以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る浸漬塗方法を実施する浸漬塗布装置100の概略構成を示す一部断面を含む斜視図である。
図1に示すように、浸漬塗布装置100(この例では電子写真感光体製造装置)は、複数の塗布槽10〜10と、昇降部20(昇降手段の一例)(具体的には昇降機構部)とを備えている。複数の塗布槽10〜10は、1度の浸漬(工程)で複数の被塗布物E〜Eを同時的(同時又は略同時)に浸漬して被塗布物E〜Eの表面Ea〜Eaに塗膜を形成するために塗布液Lを収容する。昇降部20は、被塗布物E〜E及び塗布槽10〜10のうち少なくとも一方(この例では被塗布物E〜E)を相対的に昇降させて被塗布物E〜Eを塗布槽10〜10における塗布液L中に浸漬しかつ塗布液Lから引き上げる。
また、浸漬塗布装置100は、マニホールド200(分岐配管、分岐マニホールド或いは配管マニホールドとも称する。)と、接続配管300とをさらに備えている。
浸漬塗布装置100は、塗布液Lを複数の塗布槽10〜10にマニホールド200及び接続配管300を介してそれぞれ供給し、塗布槽10〜10における塗布液Lを複数の被塗布物E〜Eに塗布するようになっている。
そして、浸漬塗布装置100は、塗布槽10〜10に、被塗布物E〜Eを所定の深さまで浸漬したのち、被塗布物E〜Eを引き上げることで、被塗布物E〜Eの表面Ea〜Eaに塗膜を形成するようになっている。かくして、被塗布物E〜Eの表面Ea〜Eaに塗布液Lを塗布することにより塗膜した製品を製造することができる。
<被塗布物及び塗布液>
浸漬塗布装置100を用いて塗布液Lが塗布される被塗布物E及びその形状としては、特に限定されるものではない。浸漬塗布装置100は、特に、被塗布物Eの表面Eaに均一又は略均一な膜厚の塗膜を形成することが要求される製品を製造する場合に好適に利用することができる。
このような場合に用いることができる被塗布物Eとしては、例えば、円筒状又は円柱状の被塗布物を挙げることができる。塗布液Lとしては、被塗布物Eの表面Eaに形成すべき塗膜(例えばフィラーを含む塗膜)の材料液を挙げることができる。例えば、塗布液Lは、電子写真感光体の表面に複数の層(例えば干渉防止層や下引き層、電荷発生層、電荷輸送層)を形成するための材料液を挙げることができる。なお、電子写真感光体の各層の詳細については後述する。
以下では、被塗布物Eとして画像形成装置に備えられる電子写真感光体ドラム用の円筒状の金属体(金属性基体)を用い、塗布液Lとして感光層を含む層を形成する材料液を用いる場合を例にとって説明する。
電子写真感光体の製造おいて、被塗布物Eとしては、導電性を有する円筒状基体が一般的に用いられる。また、塗布液Lとしては、詳しくは後述するが、この例では、機能の異なる塗布液を塗り重ねる場合が多いため、それぞれの塗膜に必要な膜厚や塗布性などにより最適化された液物性を有する塗布液を用いている。
この例では、被塗布物Eは、鉛直方向Vに長い長尺状の被塗布物(例えば円筒状の被塗布物)とされている。具体的には、被塗布物Eは、電子写真感光体F(後述する図9及び図10参照)を構成する基体F1(具体的には導電性基体)(図9及び図10参照)とされ、被塗布物Eの表面Eaに形成する塗膜は、複数の層(具体的には干渉防止層や下引き層、電荷発生層、電荷輸送層)とされ、被塗布物Eの表面Eaに塗布液Lを塗布することにより塗膜して得られる製品は、電子写真感光体F(具体的には積層型の有機系感光体)とされている。
<塗布槽>
塗布槽10〜10は、上面を開放した開口部10a〜10aを有し、被塗布物E〜Eが開口部10a〜10aから挿通されるようになっている。塗布槽10〜10は、被塗布物E〜Eが収容可能な大きさになっている。また、塗布槽10〜10は、生産性の向上を目的として被塗布物Eを複数同時的に塗布可能な塗布槽が用いられる。この例では、品質が均一になるように被塗布物E〜E毎に塗布槽10を備えている。
<昇降部>
図2は、図1に示す浸漬塗布装置100における昇降部20の概略構成を示す側面図である。
図1に示す浸漬塗布装置100における昇降部20について、図1及び図2を参照しながら以下に説明する。
昇降部20は、被塗布物E〜Eを支持する支持機構21と、支持機構21を昇降させる駆動装置22とを備えている。この例では、昇降部20は、ボールネジ機構により被塗布物Eを昇降するようになっている。
支持機構21は、駆動装置22に接続される支持部211(具体的には支持板)と、支持部211の先端側の下面211aに連設されて複数の被塗布物E〜E〔例えば複数の被塗布物E〜Eの上端面Eb〜Eb(図2参照)〕を着脱可能にそれぞれ保持する複数の保持部212〜212とを備えている。
なお、保持部212〜212は、被塗布物E〜Eを着脱可能に保持できるものであれば、何れの構成のものであってもよく、特に限定されるものではない。例えば、保持部212〜212は、被塗布物E〜Eの上端面Eb〜Ebに設けられた突起部を着脱可能に掴むチャック爪機構を備えたものであってもよい。或いは、保持部212〜212は、被塗布物E〜Eの上端面Eb〜Ebに設けられたループ部に係脱可能なフック部を備えたのものであってもよい。
駆動装置22は、係止部材221(この例では雄ネジ部を有するスクリューシャフト)と、係止部材221を駆動(この例では回転駆動)する昇降駆動部222(この例では駆動モータ)とを備えている。
支持機構21における支持部211には、係止部材221(この例では雄ネジ部)に係合(この例では螺合)する係合部211b(図2参照)(この例では雌ネジ孔)が設けられている。
かかる構成を備えた昇降部20では、昇降駆動部222にて係止部材221が一方向又は他方向に駆動(この例では正回転駆動又は逆回転駆動)することにより、支持部211と共に被塗布物E〜Eを鉛直方向V又は略鉛直方向Vに昇降させることができる。なお、昇降駆動部222として、駆動速度調整可能な駆動部、例えば、サーボモータを用いることができる。こうすることで、支持部211の昇降速度を容易に調整することができる。
詳しくは、係止部材221は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びている。支持部211は、水平方向H又は略水平方向Hに延びている。支持部211は、係止部材221に水平方向H又は略水平方向Hに沿って係合される。被塗布物E〜Eは、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びた状態で保持部212〜212に着脱可能に取り付けられている。
支持機構21は、支持部211を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに沿って案内する案内部材223(この例ではガイドシャフト)と、係止部材221の下端221aを軸線回りに回転自在に支持し、かつ、案内部材223の下端223aを支持する下側支持台224と、係止部材221の上端221bを軸線回りに回転自在に支持し、かつ、案内部材223の上端223bを支持する上側支持台225とをさらに備えている。
支持機構21における支持部211には、案内部材223を挿通する挿通部211c(具体的にはガイド孔)が設けられている。案内部材223は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びている。係止部材221及び案内部材223は、互いに平行又は略平行になるように下側支持台224及び上側支持台225に支持されている。下側支持台224及び上側支持台225の何れか一方(この例では上側支持台225)には、昇降駆動部222が設けられている。
かかる構成を備えた昇降部20では、案内部材223にて支持機構21における支持部211を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに沿って案内することにより、係止部材221にて支持機構21における支持部211を被塗布物E〜Eと共に鉛直方向V又は略鉛直方向Vに確実に昇降させることができる。
なお、この例では、昇降部20は、ボールネジ機構により被塗布物Eを昇降するようにしたが、他の昇降機構、例えば、シリンダ機構、ボールネジ機構又はシリンダ機構と組み合わされたリンク機構などを用いてもよい。
本実施の形態では、浸漬塗布装置100は、塗布液Lを塗布槽10〜10に供給して塗布槽10〜10からオーバーフローさせるための塗布液供給部30(図1参照)と、塗布槽10〜10及び塗布液供給部30の間で塗布液Lを循環させるための循環部40(循環手段の一例)とをさらに備えている。
浸漬塗布装置100は、生産性を向上させるという観点から、昇降部20にて複数の被塗布物E〜Eを保持するようにして昇降させ、一度の浸漬(工程)で複数の被塗布物E〜Eを同時的に塗布するように構成している。そして、塗布槽10及び後述する塗布液回収部41は、複数の被塗布物E〜Eを浸漬できる大きさに形成されている。
<塗布液供給部>
塗布液供給部30は、塗布液Lを貯留する貯留部31(具体的には貯留タンク)(図1参照)と、貯留部31に貯留されている塗布液Lを塗布槽10に導く供給経路32(具体的には供給管)(図1参照)と、供給経路32に設けられて貯留部31から塗布液Lを塗布槽10に供給する供給駆動部33(具体的にはポンプ)(図1参照)と、供給駆動部33の塗布液Lの吐出圧力を検知する圧力検知手段34(図1参照)と、供給経路32の供給駆動部33よりも下流側に設けられた濾過器35(図1参照)と、塗布液Lの状態(例えば塗布液Lの分散状態)を調整するための塗布液状態調整手段36(図1参照)(具体的には粒度分布調整手段)とを備えている。
貯留部31は、循環に最低限必要な量の塗布液Lと被塗布物Eの体積分の塗布液Lとを収容できる容積があればよい。また、塗布液Lの投入と、塗布液L及び塗布液L中の溶剤(溶媒)の追加が可能なように、貯留部31の上部に開閉可能な蓋部31a(図1参照)が設けられている。また、貯留部31内の塗布液Lを攪拌混合するための攪拌機(図示せず)、塗布液Lの粘度を計測する粘度計(図示せず)などを貯留部31に設けて、塗布液Lの液物性を調整できるようにしてもよい。
また、貯留部31の底部には、塗布液Lを流出する流出口31b(図1参照)が設けられている。塗布槽10の底部には、塗布液Lを流入する流入口10bが設けられている。供給経路32は、一端部32a(図1参照)が貯留部31における流出口31bに接続され、かつ、他端部が塗布槽10における流入口10bに(この例では後述するレジューサ400を介して)接続されている。供給経路32は、マニホールド200(この例では201)〜200(この例では202〜202)(図1参照)及び接続配管300(この例では301〜301)〜300(この例では302〜302)を含んでいる。なお、供給経路32については、後ほど詳しく説明する。
供給駆動部33としては、例えば、サインポンプやマグネットポンプ、ギアポンプ等の脈動が比較的少ないポンプを好適に用いることができる。
<循環部>
循環部40は、塗布槽10〜10からオーバーフローした塗布液Lを回収する塗布液回収部41と、塗布槽10〜10からオーバーフローした塗布液Lを貯留部31に導く循環経路42(具体的には循環管)(図1参照)とを備えている。
塗布液回収部41は、この例では、図示を省略した固定部材によって所定の位置に固定されている。塗布液回収部41は、塗布槽10〜10の外周壁面の上端部分に液密に一体化された断面視L字状の受け部411と、受け部411における塗布液Lの蒸発を抑制するための蓋部412(図2参照)とを備えている。なお、図1では蓋部412が取り外された状態を示している。
蓋部412は、受け部411の上端に設けられている。この例では、蓋部412は、受け部411の上端面に載置されている。また、蓋部412には、被塗布物Eを塗布槽10内に出し入れするための開口部412a(図2参照)が設けられている。
受け部411の側壁には、塗布液Lを流出する流出口411aが設けられている。貯留部31の側壁には、塗布液Lを流入する流入口31c(図1参照)が設けられている。循環経路42は、一端部42a(図1参照)が受け部411における流出口411aに接続され、かつ、他端部42b(図1参照)が貯留部31における流入口31cに接続されている。
ここで、受け部411における流出口411aは、貯留部31における流入口31cよりも高い位置に配置されている。このため、塗布液回収部41にて回収した塗布液Lを流出口411aから循環経路42を経て流入口31cを通って貯留部31内へ流入させることができる。これにより、塗布槽10及び貯留部31の間で塗布液Lを循環させることができる。
<圧力検知器>
圧力検知手段34は、塗布液Lの流れ方向Wにおいて、供給経路32の供給駆動部33よりも下流側に設けられている。圧力検知手段34としては、圧力検知器を例示でき、例えば、供給経路32内の塗布液Lの液圧値を表示する表示部(図示せず)を有するアナログ式又はデジタル式の圧力計を用いることができる。
<濾過器>
濾過器35は、塗布液Lの流れ方向Wにおいて、供給経路32の供給駆動部33(この例では圧力検知手段34)よりも下流側かつ塗布液状態調整手段36よりも上流側に設けられている。濾過器35は、循環している塗布液Lにおける異物欠陥などの塗布欠陥となる不要物の濾過に使用するものである。この例では、濾過器35は、供給経路32の一部に設けられた濾過器収納部(図示せず)内に交換可能に収納されている。
濾過器35は、例えば、不要物を濾過可能な孔径(濾過径)を有するフィルターを用いることができる。また、フィルターを用いた濾過器35は、濾過時のフィルターによる圧力抵抗を考慮して塗布液Lの必要な循環流量が得られる有効濾過面積のものを使用することができる。
<塗布液状態調整手段>
塗布液状態調整手段36は、塗布液Lの流れ方向Wにおいて、供給経路32の濾過器35よりも下流側かつマニホールド200(この例では201)よりも上流側に設けられている。
塗布液状態調整手段36の塗布液Lの状態を調整する手法としては、例えば、塗布液Lの分散状態を解砕方向の分散状態にする場合には、塗布液Lに対してせん断破壊が起こるせん断を与え、塗布液Lの分散状態を凝集方向の分散状態にする場合には、塗布液Lに対してせん断凝集が起こるせん断を与える手法を挙げることができる。
塗布液Lに対してせん断破壊が起こるせん断を与える場合には、塗布液状態調整手段36において、小孔のオリフィスやメッシュ構造を設けることができる。また、塗布液Lに対してせん断凝集が起こるせん断を与える場合には、塗布液状態調整手段36において、塗布液Lの循環流量に応じて、せん断凝集が起こる内径の配管を設けることができる。
<制御部>
本実施の形態では、浸漬塗布装置100は、浸漬塗布装置100全体の制御を司る制御部70(図1参照)をさらに備えている。
制御部70は、浸漬塗布工程中のあらゆる状況に応じて細かい流量調整を可能とする機能を備えている。さらに、制御部70は、昇降部20の昇降動作も制御する機能を備えている。
例えば、制御部70は、昇降部20による被塗布物E〜Eと塗布槽10〜10との相対的な移動によって被塗布物E〜Eを塗布槽10〜10内の塗布液L中へ浸漬して引き上げる際に、或いは/さらに、浸漬塗布工程と次の浸漬塗布工程との合間の塗布液Lの循環中に塗布液Lの状態を調整する際に、塗布液Lが所望の流量になるように制御する機能を備えている。かかる制御としては、インバータ制御の供給駆動部33により塗布槽10〜10へ供給する塗布液Lの流量を一時的に減少又は増加させる制御を例示できる。さらに、制御部70は、昇降部20の昇降動作とインバータ制御の供給駆動部33の供給動作とが同期するように昇降部20及び供給駆動部33を制御する機能を備えている。
このように、浸漬塗布装置100では、浸漬塗布工程中の状況に応じて塗布液Lの流量調整を可能とすることで、塗布液Lの分散安定性(例えばフィラーを含む塗布液Lのフィラーの分散安定性)が低い場合でも、浸漬塗布工程と次の浸漬塗布工程との合間の塗布液Lの循環中に塗布液Lの分散状態を調整しつつ塗布液Lを塗布槽10〜10に供給することができる。
さらに、浸漬塗布装置100では、塗布液Lの被塗布物E〜Eへの均一又は略均一な塗布に最適な流量で、被塗布物E〜Eに塗布液Lを塗布する塗布動作を連続的に行うことができる。
そして、浸漬塗布装置100では、以下に説明する構成により、安定して均質又は略均質な塗膜形成を連続的に行うことが可能となる。
<マニホールド及び接続配管>
図3は、浸漬塗布装置100におけるマニホールド200(201,202)の概略構成を示す斜視図である。図3(a)は、分岐1段目のマニホールド201を示しており、図3(b)は、分岐2段目のマニホールド202を示している。
マニホールド200(この例では201,202)は、分岐前の配管である分岐前配管210,210(図3参照)及び分岐後の配管である複数の分岐後配管(220〜220),(220〜220)(図3参照)を有しており、各塗布槽10〜10毎に塗布液Lを供給する。
この例では、浸漬塗布装置100において、分岐1段目の1個の4分岐のマニホールド201の分岐後配管220〜220に、分岐2段目の6分岐のマニホールド202〜202の分岐前配管210〜210がそれぞれ接続されており、分岐2段目の4個の6分岐のマニホールド202〜202の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)にそれぞれ接続された24個の塗布槽10〜10毎に塗布液Lを供給するようになっている。分岐2段目の4個のマニホールド202〜202は、何れも同一構成のものである。
本実施の形態において、マニホールド200(この例では201,202)は、分岐後の複数の分岐後配管220〜220内において塗布液Lが受けるせん断(例えば、せん断力、せん断速度、せん断を受ける経過時間)が各分岐後配管220〜220間で等しく又は略等しくなるように形成されている。
詳しくは、マニホールド200の各分岐後配管220〜220にそれぞれ接続される接続配管300は、流路長が何れも等しい又は略等しい配管である。
この例では、分岐1段目の1個のマニホールド200(201)の4個の各分岐後配管220〜220と分岐2段目の4個のマニホールド200(202〜202)の分岐前配管210〜210との間にそれぞれ接続される1段目の4個の接続配管300(301〜301)は、何れも流路長が何れも等しい又は略等しい。分岐2段目の1個のマニホールド200(202)の6個の各分岐後配管220〜220において、それに対応する6個の各塗布槽10〜10の流入口10b〜10b(この例ではレジューサ400〜400)との間にそれぞれ接続される2段目の6個の接続配管300(302〜302)は、何れも流路長が等しい又は略等しい。さらに言えば、分岐2段目の4個のマニホールド200(202)の24個(=4個×6個)の各分岐後配管220〜220とそれに対応する24個の各塗布槽10〜10の流入口10b〜10b(この例ではレジューサ400〜400)との間にそれぞれ接続される2段目の24個の接続配管300(302〜302)は、何れも流路長が等しい又は略等しい。
そして、塗布液Lの状態(具体的には粘度や流量)を各塗布槽10〜10間で一定又は略一定に維持する予め定めた所定の関係になるように、本実施の形態に係る浸漬塗布方法では、マニホールド200の分岐前の分岐前配管210の内側の大きさを示す第1サイズと、各分岐後配管220〜220の分岐数と、各分岐後配管220〜220の内側の大きさを示す第2サイズとを設定し、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100では、マニホールド200の分岐前の分岐前配管210の内側の第1サイズと、各分岐後配管220〜220の分岐数と、各分岐後配管220〜220の内側の第2サイズとが設定されている。この例では、マニホールド200が複数個あることから、前記した所定の関係になるように、各マニホールド201,202〜202毎に第1サイズと分岐数と第2サイズとの設定を行う。
本実施の形態によれば、マニホールド200(この例では各マニホールド201,202〜202)として、分岐後の各分岐後配管220〜220内において塗布液Lが受けるせん断が各分岐後配管220〜220間で等しく又は略等しくなるように形成したマニホールドを用いている。そして、マニホールド200(この例では各マニホールド201,202〜202)の各分岐後配管220〜220にそれぞれ接続される接続配管300を流路長が何れも等しい又は略等しい配管としている。さらに、塗布液Lの状態を各塗布槽10〜10間で一定又は略一定に維持する予め定めた所定の関係になるように、マニホールド200の分岐前配管210の内側の第1サイズと、各分岐後配管220〜220の分岐数と、各分岐後配管220〜220の内側の第2サイズとを(この例では各マニホールド201,202〜202毎に)設定する。こうすることで、マニホールド200(この例では各マニホールド201,202〜202)での分岐時の塗布液Lに対するせん断力の急激な変化等により塗布液Lが接続配管300(この例では301〜301,302〜302)中を流れることで受けるせん断を抑制することができる。従って、塗布液Lの状態(具体的には所望の粘度や所望の流量、所望の分散状態、例えばフィラーの所望の分散状態)を各塗布槽10〜10間で一定又は略一定に保った状態で、塗布液Lを各塗布槽10〜10に供給することができる。これにより、塗布液Lの状態のバラツキ(具体的には、塗布液Lの粘度バラツキ、各塗布槽10〜10内及び各塗布槽10〜10間での流量のバラツキ、各塗布槽間での分散状態のバラツキ)による各被塗布物E〜E間での塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラ等の不都合を低減させることができる。
特に、フィラーを分散させた塗布液Lを用いた場合において、たとえフィラーの分散安定性が低い塗布液Lにおいても、フィラーの粒度分布バラツキやフィラーの濃度ムラ、また、それに伴う塗布液粘度バラツキ、及び、塗布槽10内及び各塗布槽10〜10間での流量バラツキがなく或いは小さく所望の分散状態を保った状態で塗布液Lを各塗布槽10〜10に供給でき、結果的に各被塗布物E〜E間の塗膜の膜厚バラツキをなくす或いは小さくすることができる。これにより、各被塗布物E〜E間での塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラがない或いは小さい均一又は略均一な層を膜形成することが可能となる。
さらに、特許文献2に記載の構成では、配管を段階的に樹状に分岐することから、各塗布槽の設置場所が限定され易く、既存の浸漬塗布装置への展開が難しいという課題もあるところ、本実施の形態では、各塗布槽10〜10の設置場所が限定され難く、既存の浸漬塗布装置へ展開し易いという利点がある。
ここで、第1サイズは、分岐前配管210の内側の長手方向に直交する方向におけるサイズ(例えば分岐前配管210が円筒状の配管である場合には内径)であり、第2サイズは、分岐後配管220の内側の長手方向に直交する方向におけるサイズ(例えば分岐後配管220が円筒状の配管である場合には内径)である。
本実施の形態において、各分岐後配管220〜220は、第2サイズが何れも等しい又は略等しい、かつ、流路長が何れも等しい又は略等しい配管である。
ここで、配管の流路長は、配管が塗布液Lを流す部分の距離をいい、例えば、配管が継手で接続されている場合には、継手部分を含まない距離である。
詳しくは、分岐前配管210は、円筒状の配管であり、各分岐後配管220〜220は、内径が何れも等しい又は略等しい円筒状の配管である。また、接続配管300も、内径が何れも等しい又は略等しい円筒状の配管である。この例では、1段目の各接続配管301〜301の内径が何れも等しい又は略等しく、2段目の各接続配管302〜302の内径が何れも等しい又は略等しい。
そして、分岐前配管210の第1サイズとしての内径をφa、各分岐後配管220〜220の分岐数をn(nは2以上の整数)、各分岐後配管220〜220の第2サイズとしての内径をφbとすると、塗布液Lに対するせん断に関与する式、例えば、次の式1の関係を満たすように、本実施の形態に係る浸漬塗布方法では、分岐前配管210の内径φa、分岐数n及び各分岐後配管220〜220の内径φbを設定し、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100では、分岐前配管210の内径φa、分岐数n及び各分岐後配管220〜220の内径φbが設定されている。この例では、マニホールド200が複数個あることから、次の式1の関係を満たすように、各マニホールド201,202〜202毎に分岐前配管210の内径φaと分岐数nと各分岐後配管220〜220の内径φbとの設定を行う。
ここで、式1の演算式は、分岐後配管220の内径φbを1辺とする立方体の体積のn倍に対する分岐前配管210の内径φaを1辺とする立方体の体積の比率と見ることができる。
こうすることで、塗布液Lの状態(具体的には粘度や流量、分散状態、例えばフィラーの分散状態)のバラツキによる各被塗布物E〜E間での塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラ等の不都合を確実に低減させることができる。
特に、分散安定性が低いフィラーを含有した塗布液Lにおいては、フィラーの所望の分散状態を各塗布槽10〜10間で一定又は略一定に保った状態で、塗布液Lを各塗布槽10〜10に供給することができる。これにより、塗布液Lの状態のバラツキによる各塗布槽10〜10間での塗膜の膜厚バラツキを小さくすることができ、従って、各被塗布物E〜E間での塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラ等の不都合を可及的に小さくすることができる。
本実施の形態において、マニホールド200は、複数段(例えば2段又は3段)に設けられている。また、接続配管300は、複数段のマニホールド200に対応して複数段(例えば2段又は3段)に設けられている。この例では、1段目の4個の接続配管301〜301は、一端が分岐1段目の1個のマニホールド201の4個の各分岐後配管220〜220にそれぞれ接続され、且つ、他端が分岐2段目の4個のマニホールド202〜202の分岐前配管210〜210にそれぞれ接続されている。2段目の24個の接続配管(302〜302)〜(302〜302)は、一端が分岐2段目の4個のマニホールド202〜202の6個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)にそれぞれ接続され、且つ、他端が24個の塗布槽10〜10にレジューサ400〜400を介してそれぞれ接続されている。
こうすることで、多数(例えば24個)の塗布槽10〜10を設ける場合でも多数の塗布槽10〜10に接続される接続配管300〔この例では301〜301,(302〜302)〜(302〜302)〕の数を飛躍的に大きくすることができる。
なお、言うまでもないが、マニホールド200の段数、分岐数は、特に限定されるものではなく、各塗布槽10〜10の数及び設置場所等の設置条件に応じて適宜設定することができる。
この例では、マニホールド200は、2段のマニホールド201,202〜202とされており、接続配管300は、2段の接続配管301〜301,(302〜302)〜(302〜302)とされているが、マニホールド200及び接続配管300の段数は、2段に限定されるものではなく、1段や3段以上であってもよい。また、この例では、マニホールド200は、4分岐のマニホールド201及び6分岐のマニホールド202〜202とされているが、マニホールド200の分岐数は、4分岐及び6分岐に限定されるものではなく、2分岐、3分岐、5分岐や7分岐以上であってもよい。
本実施の形態において、マニホールド200(この例では201,202)は、いわゆる等分岐マニホールドと称されるものであり、分岐前配管210から等分岐(この例では等4分岐及び等6分岐)に分岐している。
詳しくは、マニホールド200は、分岐前配管210と各分岐後配管220〜220とが何れも同一又は略同一の第1角度θa〜θa(図3参照)になるように、かつ、各分岐後配管220〜220間が何れも同一又は略同一の第2角度θb〜θb(図3参照)になるように形成されている。さらに、マニホールド200は、各分岐後配管220〜220が何れも同一又は略同一の流路長d〜d(図3参照)になるように形成されている。
こうすることで、分岐後の各分岐後配管220〜220内において塗布液Lが受けるせん断を各分岐後配管220〜220間で等しく又は略等しくするマニホールド200を簡単な構成で実現させることができる。
この例では、分岐1段目のマニホールド201は、第1角度θa1〜θa1(図3参照)が何れも同一又は略同一であり、第2角度θb1〜θb1(図3参照)が何れも同一又は略同一であり、流路長d1〜d1(図3参照)が何れも同一又は略同一である。また、分岐2段目のマニホールド202は、第1角度θa2〜θa2(図3参照)が何れも同一又は略同一であり、第2角度θb2〜θb2(図3参照)が何れも同一又は略同一であり、流路長d2〜d2(図3参照)が何れも同一又は略同一である。
ここで、第1角度θa〜θaは、塗布液Lがマニホールド200内での分岐時に乱流や滞留し難く、マニホールド200内の配管の形状の変化から塗布液Lが受けるせん断差を少なくするため、90°以上とすることが好ましい。この例では、分岐1段目のマニホールド201の第1角度θa1〜θa1は、90°又は略90°とされ、分岐2段目のマニホールド202の第1角度θa2〜θa2は、90°又は略90°とされている。
また、第2角度θb〜θbは、360度/n又は略360度/nとされている。この例では、分岐1段目の4分岐のマニホールド201の第2角度θb1〜θb1は、90°又は略90°とされ、分岐2段目の6分岐のマニホールド202の第2角度θb2〜θb2は、60°又は略60°とされている。
マニホールド200は、既述のとおり、各分岐後配管220〜220の第2サイズ(具体的には内径φb)および流路長d〜dを何れも等しく又は略等しくすることにより、各分岐後配管220〜220から塗布液Lが受けるせん断が各分岐後配管220〜220間で等しく又は略等しくなるようにしている。
図4は、マニホールド201,202の分岐部230部分において塗布液Lを受ける受け部240の概略断面図であって、受け部240(240a)が平坦形状に形成されている例を示している。
本実施の形態において、マニホールド200(この例では201,202)は、図4に示すように、分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に供給される塗布液Lを受ける受け部240(240a)が平坦形状に形成されていてもよい。
こうすることで、受け部240(240a)によって分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に塗布液Lをスムーズに流入させることができる。これにより、各分岐後配管220〜220から塗布液Lがせん断を受け難くすることができ、それだけ塗布液Lが受けるせん断を小さくすることができる。
図4に示す例では、マニホールド200(この例では201,202)は、各分岐後配管220〜220が分岐前配管210と直交又は略直交する方向に沿って分岐されている。
図5は、マニホールド201,202の分岐部230部分において塗布液Lを受ける受け部240の概略断面図である。図5(a)は、受け部240(240b)が凸状の湾曲形状に形成されている例を示しており、図5(b)は、受け部240(240c)が凹状の湾曲形状に形成されている例を示している。
本実施の形態において、マニホールド200(この例では201,202)は、図5に示すように、分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に供給される塗布液Lを受ける受け部240(240b,240c)が湾曲形状に形成されていてもよい。
こうすることで、受け部240(240b,240c)によって分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に塗布液Lを均等に流入させることができる。これにより、各分岐後配管220〜220から塗布液Lがせん断を受け難くすることができ、それだけ塗布液Lが受けるせん断を小さくすることができる。
図5に示す例では、マニホールド200(この例では201,202)は、受け部240(240b)が凸状の湾曲形状に形成されており〔図5(a)参照〕、受け部240(240c)が凹状の湾曲形状に形成されている〔図5(b)参照〕。
ここで、受け部240(240a〜240c)は、分岐前配管210と各分岐後配管220〜220とが交差する部分であって、分岐前配管210から供給される塗布液Lが突入する部分である。
図6は、マニホールド201,202の分岐部230部分の概略断面図である。図6(a)は、分岐部230(230a)が曲線状に次第に分岐するように形成されている例を示しており、図6(b)は、分岐部230(230b)が直線形状に次第に分岐するように形成されている例を示している。
本実施の形態において、マニホールド200(この例では201,202)は、図6に示すように、分岐部230(230a,230b)が分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に向けて次第に分岐するように形成されていてもよい。
こうすることで、分岐部230(230a,230b)によって分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に塗布液Lをスムーズに流入させることができる。これにより、各分岐後配管220〜220から塗布液Lがせん断を受け難くすることができ、それだけ塗布液Lが受けるせん断を小さくすることができる。
図6に示す例では、マニホールド200(この例では201,202)は、分岐部230(230a)が分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に向けて曲線状に次第に分岐するように形成されており〔図6(a)参照〕、分岐部230(230b)が分岐前配管210から各分岐後配管220〜220に向けて直線状に次第に分岐するように形成されている〔図6(b)参照〕。
浸漬塗布装置100において、マニホールド200(この例では201,202)から塗布槽10〜10までの間に曲げ継手が設けられていてもよい。
図7は、浸漬塗布装置100に用いることができる曲げ継手500を示す概略側面図である。図7(a)は、曲げ継手500(500a)が所定の角度に屈曲している例を示しており、図7(b)は、曲げ継手500(500b)が垂直方向に連結できるようにS字状に屈曲している例を示しており、図7(c)は、曲げ継手500(500c)が水平方向に連結できるようにS字状に屈曲している例を示している。
図7に示すように、マニホールド200(この例では201,202)と各塗布槽10〜10との間の配管経路に曲げ継手500(500a,500b,500c)が設けられている態様を例示できる。
こうすることで、分岐前配管210及び接続配管300〜300の設置位置の自由度を広げることができる。
図7に示す例では、曲げ継手500(500a)は、予め定めた所定の角度(例えば直角又は略直角)に曲げられている〔図7(a)参照〕。曲げ継手500(500b)は、垂直方向に連結できるようにS字状に屈曲されている〔図7(b)参照〕。また、曲げ継手500(500c)は、水平方向に連結できるようにS字状に屈曲されている〔図7(c)参照〕。
本実施の形態において、マニホールド200(この例では201,202)は、各分岐後配管220〜220内の空間の断面積〔この例ではπ×(φb/2)2〕が分岐前配管210内の空間の断面積〔この例ではπ×(φa/2)2〕と等しいか或いは分岐前配管210内の空間の断面積よりも大きくなっていてもよい。
こうすることで、分岐前配管210から供給される塗布液Lの供給量に対する分岐後配管220〜220が塗布液Lを受け入れる受入量により、分岐前配管210から分岐後配管220〜220に塗布液Lをスムーズに流入させることができる。これにより、分岐後配管220〜220から塗布液Lがせん断を受け難くすることができ、それだけ塗布液Lが受けるせん断を小さくすることができる。
ここで、フィラーを含む塗布液Lについて説明すると、フィラーは、塗布液L中に分散された状態で存在し、フィラーの種類やその粒径、また、塗布液Lの溶剤(溶媒)、その他、構成材料によりフィラーの分散状態や分散安定性が異なる。
また、多くの場合、塗布液L中のフィラーの分散状態は、塗布液Lが塗膜になったときの品質や性能に大きく影響する。このため、浸漬塗布工程では、塗布液L中のフィラーの分散状態が各塗布槽10〜10中で所望の状態で常に同一又は略同一に維持されていることが好ましい。そうすると、特性面の要求などから分散剤(分散助剤)の使用が制限されるなどで、フィラーの分散安定性の弱い塗布液Lを使用する場合や、塗布液L中のフィラーの分散状態を所定の範囲内にしておく必要がある場合など、フィラーの分散状態を管理する必要がある。
塗布液L中のフィラーの分散状態を管理する手法としては、例えば、塗布液Lの粒度分布を調べて管理する手法を挙げることができる。この手法では、フィラーの所望の分散状態である粒度分布が維持できる循環条件で塗布液Lを循環させることができる。
また、塗布液Lの分散状態を調整する手法としては、例えば、塗布液Lにせん断を与える手法を挙げることができる。具体的には、塗布液L中のフィラーを凝集させたり、解砕させたりすることによってフィラーの分散状態を調整することができる。
図8は、せん断速度に対するフィラーを含む塗布液Lの凝集速度を示すグラフである。なお、図8において、Qaは、せん断凝集となっている状態を示しており、Qbは、せん断破壊となっている状態を示しており、Qcは、せん断破壊とせん断凝集とがバランスされている状態を示している。
図8に示すように、フィラーを含む塗布液Lの分散状態は、所定のせん断速度Vqまでは凝集が進行する一方、所定のせん断速度Vq以上であれは解砕が進行する。ここで、凝集が進行する状態は、せん断凝集と呼ばれ、解砕が進行する状態は、せん断破壊と呼ばれる。
すなわち、分散状態の挙動は、せん断凝集とせん断破壊とのバランスで決まる(図8のQc参照)。フィラーの分散状態の調整は、かかる性質を利用したものである。
フィラーを含む塗布液Lにせん断力を与える手法としては、例えば、塗布液Lの循環経路中において、貯留部31にホモジナイザーなどの分散機(図示せず)を設ける手法、供給経路32の配管中に小孔板や細管、メッシュ板などせん断を調整できる構造を設ける手法、それらを複数組み合わせた手法などを挙げることができる。これらの手法は、塗布液Lの所望の分散状態や塗布液Lの循環に必要な流量、設備状況等に応じて適宜使用することができる。
そして、各塗布槽10〜10へフィラーを分散させた塗布液Lのフィラーの分散状態を各塗布槽10〜10間で一定又は略一定に維持する前記式1の関係を満たすように、分岐前配管210の内径φa、分岐数n及び各分岐後配管220〜220の内径φbを設定する。
前述したように、塗布液L中のフィラーの分散状態は、せん断凝集とせん断破壊とのバランスでなり立っているが、塗布液Lは、各塗布槽10〜10への接続配管300(この例では301〜301)〜300(この例では302〜302)からもせん断を受けることになるため、各塗布槽10〜10毎の接続配管300〜300から受けるせん断、分岐部(例えば各分岐段階)でのせん断はバラツキを小さくする必要がある。
このため、等流路長となる接続配管300(この例では等流路長となる接続配管301〜301)〜300(この例では等流路長となる接続配管302〜302)を用いることにより、接続配管300〜300から塗布液Lが受けるせん断のバラツキを小さくすることができ、各塗布槽10〜10間でのフィラーの分散状態を均一又は略均一にすることができる。
ところで、各塗布槽10〜10内の塗布液Lは、所望の分散状態である必要がある。各塗布槽10〜10毎に塗布液Lの分散状態を調整する機構を設けることも考えられるが、この場合、塗布槽10〜10の数の分だけ調整機構が必要となり、生産性が非効率なものになる。
従って、マニホールド200〜200内での分岐前にある程度、塗布液Lの分散状態を調整しておき、各塗布槽10〜10内で塗布液Lの所望の分散状態になるようにする方が効率的である。このためには、マニホールド200〜200及び接続配管300〜300での塗布液Lの分散状態の変化を小さくする必要がある。
しかしながら、各塗布槽10〜10への接続配管300〜300から塗布液Lが受けるせん断は、せん断凝集を引き起こし易い領域になる場合がある(図8のQa参照)。このため、せん断速度が大きくなり過ぎると、凝集が進行し過ぎてしまう。従って、せん断速度が大きくなり過ぎないようにする必要がある。
また、塗布液Lがせん断を受ける時間が長くなると、凝集が進行するため、塗布液Lがせん断を受ける時間が短い程、塗布液Lの分散状態を維持し易い。すなわち、接続配管300〜300の内側の大きさ(具体的には内径)が大きい程、及び/又は、接続配管300〜300の流路長が短い程、塗布液Lの分散状態を維持し易い傾向にある。
ところが、各塗布槽10〜10毎に塗布液Lを供給する際、特に生産性の向上のため、例えば、一度の浸漬塗布工程での生産数が多い結果、塗布槽10の数が多い場合、分岐元から各塗布槽10〜10まで複数回の分岐を行うと、それだけ各塗布槽10〜10までの流路長は長くなってしまう。
また、マニホールド200〜200の設置スペースが限られている場合において、各塗布槽10〜10から離れた場所に設置すると、それだけ接続配管300〜300の流路長は長くなる。
また、接続配管300〜300は、接続のし易さやマニホールド200〜200からの取り回しを容易にするため、できるだけ内側の大きさ(具体的には内径)を小さくしたいという要望がある。
そこで、マニホールド200〜200における分岐前後での前記式1における計算式の値が0.25〜1.95の範囲内になるように、分岐前配管210の内径φa、分岐数n及び各分岐後配管220〜220の内径φbを設定することで、たとえ各分岐段階を経たとしても、また、接続配管300〜300の流路長が比較的長い場合でも、凝集が進みすぎることを防ぐことができ、マニホールド200〜200において分岐前配管210から各分岐後配管220〜220への塗布液Lの分散状態を維持し易くすることができる。
詳しくは、前記式1における計算式の値が1.95を超えると、マニホールド200〜200において各分岐後配管220〜220から塗布液Lが受けるせん断が大きくなり過ぎて短時間の間に凝集が進んでしまい、塗布液Lの所望の分散状態を維持することが難しい。また、マニホールド200〜200における分岐前後でのせん断差も大きくなるため、分岐後配管220〜220間や分岐後配管220〜220内での塗布液Lの分散状態のバラツキも大きくなると考えられる。
一方、前記式1における計算式の値が0.25を下回ると、塗布液Lの分散状態にバラツキが生じ易い。つまり、マニホールド200〜200において分岐後配管220〜220の第2サイズ(具体的には内径φb)の分岐前配管210の第1サイズ(具体的には内径φa)に対する比率が大きくなり過ぎるため、分岐前に比べ分岐後の流速が遅くなり過ぎ、そうすると、分岐時に流速差を引き起し易くとなると考えられる。特に、マニホールド200〜200として、垂直方向から水平方向又は略水平方向に分岐する等分岐マニホールドを用いる場合や、マニホールド200〜200の分岐数が多い場合は、分岐後の塗布液Lの分散状態がバラツキ易くなると考えられる。さらに、前記式1における計算式の値が1.95を超える場合と同様に、マニホールド200〜200における分岐前後でのせん断差も大きくなるため、分岐後配管220〜220間や分岐後配管220〜220内での塗布液Lの分散状態のバラツキも大きくなると考えられる。
(第2実施形態)
ところで、各塗布槽10〜10の直近に設けられた(各塗布槽10〜10につながった)最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内側の大きさを示す第4サイズはできるだけ小さい方が最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の取り回しや、循環に必要な塗布液量の削減など利便性が高い。
しかしながら、各塗布槽10〜10の内側の大きさを示す第3サイズと、各塗布槽10〜10の直近に設けられた最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内側の第4サイズとの差により、各塗布槽10〜10と最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)との接続部の各塗布槽10〜10側に塗布液Lの滞留部や乱流部が生じてしまい、各塗布槽10〜10内で塗布液Lの状態(具体的には粘度や流量、例えばフィラーの分散状態)にバラツキや、塗布液Lの流量の偏りが生じてしまう。これによっても、各塗布槽10〜10間での塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラ等の不都合が発生することになる。
そこで、塗布液Lの状態(具体的には粘度や流量)を各塗布槽10〜10間で一定又は略一定に維持する予め定めた所定の関係になるように、本実施の形態に係る浸漬塗布方法では、各塗布槽10〜10の内側の大きさを示す第3サイズと、各塗布槽10〜10の直近に設けられた最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内側の大きさを示す第4サイズとを設定し、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100では、各塗布槽10〜10の内側の第3サイズと、最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内側の第4サイズとが設定されている。
こうすることで、各塗布槽10〜10内と最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)内との塗布液Lの流量差や塗布液Lが受けるせん断力の差を小さくすることができ、それだけ、各塗布槽10〜10と最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)との接続部の各塗布槽10〜10側において塗布液Lの滞留部や乱流部を抑制することができ、これにより、各塗布槽10〜10内での塗布液Lの流量やせん断のバラツキを小さくするこができる。従って、塗布液Lの状態(具体的には粘度や流量、分散状態、例えばフィラーの分散状態)のバラツキや、塗布液Lの流量の偏りを抑制することができ、これにより各塗布槽10〜10間での塗布液Lの塗布ムラを小さくすることができる。
ここで、第3サイズは、塗布槽10の長手方向に直交する方向におけるサイズ(例えば塗布槽10が円筒状の配管である場合には内径)であり、第4サイズは、最終の接続配管300(302)の長手方向に直交する方向におけるサイズ〔例えば最終の接続配管300(302)が円筒状の配管である場合には内径〕である。
本実施の形態において、最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)は、第4サイズが何れも等しい又は略等しい配管である。
詳しくは、各塗布槽10〜10は、平面視で円形状の塗布槽であり、最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)は、内径が何れも等しい又は略等しい円筒状の配管である。
そして、各塗布槽10〜10の第3サイズとしての内径をφc、最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の第4サイズとしての内径をφdとすると、塗布液Lに対するせん断に関与する式、例えば、次の式2の関係を満たすように、本実施の形態に係る浸漬塗布方法では、各塗布槽10〜10の内径φc及び最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内径φdを設定し、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100では、各塗布槽10〜10の内径φc及び最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内径φdが設定されている。
ここで、式2の演算式は、塗布槽10の内径φcを1辺とする立方体の体積に対する最終の接続配管300(この例では302)の内径φdを1辺とする立方体の体積の比率と見ることができる。
こうすることで、各塗布槽10〜10内と最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)内との塗布液Lの流量差や塗布液Lが受けるせん断力の差を確実に小さくすることができ、それだけ各塗布槽10〜10内での塗布液Lの流量やせん断のバラツキを確実に小さくできる。従って、塗布液Lの状態(具体的には粘度や流量、分散状態、例えばフィラーの分散状態)のバラツキや、塗布液Lの流量の偏りを確実に抑制することができ、これにより塗布液Lの塗布ムラを確実に小さくすることができる。しかも、各塗布槽10〜10の直近に設けられた最終のマニホールド200(この例ではマニホールド202)と各塗布槽10〜10との間において各接続配管300〜300(この例では302〜302)を所定の設置方向(特に水平方向又は略水平方向)に設置し易くすることができ、また、通常考えられる各塗布槽10〜10への流量に対しても最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内径φdを適正なものにすることができ、所定の設置方向(特に水平方向又は略水平方向)に設置された接続配管300〜300(この例では302〜302)中において塗布液Lを均等又は略均等に送ることができる。
詳しくは、前記式2における計算式の値が0.010を下回ると、各塗布槽10〜10内と最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)内の流量差や塗布液Lが受けるせん断力の差が大きくなり過ぎ、各塗布槽10〜10内での塗布液の状態(具体的には粘度や流量)にバラツキが生じ易く、その結果、塗布液Lの分散状態(例えばフィラーの分散状態)もばらついてしまい、これにより各塗布槽10〜10間で塗布液Lの塗布ムラになり易い。
一方、前記式2における計算式の値が0.056を超えると、マニホールド200(201,202)から各塗布槽10〜10までの取り回し時に水平方向又は略水平方向に配管を設置することが難しく、通常考えられる各塗布槽10〜10への流量に対しても最終の各接続配管300〜300(この例では302〜302)の内径φdが大きくなりすぎるため、塗布液Lを水平方向又は略水平方向に送液する場合、配管中を均等に送液することが難しくなると考えられる。
本実施の形態において、各塗布槽10〜10と、各塗布槽10〜10の直近にそれぞれ設けられた接続配管300〜300(この例では302〜302)とは、各塗布槽10〜10の第3サイズ(この例では内径)の1/3以上の長さのレジューサ400〜400(図1及び図2参照)を介して接続されている。
こうすることで、各塗布槽10〜10内の下部において塗布液Lの滞留や乱流を効果的に防止することができ、これにより、塗布液Lを各塗布槽10〜10にスムーズに送ることができ、従って、不要な凝集を避けることができる。
この例では、塗布液状態調整手段36にて塗布液Lの状態(例えば塗布液Lの分散状態)が調整された塗布液Lは、マニホールド200(201,202)で均等に分配され、等流路の接続配管300〜300(301〜301,302〜302)及び各レジューサ400〜400を介して各塗布槽10〜10へ供給される。
なお、各分岐後配管220〜220から各塗布槽10〜10への接続は、取り回しを良くするという観点からい静電気防止のために導電性を付与した耐溶剤性チューブを用いることができる。折れや極端な曲げが生じないようチューブ継手やエルボ継手を併用してもよい。
[電子写真感光体]
次に、図1に示す浸漬塗布装置100により製造される電子写真感光体Fについて図9及び図10を参照しながら以下に説明する。
図9は、図1に示す浸漬塗布装置100にて塗布液Lが基体F1に塗布されることにより製造される電子写真感光体Fの一例の概略構成を示す縦断面図である。また、図10は、図10に示す電子写真感光体Fの一例の表面部分を拡大した部分断面図である。
浸漬塗布工程により製造される電子写真感光体Fは、単層型のものと、積層型のものとに大別されるが、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100は、特にどちらのタイプにおいても、画像特性の優れた電子写真感光体Fを製造することができる。
図9に示すように、電子写真感光体F(この例では電子写真感光体ドラム)は、被塗布物Eとしての円筒状の基体F1(具体的には導電性基体)及び基体F1の外周面に形成される感光層F2を含む複数の層からなる感光体本体F3(感光体ドラム本体)と、感光体本体F3の回転軸線方向における両端の開口部を閉塞しつつ支持する一対のフランジF4,F4とを備えている。
図10に示すように、電子写真感光体Fは、基体F1(E)と感光層F2とを有する。感光層F2は、基体F1の外周面上に形成される。
電子写真感光体Fは、この例では、積層型のものであり、感光層F2は、電荷発生層F21(具体的には電荷発生物質含有層)(図10参照)及び電荷輸送層F22(具体的には電荷輸送物質含有層)(図10参照)を含む。このような積層型の電子写真感光体Fは、電子写真の技術の分野において広く用いられている。
電荷発生層F21は、電荷を発生させる電荷発生物質を含む。電荷発生層F21は、基体F1上に積層される。電荷輸送層F22は、電荷発生層F21にて発生した電荷を輸送する電荷輸送物質を含む。電荷輸送層F22は、電荷発生層F21上に積層される。
本実施の形態に係る浸漬塗布装置100は、前述した電子写真感光体Fにおける各層以外の層の製造にも使用することができる。
例えば、電荷注入防止の目的で基体F1と電荷発生層F21との間に設けられる干渉防止層や下引き層(中間層とも称する)、最上位層に設けられる保護層についても本実施の形態に係る浸漬塗布装置100を用いて形成することができる。
次に、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100を用いて製造される電子写真感光体Fを構成する基体F1及び基体F1の上に設けられる各層について以下に説明する。
<基体>
基体F1は、電子写真感光体Fの電極としての役割を果たすとともに、外側に配置される層(例えば下引き層や感光層F2)の支持部材としても機能する。
基体F1の形状は、本実施の形態では円筒状であるが、円筒状に限定されるものではなく、円柱状、シート状又は無端ベルト状などであってもよい。
基体F1の構成材料として、例えば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金等の金属材料、アルミニウム合金などの合金、酸化錫及び酸化インジウム等の金属酸化物を用いることができる。
また、基体F1に用いることができる構成材料としては、これらの金属材料に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙材料、ガラスなどの非導電性材料からなる支持体表面に金属箔等の導電性膜をラミネートしたもの、ガラスなどの非導電性材料からなる支持体表面に金属材料や、導電性高分子、酸化錫、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着若しくは塗布したものなどを挙げることもできる。
これらの導電性材料は、予め定めた所定の形状に加工されることによって使用することができる。
基体F1の表面は、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理を施されてもよい。
ところで、光ビーム(具体的には半導体レーザ)などの光を出射する光出射装置を露光光源として用いる電子写真プロセスでは、光ビームの波長が揃っているので、電子写真感光体Fの表面Faで反射された光ビームと電子写真感光体Fの内部で反射された光ビームとが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。
この点、基体F1の表面に前記したような処理を施すことによって、波長の揃った光ビームの干渉による画像欠陥を効果的に防止することができる。
<下引き層>
ところで、基体F1と感光層F2との間に下引き層が存在しない場合、基体F1及び/又は感光層F2の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒点(いわゆる黒ぽち)などの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥を生じることがある。
この点、基体F1と感光層F2との間に下引き層を設けることによって、基体F1からの感光層F2への電荷の注入を効果的に防止することができる。
図11は、基体F1と感光層F2との間に下引き層F20を設けた電子写真感光体Fの一例の概略構成を示す縦断面図である。
図11に示す電子写真感光体Fにおいて、図9に示す電子写真感光体Fと実質的に同じ構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図11に示すように、基体F1と感光層F2との間に下引き層F20を設けることにより、感光層F2の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑えることができ、かぶりなどの画像欠陥の発生を効果的に防止することができる。
さらに、基体F1と感光層F2との間に下引き層F20を設けることによって、基体F1表面の凸凹を被覆して均一な表面を得ることができる。これにより、感光層F2の成膜性を高めることができ、かつ、感光層F2の基体F1からの剥離を抑えることができると共に、基体F1と感光層F2との接着性を向上させることができる。
下引き層F20には、例えば、各種樹脂材料からなる樹脂層又はアルマイト層などを用いることができる。
下引き層F20としての樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂及びポリアミド樹脂などの樹脂、並びに、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
また、下引き層F20としての樹脂層を構成する樹脂材料として、例えば、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース、ニトロセルロース及びエチルセルロースなどの樹脂も用いることができる。
これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。
好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロン及び12−ナイロンなどの、いわゆるナイロン、並びに、N−アルコキシメチル変性ナイロン及びN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などを挙げることができる。
そして、下引き層F20に電荷調整機能をもたせるために、フィラー、例えば、金属酸化物微粒子からなるフィラーを添加することができる。下引き層F20に添加するフィラーとして用いることができる金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化錫などの粒子を挙げることができる。金属酸化物微粒子の粒子径としては、例えば、0.01μm〜0.3μm程度が適当であり、好ましくは0.02μm〜0.1μm程度を挙げることができる。
下引き層F20は、例えば、前記したような樹脂材料を適当な溶剤中に溶解又は分散させて下引き層形成用の塗布液Lを調製し、得られた下引き層形成用の塗布液Lを基体F1の外周面に塗布し、乾燥により溶剤を除去することによって形成することができる。
下引き層F20に前記の金属酸化物微粒子などの粒子を含有させる場合には、例えば、前記の樹脂を適当な溶剤に溶解又は分散させて得られる樹脂溶中に、酸化チタン等の金属酸化物微粒子を分散させて下引き層形成用の塗布液Lを調製し、この塗布液Lを基体F1の表面に塗布することによって下引き層F20を形成することができる。
下引き層形成用の塗布液Lに用いることができる溶剤としては、例えば、水若しくは各種有機溶剤又はこれらの混合溶剤を用いることができ、詳しくは、水、又は、メタノール、エタノール若しくはブタノールなどのアルコールを単独で、或いは、水とアルコールとの混合溶剤、2種類以上のアルコール混液、アセトン若しくはジオキソランなどの溶剤とアルコールとの混合溶剤、ジクロロエタン、クロロホルム若しくはトリクロロエタンなどのハロゲン系有機溶剤とアルコールとの混合溶剤などを用いることができる。
これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
前記したようなフィラーを樹脂溶液中に分散させて分散液を得る手法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機又はペイントシェーカーなどを用いる一般的な分散手法を使用することができる。
また、例えば、前記したような分散液を微小空隙中に超高圧で通過させることによって発生する非常に強いせん断力を利用したメディアレスタイプの分散装置を利用することによって、より安定な分散塗布液を製造することが可能となる。
下引き層形成用の塗布液Lの浸漬塗布方法は、下引き層形成用の塗布液Lを満たした各塗布槽10〜10に基体F1を浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で引上げることによって基体F1の表面上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、電子写真感光体Fを製造する場合に多く利用されている。
なお、浸漬塗布方法に用いることができる浸漬塗布装置には、例えば、下引き層形成用の塗布液Lの分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けることができる。
下引き層F20の膜厚は、例えば、0.01μm〜20μm程度であることが好ましく、より好ましくは0.05μm〜10μm程度を挙げることができる。
下引き層F20の膜厚が0.01μm程度よりも薄いと、基体F1の凸凹を被覆して均一な表面性を得ることが困難となり、実質的に下引き層F20として機能し難く、基体F1からの感光層F2への電荷の注入を防止することが困難となり、感光層F2の帯電性の低下が生じるので好ましくない。
一方、下引き層F20の膜厚が20μm程度よりも厚いと、浸漬塗布方法による下引き層F20の形成が困難になると共に、下引き層F20上に感光層F2を均一に形成することが困難となり、電子写真感光体Fの感度が低下するので好ましくない。
従って、下引き層F20の膜厚の好適な範囲は、0.01μm〜20μm程度を例示できる。
<電荷発生層>
電荷発生層F21は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生層F21は、必要に応じて結着剤や添加剤を含有することができる。
電荷発生物質としては、例えば、有機系顔料を含む有機系光導電性材料及び無機顔料を含む無機系光導電性材料を挙げることができ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。
有機系光導電性材料としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料及びトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミド及びペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類及びチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機系光導電性材料を挙げることができる。
また、無機系光導電性材料としては、例えば、セレン及びその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、その他の無機光導電体を挙げることができる。
電荷発生物質は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー及びビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ及びフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルー及びメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルー及びメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料又はチオピリリウム塩染料などの増感染料と組み合わせて使用してもよい。
これらの電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
電荷発生層F21は、例えば、前記したような電荷発生物質を適当な溶剤中に分散させて電荷発生層形成用の塗布液Lを調製し、得られた電荷発生層形成用の塗布液Lを基体F1又は下引き層F20の外周面に塗布し、乾燥により溶剤を除去することによって形成することができる。
例えば、結着剤である結着樹脂を溶剤中に混合して得られる結着樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の手法によって分散して電荷発生層形成用の塗布液Lを調製し、得られた電荷発生層形成用の塗布液Lを基体F1の表面に塗布する手法を好適に用いることができる。
電荷発生層F21に用いることができる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、並びに、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。
電荷発生層F21に用いることができる結着樹脂は、これらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂を結着樹脂として使用することができる。これらの結着樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
電荷発生層形成用の塗布液Lに用いることができる溶剤としては、例えば、ジクロロメタン若しくはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン若しくはシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル若しくは酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)若しくはジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素類、又は、N,N−ジメチルホルムアミド若しくはN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、例えば、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上の混合溶剤として使用されてもよい。
電荷発生物質と結着樹脂とを含んで構成される電荷発生層F21において、電荷発生物質の重量W1と結着樹脂の重量W2との比率W1/W2は、例えば、10/100〜400/100程度であることが好ましい。
電荷発生物質の重量W1と結着樹脂の重量W2との比率W1/W2が10/100程度未満であると、電子写真感光体Fの感度が低下し易い。
一方、電荷発生物質の重量W1と結着樹脂の重量W2との比率W1/W2が400/100程度を超えると、電荷発生層F21の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し易い。そうすると、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着して微小な黒点が形成される画像(いわゆる黒ぽちと呼ばれる画像)のかぶりが多くなる。
従って、電荷発生物質の重量W1と結着樹脂の重量W2との比率W1/W2の好適な範囲は、10/100〜400/100程度を例示できる。
電荷発生物質は、結着樹脂溶液中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。
粉砕処理に用いられる粉砕機としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル及び超音波分散機などを挙げることができる。
また、電荷発生物質を結着樹脂溶液中に分散させる際に用いることができる分散機としては、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル及びサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択することができる。
電荷発生層形成用の塗布液Lの浸漬塗布方法は、電荷発生層形成用の塗布液Lを満たした各塗布槽10〜10に基体F1を浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で引上げることによって基体F1の表面上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、電子写真感光体Fを製造する場合に多く利用されている。
なお、浸漬塗布方法に用いることができる浸漬塗布装置には、例えば、電荷発生層形成用の塗布液Lの分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けることができる。
電荷発生層F21の膜厚は、例えば、0.05μm〜5μm程度であることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μm程度を挙げることができる。
電荷発生層F21の膜厚が0.05μm程度未満であると、光吸収による電荷発生効率が低下し易く、電子写真感光体Fの感度が低下し易い。一方、電荷発生層F21の膜厚が5μm程度を超えると、光の吸収効率が低下し易い上、電荷発生層F21内部での電荷移動が感光層F2の表面電荷を消去する過程の律速段階となり、電子写真感光体Fの感度が低下し易い。従って、電荷発生層F21の膜厚の好適な範囲は、0.05μm〜5μm程度を例示できる。
<電荷輸送層>
電荷発生層F21の外周面には電荷輸送層F22が設けられる。電荷輸送層F22は、電荷発生層F21に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れて電子写真感光体Fの表面Fa(図10及び図11参照)まで輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させる結着樹脂とを含む。
電荷輸送層F22には、耐摩耗性等を向上させる目的として、フィラー粒子を添加することができる。
また、電荷輸送層F22には、酸化防止剤、増感剤や必要に応じて可塑剤又はレべリング剤などの各種添加剤を添加することができる。
また、電荷輸送層F22には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。すなわち、成膜性、可撓性、表面平滑性を向上させるために、可塑剤又はレベリング剤などを電荷輸送層F22に添加してもよい。
電荷輸送層F22に用いることができる可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン及びエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。
また、電荷輸送層F22に用いることができるレベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
電荷輸送物質としては、例えば、エナミン誘導体、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体及びベンジジン誘導体などを挙げることができる。これらの電荷輸送物質は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
電荷輸送層F22に用いることができる結着樹脂としては、例えば、透明性や耐刷性に優れるなどの理由から、当該技術分野で周知のポリカーボネートを主成分(第1成分)とするポリカーボネート樹脂を好適に選択することができる。
その他に、ポリカーボネート樹脂以外に第2成分である結着樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂、又は、これらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート骨格とポリジメチルシロキサン骨格とを有する共重合体樹脂、又は、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などを挙げることができる。これらの結着樹脂は、単独で使用されてもよく、また2種以上の混合物として使用されてもよい。
なお、「ポリカーボネートを主成分とする」とは、電荷輸送層F22を構成する総結着樹脂中におけるポリカーボネート樹脂の重量%が、最も高い割合を占めることを意味し、好ましくは、50重量%〜90重量%程度の範囲であることを意味する。また、「第2成分である結着樹脂」とは、電荷輸送層F22を構成する結着樹脂の合計重量に対して、ポリカーボネート樹脂の含有量より低く、10重量%〜50重量%程度の範囲で用いられ得る結着樹脂を意味する。
また、電荷輸送層F22における電荷輸送物質と結着樹脂との割合としては、好ましくは重量比で10/18〜10/10程度を例示できる。
電荷輸送層F22が、電子写真感光体Fの最外層である場合には、電荷輸送層F22の耐摩耗性等を向上させる目的で、フィラー粒子を添加することができる。フィラー粒子には、大別して、有機系フィラー粒子と金属酸化物を中心とする無機系フィラー粒子とがある。
電荷輸送層F22の耐摩耗性を向上させるための機械的特性の観点からは、フィラー粒子として、硬度が比較的高い金属酸化物を用いるほうが有利である場合が多い。
しかしながら、フィラー粒子が電荷輸送層F22に添加される場合には、電荷輸送層F22の電気特性などの特性を損なわないといった以下の要件がフィラー粒子に求められる。
すなわち、電荷輸送層F22内での比誘電率が、有機系感光体の平均的な比誘電率(εr)≒3より著しく大きい(例えば、εr>10)フィラー粒子を用いると、電荷輸送層F22における誘電率が不均一となって電気特性に弊害が生じると考えられる。
従って、比較的比誘電率の小さいフィラー粒子の方が、電荷輸送層の電気特性に大きな弊害を生じることなく電荷輸送層F22に好適に使用できると考えられる。
よって、電荷輸送層F22に添加するフィラー粒子としては、有機系フィラー粒子の方が、一般に比誘電率が高い金属酸化物を中心とする無機系フィラー粒子より有利である。
また、電子写真感光体Fの最外層に潤滑性を付与することを目的とする場合には、フッ素系微粒子(フッ素系樹脂微粒子)が潤滑性に優れている。
電荷輸送層F22に添加するフィラー粒子であるフッ素系樹脂微粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)微粒子を好適に使用することができる。
フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)を電荷輸送層F22に添加する場合には、光散乱及び電荷輸送層F22内での電気的キャリアへの弊害をできるだけ少なくするため、粒子径が小さいフィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)を使用することが好ましい。
フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)の1次粒子の平均粒径としては、例えば、0.1μm〜0.5μm程度、より好ましくは、0.2μm〜0.4μm程度を例示できる。
こうすることで、フィラーの凝集を適度なものにすることができる。例えば、電子写真感光体Fにおける感光層F2において光散乱及び電気的キャリアへの弊害を抑制することができる。
1次粒子の平均粒径が0.1μm未満では、微粒子同士の凝集が激しく極めて分散し難く、また分散液の分散安定性が低くなり易い。一方、1次粒子の平均粒径が0.5μmより大きいと、分散そのものが難しく、分散できない凝集体が塗布液L中で沈降してしまい易い。そうすると、感光層F2の表面での凸凹の塗布欠陥を生じてしまう。
また、フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子)の1次粒子の平均粒径が0.1μm程度より小さくなると、1次粒子同士の凝集が顕著になり光散乱が大きくなり易い。一方、フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子)の1次粒子の平均粒径が0.5μm程度より大きくなると、それに伴い1次粒子による光散乱が大きくなり易い。従って、フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子)の1次粒子の平均粒径の好適な範囲は、0.1μm〜0.5μm程度を例示できる。
特に、電荷輸送物質、結着樹脂及びフィラー(例えばフッ素系樹脂)を含む電荷輸送層F22中において、フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)の1次粒子の平均粒径が0.1μm〜0.5μm程度で、かつ、定方向接線径が1μm〜3μm程度のフィラー凝集体の個数が、全フィラー粒子数(例えば全フッ素系樹脂微粒子数)の10%〜40%程度含まれることが好ましい。
ここで、フィラー粒子の1次粒径の平均粒径は、例えば、電子顕微鏡〔例えば走査型電子顕微鏡[S−4800](株式会社日立ハイテクノロジーズ製)〕を用いて撮影した多数個数(例えば数十個〜数百個程度)の任意のフィラー粒子の外接四角形の辺の長さ(水平フェレ径及び/又は垂直フェレ径)を平均した値とすることができる。
図12は、電子写真感光体Fの感光層F2の最表面層におけるフィラー粒子である4フッ化エチレン樹脂微粒子及びフィラー凝集体の分散状態を示す模式図である。
本実施形態に係る電子写真感光体Fの最表面層における深さ方向(厚さ方向)のフィラー凝集体の個数のフッ素系樹脂微粒子数に対する含有率(%)は、例えば、以下の手法により測定することができる。
すなわち、電子写真感光体Fから感光層F2を、イオンミリング装置[E−3500](株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、断面だしを行った後、切片を調製して、測定用サンプルとする。
測定用サンプルにおける表面層の厚み方向における断面を、走査型電子顕微鏡[S−4800](株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧:1keV無常着で観察する。
図13は、電子写真感光体Fの感光層F2の最表面層におけるフィラー粒子であるフッ素系樹脂微粒子及びフィラー凝集体の1次凝集の分散状態の断面写真である。図13(a)は、感光層F2の最表面層を全体的に示す写真であり、図13(b)は、その部分拡大写真である。
図14は、電子写真感光体Fの感光層F2の最表面層におけるフィラー粒子であるフッ素系樹脂微粒子及びフィラー凝集体の2次凝集の分散状態の断面写真である。図14(a)は、感光層F2の最表面層を全体的に示す写真であり、図14(b)は、その部分拡大写真である。
図13及び図14に示す断面写真における最表面層全体のフィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子)の総個数を求め、そのうち定方向接線径(図13参照)が1μm〜3μm程度のフィラー凝集体の個数を求めることで、フィラー凝集体のフィラー粒子に対する割合(%)を算出することができる。
定方向接線径が1μm〜3μm程度のフィラー凝集体の個数のフィラー粒子の個数に対する含有率(%)が、例えば、10%〜40%程度であれば、好適であり、15%〜38%程度であると、より好適である。
フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)が、例えば、電荷輸送層F22における全固形成分の1重量%〜30重量%程度、より好ましくは5重量%〜17重量%程度、さら好ましくは8重量%〜12重量%程度の範囲で含有されることによって、耐刷性に優れ、かつ、電気特性の安定化を両立することができる電子写真感光体Fを提供することができる。
電荷輸送層F22におけるフィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)の含有濃度が、1重量%程度未満であると、フィラー粒子の添加による感光体の耐摩耗性の改善効果を期待し難い。一方、電荷輸送層F22におけるフィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)の含有濃度が、30重量%を超えると、電子写真感光体Fの電気特性の悪化が顕著となり、画像形成装置における実使用に耐え難い。
また、フィラー粒子(例えばフッ素系樹脂微粒子、具体的には4フッ化エチレン樹脂微粒子)を分散させて分散液を得る手法としては、例えば、下引き層F20に添加する酸化物微粒子と同様に、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機又はペイントシェーカーなどを用いる一般的な手法を使用することができる。
また、例えば、前記したような分散液を微小空隙中に超高圧で通過させることによって発生する非常に強いせん断力を利用したメディアレスタイプの分散装置を利用することによって、より安定な分散塗布液を製造することが可能となる。
電荷輸送層F22は、前記の電荷発生層F21を形成する場合と同様に、例えば、適当な溶剤中に、電荷輸送物質、結着樹脂、フィラー粒子、及び/又は、添加剤を溶解又は分散させて電荷輸送層形成用の塗布液Lを調製し、得られた電荷輸送層形成用の塗布液Lを電荷発生層F21の外周面に塗布し、乾燥により溶剤を除去することによって形成することができる。
電荷輸送層形成用の塗布液Lに用いることができる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン及びジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、並びに、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤(溶媒)などを挙げることができる。これらの溶剤(溶媒)は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。
また、前記したような溶剤(溶媒)に、必要に応じて、アルコール類、アセトニトリル又はメチルエチルケトンなどの溶剤(溶媒)をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤を好適に用いることができる。
電荷輸送層F22の膜厚としては、例えば、5μm〜40μm程度、より好ましくは10μm〜30μm程度を例示できる。
電荷輸送層F22の膜厚が5μm程度未満であると、帯電保持能が低下し易いので好ましくない。一方、電荷輸送層F22の膜厚が40μm程度を超えると、電子写真感光体Fの解像度が低下し易いので好ましくない。従って、電荷輸送層F22の膜厚の好適な範囲は、5μm〜40μm程度を例示できる。
本実施の形態において、フィラーの濃度がフィラーを分散させた塗布液Lの固形分濃度に対して6%〜12%(重量%)であることが好ましい。
こうすることで、フィラーの粒度分布バラツキやフィラーの濃度ムラ或いはそれに伴う塗布液Lの粘度バラツキ、並びに、各塗布槽10〜10内及び各塗布槽10〜10間での流量バラツキによる塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラを抑制することができる。従って、塗布液Lの粘度、並びに、各塗布槽10〜10内及び各塗布槽10〜10間での流量を均一にすることができ、これにより、各被塗布物E〜E間の塗膜の膜厚バラツキを小さくすることができ、塗布液Lの塗布ムラを可及的に小さくでき、ひいては、均一又は略均一な膜厚の塗膜を形成することができる。
<感光層に対する添加剤>
感光層F2の各層(例えば電荷発生層F21及び電荷輸送層F22)には、感度の向上を実現させ、さらに繰返し使用による残留電位の上昇及び疲労などを抑えるために、電子受容物質及び色素などの増感剤を1種又は2種以上添加してもよい。
感光層F2の各層に用いることができる電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環若しくは複素環ニトロ化合物、又は、ジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。また、これらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。
感光層F2の各層に用いることができる色素としては、例えば、キサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系顔料又は銅フタロシアニンなどの有機系光導電性化合物を用いることができる。これらの有機系光導電性化合物は光学増感剤として機能させることができる。
また、感光層F2の各層には、酸化防止剤又は紫外線吸収剤などを添加してもよい。特に電荷輸送層F22には、酸化防止剤又は紫外線吸収剤などを添加することが好ましく、各層を塗布によって形成する際の電荷輸送層形成用の塗布液Lの安定性を高めることができる。
さらに、酸化防止剤の電荷輸送層F22への添加により、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに対する感光層の劣化を低減することができる。
電荷輸送層F22に用いることができる酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物又はアミン系化合物などを挙げることができる。これらの中でも、ヒンダードフェノール誘導体若しくはヒンダードアミン誘導体又はこれらの混合物を好適に用いることができる。
<浸漬塗布装置による浸漬塗布動作の説明>
図1に示すように、浸漬塗布装置100は駆動状態において、一定の回転数で回転する供給駆動部33によって、貯留部31内から塗布液Lが供給経路32を通って各塗布槽10〜10内へ所定の流量で継続して供給される。
塗布液Lは、各塗布槽10〜10内からオーバーフローして塗布液回収部41にて回収され、塗布液回収部41から塗布液Lが循環経路42を通って貯留部31内へ戻され、このように塗布液Lは、貯留部31と浸漬塗布装置100との間で循環する。
浸漬塗布工程の前には、事前に塗布液Lの循環を行い、各塗布槽10〜10内の塗布液Lの分散状態の調整が行われる。塗布液Lの分散状態の確認と管理は、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、型式:マイクロトラックMT3000II)を用いて粒度分布を測定することができる。
凝集体は、通常であれば、1次凝集から順次2次凝集、3次凝集と進行するため、特定範囲の粒径の累積頻度を管理することで、塗布液Lの分散状態を調整及び/又は維持することができる。ここで、1次凝集、2次凝集、3次凝集、…は、凝集が進むにつれて順次現れてくる粒度分布の形状で見分けることができる。
詳しくは、各塗布槽10〜10よりサンプリングした塗布液Lの粒度分布を前述の粒度分積計で測定し、塗布液Lの粒度分布が所望の範囲内になるように、塗布液状態調整手段36において、前述したように、塗布液Lにせん断を与えることにより、塗布液Lの分散状態の調整が行われる。
ここで、粒度分布の所望の範囲となる塗布液Lの分散状態は、例えば、塗布液Lの塗布後の感光層F2中において、定方向接線径が1μm〜3μm程度のフィラー凝集体(例えばフッ素系樹脂微粒子凝集体)の個数が全フィラー粒子数(例えば全フッ素系樹脂微粒子数)の10%〜40%程度含まれる範囲となる塗布液Lの分散状態とすることができる。かかる塗布液Lの粒度分布では、例えば、2次凝集体の累積頻度が15%〜45%程度の範囲となる。
図15は、塗布液Lの分散状態を粒度分布により示したグラフである。図15(a)は、塗布液Lの作製時の分散状態を示しており、図15(b)は、塗布液Lの分散状態の調整値付近を示しており、図15(c)は、凝集が進んだ塗布液Lの分散状態を示しており、図15(d)は、凝集がさらに進んだ塗布液Lの分散状態を示している。
図15に示すように、塗布液Lは、塗布液Lの作製時には1次凝集体の正規分布になっている〔図15(a)参照〕。そして、凝集が進むことにより2次凝集体が増加し、2山分布となる〔図15(b)から図15(d)参照〕。詳しくは、循環している塗布液Lは各種の配管等によりせん断を受けるため2次凝集体を含んだ2山分布となっている。そこで、塗布液状態調整手段36において、粒度分布を調整したい方向に応じて、せん断破壊又はせん断凝集が起こるせん断を塗布液Lに与えることにより、粒度分布が所望の範囲内〔例えば図15(b)参照〕になるようにし、循環を行う。
各塗布槽10〜10内における塗布液Lが分散状態で満たされ後、被塗布物E〜Eを浸漬し、引上げて塗布液Lの塗布を行うことができる。また、各塗布槽10〜10内における塗布液Lの分散状態が安定する循環条件にしておくことで、浸漬塗布工程を連続して行うことができる。塗布液Lの分散状態の調整は、塗布液状態調整手段36と循環流量とを組み合わせて行うことができる。これにより、塗布液Lの分散状態を安定化させ易くすることができる。
一方、昇降部20の上昇待機位置にある保持部212に被塗布物Eの上端を取り付けることにより、被塗布物Eを昇降部20にセットし、昇降駆動部222を駆動して係止部材221を一方向に回転させることにより支持部211を降下させ、被塗布物E〜Eの下端を塗布液回収部41の開口部412aに挿通し、被塗布物E〜Eの全体を各塗布槽10〜10内における塗布液L中に浸漬する。このとき、被塗布物E〜E〔この例では基体F1(図9から図11参照)〕の全体を塗布液Lに浸漬させる。
昇降部20は、被塗布物E〜Eの全体が塗布液L中に浸漬したところで、係止部材221が逆回転して降下動作から上昇動作に切り換わり、塗布液L中から被塗布物E〜Eを引き上げる。なお、昇降部20による被塗布物Eの浸漬速度及び引き上げ速度は必要に応じて多段階に変速して行ってもよい。
被塗布物E〜Eが上昇待機位置まで上昇したところで昇降駆動部222が停止し、保持部212から塗布液Lが塗布された被塗布物E〜Eを取り外し、乾燥処理及び/又は加熱処理して塗膜を形成し、次の被塗布物E〜Eを保持部212にセットする。これ以降は、前記と同様にして被塗布物E〜Eの表面Eaに塗布液Lを塗布して塗膜を形成する。
ところで、浸漬塗布工程において、塗布液Lは、被塗布物E〜Eとの接触面からもせん断を受けることになる。これにより凝集が起こる場合がある〔図15(c)参照〕。このため、浸漬時と引上げ塗布時の循環流量を変更してもよく、このときは、塗布中に各塗布槽10〜10内における塗布液Lの分散状態が変化しない範囲の流量にすることができる。また、かかる凝集は、塗布速度の他、各塗布槽10〜10の容積も関係するので、各塗布槽10〜10の容積を変更する場合は、設備条件や塗布条件も考慮して行うことができる。この場合、浸漬塗布工程と次の浸漬塗布工程との間において、各塗布槽10〜10内における塗布液Lの分散状態を一定になるよう保つことができ、浸漬塗布工程と次の浸漬塗布工程との間の時間内にできるような循環条件にしておくことが好ましい。
電子写真感光体Fを製造する場合、被塗布物Eとして図11で説明した基体F1を用い、基体F1の外周面に下引き層F20、電荷発生層F21、電荷輸送層F22を順次形成して感光層F2を形成する。
下引き層F20の形成に際しては、塗布液Lとして下引き層形成用の塗布液Lを用い、前記のように基体F1の外周面に下引き層形成用の塗布液Lを浸漬塗布し、乾燥処理及び/又は熱処理して下引き層F20を形成する。
電荷発生層F21、電荷輸送層F22の形成に際しても、各層を形成する塗布液Lを用いて、下引き層F20と同じ要領で形成する。
(第3実施形態)
図16は、第3実施形態に係る浸漬塗方法を実施する浸漬塗布装置100の概略構成を示す一部断面を含む斜視図である。図17は、図16に示す浸漬塗布装置100における昇降部50の概略構成を示す側面図である。
第3実施形態に係る浸漬塗布装置100において、第1実施形態(第2実施形態)に係る浸漬塗布装置100と実質的に同じ構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図16及び図17に示す第3実施形態に係る浸漬塗布装置100は、図1及び図2に示す第1実施形態(第2実施形態)に係る浸漬塗布装置100と異なる点は、昇降部50によって各塗布槽10〜10を昇降させる点であり、これ以外の構成は第1実施形態(第2実施形態)と概ね同様である。
第3実施形態に係る浸漬塗布装置100も、第1実施形態(第2実施形態)に係る浸漬塗布装置100と同様に、塗布液Lの分散状態の調整後、マニホールド200(図16参照)と等流路長の接続配管300〜300とにより各塗布槽10〜10に塗布液Lを供給する構成となっている。
浸漬塗布装置100は、支持固定部510(具体的には支柱部材)と、支持固定部510に支持される支持部211(具体的には支持板)と、支持部211の先端側の下面211aに連設されて複数の被塗布物E〜E〔例えば複数の被塗布物E〜Eの上端面Eb〜Eb(図17参照)〕を着脱可能にそれぞれ保持する複数の保持部212〜212とを備えている。
<昇降部>
昇降部50は、複数の塗布槽10〜10を支持する支持機構51と、支持機構51を昇降させる駆動装置52とを備えている。この例では、昇降部50は、ボールネジ機構により被塗布物Eを昇降するようになっている。
支持機構51は、駆動装置52に接続される支持部511(具体的には支持板)を備えている。支持部511は、塗布槽10〜10と一体化された受け部411に固定されている。
駆動装置52は、係止部材521(この例では雄ネジ部を有するスクリューシャフト)と、係止部材521を駆動(この例では回転駆動)する昇降駆動部522(この例では駆動モータ)とを備えている。
支持機構51における支持部511には、係止部材521(この例では雄ネジ部)に係合(この例では螺合)する係合部511b(図17参照)(この例では雌ネジ孔)が設けられている。
かかる構成を備えた昇降部50では、昇降駆動部522にて係止部材521が一方向又は他方向に駆動(この例では正回転駆動又は逆回転駆動)することにより、支持部511と共に塗布槽10〜10を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに昇降させることができる。なお、昇降駆動部522として、駆動速度調整可能な駆動部、例えば、サーボモータを用いることができる。こうすることで、支持部511の昇降速度を容易に調整することができる。
詳しくは、係止部材521は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びている。支持部511は、水平方向H又は略水平方向Hに延びている。支持部511は、係止部材521に水平方向H又は略水平方向Hに沿って係合される。塗布槽10〜10は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びた状態で受け部411に固定されている。
支持機構51は、支持部511を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに沿って案内する案内部材523(この例ではガイドシャフト)と、係止部材521の下端521aを軸線回りに回転自在に支持し、かつ、案内部材523の下端523aを支持する支持台524とをさらに備えている。
支持機構51における支持部511には、案内部材523を挿通する挿通部511c(具体的にはガイド孔)が設けられている。案内部材523は、鉛直方向V又は略鉛直方向Vに延びている。係止部材521及び案内部材523は、互いに平行又は略平行になるように支持台524に支持されている。支持台524には、昇降駆動部522が設けられている。
かかる構成を備えた昇降部50では、案内部材523にて支持機構51における支持部511を鉛直方向V又は略鉛直方向Vに沿って案内することにより、係止部材521にて支持機構51における支持部511を塗布槽10〜10と共に鉛直方向V又は略鉛直方向Vに確実に昇降させることができる。
なお、この例では、昇降部50は、ボールネジ機構により被塗布物Eを昇降するようにしたが、他の昇降機構、例えば、シリンダ機構、ボールネジ機構又はシリンダ機構と組み合わされたリンク機構などを用いてもよい。
第3実施形態に係る浸漬塗布装置100の場合、濾過器35以降の配管は各塗布槽10〜10と連動して昇降することが好ましい。
詳しくは、浸漬塗布装置100において、塗布液供給部30(図16参照)において、濾過器35と塗布槽10〜10との間の供給経路32の少なくとも一部〔この例では濾過器35(図16参照)と塗布液状態調整手段36との間の給液路321(図16参照)〕は可撓性を有する材料で構成され、且つ、塗布槽10〜10と貯留部31(図16参照)〕との間の循環経路42の少なくとも一部は可撓性を有する材料で構成される。可撓性を有する供給経路32及び循環経路42は、例えば、耐溶剤性のゴム製又は軟質プラスチック製のフレキシブルパイプで構成することができる。この場合、貯留部31、供給駆動部33、圧力検知手段34、濾過器35は、固定した状態とすることができる。
なお、第1実施形態(第2実施形態)に係る浸漬塗布装置100では、被塗布物E〜Eを昇降させ、第3実施形態に係る浸漬塗布装置100では、塗布槽10〜10を昇降させるようにしたが、被塗布物E〜E及び塗布槽10〜10の双方を昇降させるようにしてもよい。
[画像形成装置]
次に、本実施の形態(第1実施形態から第3実施形態)に係る浸漬塗布装置100により製造された電子写真感光体Fを備える電子写真方式の画像形成装置60について図18を参照しながら以下に説明する。なお、画像形成装置60及びその動作について以下の記載事項に限定されるものではない。
<画像形成装置の構成>
図18は、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100により製造された電子写真感光体Fを備える画像形成装置60の概略構成を模式的示す断面図である。
図18に示すように、画像形成装置60は、電子写真感光体Fと、電子写真感光体Fの表面Faを帯電させる帯電手段(具体的には帯電器61)と、帯電器61によって帯電された電子写真感光体Fを露光して静電潜像を形成する露光手段(具体的には露光装置62)と、露光装置62によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段(具体的には現像器63)と、現像器63によって形成されたトナー像を記録紙等のシートP上に転写する転写手段(具体的には転写帯電器64)と、電子写真感光体Fに残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段(具体的にはクリーナ装置65)と、電子写真感光体Fに残留する電荷を除去する除電手段(具体的には除電器66)と、転写帯電器64によって転写されたトナー像をシートP上に定着して画像を形成する定着手段(具体的には定着器67)とを備えている。この例では、画像形成装置60は、モノクロのプリンタ(具体的にはレーザプリンタ)とされている。
なお、画像形成装置60は、図18に示す構成に限定されるものではない。この例では、画像形成装置60は、モノクロの画像形成装置であるが、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。具体的には、トナー像がそれぞれ形成される複数の電子写真感光体F〜Fを所定方向(例えば水平方向H又は略水平方向H)に並設した構成、所謂タンデム式のフルカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置60は、他のカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置60は、この例では、プリンタとしたが、例えば、電子写真プロセスを利用する種々の複写機、複合機、ファクシミリ装置であってもよい。
電子写真感光体Fは、画像形成装置60の本体フレーム(図示せず)に回転自在に支持され、駆動手段(図示せず)によって回転軸線α1回りに所定の回転方向R(図中時計方向)に回転駆動される。駆動手段は、例えば、電動機と減速歯車とを含んで構成され、回転駆動力を電子写真感光体Fの基体F1に伝達することによって、電子写真感光体Fを所定の周速度で回転駆動させるようになっている。
電子写真感光体Fの周りには、回転方向Rにおける上流側から下流側に向かって帯電器61、露光装置62、現像器63、転写帯電器64、クリーナ装置65及び除電器66がこの順で設けられている。
帯電器61は、電子写真感光体Fの表面Faを高電圧印加手段(具体的には高電圧印加装置611)にて均一に所定の電位に一様に帯電させる帯電手段である。帯電手段としては、非接触帯電方式のもの及び接触帯電方式のものを例示できる。非接触帯電方式としては、例えば、帯電チャージャーによるコロナ帯電方式を挙げることができ、接触帯電方式としては、例えば、帯電ローラ若しくは帯電ブラシによる方式を挙げことができる。この例では、帯電器61は、帯電チャージャーを備えている。
露光装置62は、画像情報に基づいて変調された光LBを出射する露光手段である。この例では、露光装置62は、例えば、半導体レーザ若しくは発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を含む光源621、回転多面鏡622と、結像レンズ623と、ミラー624とを備えている。
露光装置62は、光源621から出力される光LBを回転多面鏡622によって走査し、結像レンズ623及びミラー624を介して帯電器61と現像器63との間の電子写真感光体Fの表面Faに照射することによって、一様に帯電された電子写真感光体Fの表面Faに画像情報に応じた静電潜像を形成する。結像レンズ623は、f−θ特性を有し、ミラー624を介して光源621からの光LBを感光体Fの表面Faに結像させる。ミラー624は、結像レンズ623からの感光体Fの表面Faに反射させる。
露光装置62は、画像情報に基づいて変調された光を回転駆動される電子写真感光体Fの表面Faに主走査方向である電子写真感光体Fの回転軸線α1方向に繰返し走査する。これにより、電子写真感光体Fの表面Faに静電潜像を形成することができる。
現像器63は、現像剤D(例えば2成分現像剤ではトナー及びキャリア、1成分現像剤ではトナー)を収容し、露光装置62によって電子写真感光体Fの表面Faに形成された静電潜像に現像剤Dによって現像する現像手段である。この例では、現像器63は、電子写真感光体Fの表面Faに対向するように設けられて電子写真感光体Fの表面Faに現像剤Dを供給する現像ローラ63aと、現像剤Dを収容する現像槽63b(具体的にはケーシング)とを備えている。現像槽63bは、現像ローラ63aを電子写真感光体Fの回転軸線α1と平行又は略平行な回転軸線α2回りに回転自在に支持している。
転写帯電器64は、現像器63によって電子写真感光体Fの表面Faに形成された可視像であるトナー像を搬送手段(具体的にはシート搬送系69)によって所定の搬送方向Cに搬送されるシートP上に転写させる転写手段である。転写手段は、高電圧印加手段641(具体的には高電圧印加装置)にて電子写真感光体Fと転写帯電器64との間に所定の高電圧を印加する。転写手段は、前述した帯電手段と同様に構成することができ、この例では、シートPにトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像をシートP上に転写させる接触式の転写手段とされている。
クリーナ装置65は、転写帯電器64による転写動作後に電子写真感光体Fの表面Faに残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段である。この例では、クリーナ装置65は、電子写真感光体Fの表面Faに残留するトナーを除去するクリーニングブレード65aと、クリーニングブレード65aによって除去されたトナーを収容する回収用ケーシング65bとを備えている。
除電器66は、クリーニング装置54によるクリーニング動作後に電子写真感光体Fの表面Faに残留する電荷を除去する。
定着器67は、転写帯電器64によりシートPに転写されたトナー像をシートPに定着させる定着手段である。定着器67は、搬送方向Cにおいて電子写真感光体Fと転写帯電器64との間の転写部よりも下流側に設けられている。この例では、定着器67は、加熱手段(具体的には加熱ローラ67a)と、加熱ローラ67aに対向して設けられる加圧手段(具体的には加圧ローラ67b)とを備えている。加圧ローラ67bは、加熱ローラ67aに押圧されて定着ニップ部Nを形成する。
また、画像形成装置60は、シートPを電子写真感光体Fから分離する分離手段(具体的には分離帯電器68)と、シートPを搬送するシート搬送系69と、画像形成装置60を構成する各構成要素を収容する筐体(具体的にはケーシング60a)さらに備えている。
分離帯電器68は、高電圧印加手段681(具体的には高電圧印加装置)にてシートPを電子写真感光体Fから分離するためにシートPに所定の高電圧を印加する。
シート搬送系69は、シートPを供給するシート供給部691と、シート供給部691からのシートPを定着器67に向けて搬送するシート搬送部692と、シート搬送部692からのシートPを外部に排出するシート排出部693とを備えている。
シート供給部691は、シートPを収容するシート収容部691a(具体的にはシートカセット)と、シート収容部691aにおけるシートPをシート搬送部692に供給する1枚ずつ供給するシート供給ローラ691b(具体的には給紙ローラ)とを有している。
シート搬送部692は、シート供給部691にて送られてきたシートPを一旦停止して電子写真感光体Fの表面Faに形成されるトナー像と同期をとって搬送するレジストローラ692aと、電子写真感光体Fと転写帯電器64との間の転写部からのシートPを定着器67に向けて搬送する搬送ベルト装置692bとを有している。
シート排出部693は、トナー像が形成されたシートPを載置する排紙トレイ693aを有している。
<画像形成装置の動作>
以上説明した画像形成装置60では、まず、電子写真感光体Fが駆動手段によって所定の回転方向Rに回転駆動されると、除電器66によって、電子写真感光体Fの表面Faが除電され、帯電器61によって、電子写真感光体Fの表面Faが所定の電位に均一に帯電される。
次いで、露光装置62から画像情報に応じた光が均一に帯電された電子写真感光体Fの表面Faに照射される。電子写真感光体Fの表面Faには、露光装置62にて光が照射されることにより、静電潜像が形成される。
電子写真感光体Fの表面Faに形成された静電潜像は、現像器63により現像され、電子写真感光体Fの表面Fa上にトナー像が形成される。
シート収容部691aからシート供給ローラ691bにより供給され、さらにレジストローラ692aにより送られてきたシートPは、電子写真感光体Fの表面Fa上に形成されたトナー像と同期して、電子写真感光体Fと転写帯電器64との間の転写部に供給される。
電子写真感光体Fの表面Faにおけるトナー像は、電子写真感光体Fと転写帯電器64との間の転写部に供給されたシートPを介して転写帯電器64にてトナー像の帯電極性とは逆極性の電荷が与えられることにより、シートP上に転写される。
トナー像が転写されたシートPは、分離帯電器68により電子写真感光体Fから分離され、定着器67に搬送される。定着器67に搬送されたシートPは、定着器67における加熱ローラ67aと加圧ローラ67bとの間の定着ニップ部Nを通過する際にトナー像が加熱及び加圧され、さらに、画像形成装置60の外部へ排出され、排紙トレイ693aに載置される。
一方、転写帯電器64によるトナー像の転写後に電子写真感光体Fの表面Fa上に残留するトナーは、クリーナ装置65にて電子写真感光体Fの表面Faから除去されて回収される。
そして、複数のシートPに連続して画像を形成する場合には、前記した一連の動作が繰返される。
本実施の形態によれば、たとえ電子写真感光体Fの最上層中にフィラー(具体的にはフッ素系樹脂微粒子)を含有させた場合でも、特定の範囲の定方向接線径の凝集体を形成することができ、これにより、感光層F2中の電荷トラップを低減することができる。その結果、繰り返し使用による感度悪化を抑制することができ、長期にわたり電気的に安定した電子写真感光体F及び電子写真感光体Fを備えた画像形成装置60を安定した品質で安価に提供することができる。
[実施例]
次に、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100の具体的な実施例1から実施例5を比較例1から比較例4と共に以下に説明する。但し、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100は、これらの実施例1から実施例5に限定されるものではない。
実施例1から実施例5及び比較例1から比較例4では、塗布液Lとして、下引き層形成用の塗布液L、電荷発生層形成用の塗布液L及び電荷輸送層形成用の塗布液Lを用い、基体F1に下引き層形成用の塗布液L、電荷発生層形成用の塗布液L及び電荷輸送層形成用の塗布液Lをこの順に塗布して基体F1上に下引き層F20、電荷発生層F21及び電荷輸送層F22を形成した電子写真感光体F(以下、単に感光体Fという。)を作製した。
(実施例1)
<下引き層の作製>
酸化チタン(商品名:タイベークTTO−D−1、石原産業株式会社製)3重量部及び市販のポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ株式会社製)2重量部を、メチルアルコール25重量部に加え、ペイントシェーカー(分散機)にて8時間分散処理し、下引き層形成用の塗布液L(100kg)を調製した。
得られた下引き層形成用の塗布液Lを各塗布槽10〜10の内径が60mmで取り数40本の浸漬塗布装置100により循環させ、基体F1として直径30mm、長さ340mmのアルミニウム製のドラム状支持体を下引き層形成用の塗布液Lに浸漬した後、引き上げ、自然乾燥して膜厚1μmの下引き層F20を形成した。
<電荷発生層の作製>
次に、電荷発生物質としてCuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.2°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニン1重量部及び結着樹脂(バインダー)としてブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−2、積水化学工業株式会社製)1重量部をメチルエチルケトン98重量部に混合し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理して電荷発生層形成用の塗布液L(100kg)を調製した。
得られた電荷発生層形成用の塗布液Lを、下引き層F20の形成の場合と同様にして、先に設けた下引き層F20の表面に塗布し、自然乾燥して膜厚0.3μmの電荷発生層F21を形成した。
<電荷輸送層の作製>
次に、1次粒子径約0.2μmを有する4フッ化ポリエチレン樹脂微粒子(ルブロンL2、ダイキン工業株式会社製)12重量部に粒子分散剤としてGF−400(東亞合成株式会社製)0.28重量部を加え、更に電荷輸送層の結着樹脂として、TS2050(帝人化成株式会社製)55重量部、及び、以下の式:
で表される化合物1(T2269:東京化成工業株式会社製、N,N,N',N',−テトラキス(4−メチルフェニル)ベンジジン)を電荷輸送物質として35重量部使用した。
そして、電荷輸送物質をテトラヒドロフラン(384重量部)に混合することで、固形分21重量%の懸濁液を作製した。その後、湿式乳化分散装置(NVL−AS160:吉田機械興業株式会製)を用いて、設定圧力が95MPaの条件にて5pass操作を行って分散処理を施した。これにより、電荷輸送層形成用の塗布液L(120kg)を調製した(分散処理された液を電荷輸送層形成用の塗布液Lとした)。
得られた電荷輸送層形成用の塗布液Lに、電荷発生層F21が形成されたドラム状支持体を浸漬した後、引き上げ、130℃で90分間乾燥して膜厚30μmの電荷輸送層F22を形成した。このようにして、図11に示す構造の感光体Fを作製した。
そして、本実施の形態に係る浸漬塗布装置100において、内径60mmの40個の塗布槽10〜10を用いて取り数40本の構成とした。各塗布槽10〜10への塗布液Lの供給は、以下の条件で行った。
すなわち、浸漬塗布工程と次の浸漬塗布工程との間の循環流量は、15L/分、塗布液状態調整手段36として分岐1段目のマニホールド200(201)の分岐前配管210に接続された内径35.7mmの供給経路32の配管内に内径8mm、厚み3mmのオリフィス構造を設けた。
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを23.0mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径23.0mmで長さ30cmのステンレス配管を使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを23.0mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを13.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd13.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
また、最終の接続配管300〜300(302〜302)の各塗布槽10〜10への接続部は、長さ20mmとなる40個のレジューサ400〜400を用いてレジューサ構造とした。
浸漬塗布条件は、浸漬塗布時の循環流量を10L/分とし、浸漬速度を10mm/secとし、塗布速度を1.5mm/sec〜2.5mm/secの範囲で膜厚30μmとなるよう調整した。かかる浸漬塗布工程を連続5回実施して、200本の感光体F〜Fを得た。
(実施例2)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを18.0mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径18.0mmで長さ30cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを18.0mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを13.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd13.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(実施例3)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを35.7mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径35.7mmで長さ30cmのステンレス配管を使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを35.7mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを16.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd16.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(実施例4)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを35.7mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径35.7mmで長さ30cmのステンレス配管を使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを35.7mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを23.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd23.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(実施例5)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を2分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、2個の分岐後配管220〜220の内径φbを35.7mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の2個のマニホールド200,200(202,202)との間の2個の接続配管300,300(301,301)として内径35.7mmで長さ20cmのステンレス配管を使用した。
分岐2段目の2個のマニホールド200,200(202,202)を2分岐のものとし、分岐前配管210,210の内径φaを35.7mm、各2個の分岐後配管(220,220),(220,220)の内径φbを35.7mmとした。分岐2段目の2個のマニホールド200,200(202,202)と分岐3段目の4個のマニホールド200〜200(203〜203)との間の4個の接続配管300〜300(302〜302)として内径23.0mmで長さ20cmのステンレス配管を使用した。
分岐3段目の4個のマニホールド200〜200(203〜203)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを35.7mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを16.0mmとした。分岐3段目の4個のマニホールド200〜200(202〜203)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300として内径φd16.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(比較例1)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを13.0mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径13.0mmで長さ30cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを13.0mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを10.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd10.0mmで長さ80cmのチューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(比較例2)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを15.0mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径15.0mmで長さ30cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを15.0mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを13.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd13.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(比較例3)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを35.7mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径35.7mmで長さ30cmのステンレス配管を使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを35.7mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを13.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd13.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
(比較例4)
<マニホールド及び接続配管の構成>
分岐1段目のマニホールド200(201)を4分岐のものとし、分岐前配管210の内径φaを35.7mm、4個の分岐後配管220〜220の内径φbを40.0mmとした。分岐1段目のマニホールド200(201)と分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)との間の4個の接続配管300〜300(301〜301)として内径40.0mmで長さ30cmのステンレス配管を使用した。
分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)を10分岐のものとし、分岐前配管210〜210の内径φaを40.0mm、各10個の分岐後配管(220〜220)〜(220〜220)の内径φbを16.0mmとした。分岐2段目の4個のマニホールド200〜200(202〜202)と40個の塗布槽10〜10との間の最終の40個の接続配管300〜300(302〜302)として内径φd16.0mmで長さ80cmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。
これら以外は実施例1と同様に行った。
<評価>
実施例1から実施例5及び比較例1から比較例4で作製した各感光体Fの作製において、以記の評価項目によって評価した。
≪評価項目1:各塗布槽10〜10間での塗布液Lの分散状態のバラツキ評価≫
評価項目1では、各塗布槽10〜10より、塗布液Lの循環中に各塗布槽10〜10からオーバーフローする塗布液Lを数ccサンプリングし、粒度分布を測定して2次凝集体の累積頻度を求めた。そして、以下の基準にて評価を行った。
VG:非常に良好である。(2次凝集体の累積頻度が15%〜45%範囲内で各塗布槽10〜10間のバラツキが5%以内)
G:良好である。
(2次凝集体の累積頻度が15%〜45%範囲内で各塗布槽10〜10間のバラツキが10%以内。)
NB:やや良好である。
(2次凝集体の累積頻度が15%〜45%範囲内で各塗布槽10〜10間のバラツキが15%以内。)
B:良好でない。
(2次凝集体の累積頻度のバラツキが15%以上、又は、2次凝集体の累積頻度が45%以上となる塗布槽10が1ケ所以上ある。)
≪評価項目2:感光体Fの膜厚の均一性評価≫
評価項目2では、作製した感光体Fの膜厚測定を実施した。膜厚測定は、軸方向で40mm、170mm、300mmの位置、円周方向で30°毎に行った。感光体F内の膜厚バラツキを確認し、各感光体F〜Fの平均膜厚より各塗布槽10〜10間での膜厚バラツキを求めた。以下の基準にて評価を行った。
VG:非常に良好である。
(各感光体F〜F内の膜厚バラツキが1μm以内で、且つ、各塗布槽10〜10間での各感光体F〜Fの平均膜厚バラツキが1μm以内。)
G:良好である。
(各感光体F〜F内の膜厚バラツキが1μm以内で、且つ、各塗布槽10〜10間での各感光体F〜Fの平均膜厚バラツキが3μm以内。)
NB:やや良好である。
(各感光体F〜F内の膜厚バラツキが2μm以内で、且つ、各塗布槽10〜10間での各感光体F〜Fの平均膜厚バラツキが3μm以内。)
B:良好でない。
(各感光体F〜F内の膜厚バラツキが3μm以上、又は、各塗布槽10〜10間での各感光体F〜Fの平均膜厚バラツキが5μm以上。)
≪評価項目3:各感光体F〜Fの目視検査≫
評価項目3では、各条件で作製した200本の感光体Fの目視検査を実施し、電荷輸送層F22に関わる塗布ムラや塗布欠陥の有無を調べ、以下の基準にて評価を行った。
VG:非常に良好である。
(塗布ムラ、塗布欠陥がない。)
G:良好である。
(実使用上問題ない範囲の塗布ムラ、塗布欠陥がある。)
NB:やや良好である。
(実使用上問題となる塗布ムラ、塗布欠陥が10本以下ある。)
B:良好でない。
(実使用上問題となる塗布ムラ、塗布欠陥が10本以上ある。)
−総合判定−
総合判定では、以上の各評価項目の評価結果を考慮して、以下の判断基準により総合的に判定した。
VG:非常に良好である。
(前記した4項目の評価において評価基準VGを2つ以上含み、NBとBを含まない。)
G:良好である。
(前記した4項目の評価においてBを含まない。)
B:実使用不可である。
(前記した4項目の評価において評価基準Bを1つ以上含む。)
表1に分岐条件、前記式1の値、各評価項目での評価結果及び総合判定結果を示す。
表1に示すように、前記式1の関係を満たしている実施例1〜5では、何れも総合判定でVG(非常に良好)又はG(良好)の評価を得た。これに対し、分岐1段目及び分岐2段目の何れも前記式1の関係を満たしていない比較例1,2、分岐2段目で前記式1の関係を満たしていない比較例3、分岐1段目で前記式1の関係を満たしていない比較例4では、何れも総合判定でB(実使用不可)の評価となった。
以上のことから、前記式1の関係を満たすことで、塗布液Lの状態のバラツキによる各被塗布物E〜E間での塗布液Lの塗布ムラ、すなわち塗膜の膜厚ムラ等の不都合を低減できることが分かった。
なお、本実施の形態では、電子写真感光体を製造する電子写真感光体製造装置を実施例として挙げているが、本発明に係る浸漬塗布装置は、被塗布物を電子写真感光体の基体として電子写真感光体を製造するものに限定されるものではなく、浸漬塗布方法で作製されるもの、例えば、光触媒薄膜を作製するものや、電極用の酸化亜鉛薄膜を製造するもの、飲料分野、医療分野など、あらゆる技術分野のものに適用可能である。
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、かかる実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。