JP2010181630A - 電子写真感光体下引層用塗布液とその製造方法およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】分散性および経時安定性に優れ、導電性支持体表面への塗布性が良好で、均一な下引層を形成することができる下引層用塗布液およびその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物粒子の混合溶液を、前記混合溶液を収容する容器と、分散メディアが収容されたシリンダーを有する分散機との間に、前記シリンダーの内容積D(L)、前記混合溶液の前記分散機への送液流量V(L/分)および前記分散機において処理される液量M(L)とが、式(1)および(2):5.0≧D/V≧2.6(1)100≧M/V≧9(2)で示される条件を満たす事。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真感光体下引層用塗布液(以下「下引層用塗布液」ともいう)とその製造方法および電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)、画像形成装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、下引層用塗布液の製造方法、それにより得られた下引層用塗布液、それを用いて形成された下引層を有する感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
光導電性の感光体を用いた電子写真プロセスは、感光体の光導電現象を利用した情報記録手段の一つである。
このプロセスは、先ず、感光体を暗所においてコロナ放電によりその表面を一様に帯電させた後、像露光を施して露光部の電荷を選択的に放電させることにより非露光部に静電像を形成させる。次いで、着色した荷電微粒子(トナー)を静電引力などで潜像に付着させて可視像とし、得られた可視像を記録媒体に転写するなどして画像を形成することからなる。
これら一連のプロセスにおいて感光体は、
(1)暗所において適当な電位に一様に帯電させることができること、
(2)暗所において高い電荷保持能を有し、電荷の放電が少ないこと、および
(3)光感度に優れており、光照射によって速やかに電荷を放電すること
などの基本的な特性が要求される。
また、感光体は、
(4)感光体の表面を容易に除電することができ、残留電位が小さいこと、
(5)機械的強度があり、可撓性に優れていること、
(6)繰り返し使用する場合に電気的特性、特に帯電性や光感度、残留電位などが変動しないこと、および
(7)熱、光、温度、湿度およびオゾンなどに対する耐性を有し、安定性・耐久性が大きいこと
などの特性が要求される。
現在、実用化されている感光体は、一般に導電性支持体上に感光層を形成した構成であり、導電性支持体からのキャリア注入が生じ易く、微視的な表面電荷の消失もしくは減少により画像欠陥が発生することがある。
このような画像欠損の防止を意図して、導電性支持体表面の欠陥の被覆、帯電性の改善、感光層の接着性の向上、塗布性の改善などのために、導電性支持体と感光層との間に下引層を設けることなどが行われている。
従来、下引層としては、各種樹脂材料や各種添加剤を含有するものが検討されている。
樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアミドなどの樹脂材料やこれらの繰り返し単位のうち二つ以上を含む共重合体樹脂、およびカゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどが知られており、これらの中でもポリアミドが好ましいとされている。
しかしながら、上記の樹脂材料からなる単一層を下引層として備えた感光体では、残留電位の蓄積が大きく、感度の低下や画像のカブリなどが発生することがあり、その傾向は、低湿度の環境下で特に顕著になる。
そこで、導電性支持体の影響による画像欠陥の防止や残留電位の改善を目的として、下引層中に表面未処理の酸化チタン粉末を含有させる技術(特開昭56−52757号公報:特許文献1参照)、アルミナなどを被覆して分散性を改善した酸化チタン粉末を含有させる技術(特開昭59−93453号公報:特許文献2参照)、チタネート系カップリング剤で表面処理した金属酸化物粒子を含有させる技術(特開平4−172362号公報:特許文献3)などが提案されている。
また、下引層用塗布液中の金属酸化物粒子を分散させる際に、材料の変質を避けながら確実に分散できるよう分散機と分散液の流量を規定した下引層用塗布液の製造方法(特許第4140393号明細書:特許文献4)なども提案されている。
しかしながら、これらの先行技術では、得られた感光体が特性的に未だ不充分であり、さらに優れた特性を有する感光体とこれを製造するための下引層用塗布液の効率的な製造方法の開発が望まれている。
特開昭56−52757号公報 特開昭59−93453号公報 特開平4−172362号公報 特許第4140393号明細書
本発明は、分散性および経時安定性に優れ、導電性支持体表面への塗布性が良好で、均一な下引層を形成することができる下引層用塗布液およびその効率的な製造方法を提供すること、ならびにその下引層用塗布液を用いた繰り返し使用による電気的特性の変化が少なく画像特性の良好な感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下引層用塗布液の製造において、バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物微粒子を混合した混合溶液を収容する容器から分散メディアが収容されたシリンダーを有する分散機へ送液して分散処理を行った後、再び混合溶液が塗布液を収容する容器に回収される循環式の分散装置において、シリンダーの内容積、混合溶液の分散機への送液流量および分散機において処理される液量とが、特定の条件を満たすように循環させることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物微粒子の混合溶液を、前記混合溶液を収容する容器と、分散メディアが収容されたシリンダーを有する分散機との間に、前記シリンダーの内容積D(L)、前記混合溶液の前記分散機への送液流量V(L/分)および前記分散機において処理される液量M(L)とが、式(1)および(2):
5.0≧D/V≧2.6 (1)
100≧M/V≧9 (2)
で示される条件を満たすように、循環経路を介して循環させて、分散処理した下引層用塗布液を得ることを特徴とする下引層用塗布液の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られたことを特徴とする下引層用塗布液が提供される。
さらに、本発明によれば、導電性支持体上に少なくとも下引層と感光層とが順次積層されてなり、前記下引層が、上記の下引層用塗布液を用いて形成された層であることを特徴とする感光体が提供される。
また、本発明によれば、上記の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明によれば、分散性および経時安定性に優れ、導電性支持体表面への塗布性が良好で、均一な下引層を形成することができる下引層用塗布液およびその効率的な製造方法を提供すること、ならびにその下引層用塗布液を用いた繰り返し使用による電気的特性の変化が少なく画像特性の良好な感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、下引層用塗布液の構成材料の変質や劣化を抑えることができ、大量に作製する場合であっても同様の優れた特性を有する下引層用塗布液を製造することができる。
また、本発明によれば、導電性支持体からの電荷の注入を抑え、長期間の繰り返し使用によっても電気的特性および画像特性の劣化が発生せず、非常に安定した環境特性を有する感光体およびそれを備えた画像形成装置、特に反転現像プロセスで画像形成させる装置に搭載しても非常に良好な画像特性を有する画像形成装置を提供することができる。
樹枝状および針状の酸化チタン微粒子を示す模式断面図である。 浸漬塗布装置の構成一例を示す模式側面図である。 本発明の積層型感光体(a)および単層型感光体(b)の要部の構成を示す模式断面図である。 画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
本発明の下引層用塗布液の製造方法は、バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物微粒子の混合溶液を、前記混合溶液を収容する容器と、分散メディアが収容されたシリンダーを有する分散機との間に、前記シリンダーの内容積D(L)、前記混合溶液の前記分散機への送液流量V(L/分)および前記分散機において処理される液量M(L)とが、特定の条件を満たすように、循環経路を介して循環させて、分散処理した下引層用塗布液を得ることを特徴とする。
従来、バインダー樹脂中に金属酸化物微粒子を分散させた下引層用塗布液を製造する場合、十分に金属化合物微粒子を分散させなければ金属化合物微粒子が凝集、沈降するために下引層用塗布液を長期間使用することができなくなるばかりか、この凝集物が下引層中の欠陥となった感光体を搭載した画像形成装置では画像欠陥が発生し画質が著しく低下することがあった。
一方、本発明の製造方法により得られた下引層用塗布液は、金属化合物微粒子、特に酸化チタン微粒子または酸化亜鉛の微粒子を含有しているが、これら金属化合物微粒子の分散性および経時安定性が優れ、導電性支持体への塗布性が良好で感光層形成時に均一な下引層塗布膜を形成し、更にその上に均一な感光層塗布膜を順次形成することができる。
(混合溶液)
混合溶液は、バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物微粒子とを含み、必要に応じて公知の添加剤を含んでいてもよい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、樹脂単一層で下引層を形成する場合と同様の材料が用いられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料やこれらの繰り返し単位のうち二つ以上を含む共重合体樹脂、更には、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース等が知られている。これらの中でもアルコール可溶性のポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、酢酸ビニル樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂が特に好ましい。
これは、バインダー樹脂の特性として、下引層の上に感光体層を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤などが起こらないことや、導電性支持体との接着性に優れ、可撓性を有すること、さらに下引層中に含有される金属化合物微粒子との親和性がよく、金属化合物微粒子の分散性および分散液の保存安定性に優れていることなどの特性が必要とされるからである。
ポリアミド樹脂の中でも、アルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。具体的には、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどの共重合ナイロン、N−アルコキシメチル変性ナイロン、N−アルコキシエチル変性ナイロンなどの変性ナイロンなどが挙げられる。
また、天然物由来の脂肪酸であるジカルボン酸やその誘導体、ピペラジンやイソホロンジアミンなどの環状構造を有するジアミン化合物を含有する有機溶剤に可溶なポリアミド樹脂を用いることが特に好ましい。
バインダー樹脂の下引層中の含有率は、好ましくは1〜90重量%、より好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは5〜65重量%の範囲である。
バインダー樹脂が1重量%未満の場合、下引き層用塗布液の保存安定性が悪くなるため好ましくない。
一方、バインダー樹脂が90重量%を超える場合、金属化合物微粒子の含有量が少なくなることでその効果が低下し、電気的特性及び画像特性が悪化するばかりか、繰り返し安定性、環境特性も悪化するため好ましくない。
(有機溶剤)
バインダー樹脂を溶解させる有機溶剤としては一般的な有機溶剤を使用することができるが、感光層用塗布液の溶剤に難溶であることが望ましく、バインダー樹脂としてより好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いる場合には、炭素数1〜4の低級アルコール群およびジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランよりなる群から選ばれた単独系および混合系の有機溶剤などを使用することができる。
ハロゲン系溶剤は近年の環境問題や安全性の問題からその使用が削減もしくは禁止の方向にあることから好ましくない。
具体的には、有機溶剤が、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールおよびノルマルプロピルアルコールよりなる群から選ばれた低級アルコールとジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランよりなる群から選ばれた他の有機溶剤との共沸組成の混合溶剤が好ましい。
このような共沸組成の混合溶剤では、アルコール系溶剤単独よりもさらに塗布液の分散性が改善され、均一な蒸発が起こり、塗布液の保存安定性(下引層用塗布液の作成からの経過日数を以下ポットライフと称する)の長期化を図ることが可能となる。
また、下引層用塗布液中に導電性支持体を浸漬塗布して下引層を形成する際に、下引層の塗布欠陥やムラを防止し、その上に形成される感光層が均一に塗布できることより、膜欠陥の無い非常に優れた画像特性を有する電子写真感光体を形成することができる。
ここで、用語「共沸」とは、液体混合物が一定圧力下において、溶液の組成と蒸気の組成が一致し、定沸点混合物となる現象のことであり、本発明におけるその組成は、例えば、上記低級アルコールとジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トルエン、テトラヒドロフランとからなる群から選択される有機溶剤の混合溶剤の任意の組み合わせにおいて決定される。
例えば、メタノールと1,2−ジクロロエタンの場合、メタノール35重量部、1,2−ジクロロエタン65重量部の割合で混合した溶液が共沸組成となる。
更にこれらの有機溶剤としては、未置換および/または置換基を有するテトラヒドロフランおよびその誘導体、未置換および/または置換基を有するジオキソラン化合物およびその誘導体を挙げることができるが、好ましくは、置換基がなくすべてが水素原子であるテトラヒドロフランおよび1,3−ジオキソランが特に好ましい。アルキル基が炭素数の大きな置換基を有する場合には、ジオキソラン誘導体の沸点が高くなり、100℃を超えるようになると形成された下引層の乾燥時間が長くなるために生産性が低下するだけでなく、気流や湿度などの塗布環境により乾燥ムラが発生しやすくなることから好ましくない。
(金属化合物微粒子)
金属化合物微粒子は、感光体としたときの下引層の体積抵抗値を調節し、導電性支持体から感光層へのキャリアの注入を防止すると共に、各種環境下での感光体の電気特性を維持する機能を有する。
金属化合物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどが挙げられ、これらの中でも酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムが好ましく、酸化チタンおよび酸化亜鉛が特に好ましい。
金属化合物微粒子が酸化チタンまたは酸化亜鉛の微粒子である場合、分散機から与えられた強力な力が酸化チタンまたは酸化亜鉛の微粒子を分散するエネルギーとしてだけでなく、分散メディア自身や分散メディアを収容するシリンダー内壁および分散メディアを攪拌する回転ディスクなどを磨耗するエネルギーとしても使用され、これらの材料が削れて分散塗布液に混入し、分散塗布液の分散性や保存安定性、感光体の下引層を形成する際に塗布性や下引層の膜質に何らかの影響を与えているものと考えられる。
酸化チタンの結晶型は、ルチル型、アナタース型やアモルファスの何れであってもよく、その形状は一般的には、粒状のものが用いられるが、図1に示すような針状もしくは樹枝状のものが好ましい。
ここで、用語「針状」とは、棒状、柱状や紡錘状などを含む細長い形状であればよく、必ずしも極端に細長いものでなくてもよく、先端が鋭くとがっている必要もない。
また、同様に、用語「樹枝状」とは、棒状、柱状や紡錘状などを含む細長い形状、すなわち、上記の針状の形状が枝分かれしているものを、樹枝状と呼ぶ。
針状もしくは樹枝状の酸化チタン微粒子の粒径は、好ましくは長軸長aが100μm以下、短軸長bが1μm以下であるが、より好ましくは長軸長aが10μm以下、短軸長bが0.5μm以下であり、針状とは長軸長aと短軸長bとの比a/bであるアスペクト比が1.5以上の形状を指す。
これら針状もしくは樹枝状の軸長がこの範囲より大きければ、分散安定性のある下引層用塗布液が得られにくい。
さらに、微粒子のアスペクト比は好ましくは1.5以上300以下の範囲であり、より好ましくは2以上10以下の範囲である。
粒径およびアスペクト比を測定する方法としては、重量沈降法や光透過式粒度分布測定法などの方法でも測定可能であるが、針状もしくは樹枝状のものは、直接電子顕微鏡で測定する方が好ましい。
酸化チタン微粒子および酸化亜鉛微粒子の体積抵抗値は、105〜1010Ωcmが好ましい。
体積抵抗値が105Ωcmより小さくなると、下引層としての抵抗値が低下し電荷ブロッキング層として機能しなくなる。例えば、アンチモンをドープした酸化錫導電層などの導電処理を施した金属化合物微粒子の場合には、100Ωcmないし101Ωcmと、非常に体積抵抗値が低くなり、これを用いた下引層は電荷ブロッキング層として機能せず、感光体特性としての帯電性が悪化することで、画像にカブリや黒点(黒ポチ)が発生するために使用することはできない。
また、体積抵抗値が1010Ωcm以上に高くなってバインダー樹脂自身の体積抵抗値と同等あるいはそれ以上になると、下引層としての抵抗値が高過ぎて、光照射時に生成したキャリアの輸送が抑制阻止され、残留電位が上昇し光感度が低下するので好ましくない。
酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の体積抵抗値を上述の範囲に維持する限り、微粒子の表面は、アルミナなどの無機化合物やシランカップリング剤などの有機化合物で被覆させたものを用いることができる。使用する金属化合物微粒子が表面未処理の酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子を用いると、微粒子であるために十分に分散された下引層用塗布液であっても長期間の使用や塗布液の保管時に酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の凝集が避けらない。そのため、下引層を形成する際、塗布膜の欠陥や塗布ムラが発生し画像欠陥が生じる。また、導電性支持体からの電荷の注入が起こり易くなるために、微小領域の帯電性が低下し黒点が発生することになる。
そこで、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面を種々の金属化合物やその混合物などで被覆させることにより微粒子の凝集を防止し、非常に分散性や保存安定性に優れた下引層用塗布液が得られる。
さらに導電性支持体からの電荷の注入を抑制することができるために、黒点のない優れた画像特性を有する電子写真感光体が得られる。酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面を被覆する金属化合物としては、Al23、ZrO2、SiO2が好ましい。また、Al23もしくはZrO2のように異なる金属化合物の両方やAl(OH)3など複数の異なる材料で表面処理を施すと、さらに優れた画像特性が得られることから、より好ましい効果が発現される。
また、Fe23などの磁性を持つ金属化合物で酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面に被覆を施した場合には、感光層中に含有するフタロシアニン顔料と化学的に相互作用が起こり、感光体特性、特に感度低下や帯電性の低下が生じるために好ましくない。
酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面を被覆する金属化合物として用いられるAl23、ZrO2、SiO2やAl(OH)3などの表面処理量としては、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子に対して0.1重量%から20重量%が好ましい。0.1重量%より少ない処理量であれば、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面を十分に被覆することができないために表面処理の効果が発現しにくくなる。20重量%を超える処理量であれば表面処理としては十分に施されているために、特性としては変わらなくなりそれ以上ではコストがかかるため好ましくない。
また、本発明で用いられる酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面は、有機化合物で被覆することができ、一般的なカップリング剤を用いることができる。
カップリング剤の種類としては、アルコキシシラン化合物などのシランカップリング剤、ハロゲン、窒素、硫黄のような原子が珪素と結合したシリル化剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。
例えば、シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等のクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン等のシラザン類、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホフェート)等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらカップリング剤によって酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子に表面処理を施したり、これらカップリング剤を分散剤として使用する場合に、1種または2種以上のカップリン剤を併用して用いてもよい。
酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子に表面処理を施す方法としては、前処理法とインテグラルブレンド法に大別され、さらに前処理法としては湿式法と乾式法に分けられる。
湿式法としては、水処理法、溶剤処理法に分けられ、水処理法としては、直接溶解法、エマルジョン法、アミンアダクト法などがある。
湿式法の場合には、有機溶剤や水に表面処理剤を溶解または懸濁させたものに酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子を添加し、その溶液を数分から1時間程度撹拌混合し、場合によっては加熱処理を施した後に、濾過などの工程を経て乾燥させることによって表面処理を施すことができる。
同様に、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子を有機溶剤や水に分散した懸濁液に表面処理剤を添加しても差し支えない。
使用できる表面処理剤としては、直接法では水に溶解する処理剤、エマルジョン法では水中乳化可能型の処理剤、アミンアダクト法ではリン酸残基を有する処理剤が挙げられる。
アミンアダクト法の場合には、トリアルキルアミンやトリアルキロールアミンなどの3級アミンを少量添加することによって調整液をpH=7〜10にし、中和発熱反応による液温の上昇を抑えるために冷却しながら処理することが好ましく、その他の工程は他の湿式法と同様に処理することにより表面処理を施すことができる。しかしながら、湿式法の場合に使用できる表面処理剤としては、使用する有機溶剤や水に溶解するか、懸濁することができるものに限られる。
乾式法としては酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子に直接表面処理剤を添加し、ミキサーで撹拌混合することによって表面処理を施すことができる。一般的な方法としては、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面水を除去するために予備乾燥を行うことが好ましい。例えば、ヘイシャルミキサーなどのシェアの大きい混合機で数10rpm、100℃前後の温度にて予備乾燥を行った後、表面処理剤を直接もしくは有機溶剤や水に溶解もしくは分散混合した溶液を添加する。その際、乾燥空気やN2ガスで噴霧させて処理することにより、より均一に混合することができる。添加する際には、80℃前後の温度、1000rpm以上の回転数で数10分間撹拌することが好ましい。
インテグラルブレンド法は、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子と樹脂を混練する際に表面処理剤を添加する方法であり、塗料の分野では一般的に使用されている方法である。表面処理剤および添加剤としての添加量としては、金属化合物微粒子の種類や形態によって様々ではあるが、金属化合物微粒子の0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.1重量%〜20重量%である。この範囲より少ない添加量であれば、添加の効果が発現しにくく、またこの範囲より多ければ添加効果としてはあまり変わらず、コストの面で不利になる。
また、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面は、不飽和結合を有するカップリング剤で処理する場合にはその処理の前後において、また、分散剤として有機溶剤中に添加する場合のいずれにおいても、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の体積抵抗値を前述の範囲に維持する限り、酸化チタン微粒子または酸化亜鉛微粒子の表面は未処理のものでも良く、さらにAl23、ZrO2、SiO2など、もしくはその混合物やAl(OH)3などの金属化合物で被覆させたものでもよい。
金属化合物微粒子の下引層中の含有率は、好ましくは10〜99重量%、より好ましくは30〜99重量%、さらに好ましくは35〜95重量%の範囲である。
金属化合物微粒子が10重量%未満の場合、感度が低下し、下引層中に電荷が蓄積され残留電位が増大し、特に低温低湿下での繰り返し特性において顕著になることがある。
一方、金属化合物微粒子が99重量%を超える場合、下引層用塗布液の保存安定性が悪くなり、金属化合物微粒子の沈降が起こり易くなることがある。
(混合溶液を収容する容器)
混合溶液を収容する容器は、本発明の混合溶液に対して耐性を有し、保持し得る強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、実施例に記載のようなステンレス製の攪拌タンクが挙げられる。
容器の内容積は、製造する下引層用塗布液の量にもよるが、例えば、10〜300L程度である。
(分散機)
分散機は、当該技術分野で用いられるものを用いることができるが、有機溶剤に溶解させたバインダー樹脂溶液中に金属化合物微粒子を投入し、分散メディアを通じて分散機から与えられた強力な力で金属化合物微粒子を分散させることができるような分散メディアを用いる分散機が好ましく、実施例に記載されているような横型のシリンダー内に分散メディアを収容した分散機(横型の分散機)が特に好ましい。
分散機のシリンダーは、製造する下引層用塗布液の量にもよるが、例えば、0.1〜300L程度である。
シリンダーには、後述する分散メディアを、シリンダー容積の好ましくは70〜90%程度、より好ましくは75〜85%程度充填される。
(分散メディア)
分散メディアの形状は、粒経0.3mm〜数mmのビーズ、数cm程度のボールなど何れを用いてもよいが、効率よく大量の下引層用塗布液を製造するためには、粒経0.3〜1mmのビーズであるのが好ましい。粒径が0.3mm未満である場合、分散メディアであるビーズと下引層用塗布液を分離するフィルター機能を有する機構部分で分散液の流量か低下し、圧力上昇をきたすことから好ましくない。
分散メディアの材質としては、ガラス、ジルコン、アルミナ、チタニア、ジルコニア、窒化珪素などが挙げられ、これらの中でも耐磨耗性などの点でジルコニア、窒化珪素が好ましく、窒化珪素が特に好ましい。
分散メディアに窒化珪素のビーズを使用した場合には、分散液の粘度上昇が少なく保存安定性に優れた分散液が得られると共に、繰り返し使用による電気特性や画像特性に優れた感光体およびそれを備えた画像形成装置が得られる。
また、分散メディアに窒化珪素のビーズを使用した場合には、ジルコニアの分散メディアよりも高い熱伝導率を生かして塗布液の液温度上昇を抑え、下引層の構成材料である酸化チタンや酸化亜鉛およびバインダー樹脂の変質を抑制したり、僅かに磨耗する窒化珪素の成分が何らかの相互作用として働くことから極めて優れた電気的特性や環境特性、画像特性の向上につながったものと考えられるが、そのメカニズムは未だ明確とはいえない。
分散メディアの材質がガラスである場合には、その成分が磨耗して分散液に混入することにより分散液の粘度が上昇し保存安定性が悪くなることがある。また、ジルコンやアルミナである場合には、繰り返し使用による電気的特性の変化が大きくなり画像欠陥が発生することがある。
(分散処理)
分散処理は、バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物微粒子の混合溶液を、混合溶液を収容する容器と、分散メディアが収容されたシリンダーを有する分散機との間に、シリンダーの内容積D(L)、前記混合溶液の前記分散機への送液流量V(L/分)および前記分散機において処理される液量M(L)とが、式(1)および(2):
5.0≧D/V≧2.6 (1)
100≧M/V≧9 (2)
で示される条件を満たすように、循環経路を介して循環させることにより行う。
5.0≧D/V≧2.6は、好ましくは3.5≧D/V≧2.6である。
100≧M/V≧9は、好ましくは50≧M/V≧9である。
混合溶液の循環は、混合溶液を収容する容器と分散機との間に、パイプなどで循環経路を設け、実施例に記載のダイヤフラムポンプのような、混合溶液の送液量を制御し得る公知の装置を用いて行えばよい。
分散処理は、混合溶液の成分や配合量などにより適宜設定すればよく、通常1〜170時間、好ましくは5〜100時間程度である。
また、更に効率よく混合液中の金属化合物を均一に分散させるためには、分散メディアを収容するシリンダー内でメディアを回転させてせん断力を与える攪拌ディスクの回転数を上げる必要があるが、あまり高めると分散メディアが磨耗し分散液中に異物として混入することで画像欠陥が発生するために好ましくない。
一方、分散液の流量を下げて分散性を高めるよう設定していても大量の分散液を処理する場合には処理時間が膨大となるばかりでなく、金属化合物微粒子の分散度を高めて凝集物による画像欠陥が発生しないように長時間分散を進めると分散液の粘度が非常高くなり、下引層を形成する際の生産性が著しく低下するばかりか、分散液のゲル化が発生することから好ましくない。
これは、大量の金属化合物微粒子を分散処理する場合、微粒子の分散が進むよりも前に強いせん断力で発生する熱が継続的に与えられることでバインダー樹脂が変質するなどしてバインダー樹脂が切断、架橋したり、部分的に過分散となることが1つの原因と考えられる。
従来、金属化合物微粒子をバインダー樹脂中に分散させた下引層を有する感光体を形成するように、下引層用塗布液を製造する場合、金属化合物微粒子を分散する方法としては、分散メディアを使用しない超音波分散機や分散メディアを用いるボールミル、ビーズミル、ペイントコンディショナーなどの分散機が用いられてきた。
このような従来の製造方法では、分散すべき金属化合物微粒子の分散性を高めながら金属化合物微粒子やバインダー樹脂の変質を防ぐとともに、大量の液量を効率よく製造することはできなかった。
一方、本発明の下引層用塗布液の製造方法では、金属化合物微粒子やバインダー樹脂の変質を防ぎながら大量液の分散処理を行っても分散性が高く、高品質な画像が得られる下引層用塗布液およびこの塗布液を用いて製造された電子写真感光体さらにこれを搭載した画像形成装置を得ることができる。
本発明の下引層用塗布液は、本発明の下引層用塗布液の製造方法により得られたことを特徴とする。
本発明の下引層用塗布液は、金属化合物微粒子の分散性および経時安定性が優れ、導電性支持体への塗布性が良好であり、感光層形成時に塗布ムラが発生しない均一な下引層塗布膜を形成することができる。
本発明の感光体は、導電性支持体上に少なくとも下引層と感光層とが順次積層されてなり、前記下引層が、本発明の下引層用塗布液を用いて形成された層であることを特徴とする。
本発明の感光体は、電子写真複写機やレーザー、LEDなどを光源とする各種プリンターおよび電子写真製版システムなどに使用することができる。
次に本発明の感光体について図面を用いて具体的に説明する。
図3は、本発明の積層型感光体(a)および単層型感光体(b)の要部の構成を示す模式断面図である。
図3(a)は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層(「機能分離型感光層」ともいう)である積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図3(b)は、感光層が一層からなる単層型感光層である単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図3(a)の積層型感光層は電荷発生層5と電荷輸送層6とが逆順であってもよいが、図3(a)の順に形成された積層型感光層が好ましい。
図3(a)の積層型感光体1aは、導電性支持体2の表面に、下引層3と、電荷発生物質8を含有する電荷発生層5と電荷輸送物質18を含有する電荷輸送層6とがこの順で積層された積層型感光層4がこの順で形成されている。
図3(b)の単層型感光体1bは、導電性支持体2の表面に、下引層3と、電荷発生物質8と電荷輸送物質19とを含有する単層型感光層4がこの順で形成されている。
図3における図番7および9はバインダー樹脂を示す。
[導電性支持体2]
導電性支持体は、感光体の電極としての役割を果たすとともに、他の各層の支持部材としても機能する。
導電性支持体の構成材料は、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属および合金材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレン、セルロース、ポリ乳酸などの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料または合金材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム、カーボンブラックなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
導電性支持体の形状としては、シート状、円筒状、円柱状、無端ベルト(シームレスベルト)状などが挙げられる。
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
[下引層(「中間層」ともいう)3]
下引層は、導電性支持体から単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入を防止する(ホール注入に対して障壁となる)機能を有する。すなわち、単層型感光層または積層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、導電性支持体の表面を被覆する下引層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、単層型感光層または積層型感光層の成膜性を高め、導電性支持体と単層型感光層または積層型感光層との密着性(接着性)を向上させることができる。
下引層は、例えば、本発明の下引層用塗布液を導電性支持体上に塗布し、得られた塗布膜を乾燥することにより得られる。
下引層用塗布液の塗布方法は、シートの場合にはベーカーアプリケーター法、バーコーター法(例えば、ワイヤーバーコーター法)、キャスティング法、スピンコート法、ロール法、ブレード法、ビード法、カーテン法など、ドラムの場合にはスプレー法、垂直リング法、浸漬塗工法などが挙げられる。
塗布方法は、塗布液の物性や生産性などを考慮して最適な方法を選択すればよく、浸漬塗布法、ブレードコーター法およびスプレー法が特に好ましい。
浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体上に層を形成する方法である。この方法は比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
図2は、浸漬塗布装置の構成の一例を示す模式側面図である。
この浸漬塗布装置は、塗液12を収容する塗液槽13および撹拌槽14、撹拌槽14中の塗液12を攪拌する攪拌装置15、モータ16の駆動により塗液12を撹拌槽14から塗液槽13に送液する循環経路17a、オーバーフローした塗液12を塗液槽13から撹拌槽14に送液するための、傾斜をもって各槽の上部を接続する循環経路17b、塗液槽13の塗液12に導電性支持体2を浸漬および引き上げをする、モータ11の駆動により移動する回転軸10からなる。
回転軸10の軸方向は、塗液槽13の上下方向に沿い、モータ11の回転方向により取付けられた導電性支持体2が昇降する。
塗布膜の乾燥は、熱風乾燥炉および遠赤外線乾燥炉などの公知の装置を用いて行うことができ、その条件は、樹脂の種類、配合割合などにより適宜設定すればよく、通常、温度110〜150℃、好ましくは130〜150℃で、時間10分間〜1時間程度である。
下引層の膜厚の膜厚は特に限定されないが、画像欠陥の低減と電気的特性の安定性向上を両立する範囲で設定すればよく、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。下引層の膜厚が0.01μm未満では、実質的に下引層として機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性が得られず、導電性支持体からのキャリアの注入を防止することができなくなり、帯電性の低下が生じるおそれがある。一方、下引層の膜厚が10μmを超えると、均一な塗布膜が形成し難くなり、感光体の感度が低下するおそれがある。
[積層型感光体1(a)の感光層4]
積層型感光体1(a)の感光層4は、電荷発生層5と電荷輸送層6とからなる。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることにより、各層を構成する最適な材料を独立して選択することができる。
以下の説明では、電荷発生層と電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光体(図3(a))について説明するが、逆二層型の積層型感光体の場合には積層順が異なるだけで基本的に同様である。
感光体が高感度、高耐久性を有するためには、積層型感光体1(a)の感光層4および後述する単層型感光体1(b)の感光層4は、負帯電性であるのが好ましい。
[電荷発生層5]
電荷発生層は、照射された光を吸収することにより電荷を発生する電荷発生能を有する電荷発生物質を主成分とし、任意に公知の添加剤およびバインダー樹脂(結合剤)を含有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、アゾ系顔料(カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有する、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料など)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物など)、多環キノン系顔料(キナクリドン、アントラキノン、ピレンキノンなど)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなど)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、スクアリリウム色素、アズレニウム色素、チオピリリウム色素、ピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機顔料または染料、さらにセレン、非晶質シリコンなどの無機材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
レーザ光やLEDなどの光源を用いて反転現像プロセスにより画像形成を行う感光体では、620〜800nmの長波長の範囲に感度を有することが要求される。
上記の電荷発生物質の中でも、フタロシアニン系顔料、トリスアゾ系顔料は耐久性および高感度を有することから特に好ましい。
金属フタロシアニン顔料において用いられる金属としては、酸化状態がゼロであるものおよびその塩化物、臭化物などのハロゲン化金属や酸化物などが用いられる。好ましい金属としては、Cu、Ni、Mg、Pb、V、Pd、Co、Nb、Al、Sn、Zn、Ca、In、Ga、Fe、Ge、Ti、Crなどが挙げられる。
これらのフタロシアニン顔料の製造方法は種々の手法が提案されているが、特に限定されず、顔料化された後に各種精製や結晶型を変換させる処理、例えば種々の有機溶剤中での分散処理に付してもよい。
本発明においては、非晶型やα型、β型、γ型、δ型、ε型、χ型、τ型等の結晶型を有する金属を使用することができる。
電荷発生層は、本発明の好ましい特性が損なわれない範囲内で、化学増感剤、光学増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散安定剤、増感剤、レベリング剤、可塑剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などから選ばれる1種または2種以上の公知の添加剤を適量含有していてもよい。これらの添加剤は、後述する電荷輸送層に含有されてもよく、電荷発生層および電荷輸送層の両方に含有されてもよい
化学増感剤および光学増感剤は、感光体の感度を向上させ、繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などを抑え、電気的耐久性を向上させる。
化学増感剤としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物;テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物;ジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料およびこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどが挙げられる。
光学増感剤としては、例えばキサンテン系色素、キノリン系顔料、銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料;エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料;メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料;カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料;シアニン染料;スチリル染料;ピリリウム塩染料およびチオピリリウム塩染料などが挙げられる。
酸化防止剤は、長期にわたって感度安定性を維持させることができる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)のようなヒンダードフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミンなどのアミン系酸化防止剤、ビタミンE、ハイドロキノン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄系化合物、有機燐系化合物などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の添加量は、電荷発生物質100重量部に対して0.1〜40重量部が好ましく、0.5〜15重量部が特に好ましい。
酸化防止剤の添加量が0.1重量部未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果が得られないおそれがある。また、酸化防止剤の添加量が40重量部を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
レベリング剤および可塑剤は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させることができる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
無機化合物または有機化合物の微粒子は、機械的強度を増強し、電気特性を向上させることができる。このような微粒子としては、例えば、後述する下引層において例示する微粒子が挙げられる。
電荷発生層は、公知の乾式法および湿式法により形成することができる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質を導電性支持体の表面に真空蒸着する方法が挙げられる。
湿式法としては、例えば、電荷発生物質、必要に応じて添加剤およびバインダー樹脂を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体上に形成された下引層表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去する方法が挙げられる。
バインダー樹脂は、電荷発生層の機械的強度や耐久性、層間の結着性などを向上させることができ、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用できる。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダー樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
電荷発生物質とバインダー樹脂との配合比は特に限定されないが、通常、電荷発生物質が10〜99重量%程度である。
電荷発生物質が10重量%未満であると、感光体の感度が低下するおそれがある。
一方、電荷発生物質が99重量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大することがある。そのため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがある。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。また、このような溶剤に、アルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
構成物質を樹脂溶液に溶解または分散させるに先立ち、電荷発生物質を予備粉砕してもよい。
予備粉砕は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いて行うことができる。
構成物質の樹脂溶液への溶解または分散は、例えば、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどの一般的な分散機を用いて行うことができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
フタロシアニン顔料を用いる場合には、一次粒子および/またはその凝集粒子径が3μm以下の粒子径にまで分散を進めることが好ましい。
一次粒子および/またはその凝集粒子径が3μmよりも大きければ得られる電子写真感光体において、反転現像の際、白地に黒ポチが非常に発生することとなる。そのため各種分散機により電荷発生層用塗布液を製造する際には、分散条件を最適化しフタロシアニン顔料粒子を3μm以下、更に好ましくはメジアン径で0.5μm以下、モード径で3μm以下にまで分散し、これよりも大きい粒子を含有しないことが好ましい。
フタロシアニン顔料粒子はその化学的構造から微粒子にするためには比較的強い分散条件と長時間の分散時間を必要としており、これ以上に分散を進めることはコスト的に効率が悪く、分散メディアの摩耗等による不純物の混入が避けられない。
また、分散時の有機溶剤や熱、分散による衝撃などによりフタロシアニン顔料粒子の結晶型が変化することにより、感光体の感度が大きく低下するなどの弊害が発生する。そのため、メジアン径で0.01μm以下、モード径で0.1μm以下にフタロシアニン顔料の粒子径を小さくすることは好ましくない。
また、分散された塗布液中のフタロシアニン顔料粒子中に3μmよりも大きい粒子が含まれている場合にはろ過処理を施すことにより3μmよりも大きい一次粒子および/または凝集粒子を除去することができる。ろ過処理に用いられるフィルターの材質は分散の際に用いられた有機溶剤に膨潤や溶解しないものであれば一般的に用いられるものが使用されるが、好ましくは孔径が均一のテフロン(登録商標)製メンブランフィルターが良い。更に遠心分離により粗大粒子や凝集物を除去しても良い。
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法は、シートの場合にはベーカーアプリケーター法、バーコーター法、キャスティング法、スピンコート法、ロール法、ブレード法など、ドラムの場合にはスプレー法、垂直リング法、浸漬塗工法などが挙げられる。
塗布膜の乾燥工程における温度は、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃が適当であり、80〜130℃が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがある。また、乾燥温度が140℃を超えると、感光体の繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。
電荷発生層の膜厚は特に限定されないが、0.05〜10μmが好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感度が低下するおそれがある。また、電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合には、分散処理によりその結晶型が変化することがあるので好ましくない。一方、電荷発生層の膜厚が10μmを超えると、電荷発生層内部での電荷輸送が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下するおそれがある。また、均一な塗布膜形成が困難となる。
[電荷輸送層6]
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受け入れ、それを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、バインダー樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
電荷輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質;
フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質
が挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
電荷輸送物質の重量Eとバインダー樹脂の重量Bとの比率E/Bは、好ましくは10/12〜10/25、より好ましくは10/16〜10/20である。
比率E/Bが10/25未満であると、電荷輸送物質に対するバインダー樹脂の相対量比が高くなり、十分な感度が得られないおそれがある。
一方、比率E/Bが10/12を超えると、電荷輸送層の耐刷性や感光体の耐久性が低下するおそれがある。
バインダー樹脂は、電荷発生層に含まれるものと同様のバインダー樹脂の1種または2種以上を使用できる。
これらの樹脂の中でも、ポリカーボネートを主成分とする樹脂、ポリアリレート樹脂およびポリスチレン樹脂は、光化学的に安定で、電荷輸送物質との相溶性に優れ、さらに体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましい。
電荷輸送層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この塗布液を電荷発生層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に電荷輸送物質および必要に応じて他の添加剤を溶解または分散させることにより、電荷輸送層形成用塗布液を調製する。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
電荷輸送層の膜厚は特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、10〜40μmが特に好ましい。電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、帯電保持能が低下するおそれがあり、逆に電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、鮮鋭性の低下や残留電位の上昇が発生し、著しく画像劣化が生じるおそれがある。
[単層型感光体1(b)の感光層4]
単層型感光層は、電荷発生物質と、電荷輸送物質と、バインダー樹脂(結合剤)とを主成分として含有する。
単層型感光層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて、電荷発生層に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解および/または分散して単層型感光層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体上に形成された下引層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層および電荷輸送層の形成に準ずる。
単層型感光層の膜厚は特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、10〜40μmが特に好ましい。単層型感光層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、単層型感光層の膜厚が50μmを超えると、生産性が低下するおそれがある。
[保護層(図示せず)]
本発明の感光体は、積層型感光体1(a)の感光層4および単層型感光体1(b)の感光層4の表面に保護層(図示せず)を有していてもよい。
保護層は、感光層の摩耗性の改善やオゾン、窒素酸化物などによる化学的悪影響の防止の機能を有する。
保護層は、例えば、適当な有機溶剤にバインダー樹脂、必要に応じて酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を溶解または分散させて保護層形成用塗布液を調製し、この保護層形成用塗布液を単層型感光層または積層型感光層の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、電荷発生層の形成に準ずる。
保護層の膜厚は特に制限されないが、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmが特に好ましい。保護層の膜厚が0.5μm未満では、感光体表面の耐擦過性が劣り、耐久性が不十分になるおそれがあり、逆に10μmを超えると、感光体の解像度が低下するおそれがある。
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段を少なくとも備えたことを特徴とする。
図面を用いて本発明の画像形成装置について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図4は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図4の画像形成装置20は、本発明の感光体21(例えば、図3(a)および(b)の感光体1aおよび1b)と、帯電手段(帯電器)24と、露光手段28と、現像手段(現像器)25と、転写手段(転写器)26と、クリーニング手段(クリーナ)27と、定着手段(定着器)31と、除電手段(図示せず、クリーニング手段27に併設される)を含んで構成される。図番30は転写紙を示す。
感光体21は、図示しない画像形成装置20本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線22回りに矢符23方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体21の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体21を所定の周速度で回転駆動させる。帯電器24、露光手段28、現像器25、転写器26およびクリーナ27は、この順序で、感光体21の外周面に沿って、矢符23で示される感光体21の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
帯電器24は、感光体21の外周面を所定の電位に帯電させる帯電手段である。具体的には、例えば帯電器24は、接触式の帯電ローラ24aや帯電ブラシあるいはコロトロンやスコロトロンなどのチャージャーワイヤによって実現される。図番24bはバイアス電源を示す。
露光手段28は、例えば半導体レーザなどを光源として備え、光源から出力されるレーザビームなどの光28aを、感光体21の帯電器24と現像器25との間に照射することによって、帯電された感光体21の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光28aは、主走査方向である感光体21の回転軸線22の延びる方向に繰返し走査され、これに伴って感光体21の表面に静電潜像が順次形成される。
現像器25は、露光によって感光体21の表面に形成される静電潜像を、現像剤によって現像する現像手段であり、感光体21を臨んで設けられ、感光体21の外周面にトナーを供給する現像ローラ25aと、現像ローラ25aを感光体21の回転軸線22と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング25bとを備える。
転写器26は、現像によって感光体21の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符29方向から感光体21と転写器26との間に供給される記録媒体である転写紙30上に転写させる転写手段である。転写器26は、例えば、帯電手段を備え、転写紙30にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙30上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ27は、転写器26による転写動作後に感光体21の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体21の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード27aと、クリーニングブレード27aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング27bとを備える。また、このクリーナ27は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
また、画像形成装置20には、感光体21と転写器26との間を通過した転写紙30が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器31が設けられる。定着器31は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ31aと、加熱ローラ31aに対向して設けられ、加熱ローラ31aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ31bとを備える。
この画像形成装置20による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、感光体21が駆動手段によって矢符23方向に回転駆動されると、露光手段28による光28aの結像点よりも感光体21の回転方向上流側に設けられる帯電器24によって、感光体21の表面が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段28から、感光体21の表面に対して画像情報に応じた光28aが照射される。感光体21は、この露光によって、光28aが照射された部分の表面電荷が除去され、光28aが照射された部分の表面電位と光28aが照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
次いで、露光手段28による光28aの結像点よりも感光体21の回転方向下流側に設けられる現像器25から、静電潜像の形成された感光体21の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体21に対する露光と同期して、感光体21と転写器26との間に、転写紙30が供給される。転写器26によって、供給された転写紙30にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体21の表面に形成されたトナー像が、転写紙30上に転写される。
次いで、トナー像の転写された転写紙30は、搬送手段によって定着器31に搬送され、定着器31の加熱ローラ31aと加圧ローラ31bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙30に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙30は、搬送手段によって画像形成装置20の外部へ排紙される。
一方、転写器26によるトナー像の転写後も感光体21の表面上に残留するトナーは、クリーナ27によって感光体21の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体21の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体21の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体21はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰り返されて連続的に画像が形成される。
また、画像形成装置は、機種によって感光体21に残留するトナーを除去し回収するクリーナ26のようなクリーニング手段と、感光体21に残留する表面電荷を除電する除電手段を装備していないものであってもよい。
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
図3(b)に示される単層型感光体を作製した。この感光体は、導電性支持体2上に、下引層3および電荷発生物質8と電荷輸送物質19とを含有する感光層4が順次積層されている。
容積100Lのステンレス製の攪拌タンクに下記の成分を投入し、液温が40℃になるようにステンレス容器を加熱しながら、攪拌羽を備えた攪拌モーターを用いて回転数200rpmで2時間、混合溶液を攪拌し樹脂を溶解させて、下引層用塗布液の樹脂溶液を得た。
ポリアミド樹脂(東レ株式会社製、製品名:CM8000) 0.156kg
メタノール 3.173kg
テトラヒドロフラン 1.748kg
得られた樹脂溶液を液温10℃に冷却し、さらに回転数200rpmで1時間攪拌しながら樹脂溶液中に下記の成分を投入して、下引層用塗布液の懸濁液を得た。
酸化チタン(Al23表面処理、針状、堺化学株式会社製、製品名:STR−60)
0.624kg
横型分散機(株式会社シンマルエンタープライゼス製、型式:ダイノーミル KLDパイロットタイプ、シリンダー容積:1.4L)のシリンダー内に、分散メディアとして直径1mmのジルコニア製ビーズをシリンダー容積の80%まで投入した。次いで、得られた懸濁液を攪拌タンクから横型分散機に送液し、再び攪拌タンクに送液する循環を、流速0.54L/分で10時間継続して分散処理を行い、得られた分散液を攪拌タンクに戻し、下引層用塗布液6Lを得た(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=2.6、M/V=11.1)。
得られた下引層用塗布液を、厚さ100μmのアルミニウム製の導電性支持体1上に、ベーカーアプリケーターにより塗布し、得られた塗布膜を温度110℃で10分間、熱風乾燥させて、乾燥膜厚0.05μmの下引層3を形成した。
次いで、下記の成分をボールミルで12時間分散処理して、感光層用塗布液を得た。
τ型無金属フタロシアニン
(東洋インキ製造株式会社製、製品名:Liophoton TPA−891)
0.171kg
ポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製、製品名:Z−400)
0.171kg
ヒドラゾン系化合物 下記構造式(I) 0.171kg

ジフェノキノン化合物 下記構造式(II) 0.171kg
テトラヒドロフラン 1.0kg
Figure 2010181630
Figure 2010181630
得られた感光層用塗布液5mlを、先に形成した下引層3上にベーカーアプリケーターにより塗布し、得られた塗布膜を温度100℃で1時間、熱風乾燥させて、乾燥膜厚20μmの感光層4を形成し、単層型感光体1bを作製した。
(実施例2)
図3(a)に示される機能分離型感光体を作製した。この感光体は、導電性支持体2上に、下引層3および電荷発生物質8を含有する電荷発生層5と電荷輸送物質19を含有する電荷輸送層6とからなる感光層4が順次積層されている。
酸化チタンを下記の成分に代え、分散処理における流速を0.28L/分としたこと以外は、実施例1と同様にして下引層用塗布液を得た(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=5.0、M/V=21.4)。
酸化チタン(表面未処理、針状、堺化学株式会社製:STR−60N)
0.624kg
得られた下引層用塗布液を、厚さ100μmのアルミニウム製の導電性支持体1上に、ベーカーアプリケーターにより塗布し、得られた塗布膜を温度110℃で10分間、熱風乾燥させて、乾燥膜厚5μmの下引層3を形成した。
次いで、下記の成分をボールミルで12時間分散処理して、電荷発生層用塗布液を得た。
オキソチタニルフタロシアニン
(Cu-kα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に少なくとも明確な回折ピークを有する下記構造式(III)の化合物)
0.2kg
ポリビニルブチラール樹脂
(積水化学株式会社製、製品名:エスレックBM−S) 0.2kg
メチルエチルケトン 1.0kg
Figure 2010181630
(式中、X1〜X4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、k、l、m、nは0〜4の整数である)
実施例では、構造式(I)のk、l、m、nが0である化合物を用いた。
得られた感光層用塗布液を、先に形成した下引層3上にベーカーアプリケーターにより塗布し、得られた塗布膜を温度120℃で10分間、熱風乾燥させて、乾燥膜厚0.8μmの電荷発生層5を形成した。
次いで、下記の成分を混合・攪拌・溶解させて、電荷輸送層用塗布液を得た。
エナミン化合物 下記構造式(IV) 0.8kg
ポリカーボネート樹脂
(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、製品名:Z200)1.0kg
シリコンオイル(信越化学株式会社製、製品名:KF50) 0.002kg
テトラヒドロフラン 12.0kg
Figure 2010181630
得られた電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層5上にベーカーアプリケーターにより塗布し、得られた塗布膜を温度80℃で1時間、熱風乾燥させて、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層6を形成し、機能分離型感光体1aを作製した。
(実施例3)
下引層用塗布液を下記の成分に代えて20時間分散し、11.18Lを得たこと以外は、実施例2と同様にして機能分離型感光体を作製した。
酸化チタン(Al23、ZrO2表面処理、樹枝状、石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1) 1.500kg
ポリアミド樹脂(東レ株式会社製、製品名:CM8000) 0.079kg
メタノール 4.522kg
テトラヒドロフラン 4.522kg
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=5.0、M/V=39.9)
(実施例4)
下引層用塗布液を下記の成分に代え、分散メディアとして直径0.5mmのジルコニア製ビーズを用い、40時間分散して28.00Lを得たこと以外は、実施例3と同様にして下引層を形成し、実施例2と同様にして感光層を形成して、機能分離型感光体を作製した。
酸化チタン(Al23、ZrO2表面処理、樹枝状、石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1) 1.500kg
ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ株式会社製、製品名:X1010)1.500kg
エタノール 11.100kg
テトラヒドロフラン 11.100kg
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=5.0、M/V=100.0)
(実施例5)
下引層用塗布液を下記の成分に代え、分散処理における流速を0.54L/分とし、60時間分散して21.90Lを得たこと以外は、実施例4と同様にして機能分離型感光体を作製した。
酸化チタン(Al23、ZrO2表面処理、樹枝状、石原産業株式会社製、製品名:TTO−D−1) 2.240kg
ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ株式会社製、製品名:X1010)
0.560kg
エタノール 12.000kg
テトラヒドロフラン 6.000kg
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=2.6、M/V=40.6)
(比較例1)
分散処理における流速を0.8L/分としたこと以外は、実施例1と同様にして下引層を形成し、実施例4と同様にして感光層を形成して、機能分離型感光体を作製した。
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=1.8、M/V=7.5)
(比較例2)
分散処理における流速を0.2L/分としたこと以外は、実施例1と同様にして下引層を形成し、実施例4と同様にして感光層を形成して、機能分離型感光体を作製した。
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=7.0、M/V=30.0)
以上のようにして作製した実施例1〜5および比較例1〜2の感光体を、デジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:AR−450M)改造機のアルミニウムドラムに巻き付けて装着し、反転現像方式で白ベタの画像を印刷し、得られた白ベタ画像を下記の評価基準により評価した。
また、実施例1〜5および比較例1〜2において調製した下引層用塗布液を室温暗室下で30日間保存して、ポットライフ後の下引層用塗布液を目視観察し、下記の評価基準により評価した。
さらに、ポットライフ後の下引層用塗布液を用いてそれぞれ感光体を作製し、上記と同様にして白ベタ画像を印刷し、得られた白ベタ画像を下記の評価基準により評価した。
得られた結果を、下引層用塗布液の分散処理条件のD/VおよびM/Vと共に表1に示す。
[初期白ベタ画像およびポットライフ後の白ベタ画像の評価基準]
○:黒い斑点状欠陥なし
△:やや黒い斑点状欠陥存在
×:黒い斑点状欠陥多く存在
−:データなし
[ポットライフ後の下引層用塗布液の評価基準]
○:凝集・沈降なし
△:やや沈降あり
×:凝集・沈降多く存在
Figure 2010181630
表1および実施の結果から次のことがわかる。
(1)本発明の感光体(実施例1〜5)では、初期白ベタ画像評価において黒い斑点状欠陥のない良好な画像が得られるが、比較例1〜2の感光体では、画像上に多数の黒い斑点状の欠陥が発生すること
(2)本発明の下引層用塗布液(実施例1〜3)では、ポットライフ後に金属化合物の凝集がやや発生して下部に若干の沈降が観察されるが、ポットライフ後の下引層用塗布液を用いて作製した感光体では、ポットライフ後の白ベタ画像評価において画像上に若干の黒い斑点状の欠陥が発生したものの画像品質を著しく低下させるものではないこと
(3)本発明の下引層用塗布液(実施例4および5)では、ポットライフ後でも凝集・沈降がなく、ポットライフ後の下引層用塗布液を用いて作製した感光体では、ポットライフ後の白ベタ画像評価において初期と同じ黒い斑点状の欠陥のない高品質の画像が得られること
(4)比較例1の下引層用塗布液では、分散直後は十分に均一な塗布液が得られるが、ポットライフ後に金属化合物の凝集がやや発生して下部に若干の沈降が観察されること
(5)比較例2の下引層用塗布液では、沈降物の発生が非常に多く、塗布液が著しく不均一となり下引層を作製することができず、保存安定性に問題が生じること
(実施例6)
下記の成分に代えたこと以外は、実施例1と同様にして下引層用塗布液の懸濁液を得た。
酸化チタン(Al(OH)3、SiO2表面処理、粒状、テイカ株式会社製、製品名:MT−500SA) 9.2kg
ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ社製、製品名:X1010) 2.3kg
エタノール 42.0kg
テトラヒドロフラン 22.0kg
横型ビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、型式:KD−20B、シリンダー容積:16.5L)のシリンダー内に、分散メディアとして直径0.5mmの窒化珪素製ビーズをシリンダー容積の80%まで投入した。次いで、ダイヤフラムポンプを介して、得られた懸濁液を攪拌タンクから横型ビーズミルに送液し、再び攪拌タンクに送液する循環を流速3.3L/分で30時間継続して、分散処理した下引層用塗布液78.4Lを得た。
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=5.0、M/V=23.8)
得られた下引層用塗布液を、塗工槽に満たし、直径30mm×全長345mmのアルミニウム製の円筒状導電性支持体1上に、浸漬塗布法により塗布し、得られた塗布膜を温度100℃で30分間、熱風乾燥させて、乾燥膜厚1.0μmの下引層3を形成した。
次いで、各構成成分の処理量を増量すること以外は、実施例2と同様にして、電荷発生層用塗布液3000mlおよび電荷輸送層用塗布液3000mlを得た。実施例2と同様にして、得られた各塗布液を用いて、先に形成した下引層3上に電荷発生層および電荷輸送層を順次形成し、機能分離型感光体を作製した。
(実施例7)
下引層用塗布液を下記の成分に代え、分散処理における流速を6.3L/分とし56.84Lを得たこと以外は、実施例6と同様にして下引層を形成し、実施例6と同様にして感光層を形成して、機能分離型感光体を作製した。
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=2.6、M/V=9.0)
酸化チタン(Al(OH)3、SiO2表面処理、粒状、テイカ株式会社製、製品名:MT−500SA) 3.5kg
ポリアミド樹脂(ダイセル・デグサ株式会社製、製品名:X1010)
6.5kg
エタノール 22.0kg
テトラヒドロフラン 22.0kg
(比較例3)
分散処理における流速を0.54L/分としたこと以外は、実施例6と同様にして下引層を形成し、実施例6と同様にして感光層を形成して、機能分離型感光体を作製した。
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=30.6、M/V=145.2)
(比較例4)
流速を8.0L/分としたこと以外は、実施例7と同様にして下引層を形成し、実施例7と同様にして感光層を形成して、機能分離型感光体を作製した。
(シリンダー内容積D(L)、流速V(L/分)、分散液量M(L):D/V=2.1、M/V=7.1)
Figure 2010181630
表2および実施の結果から次のことがわかる。
(1)本発明の感光体(実施例6〜7)では、初期白ベタ画像評価において黒い斑点状欠陥のない良好な画像が得られるが、比較例3〜4の感光体では、画像上に多数の黒い斑点状の欠陥が発生すること
(2)比較例4の下引層用塗布液では、粘度が非常に高くなり、浸漬塗布において均一な下引層を形成するために塗布速度が非常に遅くする必要があり、著しく生産性が低下すること
(3)本発明の下引層用塗布液(実施例6および7)では、ポットライフ後でも凝集・沈降がなく、ポットライフ後の下引層用塗布液を用いて作製した感光体では、ポットライフ後の白ベタ画像評価において初期と同じ黒い斑点状の欠陥のない高品質の画像が得られること
(4)比較例3の下引層用塗布液では、分散直後は十分に均一な塗布液が得られるが、ポットライフ後に沈降物の発生が非常に多く、塗布液が著しく不均一で、保存安定性に問題が生じること
(5)比較例3のポットライフ後の下引層用塗布液を用いて作製した感光体では、画像上に黒い斑点状が非常に多く発生し、著しく画像品質が低下すること
(6)比較例4の下引層用塗布液では、分散直後は十分に均一な塗布液が得られ、ポットライフ後に金属化合物の凝集は観察されないが、非常に塗布液の粘度が増加しゲル化するため、下引層を作製することができないこと
1a 積層型感光体
1b 単層型感光体
2 導電性支持体
3 下引層
4 感光層(積層型感光層または単層型感光層)
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
7、9 バインダー樹脂
8 電荷発生物質
18、19 電荷輸送物質
10 回転軸
11、16 モータ
12 塗液
13 塗液槽
14 撹拌槽
15 撹拌装置
17a、17b 循環経路
20 画像形成装置
22 回転軸線
23、29 矢符
24 帯電手段(帯電器)
24a 帯電ローラ
24b バイアス電源
25 現像手段(現像器)
25a 現像ローラ
25b ケーシング
26 転写手段(転写器)
27 クリーニング手段(クリーナ)
27a クリーニングブレード
27b 回収用ケーシング
28 露光手段
28a 光
30 転写紙
31 定着手段(定着器)
31a 加熱ローラ
31b 加圧ローラ

Claims (9)

  1. バインダー樹脂とこれを溶解させる有機溶剤および金属化合物微粒子の混合溶液を、前記混合溶液を収容する容器と、分散メディアが収容されたシリンダーを有する分散機との間に、前記シリンダーの内容積D(L)、前記混合溶液の前記分散機への送液流量V(L/分)および前記分散機において処理される液量M(L)とが、式(1)および(2):
    5.0≧D/V≧2.6 (1)
    100≧M/V≧9 (2)
    で示される条件を満たすように、循環経路を介して循環させて、分散処理した電子写真感光体下引層用塗布液を得ることを特徴とする電子写真感光体下引層用塗布液の製造方法。
  2. 前記分散機が、横型の分散機である請求項1に記載の電子写真感光体下引層用塗布液の製造方法。
  3. 前記分散処理が、1〜170時間行われる請求項1または2に記載の電子写真感光体下引層用塗布液の製造方法。
  4. 前記分散メディアが、粒経0.3〜1mmのジルコニアまたは窒化珪素のビーズである請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体下引層用塗布液の製造方法。
  5. 前記金属化合物微粒子が、酸化チタンまたは酸化亜鉛の微粒子である請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体下引層用塗布液の製造方法。
  6. 前記バインダー樹脂が、有機溶剤可溶性のポリアミド樹脂である請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体下引層用塗布液の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の製造方法により得られたことを特徴とする電子写真感光体下引層用塗布液。
  8. 導電性支持体上に少なくとも下引層と感光層とが順次積層されてなり、前記下引層が、請求項7に記載の電子写真感光体下引層用塗布液を用いて形成された層であることを特徴とする電子写真感光体。
  9. 請求項8に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
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