JP4732943B2 - 電子写真感光体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
円筒状支持体となる電子写真感光体用素管の外周面に感光層を塗布する方法としては、従来からスプレー塗布法、浸漬塗布法、ブレード塗布法等が知られているが、これらの塗布法では塗膜の均一性に劣っていたり、生産効率が悪いといった問題点も残されている。
例えば、スプレー塗布法は塗工液をスプレーノズルから微細粒として噴出/塗布を行うことから塗布後の外観は良好である反面、1回の塗布によって形成される膜の厚みが薄く、所望の膜厚を得るためには複数回の塗布を繰り返す必要がある。また、一度に多量の塗工液を塗布すると塗布面に液ダレが発生し、厚さの不均一な感光層が形成されてしまうという問題、さらに、塗工液を噴出させて塗布しているので、液中の揮発成分が揮散し易く、塗工液の粘度が上昇し、形成後の塗布層にオレンジピール(表面にオレンジ肌状のうねりが生ずる現象)が発生するという問題もある。
塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させる際に、塗布ロールと平行でかつ塗布ロールに最接近した円筒状支持体よりも大径の仮想円筒面に沿って、かつ円筒状支持体の塗布位置から円筒状支持体の回転方向の下流側へ円筒状支持体の外周面を移動させ、
塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させた後、円筒状支持体の回転を所定時間継続することにより円筒状支持体上の塗膜を乾燥させ、
塗布ロールと円筒状支持体のいずれか一方の離間時周速V1が他方の離間時周速V2よりも速くなるように制御し、かつ、塗布ロールと円筒状支持体とが相対的に離間する離間速度V3を前記離間時周速V2よりも遅い速度となるように制御し、
前記離間時周速V1と離間時周速V2との比をRとすると、R=V1/V2が1.2以上15.0以下である電子写真感光体の製造方法が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記電子写真感光体の製造方法によって製造された電子写真感光体およびこの電子写真感光体を備えた画像形成装置が提供される。
また、本発明の画像形成装置によれば、前記電子写真感光体が備えられるので、画像欠陥を生じることのない画像形成装置が実現される。
また、本発明において、「離間速度」とは、離間時周速で回転する塗布ロールと円筒状支持体が相対的に離れる方向に移動する速度であって、例えば円筒状支持体が塗布ロールから直線的に離れる場合、円筒状支持体の軸心の移動出発位置から停止位置までの距離を移動時間で除した値(単位:m/minまたはmm/sec)を意味し、円筒状支持体が塗布ロールから揺動して離れる場合は、円筒状支持体の回転が停止していると仮定して、円筒状支持体の外周面の特定部位(例えば塗布ロールとの接触面の一点)が移動出発位置から停止位置まで円弧軌跡に沿って移動した円弧距離(長さ)を移動時間で除した値(単位:m/minまたはmm/sec)を意味し、塗布ロールが移動する場合も同義である。
以下、本発明の電子写真感光体の製造方法の好ましい形態について詳説する。
前記離間時周速V1は具合的には、例えば1.0〜600m/min、好ましくは3.0〜200m/minであり、離間時周速V2としては、例えば0.06〜500m/min、好ましくは0.35〜160m/minである。
〜200mm/secがさらに好ましい。このようにすれば、塗膜を形成する塗工液に加わる回転
方向のせん断力を向上させると共に、前記離間時周速比Rによる巻き取り効果とも相まって、円筒状支持体と塗布ロールとの間の橋架け部の増大をより強く抑制できる。なお、離間速度V3が前記離間時周速V2を超えると橋架け部を消滅させきらない内に離間が終了してしまい、大きな継ぎ目が残留する。但し、離間速度V3が離間時周速V2より遅くても350mm/secを超えてしまうと、塗膜に作用させる張力は充分であるが、離間時の加速度によって円筒状支持体表面の塗膜が波うち、均一な厚みの塗膜を得ることができなくなる。一方、離間速度V3が0.1mm/sec未満であると、塗膜に作用させる張力を充分に得られないだけでなく、作業時間が長くなりすぎるので、その間に乾燥し始め、膜厚均一性の悪化に繋がる。
このようにすれば、塗膜を形成する塗工液に加わる回転方向のせん断力を向上させると共に、離間時周速比Rによる巻き取り効果とも相まって、円筒状支持体と塗布ロールとの間の橋架け部の大きさをより強く制御することができる。また、上述のように、塗布ロールよりも軽量で、かつ塗布最下流側の円筒状支持体を移動させるため、塗布装置の構成を簡素化することができる。
一般に電荷輸送層は、感光層の最外層もしくは最外層に近い層を構成するので、高い耐磨耗性が求められる。耐磨耗性の向上と電荷輸送層形成用塗工液の粘度上昇とは相関しており、粘度の高い塗工液の塗布、すなわち耐久性の高い電荷輸送層の形成にはロールコート法が適している。また感光層を、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造にすることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、繰返し使用時の安定性も増した高耐久性電子写真感光体を得ることができる。さらに、特定の機能をそれぞれ別の層に付与し、各層を積層することによって総合的に機能を発現させることができるので、より高機能な電子写真感光体を得ることができる。
以下、図面に基き本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の電子写真感光体の製造方法の実施形態1で用いられる円筒状支持体への塗工液の塗布装置の構成を示す平面図であり、図2は図1に示す塗布装置の部分的な断面図であって、塗工液の円筒状支持体への塗布状態を示している。
なお、移動手段11はエアシリンダー30a, 30bによる塗布ロール2に対して矢符23方向に近接離反するような構成以外にも、図2の状態の円筒状支持体5を上下垂直方向へ接近離反させる構成であってもよく、好ましくは上下方向へ円弧軌跡に沿って揺動させて接近離反させるように移動手段11を構成してもよい。円筒状支持体5を揺動させる移動手段11としては、例えば、第1チョック21a 21bの外側端部を基台16に揺動可能に連結し、エアシリンダー30a, 30bの基端とロッド先端を基台16と第1チョック21a 21bの内側端部に揺動可能に連結し、エアシリンダー30a, 30bを伸長動作させることにより、第1チョック21a 21b、棒軸部材22a,22b、第1駆動手段6、エンコーダ10と共に円筒状支持体5が上方へ揺動させる構成が挙げられる。
なお、調整部材14はおねじ部材38を用いる構成に限定されるものではなく、第2チョック25a, 25bと第3チョック35a, 35bとの間にエアシリンダーまたは油圧シリンダーなどを設け、動作させることによって塗布ロール2とメタリングロール13との間隙を調整するように構成されてもよい。
L = K・α・η・g・√(Rm)・√(Rt 3)/R・γ ・・・・・(1)
ここで、K;係数(ロール径に固有な係数)
α; 塗工液の固形分濃度(vol%)
γ; 塗工液の表面張力
η; 塗工時のせん断速度における粘度
g; 塗布ロールとメタリングロールとの間隙寸法
Rm; メタリングロールの周速
Rt; 塗布ロールの周速
R; 円筒状支持体の周速
第4チョック43a, 43bは、前述の第1チョック21a, 21bと同様に基台16上に設けられ、矢符23方向に移動することができる。クリーニングブレード42は板状の部材であり、その長手方向がメタリングロール13の軸線方向に延びるように配置され、その短手方向の端部によってメタリングロール13表面に付着する塗工液3を掻取る。クリーニングブレード42は第4チョック43a, 43bの支持部で角変位可能に支持され、その短手方向がメタリングロール13に臨む角度を変化させることによってクリーニングブレード42と塗布ロール2との間隙の大きさを調整し、塗工液3の掻取量を調整することができる。また調整部材44a, 44bによっても、メタリングロール13とクリーニングブレード42とで形成される間隙の大きさを調整し、塗工液3の掻取量を調整してもよい。さらに前述のクリーニングブレード42の角変位と併用してもよい。なお調整部材44a, 44bは、前述の調整部材14a, 14bと同様に構成されるので、説明は省略する。
塗布工程の概要は、先ず、回転する塗布ロール2の外周面が塗工液供給手段4である塗液供給パンに貯留される塗工液3中を通過することによって、塗布ロール2の表面上に塗工液3の塗膜が形成される。次いで、膜厚調整手段15により前記塗膜の膜厚を調整した後、円筒状支持体5を塗布ロール2に所望の間隙をもって近接させ、塗布ロール2上に形成された塗膜が円筒状支持体5に転写され、塗膜が形成された円筒状支持体5を塗布ロール2から離間させ、円筒状支持体5上の塗膜を乾燥し硬化させて感光層の一構成層を形成する。
なお、塗工液3として中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を形成するための塗工液を選択し、上述の方法により円筒状支持体5上に膜を重ねていくことにより、最終的に所望の積層構造の感光層を形成することができる。
塗布を開始後、円筒状支持体5に転写される塗膜の膜厚を均一にするために、円筒状支持体5の回転回数、すなわち塗工液3の円筒状支持体5への塗布回数は、1回以上、20回以下の範囲に設定され、1.5〜10回が好ましく、より好ましくは2〜5回である。なお、塗布回数が1回未満であると、当然、円筒状支持体5の表面に未塗布の部分が残存する事になる。他方、20回を超えると作業時間が長くなり、生産効率の低下に繋がる。従って、塗布回数としては1〜20回が最適回数である。
なお、円筒状支持体5に転写される塗工液3による塗膜の膜厚は、前述の膜厚調整手段15によるメタリングロール13と塗布ロール2との間隙の大きさの他にも、塗布ロール2と円筒状支持体5の周速、塗工液3の物性、円筒状支持体5および塗布ロール2の表面の材質、円筒状支持体5と塗布ロール2との間隙の大きさなどの調整によって制御することができる。
以下、塗布時周速比rの前記範囲の意義などについて説明する。
Ca = μ・U/γ ・・・・・(2)
但し、μ;運動粘度(=η/ρ、η:塗工液の粘度、ρ:塗工液の密度)
U; 塗工液の流動速度(=塗布速度)
γ; 塗工液の表面張力
即ち、キャピラリー数の物理的意義は、表面張力に対する粘性の割合である。
従ってキャピラリー数Caおよび形態パラメータH0/Dに対する影響因子であるロール径、間隙の大きさ、周速、塗工液の粘度、表面張力によってリブ発生の下限条件が定まることが知られている。
円筒状支持体5に均一な膜厚の塗膜を形成するには、このようなリブの発生を防止することが重要であり、円筒状支持体5と塗布ロール2との塗布時周速の比rを、0.7〜1.4の範囲内に設定して塗膜を形成することによって、ほとんどの条件下でリブを生じることなく均一な塗膜を形成できる。
周速比Rの制御方法は、上記に限定されるものではなく、例えば、塗布時には円筒状支持体の回転軸に負荷をかけて周速を遅くしておき、離間時にその負荷を取除くことによって、円筒状支持体の周速を速くする方法、また反対に離間時に塗布ロールに負荷をかけることによって塗布ロールの周速を遅くして相対的に円筒状支持体の周速を速くする方法、また回転軸に負荷をかける手段として、回転軸に摩擦体を設置しブレーキを配置する方法、もしくは回転軸をクラッチで繋ぎそのクラッチの接続強度により負荷を変更する方法などを用いて円筒状支持体もしくは塗布ロールの周速を変化させる方法であってもよい。
図3は、本発明の実施形態2である塗布装置60のロール構成部分の断面図である。本実施形態2の塗布装置60が前記実施形態1と異なる点は、ロール構成部分であるため、平面構成図を省略するとともに、対応する部分については同一の参照符号を付す。以下、本実施形態2の実施形態1とは異なる点を主として図3および図1を参照しながら説明する。
また、この塗布装置60では、実施形態1におけるクリーニングブレードが省かれると共に、第1のメタリングロール13に隣接してもう一つの第2のメタリングロール63が設けられている。第2のメタリングロール63の軸部は、クリーニングブレードを支持していた第4チョック43a,43bに回転自在に支持され、かつ第4駆動手段である電動機(図示省略)の駆動軸と連結している。
第1のメタリングロール13は塗布ロール2とは逆方向の矢符64方向に回転し、第2のメタリングロール63が塗布ロール2と同一方向であって第1のメタリングロール13とは逆方向の矢符65方向に回転するよう制御される。塗布ロール2と第1のメタリングロール13との間隙および第1・第2のメタリングロール13,63間の間隙は、調整部材14a, 14bおよび調整部材44a, 44bによって、所望の値になるように調整される。
なお、塗布ロール61上の塗膜の膜厚設定値、塗布ロール61、円筒状支持体5、第1および第2のメタリングロール13,63の各塗布時周速値、塗布ロール61および円筒状支持体5の各離間時周速値、円筒状支持体5の離間速度値は、実施形態1に準じることができる。
図4は本発明の実施形態3である塗布装置70のロール構成部分の断面図である。本実施形態3の塗布装置70は、ナチュラルロールコーティング方式の実施形態2の塗布装置60に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付し説明を省略する。
この実施形態3の場合も、塗布ロール61および円筒状支持体5の各塗布時周速、各離間時周速の設定方法は、実施形態2と同様にして行なうことができる。また、塗布ロール61上の塗膜の膜厚設定値、塗布ロール61、円筒状支持体5、第1のメタリングロール13の各塗布時周速値、塗布ロール61および円筒状支持体5の各離間時周速値、円筒状支持体5の離間速度値は、実施形態1に準じることができる。また、塗布ロール61から円筒状支持体5を離間させる際に、実施形態2と同様に円筒状支持体5の塗布位置から回転方向下流側である下方へ揺動させてもよい。
図5は、本発明の実施形態4である塗布装置75のロール構成部分の断面図である。この塗布装置75は、実施形態1の塗布装置に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
この実施形態4の場合も、塗布ロール2上の塗膜の膜厚設定値、塗布ロール2、円筒状支持体5の各塗布時周速値、塗布ロール2および円筒状支持体5の各離間時周速値、円筒状支持体5の離間速度値は、実施形態1に準じることができる。また、塗布ロール2から円筒状支持体5を離間させる際に、リバースロールコーティングである実施形態4は円筒状支持体5の塗布位置から回転方向下流側である左側(クリーニングブレード42側)へ揺動させてもよい。
前記実施形態1〜4では、塗工液供給手段がパンに塗工液3を貯留するものであったが、これ以外にも、例えばインキング装置およびスポンジロールのような接触型の供給装置、ディスペンサまたはダイノズルなどの非接触型の注入装置が使用されてもよい。
次に、本発明の電子写真感光体の具体構成について説明する。
本発明の電子写真感光体における感光層は、上述のように電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一の層内に含有される単層型であってもよく、また電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層して成る積層型であってもよい。また、積層型の場合、同一の機能であっても特性を高めるために2層以上に積層してもよい。
以下、円筒状支持体、感光層の各層の構成成分および塗工液などについて詳細に説明する。
円筒状支持体は、感光層を形成するための支持部材としての役割を果たすと共に、感光体の電極としての機能も有する。円筒状支持体(電子写真感光体用素管)の材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料を用いることができる。また、これらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリオキシメチレンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム、炭素粒子、金属粒子などの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したもの等を用いることもできる。円筒状支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスではレーザ光の波長が揃っているので、入射するレーザ光と電子写真感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。円筒状支持体の表面に前述のような乱反射処理を施すことによって、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
電荷発生層は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生物質として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴまたはチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドまたはペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンまたはピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー、ビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系色素、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ、フラペオシンなどに代表されるアクリジン系色素、メチレンブルー、メチレングリーンなどに代表されるチアジン系色素、カプリブルーまたはメルドラブルーなどに代表されるオキサジン系色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、チオインジゴ系色素、ビスベンゾイミダゾール系色素、キナクリドン系色素、キノリン系色素、レーキ系色素、アゾレーキ系色素、ジオキサジン系色素、アズレニウム系色素、トリアリルメタン系色素、キサンテン系色素、シアニン系色素等の種々の有機顔料、染料、さらにアモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機材料を挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独でまたは2種以上が組合わされて使用される。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる場合、用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように最適な条件を選択することが望ましい。
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ、輸送する能力を有する電荷輸送物質をバインダ樹脂中に含有させることによって得られる。電荷輸送物質としては、ホール輸送物質および電子輸送物質を用いることができる。
電荷輸送層には、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤または表面改質剤などの添加剤を混合してもよい。可塑剤としては、例えばビフェニル、塩化ビフェニル、ベンゾフェノン、o-ターフェニル、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、各種フルオロ炭化水素、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などを挙げることができる。表面改質剤としては、シリコーンオイル、フッ素樹脂等が挙げられる。
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール誘導体またはヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。ヒンダードフェノール誘導体は、電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードアミン誘導体は電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲で使用されることが好ましい。また、ヒンダードフェノール誘導体とヒンダードアミン誘導体とは、混合されて使用されてもよい。この場合、ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量が、電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体の使用量、ヒンダードアミン誘導体の使用量、またはヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量が電荷輸送物質に対して0.1重量%未満であると、塗工液の保存安定性の向上および電子写真感光体の耐久性の向上に充分な効果を発現することができない。また50重量%を超えると感度特性に悪影響を及ぼす。
塗工液に用いられる溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンまたはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類、安息香酸メチルまたは酢酸エチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤、ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤、N, N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる1種が単独で、または2種以上が混合されて使用される。また前述した溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。
また、電子写真感光体には、円筒状支持体と光導電層との間に、中間層が設けられてもよい。円筒状支持体と光導電層との間に中間層が無い場合、円筒状支持体から光導電層に電荷が注入され、その帯電電位が低下し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像にカブリなどの画像欠陥が発生する場合がある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合、露光によって表面電荷が減少した部分にトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される「黒ポチ」と呼ばれる画像かぶりが発生する場合があり、その場合は著しい画質不良が生じる。すなわち、円筒状支持体または光導電層の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ポチなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる。
しかしながら、中間層を設けることによって円筒状支持体から光導電層へ電荷が注入することを抑制できるので、光導電層の帯電性の低下防止に有効であり、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止できる。また、中間層は円筒状支持体表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、光導電層の成膜性を高めることができる。また、光導電層の円筒状支持体からの剥離を抑え、円筒状支持体と光導電層との接着性を向上させることができる。
中間層形成用の樹脂溶液の溶剤には、前述の有機溶剤の他に、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム系なども用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。
中間層形成用塗工液中の樹脂および金属酸化物の合計含有量Cは、中間層形成用塗工液に使用されている溶剤の含有量Dに対し、C/Dが重量比で1/99〜40/60(約0.01〜約0.67)であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70(約0.02〜約0.43)である。また樹脂と金属酸化物との比率(樹脂/金属酸化物)は重量比で90/10〜1/99(9〜約0.01)であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95(約0.43〜約0.05)である。
また、感光層の最外層として保護層が設けられてもよい。保護層を設けることによって、感光層の耐刷性を向上させることができるとともに、電子写真感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンまたは窒素酸化物などの感光層への化学的悪影響を防止することができる。保護層には、例えば樹脂、無機フィラー含有樹脂または無機酸化物などからなる層が用いられる。
分散溶媒としてはメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロルメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が使用される。粉砕工程を加える場合はボールミル、サンドミル、振動ミルなどを用いる。
次に、上述の電子写真感光体を用いた本発明の画像形成装置の具体構成の一例について説明する。
図6は本発明の画像形成装置の一実施形態の構成を簡略化して示す側面配置図である。この画像形成装置80は、前述した本発明の塗布方法により製造された電子写真感光体を備える。なお、本発明の画像形成装置は、以下の記載内容に限定されるものではない。
帯電器84は、電子写真感光体81の外周面を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器84は、例えばローラ帯電方式などの接触式の帯電手段や、コロトロン、スコロトロンなどの非接触式の帯電手段によって実現される。
現像器85は、露光によって電子写真感光体81の表面に形成される静電潜像を現像剤によって可視化する現像手段であり、電子写真感光体81に近接して配置され、電子写真感光体81の外周面にトナーを供給する現像ローラ85aと、現像ローラ85aを電子写真感光体81の回転軸線82と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング85bとを備える。
クリーナ87は、転写器86による転写動作後に電子写真感光体81の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、電子写真感光体81の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード87aと、クリーニングブレード87aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング87bとを備える。
次いで、露光手段から、電子写真感光体81の表面に対して画像情報に応じた光88が照射される。電子写真感光体81は、この露光によって光88が照射された部分の表面電荷が除去され、光88が照射された部分の表面電位と光88が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、その表面に静電潜像が形成される。
電子写真感光体81への露光と同期して、電子写真感光体81と転写器86との間に転写紙89が供給される。転写器86によって、供給された転写紙89にトナーと逆極性の電荷が与えられ、電子写真感光体81の表面に形成されたトナー画像が転写紙89上に転写される。
トナー画像の転写された転写紙89は、搬送手段によって定着器90に搬送され、定着器90の加熱ローラ90aと加圧ローラ90bとの間を通過する際に加熱および加圧され、トナー画像が転写紙89に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙89は、搬送手段によって画像形成装置80の外部へ排紙される。
フルカラー機の場合、例えばタンデム式画像形成装置であれば上記画像形成装置80の定着器90を除く他の機器がブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色分だけ転写紙供給元と定着器90との間に並列に搭載される。各色の画像情報は独立に現像、転写紙に転写され、最終の定着器90で1つのカラー画像として完成される。
(試験1)
試験1においては、直径: 30mm、長さ: 362mmのアルミニウム製の円筒状支持体を用い
て、該円筒状支持体の表面に浸漬塗布法によって中間層と電荷発生層とを積層して形成し、さらに電荷発生層の外層として電荷輸送層を形成した。なお、電荷輸送層の形成に際しては、本発明の塗布方法による実施例1〜12の電子写真感光体と、本発明から外れる塗布方法による比較例1〜7の電子写真感光体とを製造し、その電荷輸送層の継ぎ目の状態と、塗膜厚みの均一性を評価した。
酸化アルミニウム(Al2O3)および二酸化ジルコニウム(ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製: TTO-D-1)3.5重量部および共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製: CM8000)3.5重量部を、1,3-ジオキソラン46.5重量部とメタノール46.5重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、粘度が10mPa・secの中間層形成用塗工液を調製した。この中間層形成用塗工液を塗工槽に満たし、円筒状支持体を塗工槽に浸漬した後、引上げることによって、膜厚1.0μmの中間層を円筒状支持体上に形成した。
ー(Triphenylamine dimmer; 略称: TPD)10重量部と、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製: ユーピロンZ400)18重量部と、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製:KF-96)0.0032重量部とをキシレン109重量部に溶解させ、粘度が450mPa・secの電荷輸送層形成用塗工液を調製した。
と同時に、円筒状支持体5の周速を先の10m/minから16m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.6となるように調整した。さらに塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後、円筒状支持体5上の塗膜を120℃にて1時間乾燥させ、膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして実施例1の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間させる際に、塗布ロール61の周速を先の10m/minから16m/minに増速し、円筒状支持体5の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。すなわち離間させるときの速い方の離間時周速V1を塗布ロール61の周速とし、遅い方の離間時周速V2を円筒状支持体5の周速として、離間時周速比R(=V1/V2)が1.6となるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を0.1mm/sec(V3の下限値<V2=167mm/sec)とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態における塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を全て25m/minとし、且つ、塗布終了後に塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間させる際の円筒状支持体5の周速を先の25m/minから40m/minに増速し、塗布ロール61の周速は離間前後において同一の25m/minのままとして、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.6となるように調整した。更に塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を350mm/sec(V3の上限値<V2=417mm/sec)とした以外は実施例1
と同様にして、実施例4の電子写真感光体を作製した。
上記実施例3において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を0.08mm/sec(<V2=167mm/sec、且つ、<0.1mm/sec=下限値)とした以外は実施例3と同様にして、実施例5の電子写真感光体を作製した。
上記実施例4において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を360mm/sec(<V2=417mm/sec、且つ、>350mm/sec=上限値)とした以外は実施例4と同様にして、実施例6の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから12m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.2となるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例7の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから150m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が15.0となるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例8の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、電荷輸送層形成用塗工液の塗布に際して、塗布ロール61と円筒状支持体5との間隙を80μmとして、塗布ロール61と円筒状支持体5とを同一方向に回転させるリバースロールコーティング方式の塗布装置を用い、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を7m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/minとした。すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を0.7とした。更に円筒状支持体5を塗布ロール61から離間させる際の円筒状支持体5の周速を7m/minから16m/minに増速し、塗布ロール61の周速は離間前後において同一の10m/minのままとし、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるように調整し、塗布ロール61から円筒状支持体5を上方に揺動した以外は実施例1と同様にして、実施例9の電子写真感光体を作製した。
上記実施例9において、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を14m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.4とし、且つ、円筒状支持体5を塗布ロールから離間させる際に円筒状支持体5の周速を16m/minに増速して、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるようにした以外は実施例9と同様にして、実施例10の電子写真感光体を作製した。
上記実施例9において、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を6m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を0.6とし、且つ、円筒状支持体5を塗布ロールから離間させる際に円筒状支持体5の周速を16m/minに増速して、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるようにした以外は実施例9と同様にして、実施例11の電子写真感光体を作製した。
上記実施例9において、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を15m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.5とし、且つ、円筒状支持体5を塗布ロール61から離間させる際に円筒状支持体5の周速を16m/minに増速して、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるようにした以外は実施例9と同様にして、実施例12の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速を、塗布しているときの周速と同じ10m/min、すなわち離間時周速比R(=V1/V2)を1.0とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を160m/min、すなわち離間時周速比R(=V1/V2)を16.0とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を270mm/sec(>V1=267mm/sec)とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の電子写真感光体を作製した。
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を200mm/sec(V2=167mm/sec<V3<V1=267mm/sec)とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の電子写真感光体を作製した。
上記実施例9において、円筒状支持体5を離間する際における円筒状支持体5の離間時周速を10m/minのまま、すなわち離間時周速比Rを1.0とした以外は実施例9と同様にして、比較例5の電子写真感光体を作製した。
上記実施例9において、円筒状支持体5を離間する際における円筒状支持体5の離間時周速を160m/min、すなわち離間時周速比Rを16.0とした以外は実施例9と同様にして、比較例6の電子写真感光体を作製した。
上記実施例9において、円筒状支持体5を離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を200mm/sec(V2=167mm/sec<V3<V1=267mm/sec)とした以外は実施例9と同様にして、比較例7の電子写真感光体を作製した。
以上の実施例1〜12並びに比較例1〜7で作製した各電子写真感光体の軸線方向と周方向の膜厚分布を多機能マルチチャンネル分光光度計(大塚電子株式会社製: MCPD2000)で測定した。測定結果の膜厚分布プロファイルを図7〜10に示す。図7、8は軸線方向の膜厚分布プロファイルを示す図であり、図9、10は周方向の膜厚分布プロファイルを展開図として示す図である。また、結果の一覧を下記の表2にまとめる。
周方向の膜厚分布は、比較例1のように適切な離間速度であっても離間時周速比R=1.0で離間すると、膜厚が局所的に大きく異なる継ぎ目部分が明らかに発生した。また比較例1と同じ周速比R=1.0、適切な離間速度であっても、リバースロールコーティング方式による比較例5では、わずかに継ぎ目の大きさは改善される傾向にあるが、それでも実使用に耐えるレベルとは到底、言い難い状態であった。また、離間時周速比Rが本発明の上限値15.0を超えた比較例2、6では共に塗液飛散が激しく、感光体として使えるレベルではなかった。
他方、離間時周速比R=1.6という適切な周速条件であっても、離間速度がV1より大きい比較例3では離間動作が早すぎて塗液だまりが全く消費されない為、大きな継ぎ目が発生した。離間速度がV2より大きい比較例4では、若干の塗液だまり消費効果があり継ぎ目部分は小さくなっているが、全て消費される前に離間が完了してしまうので、まだ継ぎ目は発生していた。この傾向はリバースロールコーティング方式による比較例7でも明らかである。
上記比較例1〜7に対し、実施例1〜12の本発明の塗布方法では、明確な継ぎ目の発生は見られなかった。離間速度V3や塗布時周速比rが本発明の指定範囲外である実施例5、6、11、12では、部分的乾燥や塗布液の波うち、リフ゛の発生により膜厚ハ゛ラツキにおいて少し悪目の傾向にあるが、ロールコート法において最も問題となっている局所的な膜厚変動部である継ぎ目については全く見られなかった。これら実施例の中でも特に実施例1は、膜厚バラツキの点でも、周方向、軸方向共に他の実施例より優れており、離間する瞬間での塗工液の橋架け部による再塗布効果のため、より膜厚均一性の高い電子写真感光体が得られたことが確認できた。
次に、試験2においては、試験1と同じ円筒状支持体を用いて、該円筒状支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層の各層を積層型に形成した。各層の形成に際し、本発明の塗布方法による実施例13〜26および本発明から外れる塗布方法による比較例8〜21の中間品(UCLまで、およびCGLまで)または電子写真感光体を作製し、各層の膜厚均一性を評価した。
酸化アルミニウム(化学式: Al2O3)および二酸化ジルコニウム(化学式: ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製: TTO-D-1)5重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製: CM8000)5重量部とを、エタノール42重量部とブチルカルビトール18重量部とベンジルアルコール30重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、粘度が15mPa・sec.の中間層形成用塗工液を調製した。
この中間層形成用塗工液を、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて円筒状支持体に塗布した。塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を6m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を80μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を40μmとした。
に、円筒状支持体5の周速を先の6m/minから9m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の6m/minとした。従って、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロール2の離間時周速V2との離間時周速比R(=V1/V2)が1.5となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後120℃にて1時間乾燥させ、中間層塗膜を形成させた。このようにして中間層塗膜の形成された実施例13の電子写真感光体の中間品を作製した。
上記実施例13において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ6m/min、すなわち周速比R=1.0とした以外は、実施例13と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例8の電子写真感光体の中間品を作製した。
上記実施例13において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を160mm/sec(>V1=150mm/sec)とした以外は実施例13と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例9の電子写真感光体の中間品を作製した。
上記実施例13において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を130mm/sec( V2=100mm/sec<V3<V1=150mm/sec)とした以外は実施例13と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例10の電子写真感光体の中間品を作製した。
電荷発生物質であるオキソチタニウムフタロシアニンとしてCu-Kα特性X線(波長: 1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンの2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製: エスレックBM-2)2重量部と、シクロヘキサノン96重量部とを混合し、ペイントシェーカにて10時間分散処理して、粘度が2.5mPa・secの電荷発生層形成用塗工液を調製した。
この電荷発生層形成用塗工液を、実施例13と同一の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、先の実施例13で形成した中間層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体の中間層上に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13,63および円筒状支持体5の周速を4m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を60μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を30μmとした。
に、円筒状支持体5の周速を先の4m/minから7.2m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の4m/minとした。従って、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールV2との離間時周速比R(=V1/V2)が1.8となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後、120℃にて30分間乾燥させ、電荷発生層塗膜を形成させた。このようにして、中間層塗膜の上に電荷発生層塗膜の形成された実施例14の電子写真感光体の中間品を作製した。
上記実施例14において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ4m/min、すなわち離間時周速比R=1.0とした以外は実施例14と同様にして、中間層塗膜の上に電荷発生層塗膜の形成された比較例11の電子写真感光体の中間品を作製した。
上記実施例14において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を130mm/sec(>V1=120mm/sec)とした以外は実施例14と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例12の電子写真感光体の中間品を作製した。
上記実施例14において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を70mm/sec( V2=66.7mm/sec<V3<V1=120mm/sec)とした以外は実施例14と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例13電子写真感光体の中間品を作製した。
電荷輸送物質である前記構造式(I)で示されるトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine dimmer; 略称: TPD)10重量部と、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製: ユーピロンZ800)18重量部と、2, 6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製: KF-96)0.006重量部とを、トルエン55重量部とシクロヘキサノン55重量部とに溶解させ、粘度が5000mPa・sec.の電荷輸送層形成用塗工液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗工液を図1、2に示すリバースロールコーティング方式の塗布装置1を用いた本発明の塗布方法にて、先の実施例14で形成した電荷発生層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体の電荷発生層上に転写塗布している状態での塗布ロール2、メタリングロール13および円筒状支持体5の周速を10m/minとした。またメタリングロール13と塗布ロール2の間隙を100μm、塗布ロール2と円筒状支持体5との間隙を80μmとした。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を0.1mm/sec(離間速度の下限値)とした以外は実施例15と同様にして、実施例16の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態における塗布ロール2、メタリングロール13および円筒状支持体5の周速を全て25m/minとし、且つ、塗布終了後に塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間させる際の円筒状支持体5の周速を先の25m/minから50m/minに増速し、塗布ロール2の周速は離間前後において同一の25m/minのままとして、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール2の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が2.0となるように調整した。更に塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を350mm/sec(上限値<V2=417mm/sec)とした以外は実施例15と同様にして、実施例17の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を0.08mm/sec(離間速度の下限未満値)とした以外は実施例15と同様にして、実施例18の電子写真感光体を作製した。
上記実施例17において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を360mm/sec(<V2=417mm/sec、且つ、>350mm/sec=上限値)とした以外は実施例17と同様にして、実施例19の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから12m/minに増速した。塗布ロール2の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.2となるように調整した以外は実施例15と同様にして、実施例20の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから150m/minに増速した。塗布ロール2の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が15.0となるように調整した以外は実施例15と同様にして、実施例21の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を14m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.4とし、メタリングロールと塗布ロールとの間隙を120μmとし、塗布ロール2と円筒状支持体5との間隙を95μmとした以外は、実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例22の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を7m/min、すなわち塗布時周速比r=0.7とし、メタリングロールと塗布ロールとの間隙を80μmとし、塗布ロールと円筒状支持体との間隙を60μmとした以外は、実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例23の電子写真感光体を作製した。
上記実施例22において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を15m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.5とた以外は、実施例22と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例24の電子写真感光体を作製した。
上記実施例23において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を6m/min、すなわち塗布時周速比r=0.6とした以外は、実施例23と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例25の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ10m/min、すなわち離間時周速比R=1.0とした以外は実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された比較例14の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間時周速V1を160m/min、すなわち離間時周速比R=16.0とした以外は実施例15と同様にして、比較例15の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2から円筒状支持体5を離間した後、直ちに円筒状支持体5の回転を停止した以外は実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された比較例16の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を340mm/sec(>V1=333mm/sec)とした以外は実施例15と同様にして、比較例17の電子写真感光体を作製した。
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を250mm/sec(V2=167mm/sec<V3<V1=333mm/sec)とした以外は実施例15と同様にして、比較例18の電子写真感光体を作製した。
メチルトリメトキシシラン30重量部、ジメチルジメトキシシラン5重量部に2.5%酢酸水溶液20重量部、ブチルカルビトール100重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)50重量部を混合し、室温にて16時間加水分解反応させた。その後、酸化防止剤(三共社製: サノールLS2626)1重量部、構造式(II)で示される電荷輸送性構造単位含有化合物5重量部、コロイダルシリカ(メタノール分散品、固形分30質量%)20重量部、硬化触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート1重量部を加えて溶解し、粘度が350mPa・secの保護層形成用塗工液を調製した。
この保護層形成用塗工液を、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、円筒状支持体に形成された中間層/感光層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を6m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を70μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を40μmとした。
上記実施例26において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ6m/min、すなわち離間時周速比R=1.0とした以外は実施例26と同様にして、保護層塗膜の形成された比較例19の電子写真感光体を作製した。
上記実施例26において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を170mm/sec(>V1=160mm/sec)とした以外は実施例26と同様にして、比較例20の電子写真感光体を作製した。
上記実施例26において、塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を130mm/sec(V2=100mm/sec<V3<V1=160mm/sec)とした以外は実施例26と同様にして、比較例21の電子写真感光体を作製した。
以上の実施例13〜26ならびに比較例8〜21で作製した各電子写真感光体の中間品または電子写真感光体おける周方向の膜厚分布、及び実施例15、24、25で作製した各電子写真感光体の軸線方向の膜厚分布を、多機能マルチチャンネル分光光度計(大塚電子株式会社製: MCPD2000)で測定した。なお、実施例14および比較例11〜13の電荷発生層塗膜の膜厚は、上記装置でXYZ表色系における3刺激値のうちの1要素であるY値を測定し、そのY値から予め作成しておいた検量線に従い厚さを求めた。測定結果を図11〜図17に示す。図11は中間層の、図12は電荷発生層の、図13〜15は電荷輸送層の周方向の各膜厚分布プロファイルを展開図として示す図であり、図16は電荷輸送層の軸線方向の膜厚分布プロファイルを示す図である。また、図17は保護層の周方向の膜厚分布プロファイルを展開図として示す図である。
また結果の一覧を下記の表5にまとめる。なお、表5において、判定◎○△×は総合評価を示し、◎は非常に優れている、○は良好である、△は少々悪目であるが概ね良好である、×は非常に悪いことを意味する。また、◎○は『非常に優れている』と『良好である』の中間レベルに対応している。◎〜○までが好適に使用出来る状態であり、△は少々難があるが使えないことはない状態である。
他方、本発明の適切な離間時周速比条件を満たしている場合でも、図11における実施例13と比較例9、10の対比、図12における実施例14と比較例12、13の対比、図13、14における実施例15と比較例17、18の対比および図17における実施例26と比較例20、21の対比から判るように、離間速度がV1より大きい場合では離間動作が早すぎて塗液だまりが全く消費されずに離間が完了してしまい大きな継ぎ目が発生しており、また、離間速度がV1より小さくV2より大きい場合では、若干の塗液だまり消費効果で継ぎ目部分は小さくなっているが、全て消滅される前に離間が完了してしまうので、まだ継ぎ目は発生していた。
また、図13の実施例18、19や、図16の実施例24、25に示すように、離間速度V3が本発明の上下限値より外れている場合や、塗布している状態での円筒状支持体の塗布時周速u1と塗布ロールの塗布時周速u2とが大きく異なり両者の比r(=u1/u2)が本発明の上下限値から外れていると、前記試験1と同様に、図1、2のリバースロールコーティング方式の装置で矢符23方向に離間した本試験でも、塗布中での部分的乾燥や、離間方向への加速による塗液の波うち、リフ゛の発生等により膜厚バラツキにおいて少々悪目となる傾向があるが、それでも継ぎ目という局所的な膜厚変動部そのものは、図1、2の塗布装置を使って矢符23方向に離間する場合でも殆ど発生していないことも確認できた。
試験3においては、実施例および比較例として作製した電子写真感光体を画像形成装置に装着し、該電子写真感光体によって形成された画像の品質を評価した。試験に使用した実施例の電子写真感光体は、前述の実施例1〜12、15〜26ならびに以下のように作製した実施例27の電子写真感光体である。また比較例の電子写真感光体としては、前述の比較例1、3〜5、14〜21の電子写真感光体である。
酸化アルミニウム(化学式: Al2O3)および二酸化ジルコニウム(化学式: ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製: TTO-D-1)4重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製: CM8000)4重量部とを、エタノール35重量部とブタノール32重量部とベンジルアルコール25重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、粘度が12mPa・sec.の中間層形成用塗工液を調製した。
この中間層用形成用塗工液を、直径30mm、全長362mmのアルミニウム製の円筒状支持体上に、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いて本発明の塗布方法により塗布した。
塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を7m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を80μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を40μmとした。
塗布開始後、円筒状支持体5が塗布回数2回に達したとき、離間速度20mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時に、円筒状支持体5の周速を先の10m/minから25m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minとした。したがって、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールV2との離間時周速比R=2.5となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続し、電荷発生層塗膜を形成させた。
電荷輸送層形成用塗工液を電荷発生層上に転写塗布している状態での第1・第2メタリングロール13,63の塗布時周速を25m/min、塗布ロール61および円筒状支持体5の塗布時周速を15m/min.とし、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を160μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を80μmとした。
以上の各電子写真感光体を、画像形成装置であるデジタルフルカラー複写機(シャープ株式会社製: AR-C260)に搭載した。そして、それぞれの電子写真感光体を搭載したデジタルフルカラー複写機により、日本工業規格(JIS)P0138に規定されるA3判の普通紙上に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のハーフトーン画像を形成した。ここでハーフトーン画像とは、画像の濃淡を各色のドットによって階調表現した画像のことである。得られた画像を目視観察し、画像欠陥や画質を評価した。結果を下記の表6および7にまとめる。
実施例5、6、11、12、18、19、24、25では部分的に乾燥し始めていた状態で塗布回転を繰り返した事や上限を超えた離間速度により、若干の膜厚ムラ発生や、塗膜表面に形成されたリブによると考えられる電子写真感光体の周方向に対応したスジ状や島状の濃淡が少し見られていたものの、局所的な膜厚不均一部である継ぎ目に関しては画像上で殆ど見られていない。
これら実施例の中でも、特に実施例1、26、27では継ぎ目の影響が全く見られなかっただけでなく、膜厚均一性も優れているので膜厚ムラに起因する濃度ムラは見られておらず、本試験で用いたフルカラー複写機に搭載しても非常に優良な画質であった。
2, 61 塗布ロール
3 塗工液
4 塗工液供給手段
5 円筒状支持体
6 第1駆動手段
7 第2駆動手段
8 第1周速検出手段
9 第2周速検出手段
10 回転回数検出手段
11 移動手段
12 制御手段
13 メタリングロール(第1メタリングロール)
63 第2メタリングロール
14, 44 調整部材
15 膜厚調整手段
39 第3駆動手段
40 第3周速検出手段
41 クリーニング手段
42 クリーニングブレード
80 画像形成装置
81 電子写真感光体
Claims (10)
- 電子写真感光体の感光層形成用の塗工液が塗布される転写用塗布ロールと、この塗布ロールの近傍に配置された円筒状支持体とをそれぞれ回転させて、前記塗布ロール上に形成した塗膜を前記円筒状支持体に転写し、その後、
塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させる際に、塗布ロールと平行でかつ塗布ロールに最接近した円筒状支持体よりも大径の仮想円筒面に沿って、かつ円筒状支持体の塗布位置から円筒状支持体の回転方向の下流側へ円筒状支持体の外周面を移動させ、
塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させた後、円筒状支持体の回転を所定時間継続することにより円筒状支持体上の塗膜を乾燥させ、
塗布ロールと円筒状支持体のいずれか一方の離間時周速V1が他方の離間時周速V2よりも速くなるように制御し、かつ、塗布ロールと円筒状支持体とが相対的に離間する離間速度V3を前記離間時周速V2よりも遅い速度となるように制御し、
前記離間時周速V1と離間時周速V2との比をRとすると、R=V1/V2が1.2以上15.0以下であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記離間速度V3が0.1mm/sec以上350mm/sec以下である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記離間時周速V1が円筒状支持体の周速であり、前記離間時周速V2が塗布ロールの周速である請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記塗布ロール上に形成した塗膜を前記円筒状支持体に転写する際、塗布ロールと円筒状支持体のうちいずれか一方の塗布時周速をu1、他方の塗布時周速をu2とし、前記塗布時周速u1と塗布時周速u2との比をrとすると、r=u1/u2が0.7以上1.4以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記円筒状支持体上の塗膜が乾燥した後、円筒状支持体上への塗膜の転写および乾燥を繰り返して積層膜からなる感光層を形成する請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記感光層が、電荷輸送物質を含む電荷輸送層と、電荷発生物質を含む電荷発生層とを有し、少なくとも前記電荷輸送層が、電荷輸送層形成用の前記塗工液を用いて形成される請求項5に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記感光層が、最外層に保護層を有する請求項6に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記保護層が樹脂層である請求項7に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記請求項1〜8のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法によって製造された電子写真感光体。
- 前記請求項9に記載の電子写真感光体を備えた画像形成装置。
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