JP4414366B2 - 電子写真感光体製造装置及び製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体製造装置及び製造方法に関する。
電子写真感光体の塗工には、一度に大量に生産するために浸漬塗工法が用いられている。
浸漬法の問題としては、塗工槽内に局所的に粘度上昇した塗布液のよどみが発生してしまうことがあり、これは、チキソトロピー性塗布液を循環した際にも生じ、これを避けるため、塗工液の流れを制御して液のよどみが発生しないようにすることが必要となる。
よどみが発生したまま生産を続けると、円筒状基体を浸漬塗付時に粘度上昇した塗布液が基体表面に付着し、塗膜厚みムラとなり、複写機にて画像出しすると画像濃淡ムラとして品質面の致命的な問題が生じる。
また、塗工槽内のよどみを除去しようとして、生産を止め内部を攪拌すれば生産性の問題となり、もしくは塗工槽内に攪拌用インペラ等を設置したとしてもインペラの摺動部からの異物発生、インペラにより槽内が乱流となり基体に流れムラ発生等の他の欠陥を発生させてしまう。
チキソトロピー性の塗布液を使用した際、液の性質上、静置しておけばゲル状に固まって粘度上昇し、揺り動かすと、動いている間だけゾルに変わって流動性が現れる。このため、局所的な粘度上昇は、塗工槽内が整流化されずに液の流動がほとんど無く渦となるような流れのよどみ箇所があると発生する。
また、近年好まれている高感度、高解像度な感光体を製造するには均一な塗膜厚みが要求され塗工槽内のよどみの改善が重要視されるが、特にCGL層を塗工する場合に大きな問題となる。
特許文献1には、球状物体の集合した整流層を設け、塗工槽内の流れを整流化し均一な皮膜を有する製造装置により、特性に優れる電子写真用感光体を製造することが記載されているが、整流層全体に塗布液の流れを発生させることができなく、中心部に塗布液が流れやすく、壁面側の球状物体間の塗布液の流速が遅くなるため、チキソトロピー性塗布液を循環した際に壁面側の球状物体同士の隙間で塗布液の粘度上昇が発生する。このことにより、粘度上昇した塗布液が円筒状基体に付着すると濃淡ムラとなり、画像欠陥となる。
また、特許文献2〜4には、整流板を設けることで、槽内の流速をコントロールする技術が記載されているが、この技術では、整流板がテーパー部上部に一枚設置されるだけで充分と認識している。しかし、実際には、チキソトロピー性塗布液を循環した際に整流板の下方のテーパー部内で淀み個所が発生し塗布液の粘度上昇が発生する。このことにより、粘度上昇した塗布液が円筒状基体に付着すると濃淡ムラとなり画像欠陥となる。
また、特許文献5には、被塗布物を浸漬する際に、被塗布物下部付近の流れを塗布槽壁面方向に向かうように制御する方式として、逆円錐型フロートを塗布液面に浮かせておき被塗布物を浸漬する際に、共に浸漬し流れをつくることで、チキソトロピー性の塗布液を用いた浸漬塗工での濃淡ムラを防止することが記載されているが、生産効率を上げるため、塗布液を低粘度化し浸漬、引上げ速度を上げるとフロートと塗工槽内壁の隙間が狭いため、引上げ時に隙間の流速が一部分的に早くなり縦筋状の濃淡ムラが発生する。この技術は、発生した淀みを再度分散するものであって、淀みを根本的に発生させない技術ではない。
従来、顔料分散型の塗布液には、流れ等の力が加わると粘性が変化するチキソトロピー性の性質を持つものがあり、塗工槽内でチキソトロピー性塗布液を循環していると槽内に、塗布液の流速が遅くまた渦となる淀み箇所が発生すると、淀み部分の塗布液が粘度上昇してしまう。円筒状基体の浸漬引き上げを行い塗膜形成中にこの粘度上昇した塗布液が円筒状基体に付着すると濃淡ムラとなり画像欠陥となる。
従来、1枚の整流板もしくは球状物体による整流層にて塗工槽内の整流機構より上方の整流をおこなうものがあった。しかしこの方法では、塗布液流入配管口径から塗工槽口径に拡散する整流板下方のテーパー部やテーパー部壁面側の球状物体の隙間に塗布液の流速が遅くまた渦となる淀み箇所が発生する。この技術にてチキソトロピー性の塗布液を循環すると循環後時間が経つと淀み部の粘度が上昇し、塗工槽内の塗布液粘度が不均一となり、この塗布液が円周状基体に付着することで濃淡ムラとなっていた。
特開平8−320580号公報 特開平6−254459号公報 特開平10−43652号公報 特開2002−49162号公報 特開平10−48849号公報
従って、本発明の目的は、上記従来技術に鑑みて、塗工槽内の流れに淀みが発生しないように、塗布液の置換効率を高め塗布液の粘度上昇発生を防ぐことを可能となすことにあり、またそのため、多孔板、メッシュ等の整流板を槽内に2枚以上効果的に設置した塗工装置をすることにあり、さらに、この塗工技術を用いた電子写真感光体の製造装置、製造方法を提供することにある。
上記課題は、本発明の(1)「塗布液ストックタンク(1)よりポンプ(2)にて塗布液を塗工槽(4)下方より流入させ上端よりオーバーフローをさせて液面高さを制御し、且つ電子写真感光体基体をその中に浸漬して塗工可能な塗工槽を有する電子写真感光体製造装置であって、塗工槽(4)下方の塗布液流入配管(8)内径から塗工槽(4)内径までの内径の差がテーパー部(7)で繋がっており、塗工槽(7)内部に少なくとも2枚以上の整流板(3),(5)が設置され、前記テーパー部(7)の高さは、塗工槽(4)内径−塗布液流入配管(8)内径の2倍以上であることを特徴とする電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、()「前記整流板(3),(5)は、浸漬塗工中に前記電子写真感光体基体と干渉しないように、該感光体基体が浸漬最下端位置より下方に2枚以上設置されており、そのうちの最上部に設置される1枚(3)は、テーパー部(7)上方で塗工槽(4)内径と同程度の内径であり、そのうちの最下部に設置される1枚(5)は、テーパー部(7)下方で塗布液流入配管(8)内径と同程度の内径であり、また3枚以上設置する際は、上記2枚の間のテーパー部(7)内に1枚以上設置されていることを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、()「前記整流板は、多孔板もしくはメッシュであることを特徴とする前記第(1)項または第(項に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、()「前記多孔板およびメッシュは、耐溶剤性である材料もしくは耐溶剤性のコーティングが施されたものであることを特徴とする第()項に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。具体的な材料として、SUS304、SUS316、SUS303、アルミニウム、PTFE等材料や、テフロン(登録商標)コーティング、タフラム処理、アルマイト処理、カニゼンメッキ、カニフロンメッキ等の表面処理が施してあるものが挙げられる。
また、()「最上部の整流板(3)及び最下部の整流板(5)は、それぞれ、孔の形状及び配置が異なりかつ設置換え可能な複数枚の組からなり、塗工液の粘度等の性質に応じ、槽(4)内の流速が中心部と周辺部の流速がほぼ均一化されるように整流板(3)及び(5)の組み合せが選択可能であることを特徴とする前記第()項または第()項に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、()「多孔板及びメッシュの開口率は30%から60%、好ましくは40%〜50%の範囲であることを特徴とする前記第()項乃至第()項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、()「多孔板の孔径はφ0.5mm以上φ5mm以下の範囲であることを特徴とする前記第()項乃至第()項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。多孔板の孔径は好ましくはφ1.5mm〜φ3mmの範囲である。
また、()「メッシュは目開き0.5mm以上5mm以下の範囲であることを特徴とする前記第()項乃至第()項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。メッシュの目開きは、好ましくはφ1.5mm〜φ3mmの範囲である。
また、()「塗布液流入配管(8)は最下部の整流板(5)の下方に少なくとも15mm以上の直管部(D)が設けられていることを特徴とする前記第(1)項乃至第()項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、上記課題は、本発明の(10)「前記ポンプ(2)は、遠心力による送液を行う遠心式ポンプであることを特徴とする前記第(1)項乃至第()項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、(11)「前記遠心式ポンプ(2)は、インペラがモータからの駆動伝達にマグネットを使用したマグネットポンプであることを特徴とする前記第(1)項乃至第()項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、(12)「前記ポンプ(2)にはメカニカルシールなどの接触式軸シールを使用していないことを特徴とする前記第(1)項乃至第(11)項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、(13)「前記ポンプ(2)の接液部分は、耐溶剤性である材料もしくは耐溶剤性のコーティングが施されたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(12)項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
また、(14)「前記ポンプ(2)が、塗布液ストックタンク(1)と塗工槽(4)を前記塗工槽(4)における槽内平均流速が0.003m/s〜0.02m/sとなる様な流量で塗布液を循環させることを特徴とする前記第(1)項乃至第(13)項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置」により解決される。
さらに、上記課題は、本発明の(15)「前記第(1)項乃至第(14)項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置にて電子写真感光体を製造することを特徴とする電子写真感光体製造方法」により解決される。
また、(16)「前記ポンプ(2)により、塗布液ストックタンクと塗工槽(4)を前記塗工槽(4)における槽内平均流速が0.003m/s〜0.02m/sとなる様な流量で塗布液を常時循環させることを特徴とする前記第(14)項に記載の電子写真感光体製造方法」により解決される。
また、(17)「前記第(1)項乃至第(14)項のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置または前記第(15)項に記載の電子写真感光体製造方法にて製造されたものであることを特徴とする電子写真感光体」により解決される。
また、(18)「感光層が電荷発生層と電荷輸送層の積層構成からなる電子写真感光体であることを特徴とする前記第(17)項に記載の電子写真感光体」により解決される。
上記第(1)〜()項の電子写真感光体製造装置により、塗工槽内の流れを整流化し淀みの発生を抑えることで、塗布液の置換効率を高め塗布液の粘度上昇発生を防ぐことが可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置により、有機溶剤を使用した塗布液内での使用が可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置により、槽内の流速分布を調整可能とする。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置により、整流板全体から塗布液が上方に均一に抜けて流れるようになり、また、槽内の流速分布の調整も可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置により、多孔板全体から塗布液が上方に抜けて流れるようになり、また、槽内の流速分布の調整も可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置により、メッシュ全体から塗布液が上方に均一流速で抜けて流れるようになり、また、槽内の流速分布の調整も可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置により、整流板の下方に少なくとも15mm以上の直管部(ストレート部)(D)を設けることで、配管中にエルボ等を設置していても、均一な圧力を整流板面に与えることができる。よって、最下部の整流板(5)面を抜けた時点で流速分布が均一となる。
また、上記第(10)項の電子写真感光体製造装置により、送液と同時にインペラにて塗布液を攪拌する効果があり、液を均一物性にすることが可能となる。
また、上記第(11)項の電子写真感光体製造装置により、モータとポンプ部を分割することが可能となり、モータからの発熱による液温上昇を回避でき、均一な液温管理が可能となることと、液温上昇による粘度上昇を防ぐことが可能となる。
また、上記第(12)項の電子写真感光体製造装置により、接液部にシール部が存在しないため、シール部材料からの超鋼等のコンタミ混入を防ぐことが可能となる。
また、上記第(13)項の電子写真感光体製造装置により有機溶剤を使用した塗布液内で使用が可能となる。
また、上記第(15)項の電子写真感光体製造方法により、塗工槽内の液の置換効率を高め塗布液の粘度上昇発生を防ぐことが可能となる。
また、上記第(16)項の電子写真感光体製造方法により、粘度上昇の発生しない塗工槽にて浸漬塗布を行うことで、濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体を製造することが可能となる。
また、上記第(17),(18)項により、濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体により高画質な画像が得られる。
即ち、本発明は、2枚以上の整流板(3),(5)を設け、より好ましくはテーパー部長さ(A)、塗布液流入配管(8)のストレート部長さ(D)を規定することにより、塗布液が塗布液流入配管(8)から流入し塗工槽(4)内径に拡散しオーバフローする槽内の流れを整流化し淀みの発生を抑えることで塗布液の置換効率を高め塗布液の粘度上昇発生を防ぐことが可能となる。よって濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体を製造することが可能となる。
また、本発明はチキソトロピー性の塗布液体にて粘度上昇の濃淡ムラを防止することを目的としているが、粘度上昇を防止するうえで、塗工槽(4)内の流れの整流化を行い置換効率を高めるため槽内の異物の滞留防止、塗布液温度の安定化の効果も確認されており、ニュートン性液体にも活用可能である。
以下に、本発明を具体的に説明する。
図1に示されるように、上記第(1)項の具体例として、塗布液ストックタンク(1)よりポンプ(2)等の送液装置にて塗布液を塗工槽(4)下方(図では底部)より流入させ、上端よりオーバーフローをさせて液面高さを制御する塗工槽を有する電子写真感光体製造装置であって、塗工槽(4)下方の塗布液流入配管(8)内径から塗工槽(4)内径までの内径の差がテーパー部(7)で繋がっており、塗工槽(4)内部に少なくとも2枚の整流板(3)(5)が設置されていることで、槽(4)内の流れを整流化できる。整流板(3)(5)は、無論、塗工槽(4)のテーパー部(7)の所定位置に着脱自在であり、而して、例えば粘度が異なる塗工液のときには異なる目開き数のメッシュ板と入れ替えることができる。
図9に、整流板設置の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
数;設置箇所テーパー部上側及び下側の2枚
サイズ;上整流板外形φ59.5mm、下整流板外形φ24mm、厚さ共に1.5mm
穴径;整流板の穴径φ2mm
穴個数;上整流板の穴個数396個(P.C.D56.9mm:64個等配、P.C.D51.9mm:58個等配、P.C.D46.9mm:53個等配、P.C.D41.9mm:47個等配、P.C.D36.9mm:42個等配、P.C.D31.9mm:36個等配、P.C.D26.9mm:30個等配、P.C.D21.9mm:25個等配、P.C.D16.9mm:19個等配、P.C.D11.9mm:13個等配、P.C.D6.9mm:8個等配、中心:1個等配)で開効率45%、下整流板の穴個数50個(P.C.D21.4mm:24個等配、P.C.D16.4mm:19個等配、P.C.D11.4mm:13個等配、P.C.D6.4mm:7個等配、中心:1個等配)で開孔率45%
また、図2に示されるように、上記第()項の電子写真感光体製造装置の1具体例として、塗工槽(4)のテーパー部(7)の高さ(A)は、少なくとも塗工槽(4)の内径(B)−塗布液流入配管(8)の内径(C)以上、より好ましくは塗工槽(4)の内径(B)−塗布液流入配管(8)の内径(C)の2倍以上であることを特徴とすることで、槽内の流れをより整流化できる。
また、上記第()項の1具体例としては、図3に示されるように、上記整流板(3),(5)は、浸漬塗工中に電子写真感光体基体の下端と干渉しないように、電子写真感光体基体の浸漬最下端位置より下方に2枚以上設置されており、そのうちの最上部に設置される1枚(3)は、テーパー部(7)上方で塗工槽(4)内径(B)と同程度の内径であり、そのうちの最下部に設置される1枚(5)は、テーパー部(7)下方で塗布液流入配管(8)の内径(C)と同程度の内径である。また3枚以上設置する際は、上記2枚(3)、(5)の間のテーパー部(7)内に1枚以上設置され、槽(4)内の流れを、より円滑に整流化できる。
また、上記第()項の1具体例としては、上記第()項に記載の整流板(3)及び/又は(5)は、多孔板もしくはメッシュであることを特徴とし、これにより槽(4)内の流れを整流化できる。
また、上記第(としては、上記第(に記載の多孔板(3),(5)および(又は)メッシュは、耐溶剤性である材料もしくは耐溶剤性のコーティングが施されたものであることで、有機溶剤を使用した塗布液内での使用が可能となる。
また、上記第()項としては、上記第()項に記載の多孔板(3),(5)の孔形状、孔の配置等で槽内の流速分布を調整することで、塗工液の種類が違ったときにも、槽内の流速分布を容易に調整可能とする。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置の1例として、上記第()項に記載の多孔板及びメッシュの開口率は30%から60%の範囲であることを特徴とすることで、整流板全体から塗布液が上方に均一に抜けて流れるようになる。また、槽(4)内の流速分布の調整も可能となる。さらに、例えば多孔板(3)及び/又は(5)は、円周部から中心部に向って穿孔頻度(孔の存在密度)が徐々に増加するようなものであってもよい。
また、上記第(としては、上記第(に記載の多孔板(3)及び/又は(5)の孔径はφ0.5mm以上φ5mm以下の範囲であることを特徴とすることで多孔板全体から塗布液が上方に抜けて流れるようになる。また、槽内の流速分布の調整も可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置の1例としては、上記第()項に記載のメッシュは目開き0.5mm以上5mm以下の範囲であることを特徴とすることで多孔板全体から塗布液が上方に抜けて流れるようになる。また、槽(4)内の流速分布の調整も可能となる。
また、上記第()項の電子写真感光体製造装置の1例としては、上記第(1)項に記載の塗布液流入配管(8)は最下部の整流板の下方に少なくとも15mm以上の直管部(D)が設けられていることを特徴とすることで配管中にエルボ等を設置していても、均一な圧力を整流板面に与えることができることによって、最下部の整流板面を抜けた時点で流速分布が均一となる。
また、上記塗工槽(4)を有する電子写真製造装置にて電子写真感光体を製造することを特徴とすることで粘度上昇の発生しない塗工槽(4)にて浸漬塗布を行うことで、濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体を製造することが可能となる。
また、上記塗工槽(4)を有する電子写真製造装置にて塗工された電子写真感光体であることを特徴とすることで濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体により高画質な画像が得られる。
また、上記感光体の感光層が電荷発生層と電荷輸送層の積層構成からなる電子写真感光体であることを特徴とすることで濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体により高画質な画像が得られる。
図4、5、は1枚の整流板(3)もしくは球状物体(9)による整流層にて塗工槽内の整流機構より上方の整流をおこなう従来の方法を示す。しかしこの方法では、塗布液流入配管(8)口径から塗工槽(4)口径に拡散する整流板下方のテーパー部やテーパー部壁面側の球状物体の隙間に塗布液の流速が遅くまた渦となる淀み箇所が発生する。この従来技術にてチキソトロピー性の塗布液を循環すると循環後時間が経つと淀み部の粘度が上昇し、塗工槽内の塗布液粘度が不均一となり、この塗布液が円周状基体に付着することで濃淡ムラとなっていた。
また、図6は、被塗布物を浸漬する際に、被塗布物下部付近の流れを塗布槽壁面方向に向かうように制御し、制御する方式として、逆円錐型フロートを塗布液面に浮かせておき被塗布物を浸漬する際に、共に浸漬し流れをつくり、チキソトロピー性の塗布液を用いた浸漬塗工での濃淡ムラを防止する従来のものだが、上記のように、生産効率を上げるため、塗布液を低粘度化し浸漬、引上げ速度を上げるとフロートと塗工槽内壁の隙間が狭いため、引上げ時に隙間の流速が一部分的に早くなり縦筋状の濃淡ムラが発生する。
なお、この従来技術は、発生した淀みを再度分散するものである。本発明は淀みを根本的に発生させない技術である。
本発明は、2枚以上の整流板(3),(5)(多孔板、メッシュ等の整流板)を設け、より好ましくはテーパー部さ(A)、塗布液流入配管ストレート部長さ(D)を規定することにより、塗布液が塗布液流入配管(8)から流入し塗工槽内径に均一に拡散しオーバフローする槽内の流れを整流化し淀みの発生を抑えることで塗布液の置換効率を高め塗布液の粘度上昇発生を防ぐことが可能となる。よって濃淡ムラのない均一な塗膜を成形された電子写真感光体を製造することが可能となる。
図7、8は、本発明における電子写真感光体製造装置を示した図であり、(1)(塗布液ストックタンク)にためられた塗布液を、(2)(送液ポンプ)により(4)(塗工槽)に下方より送液し、オーバーフローした塗布液を(1)(塗布液ストックタンク)に回収する循環システムである。
本発明では、(7)(テーパー部)の上下に2枚以上の整流板を設けることで、課題を解決できる。
図7では、整流板を2枚設置された際の実施例図、図8は、整流板を2枚以上として3枚設置された際の実施例図となる。
寸法()は、直管部の長さを示している。
また、(A)寸法(テーパー部さ)は塗工槽内径−塗布液流入配管内径以上とし、(D)寸法(塗布液流入配管(8)の直管部長さ(D))は15mm以上とすることが好ましい。流入される塗工液のための液路の急激な拡大による塗工液流の乱れを避けることができ、また、エルボ等の屈曲通路部による流れ方向の偏移を避けることができる。
本装置の活用範囲としては、塗膜を浸漬塗工にて形成する工程上、本発明における塗工液は1mPa・s〜800mPa・s程度のものであることが好ましい。槽内平均流速は、0.003m/s〜0.02m/sであることが好ましい。
〔支持体〕
電子写真感光体のための導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、導電性支持体として用いることができる。
〔感光層〕
感光層は、単層型でも積層型でもよいが、はじめに、電荷発生層について説明することにする。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層であって、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物等が挙げられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明で用いられる感光体の感光層は単層構成でも積層構成でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層構成の場合から述べる。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。
電荷発生層には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。
これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合してもかまわない。
電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等が含まれていても良い。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2種以上の可塑剤、レベリング剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。
また、電荷輸送層の膜厚は、解像度・応答性の点から、25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上が好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
感光層が上記のような積層構成をとる場合、感光層中に含有されるべき有機硫黄系化合物は電荷輸送層に含有せしめるほうがより好ましい。
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。単層の感光層には、上述した電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂などが全て使用できる。感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質、上述の硫黄系化合物、および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。
感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
次に、保護層について説明する。保護層は、フィラー材料を結着樹脂とともに適当な溶剤を介して分散せしめるとともに、ヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両構造を有する化合物を添加、溶解させ、これを感光層上に塗布、乾燥することにより形成される。感光体の最表層である保護層にヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両構造を有する化合物を併用することにより、長期間の繰り返し使用によるオゾン等の活性ガスから感光体の劣化を抑制するため、耐摩耗性だけでなく画像安定性を飛躍的に向上させることが可能となる。
フィラー材料と、ヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両構造を有する化合物の比率は、フィラーに対して0.01wt%〜50wt%、さらに好ましくは0.1wt%〜20wt%であるが、添加量を必要以上に多くすると、耐摩耗性の低下が現れることがあり、添加量が少なすぎると異常画像抑制効果が十分に発揮されなくなる。
保護層に使用される結着樹脂材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。フィラーの分散性、残留電位、塗膜欠陥の点から、特に、ポリカーボネートあるいはポリアリレートが有効かつ有用である。
フィラーは、一般に有機性フィラーと無機性フィラーに分類される。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコ−ン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機フィラーである無機顔料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al、TiO、ZrO、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことにより、その影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。
用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなど、電荷輸送層で使用される溶剤を使用することができる。
但し、分散時には粘度が高い溶剤が好ましいが、塗工時には揮発性が高い溶剤が好ましい。これらの条件を満たす溶剤がない場合には、各々の物性を有する溶剤を2種以上混合させて使用することが可能であり、フィラーの分散性や残留電位に対して大きな効果を有する場合がある。
また、保護層に電荷輸送層で挙げた電荷輸送物質を添加することは、残留電位の低減及び画質向上に対して有効かつ有用である。その際、保護層中に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル(Ip)が、感光層中に含有される電荷輸送物質の(Ip)と同じか、より小さくなるような電荷輸送物質を保護層に添加することによって、保護層への電荷注入性が向上することにより、残留電位をより低減できる効果を有する。なお、イオン化ポテンシャル(Ip)は、分光学的に求める方法、電気化学的に求める方法等、種々の方法を用いて測定することができる。
前記フィラー材料は、ボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの従来方法を用いて分散することができる。この中でも、外界からの不純物の混入が少ないボールミルによる分散が、分散性の点からより好ましい。使用されるメディアの材質については、従来使用されているジルコニア、アルミナ、メノウ等メディアを使用することができる。
また、フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが、保護層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm以下の場合は、耐摩耗性の低下、分散性の低下等を引き起こし、0.5μm以上の場合には、フィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。
保護層の形成法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の従来方法を用いることができるが、特に、塗膜の均一性の面からスプレーコートがより好ましい。
さらに、保護層の必要膜厚を一度で塗工し、保護層を形成することも可能であるが、2回以上重ねて塗工し、保護層を多層にするほうが、膜中におけるフィラーの均一性の面からより好ましい。そうすることによって、残留電位の低減、解像度の向上、及び耐摩耗性の向上に対し、より一層の効果が得られる。なお、保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。
導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。
下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
更に、本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
以下、実施例により、更に詳細に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を順次浸漬塗工し塗膜を目視確認した、なお、電荷発生層の塗布工程にてチキソトロピー性の塗布液を用い所定時間本発明装置もしくは従来装置にて循環後に浸漬塗布を行なった。
実施例に用いた電荷発生層塗布液処方は以下に示す。
1.下引き層塗布液の形成
以下の材料を分散して下引き層塗布液を調合した。
メラミン樹脂 5重量部
酸化チタン 20重量部
シクロヘキサノン 35重量部
メチルエチルケトン 35重量部
2.電荷発生層塗布液の作成
ジスアゾ顔料 1重量部
ポリビニルブチラール 0.5重量部
シクロヘキサノン 40重量部
メチルエチルケトン 60重量部
ボールミル分散後、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンを加えて電荷発生層塗布液とした。
3.電荷輸送層塗布液の作成
構造式1に示す電荷輸送剤 4重量部
Figure 0004414366

ポリカーボネート 6重量部
シクロヘキサノン 45重量部
テトラヒドロフラン 45重量部
シリコンオイル 0.001重量部
を溶解して電荷輸送層塗布液を調合した。
外径30mm、長さ340mmのアルミニウム製の円筒状基体に、上で調合した下引き層(UL)塗布液を塗布し、110℃で15分間乾燥して、厚さ5μmの下引き層を形成した。
次に、この上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を塗布・乾燥し積層感光体試料を作成した。なお、電荷発生層は乾燥膜厚0.2μm、電荷輸送層は23μmになるような条件で行なった。
使用されるチキソトロピー性の顔料分散型塗工液は3.5mPa・sであった。実施例において槽内平均流速は、0.008m/sであった。
<実施例、参考例および比較例の装置条件>
参考例1とし、φ2mm開効率40%の多孔状の整流板を2枚、テーパー部の上下に設置し、またテーパーさ比率は1、ストレート部は15mm、塗工槽内径φ59.5mm、塗布液流入配管内径23mmとする。循環ポンプには、ケーシング及びインペラ(ロータ)がPTFEライニングが施された遠心式マグネットポンプを使用し、槽内平均流速を0.006m/sとし循環した。
比較例1,2,3は特許文献開示の技術である1枚の多孔状整流板、球状の整流層、フロート方式とする。
実施例1、2、参考例2、3参考例1に対し、テーパーさ比率を変更する。
参考参考例1に対し、整流板開効率を変更する。
参考13参考例1に対し、孔径を変更する。
参考1420参考例1に対し、整流板形状をSUSメッシュとし、またメッシュ寸法を変更する。
参考2123参考例1に対し、塗工槽外形を変更する。
参考2528参考例1に対し、直管部長さを変更する。
参考29参考例1に対し、ポンプを容積回転式ポンプ(ロータリーポンプ)を用いた。
参考3032参考例1に対し、循環流量を槽内平均流速0.0025m/s、0.02m/s、0.03m/sとなる様に変更した。
下記表1−1、表1−2に実験内容を表記する。
Figure 0004414366

Figure 0004414366
<実施例結果>
○:感光体塗膜に濃淡ムラの発生なし、×:感光体塗膜に濃淡ムラの発生あり、
装置の評価として5段階で表記する。
Figure 0004414366
以上により、本発明の効果として、参考例1、21〜23、比較例1、2の結果より整流板を2枚以上設ける効果が確認できた。
比較例3の結果として、淀みによる濃淡ムラの発生は見受けられなかったが、浸漬、引上げ速度を上げるとフロートと塗工槽内壁の隙間が狭いため、引上げ時に隙間の流速が部分的に早くなり縦筋状の濃淡ムラが発生した。
また、実施例1、2、参考例1〜3の結果よりテーパー部の高さは、少なくとも塗工槽内径−塗布液流入配管内径2倍以上とした効果が確認できた。
開口率20%の参考例4では筋状の濃淡ムラが発生し、開口率70%の参考では12時間循環後に濃淡ムラが発生した。このことにより整流板の開口率の効果にて30%以下となると、孔数が少なくなるため一つの孔毎の流速が早くなり筋状の濃淡ムラに繋がる。また、開口率が70%を超えると圧力損失が小さくなるため、整流効果が小さくなり淀みが発生しやすくなる。
よって、30%から70%の開口率の整流板を設ける効果が確認できた。
多孔板孔径φ6mmの参考13では6時間循環後に濃淡ムラが発生した。このことにより多孔板の孔径はφ6mm以上となると圧力損失が小さくなるため、整流効果が小さくなり淀みが発生しやすくなる。
よって、参考例1、13の結果より孔径φ5mm以下の多孔板を設ける効果が確認できた。
メッシュ目開き6.06mmの参考14では6時間循環後に濃淡ムラが発生した。このことによりメッシュの目開きは6mm以上となると圧力損失が小さくなるため、整流効果が小さくなり淀みが発生しやすくなる。
よって、参考例1、1420の結果より目開きφ5mm以下のメッシュを設ける効果が確認できた。
参考例1、2528の結果より塗布液流入配管のストレート部長さは15mm以上設ける効果が確認できた。
参考例1は3.5mPa・s→3.8mPa・sに対し、参考29は3.5mPa・s→4.7mPa・sに粘度上昇し、参考例1、29の結果より塗布液の粘度上昇を抑制できることが確認できた。
参考30は槽内平均流速を0.0025m/sとしたところ、槽内の塗布液の置換効率が下がり、参考例1より早い段階で濃淡ムラの発生が確認された。
また、参考32では槽内平均流速を0.03m/sとしたところ、槽内の流速が早いため、流れによる筋状の濃淡ムラが発生した。
本発明にて塗工された実施例の感光体と上記比較例1、2、3の感光体を株式会社リコー製フルカラーレーザープリンターIPSIO Color 5000の改造機(λ=655nm、1200dpi、ビームスポット2.7×10-3mm2に改造)を用いて、画像形成を行ない、画像の品質を目視で判定した。なお、ハーフトーン画像は2×2ドット画像である。画像評価結果を下記に示す。なお、感光体は1時間循環後塗工品、1日循環後塗工品、7日循環後塗工品を各5本である。
Figure 0004414366
上記のとおり、本発明で成形された感光体により高画質な画像が得られることが確認できた。
本発明における塗布液のストックタンクよりポンプ等の送液装置を示した概要図である。 本発明における塗工槽の拡大図である。 本発明における塗布液のストックタンクよりポンプ等の送液装置を示した別の図である。 従来技術における電子写真感光体製造装置を示した図である。 従来技術における電子写真感光体製造装置を示した別の図である。 従来技術における電子写真感光体製造装置を示した更に別の図である。 本発明における電子写真感光体製造装置を示した図である。 本発明における電子写真感光体製造装置を示した別の図である。 本発明の電子写真感光体製造装置における整流板設置の具体例を示した図である。
符号の説明
1 塗布液ストックタンク
2 送液ポンプ
3 整流板(多孔板、メッシュ等の整流板)
4 塗工槽
5 整流板
6 フロート
7 テーパー部
8 塗布液流入配管
9 整流層(球状物体)
10 整流板
A テーパー部長さ
B 塗工槽内径
C 塗布液流入配管内径
D 直管部

Claims (15)

  1. 塗布液ストックタンク(1)よりポンプ(2)にて塗布液を塗工槽(4)下方より流入させ上端よりオーバーフローをさせて液面高さを制御し、且つ電子写真感光体基体をその中に浸漬して塗工可能な塗工槽を有する電子写真感光体製造装置であって、塗工槽(4)下方の塗布液流入配管(8)内径から塗工槽(4)内径までの内径の差がテーパー部(7)で繋がっており、塗工槽(7)内部に少なくとも2枚以上の整流板(3),(5)が設置され、前記テーパー部(7)の高さは、塗工槽(4)内径−塗布液流入配管(8)内径の2倍以上であることを特徴とする電子写真感光体製造装置。
  2. 前記整流板(3),(5)は、浸漬塗工中に前記電子写真感光体基体と干渉しないように、該感光体基体の浸漬最下端位置より下方に2枚以上設置されており、そのうちの最上部に設置される1枚(3)は、テーパー部(7)上方で塗工槽(4)内径と同程度の内径であり、そのうちの最下部に設置される1枚(5)は、テーパー部(7)下方で塗布液流入配管(8)内径と同程度の内径であり、また3枚以上設置する際は、上記2枚の間のテーパー部(7)内に1枚以上設置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体製造装置。
  3. 前記整流板は、多孔板もしくはメッシュであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体製造装置。
  4. 前記多孔板およびメッシュは、耐溶剤性である材料もしくは耐溶剤性のコーティングが施されたものであることを特徴とする請求項記載の電子写真感光体製造装置。
  5. 最上部の整流板(3)及び最下部の整流板(5)は、それぞれ、孔の形状及び配置が異なりかつ設置換え可能な複数枚の組からなり、塗工液の粘度等の性質に応じ、槽(4)内の流速が中心部と周辺部の流速がほぼ均一化されるように整流板(3)及び(5)の組み合せが選択可能であることを特徴とする請求項またはに記載の電子写真感光体製造装置。
  6. 多孔板及びメッシュの開口率は30%から60%の範囲であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  7. 多孔板の孔径はφ0.5mm以上φ5mm以下の範囲であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  8. メッシュは目開き0.5mm以上5mm以下の範囲であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  9. 前記ポンプ(2)は、遠心力による送液を行う遠心式ポンプであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  10. 前記遠心式ポンプ(2)は、インペラがモータからの駆動伝達にマグネットを使用したマグネットポンプであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  11. 前記ポンプ(2)にはメカニカルシールなどの接触式軸シールを使用していないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  12. 前記ポンプ(2)の接液部分は、耐溶剤性である材料もしくは耐溶剤性のコーティングが施されたものであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  13. 前記ポンプ(2)が、塗布液ストックタンク(1)と塗工槽(4)を前記塗工槽(4)における槽内平均流速が0.003m/s〜0.02m/sとなる様な流量で塗布液を循環させることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1に記載の電子写真感光体製造装置。
  14. 請求項1乃至13のいずれかに記載の電子写真感光体製造装置にて電子写真感光体を製造することを特徴とする電子写真感光体製造方法。
  15. 前記ポンプ(2)により、塗布液ストックタンクと塗工槽(4)を前記塗工槽(4)における槽内平均流速が0.003m/s〜0.02m/sとなる様な流量で塗布液を常時循環させることを特徴とする請求項14に記載の電子写真感光体製造方法。
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