(本発明の実施形態の概要)
本願の発明者らは、感光体の電子写真特性と耐久性との双方を高水準で達成可能な感光体を実現するため、種々の検討を行った。
フッ素系樹脂粒子は分散性が低く、凝集性が高い。特に1次粒子径が1μm以下のプリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子は、表面層中での光散乱が抑制されるという点では感光体特性上好ましいが、容易に凝集するため、通常のPTFE粒子を表面層に添加した場合、PTFE粒子が凝集し局在化し十分な耐摩耗性が得られない。また、この場合、表面層形成用の塗布液中のPTFE粒子はかなり短期間で凝集してしまい、粒子が沈降してしまう。この点、特許文献3には、照射量50C/kg〜1×105C/kg(吸収線量1.7kGy〜3.4kGy)のガンマ線を照射したフッ素系樹脂粒子を表面層に含有することでフッ素系樹脂粒子の凝集を抑制する点が報告されている。しかし、特許文献3の技術では、フッ素系樹脂粒子を含有した表面層用の塗布液を約1か月以上に渡って長期間使用すると、塗布液中のフッ素系樹脂粒子が凝集してしまい、製造時において塗布液を再分散させる必要があり、コストが高くなるという問題があった。
これに対し、本願発明者らは、空気雰囲気下で吸収線量が4MGy以上のガンマ線をPTFE粒子に吸収させると、粒子表面のPTFE分子鎖が切断、酸化され、粒子表面に、-OH基、-O-基、−COOH基のような極性基が増加し、PTFE粒子のぬれ性が高くなり、長期の分散安定性が劇的に改善されることを見出し、本発明の実施形態を完成するに至った。
すなわち、本発明の実施形態は、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂と、1次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子とを少なくとも含有する塗布液を用いた塗布法によって表面層を形成する電子写真感光体の製造方法であって、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、4MGy以上の吸収線量のガンマ線(γ線)が空気雰囲気下で照射されていることを特徴とする。
あるいは、本発明の実施形態は、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂と、1次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子とを含有する表面層が形成された電子写真感光体であって、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、4MGy以上の吸収線量のガンマ線が空気雰囲気下で照射されていることを特徴とする。
これにより、感光体の製造時に使用される表面層用の塗布液(PTFE粒子を含有させた塗布液)を約1か月以上に渡って長期間使用しても、塗布液中のPTFE粒子の凝集が抑制される。それゆえ、製造時において表面層用の塗布液を再分散させる必要がなく、コスト高を抑制できる。そして、塗布液中のPTFE粒子の凝集が抑制されている故、表面層中でのポリテトラフルオロエチレン粒子の凝集も抑制されており、耐摩耗性および電子写真特性を高水準で維持できる。それゆえ、本発明の一態様によれば、高水準の感光体特性および耐摩耗性を維持しつつ、製造時のコスト高を抑制できるという効果を奏する。
また、本発明の実施形態の感光体は、電荷輸送層と電荷発生層とを含む機能分離型の感光層を備え、電荷発生層を前記表面層とする構成であってもよい。また、本発明の実施形態の感光体は、電荷輸送能と電荷発生能とを併せ持つ機能一体型の感光層を備え、当該感光層を前記表面層とする構成であってもよい。あるいは、本発明の一態様の感光体は、機能分離型の感光層と、当該感光層を覆う保護層とを備え、当該保護層を前記表面層とする構成であってもよい。また、本発明の一態様の感光体は、機能一体型の感光層と、当該感光層を覆う保護層とを備え、当該保護層を前記表面層とする構成であってもよい。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の感光体とその製造方法をより詳細に説明する。
(感光体の全体構成)
本発明の実施形態の電子写真感光体(以下では単に「感光体」と称する)は、空気雰囲気下で4MGy以上のガンマ線を吸収させ且つ1次粒子径が1μm以下のPTFE粒子が添加されている表面層を備えたことを特徴とするものである。
本発明の実施形態は、感光層を表面層(最外層)とする第1タイプの感光体、若しくは、感光層を被膜する保護層を表面層(最外層)とする第2タイプの感光体に適用可能である。図1は、第1タイプの感光体の要部の断面図であり、図2は、第2タイプの感光体の要部の断面図である。
本実施形態に係る第1タイプの感光体20aは、図1に示すように、導電性材料から成る円筒状の導電性基体13aと、導電性基体13aの外周面に形成される中間層14aと、中間層14aの外周面に形成される感光層15aとを有する。感光層15aは、図1に示すように、電荷発生層151aと電荷輸送層152aとを有する。電荷発生層151aは、中間層14aの外周面に積層されており、電荷発生物質を含有する。電荷輸送層152aは、電荷発生層151aの外周面に積層され、電荷輸送物質を含有する。図1に示す第1タイプの感光体20aでは、感光層15aを構成する層のうち電荷輸送層152aが感光体20aの表面層に相当する。
また、本実施形態に係る第2タイプの感光体20bは、図2に示すように、導電性材料から成る円筒状の導電性基体13bと、導電性基体13bの外周面に形成される中間層14bと、中間層14aの外周面に形成される感光層15bと、感光層15bの外周面に形成される保護層16bとを有する。感光層15bは、図2に示すように、電荷発生層151bと電荷輸送層152bとを有する。電荷発生層151bは、中間層14bの外周面に積層されており、電荷発生物質を含有する。電荷輸送層152bは、電荷発生層151bの外周面に積層され、電荷輸送物質を含有する。保護層16bは、電荷輸送層152bの外周面に形成されている。図2に示す第2タイプの感光体20bでは、保護層16bが感光体20bの表面層に相当する。
以下では、図1に示される感光体20aまたは図2に示される感光体20bの構成要素を説明する。なお、以下において、導電性基体13a・13bの両方を指す場合は導電性基体13と称し、中間層14a・14bの両方を指す場合は中間層14と称し、電荷発生層151a・151bの両方を指す場合は電荷発生層151と称し、電荷輸送層152a・152bの両方を指す場合は電荷輸送層152と称し、感光層15a・15bの両方を指す場合は感光層15と称し、感光体20a・20bの両方を指す場合は感光体20と称す。
(導電性基体)
まず、感光体20に形成されている導電性基体(導電性支持体)13を説明する。導電性基体13は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能とを有する。導電性基体13の材料は、電子写真感光体の技術分野にて通常用いられる材料であれば特に限定されるものではない。
導電性基体13の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料、または、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料が挙げられる。また、硬質紙またはガラスなどからなる支持体表面に金属箔をラミネートしたものを導電性基体13としてもよい。さらに、前記支持体表面に金属材料を蒸着したものを導電性基体13としてもよい。あるいは、前記支持体表面に、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものを導電性基体13としてもよい。
また、導電性基体13の形状は、図3の符号20aに示されるような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
導電性基体13の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本実施形態の感光体20を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性基体13の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を抑制できる。
(中間層)
つぎに、中間層14について説明する。中間層14は、導電性基体13から感光層15への電荷の注入を防止する機能を有するための層であり。下引き層ともよばれるものである。
すなわち、導電性基体13と感光層15との間に中間層14が形成されていることにより、感光層15の帯電性の低下が抑制され、感光体表面において露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が抑制されるのである。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生することが抑制される。
また、導電性基体13の表面を被覆する中間層14は、導電性基体13の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、感光層15の成膜性を高め、感光体20に対する感光層15の固着度(接着性)を向上させて、感光体20から感光層15が剥離することを抑えることができる。なお、中間層14は、1層とは限らず、複数の層で構成されていてもよい。
中間層14としては、各種樹脂材料からなる樹脂層、アルマイト層などが用いられる。樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリアミド樹脂などの合成樹脂、ならびにこれらの合成樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども挙げられる。
これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好適に用いられる。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどから選択される2以上の樹脂を共重合させた共重合ナイロンを挙げることができる。また、N−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させた樹脂なども挙げられる。
また、中間層14には、金属酸化物粒子を含有させてもよい。中間層14に金属酸化物粒子を含有させることによって、中間層14の体積抵抗値を調節し、導電性基体13からの感光層15への電荷の注入を抑制する効果を高めることができる。また、種々の環境下において感光体20の電気特性を維持し、環境安定性を向上させることができる。中間層14に対して含有させ得る金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子が挙げられる。
また、中間層14には、光散乱粒子を含有させてもよい。中間層14に光散乱粒子を含有させることによって、レーザ光の干渉による干渉縞が画像上に現れる画像欠陥を抑制できるためである。含有させ得る光散乱粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、有機高分子などが挙げられる。
また、中間層14には、導電性を調節するために電子輸送物質を含んでいてもよい。中間層14に添加される電子輸送物質としては、例えば、ペリレン系色素類、ジフェノキノンやナフトキノンの誘導体などのキノン類、テトラシアノエチレンやテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノンやアリザリンなどのアントラキノン類が挙げられる。
中間層14は、例えば、前記の樹脂を適当な溶剤中に溶解または分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体の表面に塗布することによって形成することができる。中間層14に上記の金属酸化物粒子などの粒子を含有させる場合には、例えば、前記の樹脂を適当な溶剤に溶解させて得られる樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体の表面に塗布することによって中間層14を形成することができる。
中間層用塗布液の溶剤としては、水もしくは各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。その中でも、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類との混合溶剤、2種類以上のアルコール類の混合溶剤、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類との混合溶剤、塩素系溶剤(ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなど)とアルコール類との混合溶剤、エーテル類(THF、ジオキサンなど)とアルコール類との混合溶剤等が好適に用いられる。
上記の金属酸化物粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライタ、サンドミル、横型サンドミルなどのメディア分散機や、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機などを用いる公知の分散方法を使用することができる。
中間層用塗布液中において、中間層用塗布液に使用されている溶剤の重量(D)に対する樹脂および金属酸化物の合計重量(C)の重量比(C/D)は、1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。
また、樹脂の重量(E)と金属酸化物の重量(F)との重量比(E/F)は、90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの中でも、特に浸漬塗布法は、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、中間層を形成する場合に好適に用いられる。
中間層14の膜厚は、0.01〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜10μmである。中間層14の膜厚が0.01μmよりも薄いと、実質的に中間層14として機能しなくなり、導電性基体13の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性基体13からの感光層15への電荷の注入を十分に防止することができなくなる可能性があり、感光層15の帯電性の低下を抑制できないおそれがある。一方、中間層14の膜厚を20μmよりも厚くすることは、浸漬塗布法によって形成する場合に中間層14の形成が困難になるとともに、中間層14上に感光層15を均一に形成することができず、感光体20の感度が低下するおそれがあるので好ましくない。
(電荷発生層)
電荷発生層151は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を含有する層である。
電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、オキソチタニウムフタロシアニン化合物などの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられる。
これらの電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、または2種以上が組合わされて使用されてもよい。
これらの電荷発生物質の中でも、フタロシアニン化合物、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜および28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜および28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜および28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜および27.2゜に強い回折ピークを有するオキソチタニウムフタロシアニン結晶を使用することが好ましい。
電荷発生物質は他の増感染料(増感剤)と併用してもよい。増感剤を添加することによって、感光体の感度が向上し、更に繰返し使用による残留電位の上昇および帯電電位の低下などを抑えることができ、電気的耐久性を向上させることができる。
そのような増感染料としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などが挙げられる。
電荷発生層151には、結着性を向上させるために、バインダ樹脂が含有されてもよい。バインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、および、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂を挙げることができる。
バインダ樹脂は上記のものに限定されず、電子写真感光体の分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することもできる。バインダ樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、または2種以上が併用されてもよい。
電荷発生層151における電荷発生物質の割合は、10重量%以上且つ99重量%以下であることが好ましい。電荷発生物質の割合が10重量%未満であると、感光体20の感度が低下するおそれがある。一方、電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、バインダ樹脂の含有量が低すぎて、電荷発生層151の膜強度が低下する可能性がある。さらに、電荷発生層151における電荷発生物質の分散性が低下して電荷発生物質の粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される、いわゆる黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれもある。
電荷発生層151の形成方法としては、前述の電荷発生物質を導電性基体の表面に真空蒸着する真空蒸着法、前記の電荷発生物質を含む電荷発生層用塗布液を導電性基体の表面に塗布する塗布法などが挙げられる。これらの中でも簡便な塗布法が好適に用いられる。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、好適に用いられる。
浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。なお、塗布方法はこれらに限定されるものではなく、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択することができる。
また、電荷発生層用塗布液は、例えば、適当な溶剤中に前述の電荷発生物質を加えると共に必要に応じて前述のバインダ樹脂を加え、従来公知の方法で分散させることによって調製することができる。
電荷発生層用塗布液に使用される溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。
これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、または2種以上が混合されて混合溶剤として使用されてもよい。
電荷発生物質は、上記の溶剤中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などが挙げられる。
電荷発生物質を溶剤中に分散させる際に用いられる分散機としては、例えば、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどを挙げることができる。また、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機も利用できる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生層151の膜厚は、0.05〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。電荷発生層151の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体20の感度が低下するおそれがある。一方、電荷発生層151の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層151の内部での電荷移動が感光層15の表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体20の感度が低下するおそれがある。
(電荷輸送層)
電荷輸送層152は、電荷発生層151に含まれる電荷発生物質が発生した電荷を受入れて当該電荷を輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させるバインダ樹脂とを含む層である。なお、図1の感光体20aにおいては、電荷輸送層152aは感光体20aの最外層(表面層)に該当する。
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、多環芳香族系化合物、アニリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、芳香族アミン化合物、トリフェニルアミン系化合物およびその2量体、トリフェニルメタン系化合物、テトラフェニルブタジエン系化合物、エナミン系化合物およびスチルベン系化合物、ならびにこれらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有する重合体(例えばポリ−N−ビニルカルバゾール)などのホール輸送物質が挙げられる。また、電荷輸送物質として、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなども用いることができる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
バインダ樹脂には、電荷輸送物質との相溶性に優れ、また耐摩耗性が優れたポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂が使用される。
電荷輸送層152において、電荷輸送物質の重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の重量比(B/A)は、1.0〜2.5であることが好ましい。B/Aが2.5を超えると、バインダ樹脂の比率が高くなり過ぎ、感光体の感度が低下するおそれがある。他方、比率B/Aが1.0未満の場合、バインダ樹脂の比率が低くなり過ぎ、電荷輸送物質が結晶化し、画像欠陥が起こる可能性が高くなる。
また、電荷輸送層152には下記に示す有機粒子や無機粒子を含有していてもよい。
電荷輸送層152に含有される有機粒子としては、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、架橋したポリメチルメタクリレート樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド架橋物、エポキシ樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂(PPS)、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-アクリル共重合体などが挙げられる。これらの有機粒子は、分散性向上、表面性改質、結晶度の調整などの理由から熱処理やレーザあるいは放射線の照射処理をされていてもよい。
具体的には、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)としては、三井・デュポンフロロケミカル株式会社のMP−101(製品名)などが挙げられる。テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)としては、三井・デュポンフロロケミカル株式会社の120−JR(製品名)などが挙げられる。ポリメチルメタクリレート樹脂としては、積水化成品工業株式会社のXX−31BM(製品名)、株式会社日本触媒のエポスターMX100WまたはエポスターMX200W(製品名)などが挙げられる。メラミン・ホルムアルデヒド架橋物としては、株式会社日本触媒のエポスターSおよびエポスターS6(製品名)などが挙げられる。ポリフェニルスルフィド樹脂(PPS)としては、東レ株式会社のトレパールPPS(製品名)などが挙げられる。
電荷輸送層152に含有される無機粒子としては、酸化珪素(シリカ)、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)などの酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの窒化化合物などが挙げられる。
これらの無機粒子は、分散性向上、表面性改質などの理由から無機物や有機物を用いて表面処理されていてもよい。表面処理は撥水性処理と無機物処理とがある。撥水性処理としては、シランカップリング剤での処理、フッ素系シランカップリング剤での処理、高級脂肪酸処理若しくは高分子材料などとの共重合処理が挙げられる。無機物処理としては、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカを用いた処理が挙げられる。
具体的には、酸化珪素(シリカ)としては、日本アエロジル株式会社のR972、R974、NY50、およびRX50(いずれも製品名);キャボットジャパン株式会社のTS610、TS612、TS620、TS630(いずれも製品名);信越化学工業株式会社のX−24-9163A(製品名);株式会社アドマテックスのSO−E1、SO−E2、SE100−GDT、SE100−SPT(いずれも製品名)が挙げられる。
酸化チタンとしては、石原産業株式会社のTTO−55D、TTO−D−1、ST−21、PT‐401M9(いずれも製品名);堺化学工業株式会社のGTR100(製品名);テイカ株式会社のMT−500SAS(製品名)などが挙げられる。
酸化亜鉛としては、石原産業株式会社のFZO−50(製品名)、堺化学工業株式会社のFINEX30(製品名)、テイカ株式会社のMZ−300(製品名)、ハクスイテック株式会社のF−2(製品名)などが挙げられる。
電荷輸送層152には、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤および/またはレベリング剤などの添加剤を添加してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルのような二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。
レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーン、ジフェニルシリコーンおよびフェニルメチルシリコーンなどのシリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
また、電荷輸送層152には、必要に応じて、酸化防止剤および/または増感剤などの各種添加剤を含んでもよい。これによって、電位特性が向上するとともに、塗布液としての安定性が高まり、また、感光体20を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体またはベンジルアミン誘導体が好適に用いられる。ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体およびベンジルアミン誘導体は、任意の割合で混合して使用されてもよい。
ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体またはベンジルアミン誘導体の使用量、またはヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体およびベンジルアミン誘導体の合計使用量は、電荷輸送物質に対して0.1重量%以上20重量%以下の範囲にあることが好ましい。使用量(または合計使用量)を0.1重量%以上とすることで、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に更なる効果を得ることができる。また、使用量(または合計使用量)が20重量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、図1に示されるように、電荷輸送層152aが感光体20aの表面層(最外層)である場合には、電荷輸送層152aには、1次粒子径が1μm以下であり且つ空気雰囲気下で4MGy以上のγ線を吸収させたPTFE粒子が含有される。
1次粒子径が1μm以下のPTFE粒子としては市販品を利用できる。この市販品の例としては下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)ダイキン工業株式会社の製品名:ルブロンL-2、L-5、L-5F
(2)株式会社喜多村の製品名:KTL-500F
(3)旭硝子株式会社の製品名:FLUON PTFE L173J
(4)テクノケミカル株式会社の製品名:microdispers−200
(5)綜研化学株式会社の製品名:MP−300
(6)三井・デュポンフロロケミカル株式会社の製品名:TLP−10F−1
なお、PTFE粒子の1次粒子径は例えば以下のようにして計測できる。PTFE粒子を導電性テープ上に固定し、Pt−Pdの導電性コーティングを施した後、高分解能走査電子顕微鏡(S−4800(日立ハイテクノロジーズ社製))を用いてPTFE粒子を観察し、30個の球形粒子の直径を測定し、測定した直径の平均値を前記1次粒子径とする。
また、電荷輸送層152aには、前記のPTFE粒子の分散性を安定させるための分散安定剤が添加されてもよい。分散安定剤は、PTFE粒子に対して1〜30重量%の割合で添加される。分散安定剤としては、下記の(11)〜(17)が挙げられる。
(11)東亞合成株式会社のGF−300、GF−400、サイマックUS−120、レゼダGP−210S(いずれも商品名)
(12)日油株式会社のモディパーFT200、モディパーCL430G(いずれも商品名)
(13)AGCセイミケミカル株式会社のサーフロンS−611、S−651、S−386(いずれも商品名)
(14)DIC株式会社のメガファックF561、F555、F444、T1540、T1836(いずれも商品名)
(15)BASFジャパン株式会社のPE‐3100、PE‐6400、PE‐10300、RPE‐1720(いずれも商品名)
(16)ビックケミー・ジャパン株式会社のDisper BYK161、BYK162、BYK163、BYK164、BYK166、BYK2000、BYK2022、BYK2025、BYK2155(いずれも商品名)
(17)積水化学工業株式会社のエスレックBX−L、BX−1、BX−5、KS−1、KS−3、KS−5、KS−10、BL−1、BL−2、BL−5、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S(いずれも製品名)
なお、図1に示す第1タイプの感光体20の電荷輸送層152aには、PTFE粒子を加えることになるが、勿論、PTFE粒子の他に前述の有機粒子や無機粒子を含有させてもよい。
また、電荷輸送層152は、本発明の一形態の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて電荷発生層151に含まれるものと同様の添加剤を適量含有していてもよい。
電荷輸送層152の形成方法としては、前記の電荷輸送物質を含む電荷輸送層用塗布液を導電性基体の表面に塗布する塗布法が用いられる。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。溶剤は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上が混合して使用してもよい。
電荷輸送層形成用塗布液の調製方法については特に限定されるものではない。バインダ樹脂と電荷輸送材料と溶剤とその他の成分(必要に応じて)とを混合し、分散機を用いて調製する手法が挙げられる。
また、電荷輸送層にPTFEを含有させる場合においては、バインダ樹脂と電荷輸送材料と溶剤とPTFE粒子と分散安定剤とその他の成分(必要に応じて)とを混合して分散機を用いて調製することになる。
あるいは、上述のPTFE粒子と分散安定剤と溶剤とを含む混合液Aおよびバインダ樹脂と電荷輸送材料と各種の添加剤(必要に応じて)と溶剤とを含む混合液Bの2液を別々に準備した後に、これら混合液Aおよび混合液Bを混合し、分散機を用いて調製してもよい。この手法によれば、PTFE粒子と分散安定剤とを溶剤中で混合することにより、PTFE粒子の表面に分散安定剤を十分に付着させることができる。
あるいは、バインダ樹脂を含む溶剤に上述のPTFE粒子と分散安定剤とを添加して混合液A’を準備し、この混合液A’と上述の混合液Bとを混合し、分散機を用いて電荷輸送層形成用塗布液を調製することもできる。なお、混合液A’に含まれるバインダ樹脂の量は、PTFE粒子に対して1〜70重量%であるのが好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。
以上の混合液Aまたは混合液A’を用いて調製された電荷輸送層形成用塗布液によって電荷輸送層を形成することにより、粒子に未吸着の分散安定剤を減少させることができるため、感光体20の感度を向上することができる。
電荷輸送層形成用塗布液を調製する際に使用される分散機としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライタ、サンドミル、横型サンドミルなどのメディア分散機や、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液‐液衝突や液‐壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
このようにして得られる電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層151の表面に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、リング塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法、バーコート塗布法、ロールコート塗布法などの通常の方法を用いることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層152を形成する場合にも多く利用されている。
電荷輸送層(表面層)152aにおけるPTFE粒子の含有量は、電荷輸送層(表面層)152の含有物の全量(質量基準)に対して2〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。PTFE粒子の含有量が2重量%未満では、耐摩耗性の効果がほとんどなく、感光体20の耐久性が向上できないことがある。一方、PTFE粒子の含有量が30重量%を超えると、高温高湿下での使用の際に、電気特性が悪化することがある。
また、電荷輸送層152の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。電荷輸送層152の膜厚が5μm未満では、感光体20の表面の帯電保持能が低下するおそれがある。一方、電荷輸送層152の膜厚が50μmを超えると、感光体20の解像度が低下する可能性がある。
また、図1または図2の例では、感光層15は電荷発生層151および電荷輸送層152の2層からなる構造であるが、感光層15は機能一体型の単一層で構成されてもよい。この場合、感光層形成用塗布液は、上述の電荷輸送層形成用塗布液の調製方法において電荷輸送材料に加えて電荷発生材料を添加する以外は同様にして調製することができる。
なお、図1に示す第1タイプの感光体20aにおいて感光層15aを機能一体型の単一層とする場合、感光層15aが感光体20aの表面層となるため、感光層15aにPTFE粒子が添加されることになる。この場合の感光層15aにおけるPTFE粒子の含有量は、感光層15aの含有物の全量(質量基準)に対して2〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。また、感光層15aを機能一体型とした場合にも、前記のPTFE粒子の分散性を安定させるための分散安定剤を添加してよく、PTFE粒子に対して1〜30重量%の割合で分散安定剤が添加される。
(保護層)
図2に示す第2タイプの感光体20bでは、電荷輸送層152bの外周側にて当該電荷輸送層152bを覆う保護層16bが形成されており、保護層16bが感光体20bの表面層である(図1の感光体20aでは、電荷輸送層152aの外周側には保護層が形成されておらず電荷輸送層152aが感光体20aの表面層である)。以下では、図2の保護層16bについて詳細に説明する。
保護層16bは、感光体20bの帯電時の電荷輸送層152bの化学的変化を防止したり、感光層15bの機械的強度をさらに改善するために形成される層である。
上述のPTFE粒子は感光体20の表面層に添加されるものであるため、図2に示す感光体20bにおいては、保護層16bにPTFE粒子が添加される。
具体的には、PTFE粒子と分散安定剤と導電性材料と適当なバインダ樹脂(ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂)と適当な溶剤とを混合した塗布液を調製し、この塗布液を感光層15b上に塗布することにより、保護層16bが形成される(つまり、塗布法により形成される)。
導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、上述の電荷輸送材料、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズとアンチモンとの固溶体の担体、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上述した各金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛または硫酸バリウムの単一粒子中に上述の金属酸化物を混合した材料、あるいは、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、または硫酸バリウムの単一粒子中に上述の金属酸化物を被覆した材料などが挙げられる。
保護層16bに使用するバインダ樹脂としては、前述のように、ポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂が用いられる。
保護層を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビードー塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法などの通常の方法を用いることができる。また、保護層を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルヘンゼン、トルエン、シクロヘキサノンなどの通常の有機溶剤を単独であるいは2種以上を混合して用いることができるか、この塗布液が塗布される感光層15bを溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
保護層形成用塗布液は、上述の電荷輸送層形成用塗布液の調製方法と同様にして調製することができる。
保護層16bにおけるPTFE粒子の含有量は、PTFE粒子を含む保護層(表面層)16bの含有物の全量(質量基準)に対して1〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜30重量%である。PTFE粒子の含有量が1重量%未満では、摩耗により保護層が剥離する可能性が高くなる。一方、PTFE粒子の含有量が40重量%を超えると、高温高湿下での使用の際に、電気特性が悪化することがある。
また、保護層16bにも、前記のPTFE粒子の分散性を安定させるための分散安定剤が添加されてもよい。分散安定剤は、PTFE粒子に対して1〜30重量%の割合で添加される。
また、保護層16bの膜厚は、1〜20μmであることが好ましく、より好ましは2〜10μmである。保護層16bの膜厚が1μm未満では、ブレード又は帯電ローラの接触等による外力を受けたとき、保護層16bが下層の感光層15bとの界面から剥離し易くなる。これは、保護層16bの膜厚が薄い場合、外力を受けた時に保護層16b自体では抗し切れずに感光層15bとの界面に常時力が負荷され、それが、長期にわたると負荷されている力によって界面にずれが生じ易くなるためと考えられる。また、摩耗により保護層16bの全てが感光体20bの寿命前に消失する可能性もある。一方、保護層16bの膜厚が20μmを超えると、キャリアが保護層16b内を移動する過程において拡散するので、文字太り等の画像ボケが生じ易くなり、かつ感度低下及び繰返しによる残留電位上昇が起こる。
なお、図2に示す第2タイプの感光体20bでは、保護層16bが表面層であるため、保護層16bにPTFE粒子が添加されるが、勿論、保護層16bのみならず電荷輸送層152bにもPTFE粒子が添加されていても構わない。
(画像形成装置)
つぎに、本発明の実施形態の感光体を備える画像形成装置を説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、モノクロ、カラーを問わず、電子写真プロセスを利用する種々のプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機などであり得る。
図3は、画像形成装置の一構成例を示す模式図である。図3に示すように、画像形成装置100は、本実施形態の感光体20aと、露光装置30と、帯電器32と、現像器33と、転写器34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着器35と、クリーナ36とを含んで構成される。参照符号51は転写紙を示す。なお、本実施形態では、帯電器32は、接触タイプの帯電ローラになっているが、勿論、非接触タイプのコロナ放電帯電器であってもよい。
画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、感光体20aが矢符41方向に回転駆動されると、帯電器32によって、感光体20aの表面が正または負の所定電位に均一に帯電される。ついで、半導体レーザである露光装置30が、感光体20aの表面に対して画像情報に応じた光を照射する。感光体20aは、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。現像器33から、静電潜像の形成された感光体20aの表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体20a上のトナー像は、感光体20aと転写器34との間に供給された転写紙51に、転写器34によってトナーと逆極性の電荷が与えられることで、転写紙51上に転写される。トナー像の転写された転写紙51は、定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、トナー像の転写後も感光体20aの表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体20aの表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体20aの表面の電荷は、不図示の除電ランプからの光によって除去され、感光体20aの表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体20aはさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
また、画像形成装置100においては、感光体20a、帯電器32、現像器33およびクリーナ36から選択される少なくとも1つを備えるプロセスカートリッジが着脱可能になっていてもよい。例えば、感光体20a、帯電器32、現像器33およびクリーナ36を支持部材に取り付けて一体化したプロセスカートリッジが画像形成装置100に組み込まれることにより、プロセスカートリッジの各構成要素が画像形成装置100に備えられることになっていてもよい。プロセスカートリッジが画像形成装置100に脱着可能であることにより、消耗時の交換が容易になる。
なお、図3の画像形成装置100または前記プロセスカートリッジには、図1に示す感光体20aが取り付けられているが、図2に示す感光体20bが取り付けられてもよい。
以下、実施例を用いて本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は以下の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
酸化アルミニウム(Al2O3)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)とで表面処理された樹枝状の酸化チタン(粒子径:70nm、石原産業株式会社製、製品名:タイベークTTO−D−1)9重量部と、バインダ樹脂としての共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製、製品名:アミランCM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層用塗布液2kgを調製した。
得られた中間層用塗布液を塗工槽に満たし、これに導電性基体としての直径30mm、長手方向の長さ357mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体を浸漬した後、引上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性基体上に膜厚1.0μmの中間層を形成した。
次いで、電荷発生物質として、Cu−Kα特性X線(波長:1.54Å)に対するX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニウムフタロシアニン2重量部と、バインダ樹脂としてのポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックBM−S)1重量部とを、メチルエチルケトン97重量部に混合し、ペイントシェーカにて8時間分散処理して電荷発生層用塗布液2kgを調製した。得られた電荷発生層用塗布液を、中間層と同様の浸漬塗布法で、先に形成した中間層上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
次いで、PTFE粒子(1次粒子径:0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL−2)を用意し、空気雰囲気下で前記PTFE粒子に5MGyのガンマ線を吸収させた。
以上のようにしてガンマ線を吸収させたPTFE粒子2.05重量部と、分散安定剤としてのGF−400(東亞合成株式会社製)0.165重量部とを、テトラヒドロフラン8.24重量部に加えた後、室温で1日間攪拌混合してPTFE粒子懸濁液(A液)を得た。なお、分散安定剤の量は、PTFE粒子に対して2重量%に相当する。
次に、電荷輸送物質としてのN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン(日本蒸留工業株式会社製、製品名:HTM−101)6.82重量部と、バインダ樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、製品名:ユーピロンZ400)10.9重量部と、酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.682重量部とを混合し、テトラヒドロフラン71.1重量部に混合物を溶解させた(B液)。
次に、B液にA液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を有する貫通式チャンバーを装着したメディアレス分散機(株式会社パウレック製、型式:マイクロフルイダイザーM−110P)を用いて、設定圧力100MPaの条件で分散処理を5回繰り返し、電荷輸送層用塗布液2kgを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、中間層と同様の浸漬塗布法で、先に形成した電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を温度110℃で1時間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層(感光体の感光層側の最外層)を形成し、図1に示されるように電荷輸送層152aを表面層とした感光体を作製した。
(実施例2)
空気雰囲気下で5MGyのガンマ線を吸収させたPTFE粒子の代わりに、空気雰囲気下で8MGyのガンマ線を吸収させたPTFE粒子(ルブロンL−2)を用いた点と、分散安定剤を添加しない点とが実施例1と異なり、他の点については実施例1と同様にして、実施例2の感光体を作製した。
(実施例3)
分散安定剤として、ルブロンL−2の代わりに、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、製品名:エスレックKS−3)を用いた点が実施例1と異なり、他の点については実施例1と同様にして、実施例3の感光体を作製した。
(実施例4)
バインダ樹脂として、ユーピロンZ400の代わりに、ポリアリレート樹脂(ユニチカ株式会社製、製品名:U-ポリマー U-100)を用い、テトラヒドロフランの代わりにジクロロメタンを用いた点が実施例1と異なり、他の点については実施例1と同様にして、実施例4の感光体を作製した。
(実施例5)
空気雰囲気下で5MGyのガンマ線を吸収させたPTFE粒子(商品名:FLUON PTFE L173J(旭硝子株式会社製))を用いた点が実施例1と異なり、他の点については実施例1と同様にして、実施例5の感光体を作製した。
(実施例6)
実施例1と同様にして、導電性支持体上に中間層と電荷発生層とをこの順で形成した。次いで、電荷輸送物質としてのN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン(日本蒸留工業株式会社製、製品名:HTM−101)1重量部と、バインダ樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、製品名:ユーピロンZ400)1.2重量部とを混合し、テトラヒドロフラン9.6重量部に混合物を溶解させ、電荷輸送層用塗布液2kgを調製した。得られた電荷発生層用塗布液を、中間層と同様の浸漬塗布法で、先に形成した電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を温度110℃で1時間乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
次いで、PTFE粒子(1次粒子径:0.2μm、ダイキン工業株式会社製、製品名:ルブロンL−2)を用意し、空気雰囲気下で前記PTFE粒子に5MGyのガンマ線を吸収させた。
このようにしてガンマ線を吸収させたPTFE粒子6.15重量部と、分散安定剤としてのGF−400(東亞合成株式会社製)0.50重量部とを、テトラヒドロフラン24.7重量部に加えた後、室温で1日間攪拌混合してPTFE粒子懸濁液(A液)を得た。なお、分散安定剤の量は、PTFE粒子に対して2重量%に相当する。
次に、電荷輸送物質としてのN,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン(日本蒸留工業株式会社製、製品名:HTM−101)5.27重量部と、バインダ樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、製品名:ユーピロンZ400)8.43重量部と、酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.527重量部とを混合し、テトラヒドロフラン54.4重量部に混合物を溶解させた(B液)。
次に、B液にA液を加えて攪拌混合した後、微細な流路を有する貫通式チャンバーを装着したメディアレス分散機(株式会社パウレック製、型式:マイクロフルイダイザーM−110P)を用いて、設定圧力100MPaの条件で分散処理を6回繰り返し、保護層用塗布液2kgを調製した。
得られた保護層用塗布液を、中間層と同様の浸漬塗布法で、先に形成した電荷輸送層上に塗布し、得られた塗膜を温度110℃で1時間乾燥させて、膜厚5μmの保護層(感光体の感光層側の最外層)を形成し、図2に示されるように保護層16bを表面層とした感光体を作製した。
(比較例1)
空気雰囲気下で5MGyのガンマ線を吸収させたPTFE粒子の代わりに、ガンマ線を吸収させなかったPTFE粒子(ルブロンL−2)を用いた点が実施例1と異なり、他の点は実施例1と同様にして、比較例1の感光体を作製した。
(比較例2)
空気雰囲気下で5MGyのガンマ線を吸収させたPTFE粒子の代わりに、空気雰囲気下で3MGyのガンマ線を吸収させたPTFE粒子(ルブロンL−2)を用いた点が実施例1と異なり、他の点は実施例1と同様にして、比較例2の感光体を作製した。
(評価)
作製した実施例1〜6および比較例1、2の感光体の各々について、以下のように「塗布液安定性」「耐刷性(耐摩耗性)」「電気特性」を評価し、さらに、感光体性能の総合判定を行なった。
(a)塗布液安定性
実施例1〜5、比較例1、2の各感光体の表面層用の塗布液について、レーザ回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、型式:マイクロトラックMT3000II)を用いて、分散直後の塗布液の粒度分布(体積基準)、および、浸漬塗布装置に導入したまま1ヶ月経過し再分散させていない塗布液の粒度分布(体積基準)を測定した。なお、実施例1〜5、比較例1、2では、表面層用の塗布液は電荷輸送層用塗布液であり、実施例6では、表面層用の塗布液は保護層用塗布液である。得られた測定結果から、塗布液安定性を次の判定基準により評価した。
VG(優):1ケ月経過後の粒度分布における粒径10μm以上の粒子の体積分率が10%未満である。
B(実使用不可):1ケ月経過後の粒度分布における粒径10μm以上の粒子の体積分率が10%以上である。
ここで、上記の体積分率とは、粒度分布全体の頻度の累積値に占める粒径10μm以上の頻度の累積値の割合である。
なお、後に示す表1に示される体積平均粒径は、分散直後の粒度分布の体積平均粒径であり、表1に示される体積分率は、1ケ月経過後の粒度分布における粒径10μm以上の粒子の体積分率である。
(b)耐刷性(耐摩耗性)
実施例1〜5、比較例1、2の各感光体(実機評価用)を、帯電装置としてコロナ放電帯電器を備える市販の複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−3100FG)にそれぞれ搭載し、常温/常圧(N/N)の環境下において、所定のパターンのテスト画像を記録用紙10万枚に実写させた(常温/常圧とは温度25℃且つ相対湿度50%を指す)。実写後に、搭載していた感光体を取り出して感光層の膜厚d1(μm)を測定し、予め測定しておいた作製時の感光層の膜厚d0から差引いた値(d0−d1)を膜減り量Δdとして求めた。得られた結果から、耐刷性を次の判定基準により評価した。なお、常温/常圧とは温度25℃且つ相対湿度50%を指す。
VG(優):Δdが5μm未満である。
G (良):Δdが5μm以上8μm未満である。
NB(可):Δdが8μm以上12μm未満である。
B(実使用不可):Δdが12μm以上である。
(c)電気特性(繰り返し電気特性)
実施例1〜5、比較例1、2の各感光体(実機評価用)を、帯電装置としてコロナ放電帯電器を備え、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(ジェンテック社製、型式:CATE751)を取り付けて改造した市販の複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−3100FG)にそれぞれ搭載し、高温/高圧(H/H)の環境下において、以下のようにして電気特性を評価した(高温/高圧とは温度35℃且つ相対湿度85%を指す)。なお、評価に用いた複写機は、感光体表面を負に帯電して電子写真プロセスを行なう負帯電型の画像形成装置である。
テスト画像の連続複写前に、帯電器による帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として測定し、これを初期の帯電電位V01とした。また、テスト画像の連続複写前に、レーザ光によって露光を施した直後の感光体の表面電位を残留電位Vr(V)として測定し、これを初期の残留電位Vr1とした。
次いで、所定のパターンのテスト画像を記録用紙30万枚に連続して複写させた後、初期と同様にして帯電電位V0および残留電位Vrを測定し、これらを繰返し使用後の帯電電位V02および繰返し使用後の残留電位Vr2とした。
初期の帯電電位V01と繰返し使用後の帯電電位V02との差の絶対値を、帯電電位変化量ΔV0として求めた。つまり、ΔV0=|V01−V02|である。
また、初期の残留電位Vr1と繰返し使用後の残留電位Vr2との差の絶対値を、残留電位変化量ΔVrとして求めた。つまり、ΔVr=|Vr1−Vr2|である。
得られた結果(帯電電位変化量ΔV0および残留電位変化量ΔVr)から、電気特性(電気特性の安定性)を次の判定基準により評価した。
VG(優):ΔV0が15V以下かつΔVrが105V以下である。
G (良):ΔV0が15V以下かつΔVrが105Vを超え125V以下である。または、ΔV0が15Vを超え30V以下かつΔVrが105V以下である。
NB(可):ΔV0が15Vを超え30V以下かつΔVrが105Vを超え125V以下である。
B(実使用不可):ΔV0が30Vを超えている。またはΔVrが125Vを超えている。
(d)感光体性能の総合判定
上記(a)〜(c)の評価結果から感光体性能を次の判定基準により評価した。
VG(優):塗布液安定性、耐刷性および電気特性がいずれも優である。
G (良) :塗布液安定性が優であり、且つ、耐刷性および電気特性の一方が良であり、他方が優または良である。
NB(可) :塗布液安定性が優であり、且つ、耐刷性および電気特性の一方が可であり、他方が不可ではない。
B (実使用不可):塗布液安定性が実使用不可(不良)、または耐刷性および電気特性の一方または両方が実使用不可である。
以上の評価結果を表1に示す。
塗布液安定性については、実施例1〜6がVG(優)であるところ、比較例についてはいずれもB(実使用不可)となっている。耐刷性については、評価基準を4段階評価に設定したものの、今回の実験の対象(実施例1〜6、比較例1、2)に対する評価結果は全てVG(優)であった。
電気特性については、評価基準を4段階評価に設定したものの、今回の実験の対象(実施例1〜6、比較例1、2)に対する評価結果は全てG(良)であった。総合判定については、評価基準を4段階評価に設定したものの、今回の実験においては、実施例1〜6に対する評価は全てG(良)であり、比較例1、2に対する評価はいずれもB(実使用不可)であった。
表1に示す実施例1〜6および比較例1、2の比較結果から、空気雰囲気下で4MGy以上のガンマ線を吸収させたPTFE粒子は塗液中に良好に分散され、その長期安定性も高いことがわかる。そして、空気雰囲気下で4MGy以上のガンマ線を吸収させたPTFEを含有する塗布液から作製した実施例1〜6の感光体は、耐摩耗性および電気特性に優れ、さらに繰返し使用されても良好な電気特性を示すことがわかる。
また、前述したが、表1の塗布液安定性の欄には、分散直後の体積平均粒径と、1ケ月経過後の粒度分布における粒径10μm以上の粒子の体積分率と、当該体積分率に基づいた塗布液安定性の評価とが示されている。表1の塗布液安定性の欄を考察すると、分散直後では、実施例1〜6および比較例1、2において分散性に大差ないといえるが、1ケ月経過後では、実施例1〜6の方が比較例1、2よりも分散性が優れていることが明らかである。
すなわち、実施例1〜6は、長期間に渡って表面層用の塗布液を使用する場合であっても、塗布液内のPTFE粒子の分散性が維持されるため、製造時において表面層用の塗布液を再分散させる必要がなく、製造のコスト高を抑制できる。
また、表1の結果からすれば、実施例1〜6および比較例1、2のいずれも、耐刷性および電気特性が良好であることを示している。これは、実施例1〜6のようにガンマ線吸収量を4MGy以上とした場合であっても、耐刷性および電気特性において問題が生じなかったことを示している。
なお、以上示した(a)の「塗布液安定性」においては、調整後(分散直後)の塗布液を用いて分散直後の体積平均粒径(表1)を求め、1ケ月経過後且つ再分散させていない塗布液を用いて体積分率(表1)を求めている。これに対し、(b)の「耐刷性」と(c)の「電気特性」とについては、実施例1〜6、比較例1,2にて作成した感光体を用いて評価を行っているが、この感光体は調製後(分散直後)の塗布液で作成されたものである。
また、(a)〜(d)の評価において、Bは実使用不可(不良)のレベルであり、NBが実使用可能なレベルであり、GおよびVGも勿論実使用可能である。
〔まとめ〕
以上にて示したように、本発明の態様1は、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂と、1次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子とを少なくとも含有する塗布液を用いた塗布法によって表面層を形成する電子写真感光体の製造方法であって、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、4MGy以上の吸収線量のガンマ線が空気雰囲気下で照射されていることを特徴とする。
これにより、感光体の製造時に使用される表面層用の塗布液(ポリテトラフルオロエチレン粒子を含有させた塗布液)を約1か月以上に渡って長期間使用しても、塗布液中のポリテトラフルオロエチレン粒子の凝集が抑制される。それゆえ、製造時において表面層用の塗布液を再分散させる必要がなく、コスト高を抑制できる。そして、塗布液中のPTFE粒子の凝集が抑制されている故、表面層中でのポリテトラフルオロエチレン粒子の凝集も抑制されており、耐摩耗性および電子写真特性を高水準で維持できる。それゆえ、本発明の態様1によれば、高水準の感光体特性および耐摩耗性を維持しつつ、製造時のコスト高を抑制できるという効果を奏する。
また、本発明の態様2は、前記態様1の構成に加えて、前記塗布液には、前記バインダ樹脂および前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の他に分散安定剤が添加され、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の重量に対する前記分散安定剤の重量の比が1〜30%となるように前記分散安定剤の添加量を定めることを特徴とする。
これにより、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性をより安定させることができることから、本発明の態様1の効果をより際立たせることができる。
さらに、本発明の態様3は、前記態様1の構成に加えて、前記電子写真感光体が導電性基体と前記表面層との間に中間層が形成されることを特徴とする。
これにより、感光層の帯電性の低下が抑制され、感光体表面において露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が抑制される。したがって、感光体特性の低下を抑制できるため、本発明の態様1の効果をより際立たせることができる。
また、本発明の態様4は、バインダ樹脂であるポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂と、1次粒子径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレン粒子とを含有する表面層が形成された電子写真感光体であって、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、4MGy以上の吸収線量のガンマ線が空気雰囲気下で照射されていることを特徴とする。
これにより、本発明の態様1と同様、高水準の感光体特性および耐摩耗性を維持しつつ、製造時のコスト高を抑制できるという効果を奏する。
なお、本発明の態様1〜4の電子写真感光体は、画像形成装置の構成部材であり、プロセスカートリッジの構成部材とすることも可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。