JP4732943B2 - 電子写真感光体およびその製造方法 - Google Patents

電子写真感光体およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4732943B2
JP4732943B2 JP2006103479A JP2006103479A JP4732943B2 JP 4732943 B2 JP4732943 B2 JP 4732943B2 JP 2006103479 A JP2006103479 A JP 2006103479A JP 2006103479 A JP2006103479 A JP 2006103479A JP 4732943 B2 JP4732943 B2 JP 4732943B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating
cylindrical support
roll
peripheral speed
separation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006103479A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007279242A (ja
Inventor
知己 中村
孝嗣 小幡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2006103479A priority Critical patent/JP4732943B2/ja
Publication of JP2007279242A publication Critical patent/JP2007279242A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4732943B2 publication Critical patent/JP4732943B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)

Description

本発明は、電子写真感光体およびその製造方法に関し、詳しくは、複写機、電子写真方式のプリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられ、円筒状支持体に塗工液を塗布して作製される電子写真感光体およびその製造方法に関する。
C. F. Carlsonの発明による電子写真技術は、「感光体の均一な帯電」、「像露光による静電潜像の形成」、「該潜像のトナーによる現像」、「紙への該トナー像の転写(中間に転写体を経由する場合もある)」および「定着による画像形成」という5つの基本プロセスから構成されており、即時性、高品質かつ保存性の高い画像が得られることから、複写機や各種プリンター、ファクシミリの分野で広く使われている。
これらの画像形成装置に用いられる電子写真感光体は、中空の円筒状支持体の外周面に有機光導電材料による感光層が形成されたものである。最近の電子写真感光体の多くは、高性能化の要求に応じて開発が重ねられた結果、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、さらに一部の感光体ではその上に耐久性を向上させるための保護層が順次塗布された積層構造を有する機能分離型の感光体が実用化されるに至っている。本明細書では、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層で構成される層を総称して感光層と呼ぶ。なお、中間層、および保護層は電子写真感光体の性能向上のために設けられるものであり必須のものではないので、電荷発生層と電荷輸送層とから成る層および電荷発生層と電荷輸送層とが一層で構成される層もまた感光層と呼ぶ。
この電子写真感光体の感光層は薄膜で、かつ均一な厚さであることが要求される。そのため薄い感光層を高い厚さ均一性で塗布して高機能化を実現するべく、またより低コストでの塗布を可能にするべく、新しい塗布方法の開発検討も行われている。
円筒状支持体となる電子写真感光体用素管の外周面に感光層を塗布する方法としては、従来からスプレー塗布法、浸漬塗布法、ブレード塗布法等が知られているが、これらの塗布法では塗膜の均一性に劣っていたり、生産効率が悪いといった問題点も残されている。
例えば、スプレー塗布法は塗工液をスプレーノズルから微細粒として噴出/塗布を行うことから塗布後の外観は良好である反面、1回の塗布によって形成される膜の厚みが薄く、所望の膜厚を得るためには複数回の塗布を繰り返す必要がある。また、一度に多量の塗工液を塗布すると塗布面に液ダレが発生し、厚さの不均一な感光層が形成されてしまうという問題、さらに、塗工液を噴出させて塗布しているので、液中の揮発成分が揮散し易く、塗工液の粘度が上昇し、形成後の塗布層にオレンジピール(表面にオレンジ肌状のうねりが生ずる現象)が発生するという問題もある。
浸漬塗布法は円筒状支持体の一端部を保持し、円筒の軸線を塗工液の液面に対して垂直にした状態で塗工液に浸漬、その後、塗工液から引上げることによって円筒状支持体の表面に感光層を塗布する方法であり、現在の電子写真感光体製造には最も多用されている製造法である。しかしながら、浸漬塗布法によって塗布される膜厚は、円筒状支持体を塗工液から上下方向に引上げるので、重力と周囲の溶剤蒸気の影響により塗工液が円筒状支持体の表面を伝わって垂れ落ち、支持体の引上げ方向上側の膜厚が下側の膜厚よりも薄くなり、軸方向に不均一になるという問題がある。このような膜厚の不均一性を解消するには、塗工液から円筒状支持体を引上げる際の引上速度、塗工液の粘度/固形分濃度、塗工液に含まれる揮発成分の蒸発速度、溶剤蒸気層濃度など多岐に渡っての厳密な制御が必要であるが、それは極めて困難である。
さらに、この塗布法で均一な厚みを有する塗膜を形成するには浸漬後の引上速度を遅くせざるを得ず、即ち生産効率の低下に繋がるという点も問題である。また、本来塗布する必要のない円筒状支持体の内部および端面にまで塗膜が形成されるので塗布後の後処理(円筒状支持体の内部および端面に形成された塗膜を剥離)が必要であること、そして、塗工液に円筒状支持体を浸漬するので、塗工液を貯留する槽には円筒状支持体の全長が浸漬されるに足る、塗膜形成に必要とされる量を超える大量の塗工液を常に収容しておかなければならず、塗工液の使用効率が悪くなるということも問題である。現在では、塗工液の使用効率を高めるために、既に使用実績があり貯留槽に収容されている塗工液に、新たに作製した必要量の塗工液を追加補充し、何度も同じ塗工液を使用する方法がとられているが、塗工液の粘度や特性は、経時変化していくと共に新たに加えられた塗工液との微妙な差異によって変化するので、塗布作業毎に毎回塗布条件の最適化を行わなければならず作業効率を低下させている。
ブレード塗布法は円筒状支持体を臨み、円筒状支持体に近接する位置にブレードを配置し、ブレードに塗工液を供給して円筒状支持体に塗工液を塗布し、円筒状支持体を1回転させた後ブレードを後退させる塗布法である。この方法では高い生産性を得ることができる反面、ブレードを後退させる際、塗工液の表面張力の影響により円筒状支持体に塗布された塗膜の一部が盛り上がり、膜厚が不均一になるという問題がある。
上記以外の方法としては、塗布ロールに膜厚を規制した塗工液の膜を形成し、塗布ロールを臨み塗布ロールに近接もしくは当接するように配置される円筒状支持体と塗布ロールとを、それぞれ回転させながら塗布ロールから円筒状支持体に塗工液を転写塗布するロールコート法もある。しかしながら、ロールコート法では、塗布後、塗布ロールと円筒状支持体とを引離す際に塗工液の表面張力によって、余分な塗工液が円筒状支持体に付着する現象、いわゆる液引き現象が発生し易く、これにより塗布膜に継ぎ目が残り、画像欠陥が生じるという問題がある。なお「継ぎ目」とは、塗布ロールと円筒状支持体の離間時に、余分な塗工液が円筒状支持体に付着して膜厚が局所的に不均一になる部分のことである。
この継ぎ目の発生を抑制する方法がいくつか提案されている。例えば、円筒状支持体を1回転以上回転させて塗布を終了した後、円筒状支持体を塗料供給ロールから離間し、さらに円筒状支持を回転させ続けて塗膜面のレベリング(膜厚の均一化)を図る方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、あらかじめレベリングされるべき塗料溜まりの量を見越して精密な膜厚制御を行わなければならず、また継ぎ目を完全になくすことは困難であるという問題がある。
また、塗布後、塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際に塗布ロール上の塗工液で形成された膜の膜厚を減少させることにより、継ぎ目の発生を防止する方法や(例えば、特許文献2参照)、塗布後、塗布ロール上の塗膜の膜厚と、塗布ロールと円筒状支持体とで形成される間隙との関係を規定し、その状態から塗布ロール上の塗工液の量を減少させ、塗布ロールと円筒状支持体との塗工液の繋がりを切断する方法(例えば、特許文献3参照)も提案されている。しかしながら、特許文献2および3で開示された方法では、いずれも画像欠陥の発生を完全に防止するに足る水準まで継ぎ目を抑制することができなかった。さらに、これらの方法は、塗布時および離間時において、塗布条件の厳密な制御が必要となり、高い生産効率を望むことができないという問題がある。
また、塗布後、塗布ロールと円筒状支持体との離間速度を制御する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、この方法によっても、特許文献2および3の方法と同様に、画像欠陥の発生を完全に防止するに足る水準まで継ぎ目を抑制することができなかった。
また、塗布ロールと円筒状支持体との周速を変えることによって塗膜にリブを形成させ、その状態で塗布ロールと円筒状支持体とを離間する方法(例えば、特許文献5参照)も提案されている。しかしながら、この方法は塗膜にリブを形成させているので、低沸点の溶媒を用いた場合、リブを解消して均一化する前に溶媒が乾燥してしまい塗膜に波打ちが発生してしまう。他方、高沸点の溶媒を用いた場合は、上記均一化のためのレベリング時間を充分にとることができる反面、乾燥に長時間を要し生産効率が極めて悪くなるという問題がある。さらに、リブを形成させるためには、ロール径、周速、ギャップ、塗料粘度、表面張力等の種々の条件を厳密に決めなければならないので塗布条件の決定が難しく、かつ塗工液組成、装置構成の設定許容範囲が狭められるという問題がある。特に、電荷発生層および中間層では形成される膜厚が薄いので、リブを形成する条件設定が非常に難しく、リブを形成させても短時間で乾燥が進んでしまい充分にレベリングできず、均一な膜厚の層を得ることが困難である。
また、円筒状支持体を塗布ロールから離間させる際に、円筒状支持体の周速と塗布ロールの周速とに差異を設けることで、塗布液を鋭く切断し、継ぎ目を抑制する方法(例えば、特許文献6参照)が提案されている。しかしながら、この方法でも完全に液引き現象を抑制し、継ぎ目の発生を防止できる状態までには達していない。
特開平3−12261号公報 特開平11−216405号公報 特開2000−325863号公報 特開平11−276958号公報 特開2000−84472号公報 特開2005−87971号公報
上記のように、低コストと高い膜厚均一性の両立を目指した様々な塗布方法が提案されているが未だ十分なものではない。特に、ロールコート法は高粘度液から低粘度液まで広く適用できる塗布法であり、電子写真分野においても感光体、現像ローラ、帯電ローラなどの円筒形製品全般に適用可能であるものの、継ぎ目という局所的な膜厚不均一部は前記抑制法をもってしても実用に十分な水準まで達していない。ことに電子写真感光体の場合、最近の解像度アップ、フルカラー化に伴い感光層の膜厚均一性に対する要求も非常に厳しくなっており、従来技術では対応しきれなくなっているのが現状である。
本発明は、以上の問題点を解決すべく開発されたものであり、ロールコート法による電子写真感光体の製造において、簡単な制御で塗布ロールと円筒状支持体とを離間させる際の継ぎ目の発生を抑制し、円筒状支持体に効率よく均一な膜厚の感光層を形成する電子写真感光体およびその製造方法を提供するものである。
かくして、本発明によれば、電子写真感光体の感光層形成用の塗工液が塗布される転写用塗布ロールと、この塗布ロールの近傍に配置された円筒状支持体とをそれぞれ回転させて、前記塗布ロール上に形成した塗膜を前記円筒状支持体に転写し、その後、
塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させる際に、塗布ロールと平行でかつ塗布ロールに最接近した円筒状支持体よりも大径の仮想円筒面に沿って、かつ円筒状支持体の塗布位置から円筒状支持体の回転方向の下流側へ円筒状支持体の外周面を移動させ、
塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させた後、円筒状支持体の回転を所定時間継続することにより円筒状支持体上の塗膜を乾燥させ、
塗布ロールと円筒状支持体のいずれか一方の離間時周速V1が他方の離間時周速V2よりも速くなるように制御し、かつ、塗布ロールと円筒状支持体とが相対的に離間する離間速度V3を前記離間時周速V2よりも遅い速度となるように制御し、
前記離間時周速V1と離間時周速V2との比をRとすると、R=V1/V2が1.2以上15.0以下である電子写真感光体の製造方法が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記電子写真感光体の製造方法によって製造された電子写真感光体およびこの電子写真感光体を備えた画像形成装置が提供される。
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際、ある特定範囲の離間速度で、ある特定方向に離間しつつ、離間時周速に差をもたせるよう制御することによって、塗布ロールと円筒状支持体との間の塗工液の連接部を構成する塗工液(便宜上、これを「橋架け部」と呼ぶ)を、周速が早い方に巻き取らせて急速に消費させ、継ぎ目となる橋架け部の塗工液溜まりを消滅させることができるので、液引き現象の発生を防止し、継ぎ目がなく、かつ膜厚均一性も高くなり、画像欠陥を生じることのない電子写真感光体を製造することができる。
また、本発明の電子写真感光体によれば、前記の製造方法によって製造されるため、感光層は継ぎ目の無い均一な厚みを有することができる。このように、感光層の膜厚が均一化されているので、感光層の露光によって静電潜像が形成される時、さらに静電潜像に現像剤が供給されて画像形成される時、膜厚ムラに起因した画像欠陥が防止される。
また、本発明の画像形成装置によれば、前記電子写真感光体が備えられるので、画像欠陥を生じることのない画像形成装置が実現される。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、電子写真感光体の感光層形成用の塗工液が塗布される塗布ロールと、この塗布ロールの近傍に配置された前記電子写真感光体用の円筒状支持体とをそれぞれ回転させて、前記塗布ロール上に形成した塗膜を前記円筒状支持体に転写し、その後、塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させる際に、塗布ロールと円筒状支持体のいずれか一方の離間時周速V1が他方の離間時周速V2よりも速くなるように制御し、かつ、塗布ロールと円筒状支持体とが相対的に離間する離間速度V3を前記離周速V2よりも遅い速度となるように制御する。
ここで、本発明において、「離間時周速」とは、塗布ロールによる円筒状支持体上への塗膜の転写完了後、塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させる直前から完全に離間させるときの、塗布ロールおよび円筒状支持体の周速を意味し、さらに、「塗布時周速」とは、塗布ロールによる円筒状支持体上への塗膜の転写時の塗布ロール及び円筒状支持体の周速を意味する。
また、本発明において、「離間速度」とは、離間時周速で回転する塗布ロールと円筒状支持体が相対的に離れる方向に移動する速度であって、例えば円筒状支持体が塗布ロールから直線的に離れる場合、円筒状支持体の軸心の移動出発位置から停止位置までの距離を移動時間で除した値(単位:m/minまたはmm/sec)を意味し、円筒状支持体が塗布ロールから揺動して離れる場合は、円筒状支持体の回転が停止していると仮定して、円筒状支持体の外周面の特定部位(例えば塗布ロールとの接触面の一点)が移動出発位置から停止位置まで円弧軌跡に沿って移動した円弧距離(長さ)を移動時間で除した値(単位:m/minまたはmm/sec)を意味し、塗布ロールが移動する場合も同義である。
本発明が製造対象とする電子写真感光体の感光層としては、特に限定されるものではなく、例えば、電荷発生層と電荷輸送層との2層構造の感光層、電荷発生機能と電荷輸送機能を有する1層構造の感光層、これらの1層または2層構造に中間層および保護層の少なくとも一方が積層されてなる感光層など、当該分野で通常用いられる感光層が挙げられる。また、本発明の電子写真感光体の製造に用いられる塗布装置としては、上述の製造方法を行ない得る装置であれば特に限定されないが、塗布ロール上の塗膜の膜厚調整機能を備えるものがさらに好ましい。
以下、本発明の電子写真感光体の製造方法の好ましい形態について詳説する。
本発明の電子写真感光体の製造方法において、前記離間時周速V1と離間時周速V2との比をRとすると、R=V1/V2が1.2〜15.0が好ましく、1.3〜8.0がさらに好ましい。前記離間時周速比R(=V1/V2)を、1.2〜15.0の範囲に設定することによって、確実に継ぎ目の発生を防止することができる。離間時周速比Rが1.2未満であると、せん断力が不足すると共に、塗液だまりを消費させることができないので、継ぎ目の発生を充分に防止することができず均一な厚みの塗膜が得られない。離間時周速比Rが15.0を超えると、円筒状支持体5の離間前後における速度上昇の程度が大きくなり過ぎるので、加速度に起因して塗液が飛散するようになり、均一な厚みの塗膜を得ることができなくなる。
前記離間時周速V1は具合的には、例えば1.0〜600m/min、好ましくは3.0〜200m/minであり、離間時周速V2としては、例えば0.06〜500m/min、好ましくは0.35〜160m/minである。
前記離間速度V3は、具体的には0.1〜350mm/sec(0.006〜21m/min)が好ましく、10
〜200mm/secがさらに好ましい。このようにすれば、塗膜を形成する塗工液に加わる回転
方向のせん断力を向上させると共に、前記離間時周速比Rによる巻き取り効果とも相まって、円筒状支持体と塗布ロールとの間の橋架け部の増大をより強く抑制できる。なお、離間速度V3が前記離間時周速V2を超えると橋架け部を消滅させきらない内に離間が終了してしまい、大きな継ぎ目が残留する。但し、離間速度V3が離間時周速V2より遅くても350mm/secを超えてしまうと、塗膜に作用させる張力は充分であるが、離間時の加速度によって円筒状支持体表面の塗膜が波うち、均一な厚みの塗膜を得ることができなくなる。一方、離間速度V3が0.1mm/sec未満であると、塗膜に作用させる張力を充分に得られないだけでなく、作業時間が長くなりすぎるので、その間に乾燥し始め、膜厚均一性の悪化に繋がる。
また、前記速い方の離間時周速V1が円筒状支持体の周速であり、遅い方の離間時周速V2が塗布ロールの周速であるように設定することが好ましい。本発明のようなロールコート法が用いられる場合、塗布される対象物である円筒状支持体の直径よりも塗布ロールの直径の方が大きくなる様に塗布装置が構成されることが一般的である。このような場合、直径の小さい円筒状支持体の方を速い周速で回転させるよう制御することにより、重量の大きい塗布ロールを制御のために駆動機構に過剰な負担をかけるということなく、周速差を与える制御を一層簡単に実現することが可能となる。さらに、上述した塗布ロールと円筒状支持体との間の橋架け部の液だまりが、速い離間時周速V1で回転する円筒状支持体に巻き取られていくので、円筒状支持体上の塗膜表面を橋架け部の塗工液で再塗布することになり、膜厚均一性がさらに向上する結果にも繋がる。
また、円筒状支持体と塗布ロールとを離間させる際に、円筒状支持体を上方または下方へ揺動させることが好ましい。言い換えると、円筒状支持体を塗布ロールから離間させる際、塗布ロールと平行でかつ塗布ロールに最接近した円筒状支持体よりも大径の仮想円筒面(円弧軌跡)に沿って、円筒状支持体の外周面を移動させる。
このようにすれば、塗膜を形成する塗工液に加わる回転方向のせん断力を向上させると共に、離間時周速比Rによる巻き取り効果とも相まって、円筒状支持体と塗布ロールとの間の橋架け部の大きさをより強く制御することができる。また、上述のように、塗布ロールよりも軽量で、かつ塗布最下流側の円筒状支持体を移動させるため、塗布装置の構成を簡素化することができる。
また、前記塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させた後、円筒状支持体の回転を所定時間継続することにより円筒状支持体上の塗膜を乾燥させることが好ましい。このようにすれば、塗工液の溶媒が高沸点である場合に、塗布ロールと円筒状支持体とを離間した後も塗工液が流動性を有していても回転継続中に塗膜表面が乾燥され、重力の作用に起因する塗膜の垂れを防止し、均一な塗膜を形成することできる。
また、複数層からなる感光層を形成する場合、前記円筒状支持体上の塗膜が乾燥した後、円筒状支持体上への塗膜の転写および乾燥を繰り返して積層膜からなる感光層を形成することができる。この場合、感光層が、電荷輸送物質を含む電荷輸送層と、電荷発生物質を含む電荷発生層とを有し、少なくとも前記電荷輸送層が、電荷輸送層形成用の前記塗工液を用いて形成されることが好ましい。
一般に電荷輸送層は、感光層の最外層もしくは最外層に近い層を構成するので、高い耐磨耗性が求められる。耐磨耗性の向上と電荷輸送層形成用塗工液の粘度上昇とは相関しており、粘度の高い塗工液の塗布、すなわち耐久性の高い電荷輸送層の形成にはロールコート法が適している。また感光層を、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層構造にすることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、繰返し使用時の安定性も増した高耐久性電子写真感光体を得ることができる。さらに、特定の機能をそれぞれ別の層に付与し、各層を積層することによって総合的に機能を発現させることができるので、より高機能な電子写真感光体を得ることができる。
また、前記感光層が、最外層に保護層を有していてもよい。この場合、保護層形成用の塗工液を用い、ロールコート法により保護層を形成することが好ましい。一般的に保護層は、熱または光によって硬化する樹脂、ゾル-ゲル法による無機酸化物などを含み、硬化反応またはゲル化反応を利用して形成される。従って、保護層形成用塗工液には、硬化剤またはゲル化剤が含まれるので、塗工液が槽中に保管されている間にも少しずつ反応が進行する。その結果、塗工液としてのポットライフは短く、多量の塗工液が必要な浸漬塗布法では塗工液を使い切らない内に短期間で全液を交換する必要があった。保護層形成用塗工液をロールコート法で塗布することによって、塗工液を塗布に必要な量だけ作製すればよいので、塗工液のポットライフは問題とならない。さらに、浸漬塗布の場合のように、塗布槽中の塗布に関連しないデッドスペースに液を充填する必要もないので、塗液の使用効率を高くすることもできる。
以下、図面に基き本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の電子写真感光体の製造方法の実施形態1で用いられる円筒状支持体への塗工液の塗布装置の構成を示す平面図であり、図2は図1に示す塗布装置の部分的な断面図であって、塗工液の円筒状支持体への塗布状態を示している。
円筒状支持体への塗工液の塗布装置1(以後、塗布装置1と略称する)は、塗布ロール2(アプリケートロールとも呼ぶ)と、塗布ロール2に塗工液3を供給する塗工液供給手段4と、塗布ロール2から塗工液3が転写される円筒状支持体5と、円筒状支持体5を回転駆動させる第1駆動手段6と、塗布ロール2を回転駆動させる第2駆動手段7と、回転する円筒状支持体5の周速を検出する第1周速検出手段8と、回転する塗布ロール2の周速を検出する第2周速検出手段9と、円筒状支持体5の回転回数を検出する回転回数検出手段10と、円筒状支持体5を塗布ロール2に対して当接または近接離反するように移動可能な移動手段11と、回転回数検出手段10の検出出力に応答し、塗布ロール2に対して円筒状支持体5が離反する方向に移動するように移動手段11の動作を制御すると共に、円筒状支持体5が回転する周速と塗布ロール2が回転する周速のうちいずれか一方の周速が他方の周速よりも速くなるように第1および第2駆動手段6, 7の動作を制御する制御手段12と、塗布ロール2を臨んで配置される円筒状部材13および円筒状部材13と塗布ロール2との間隙を調整する調整部材14a,14bとを有する膜厚調整手段15とを備え、上記各部材は基台16上に配設される。
円筒状支持体5は、その両端が一対の軸棒部材22a,22bにて着脱および回転可能に装着される。一方の軸棒部材22aは、その円筒状支持体5とは反対側の端部24が第1駆動手段6である電動機の出力軸に連結されており、円筒状支持体5が軸棒部材22a, 22b間に装着されている時には、第1駆動手段6によって円筒状支持体5が回転駆動される。第1駆動手段6は、その出力軸における軸棒部材22aとは反対側に回転回数検出手段10であるエンコーダが装着され、円筒状支持体5の回転回数を検出することができる。また、軸棒部材22aには第1周速検出手段8である回転速度センサーが装着され、円筒状支持体5の周速を検出することができる。
塗布ロール2は、軸棒部材22a, 22bに装着された円筒状支持体5を臨み、円筒状支持体5の軸線に対して塗布ロール2の軸線が平行になるように配置される。塗布ロール2は、基台16上に固設される一対の第2チョック25a, 25bに備えられる図示しない軸受に、その軸棒26を介して回転自在に支持される。塗布ロール2の軸棒26は、第2駆動手段7である電動機の出力軸に連結され、第2駆動手段7の駆動力によって塗布ロール2が回転駆動される。また、塗布ロール2の軸棒26には第2周速検出手段9である回転速度センサーが装着され、塗布ロール2の周速を検出することができる。
本実施形態では、塗布装置1は第1駆動手段6による円筒状支持体の回転方向(矢符27方向)と、第2駆動手段7による塗布ロール2の回転方向(矢符28方向)とが同一方向であり、円筒状支持体5の外周面と塗布ロール2の外周面との間に若干の間隙が形成される、いわゆる「リバースロールコーティング」に構成される。
第2チョック25a, 25bには、基台16表面に平行方向で、かつ外方に向かって立ち上がるように支持部材29a, 29bが設けられており、支持部材29a, 29bはエアシリンダー30a, 30bを介して第1チョック21a, 21bとそれぞれ連結されている。エアシリンダー30a, 30bのロッドの先端部は、基台16表面に平行方向で、かつ外方に向かって立ち上がるようにして第1チョック21a 21bに形成される第1突起部31a, 31bに取付けられる。また、エアシリンダー30a, 30bは、図示しない配管によって空圧ユニット32に接続され、供給されるエアによってロッドを基台16の平面と平行な矢符23方向に進退させることができる。このエアシリンダー30a, 30bのロッドの進退によって、円筒状支持体5が塗布ロール2に対して近接離反するように矢符23方向に移動する。エアシリンダー30a, 30b、配管および空圧ユニット32は、移動手段11を構成する。
なお、移動手段11はエアシリンダー30a, 30bによる塗布ロール2に対して矢符23方向に近接離反するような構成以外にも、図2の状態の円筒状支持体5を上下垂直方向へ接近離反させる構成であってもよく、好ましくは上下方向へ円弧軌跡に沿って揺動させて接近離反させるように移動手段11を構成してもよい。円筒状支持体5を揺動させる移動手段11としては、例えば、第1チョック21a 21bの外側端部を基台16に揺動可能に連結し、エアシリンダー30a, 30bの基端とロッド先端を基台16と第1チョック21a 21bの内側端部に揺動可能に連結し、エアシリンダー30a, 30bを伸長動作させることにより、第1チョック21a 21b、棒軸部材22a,22b、第1駆動手段6、エンコーダ10と共に円筒状支持体5が上方へ揺動させる構成が挙げられる。
本実施の形態では、塗工液供給手段4は、塗工液3をその内部空間に貯留するパンにより構成され、貯留される塗工液3の液面が塗布ロール2の外周面の少なくとも一部に接触することのできる配置になるように基台16上に設けられる。これにより回転する塗布ロール2が、パンに貯留される塗工液3を外周面に付着させて塗布に用いることができる。
本実施の形態の塗布装置1は、塗布ロール2に供給された塗工液3の膜厚を膜厚調整手段15によって調整することができる。膜厚調整手段15の円筒状部材13には、本実施の形態ではメタリングロールが用いられる。メタリングロール13は、その軸棒34を介して、図示しない軸受をそれぞれ備える一対の第3チョック35a, 35bに回転自在に支持され、第1チョック21a, 21b同様に、基台16上の不図示の軌道に乗るように設けられ、矢符23方向に移動することができる。調整部材14a,14bは、第2チョック25a, 25bに形成される第2突起部36a, 36bおよびそれらに対向するように第3チョック35a, 35bに形成される第3突起部37a, 37bと、一端が第3突起部37a, 37bに形成したねじ孔に羅着しかつ他端が第2突起部36a, 36bに回転自在に取り付けられたおねじ部材38とを含んで構成される。おねじ部材38を回転させることによって、その回転運動が第3チョック35a, 35bの直進運動に変換されて矢符23方向に移動する。これにより塗布ロール2に対してメタリングロール13が近接離反するように移動し、塗布ロール2とメタリングロール13との間の間隙、即ち塗工液3の膜厚を調整することができる。
なお、調整部材14はおねじ部材38を用いる構成に限定されるものではなく、第2チョック25a, 25bと第3チョック35a, 35bとの間にエアシリンダーまたは油圧シリンダーなどを設け、動作させることによって塗布ロール2とメタリングロール13との間隙を調整するように構成されてもよい。
メタリングロール13の軸棒34の一端は、第3駆動手段39である電動機の出力軸に連結され、その駆動力によって、メタリングロール13は回転駆動することができる。またメタリングロール13の軸棒34には、第3周速検出手段40である回転速度センサーが装着され、メタリングロール13の周速を検出することができる。
塗工液供給パンに貯留された塗工液3中を塗布ロール2の外周面が通過することで、塗布ロール2の外周面に付着した塗工液3はメタリングロール13との間の間隙を通過する際に間隙の大きさに従って塗工液3の膜厚が調整される。次に、膜厚調整された塗工液3が、塗布ロール2から円筒状支持体5に転写される。塗布ロール2とメタリングロール13とによる膜厚調整は、より詳細には、塗布ロール2とメタリングロール13とを、矢符28および矢符45方向にそれぞれ回転させながら2つのロール間隙を狭めたり、またはメタリングロール13の周速を上げることによっても、調整(この場合は減少)させることができる。なお、メタリングロール13は1本に限定されることなく、塗布ロール2に到達するまでに2本以上配してもよく、また回転方向が隣接するロールに対して同方向に回転されてもよく逆方向に回転されてもよく、さらに回転させることなく固定した状態で膜厚調整に用いることもできる。
一般的に、図1および図2に示すような塗布装置1における乾燥塗膜の厚さLは式(1)で与えられるので、式(1)に基づいて各パラメータを調整することで膜厚調整ができる。
L = K・α・η・g・√(Rm)・√(Rt 3)/R・γ ・・・・・(1)
ここで、K;係数(ロール径に固有な係数)
α; 塗工液の固形分濃度(vol%)
γ; 塗工液の表面張力
η; 塗工時のせん断速度における粘度
g; 塗布ロールとメタリングロールとの間隙寸法
m; メタリングロールの周速
t; 塗布ロールの周速
R; 円筒状支持体の周速
塗布装置1には、さらに塗工液3のクリーニング手段41が設けられる。クリーニング手段41は、メタリングロール13の表面に付着する塗工液3を掻取り、塗工液供給手段4に回収する。クリーニング手段41は、クリーニングブレード42と、クリーニングブレード42を支持する第4チョック43a, 43bと、調整部材44a, 44bとを含んで構成される。
第4チョック43a, 43bは、前述の第1チョック21a, 21bと同様に基台16上に設けられ、矢符23方向に移動することができる。クリーニングブレード42は板状の部材であり、その長手方向がメタリングロール13の軸線方向に延びるように配置され、その短手方向の端部によってメタリングロール13表面に付着する塗工液3を掻取る。クリーニングブレード42は第4チョック43a, 43bの支持部で角変位可能に支持され、その短手方向がメタリングロール13に臨む角度を変化させることによってクリーニングブレード42と塗布ロール2との間隙の大きさを調整し、塗工液3の掻取量を調整することができる。また調整部材44a, 44bによっても、メタリングロール13とクリーニングブレード42とで形成される間隙の大きさを調整し、塗工液3の掻取量を調整してもよい。さらに前述のクリーニングブレード42の角変位と併用してもよい。なお調整部材44a, 44bは、前述の調整部材14a, 14bと同様に構成されるので、説明は省略する。
制御手段12は中央処理装置(略称CPU)とメモリを備える処理回路である。メモリには、塗布装置1の全体動作を制御するプログラム、並びに塗布される対象物、塗工液3の種類と特性に応じて予め定められる塗布条件がテーブルデータとして記憶されている。制御手段12は、回転回数検出手段10、第1周速検出手段8、第2周速検出手段9および第3周速検出手段40からの検出出力に応じ、制御プログラムおよび予め定められる塗布条件に基づいて移動手段11、第1駆動手段6、第2駆動手段7および第3駆動手段39の動作を制御する。
以下、図1および2を参照しながら、塗布装置1による円筒状支持体5への塗工液3の塗布方法を説明する。
塗布工程の概要は、先ず、回転する塗布ロール2の外周面が塗工液供給手段4である塗液供給パンに貯留される塗工液3中を通過することによって、塗布ロール2の表面上に塗工液3の塗膜が形成される。次いで、膜厚調整手段15により前記塗膜の膜厚を調整した後、円筒状支持体5を塗布ロール2に所望の間隙をもって近接させ、塗布ロール2上に形成された塗膜が円筒状支持体5に転写され、塗膜が形成された円筒状支持体5を塗布ロール2から離間させ、円筒状支持体5上の塗膜を乾燥し硬化させて感光層の一構成層を形成する。
なお、塗工液3として中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を形成するための塗工液を選択し、上述の方法により円筒状支持体5上に膜を重ねていくことにより、最終的に所望の積層構造の感光層を形成することができる。
次に、塗布工程の具体的な諸条件について説明する。
塗布を開始後、円筒状支持体5に転写される塗膜の膜厚を均一にするために、円筒状支持体5の回転回数、すなわち塗工液3の円筒状支持体5への塗布回数は、1回以上、20回以下の範囲に設定され、1.5〜10回が好ましく、より好ましくは2〜5回である。なお、塗布回数が1回未満であると、当然、円筒状支持体5の表面に未塗布の部分が残存する事になる。他方、20回を超えると作業時間が長くなり、生産効率の低下に繋がる。従って、塗布回数としては1〜20回が最適回数である。
なお、円筒状支持体5に転写される塗工液3による塗膜の膜厚は、前述の膜厚調整手段15によるメタリングロール13と塗布ロール2との間隙の大きさの他にも、塗布ロール2と円筒状支持体5の周速、塗工液3の物性、円筒状支持体5および塗布ロール2の表面の材質、円筒状支持体5と塗布ロール2との間隙の大きさなどの調整によって制御することができる。
塗布ロール2から円筒状支持体5へ塗膜を転写する際、塗布ロール2と膜厚調整手段であるメタリングロール13との間隙寸法は、塗布する塗工液の種類、円筒状支持体5の表面に最終的に形成する膜厚に応じて1〜1000μmの範囲で設定可能である。また、円筒状支持体5の塗布時周速u1と塗布ロール2の塗布時周速u2との塗布時周速比r(=u1/u2)は、0.7〜1.4に設定されることが好ましく、r=1.0がさらに好ましい。具体的には、塗布時周速u1およびu2は1〜600m/minが好ましく、3〜200m/minがさらに好ましい。なお、塗布ロール2および円筒状支持体5の塗布時周速が1m/minよりも遅いと、塗布ロール2の外周面に形成され円筒状支持体5へ転写する前の塗膜が部分的に乾燥してしまい、円筒状支持体5上に転写された塗膜の膜厚均一性が悪化したり、複数回転する場合の円筒状支持体5上の塗膜が部分的に乾燥して膜厚均一性が悪化するおそれがある。逆に、塗布時周速が600m/minよりも速すぎると、塗布ロール2および円筒状支持体5上の塗工液が遠心力によって飛散するおそれがある。
以下、塗布時周速比rの前記範囲の意義などについて説明する。
一般的に、塗布ロール2から円筒状支持体5へ感光層形成用の塗工液を転写している間、円筒状支持体5の表面での塗工液の流動状態は、塗布時周速比rによって異なる。塗布時周速比rが高くなるにつれて円筒状支持体軸方向の塗工液膜表面に連続的な凹凸模様、つまり周方向にリング状に隆起した部分が軸方向に連続的に複数発生した、いわゆる「リブ」が形成される傾向にあり、塗布時周速比rが1.4を超えるあるいは0.7を下回ると塗膜の膜厚の不均一化が著しくなる。このリブ発生の下限条件は、キャピラリー数Caと形態パラメータH0/D(H0: 円筒状支持体5と塗布ロール2との間隔の1/2、D: 円筒状支持体5の半径)との関係で整理されている。ここで、キャピラリー数Caとは下の(2)式で定義される。
Ca = μ・U/γ ・・・・・(2)
但し、μ;運動粘度(=η/ρ、η:塗工液の粘度、ρ:塗工液の密度)
U; 塗工液の流動速度(=塗布速度)
γ; 塗工液の表面張力
即ち、キャピラリー数の物理的意義は、表面張力に対する粘性の割合である。
従ってキャピラリー数Caおよび形態パラメータH0/Dに対する影響因子であるロール径、間隙の大きさ、周速、塗工液の粘度、表面張力によってリブ発生の下限条件が定まることが知られている。
円筒状支持体5に均一な膜厚の塗膜を形成するには、このようなリブの発生を防止することが重要であり、円筒状支持体5と塗布ロール2との塗布時周速の比rを、0.7〜1.4の範囲内に設定して塗膜を形成することによって、ほとんどの条件下でリブを生じることなく均一な塗膜を形成できる。
本発明の塗布方法において最も特徴とする所は、上述したように塗布ロール2と円筒状支持体5とが相対的に離間するときの塗布ロール2および円筒状支持体5のそれぞれの離間時周速を相対的に異ならせ、かつ、塗布ロール2と円筒状支持体5とが相対的に離間する方向へ移動する速さである離間速度V3を、前記各離間時周速よりも遅い速度で制御することにある。具体的には、塗布開始後の円筒状支持体5の回転回数が予め定める回数(例えば1〜20回の範囲の特定回数)に達したことを回転回数検出手段10によって検出すると同時に、その検出出力に応じて制御手段12が第1、第2駆動手段6, 7の動作を制御して、例えば円筒状支持体5の離間時周速V1が、塗布ロール2の離間時周速V2よりも速くなるようにする、または塗布ロール2の離間時周速V1が、円筒状支持体5の離間時周速V2よりも速くなるようにすると共に、移動手段11の動作を制御して円筒状支持体5を塗布ロール2から前記離間時周速V2よりも遅い離間速度V3で離間させる。このとき、離間時周速V1と離間時周速V2との比R(=V1/V2)が1.2〜15.0であり、かつ離間速度V3が0.1〜350mm/secであることが好ましい。
上述のように、本発明においては、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間させると同時にいずれか一方の周速が他方の周速よりも速くなるように制御するが、塗布装置1の構成上、円筒状支持体5の外径が塗布ロール2の外径よりも小さく重量的にも軽いため、高速度化の対象とするには外径が小さく軽量な円筒状支持体5の方が有利であるという点からも、円筒状支持体5の周速V1を塗布ロール2の離間時周速V2よりも速く制御することが好ましい。さらには、離間方向として、図1に示す移動手段11では円筒状支持体5と塗布ロール2とは相対的に基台16の平面と平行方向であるが、図2の状態(塗布時の円筒状支持体5と塗布ロール2とが最も近接した状態)の円筒状支持体5を、図2中の2点鎖線で示す円弧軌跡Pに沿って上下方向へ揺動させることが好ましい。このときの円筒状支持体5の離間速度は、円筒状支持体5の点A1から点A2まで円弧軌道Pに沿った長さを移動時間で除した値である。なお、塗布ロール2から円筒状支持体5を揺動させて離間させる場合、円筒状支持体5の塗布位置から回転方向の下流側へ揺動させることが、円筒状支持体5上に継ぎ目のない均一な膜厚で塗膜を形成することができるため好ましい。よって、図2の実施形態1(リバースロールコーティング)の場合、塗布ロール2に対して円筒状支持体5を上方へ揺動させる。
塗布ロール2で円筒状支持体5に塗工液を塗布している状態における円筒状支持体5の塗布時周速u1および塗布ロール2の塗布時周速u2と、離間と同時に設定される円筒状支持体5の離間時周速V1および塗布ロール2の離間時周速V2とは、それぞれ同一(u1=V1、 u2= V2)であってもよく、また異なる値(u1≠V1、 u2≠V2)に定められてもよい。例えば、前述の塗布時周速比r(=u1/u2)が1.4になるように設定されて塗布が行なわれる場合、離間時には塗布ロール2と円筒状支持体5とを単に離間させるだけで、円筒状支持体5の離間時周速の方が塗布ロール2の離間時周速よりも速い状態を実現することができる。しかしながら、多くの場合、塗布状態では円筒状支持体5の塗布時周速u1と塗布ロール2の塗布時周速u2とは同じ値、すなわち塗布時周速比rが1.0(u1=u2)に設定されるので、円筒状支持体5の周速u1を離間の直前で周速V1まで加速し(u1<V1)、一方塗布ロール2は離間時も同じ周速を維持し(u2=V2)、その後、円筒状支持体5を塗布ロール2から離間させることにより、円筒状支持体5の離間時周速V1が塗布ロール2の離間時周速V2よりも速くなるように(R=V1/V2=1.2〜15.0)制御する方法がとられる。
本実施形態1では、周速比Rの制御は、回転回数検出手段10によって所定の回転回数に達したことが検出されると同時に、該出力に応答し、制御手段12がメモリに記憶されている塗布条件に該当するテーブルデータを読出し、テーブルデータに指定されている離間時周速V1およびV2になるように、第1および第2駆動手段6, 7に対して回転動作制御信号を出力すると共に、同じくテーブルデータに指定されている離間速度で円筒状支持体5を塗布ロール2から離間するように移動手段11に対して離間動作制御信号を出力して行われる。
周速比Rの制御方法は、上記に限定されるものではなく、例えば、塗布時には円筒状支持体の回転軸に負荷をかけて周速を遅くしておき、離間時にその負荷を取除くことによって、円筒状支持体の周速を速くする方法、また反対に離間時に塗布ロールに負荷をかけることによって塗布ロールの周速を遅くして相対的に円筒状支持体の周速を速くする方法、また回転軸に負荷をかける手段として、回転軸に摩擦体を設置しブレーキを配置する方法、もしくは回転軸をクラッチで繋ぎそのクラッチの接続強度により負荷を変更する方法などを用いて円筒状支持体もしくは塗布ロールの周速を変化させる方法であってもよい。
塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間させる際、円筒状支持体5の離間時周速V1と塗布ロール2の離間時周速V2とが同じであると、両者を離間させているにも関わらず導電性支持部5上の塗膜と塗布ロール2上の塗膜とが表面張力の作用によって伸びると共に、塗布ロール2と円筒状支持体5との間に消費されずに残る多量の塗工液が溜まって橋架け部を形成する。一般的に塗膜の膜厚が薄いと、その部分の溶剤が早く減少し固形分濃度が上昇するので、膜厚の薄い部分は他の部分より表面張力が高くなる傾向にある。前述の橋架け部の中心付近は、その膜厚が薄くなっていくので、塗工液が円筒状支持体5および塗布ロール2の表面上の塗膜から橋架け部中心に流れ、塗液だまり量の増加に繋がる傾向がある。さらに円筒状支持体5と塗布ロール2との離間が進行し、塗液だまり量の増加を上回って、橋架け部が切れると、橋架け部が形成されていた箇所にそれまでに流れ込んだ大量の塗液だまりが残留したままになり、局所的に塗工液量が増加した不均一部となる。このようにして塗工液量が局所的に増加した部分は、円筒状支持体を回転させてレベリングを行っても充分に均一化されきらず、結果的に局所的に膜厚の極めて厚い継ぎ目を形成してしまう。
一方、本実施形態1では、上述のように円筒状支持体5と塗布ロール2との離間の際に円筒状支持体5の離間時周速V1を塗布ロール2の離間時周速V2より速く制御するため、塗膜を形成する塗工液には、離間方向に張力が加えられるだけでなく、回転方向にも急激にせん断力が加えられるので、円筒状支持体5と塗布ロール2との間に大きな橋架け部が形成され難くなる方向に作用する。この時点では、小さいながらも橋架け部が形成されてしまうが、その橋架け部を構成する塗液だまりを周速が早い方に巻き取らせて急速に消費させることで、継ぎ目となる塗液だまり自体が消滅する。その結果、前述のような大きな塗液だまりの残留による塗膜の継ぎ目が形成されることがないので、円筒状支持体5の表面に均一な厚みの塗膜が形成される。特に、離間する際の円筒状支持体5と塗布ロール2との周速の比R(=V1/V2)を、1.2〜15.0の範囲に設定することによって、確実に継ぎ目の発生を防止することができる。比Rの範囲は、好ましくは1.3〜8.0である。周速の比Rが1.2未満であると、せん断力が不足すると共に、塗液だまりを消費させることができないので、継ぎ目の発生を充分に防止することができず均一な厚みの塗膜が得られない。周速の比Rが15.0を超えると、円筒状支持体5の離間前後における速度上昇の程度が大きくなり過ぎるので、加速度に起因して塗液が飛散するようになり、均一な厚みの塗膜を得ることができなくなる。したがって、周速比Rは1.2〜15.0が好ましい。
それに加え、上述したように、移動手段11による塗布ロール2と円筒状支持体5との離間速度V3は、塗布ロール2の離間時周速V2よりも遅い速度に設定され、特に、離間時の離間速度V3を0.1〜350mm/secに設定し、さらには、円筒状支持体を上下方向に揺動させて離間させることによって、塗膜を形成する塗工液に加わる回転方向のせん断力を向上させると共に、周速比Rによる巻き取り効果とも相まって、円筒状支持体5と塗布ロール2との間の橋架け部の増大をより強く抑制できる。なお、離間速度V3が塗布ロール2の離間時周速V2を超えると橋架け部を消滅させきらない内に離間が終了してしまい、大きな継ぎ目が残留する。但し、離間速度V3が塗布ロール2の離間時周速V2より遅くても350mm/secを超えてしまうと、塗膜に作用させる張力は充分であるが、離間時の加速度によって円筒状支持体5表面の塗膜が波うち、均一な厚みの塗膜を得ることができなくなる。一方、離間速度V3が0.1mm/sec未満であると、塗膜に作用させる張力を充分に得られないだけでなく、作業時間が長くなりすぎるので、その間に乾燥し始め、膜厚均一性の悪化に繋がる。
また、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間後、円筒状支持体5の回転を、予め定める時間継続し、円筒状支持体5の表面の塗膜をある程度乾燥させることが好ましい。例えば、円筒状支持体5に塗布された塗工液の溶媒が高沸点の場合、円筒状支持体5への塗布後、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間した後も、塗膜を構成する塗工液が流動性を有しているので、重力の作用によって、塗膜が下方に垂れて均一な厚みの塗膜が形成できなくなることがある。なお、溶媒として比較的揮発性の高い溶剤を用いた場合、溶剤が揮発することによる急速乾燥を防止するために、塗布ロール2および円筒状支持体5の部分または基台16上に塗布装置1全体を覆うカバー部材を設けて略密閉状態とすることも、均一な厚みの塗膜を形成するために有効である。
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2である塗布装置60のロール構成部分の断面図である。本実施形態2の塗布装置60が前記実施形態1と異なる点は、ロール構成部分であるため、平面構成図を省略するとともに、対応する部分については同一の参照符号を付す。以下、本実施形態2の実施形態1とは異なる点を主として図3および図1を参照しながら説明する。
本実施の形態の塗布装置60においては、塗布ロール61は、少なくとも表層部が弾性を有する素材から成り、塗布ロール61から円筒状支持体5に塗工液3を転写している状態では、第1駆動手段6による円筒状支持体5の回転方向(矢符62)と、第2駆動手段7による塗布ロール61の回転方向(矢符28)とが逆であり、円筒状支持体5と塗布ロール61とが塗工液3を介して当接するように配置、すなわち特定のニップ圧を持って配置されることを特徴とする。このように、本実施の形態の塗布装置60は、塗布ロール61と円筒状支持体5とが、逆方向に回転するナチュラルロールコーティングに構成される。
塗布ロール61(塗布ロール2も同じ)の少なくとも表層部を構成する弾性素材としては、シリコーンゴム、有機ポリサルファイドゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、ニトロスルホン化ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴムなどのゴム、またシリコーン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂、また前述のゴムにフッ素樹脂などをコーティングしたものが挙げられる。
また、この塗布装置60では、実施形態1におけるクリーニングブレードが省かれると共に、第1のメタリングロール13に隣接してもう一つの第2のメタリングロール63が設けられている。第2のメタリングロール63の軸部は、クリーニングブレードを支持していた第4チョック43a,43bに回転自在に支持され、かつ第4駆動手段である電動機(図示省略)の駆動軸と連結している。
第1のメタリングロール13は塗布ロール2とは逆方向の矢符64方向に回転し、第2のメタリングロール63が塗布ロール2と同一方向であって第1のメタリングロール13とは逆方向の矢符65方向に回転するよう制御される。塗布ロール2と第1のメタリングロール13との間隙および第1・第2のメタリングロール13,63間の間隙は、調整部材14a, 14bおよび調整部材44a, 44bによって、所望の値になるように調整される。
また、実施形態2が実施形態1と異なる構成は、塗工液供給手段4に貯留される塗工液3に第2のメタリングロール63の下部が浸漬されることである。第2のメタリングロール63に付着した塗工液3は、第1のメタリングロール13を介して塗布ロール61に供給され、該塗布ロール61から円筒状支持体5に転写塗布される。塗膜厚さは、メタリングロール13, 63間およびメタリングロール13と塗布ロール2との間に形成される間隙寸法を主とし、その他塗工液物性、各ロール周速、ニップ圧、塗布ロール2の材質などによって決定される。
ナチュラルロールコーティングである実施形態2の場合、実施形態1で説明したような第1および第2駆動手段6, 7の動作制御によって離間時における円筒状支持体5と塗布ロール61との離間時周速をV1とV2とに設定する以外に、以下のように周速比Rの制御を行うこともできる。例えば、離間前の円筒状支持体5の塗布時周速u1が塗布ロール61の塗布時周速u2よりも速い設定である場合、塗布ロール61の表層が弾性体で構成されるので、塗布ロール61と円筒状支持体5とをニップ圧をかけて当接させることによって、塗布ロール61が円筒状支持体5に対する摩擦体、すなわちブレーキの役目を果たし、円筒状支持体5の塗布時周速u1が塗布ロール61の塗布時周速u2とほぼ同じになり得る。この状態から円筒状支持体5と塗布ロール61とを離間すると、円筒状支持体5に働いていた摩擦力であるブレーキ作用も無くなり、塗布後の円筒状支持体5の離間時速度V1は設定されていた塗布時速度u1(>u2=V2)に戻るので、離間時の円筒状支持体5は塗布ロール61よりも速い周速で回転する。また、塗布ロール61から円筒状支持体5を離間させる際に、実施形態1で説明したように円筒状支持体5を上下方向へ揺動させてもよく、このナチュラルロールコーティングの場合は円筒状支持体5の塗布位置から回転方向下流側である下方へ揺動させる。
なお、塗布ロール61上の塗膜の膜厚設定値、塗布ロール61、円筒状支持体5、第1および第2のメタリングロール13,63の各塗布時周速値、塗布ロール61および円筒状支持体5の各離間時周速値、円筒状支持体5の離間速度値は、実施形態1に準じることができる。
(実施形態3)
図4は本発明の実施形態3である塗布装置70のロール構成部分の断面図である。本実施形態3の塗布装置70は、ナチュラルロールコーティング方式の実施形態2の塗布装置60に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付し説明を省略する。
この塗布装置70においては、第1のメタリングロール13が、塗工液供給手段4であるパン中に貯留される塗工液3にその下部を浸漬するように配置され、塗布ロール13の矢符28で示す回転方向と同じ矢符71方向に回転する。塗布ロール61は、第1のメタリングロール13を臨み、第1のメタリングロール13の上方に所定の間隙を有するように配置され、第1のメタリングロール13から塗布ロール61によって塗工液3が供給される。塗布ロール61の矢符28で示す回転方向下流側には、塗布ロール13と同じ回転方向の矢符72方向に回転する第2のメタリングロール63が所定の間隙をもって配置されている。塗布ロール61に供給された塗工液3の膜厚は、第2のメタリングロール63によって調整され、所定膜厚の塗膜が塗布ロール61から円筒状支持体5に転写塗布される。なお、第2のメタリングロール63の近傍には、クリーニングブレード42が配置されており、回転する第2のメタリングロール63の表面の塗工液3がクリーニングブレード42によってクリーニングされる。
この実施形態3の場合も、塗布ロール61および円筒状支持体5の各塗布時周速、各離間時周速の設定方法は、実施形態2と同様にして行なうことができる。また、塗布ロール61上の塗膜の膜厚設定値、塗布ロール61、円筒状支持体5、第1のメタリングロール13の各塗布時周速値、塗布ロール61および円筒状支持体5の各離間時周速値、円筒状支持体5の離間速度値は、実施形態1に準じることができる。また、塗布ロール61から円筒状支持体5を離間させる際に、実施形態2と同様に円筒状支持体5の塗布位置から回転方向下流側である下方へ揺動させてもよい。
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態4である塗布装置75のロール構成部分の断面図である。この塗布装置75は、実施形態1の塗布装置に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
この塗布装置75は、円筒状支持体5が塗布ロール2を臨み、塗布ロール2の上方に、図示しない調整部材によって接近離反可能に配置され、実施形態1〜3におけるメタリングロールは省略され、膜厚調整機能を兼備えたクレーニングブレード42が塗布ロール2の塗布下流側の近傍に配置されている。塗布装置75は、塗布ロール2と円筒状支持体5とは、同一方向(矢符28、27方向)に回転し、塗布がリバースロールコーティング方式で行なわれる。クリーニングブレード42は、図示しない調整部材によって塗布ロール2の外周面に対して所定の間隙をもって近接するよう調整され、クリーニングブレード42によって、塗布ロール2の表面の塗膜の膜厚を調整すると共に、余剰の塗工液3をパンに向かって掻取る。所定膜厚に調整された塗布ロール2上の塗膜は円筒状支持体5の表面に転写される。
塗布ロール2と膜厚調整手段であるクリーニングブレード42との間隙寸法は、実施形態1と同様に塗布する塗工液の種類、円筒状支持体5の表面に最終的に形成する膜厚に応じて1〜1000μmの範囲で設定可能である。塗布時における塗布ロール2および円筒状支持体5の塗布時周速は、1〜600m/minの範囲内で選択されることが好ましい。また、円筒状支持体5、塗布ロール2, 61およびメタリングロール13の周速は、それぞれ同じであってもよく、また異なってもよい。
この実施形態4の場合も、塗布ロール2上の塗膜の膜厚設定値、塗布ロール2、円筒状支持体5の各塗布時周速値、塗布ロール2および円筒状支持体5の各離間時周速値、円筒状支持体5の離間速度値は、実施形態1に準じることができる。また、塗布ロール2から円筒状支持体5を離間させる際に、リバースロールコーティングである実施形態4は円筒状支持体5の塗布位置から回転方向下流側である左側(クリーニングブレード42側)へ揺動させてもよい。
(他の実施形態)
前記実施形態1〜4では、塗工液供給手段がパンに塗工液3を貯留するものであったが、これ以外にも、例えばインキング装置およびスポンジロールのような接触型の供給装置、ディスペンサまたはダイノズルなどの非接触型の注入装置が使用されてもよい。
(電子写真感光体)
次に、本発明の電子写真感光体の具体構成について説明する。
本発明の電子写真感光体における感光層は、上述のように電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一の層内に含有される単層型であってもよく、また電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層して成る積層型であってもよい。また、積層型の場合、同一の機能であっても特性を高めるために2層以上に積層してもよい。
また、円筒状支持体と、電荷発生物質および電荷輸送物質の含有層、または積層型を成す電荷発生層および電荷輸送層(これらを総称して便宜上光導電層と呼ぶ)との間に中間層が設けられてもよい。中間層を形成することによって円筒状支持体から光導電層への電荷の注入を防止できるので、電子写真感光体の帯電性の低下を防ぐことができ、また円筒状支持体表面の欠陥を中間層が被覆することにより均一な表面が得られるので光導電層の成膜性を高めると共に、円筒状支持体に対する接着性を向上させることができる。
また、光導電層の表面には、保護層が設けられてもよい。保護層を設けることによって、光導電層の耐刷性を向上させることができると共に、電子写真感光体表面を帯電させる際のコロナ放電により発生するオゾンまたは窒素酸化物などの感光層への化学的悪影響を防止することができる。さらに、円筒状支持体の導電性のむらを抑制するために、円筒状支持体上部にカーボンペーストまたは銀ペーストなどの導電性を付与した塗膜を形成してもよい。なお、本発明の電子写真感光体は、以上に述べた層構成に限定されることなく、種々の層構成を採ることが許される。
以下、円筒状支持体、感光層の各層の構成成分および塗工液などについて詳細に説明する。
(円筒状支持体)
円筒状支持体は、感光層を形成するための支持部材としての役割を果たすと共に、感光体の電極としての機能も有する。円筒状支持体(電子写真感光体用素管)の材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料を用いることができる。また、これらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリオキシメチレンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム、炭素粒子、金属粒子などの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したもの等を用いることもできる。円筒状支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスではレーザ光の波長が揃っているので、入射するレーザ光と電子写真感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。円筒状支持体の表面に前述のような乱反射処理を施すことによって、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
(電荷発生層)
電荷発生層は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質を主成分として含有する。電荷発生物質として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴまたはチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドまたはペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンまたはピレンキノンなどの多環キノン系顔料、金属フタロシアニンまたは無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー、ビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系色素、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ、フラペオシンなどに代表されるアクリジン系色素、メチレンブルー、メチレングリーンなどに代表されるチアジン系色素、カプリブルーまたはメルドラブルーなどに代表されるオキサジン系色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、チオインジゴ系色素、ビスベンゾイミダゾール系色素、キナクリドン系色素、キノリン系色素、レーキ系色素、アゾレーキ系色素、ジオキサジン系色素、アズレニウム系色素、トリアリルメタン系色素、キサンテン系色素、シアニン系色素等の種々の有機顔料、染料、さらにアモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機材料を挙げることができる。これらの電荷発生物質は、1種が単独でまたは2種以上が組合わされて使用される。
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生物質を円筒状支持体上に真空蒸着する方法、または溶剤中に電荷発生物質を分散して得られる電荷発生層形成用塗工液を円筒状支持体上に塗布する方法などがある。これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を公知の方法によって分散し、得られた塗工液を円筒状支持体上に前記塗布方法により塗布して電荷発生層を形成することが好ましい。以下、塗布方法について説明する。
前記バインダ樹脂には、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、およびこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などからなる群から選ばれる1種が単独で、または2種以上が混合されて使用される。共重合体樹脂の具体例としては、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂は、前述のものに限定されることなく、一般に用いられる公知の樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。
溶剤には、例えばテトラクロロプロパンまたはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、イソホロン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、安息香酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、1, 2-ジメトキシエタンまたはジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤、ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤、N, N-ジメチルホルムアミドまたはN, N-ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した溶剤を用いることもできる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との混合比率は、電荷発生層全体の重量を100%とすると、電荷発生物質が10〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質が10重量%未満では感度不足となる。他方、電荷発生物質が99重量%を超えると電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少するので、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される「黒ポチ」と呼ばれる画像のかぶりが多く発生する。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前処理として、電荷発生物質を粉砕機によって予め粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる場合、用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように最適な条件を選択することが望ましい。
さらに電荷発生層には、必要に応じてホール輸送材料、電子輸送材料、酸化防止剤、分散安定剤、増感剤などの各種添加剤を添加してもよい。これにより電気特性が向上すると共に、塗工液としての保存安定性も高まる。また、電子写真感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることもできる。
電荷発生層は、前述したように電荷発生層形成用塗工液を調製し、調整された塗工液を本発明の塗布方法で塗布することによって形成することが好ましい。電荷発生層の膜厚は、0.05〜5.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0μmである。電荷発生層の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、電荷発生量の不足から感度が悪化する。電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での過剰な電荷移動が感光体表面の電荷を消去していく過程が強く現れ、帯電性が低下する。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ、輸送する能力を有する電荷輸送物質をバインダ樹脂中に含有させることによって得られる。電荷輸送物質としては、ホール輸送物質および電子輸送物質を用いることができる。
ホール輸送物質としては、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマーとしては、例えばポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ-9-ビニルアントラセンなど、またはポリシラン等が挙げられる。
電子輸送物質としては、例えばベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、キサントン誘導体、フェナントラキノン誘導体、無水フタル酸誘導体、ジフェノキノン誘導体等の有機化合物、アモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン-テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機材料が挙げられる。電荷輸送物質は、ここに挙げたものに限定されるものではなく、その使用に際しては単独または2種以上を混合して用いることができる。
電荷輸送層のバインダ樹脂には、電荷輸送物質との相溶性に優れるものが選ばれる。具体例としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などの樹脂類を挙げることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋させた熱硬化性樹脂を使用してもよい。これらの樹脂は、単独で使用されてもよく、また2種以上混合されて使用されてもよい。前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、また成膜性および電気特性などにも優れているので、これらをバインダ樹脂に用いることが特に好ましい。
電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率(A/B)は、重量比で10/12〜10/30(約0.83〜約0.33)が好ましい。前記比率(A/B)が10/30未満でありバインダ樹脂の比率が高くなると、現状の電荷輸送物質の電荷輸送能では、充分な応答性が得られなくなる。また前記比率(A/B)が10/12を超えバインダ樹脂の比率が低くなると、耐刷性が低下し、感光層の摩耗量が増加する。従って、比率(A/B)を、10/12以上10/30以下が好ましい。
電荷輸送層には、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤または表面改質剤などの添加剤を混合してもよい。可塑剤としては、例えばビフェニル、塩化ビフェニル、ベンゾフェノン、o-ターフェニル、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、各種フルオロ炭化水素、塩素化パラフィン、エポキシ型可塑剤などを挙げることができる。表面改質剤としては、シリコーンオイル、フッ素樹脂等が挙げられる。
また、電荷輸送層には、機械的強度の増加、および電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を添加してもよく、さらに必要に応じて酸化防止剤および増感剤などの各種添加剤を添加してもよい。このことによって、電位特性が向上するとともに、塗工液としての保存安定性が高まり、また電子写真感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール誘導体またはヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。ヒンダードフェノール誘導体は、電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードアミン誘導体は電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲で使用されることが好ましい。また、ヒンダードフェノール誘導体とヒンダードアミン誘導体とは、混合されて使用されてもよい。この場合、ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量が、電荷輸送物質に対して0.1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体の使用量、ヒンダードアミン誘導体の使用量、またはヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量が電荷輸送物質に対して0.1重量%未満であると、塗工液の保存安定性の向上および電子写真感光体の耐久性の向上に充分な効果を発現することができない。また50重量%を超えると感度特性に悪影響を及ぼす。
電荷輸送層は、適当な溶剤中に前記電荷輸送物質および前記バインダ樹脂、ならびに必要に応じて前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層形成用塗工液を調製し、この塗工液を本発明の塗布法によって、電荷発生層上に塗布することによって形成することが好ましい。
塗工液に用いられる溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンまたはジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類、安息香酸メチルまたは酢酸エチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤、ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤、N, N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる1種が単独で、または2種以上が混合されて使用される。また前述した溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。
電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、電子写真感光体表面の帯電保持能が低下する。他方、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、電子写真感光体の解像度が低下する。したがって、5〜50μmが好ましい。
積層型感光体の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層してもよく、反対に電荷輸送層の上に電荷発生層を積層してもよい。また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する層は、前述の電荷輸送層を形成する場合と同様の方法で形成される。例えば、電荷発生物質とホール輸送物質と電子輸送物質とバインダ樹脂とを、前述の適当な溶剤に溶解または分散させて光導電層形成用塗工液を調製し、この光導電層形成用塗工液を本発明の塗布法によって塗布することによって形成される。単層型感光体の光導電層の膜厚は、5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。光導電層の膜厚が5μm未満であると、電子写真感光体表面の帯電保持能が低下する。光導電層の膜厚が100μmを超えると、生産性の低下に繋がる。
(中間層)
また、電子写真感光体には、円筒状支持体と光導電層との間に、中間層が設けられてもよい。円筒状支持体と光導電層との間に中間層が無い場合、円筒状支持体から光導電層に電荷が注入され、その帯電電位が低下し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像にカブリなどの画像欠陥が発生する場合がある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合、露光によって表面電荷が減少した部分にトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される「黒ポチ」と呼ばれる画像かぶりが発生する場合があり、その場合は著しい画質不良が生じる。すなわち、円筒状支持体または光導電層の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ポチなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる。
しかしながら、中間層を設けることによって円筒状支持体から光導電層へ電荷が注入することを抑制できるので、光導電層の帯電性の低下防止に有効であり、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止できる。また、中間層は円筒状支持体表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、光導電層の成膜性を高めることができる。また、光導電層の円筒状支持体からの剥離を抑え、円筒状支持体と光導電層との接着性を向上させることができる。
中間層には、各種樹脂材料から成る樹脂層またはアルマイト層などが用いられる。樹脂層を形成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどを挙げることができる。
中間層は金属酸化物などの粒子を含有してもよい。これらの粒子を含有させることによって、中間層の体積抵抗値を調節し、円筒状支持体から光導電層への電荷の注入をさらに抑制することができるとともに、各種環境下において電子写真感光体の電気特性の安定性を維持することができる。金属酸化物粒子としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどの粒子を挙げることができる。中間層に金属酸化物などの粒子を含有させる場合、例えば、前述の樹脂が溶解した樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層形成用塗工液を調製し、この塗工液を円筒状支持体上に塗布することによって中間層を形成することができる。
中間層形成用の樹脂溶液の溶剤には、前述の有機溶剤の他に、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム系なども用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。
前述の粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルまたは超音波分散機などを用いる一般的な方法を使用することができる。
中間層形成用塗工液中の樹脂および金属酸化物の合計含有量Cは、中間層形成用塗工液に使用されている溶剤の含有量Dに対し、C/Dが重量比で1/99〜40/60(約0.01〜約0.67)であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70(約0.02〜約0.43)である。また樹脂と金属酸化物との比率(樹脂/金属酸化物)は重量比で90/10〜1/99(9〜約0.01)であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95(約0.43〜約0.05)である。
中間層の膜厚は、0.01〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmである。中間層の膜厚が0.01μmより薄いと、実質的に中間層として機能しなくなり、円筒状支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得る効果が期待できず、円筒状支持体から光導電層への電荷の注入防止効果も期待できなくなるので、光導電層の帯電性の低下が生じやすくなる。他方、中間層の膜厚が20μmよりも厚いと、中間層を均一に形成することが困難になり、また感度特性も低下しやすくなるので好ましくない。
(保護層)
また、感光層の最外層として保護層が設けられてもよい。保護層を設けることによって、感光層の耐刷性を向上させることができるとともに、電子写真感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンまたは窒素酸化物などの感光層への化学的悪影響を防止することができる。保護層には、例えば樹脂、無機フィラー含有樹脂または無機酸化物などからなる層が用いられる。
保護層に使用される樹脂としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン-ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
また、保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの樹脂に硬度の高い無機フィラーまたは有機フィラーを添加することができる。これらフィラーの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。平均粒径が、0.02μm未満であると、表面保護層の耐摩耗性が低下し、電子写真感光体の長寿命化を図り難い。平均粒径が、3μmを超えると、光が保護層によって散乱しやすくなり、解像度の低下を招きやすい。
保護層に添加されるフィラーの具体例としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、窒化ケイ素、酸化カルシウム、硫酸バリウム、ITO、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、カーボンブラック、フッ素系樹脂微粉末、ポリシロキサン系樹脂微粉末、高分子電荷輸送材料微粉末のうちから選択される1種または2種以上の混合物を挙げることができる。これらのフィラーは、分散性向上、表面性改質などの理由から無機物、有機物で表面処理されてもよい。一般に撥水性処理としては、シランカップリング剤で処理したもの、フッ素系シランカップリング剤処理したもの、高級脂肪酸処理もしくは高分子材料などと共重合処理させたものなど、無機物処理としては、フィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理したものなどが挙げられる。
フィラーは、バインダ樹脂および/または電荷輸送材料、分散溶媒とともに粉砕、もしくはそのまま分散され、保護層として塗布される。保護層中のフィラー含有量は5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。5重量%未満であると、耐摩耗性が充分ではなく、50重量%を超えると、保護層の透明性が損なわれ、感度低下を招きやすい。
分散溶媒としてはメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロルメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が使用される。粉砕工程を加える場合はボールミル、サンドミル、振動ミルなどを用いる。
また、保護層中には、ホールあるいは電子を効率よく輸送することを目的に、前述した電荷輸送物質であるホール輸送物質あるいは電子輸送物質を添加してもよい。また、帯電性の向上等を目的に、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードアミンとヒンダードフェノールが、同一分子中に存在する化合物などを添加することもできる。さらに、可塑剤および/またはレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものを用いることができ、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、またはオリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
また、保護層を少なくとも硬化型樹脂からなる層で構成するには、材料の分野で公知である種々の架橋反応、例えばラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合などを用いることができる。また、表面エネルギーの低い硬化した保護層を実現させるために、公知の方法でシリコーン構造、パーフルオロアルキル構造、長鎖アルキル構造などを有する材料を架橋反応させてもよい。
前述のように保護層に電荷輸送機能を併せて持たせるために、電荷輸送機能を有する物質または高分子型電荷輸送物質を架橋反応させてもよい。例えば架橋性オルガノポリシロキサン樹脂と、それに結合可能でかつ電荷輸送性を有する構造単位を含む化合物とを混ぜて硬化し、ポリシロキサン樹脂とすることによって、優れた耐久性と電気特性とを実現することができる。
保護層の膜厚は0.5〜5μmであることが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。保護層の膜厚が0.5μmより薄いと、ブレードまたは帯電ローラの接触などによる外力をうけたとき、保護層が下層の光導電層との界面から剥離しやすくなる。これは、保護層の膜厚が薄い場合、外力をうけた時に保護層自体では抗し切れずに光導電層との界面に常時力が負荷され、それが、長期にわたると負荷されている力によって界面にずれが生じやすくなるためと考えられる。また、摩耗により保護層全てが電子写真感光体の寿命前に消失する可能性がある。保護層の膜厚が5μmよりも厚いと、キャリアが保護層内を移動する過程において拡散するので、文字太り等による解像度の低下が生じやすくなり、かつ感度低下および繰返しによる残留電位上昇が生じやすい。
(画像形成装置)
次に、上述の電子写真感光体を用いた本発明の画像形成装置の具体構成の一例について説明する。
図6は本発明の画像形成装置の一実施形態の構成を簡略化して示す側面配置図である。この画像形成装置80は、前述した本発明の塗布方法により製造された電子写真感光体を備える。なお、本発明の画像形成装置は、以下の記載内容に限定されるものではない。
この画像形成装置80は、前述した本発明の塗布方法により製造された電子写真感光体81が、図示しない装置本体に回転自在に支持されており、電子写真感光体81を回転軸線82まわりに矢符83方向に回転駆動させる図示しない駆動手段を備える。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を電子写真感光体81の芯体を構成する円筒状支持体に伝えることによって、電子写真感光体81を所定の周速度で回転駆動させる。
電子写真感光体81の周囲には、帯電器84と、図示しない露光手段と、現像器85と、転写器86と、クリーナ87とが、矢符83で示される電子写真感光体81の回転方向上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。また、クリーナ87と帯電器84との間には、除電ランプが設けられてもよい。
帯電器84は、電子写真感光体81の外周面を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器84は、例えばローラ帯電方式などの接触式の帯電手段や、コロトロン、スコロトロンなどの非接触式の帯電手段によって実現される。
露光手段は、光源として、例えば半導体レーザなどを備え、光源から出力されるレーザビームなどの光88を、帯電器84と現像器85との間で電子写真感光体81に照射することによって、帯電された電子写真感光体81の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。電子写真感光体81が回転しながら、光88が主走査方向となる電子写真感光体81の回転軸線82方向に繰返し走査されることによって電子写真感光体81の表面に静電潜像が順次形成される。
現像器85は、露光によって電子写真感光体81の表面に形成される静電潜像を現像剤によって可視化する現像手段であり、電子写真感光体81に近接して配置され、電子写真感光体81の外周面にトナーを供給する現像ローラ85aと、現像ローラ85aを電子写真感光体81の回転軸線82と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング85bとを備える。
転写器86は、現像によって電子写真感光体81の外周面に形成された可視像であるトナー画像を、図示しない搬送手段によって矢符88方向へ電子写真感光体81と転写器86との間に供給される記録媒体である転写紙89上に転写させる転写手段である。転写器86は、例えば帯電手段を備え、転写紙89にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を転写紙89上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ87は、転写器86による転写動作後に電子写真感光体81の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、電子写真感光体81の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード87aと、クリーニングブレード87aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング87bとを備える。
また、画像形成装置80には、電子写真感光体81と転写器86との間を通過した転写紙89が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器90が設けられる。定着器90は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ90aと、加熱ローラ90aに対向して設けられた加圧ローラ90bとを備え、回転する加熱ローラ90aと加圧ローラ90bの間にトナー画像を有する転写紙89が送り込まれて加熱押圧されて、トナー画像が転写紙89上に定着する。
この画像形成装置80による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、電子写真感光体81が駆動手段によって矢符83方向に回転駆動されると、露光手段からの光88の結像点よりも電子写真感光体81の回転方向上流側に設けられる帯電器84によって、電子写真感光体81の表面が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段から、電子写真感光体81の表面に対して画像情報に応じた光88が照射される。電子写真感光体81は、この露光によって光88が照射された部分の表面電荷が除去され、光88が照射された部分の表面電位と光88が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、その表面に静電潜像が形成される。
次いで、光源からの光88の結像点よりも電子写真感光体81の回転方向下流側に設けられる現像器85から、静電潜像の形成された電子写真感光体81の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー画像が形成される。
電子写真感光体81への露光と同期して、電子写真感光体81と転写器86との間に転写紙89が供給される。転写器86によって、供給された転写紙89にトナーと逆極性の電荷が与えられ、電子写真感光体81の表面に形成されたトナー画像が転写紙89上に転写される。
トナー画像の転写された転写紙89は、搬送手段によって定着器90に搬送され、定着器90の加熱ローラ90aと加圧ローラ90bとの間を通過する際に加熱および加圧され、トナー画像が転写紙89に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙89は、搬送手段によって画像形成装置80の外部へ排紙される。
一方、転写器86によるトナー画像の転写後も電子写真感光体81の表面上に残留するトナーは、クリーナ87によって電子写真感光体81の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された電子写真感光体81の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、電子写真感光体81の表面上の静電潜像が消失する。その後、電子写真感光体81はさらに回転駆動され、再度、帯電から始まる一連の動作が繰り返されて連続的に画像が形成される。
フルカラー機の場合、例えばタンデム式画像形成装置であれば上記画像形成装置80の定着器90を除く他の機器がブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色分だけ転写紙供給元と定着器90との間に並列に搭載される。各色の画像情報は独立に現像、転写紙に転写され、最終の定着器90で1つのカラー画像として完成される。
画像形成装置80に備わる電子写真感光体81は、前述の塗布方法によって製造されるので、その感光層が継ぎ目の無い均一な厚みに形成される。電子写真感光体81の感光層が均一化されているので、感光層の露光によって静電潜像が形成されるとき、さらに静電潜像に現像剤が供給されてトナー画像が形成されるとき、画像欠陥の発生が防止される。このように本発明の塗布方法により製造される電子写真感光体81を備えることによって、画像欠陥を生じることのない画像形成装置80が実現される。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(試験1)
試験1においては、直径: 30mm、長さ: 362mmのアルミニウム製の円筒状支持体を用い
て、該円筒状支持体の表面に浸漬塗布法によって中間層と電荷発生層とを積層して形成し、さらに電荷発生層の外層として電荷輸送層を形成した。なお、電荷輸送層の形成に際しては、本発明の塗布方法による実施例1〜12の電子写真感光体と、本発明から外れる塗布方法による比較例1〜7の電子写真感光体とを製造し、その電荷輸送層の継ぎ目の状態と、塗膜厚みの均一性を評価した。
(実施例1)
酸化アルミニウム(Al2O3)および二酸化ジルコニウム(ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製: TTO-D-1)3.5重量部および共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製: CM8000)3.5重量部を、1,3-ジオキソラン46.5重量部とメタノール46.5重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、粘度が10mPa・secの中間層形成用塗工液を調製した。この中間層形成用塗工液を塗工槽に満たし、円筒状支持体を塗工槽に浸漬した後、引上げることによって、膜厚1.0μmの中間層を円筒状支持体上に形成した。
次いで、電荷発生物質であるオキソチタニウムフタロシアニンとしてCu-Kα特性X線(波長: 1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンの2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製: エスレックBM-2)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合しペイントシェーカにて分散処理して、粘度が1.7mPa・secの電荷発生層形成用塗工液を調製した。この電荷発生層形成用塗工液を、先と同様の浸漬塗布法にて膜厚0.4μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
さらに、電荷輸送物質である下記の構造式(I)で示されるトリフェニルアミンダイマ
ー(Triphenylamine dimmer; 略称: TPD)10重量部と、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製: ユーピロンZ400)18重量部と、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製:KF-96)0.0032重量部とをキシレン109重量部に溶解させ、粘度が450mPa・secの電荷輸送層形成用塗工液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗工液を、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、先に浸漬塗布法で形成した電荷発生層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態における塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の塗布時周速を全て10m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を170μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を100μmとした。
まず、全ロール61, 13, 63および円筒状支持体5を回転させつつ、塗工液供給手段4から電荷輸送層形成用塗工液を第2メタリングロール63の外周面に供給し、第1・第2メタリングロール13, 63によって均一な厚みの塗膜を形成させた。その後、塗布ロール61を回転させながら前述の間隙寸法になるまで第1メタリングロール13に近接させ、第1メタリングロール13表面の塗膜を塗布ロール61に転写した。次いで、前述の中間層と電荷発生層とを形成した円筒状支持体5を回転させながら塗布ロール61に接触させて塗布を開始した。
塗布開始後、円筒状支持体5が予め定めておいた所定の塗布回数である2回に達したとき、離間速度30mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させる
と同時に、円筒状支持体5の周速を先の10m/minから16m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.6となるように調整した。さらに塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後、円筒状支持体5上の塗膜を120℃にて1時間乾燥させ、膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして実施例1の電子写真感光体を作製した。
Figure 0004732943
(実施例2)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間させる際に、塗布ロール61の周速を先の10m/minから16m/minに増速し、円筒状支持体5の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。すなわち離間させるときの速い方の離間時周速V1を塗布ロール61の周速とし、遅い方の離間時周速V2を円筒状支持体5の周速として、離間時周速比R(=V1/V2)が1.6となるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電子写真感光体を作製した。
(実施例3)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を0.1mm/sec(V3の下限値<V2=167mm/sec)とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の電子写真感光体を作製した。
(実施例4)
上記実施例1において、塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態における塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を全て25m/minとし、且つ、塗布終了後に塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間させる際の円筒状支持体5の周速を先の25m/minから40m/minに増速し、塗布ロール61の周速は離間前後において同一の25m/minのままとして、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.6となるように調整した。更に塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を350mm/sec(V3の上限値<V2=417mm/sec)とした以外は実施例1
と同様にして、実施例4の電子写真感光体を作製した。
(実施例5)
上記実施例3において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を0.08mm/sec(<V2=167mm/sec、且つ、<0.1mm/sec=下限値)とした以外は実施例3と同様にして、実施例5の電子写真感光体を作製した。
(実施例6)
上記実施例4において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を360mm/sec(<V2=417mm/sec、且つ、>350mm/sec=上限値)とした以外は実施例4と同様にして、実施例6の電子写真感光体を作製した。
(実施例7)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから12m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.2となるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例7の電子写真感光体を作製した。
(実施例8)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから150m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が15.0となるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例8の電子写真感光体を作製した。
(実施例9)
上記実施例1において、電荷輸送層形成用塗工液の塗布に際して、塗布ロール61と円筒状支持体5との間隙を80μmとして、塗布ロール61と円筒状支持体5とを同一方向に回転させるリバースロールコーティング方式の塗布装置を用い、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を7m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/minとした。すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を0.7とした。更に円筒状支持体5を塗布ロール61から離間させる際の円筒状支持体5の周速を7m/minから16m/minに増速し、塗布ロール61の周速は離間前後において同一の10m/minのままとし、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるように調整し、塗布ロール61から円筒状支持体5を上方に揺動した以外は実施例1と同様にして、実施例9の電子写真感光体を作製した。
(実施例10)
上記実施例9において、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を14m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.4とし、且つ、円筒状支持体5を塗布ロールから離間させる際に円筒状支持体5の周速を16m/minに増速して、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるようにした以外は実施例9と同様にして、実施例10の電子写真感光体を作製した。
(実施例11)
上記実施例9において、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を6m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を0.6とし、且つ、円筒状支持体5を塗布ロールから離間させる際に円筒状支持体5の周速を16m/minに増速して、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるようにした以外は実施例9と同様にして、実施例11の電子写真感光体を作製した。
(実施例12)
上記実施例9において、塗布している間の円筒状支持体5の塗布時周速u1を15m/min、塗布ロール61の塗布時周速u2を10m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.5とし、且つ、円筒状支持体5を塗布ロール61から離間させる際に円筒状支持体5の周速を16m/minに増速して、離間時周速比R(=V1/V2)を1.6となるようにした以外は実施例9と同様にして、実施例12の電子写真感光体を作製した。
(比較例1)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速を、塗布しているときの周速と同じ10m/min、すなわち離間時周速比R(=V1/V2)を1.0とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製した。
(比較例2)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を160m/min、すなわち離間時周速比R(=V1/V2)を16.0とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製した。
(比較例3)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を270mm/sec(>V1=267mm/sec)とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の電子写真感光体を作製した。
(比較例4)
上記実施例1において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を200mm/sec(V2=167mm/sec<V3<V1=267mm/sec)とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の電子写真感光体を作製した。
(比較例5)
上記実施例9において、円筒状支持体5を離間する際における円筒状支持体5の離間時周速を10m/minのまま、すなわち離間時周速比Rを1.0とした以外は実施例9と同様にして、比較例5の電子写真感光体を作製した。
(比較例6)
上記実施例9において、円筒状支持体5を離間する際における円筒状支持体5の離間時周速を160m/min、すなわち離間時周速比Rを16.0とした以外は実施例9と同様にして、比較例6の電子写真感光体を作製した。
(比較例7)
上記実施例9において、円筒状支持体5を離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を200mm/sec(V2=167mm/sec<V3<V1=267mm/sec)とした以外は実施例9と同様にして、比較例7の電子写真感光体を作製した。
前記実施例1〜12および比較例1〜7についての塗布時および離間時の周速、離間速度等の条件を下記の表1にまとめた。なお表1中、「実」は実施例、「比」は比較例、u2は塗布ロールの塗布時周速、u1は円筒状支持体の塗布時周速、塗布ロールおよび円筒状支持体の離間時周速のうちV1は速い方、V2は遅い方をそれぞれ表している。
Figure 0004732943
(試験1の評価)
以上の実施例1〜12並びに比較例1〜7で作製した各電子写真感光体の軸線方向と周方向の膜厚分布を多機能マルチチャンネル分光光度計(大塚電子株式会社製: MCPD2000)で測定した。測定結果の膜厚分布プロファイルを図7〜10に示す。図7、8は軸線方向の膜厚分布プロファイルを示す図であり、図9、10は周方向の膜厚分布プロファイルを展開図として示す図である。また、結果の一覧を下記の表2にまとめる。
Figure 0004732943
※比較例2、6については、塗液が飛散していたため評価不可能
軸線方向の膜厚分布では、塗布方式、周速の違いで平均膜厚自体に若干の差異があるものの、膜厚バラツキとしては、実施例5、6、11、12を除いて、いずれの電子写真感光体においてもほぼ同程度であった。
周方向の膜厚分布は、比較例1のように適切な離間速度であっても離間時周速比R=1.0で離間すると、膜厚が局所的に大きく異なる継ぎ目部分が明らかに発生した。また比較例1と同じ周速比R=1.0、適切な離間速度であっても、リバースロールコーティング方式による比較例5では、わずかに継ぎ目の大きさは改善される傾向にあるが、それでも実使用に耐えるレベルとは到底、言い難い状態であった。また、離間時周速比Rが本発明の上限値15.0を超えた比較例2、6では共に塗液飛散が激しく、感光体として使えるレベルではなかった。
他方、離間時周速比R=1.6という適切な周速条件であっても、離間速度がV1より大きい比較例3では離間動作が早すぎて塗液だまりが全く消費されない為、大きな継ぎ目が発生した。離間速度がV2より大きい比較例4では、若干の塗液だまり消費効果があり継ぎ目部分は小さくなっているが、全て消費される前に離間が完了してしまうので、まだ継ぎ目は発生していた。この傾向はリバースロールコーティング方式による比較例7でも明らかである。
上記比較例1〜7に対し、実施例1〜12の本発明の塗布方法では、明確な継ぎ目の発生は見られなかった。離間速度V3や塗布時周速比rが本発明の指定範囲外である実施例5、6、11、12では、部分的乾燥や塗布液の波うち、リフ゛の発生により膜厚ハ゛ラツキにおいて少し悪目の傾向にあるが、ロールコート法において最も問題となっている局所的な膜厚変動部である継ぎ目については全く見られなかった。これら実施例の中でも特に実施例1は、膜厚バラツキの点でも、周方向、軸方向共に他の実施例より優れており、離間する瞬間での塗工液の橋架け部による再塗布効果のため、より膜厚均一性の高い電子写真感光体が得られたことが確認できた。
(試験2)
次に、試験2においては、試験1と同じ円筒状支持体を用いて、該円筒状支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層の各層を積層型に形成した。各層の形成に際し、本発明の塗布方法による実施例13〜26および本発明から外れる塗布方法による比較例8〜21の中間品(UCLまで、およびCGLまで)または電子写真感光体を作製し、各層の膜厚均一性を評価した。
(実施例13)
酸化アルミニウム(化学式: Al2O3)および二酸化ジルコニウム(化学式: ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製: TTO-D-1)5重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製: CM8000)5重量部とを、エタノール42重量部とブチルカルビトール18重量部とベンジルアルコール30重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、粘度が15mPa・sec.の中間層形成用塗工液を調製した。
この中間層形成用塗工液を、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて円筒状支持体に塗布した。塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を6m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を80μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を40μmとした。
まず、全ロール61, 13, 63および円筒状支持体5を回転させつつ、前述の実施例1と同様にして塗布を開始した。塗布開始後、円筒状支持体5が回転回数2回に達したとき、離間速度50mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時
に、円筒状支持体5の周速を先の6m/minから9m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の6m/minとした。従って、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロール2の離間時周速V2との離間時周速比R(=V1/V2)が1.5となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後120℃にて1時間乾燥させ、中間層塗膜を形成させた。このようにして中間層塗膜の形成された実施例13の電子写真感光体の中間品を作製した。
(比較例8)
上記実施例13において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ6m/min、すなわち周速比R=1.0とした以外は、実施例13と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例8の電子写真感光体の中間品を作製した。
(比較例9)
上記実施例13において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を160mm/sec(>V1=150mm/sec)とした以外は実施例13と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例9の電子写真感光体の中間品を作製した。
(比較例10)
上記実施例13において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を130mm/sec( V2=100mm/sec<V3<V1=150mm/sec)とした以外は実施例13と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例10の電子写真感光体の中間品を作製した。
(実施例14)
電荷発生物質であるオキソチタニウムフタロシアニンとしてCu-Kα特性X線(波長: 1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニンの2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製: エスレックBM-2)2重量部と、シクロヘキサノン96重量部とを混合し、ペイントシェーカにて10時間分散処理して、粘度が2.5mPa・secの電荷発生層形成用塗工液を調製した。
この電荷発生層形成用塗工液を、実施例13と同一の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、先の実施例13で形成した中間層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体の中間層上に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13,63および円筒状支持体5の周速を4m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を60μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を30μmとした。
まず、全ロール61, 13, 63および円筒状支持体5を回転させつつ、前述の実施例2と同様にして塗布を開始した。塗布開始後、円筒状支持体5が回転回数2回に達したとき、離間速度35mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時
に、円筒状支持体5の周速を先の4m/minから7.2m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の4m/minとした。従って、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールV2との離間時周速比R(=V1/V2)が1.8となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後、120℃にて30分間乾燥させ、電荷発生層塗膜を形成させた。このようにして、中間層塗膜の上に電荷発生層塗膜の形成された実施例14の電子写真感光体の中間品を作製した。
(比較例11)
上記実施例14において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ4m/min、すなわち離間時周速比R=1.0とした以外は実施例14と同様にして、中間層塗膜の上に電荷発生層塗膜の形成された比較例11の電子写真感光体の中間品を作製した。
(比較例12)
上記実施例14において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を130mm/sec(>V1=120mm/sec)とした以外は実施例14と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例12の電子写真感光体の中間品を作製した。
(比較例13)
上記実施例14において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を70mm/sec( V2=66.7mm/sec<V3<V1=120mm/sec)とした以外は実施例14と同様にして、中間層塗膜の形成された比較例13電子写真感光体の中間品を作製した。
(実施例15)
電荷輸送物質である前記構造式(I)で示されるトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine dimmer; 略称: TPD)10重量部と、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製: ユーピロンZ800)18重量部と、2, 6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製: KF-96)0.006重量部とを、トルエン55重量部とシクロヘキサノン55重量部とに溶解させ、粘度が5000mPa・sec.の電荷輸送層形成用塗工液を調製した。
この電荷輸送層形成用塗工液を図1、2に示すリバースロールコーティング方式の塗布装置1を用いた本発明の塗布方法にて、先の実施例14で形成した電荷発生層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体の電荷発生層上に転写塗布している状態での塗布ロール2、メタリングロール13および円筒状支持体5の周速を10m/minとした。またメタリングロール13と塗布ロール2の間隙を100μm、塗布ロール2と円筒状支持体5との間隙を80μmとした。
まず、全ロール2, 13および円筒状支持体5を回転させつつ、前述の実施例1と同様にして塗布を開始した。塗布開始後、円筒状支持体5が塗布回数2回に達したとき、円筒状支持体5を、図1の矢符23の塗布ロール2から離れる方向に、離間速度50mm/secで離間させると同時に、円筒状支持体5の周速を先の10m/minから20m/minに増速した。塗布ロール2の周速は、離間前後において同一の10m/minとした。従って、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールの離間時周速V2との離間時周速比Rが2.0となるように調整した。また、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後、120℃にて1時間乾燥させ、電荷輸送層塗膜を形成させた。このようにして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例15の電子写真感光体を作製した。
(実施例16)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を0.1mm/sec(離間速度の下限値)とした以外は実施例15と同様にして、実施例16の電子写真感光体を作製した。
(実施例17)
上記実施例15において、塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態における塗布ロール2、メタリングロール13および円筒状支持体5の周速を全て25m/minとし、且つ、塗布終了後に塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間させる際の円筒状支持体5の周速を先の25m/minから50m/minに増速し、塗布ロール2の周速は離間前後において同一の25m/minのままとして、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール2の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が2.0となるように調整した。更に塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を350mm/sec(上限値<V2=417mm/sec)とした以外は実施例15と同様にして、実施例17の電子写真感光体を作製した。
(実施例18)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を0.08mm/sec(離間速度の下限未満値)とした以外は実施例15と同様にして、実施例18の電子写真感光体を作製した。
(実施例19)
上記実施例17において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を360mm/sec(<V2=417mm/sec、且つ、>350mm/sec=上限値)とした以外は実施例17と同様にして、実施例19の電子写真感光体を作製した。
(実施例20)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから12m/minに増速した。塗布ロール2の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が1.2となるように調整した以外は実施例15と同様にして、実施例20の電子写真感光体を作製した。
(実施例21)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の周速を先の10m/minから150m/minに増速した。塗布ロール2の周速は、離間前後において同一の10m/minのままとした。つまり、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1(速い方)と、塗布ロール61の離間時周速V2(遅い方)との離間時周速比R(=V1/V2)が15.0となるように調整した以外は実施例15と同様にして、実施例21の電子写真感光体を作製した。
(実施例22)
上記実施例15において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を14m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.4とし、メタリングロールと塗布ロールとの間隙を120μmとし、塗布ロール2と円筒状支持体5との間隙を95μmとした以外は、実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例22の電子写真感光体を作製した。
(実施例23)
上記実施例15において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を7m/min、すなわち塗布時周速比r=0.7とし、メタリングロールと塗布ロールとの間隙を80μmとし、塗布ロールと円筒状支持体との間隙を60μmとした以外は、実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例23の電子写真感光体を作製した。
(実施例24)
上記実施例22において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を15m/min、すなわち塗布時周速比r(=u1/u2)を1.5とた以外は、実施例22と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例24の電子写真感光体を作製した。
(実施例25)
上記実施例23において、塗布している状態での円筒状支持体5の塗布時周速u1を6m/min、すなわち塗布時周速比r=0.6とした以外は、実施例23と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された実施例25の電子写真感光体を作製した。
(比較例14)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ10m/min、すなわち離間時周速比R=1.0とした以外は実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された比較例14の電子写真感光体を作製した。
(比較例15)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体の離間時周速V1を160m/min、すなわち離間時周速比R=16.0とした以外は実施例15と同様にして、比較例15の電子写真感光体を作製した。
(比較例16)
上記実施例15において、塗布ロール2から円筒状支持体5を離間した後、直ちに円筒状支持体5の回転を停止した以外は実施例15と同様にして、電荷発生層塗膜の上に電荷輸送層塗膜の形成された比較例16の電子写真感光体を作製した。
(比較例17)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を340mm/sec(>V1=333mm/sec)とした以外は実施例15と同様にして、比較例17の電子写真感光体を作製した。
(比較例18)
上記実施例15において、塗布ロール2と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を250mm/sec(V2=167mm/sec<V3<V1=333mm/sec)とした以外は実施例15と同様にして、比較例18の電子写真感光体を作製した。
(実施例26)
メチルトリメトキシシラン30重量部、ジメチルジメトキシシラン5重量部に2.5%酢酸水溶液20重量部、ブチルカルビトール100重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)50重量部を混合し、室温にて16時間加水分解反応させた。その後、酸化防止剤(三共社製: サノールLS2626)1重量部、構造式(II)で示される電荷輸送性構造単位含有化合物5重量部、コロイダルシリカ(メタノール分散品、固形分30質量%)20重量部、硬化触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート1重量部を加えて溶解し、粘度が350mPa・secの保護層形成用塗工液を調製した。
この保護層形成用塗工液を、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、円筒状支持体に形成された中間層/感光層上に塗布した。塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を6m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を70μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を40μmとした。
まず、全ロール61, 13, 63および円筒状支持体5を回転させつつ、前述の実施例2と同様にして塗布を開始した。塗布開始後、円筒状支持体5が塗布回数2回に達したとき、離間速度30mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時に、円筒状支持体5の周速を先の6m/minから9.6m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の6m/minとした。したがって、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールの離間時周速V2との離間時周速比R=1.6となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5との離間終了後、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後120℃にて90分間、硬化および乾燥させ、保護層塗膜を形成させた。このようにして保護層の形成された実施例26の電子写真感光体を作製した。
Figure 0004732943
(比較例19)
上記実施例26において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間時周速V1を、塗布しているときの周速と同じ6m/min、すなわち離間時周速比R=1.0とした以外は実施例26と同様にして、保護層塗膜の形成された比較例19の電子写真感光体を作製した。
(比較例20)
上記実施例26において、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間する際における円筒状支持体5の離間速度V3を170mm/sec(>V1=160mm/sec)とした以外は実施例26と同様にして、比較例20の電子写真感光体を作製した。
(比較例21)
上記実施例26において、塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際における円筒状支持体の離間速度V3を130mm/sec(V2=100mm/sec<V3<V1=160mm/sec)とした以外は実施例26と同様にして、比較例21の電子写真感光体を作製した。
前記実施例13〜26ならびに比較例8〜21についての塗布時および離間時の周速、離間速度等の条件を下記の表3および4にまとめた。なお表3および4中、「実」は実施例、「比」は比較例を表している。
Figure 0004732943
Figure 0004732943
(試験2の評価)
以上の実施例13〜26ならびに比較例8〜21で作製した各電子写真感光体の中間品または電子写真感光体おける周方向の膜厚分布、及び実施例15、24、25で作製した各電子写真感光体の軸線方向の膜厚分布を、多機能マルチチャンネル分光光度計(大塚電子株式会社製: MCPD2000)で測定した。なお、実施例14および比較例11〜13の電荷発生層塗膜の膜厚は、上記装置でXYZ表色系における3刺激値のうちの1要素であるY値を測定し、そのY値から予め作成しておいた検量線に従い厚さを求めた。測定結果を図11〜図17に示す。図11は中間層の、図12は電荷発生層の、図13〜15は電荷輸送層の周方向の各膜厚分布プロファイルを展開図として示す図であり、図16は電荷輸送層の軸線方向の膜厚分布プロファイルを示す図である。また、図17は保護層の周方向の膜厚分布プロファイルを展開図として示す図である。
また結果の一覧を下記の表5にまとめる。なお、表5において、判定◎○△×は総合評価を示し、◎は非常に優れている、○は良好である、△は少々悪目であるが概ね良好である、×は非常に悪いことを意味する。また、◎○は『非常に優れている』と『良好である』の中間レベルに対応している。◎〜○までが好適に使用出来る状態であり、△は少々難があるが使えないことはない状態である。
Figure 0004732943
※比較例15については、塗液が飛散していたため評価不可能
周方向の膜厚分布では、図11における実施例13と比較例8の対比、図12における実施例14と比較例11との対比、図13、14における実施例15と比較例14との対比および図17における実施例26と比較例19との対比から判るように、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層のいずれを塗布形成する場合でも、離間速度が本発明の適切範囲で行われても、塗布ロールと円筒状支持体とを離間する際のそれぞれの離間時周速が同じ、すなわち離間時周速比R=1.0で離間すると大きな継ぎ目が発生した。
他方、本発明の適切な離間時周速比条件を満たしている場合でも、図11における実施例13と比較例9、10の対比、図12における実施例14と比較例12、13の対比、図13、14における実施例15と比較例17、18の対比および図17における実施例26と比較例20、21の対比から判るように、離間速度がV1より大きい場合では離間動作が早すぎて塗液だまりが全く消費されずに離間が完了してしまい大きな継ぎ目が発生しており、また、離間速度がV1より小さくV2より大きい場合では、若干の塗液だまり消費効果で継ぎ目部分は小さくなっているが、全て消滅される前に離間が完了してしまうので、まだ継ぎ目は発生していた。
上記比較例に対し、本発明の実施例13〜26のように円筒状支持体と塗布ロールとを離間させる時に円筒状支持体の離間時周速V1を塗布ロールの離間時周速V2よりも速くすると共に、離間速度V3をV2より遅い速度で離間することによって、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層のいずれを塗布形成する場合でも継ぎ目の発生を完全に抑制し、均一性の高い塗布膜を形成することができる事は明白である。また、この効果は前記試験1で行った円筒状支持体を塗布ロールから離間させる際に上方または下方に揺動離間させる場合だけでなく、本試験のように図1、2の塗布装置を使って矢符23方向に離間する場合でも効果的に作用している事が明らかである。
また、図15の実施例15と比較例16の対比から示されるように、円筒状支持体と塗布ロールとを離間させた後、円筒状支持体の回転を直ちに停止させた場合は、円筒状支持体上の塗膜が重力方向に垂れ、膜厚分布が極めて不均一になることが明白である。
また、図13の実施例18、19や、図16の実施例24、25に示すように、離間速度V3が本発明の上下限値より外れている場合や、塗布している状態での円筒状支持体の塗布時周速u1と塗布ロールの塗布時周速u2とが大きく異なり両者の比r(=u1/u2)が本発明の上下限値から外れていると、前記試験1と同様に、図1、2のリバースロールコーティング方式の装置で矢符23方向に離間した本試験でも、塗布中での部分的乾燥や、離間方向への加速による塗液の波うち、リフ゛の発生等により膜厚バラツキにおいて少々悪目となる傾向があるが、それでも継ぎ目という局所的な膜厚変動部そのものは、図1、2の塗布装置を使って矢符23方向に離間する場合でも殆ど発生していないことも確認できた。
(試験3)
試験3においては、実施例および比較例として作製した電子写真感光体を画像形成装置に装着し、該電子写真感光体によって形成された画像の品質を評価した。試験に使用した実施例の電子写真感光体は、前述の実施例1〜12、15〜26ならびに以下のように作製した実施例27の電子写真感光体である。また比較例の電子写真感光体としては、前述の比較例1、3〜5、14〜21の電子写真感光体である。
(実施例27)
酸化アルミニウム(化学式: Al2O3)および二酸化ジルコニウム(化学式: ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製: TTO-D-1)4重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製: CM8000)4重量部とを、エタノール35重量部とブタノール32重量部とベンジルアルコール25重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、粘度が12mPa・sec.の中間層形成用塗工液を調製した。
この中間層用形成用塗工液を、直径30mm、全長362mmのアルミニウム製の円筒状支持体上に、図3に示したナチュラルロールコーティング方式の塗布装置60を用いて本発明の塗布方法により塗布した。
塗工液を円筒状支持体に転写塗布している状態での塗布ロール61、第1・第2メタリングロール13, 63および円筒状支持体5の周速を7m/minとした。また、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を80μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を40μmとした。
まず、全ロール61, 13, 63および円筒状支持体5を回転させつつ、前述の実施例1と同様にして塗布を開始した。塗布開始後、円筒状支持体5が塗布回数2回に達したとき、離間速度30mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時に、円筒状支持体5の周速を先の7m/minから21m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の7m/minとした。したがって、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールの離間時周速V2との離間時周速比R(=V1/V2)が3.0となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続し、中間層塗膜を形成させた。
次いで、電荷発生物質であるオキソチタニウムフタロシアニンとしてCu-Kα特性X線(波長: 1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニン5重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製: エスレックBM-2)3重量部と、シクロヘキサノン92重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散処理して、粘度が7.0mPa・secの電荷発生層形成用塗工液を調製した。この電荷発生層形成用塗工液を、塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、先に形成した中間層上に塗布することによって、膜厚0.5μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
電荷発生層形成用塗工液を中間層上に転写塗布している状態での第1・第2メタリングロール13,63の塗布時周速を5m/min、塗布ロール61および円筒状支持体5の塗布時周速を10m/minとし、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を60μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を30μmとした。
塗布開始後、円筒状支持体5が塗布回数2回に達したとき、離間速度20mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時に、円筒状支持体5の周速を先の10m/minから25m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の10m/minとした。したがって、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールV2との離間時周速比R=2.5となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続し、電荷発生層塗膜を形成させた。
さらに、電荷輸送物質である前記構造式(I)で示されるトリフェニルアミンダイマー(Triphenylamine dimer; 略称: TPD)10重量部と、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製: ユーピロンZ1500)18重量部と、2, 6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製: KF-95)0.0036重量部とを、トルエン72重量部とテトラリン80重量部とに溶解させ、粘度が15000mPa・secの電荷輸送層形成用塗工液を調製した。この電荷輸送層形成用塗工液を塗布装置60を用いた本発明の塗布方法にて、先に形成した電荷発生層上に塗布することによって、膜厚25μmの電荷輸送層を電荷発生層上に形成した。
電荷輸送層形成用塗工液を電荷発生層上に転写塗布している状態での第1・第2メタリングロール13,63の塗布時周速を25m/min、塗布ロール61および円筒状支持体5の塗布時周速を15m/min.とし、第1メタリングロール13と第2メタリングロール63との間隙を160μm、第1メタリングロール13と塗布ロール61との間隙を80μmとした。
塗布開始後、円筒状支持体5が塗布回数2回に達したとき、離間速度30mm/secで円筒状支持体5を下方へ揺動させて塗布ロール61から離間させると同時に、円筒状支持体5の周速を先の15m/minから60m/minに増速した。塗布ロール61の周速は、離間前後において同一の15m/minとした。したがって、離間させるときの円筒状支持体5の離間時周速V1と、塗布ロールの離間時周速V2との離間時周速比R=4.0となるように調整した。また、塗布ロール61と円筒状支持体5とを離間した状態で、円筒状支持体5の回転を30秒間継続した。その後、130℃にて1時間乾燥させ、電荷輸送層塗膜を形成させた。このようにして、実施例27の電子写真感光体を作製した。
(試験3の評価)
以上の各電子写真感光体を、画像形成装置であるデジタルフルカラー複写機(シャープ株式会社製: AR-C260)に搭載した。そして、それぞれの電子写真感光体を搭載したデジタルフルカラー複写機により、日本工業規格(JIS)P0138に規定されるA3判の普通紙上に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のハーフトーン画像を形成した。ここでハーフトーン画像とは、画像の濃淡を各色のドットによって階調表現した画像のことである。得られた画像を目視観察し、画像欠陥や画質を評価した。結果を下記の表6および7にまとめる。
Figure 0004732943
Figure 0004732943
画像確認の結果、比較例1、3〜5、7、14、17〜21で作製した電子写真感光体では、濃さの違いはあるが、いずれも画像濃度が局所的に低い、あるいは高い形で継ぎ目の影響が明確に現れた。また比較例16で作製した電子写真感光体では、継ぎ目による局所的な濃度低下の欠陥は見られなかったが、乾燥時の回転動作停止による液ダレにより、膜厚の不均一部に起因する比較的強い画像の濃淡が全体的に島状として現れた。
これら比較例に対し、本発明の実施例1〜12、15〜27として作製した電子写真感光体では、継ぎ目に起因する画像上の濃淡が殆ど見られなかった。
実施例5、6、11、12、18、19、24、25では部分的に乾燥し始めていた状態で塗布回転を繰り返した事や上限を超えた離間速度により、若干の膜厚ムラ発生や、塗膜表面に形成されたリブによると考えられる電子写真感光体の周方向に対応したスジ状や島状の濃淡が少し見られていたものの、局所的な膜厚不均一部である継ぎ目に関しては画像上で殆ど見られていない。
これら実施例の中でも、特に実施例1、26、27では継ぎ目の影響が全く見られなかっただけでなく、膜厚均一性も優れているので膜厚ムラに起因する濃度ムラは見られておらず、本試験で用いたフルカラー複写機に搭載しても非常に優良な画質であった。
本発明の実施形態1である円筒状支持体に対する塗工液の塗布装置の構成を簡略化して示す平面図である。 図1に示す円筒状支持体に対する塗工液の塗布装置の部分断面図である。 本発明の実施形態2である塗布装置のロール構成部分の断面図である。 本発明の実施形態3である塗布装置のロール構成部分の断面図である。 本発明の実施形態4である塗布装置のロール構成部分の断面図である。 本発明の実施形態5である画像形成装置の構成を簡略化して示す側面配置図である。 実施例1〜9における各電子写真感光体の軸線方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例10〜12および比較例1〜7における各電子写真感光体の軸線方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例1〜9における各電子写真感光体の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例10〜12および比較例1〜7における各電子写真感光体の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例13および比較例8〜10における中間層の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例14および比較例11〜13における電荷発生層の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例15〜21における電荷輸送層の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例22〜25および比較例14〜18における電荷輸送層の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例15と比較例16における電荷輸送層の周方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例15と比較例24、25における電荷輸送層の軸線方向の膜厚測定結果を示す図である。 実施例26および比較例19〜21における保護層の周方向の膜厚測定結果を示す図である。
符号の説明
1, 60, 70, 75 塗布装置
2, 61 塗布ロール
3 塗工液
4 塗工液供給手段
5 円筒状支持体
6 第1駆動手段
7 第2駆動手段
8 第1周速検出手段
9 第2周速検出手段
10 回転回数検出手段
11 移動手段
12 制御手段
13 メタリングロール(第1メタリングロール)
63 第2メタリングロール
14, 44 調整部材
15 膜厚調整手段
39 第3駆動手段
40 第3周速検出手段
41 クリーニング手段
42 クリーニングブレード
80 画像形成装置
81 電子写真感光体

Claims (10)

  1. 電子写真感光体の感光層形成用の塗工液が塗布される転写用塗布ロールと、この塗布ロールの近傍に配置された円筒状支持体とをそれぞれ回転させて、前記塗布ロール上に形成した塗膜を前記円筒状支持体に転写し、その後、
    塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させる際に、塗布ロールと平行でかつ塗布ロールに最接近した円筒状支持体よりも大径の仮想円筒面に沿って、かつ円筒状支持体の塗布位置から円筒状支持体の回転方向の下流側へ円筒状支持体の外周面を移動させ、
    塗布ロールと円筒状支持体とを相対的に離間させた後、円筒状支持体の回転を所定時間継続することにより円筒状支持体上の塗膜を乾燥させ、
    塗布ロールと円筒状支持体のいずれか一方の離間時周速V1が他方の離間時周速V2よりも速くなるように制御し、かつ、塗布ロールと円筒状支持体とが相対的に離間する離間速度V3を前記離間時周速V2よりも遅い速度となるように制御し、
    前記離間時周速V1と離間時周速V2との比をRとすると、R=V1/V2が1.2以上15.0以下であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記離間速度V3が0.1mm/sec以上350mm/sec以下である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記離間時周速V1が円筒状支持体の周速であり、前記離間時周速V2が塗布ロールの周速である請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記塗布ロール上に形成した塗膜を前記円筒状支持体に転写する際、塗布ロールと円筒状支持体のうちいずれか一方の塗布時周速をu1、他方の塗布時周速をu2とし、前記塗布時周速u1と塗布時周速u2との比をrとすると、r=u1/u2が0.7以上1.4以下である請求項1〜のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記円筒状支持体上の塗膜が乾燥した後、円筒状支持体上への塗膜の転写および乾燥を繰り返して積層膜からなる感光層を形成する請求項1〜のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記感光層が、電荷輸送物質を含む電荷輸送層と、電荷発生物質を含む電荷発生層とを有し、少なくとも前記電荷輸送層が、電荷輸送層形成用の前記塗工液を用いて形成される請求項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記感光層が、最外層に保護層を有する請求項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記保護層が樹脂層である請求項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 前記請求項1〜のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造方法によって製造された電子写真感光体。
  10. 前記請求項に記載の電子写真感光体を備えた画像形成装置。
JP2006103479A 2006-04-04 2006-04-04 電子写真感光体およびその製造方法 Active JP4732943B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006103479A JP4732943B2 (ja) 2006-04-04 2006-04-04 電子写真感光体およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006103479A JP4732943B2 (ja) 2006-04-04 2006-04-04 電子写真感光体およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007279242A JP2007279242A (ja) 2007-10-25
JP4732943B2 true JP4732943B2 (ja) 2011-07-27

Family

ID=38680774

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006103479A Active JP4732943B2 (ja) 2006-04-04 2006-04-04 電子写真感光体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4732943B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5532817B2 (ja) * 2009-10-23 2014-06-25 富士ゼロックス株式会社 電子写真感光体の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005087971A (ja) * 2003-09-19 2005-04-07 Sharp Corp 円筒状基体に対する塗工液の塗布方法および塗布装置ならびに電子写真感光体の製造方法およびその製造方法により製造される電子写真感光体
JP2006047695A (ja) * 2004-08-04 2006-02-16 Sharp Corp 電子写真感光体の製造方法およびその方法で製造される電子写真感光体ならびに該電子写真感光体を備える画像形成装置

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11276958A (ja) * 1998-03-27 1999-10-12 Dainippon Ink & Chem Inc 円筒状基体への塗料塗布方法及び装置、並びに電子写真用感光体ドラムの製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005087971A (ja) * 2003-09-19 2005-04-07 Sharp Corp 円筒状基体に対する塗工液の塗布方法および塗布装置ならびに電子写真感光体の製造方法およびその製造方法により製造される電子写真感光体
JP2006047695A (ja) * 2004-08-04 2006-02-16 Sharp Corp 電子写真感光体の製造方法およびその方法で製造される電子写真感光体ならびに該電子写真感光体を備える画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007279242A (ja) 2007-10-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4008871B2 (ja) 円筒状基体に対する塗工液の塗布方法および塗布装置ならびに電子写真感光体の製造方法
JP2007047736A (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、電子写真感光体の製造方法
JP2009058789A (ja) 電子写真装置およびプロセスカートリッジ
JP2013257416A (ja) 電子写真感光体、それを備えた画像形成装置およびプロセスカートリッジ
JP2019061051A (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
JP2007322468A (ja) 電子写真感光体及び画像形成装置
JP3977821B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法および製造装置
JP2007188003A (ja) 電子写真感光体の製造方法
JP4732943B2 (ja) 電子写真感光体およびその製造方法
JP4488960B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法および製造装置
JP2008026482A (ja) 電子写真感光体
JP2011197261A (ja) 電子写真感光体下引層用塗布液とその製造方法およびその用途
JP2011150247A (ja) 電子写真感光体の評価方法、それを満足する電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置
JP2012027257A (ja) 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置
JP2008026480A (ja) 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
JP2009186672A (ja) 電子写真感光体及びそれを搭載する画像形成装置
JP2006047695A (ja) 電子写真感光体の製造方法およびその方法で製造される電子写真感光体ならびに該電子写真感光体を備える画像形成装置
JP4606343B2 (ja) 積層体の製造方法および電子写真感光体ならびに画像形成装置
JP2010181630A (ja) 電子写真感光体下引層用塗布液とその製造方法およびその用途
JP4568674B2 (ja) 電子写真感光体製造装置及び製造方法
JP2008176055A (ja) 電子写真感光体及びこれを用いた画像形成装置
JP2006133303A (ja) 電子写真感光体の製造方法および該製造方法によって製造される電子写真感光体ならびに該電子写真感光体を備える画像形成装置
JP2023179249A (ja) 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置
JP2014010158A (ja) 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置
JP2014178365A (ja) 電子写真感光体およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080806

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100908

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100914

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101101

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110419

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110421

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140428

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4732943

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150