以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(浸漬塗布装置)
先ず、本発明の実施の形態に係る浸漬塗布装置100について図1を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る浸漬塗布装置100の概略構成を示す正面図である。なお、図1において、矢印は塗布液Lの流れ方向を表している。
図1に示すように、浸漬塗布装置100(この例では電子写真感光体製造装置)は、被塗布物Eを浸漬して被塗布物Eの表面Eaに塗膜を形成するための塗布液Lを収容する塗布槽10と、被塗布物E及び塗布槽10のうち少なくとも一方(この例では被塗布物E)を相対的に昇降させて被塗布物Eを塗布槽10における塗布液L中に浸漬しかつ塗布液Lから引き上げる昇降部20(昇降手段の一例)(具体的には昇降機構部)とを備えている。
浸漬塗布装置100は、塗布槽10に、被塗布物Eを所定の深さまで浸漬したのち、被塗布物Eを引き上げることで、被塗布物Eの表面Eaに塗膜を形成するようになっている。これにより、被塗布物Eの表面Eaに塗布液Lを塗布することにより塗膜した製品を製造することができる。
この例では、被塗布物Eは、鉛直方向Vに長い長尺状の被塗布物(例えば、円筒状の被塗布物)とされている。具体的には、被塗布物Eは、電子写真感光体F(後述する図10及び図11参照)を構成する基体F1(具体的には導電性基体)(図10及び図11参照)とされ、被塗布物Eの表面Eaに形成する塗膜は、複数の層(例えば干渉防止層や下引き層、電荷発生層、電荷輸送層)とされ、被塗布物Eの表面Eaに塗布液Lを塗布することにより塗膜して得られる製品は、電子写真感光体F(例えば積層型の有機系感光体)とされている。
<塗布槽>
塗布槽10は、上面を開放した開口部10aを有し、被塗布物Eが開口部10aから挿通されるようになっている。塗布槽10は、被塗布物Eが収容可能な大きさになっている。また、塗布槽10は、生産性を向上させるという観点から、複数の被塗布物E〜Eに塗布液Lを同時的(同時又は略同時)に塗布可能な塗布槽(具体的には単一の塗布槽や、複数の被塗布物E〜Eに塗布液Lをそれぞれ塗布するための複数の塗布槽)を用いてもよい。
<昇降部>
昇降部20は、被塗布物Eを支持する支持機構21と、支持機構21を昇降させる駆動装置22とを備えている。この例では、昇降部20は、ボールネジ機構により被塗布物Eを昇降するようになっている。
支持機構21は、駆動装置22に接続される支持部211(具体的には支持板)と、支持部211の先端側の下面211aに連設されて被塗布物E(例えば被塗布物Eの上端面Eb)を着脱可能に保持する保持部212とを備えている。
なお、保持部212は、被塗布物Eを着脱可能に保持できるものであれば、何れの構成のものであってもよく、特に限定されるものではない。例えば、保持部212は、被塗布物Eの上端面Ebに設けられた突起部を着脱可能に掴むチャック爪機構を備えたものであってもよい。或いは、保持部212は、被塗布物Eの上端面Ebに設けられたループ部に係脱可能なフック部を備えたのものであってもよい。
駆動装置22は、係止部材221(この例では雄ネジ部を有するスクリューシャフト)と、係止部材221を駆動(この例では回転駆動)する昇降駆動部222(この例ではモータ)とを備えている。
支持機構21における支持部211には、係止部材221(この例では雄ネジ部)に係合(この例では螺合)する係合部211b(この例では雌ネジ孔)が設けられている。
かかる構成を備えた昇降部20では、昇降駆動部222にて係止部材221が一方向又は他方向に駆動(この例では正回転駆動又は逆回転駆動)することにより、支持部211と共に被塗布物Eを鉛直方向V又は略鉛直方向Vに昇降させることができる。なお、昇降駆動部222として、駆動速度調整可能な駆動部、例えば、サーボモータを用いることができる。こうすることで、支持部211の昇降速度を容易に調整することができる。
詳しくは、係止部材221は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びている。支持部211は、水平方向H又は略水平方向Hに延びている。支持部211は、係止部材221に水平方向H又は略水平方向Hに沿って係合される。被塗布物Eは、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びた状態で保持部212に着脱可能に取り付けられている。
支持機構21は、支持部211を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに沿って案内する案内部材223(この例ではガイドシャフト)と、係止部材221の下端221aを軸線回りに回転自在に支持し、かつ、案内部材223の下端223aを支持する下側支持台224と、係止部材221の上端221bを軸線回りに回転自在に支持し、かつ、案内部材223の上端223bを支持する上側支持台225とをさらに備えている。
支持機構21における支持部211には、案内部材223を挿通する挿通部211c(具体的にはガイド孔)が設けられている。案内部材223は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びている。係止部材221及び案内部材223は、互いに平行又は略平行になるように下側支持台224及び上側支持台225に支持されている。下側支持台224及び上側支持台225の何れか一方(この例では上側支持台225)には、昇降駆動部222が設けられている。
かかる構成を備えた昇降部20では、案内部材223にて支持機構21における支持部211を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに沿って案内することにより、係止部材221にて支持機構21における支持部211を被塗布物Eと共に鉛直方向V又は略鉛直方向Vに確実に昇降させることができる。
なお、この例では、昇降部20は、ボールネジ機構により被塗布物Eを昇降するようにしたが、他の昇降機構、例えば、シリンダ機構、ボールネジ機構又はシリンダ機構と組み合わされたリンク機構などを用いてもよい。
本実施の形態では、浸漬塗布装置100は、塗布液Lを塗布槽10に供給して塗布槽10からオーバーフローさせるための塗布液供給部30と、塗布槽10及び塗布液供給部30の間で塗布液Lを循環させるための循環部40(循環手段の一例)とをさらに備えている。
この例では、昇降部20が単一の被塗布物Eを保持するようにして昇降させる場合を例示したが、生産性を向上させるという観点から、昇降部20にて複数の被塗布物E〜Eを保持するようにして昇降させ、一度の浸漬で複数の被塗布物E〜Eを同時的(同時又は略同時)に塗布するように構成してもよい。この場合、塗布槽10及び後述する塗布液回収部41を複数の被塗布物E〜Eを浸漬できる大きさに形成することができる。
<塗布液供給部>
塗布液供給部30は、塗布液Lを貯留する貯留部31(具体的には貯留タンク)と、貯留部31に貯留されている塗布液Lを塗布槽10に導く供給経路32(具体的には供給管)と、供給経路32に設けられて貯留部31から塗布液Lを塗布槽10に供給する供給駆動部33(具体的にはポンプ)とを備えている。
貯留部31は、循環に最低限必要な量の塗布液Lと被塗布物Eの体積分の塗布液Lとを収容できる容積があればよい。また、塗布液Lの投入と、塗布液L及び塗布液L中の溶媒の追加が可能なように、貯留部31の上部に開閉可能な蓋部31aが設けられている。また、貯留部31内の塗布液Lを攪拌混合するための攪拌機(図示せず)、塗布液Lの粘度を計測する粘度計(図示せず)などを貯留部31に設けて、塗布液Lの液物性を調整できるようにしてもよい。
また、貯留部31の底部には、塗布液Lを流出する流出口31bが設けられている。塗布槽10の底部には、塗布液Lを流入する流入口10bが設けられている。供給経路32は、一端部32aが貯留部31における流出口31bに接続され、かつ、他端部32bが塗布槽10における流入口10bに接続されている。
供給駆動部33としては、例えば、サインポンプやマグネットポンプ、ギアポンプ等の脈動が比較的少ないポンプを好適に用いることができる。
<循環部>
循環部40は、塗布槽10からオーバーフローした塗布液Lを回収する塗布液回収部41と、塗布槽10からオーバーフローした塗布液Lを貯留部31に導く循環経路42(具体的には循環管)とを備えている。
塗布液回収部41は、塗布槽10の外周壁面11の上端部分に液密に一体化された断面視L字状の受け部411と、受け部411における塗布液Lの蒸発を抑制するための蓋部412とを備えている。蓋部412は、受け部411の上端に設けられている。この例では、蓋部412は、受け部411の上端面に載置されている。また、蓋部412には、被塗布物Eを塗布槽10内に出し入れするための開口部412aが設けられている。
受け部411の側壁には、塗布液Lを流出する流出口411aが設けられている。貯留部31の側壁には、塗布液Lを流入する流入口31cが設けられている。循環経路42は、一端部42aが受け部411における流出口411aに接続され、かつ、他端部42bが貯留部31における流入口31cに接続されている。
ここで、受け部411における流出口411aは、貯留部31における流入口31cよりも高い位置に配置されている。このため、塗布液回収部41にて回収した塗布液Lを流出口411aから循環経路42を経て流入口31cを通って貯留部31内へ流入させることができる。これにより、塗布槽10及び貯留部31の間で塗布液Lを循環させることができる。
<遮風部>
塗布槽10の上方には、外風を遮蔽するための遮風部50が周方向の全周に亘って設けられている。
遮風部50は、外風を遮蔽することができれば、何れの形状のものであってもよい。この例では、遮風部50は、筒状のものとされている。遮風部50は、蓋部412と一体的に設けられている。
遮風部50を構成することができる材料としては、溶剤蒸気による変質がない或いは殆どない材料であれば、何れのものを用いてよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料、紙材料等の自然素材を挙げることができ、これらのうち、遮風部50の強度を向上させるという観点から、ステンレス鋼を用いることが好ましい。
<屈曲部>
そして、遮風部50の上部50aには、外側に向けて屈曲した屈曲部60が周方向の全周に亘って設けられている。ここで、上部50aは、遮風部50の上端50bから下方への周方向における予め定めた所定の範囲の部分である。
本実施の形態によれば、塗布槽10の上方に遮風部50が周方向の全周に亘って設けられているので、被塗布物Eを塗布槽10内の塗布液Lに浸漬した後、塗布液Lから被塗布物Eを引き上げて被塗布物Eの表面Eaに塗膜を形成する際に、遮風部50により被塗布物Eに対して横からの風を抑制することができ、これにより、塗膜のランダムな膜厚ムラ及び斜め状の膜厚ムラを抑制することができる。
しかも、遮風部50の上部50aに屈曲部60が周方向の全周に亘って設けられているので、装置構成を簡素化することができる上、被塗布物Eを塗布槽10内の塗布液Lに浸漬した後、塗布液Lから被塗布物Eを引き上げて被塗布物Eの表面Eaに塗膜を形成する際に、遮風部50の外側壁面51の近傍の空気が屈曲部60により遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことを効果的に防止することができ、これにより、被塗布物E及び塗布槽10のうち少なくとも一方(この例では被塗布物E)の相対的な昇降動作による風を効果的に防ぐことができる。その結果、局所的な溶剤蒸気濃度の差を少なくすることができ、従って、塗膜の縦スジ状の膜厚ムラを抑制することができ、ひいては塗膜の各所での膜厚差を可及的に少なくすることができる。
また、浸漬塗布装置100にて塗布液Lを基体F1(図10及び図11参照)に塗布することにより、塗膜の各所での膜厚差が可及的に少ない、安定した電子写真感光体F(図10及び図11参照)を得ることができる。
なお、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100において、生産性を向上させるために、一度の浸漬で複数の被塗布物E〜Eを同時的(同時又は略同時)に塗布する場合があるが、その場合は、複数の被塗布物E〜Eの全てを囲う1つの遮風部50に屈曲部60を設けてもよいし、複数の被塗布物E〜Eをそれぞれ囲う複数の遮風部50〜50に屈曲部60をそれぞれ設けてもよい。一度の浸漬で複数の被塗布物E〜Eを同時的(同時又は略同時)に塗布する場合、遮風部50の内側と外側との蒸気濃度差が大きくなるため、屈曲部60を設けることで、塗膜の縦スジ状の膜厚ムラの抑制効果を大きくすることができる。
また、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100において、被塗布物E及び塗布槽10のうち、被塗布物Eのみを昇降させるようにしたが、塗布槽10のみを昇降させるか、或いは、被塗布物E及び塗布槽10の双方を昇降させるようにしてもよい。
ここで、被塗布物Eの相対浸漬速度としては、5mm/sec〜20mm/sec程度を例示でき、被塗布物Eの相対引き上げ速度としては、1mm/sec〜3mm/sec程度を例示できる。
また、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100において、遮風部50は、塗布槽10と一体化させてもよい。その場合、遮風部50は、塗布槽10の上部と連接される。
〔第1実施形態から第10実施形態について〕
次に、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50及び屈曲部60の詳細について図1に加えて、図2から図9を参照しながら以下に説明する。
遮風部50としては、例えば、円筒状のものであってもよいし、角筒状(上面及び底面が開放した中空の四角柱状)のものであってもよい。
(第1実施形態及び第2実施形態)
図2及び図3は、それぞれ、第1実施形態及び第2実施形態に係る浸漬塗布装置100の遮風部50及び屈曲部60部分を中心に示す概略分解斜視図である。
図2に示す第1実施形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50は、円筒状のものとされている。図3に示す第2実施形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50は、角筒状のものとされている。
そして、第1実施形態及び第2実施形態に係る浸漬塗布装置100において、屈曲部60は、遮風部50の外側壁面51から外側に直線状に屈曲する直線部61を有している。すなわち、屈曲部60は、遮風部50の外側壁面51から外側に直線状に形成されている。
こうすることで、遮風部50の外側壁面51の近傍の空気ARが直線状に屈曲する直線部61により遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことを確実に防ぐことができる。
(第3実施形態及び第4実施形態)
図4及び図5は、それぞれ、第3実施形態及び第4実施形態に係る浸漬塗布装置100の遮風部50及び屈曲部60部分を中心に示す概略分解斜視図である。
ところで、遮風部50が風(空気AR)を全く通さない形状に形成されていると、遮風部50により横からの風を効果的に防ぐことができ、それだけ、塗膜のランダムな膜厚ムラ及び斜め状の膜厚ムラを抑制することができる。しかしながら、その一方で、遮風部50が風を全く通さない形状に形成されていると、塗布液Lの溶剤蒸気濃度が上昇し易く、そうすると、塗布液Lを塗布された被塗布物Eの表面Eaの上部における塗膜と下部における塗膜との膜厚差が大きくなり易い。
図4及び図5に示す第3実施形態及び第4実施形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50は、第1実施形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50において、外側壁面51の全部(全面)(図4参照)若しくは一部(一部の面)(図5参照)が予め定めた所定の目開き範囲内の予め定めた所定の目開きで、かつ、予め定めた所定の開孔率範囲内の予め定めた所定の開孔率の多孔状M(メッシュ状)に形成される。なお、かかるメッシュ構造は、勿論、第2実施形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50に形成されていてもよい。
ここで、「目開き」は、「開孔(開口)」の大きさであり、例えば、開孔が円形状のものであれば、開孔の直径、正方形状のものであれば、開孔の一辺の長さ、長尺形状のものであれば、開孔の長手方向の長さとすることができる。
また、「開孔率(開口率)」は、多孔状の部分全体の面積に対する開孔の部分の面積の割合であり、開孔率=(「目開き総面積」/「多孔状の部分全体の面積」)×100[%]の計算式で算出することができる。
第4実施形態に係る浸漬塗布装置100における遮風部50において、外側壁面51の全体の面積に対する多孔状Mの部分の面積の割合、及び、多孔状Mの部分を設ける位置は、遮風部50の形状、塗布液Lの溶剤の種類や量等の塗布液Lの溶剤蒸気濃度に関与する各種の条件に応じて適宜設定することができる。この例では、多孔状Mは、外側壁面51の下側の半分程度に部分に周方向における全周に亘って形成されている。
第3実施形態及び第4実施形態に係る浸漬塗布装置100では、外側壁面51の全部若しくは一部が所定の目開き範囲内の所定の目開きで、かつ、所定の開孔率範囲内の所定の開孔率の多孔状M(メッシュ状)に形成されていることで、塗布液Lを塗布された被塗布物Eの表面Eaの上部における塗膜と下部における塗膜との膜厚差を小さくすることができる。これは、多孔状Mが形成された遮風部50において、遮風部50の内部の溶剤蒸気濃度を適度に下げることができ、これにより、塗膜を生成するときに塗布液Lが垂れることを抑制することができるためであると考えられる。
所定の目開き及び所定の開孔率は、遮風部50の形状、塗布液Lの溶剤の種類や量等の塗布液Lの溶剤蒸気濃度に関与する各種の条件に応じて適宜設定することができる。
ところで、所定の目開きが所定の目開き範囲の下限値よりも小さい若しくは所定の開孔率が所定の開孔率範囲の下限値よりも小さいと、溶剤蒸気濃度を下げる効果を得難い。一方、所定の目開きが所定の目開き範囲の上限値よりも大きい若しくは所定の開孔率が所定の開孔率範囲の上限値よりも大きいと、被塗布物Eが遮風部50を介して横からの風を受け易くなり、これにより、塗膜のランダムな膜厚ムラ及び斜め状の膜厚ムラが発生し易くなる。
この点、第3実施形態及び第4実施形態に係る浸漬塗布装置100では、所定の目開きが所定の目開き範囲内にあることで、溶剤蒸気濃度を下げる効果を得ることができる一方で、所定の開孔率が所定の開孔率範囲内にあることで、被塗布物Eが遮風部50を介して横からの風を受け難くすることができ、それだけ効果的に塗膜のランダムな膜厚ムラ及び斜め状の膜厚ムラを抑制することができる。
第3実施形態及び第4実施形態に係る浸漬塗布装置100において、所定の目開き範囲としては、50μm〜100μm程度を例示でき、所定の開孔率範囲としては、30%〜50%程度を例示できる。
このように、所定の目開き範囲が50μm〜100μm程度であり、所定の開孔率範囲が30%〜50%程度である場合には、塗布液Lを塗布された被塗布物Eの上部における塗膜と下部における塗膜との膜厚差を確実に小さくすることができる。
(第5実施形態)
図6は、第5実施形態に係る浸漬塗布装置100の遮風部50及び屈曲部60部分を拡大して示す概略縦断面図である。
図6に示すように、第5実施形態に係る浸漬塗布装置100では、図2から図5に示す浸漬塗布装置100の遮風部50において、屈曲部60を構成する直線部61は、遮風部50の外側壁面51に対して、予め定めた所定の屈曲角度範囲内の予め定めた所定の屈曲角度θで屈曲している。ここで、直線部61の所定の屈曲角度θは、遮風部50の外側壁面51の直線部61よりも下側の部分と、直線部61とのなす角度という。また、所定の屈曲角度範囲は、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込む空気ARを確実に妨げることができる屈曲角度範囲である。
ところで、屈曲角度θが所定の屈曲角度範囲の下限値を下回る或いは上限値を上回ると、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARが遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことを効果的に防ぐことができない。
この点、第5実施形態に係る浸漬塗布装置100では、屈曲角度θが所定の屈曲角度範囲内にあることで、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARを遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことを効果的に防ぐことができ、それだけ効果的に塗膜の膜厚ムラを抑制することができる。
第5実施形態に係る浸漬塗布装置100において、所定の屈曲角度範囲としては、45°〜150°程度を例示でき、より好ましくは、60°〜75°程度を例示できる。
このように、所定の屈曲角度範囲が45°〜150°程度である場合には、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARを遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことを確実に防ぐことができる。しかも、所定の屈曲角度範囲が60°〜75°程度である場合には、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARを屈曲部60により遮風部50の外側壁面51から屈曲部60の屈曲角度θ分だけ斜め下方向に向けることができ、これにより、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARを遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことをさらに確実に防ぐことでき、それだけ効果的に塗膜の膜厚ムラを抑制することができる。
(第6実施形態)
図7は、第6実施形態に係る浸漬塗布装置100の遮風部50及び屈曲部60部分を拡大して示す概略縦断面図である。
図7に示すように、第6実施形態に係る浸漬塗布装置100では、図2から図5に示す浸漬塗布装置100の遮風部50において、屈曲部60は、遮風部50の外側壁面51から外側に湾曲状に屈曲する湾曲部62を有している。すなわち、屈曲部60は、遮風部50の外側壁面51から外側に向けて湾曲状に形成されている。ここで、湾曲状としては、円弧状、楕円弧状を例示できる。湾曲形状の向きとしては、上に凸の湾曲形状、先端が斜め上方に向かう湾曲形状、先端が水平方向H又は略水平方向Hに向かう湾曲形状、先端が斜め下方に向かう湾曲形状、先端が遮風部50の外側壁面51に向かう湾曲形状を例示できる。
こうすることで、遮風部50の外側壁面51の近傍の空気ARが湾曲状に屈曲する湾曲部62により遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことを確実に防ぐことができる。
(第7実施形態)
図8は、第7実施形態に係る浸漬塗布装置100の遮風部50及び屈曲部60部分を拡大して示す概略縦断面図である。
図8に示すように、第7実施形態に係る浸漬塗布装置100では、図2から図5に示す浸漬塗布装置100の遮風部50において、屈曲部60は、直線状に屈曲する直線部61と、直線部61の先端に連設されて湾曲状に屈曲する湾曲部62とを有している。ここで、湾曲状としては、円弧状、楕円弧状を例示できる。湾曲形状の向きとしては、上に凸の湾曲形状、先端が斜め上方に向かう湾曲形状、先端が水平方向H又は略水平方向Hに向かう湾曲形状、先端が斜め下方に向かう湾曲形状、先端が遮風部50の外側壁面51に向かう湾曲形状を例示できる。
屈曲部60を構成する直線部61は、遮風部50の外側壁面51に対して、予め定めた所定の屈曲角度範囲内の予め定めた所定の屈曲角度θで屈曲している。所定の屈曲角度範囲及び所定の屈曲角度θは、第5実施形態の説明と同じであり、ここでは説明を省略する。
こうすることで、遮風部50の外側壁面51の近傍の空気ARが直線部61及び湾曲部62を有する屈曲部60により遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込むことをさらに確実に防ぐことができる。
しかも、直線部61の所定の屈曲角度θがたとえ所定の屈曲角度範囲の上限値を超えたとしても、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARを湾曲部62により斜め上方、横方向や斜め下向等に向けることができ、これにより、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aに向かう空気ARを遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込み難くすることでき、それだけ効果的に塗膜の膜厚ムラを抑制することができる。
この例では、屈曲部60を構成する直線部61及び湾曲部62は、一体的に形成されている。
なお、図示を省略したが、屈曲部60は、遮風部50の外側壁面51から湾曲状に屈曲する湾曲部と、湾曲部の先端に連設されて直線状に屈曲する直線部を有する構成、すなわち、遮風部50の外側壁面51から外側に湾曲状に形成され、さらに、直線状に形成された構成であってもよい。
(第8実施形態)
図9は、第8実施形態に係る浸漬塗布装置100の遮風部50及び屈曲部60部分を拡大して示す概略縦断面図である。
第5実施形態から第7実施形態では、屈曲部60は、遮風部50の上端50b(図6から図8参照)に設けられているが、図9に示すように、第8実施形態に係る浸漬塗布装置100では、図2から図5に示す浸漬塗布装置100の遮風部50において、遮風部50の上端50bよりも予め定めた所定の鉛直距離h(例えば5mm)だけ下側の位置に設けられている。なお、図9では、第5実施形態の例を示している。ここで、所定の距離範囲は、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込む空気ARを確実に妨げることができる距離範囲である。
こうすることで、屈曲部60を遮風部50の上端50bに設けることができないときに、遮風部50の上端50bよりも所定の鉛直距離hだけ下側に設けたとしも、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込む空気ARを確実に妨げることができる。
(第9実施形態)
第9実施形態に係る浸漬塗布装置100では、第5実施形態から第8実施形態に係る浸漬塗布装置100において、屈曲部60は、先端60a(図6から図9参照)が遮風部50の外側壁面51に対して、水平方向Hにおいて予め定めた所定の水平距離d(図6から図9参照)だけ離れている。ここで、所定の水平距離dは、水平方向Hに沿った仮想直線(図示せず)の屈曲部60の先端60aと遮風部50の外側壁面51との間の距離である。また、所定の水平距離dは、遮風部50の外側壁面51に沿って遮風部50の上部50aから被塗布物Eに向けて回り込む空気ARを確実に妨げることができる水平距離である。
ところで、屈曲部60の先端60aが遮風部50の外側壁面51に対して所定の水平方向Hにおける水平距離dよりも近い距離に位置していると、塗布液Lの被塗布物Eへの塗布速度の差、及び/又は、塗布液Lの被塗布物Eへの塗布環境の差、及び/又は、被塗布物Eに対する連続塗工により、塗膜の膜厚ムラの抑制効果が低下する場合があり、そうすると、製造される製品の安定性に欠けることになる。特に、塗布速度が速い場合や塗布液Lの固形分濃度が低い場合に、塗膜の膜厚ムラが発生し易い。
この点、第9実施形態に係る浸漬塗布装置100では、屈曲部60の先端60aが遮風部50の外側壁面51に対して水平方向Hにおいて所定の水平距離dだけ離れていることで、塗布速度の差及び/又は塗布環境の差及び/又は連続塗工により、塗膜の膜厚ムラの抑制効果の低下を回避することができ、これにより、製造される製品の安定性を向上させることができる。
第9実施形態に係る浸漬塗布装置100において、所定の水平距離dとしては、10mm程度以上を例示できる。
このように、所定の水平距離dが10mm程度以上である場合には、塗布速度の差及び/又は塗布環境の差及び/又は連続塗工により、塗膜の膜厚ムラを抑制することができ、これにより、製造される製品の安定性を確実に向上させることができる。
(第10実施形態)
ところで、屈曲部60は、遮風部50と一体化させることで、例えば、遮風部50自体を加工することで、遮風部50の上部50aに設けるようにしてもよいが、この場合、加工に手間がかかる上、加工コストが高くつく。しかも、既存の遮風部50に実質上対応することができない。
この点、第10実施形態に係る浸漬塗布装置100では、屈曲部60は、シート状の部材で構成されている。これにより、屈曲部60は、遮風部50に対して着脱可能に設けることができる。例えば、シート状の部材で構成された屈曲部60は、遮風部50の上部50aに粘着シート(例えば粘着テープ)により貼り付けることができる。
こうすることで、遮風部50自体を加工する必要がないので、加工の手間を軽減させることができる上、遮風部50の上部50aにシート状の部材を設けるといったさらに簡単な構成でありながら、塗膜の膜厚ムラを抑制することができる。しかも、既存の遮風部50に容易に対応することができる。
[電子写真感光体]
次に、図1に示す浸漬塗布装置100により製造される電子写真感光体Fについて図10及び図11を参照しながら以下に説明する。
図10は、図1に示す浸漬塗布装置100にて塗布液Lが基体F1に塗布されることにより製造される電子写真感光体Fの一例の概略構成を示す縦断面図である。また、図11は、図10に示す電子写真感光体Fの一例の表面部分を拡大した部分断面図である。
本実施の形態に係る浸漬塗布装置100による浸漬塗布は、前述した屈曲部60が設けられた遮風部50を用いることを除き、従来の浸漬塗布装置を用いて電子写真感光体を製造する場合と同一の条件で実施することができる。
製造される電子写真感光体Fは、単層型のものと、積層型のものとに大別されるが、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100は、特にどちらのタイプにおいても、画像特性の優れた電子写真感光体Fを製造することができる。
図10に示すように、電子写真感光体F(この例では電子写真感光体ドラム)は、被塗布物Eとしての円筒状の基体F1(具体的には導電性基体)及び基体F1の外周面に形成される感光層F2を含む複数の層からなる感光体本体F3(感光体ドラム本体)と、感光体本体F3の回転軸線方向における両端の開口部を閉塞しつつ支持する一対のフランジF4,F4とを備えている。
図11に示すように、電子写真感光体Fは、基体F1(E)と感光層F2とを有する。感光層F2は、基体F1の外周面上に形成される。
電子写真感光体Fは、この例では、積層型のものであり、感光層F2は、電荷発生層F21(具体的には電荷発生物質含有層)(図11参照)及び電荷輸送層F22(具体的には電荷輸送物質含有層)(図11参照)を含む。このような積層型の電子写真感光体Fは、電子写真の技術の分野において広く用いられている。
電荷発生層F21は、電荷を発生させる電荷発生物質を含む。電荷発生層F21は、基体F1上に積層される。電荷輸送層F22は、電荷発生層F21にて発生した電荷を輸送する電荷輸送物質を含む。電荷輸送層F22は、電荷発生層F21上に積層される。
本実施の形態に係る浸漬塗布装置100は、前述した電子写真感光体Fにおける各層以外の層の製造にも使用することができる。
例えば、電荷注入防止の目的で基体F1と電荷発生層F21との間に設けられる干渉防止層や下引き層、最上位層に設けられる保護層についても本実施の形態に係る浸漬塗布装置100を用いて形成することができる。
次に、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100を用いて製造される電子写真感光体Fを構成する基体F1及び基体F1の上に設けられる各層について以下に説明する。
<基体>
基体F1(具体的には導電性基体)は、電子写真感光体Fの電極としての機能と支持部材としての機能とを有している。基体F1の構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されるものではない。
具体的には、基体F1の構成材料として、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙材料、ガラスなどの非導電性材料からなる支持体表面に金属箔等の導電性膜をラミネートしたもの、ガラスなどの非導電性材料からなる支持体表面に金属材料や、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを挙げることができる。これらの中でも、JIS3003系、JIS5000系及びJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
また、基体F1の形状としては、円筒形を例示でき、基体F1の直径としては、10mm〜300mm程度を例示でき、基体F1の長さとしては、200mm〜1000mm程度を例示できる。
基体F1の表面は、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
<下引き層>
下引き層は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解又は分散させて下引き層用塗布液を調製し、この下引き層用塗布液を基体F1の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
下引き層に用いることができる樹脂材料としては、例えば、後述する感光層F2に含まれるものと同様のバインダ樹脂(例えばポリアミド樹脂など)に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの樹脂材料の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂及びピペラジン系化合物を含有したポリアミド樹脂が特に好ましい。
下引き層に用いることができる樹脂材料を溶解又は分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルム若しくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
また、下引き層用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。金属酸化物粒子は、中間層の体積抵抗値を容易に調節することができ、感光層F2への電荷の注入をさらに抑制することができると共に、各種環境下において電子写真感光体Fの電気特性を維持することができる。金属酸化物粒子に用いることができる材料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどの材料を挙げることができる。
下引き層用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)としては、例えば、1/99〜40/60程度が好ましく、2/98〜30/70程度が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと金属酸化物粒子の重量Fとの比率(E/F)としては、例えば、90/10〜1/99程度が好ましく、70/30〜5/95程度が特に好ましい。
下引き層の塗膜の乾燥工程における温度としては、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されるものではないが、例えば、50℃〜140℃程度が適当であり、80℃〜130℃が特に好ましい。
下引き層の塗膜の乾燥温度が50℃程度未満では、乾燥時間が長くなることがある。また、下引き層の塗膜の乾燥温度が140℃程度を超えると、電子写真感光体Fの繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。
かかる温度条件は、下引き層のみならず後述する感光層F2などの層形成や他の処理においても共通する。
下引き層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、例えば、0.01μm〜20μm程度が好ましく、0.05μm〜10μm程度が特に好ましい。
<電荷発生層>
電荷発生層F21は、画像形成装置などの電子写真装置において光ビーム(具体的には半導体レーザ)などの光を出射する光出射装置で照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。電荷発生物質としては、当該技術分野で用いられる化合物を使用することができる。
具体的には、電荷発生物質として、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料及びトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミド及びペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料、オキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、並びに、セレン及び非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などを挙げることができ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷発生層F21は、結着性を向上させる目的でバインダ樹脂を含有していてもよい。電荷発生層F21に用いることができるバインダ樹脂としては、当該技術分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用することができ、電荷発生物質との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、電荷発生層F21に用いることができるバインダ樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。電荷発生層F21に用いることができるバインダ樹脂は、これらに限定されるものではなく、当該技術分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。これらのバインダ樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷発生層F21に用いることができる溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に溶解又は分散させるために、ペイントシェーカー、ボールミル及びサンドミルなどの分散機を用いることができる。このとき、容器及び分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定することが好ましい。
その他の工程や、その条件は、下引き層の形成と同様であり、ここでは、説明を省略する。
電荷発生層F21の膜厚としては、特に限定されないが、好ましくは0.05μm〜5μm程度を例示でき、より好ましくは0.1μm〜1μm程度を例示できる。
<電荷輸送層>
電荷輸送層F22は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れて電子写真感光体Fの表面Fa(図10及び図11参照)まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質及びバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を含有する。電荷輸送物質としては、当該技術分野で用いられる化合物を使用することができる。
具体的には、電荷輸送物質として、例えば、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有するポリマー(ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどを挙げることができる。これらの電荷輸送物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
電荷輸送層F22に用いることができるバインダ樹脂としては、当該技術分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用することができ、電荷輸送物質との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、電荷輸送層F22に用いることができるバインダ樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂及びそれらの共重合体樹脂、並びに、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、ポリフェニレンオキサイドなどの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などを挙げることができる。これらのバインダ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ、成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、これらの中でも、ポリカーボネートが特に好ましい。
電荷輸送物質とバインダ樹脂との比率A/Bとしては、好ましくは10/12〜10/30程度を例示できる。
電荷輸送層F22に用いることができる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン及びジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF(テトラヒドロフラン)、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、並びに、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などを挙げることができる。また、必要に応じてアルコール類、アセトニトリル又はメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷輸送層F22の膜厚としては、特に限定されないが、好ましくは5μm〜50μm程度を例示でき、より好ましくは10μm〜40μm程度を例示できる。
また、単層型の電子写真感光体Fを製造する場合の塗布液は、前述した電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂及び溶剤を混合(分散)して調合することができる。
[画像形成装置]
次に、図1に示す浸漬塗布装置100により製造された電子写真感光体Fを備える画像形成装置700について図12を参照しながら以下に説明する。なお、画像形成装置700及びその動作について以下の記載事項に限定されるものではない。
<画像形成装置の構成>
図12は、図1に示す浸漬塗布装置100により製造された電子写真感光体Fを備える画像形成装置700の概略構成を模式的に示す断面図である。
図12に示すように、画像形成装置700は、電子写真感光体Fと、電子写真感光体Fの表面Faを帯電させる帯電手段(具体的には帯電器710)と、帯電器710によって帯電された電子写真感光体Fを露光して静電潜像を形成する露光手段(具体的には露光装置720)と、露光装置720によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段(具体的には現像器730)と、現像器730によって形成されたトナー像を記録紙等の記録媒体P上に転写する転写手段(具体的には転写帯電器740)と、電子写真感光体Fに残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段(具体的にはクリーナ装置750)と、転写帯電器740によって転写されたトナー像を記録媒体P上に定着して画像を形成する定着手段(具体的には定着器760)とを備えている。この例では、画像形成装置700は、モノクロのプリンタ(具体的にはレーザプリンタ)とされている。
なお、画像形成装置700は、この例では、モノクロの画像形成装置であるが、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。具体的には、トナー像がそれぞれ形成される複数の電子写真感光体F〜Fを所定方向(例えば水平方向H又は略水平方向H)に並設した構成、所謂タンデム式のフルカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置700は、他のカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置700は、この例では、プリンタとしたが、例えば、複写機、複合機又はファクシミリ装置であってもよい。
電子写真感光体Fは、画像形成装置700の本体フレーム(図示せず)に回転自在に支持され、駆動手段(図示せず)によって回転軸線α1回りに所定の回転方向R(図中時計方向)に回転駆動される。駆動手段は、例えば、電動機と減速歯車とを含んで構成され、回転駆動力を電子写真感光体Fの基体F1に伝達することによって、電子写真感光体Fを所定の周速度で回転駆動させるようになっている。
電子写真感光体Fの周りには、回転方向Rにおける上流側から下流側に向って、帯電器710、露光装置720、現像器730、転写帯電器740及びクリーナ装置750がこの順で設けられている。
帯電器710は、電子写真感光体Fの表面Faを高電圧印加手段(具体的には高電圧印加装置711)にて均一に所定の電位に一様に帯電させる帯電手段である。帯電手段としては、非接触帯電方式のもの及び接触帯電方式のものを例示できる。非接触帯電方式としては、例えば、帯電チャージャーによるコロナ帯電方式を挙げることができ、接触帯電方式としては、例えば、帯電ローラ若しくは帯電ブラシによる方式を挙げことができる。この例では、帯電器710は、帯電ローラを備えている。
ところで、従来の画像形成装置において、電子写真感光体の表面を接触帯電方式の帯電手段により直流電圧のみで帯電させる場合、オゾンの発生及び電子写真感光体へのダメージを軽減させるという点で優れているが、塗膜の僅かな膜厚差により各所で帯電性が変化し、形成されるハーフトーン等の画像上において電子写真感光体に形成される各層(例えば電荷発生層や電荷輸送層)の膜厚差に起因する画像濃度ムラ(具体的には濃淡スジ)が発生し易くなることが知られている。
この点、本実施の形態に係る画像形成装置700では、電子写真感光体Fの表面Faを直流電圧のみで帯電させる接触帯電方式の帯電手段(具体的には帯電器710)を用いたとしても、形成されるハーフトーン等の画像上において電子写真感光体Fに形成される各層(例えば電荷発生層F21や電荷輸送層F22)の膜厚差に起因する画像濃度ムラ(具体的には濃淡スジ)を無くす或いはほぼ無くすことができる。
露光装置720は、画像情報に基づいて変調された光を出射する露光手段である。この例では、露光装置720は、例えば、半導体レーザ若しくは発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を含む光源(図示せず)を備え、光源から出力される光を帯電器710と現像器730との間の電子写真感光体Fの表面Faに照射することによって、一様に帯電された電子写真感光体Fの表面Faに画像情報に応じた静電潜像を形成する。露光装置720は、画像情報に基づいて変調された光を回転駆動される電子写真感光体Fの表面Faに主走査方向である電子写真感光体Fの回転軸線α1方向に繰返し走査する。これにより、電子写真感光体Fの表面Faに静電潜像を形成することができる。
現像器730は、現像剤D(例えば2成分現像剤ではトナー及びキャリア、1成分現像剤ではトナー)を収容し、露光装置720によって電子写真感光体Fの表面Faに形成された静電潜像を現像剤Dによって現像する現像手段である。この例では、現像器730は、電子写真感光体Fの表面Faに対向するように設けられて電子写真感光体Fの表面Faに現像剤Dを供給する現像ローラ730aと、現像剤Dを収容する現像槽730b(具体的にはケーシング)とを備えている。現像槽730bは、現像ローラ730aを電子写真感光体Fの回転軸線α1と平行又は略平行な回転軸線α2回りに回転自在に支持している。
転写帯電器740は、現像器730によって電子写真感光体Fの表面Faに形成された可視像であるトナー像を搬送手段(図示せず)によって所定の搬送方向Wに搬送される記録媒体P上に転写させる転写手段である。転写手段は、高電圧印加手段741(具体的には高電圧印加装置)にて電子写真感光体Fと転写帯電器740との間に形成される転写ニップ部TNに所定の高電圧を印加する。転写手段は、前述した帯電手段と同様に構成することができ、この例では、記録媒体Pにトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を記録媒体P上に転写させる接触式の転写手段とされている。
クリーナ装置750は、転写帯電器740による転写動作後に電子写真感光体Fの表面Faに残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段である。この例では、クリーナ装置750は、電子写真感光体Fの表面Faに残留するトナーを除去するクリーニングブレード750aと、クリーニングブレード750aによって除去されたトナーを収容する回収用ケーシング750bとを備えている。また、クリーナ装置750は、図示を省略した除電手段(具体的には除電ランプ)と共に設けられている。
定着器760は、転写帯電器740により記録媒体Pに転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させる定着手段である。定着器760は、搬送方向Wにおいて電子写真感光体Fと転写帯電器740との間の転写ニップ部TNよりも下流側に設けられている。この例では、定着器760は、加熱手段(具体的には加熱ローラ760a)と、加熱ローラ760aに対向して設けられる加圧手段(具体的には加圧ローラ760b)とを備えている。加圧ローラ760bは、加熱ローラ760aに押圧されて定着ニップ部FNを形成する。
また、画像形成装置700は、記録媒体Pを電子写真感光体Fから分離する分離手段(具体的には分離爪770)と、画像形成装置700を構成する各構成要素を収容する筐体(具体的にはケーシング780)さらに備えている。
<画像形成装置の動作>
以上説明した画像形成装置700では、まず、電子写真感光体Fが駆動手段によって所定の回転方向Rに回転駆動されると、帯電器710によって、電子写真感光体Fの表面Faが所定の電位に均一に帯電される。
次いで、露光装置720から画像情報に応じた光が均一に帯電された電子写真感光体Fの表面Faに照射される。電子写真感光体Fの表面Faには、露光装置720にて光が照射されることにより、静電潜像が形成される。
電子写真感光体Fの表面Faに形成された静電潜像は、現像器730により現像され、電子写真感光体Fの表面Fa上にトナー像が形成される。
搬送方向Wにおいて電子写真感光体Fよりも上流側から送られてきた記録媒体Pは、電子写真感光体Fの表面Fa上に形成されたトナー像と同期して、電子写真感光体Fと転写帯電器740との間の転写ニップ部TNに供給される。
電子写真感光体Fの表面Faにおけるトナー像は、転写ニップ部TNに供給された記録媒体Pを介して転写帯電器740にてトナー像の帯電極性とは逆極性の電荷が与えられることにより、記録媒体P上に転写される。
トナー像が転写された記録媒体Pは、さらに定着器760に搬送され、定着器760における加熱ローラ760aと加圧ローラ760bとの間の定着ニップ部FNを通過する際にトナー像が加熱及び加圧され、さらに、画像形成装置700の外部へ排出される。
一方、転写帯電器740によるトナー像の転写後に電子写真感光体Fの表面Fa上に残留するトナーは、クリーナ装置750にて電子写真感光体Fの表面Faから除去されて回収される。
そして、複数の記録媒体Pに連続して画像を形成する場合には、前記した一連の動作が繰返される。
電子写真感光体F及び電子写真感光体Fを備えた画像形成装置700によれば、形成されるハーフトーン等の画像上において電子写真感光体Fに形成される各層(例えば電荷発生層F21や電荷輸送層F22)の膜厚差に起因する画像濃度ムラ(具体的には濃淡スジ)を無くす或いはほぼ無くすことができる。
[実施例]
次に、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100の具体的な実施例1から実施例11を比較例1から比較例4と共に以下に説明する。但し、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100は、これらの実施例1〜11に限定されるものではない。
実施例1から実施例11及び比較例1から比較例4では、塗布液Lとして、下引き層用塗布液、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を用い、基体F1に下引き層用塗布液、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液をこの順に塗布して基体F1上に下引き層、電荷発生層F21及び電荷輸送層F22を形成した電子写真感光体F(以下、単に感光体Fという。)を作製した。
(塗布液の作製)
<下引き層用塗布液>
酸化チタン(昭和電工株式会社製、商品名:TS−043)3重量部及び共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、商品名:CM8000)2重量部を、メチルアルコール25重量部に加え、ペイントシェーカー(分散機)にて8時間分散処理して下引き層用塗布液を調製した。
<電荷発生層用塗布液>
まず、下記の構造式で示される電荷発生物質を以下のようにして作製した。
ジイミノイソインドリン29.2g及びスルホラン200mlを混合し、さらにチタニウムテトライソプロポキシド17.0gを加え、窒素雰囲気下、140℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を放冷した後、析出物を濾取し、クロロホルム及び2%の塩酸水溶液で順次洗浄し、さらに水及びメタノールで順次洗浄し、乾燥させて青紫色の結晶物25.5gを得た。
得られた化合物の化学分析の結果、上記の構造式で示されるオキソチタニルフタロシアニンであることを確認した(収率88.5%)。
得られたチタニルフタロシアニン1重量部及びブチラール樹脂(電気化学工業株式会社製、商品名:BM−2)1重量部を、メチルエチルケトン98重量部に加え、ペイントシェーカーにて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。
<電荷輸送層用塗布液>
電荷輸送物質としての下記の構造式で表されるトリフェニルアミン系化合物(TPD)(東京化成工業株式会社製、商品名:D2448)2重量部、Z型ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)3重量部、テトラヒドロフラン24重量部を加え、電荷輸送層用塗布液を調製した。
(実施例1)
以上のように調製した下引き層用塗布液、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液と、図2に示す構造の円筒状の遮風部50(材質:SUS304、直径:80mmφ、高さ:100mm)及び図6に示す構造の屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:90°、遮風部50からの水平距離d:15mm)を設けた図1に示す構造の浸漬塗布装置100とを用いて、感光体Fを作製した。屈曲部60は、遮風部50と一体化させた。
十点平均粗さRzが0.90の30mm(直径)×357mm(長さ)の円筒状のアルミニウム製基体に、下引き層用塗布液を、乾燥膜厚が1.0μmになるような引上げ速度で塗布し、自然乾燥させた。次いで、電荷発生層用塗布液を、乾燥膜厚が0.2μmになるような引上げ速度で塗布し、自然乾燥させた。さらに電荷輸送層用塗布液を、乾燥膜厚が34μmになるような引上げ速度で塗布し、乾燥温度130℃で60分間乾燥させた。このようにして感光体Fを作製した。
(実施例2)
図3に示す構造の四角筒状の遮風部(材質:SUS304、幅:80mm、奥行:80mm、高さ:100mm)及び図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:90°、遮風部50からの水平距離d:15mm)を設けた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例3)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:70°、遮風部50からの水平距離d:13mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例4)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:45°、遮風部50からの水平距離d:13mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例5)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:150°、遮風部50からの水平距離d:13mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例6)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:90°、遮風部50からの水平距離d:10mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例7)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図7に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:円弧状、遮風部50からの水平距離d:15mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例8)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図8に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状及び円弧状、屈曲角度θ:90°、遮風部50からの水平距離d:15mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例9)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図9に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:90°、遮風部の上端50bより5mm下に配設、遮風部50からの水平距離d:15mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例10)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:ポリエチレンテレフタレート、形状:直線状、屈曲角度θ:90°、遮風部50からの水平距離d:10mm、粘着テープにて貼付)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(実施例11)
遮風部50の全面を図4に示す構造のメッシュ状(材質:SUS304、目開き74μmでかつ開孔率34%)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(比較例1)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を設けなかった以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(比較例2)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:30°、遮風部50からの水平距離d:13mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(比較例3)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:160°、遮風部50からの水平距離d:13mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
(比較例4)
遮風部50の上部50aにおける屈曲部60を図6に示す構造の遮風部50の上部50aにおける屈曲部60(材質:SUS304、形状:直線状、屈曲角度θ:90°、遮風部50からの水平距離d:5mm)に変えた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを作製した。
[評価]
実施例1から実施例11及び比較例1から比較例4で作製した各感光体Fの膜厚を膜厚測定装置(フィルメトリックス社製、型式:F−20−EXR)で測定して膜の均一性を評価した。
測定は、感光体F〜Fのそれぞれにつき、塗布上端から下側に78.5mm、127.5mm、278.5mmの位置を周方向に10°おきに36点測定し、それらの値の平均値、及び、最大値と最小値との差Δを求めた。
さらに、直流電圧のみを印加する接触帯電方式(帯電ローラ)に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−5140FN)の黒色用感光体ユニットに、実施例1から実施例11及び比較例1から比較例4で作製した各感光体F〜Fを装着し、A4用紙にモノクロで、誤差拡散のような画像ムラを目立たなくする画像処理を施さない(画像処理無しの)ハーフトーン画像と、誤差拡散の画像処理を施した(画像処理有りの)ハーフトーン画像とをそれぞれ5枚出力し、画像評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。なお、表1の[画像評価]において、[画像処理有り]の画像及び[画像処理無し]の画像共に感光体Fの周期の濃淡スジかった場合を「A」評価とし、[画像処理有り]の画像で感光体Fの周期の濃淡スジが無く、[画像処理無し]の画像で感光体Fの塗布下端部分に対応する箇所にうっすら感光体Fの周期の濃淡スジが発生した場合を「B」評価とし、感光体Fの塗布上端から下端にかけて感光体Fの周期の濃淡スジが発生した場合を「C」評価とした。そして、[判定]において、実使用上問題無い場合を「◎」判定とし、実使用上許容できる場合を「○」判定とし、実使用上許容できない場合を「×」判定とした。
表1に示すように、比較例1では、遮風部50の上部50aに屈曲部60を設けないことで、感光体Fの塗布上端から下端にかけて感光体Fの周期の濃淡スジが発生したのに対して、実施例1から実施例11では、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100を用いることで、感光体Fの周方向における塗膜の各所での膜厚差(膜厚分布)に大きな差がなく、実使用で画像処理される画像処理有りのハーフトーン画像上にも濃淡スジが発生せず、良好な結果が得られた。
また、比較例2及び比較例3では、屈曲部60の屈曲角度θが30°及び160°で濃淡スジが発生したのに対して、実施例1から実施例6及び実施例8から実施例11では、屈曲部60の屈曲角度θが45°〜150°で濃淡スジの抑制効果を発揮することができた。中でも、実施例3では、屈曲部60の屈曲角度θが70°であることで、[画像処理無し]でも濃淡スジが発生せず、非常に良好であった。
また、比較例4では、遮風部50の外側壁面51からの屈曲部60の先端60aの水平距離dが5mmで濃淡スジが発生したのに対して、実施例1から実施例11では、遮風部50の外側壁面51からの屈曲部60の先端60aの水平距離dが10mm以上で塗膜の膜厚ムラの抑制効果を発揮することができた。
また、実施例7から実施例9では、図7から図9に示すような形状でも濃淡スジの抑制効果が大きかった。特に、遮風部50の上部50aにおける屈曲部60が円弧状である実施例7、及び、遮風部50の上部50aにおける屈曲部60が直線状及び円弧状である実施例8の構造は、[画像処理無し]でも濃淡スジが発生せず、非常に良好であった。
また、実施例10では、屈曲部60の材質を実施例1から実施例9及び実施例11のSUSに代えてポリエチレンテレフタレートを用いても十分な効果を発揮することができた。
また、実施例11では、遮風部50自体をメッシュ構造にすることで、感光体Fの塗布上端から78.5mm、127.5mm、278.5mmの部分の膜厚差、及び、感光体Fの塗布上端から78.5mm、278.5mmの部分の周方向における膜厚差が小さくなり、膜厚差が小さい感光体Fを作製することができた。
なお、本実施の形態では、電子写真感光体を製造する電子写真感光体製造装置を実施例として挙げているが、本発明に係る浸漬塗布装置は、被塗布物を電子写真感光体の基体として電子写真感光体を製造するものに限定されるものではなく、浸漬塗布法で作製されるもの、例えば、光触媒薄膜を作製するものや、電極用の酸化亜鉛薄膜を製造するものといった、あらゆる技術分野のものに適用可能である。
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、かかる実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。