mN/m、粘度:10cSt、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96−10cs)を0.4重量%含有させたものを収容した。
感光層などを形成した導電性支持体12を溶剤槽14内の溶剤13中に、導電性支持体12の開口側端部の溶剤面から2.5mmだけ浸漬させてから90秒間保持し、浸漬させた導電性支持体を1.0mm/秒の一定速度で引き上げることにより、肉厚部を処理した。
また、引き上げの際には、導電性支持体12の開口側端部の位置が溶剤面に等しくなった時を開始点として、そこから8.0mm引き上げたときに、すなわち開口側端部と溶剤面との距離rが8.0mmとなったときに、導電性支持体12の上の閉塞側端部から0.5秒間の吸引動作を行った。
その後、テトラヒドロフランを浸み込ませた多孔質弾性体で、導電性支持体12の開口側端部端面を清浄化し、得られた電荷輸送層の塗膜を120℃で1時間、熱風乾燥させて、膜厚24μmの電荷輸送層を得た。
上記の操作を20回(20パレット分)繰り返し、合計800本の導電性支持体の電荷発生層上に電荷輸送層を形成すると共に開口側端部に形成されている肉厚部を処理した。
以上の20パレット分(合計800本)の感光体製造を1サイクルとして5サイクル繰り返し、実施例1の感光体(合計4000本)を作製した。なお、サイクルの繰り返しに当たっては、肉厚部を処理する前処理工程の溶剤槽をサイクル毎に、洗浄などのメンテナンスおよび溶剤の総入れ替えを行った。
(実施例2)
溶媒としてジベンジルエーテル(粘度:5.11cSt)を用い、シリコンオイルを、ポリジメチルシロキサン(表面張力:20.5mN/m、粘度:30cSt、東芝シリコーン株式会社(現:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)製、製品名:TSF451−30)とし、含有量を20重量%にすること以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例3)
溶剤に含有させるシリコンオイルを、ポリジメチルシロキサン(表面張力:20.8mN/m、粘度:50cSt、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96−50cs)とし、含有量を0.1重量%にすること以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例4)
溶剤に含有させるシリコンオイルを、ポリジメチルシロキサン(表面張力:20.9mN/m、粘度:100cSt、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−96−100cs)とすること以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例4’)
溶剤を調製後、前処理装置11の溶剤槽14に1日間放置した後の溶剤を用いて、肉厚部を処理する前処理工程も行うこと以外は、実施例4と同様にして、実施例4’の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例5)
溶剤に含有させるシリコンオイルを、ポリメチルフェニルシロキサン(表面張力:21.8mN/m、粘度:100cSt、低温(−60℃〜+200℃)用、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−50−100cs)とすること以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例6)
溶剤に含有させるシリコンオイルの含有量を25重量%に増量すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例7)
溶剤に含有させるシリコンオイルの含有量を0.03重量%に減量し、導電性支持体12の開口側端部の位置が溶剤面に等しくなった時を開始点として、そこから3.0mm引き上げたときに、すなわち開口側端部と溶剤面との距離rが3.0mmとなったときに、導電性支持体12の引き上げを5秒間一時停止し、その停止から3秒間経過してから導電性支持体12の上の閉塞側端部から0.5秒間の吸引動作を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(実施例8)
1サイクル分の20パレット(合計800本)の製造において、半分の10パレットの製造後に、溶剤槽14内にシリコンオイルを最初と同じ比率で含有させた溶剤13を追加補充すること以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(比較例1)
溶剤にシリコンオイルを含有させないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(比較例2)
吸引動作を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(比較例3)
溶剤にシリコンオイルを含有させず、吸引動作を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(比較例4)
溶剤にシリコンオイルを含有させず、1サイクル分の20パレット(合計800本)の製造において、半分の10パレットの製造後に、溶剤槽14内の溶剤13を追加補充すること以外は、比較例1と同様にして(すなわち溶剤を追加補充すること以外は、比較例1と同様にして)、比較例4の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
(比較例5)
溶剤に含有させるシリコンオイルとしてポリメチルフェニルシロキサン(表面張力24.4mN/m、粘度:15cSt、信越化学工業株式会社製、製品名:KF−56A)とした以外は、実施例1と同様にして比較例5の感光体20パレット×5サイクル分(合計4000本)を作製した。
実施例1〜8(実施例4’を含む)および比較例1〜5の感光体の製造条件を表1に示す。
以上のようにして作製した感光体について、目視により溶剤飛沫の付着の有無を検査し、付着ありを「不良(溶剤とび)」と判断し、飛沫付着による不良発生数を評価した。
感光体の製造では、感光体40本を一度に処理する操作を1パレットとし、これを20パレット繰り返す操作を1サイクルとし(800本)、さらにこれを5サイクル繰り返した(4000本)。不良発生数の評価では、各サイクル1〜5の各パレット01〜20毎に不良数を集計し、同じパレットナンバー毎に5サイクル分の総和を不良発生数とした。
また、感光体4000本中の不良発生数の割合を総合不良率として算出し、次の基準により総合評価を行った。
○:総合不良率が0.3%以下である
△:総合不良率が0.3%を超え1.0%以下である
×:総合不良率が1.0%を超える
得られた結果を、表2に示す。
表1および表2の評価結果から次のことがわかる。
(1)シリコンオイルを含有させた前処理溶剤で肉厚部を処理し、吸引動作を実施した実施例1〜7では、いずれも生産開始当初から溶剤とび不良の発生がほとんど無く、吸引動作による溶剤膜の飛散防止効果が有効に作用している。
(2)50cStを超える粘度を有するシリコンオイルを含有させた溶剤を用いた実施例4では、他の実施例と同様の良好な結果が得られた。一方、前処理溶剤を調製して1日放置した後に実施した実施例4’では、主溶媒のテトラヒドロフランとシリコンオイルとが分離したためか、溶剤膜の飛散防止効果が低下したが、比較例1のほぼ半分以下に不良が抑えられており、実用に耐える範囲内であった。
(3)前処理溶剤へのシリコンオイルの添加および吸引動作を実施しなかった比較例3では、前処理溶剤が新しい01〜05パレットまでは溶剤とび不良の発生数が多く、徐々にその発生数が少なくなる傾向が明確に表れている。また、06パレット以降では、肉厚部を構成する塗膜中のレベリング剤やバインダ樹脂などが前処理溶剤中に溶出するために、溶剤膜が安定に形成されるようになったためか、生産当初ほどの不良発生数ではなくなったものの、吸引動作を実施していないためか、その後の端面処理に達する前に飛散した分による不良がほぼコンスタントに発生している。
(4)前処理溶剤へのシリコンオイルの添加を実施せず、吸引動作のみを実施した比較例1では、生産当初は比較例3と同じ傾向が表れたが、生産中盤以降は不良発生数が少なくなった。これは、比較例3と同様に、肉厚部を構成する塗膜中のレベリング剤やバインダ樹脂などが前処理溶剤中に溶出するために、溶剤膜が安定に形成されるようになり、生産当初と比較して不良発生数が減り、次いで吸引動作の効果が作用して不良発生数が減ったものと考えられる。
(5)前処理溶剤へのシリコンオイルの添加のみを実施し、吸引動作を実施しなかった比較例2では、生産当初には溶剤膜の安定形成が図られたためか、不良発生数の増加は抑えられているが、吸引動作を実施していないためか、その後の端面処理に達する前に飛散した分による不良がほぼコンスタントに発生している。
上記の(3)〜(5)によれば、前処理溶剤へのシリコンオイルの添加のみ、または吸引動作のみでは全体的に溶剤とび不良の発生数は改善されないことがわかる。
(6)シリコンオイルを添加しない前処理溶剤を用い、製造工程の中盤の10パレット目で前処理溶剤を補充した比較例4では、生産開始当初の多くの不良発生数が06パレット目以降で落ち着く傾向にあり、溶剤を補充した直後の10パレット目以降では再び不良数が多くなる傾向にある。これは、溶剤の補充により、それまでに溶剤中に溶出した肉厚部を構成する塗膜中のレベリング剤やバインダ樹脂などの含有量が相対的に低下し、溶剤膜の安定形成ができなくなり、早々に飛散した結果であると考えられる。
(7)シリコンオイルを添加した前処理溶剤を用い、製造工程の中盤の10パレット目で前処理溶剤を補充した実施例8では、実施例1〜7と同様に良好な結果が得られ、溶剤の補充による溶剤とび不良の再発生は認められない。
(8)本発明で規定した値を超える表面張力のシリコンオイルを添加した比較例5では、シリコンオイルを添加して、吸引動作を行っているにも拘らず不良の発生数は改善されていない。
以上の結果から、本発明の感光体の製造方法によれば、肉厚部の前処理工程でも、溶剤膜の飛沫付着による溶剤とび不良を、生産開始当初から、前処理溶剤を追加補充した直後でも効果的に抑制することができることがわかる。
1、1a、12、41 (円筒状)被塗布物(または導電性支持体)
2、2a、39、42 塗布層
3、13 溶剤(または塗布液)
4、40 溶剤膜(または塗布液膜)
5、43 溶剤の飛沫(または塗布液の飛沫)
d 隣り合う被塗布物の間隔
r 開口側端部と溶剤面との距離
11 前処理装置(または浸漬塗布装置)
12a 閉塞側端部
12b 開口側端部
13a 液面
14 溶剤槽(または塗布液槽)
15 把持手段
16 昇降手段
17 下部循環経路
18 上部循環経路
19 循環系
20 オーバーフロー槽
21 吸引手段
21a 吸引方向(矢符)
22 制御手段
23 軸受
24 おねじ部材
25 めねじ部材
26 保持部材
27 支持体
28、32 モータ
29 歯車列
30 被塗布物移動方向(矢符)
31 撹拌槽
33 撹拌翼
34 粘度測定手段
35 溶剤供給手段
36 ポンプ
37 塗布液の流れ方向(矢符)
38 フィルタ
51a 積層型電子写真感光体
51b 単層型電子写真感光体
52 導電性支持体
53 下引き層
54a 積層型感光層
54b 単層型感光層
55 電荷発生層
56 電荷輸送層
57 電荷発生物質
58 バインダ樹脂

Claims (5)

  1. 円筒状被塗布物の外周表面に塗布層を形成した後に、前記円筒状被塗布物の端部に生じた塗布層の肉厚部を除去する処理を含む電子写真感光体の製造方法であり、
    前記肉厚部を除去する処理が、
    前記円筒状被塗布物の一方の端部を閉塞させかつ他方の端部を開口させ、前記他方の端部(開口側端部)から鉛直方向に前記円筒状被塗布物を、溶剤を収容した溶剤槽に浸漬させる浸漬工程、
    前記円筒状被塗布物を前記溶剤槽中から引き上げる引き上げ工程、および
    前記円筒状被塗布物の内部の空気を前記一方の端部(閉塞側端部)から吸引する吸引工程を含み、
    前記浸漬工程の溶剤が6cSt以下の粘度を有する溶媒および22mN/m以下の表面張力を有するシリコンオイルを含み、かつ前記円筒状被塗布物の開口側端部と前記溶剤とが前記溶剤の表面張力により繋がっている間もしくは前記引き上げ工程により離反した後に前記吸引工程を実施することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記シリコンオイルが、50cSt以下の粘度を有する請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記シリコンオイルが、前記溶媒に対して0.1〜20重量%含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記シリコンオイルが、ポリジメチルシロキサンである請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法により製造されてなることを特徴とする電子写真感光体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018049238A (ja) * 2016-09-23 2018-03-29 富士ゼロックス株式会社 電子写真感光体の製造方法、フッ素樹脂粒子含有層の形成方法、及び電子写真感光体

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