JP2018049238A - 電子写真感光体の製造方法、フッ素樹脂粒子含有層の形成方法、及び電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体の製造方法、フッ素樹脂粒子含有層の形成方法、及び電子写真感光体 Download PDF

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武井 雅之
Masayuki Takei
雅之 武井
拓也 森重
Takuya Morishige
拓也 森重
義史 庄司
Yoshifumi Shoji
義史 庄司
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Abstract

【課題】拭き取り液の交換頻度を低減した電子写真感光体の製造方法を提供すること。【解決手段】フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液に、円筒状又は円柱状の導電性基体の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、前記導電性基体を浸漬した後、前記塗布液から引き上げて、前記導電性基体の表面上に前記塗布液の塗膜を形成する第一工程と、 前記第一工程後、前記導電性基体の軸方向下端部における前記塗膜を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜を拭き取る第二工程と、前記第二工程後、前記塗膜を少なくとも乾燥して、フッ素樹脂粒子含有層を形成する第三工程と、を有する電子写真感光体の製造方法である。【選択図】図3

Description

本発明は、電子写真感光体の製造方法、フッ素樹脂粒子含有層の形成方法、及び電子写真感光体に関する。
電子写真方式の画像形成装置は、複写機およびレーザービームプリンター等の画像形成装置において利用されている。そして、電子写真方式の画像形成装置には、電子写真感光体が利用されている。
例えば、特許文献1には、「導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層からなる感光層に更に硬化型保護層を積層する電子写真感光体の製造方法において、該感光層上に硬化性電荷輸送成分と硬化型バインダー成分とシリコンフリー消泡剤を含有する保護層形成用塗工液を塗布、乾燥し、該保護層に架橋反応を生じさせる段階を含む電子写真感光体の製造方法。」が開示されている。
特許文献2には、「導電性支持体上にシリコーン系消泡剤を含有する表面層を有する電子写真感光体」が開示されている。また、特許文献2には、「シリコーン系消泡剤がジメチルポリシロキサンであること」が開示されている。
特許文献3には、「基材表面にホーニング処理液を吹き付けて基材表面を粗面化するホーニング処理方法において、該ホーニング処理液が研磨材を含むと共に消泡剤を含有するホーニング処理方法を利用して、導電性基体をホーニング処理する電子写真感光体の製造方法」が開示されている。
特開2006−235211号公報 特開2000−056496号公報 特開平10−175167号公報
浸漬塗布により導電性基体の表面上に塗膜を形成するとき、導電性基体の軸方向下端部における液だれした余剰の塗膜を拭き取る処理を実施する。この拭き取り処理は、有機溶剤を含む拭き取り液を利用して行われる。
しかし、フッ素樹脂粒子含有層を形成するための塗布液(フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液)の塗膜を、拭き取り液を用いて拭き取ると、拭き取り液中にフッ素含有分散剤を含む塗膜の固形成分が混入する。そして、拭き取り処理を繰り返し行うと、拭き取り液中の、フッ素含有分散剤を含む塗膜の固形成分の濃度が上昇し、拭き取り液に泡が生じ易くなり、その泡が塗膜に付着して、フッ素樹脂粒子含有層の外観不良をもたらす。そのため、拭き取り液を頻繁に交換することになる。
そこで、本発明の課題は、フッ素樹脂粒子含有層を有する電子写真感光体の製造方法において、消泡剤を含まない拭き取り液を利用した場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減した電子写真感光体の製造方法を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液に、円筒状又は円柱状の導電性基体の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、前記導電性基体を浸漬した後、前記塗布液から引き上げて、前記導電性基体の表面上に前記塗布液の塗膜を形成する第一工程と、
前記第一工程後、前記導電性基体の軸方向下端部における前記塗膜を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜を拭き取る第二工程と、
前記第二工程後、前記塗膜を少なくとも乾燥して、フッ素樹脂粒子含有層を形成する第三工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法。
請求項2に係る発明は、
前記消泡剤が、フルオロシリコーン系消泡剤である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項3に係る発明は、
前記フルオロシリコーン系消泡剤が、パーフルオロポリエーテル変性シリコーンである請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項4に係る発明は、
前記消泡剤の含有量が、前記有機溶剤に対して50ppm以上250ppm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項5に係る発明は、
フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の塗膜の一部を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜の一部を拭き取る工程と、
一部が拭き取られた前記塗膜を、少なくとも乾燥してフッ素樹脂粒子含有層を形成する工程と、
を有するフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
請求項6に係る発明は、
前記消泡剤が、フルオロシリコーン系消泡剤である請求項5に記載のフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
請求項7に係る発明は、
前記フルオロシリコーン系消泡剤が、パーフルオロポリエーテル変性シリコーンである請求項6に記載のフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
請求項8に係る発明は、
前記消泡剤の含有量が、前記有機溶剤に対して50ppm以上250ppm以下である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
請求項9に係る発明は、
機能層形成用塗布液に、円筒状又は円柱状の導電性基体の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、前記導電性基体を浸漬した後、前記塗布液から引き上げて、前記導電性基体の表面上に前記機能層形成用塗布液の塗膜を形成する第一工程と
前記第一工程後、前記導電性基体の軸方向下端部における前記塗膜を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜を拭き取る第二工程と、
前記第二工程後、前記塗膜を少なくとも乾燥して、機能層を形成する第三工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法。
請求項10に係る発明は、
円筒状又は円柱状の導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、
を有し、
最表面層が、電子写真感光体の軸方向一端部のみに消泡剤を含む層である電子写真感光体。
請求項1に係る発明によれば、フッ素樹脂粒子含有層を有する電子写真感光体の製造方法において、消泡剤を含まない拭き取り液を利用した場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減した電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項2、又は3に係る発明によれば、消泡剤として高分子量シリコーン系消泡剤のみを含む拭き取り液を利用した場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減した電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項4に係る発明によれば、消泡剤の含有量が50ppm未満の場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減した電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項5に係る発明によれば、フッ素樹脂粒子含有層の形成方法において、消泡剤を含まない拭き取り液を利用した場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減したフッ素樹脂粒子含有層の形成方法が提供される。
請求項6、又は7に係る発明によれば、消泡剤として高分子量シリコーン系消泡剤のみを含む拭き取り液を利用した場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減したフッ素樹脂粒子含有層の形成方法が提供される。
請求項8に係る発明によれば、消泡剤の含有量が50ppm未満の場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減したフッ素樹脂粒子含有層の形成方法が提供される。
請求項9に係る発明によれば、機能層を有する電子写真感光体の製造方法において、消泡剤を含まない拭き取り液を利用した場合に比べ、拭き取り液の交換頻度を低減した電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項10に係る発明によれば、電子写真感光体において、電子写真感光体の軸方向一端部の最表面層に消泡剤を含まない場合に比べ、電子写真感光体の軸方向一端部の最表面層の摩耗を低減する電子写真感光体が提供される。
本実施形態に係る感光体の構成を示す概略図である。 本実施形態に係る浸漬塗布装置の構成を示す概略図である。 本実施形態に係る感光体の製造方法を示す概略工程図である。 本実施形態に係る感光体の製造方法における拭き取り処理を説明するための概略図である。
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。
<感光体の製造方法>
本実施形態に係る電子写真感光体(以下「感光体」とも称する)の製造方法は、
フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液に、円筒状又は円柱状の導電性基体の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、前記導電性基体を浸漬した後、塗布液から引き上げて、導電性基体の表面上に塗布液の塗膜を形成する第一工程と
第一工程後、導電性基体の軸方向下端部における塗膜を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、塗膜を拭き取る第二工程と、
第二工程後、塗膜を少なくも乾燥し、フッ素樹脂粒子含有層を形成する第三工程と、
を有する。
本実施形態に係る感光体では、上記手法によって、拭き取り液の交換頻度が低減される。その理由は、次の通りである。
近年、感光体は高寿命化が要求されており、これを達成するために感光体の最表面層(電荷輸送層、表面保護層(以下、単に「保護層」とも称する)、単層型感光層等)を、フッ素樹脂粒子を含有するフッ素樹脂粒子含有層とすることにより、潤滑性を付与し、耐摩耗性を向上させる手法が採用されている。
また、画質性能を高めるためには、小粒径のフッ素樹脂粒子を使用することになるが、フッ素樹脂粒子を小粒径化するほど凝集しやすくなるため、フッ素樹脂粒子と共にフッ素含有分散剤(界面活性剤)を併用し、フッ素樹脂粒子を均一に近い状態に分散させる手法も採用されている。
一方、浸漬塗布により導電性基体の表面上に塗膜を形成するとき、導電性基体の軸方向下端部における液だれした余剰の塗膜を拭き取る処理を実施する。この拭き取り処理は、有機溶剤を含む拭き取り液を利用して行われる。
しかし、最表面層となる電荷輸送層、表面保護層、単層型感光層等のフッ素樹脂粒子含有層を形成するための塗布液(フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液)の塗膜を、拭き取り液を用いて拭き取ると、拭き取り液中にフッ素含有分散剤を含む塗膜の固形成分が混入する。そして、拭き取り処理を繰り返し行うと、拭き取り液中の、フッ素含有分散剤を含む塗膜の固形成分の濃度が上昇し、拭き取り液に泡が生じ、その泡が塗膜に付着して、フッ素樹脂粒子含有層の外観不良をもたらす。そのため、拭き取り液を頻繁に交換することになる。
そこで、本実施形態に係る感光体の製造方法では、フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の塗膜を拭き取るための拭き取り液に、消泡剤を配合する。それにより、フッ素含有分散剤の濃度が上昇しても、1)拭き取り液に泡が生じ難くなる、又は2)泡が発生しても短時間で消泡される。このため、拭き取り液の交換頻度が低減される。
また、本実施形態に係る感光体の製造方法では、1)拭き取り液に泡が生じ難くなる、又は2)泡が発生しても短時間で消泡されるため、塗膜への泡付着に起因するフッ素樹脂粒子含有層(電荷輸送層、表面保護層、単層型感光層等)の外観不良も低減される。
以下、本実施形態に係る感光体の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、フッ素樹脂粒子含有層として電荷輸送層を形成する方法について説明するが、これに限定されるわけではない。
(感光体の層構成)
まず、感光体の製造方法により得る感光体の層構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図である。
図1に示す感光体30は、導電性基体32(以下「基体32」とも称する)上に、下引層34、電荷発生層36及び電荷輸送層38がこの順序で積層された構造を有する。電荷発生層36及び電荷輸送層38が感光層を構成している。そして、電荷輸送層38が、感光体30の最表面層であって、フッ素樹脂含有層に該当する。
なお、感光体30は、下引層34が設けられていない層構成であってもよい。また、感光体30は、電荷輸送層38表面に、更に表面保護層が設けられた層構成であってもよい。また、感光層は、電荷発生層36と電荷輸送層38との機能が一体化した単層型感光層であってもよい。
そして、表面保護層が設けられた層構成の場合、表面保護層が感光体30の最表面層であって、フッ素樹脂含有層に該当する。また、感光層が単層型感光層であり、かつ表面保護層を設けない場合、単層型感光層が感光体30の最表面層であって、フッ素樹脂含有層に該当する。
(浸漬装置)
次に、感光体の製造方法に利用する浸漬塗布装置につて説明する。
図2は、浸漬塗布装置の構成の一例を示す概略図である。
浸漬塗布装置10は、図2に示すように、基体32が浸漬される塗布液Lが収容された塗布槽12と、塗布液Lが貯留された貯留部14と、貯留部14の塗布液Lを塗布槽12に供給する供給ポンプ16と、塗布槽12の上部から溢れ出た塗布液Lを受ける受け部18と、基体32が軸方向下端部から塗布槽12の塗布液Lに浸漬されるように基体32を昇降させる昇降装置20と、を備えている。
浸漬塗布装置10では、塗布液Lが、供給ポンプ16により、塗布槽12の下部の供給口12Aを通じて、貯留部14から塗布槽12に供給されるようになっている。さらに、塗布槽12の開放された上部から溢れ出た塗布液Lは、受け部18で受けて貯留部14に戻るようになっている。このように、塗布液Lが循環するようになっている。
浸漬塗布装置10では、基体32の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、昇降装置20の支持部22で基体32の上部(軸方向上端部)を支持し、昇降装置20の昇降運動により基体32が、塗布槽12の塗布液Lに対して浸漬されて、塗布液Lが基体32に塗布されるようになっている。
(感光体の製造方法の各工程)
次に、感光体の製造方法の各工程について説明する。
感光体の製造方法は、下引層形成工程と、電荷発生層形成工程と、電荷輸送層形成工程とを有している。以下、各工程について具体的に説明する。
−下引層形成工程−
まず、図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、図3(A)に示されるように、基体32に下引層34を形成する。具体的には、以下のように、下引層34を形成する。
浸漬塗布装置10における昇降装置20の支持部22で基体32の上部(軸方向端部)を支持する。その基体32を、昇降装置20により、下引層34の構成材料(構成材料の詳細は後述する)を含む下引層形成用塗布液が収容された塗布槽12の中へ降下させる。これにより、下引層34を形成するための下引層形成用塗布液に対して基体32を浸漬し、基体32の表面(外周面)に下引層形成用塗布液を塗布する。
次に、下引層形成用塗布液に浸漬した基体32を昇降装置20により塗布槽12から引き上げる。次に、塗布槽12から引き上げた基体32の軸方向下端部の表面に付着した下引層形成用塗布液の塗膜を拭き取る。そして、下引層形成用塗布液の塗膜を乾燥させることで下引層34が形成される。
なお、下引層形成工程では、基体32の上部(軸方向端部)が下引層形成用塗布液の液面よりも上方に位置した状態(露出した状態)で、下引層形成用塗布液に対して基体32が浸漬される。
−電荷発生層形成工程−
次に、図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、図3(B)に示されるように、基体32に形成された下引層34の表面に電荷発生層36を形成する。具体的には、以下のように、電荷発生層36を形成する。なお、浸漬塗布装置10は、各工程毎に用意した専用の浸漬塗布装置10を用いる。ただし、浸漬塗布装置10のうち、昇降装置20は、各工程で用いられる浸漬塗布装置10において共通であってもよい。
支持部22で上部(軸方向端部)が支持された基体32を、昇降装置20により、電荷発生層36の構成材料(構成材料の詳細は後述する。)を含む電荷発生層形成用塗布液が収容された塗布槽12の中へ降下させる。これにより、電荷発生層36を形成するための電荷発生層形成用塗布液に対して、下引層34が形成された基体32を浸漬し、下引層34の表面に電荷発生層形成用塗布液を塗布する。
次に、電荷発生層形成用塗布液に浸漬した基体32を昇降装置20により塗布槽12から引き上げる。次に、塗布槽12から引き上げた基体32の軸方向下端部の表面に付着した電荷発生層形成用塗布液の塗膜を拭き取る。このときの拭き取り位置(基体32の下端からの距離)は、下引層形成工程における拭き取り位置と同様の位置とされる。すなわち、下引層34の下端と、電荷発生層形成用塗布液の塗膜の下端が揃うようになっている。そして、電荷発生層形成用塗布液の塗膜を乾燥させることで電荷発生層36が形成される。
なお、電荷発生層形成工程では、基体32の上部(軸方向端部)が電荷発生層形成用塗布液の液面よりも上方に位置した状態(露出した状態)で、電荷発生層形成用塗布液に対して基体32が浸漬される。
−電荷輸送層形成工程−
次に、図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、図3(C)(D)に示されるように、基体32に形成された電荷発生層36の表面に電荷輸送層38を形成する。具体的には、以下のように、電荷輸送層38を形成する。
支持部22で上部(軸方向端部)が支持された基体32を、昇降装置20により、電荷輸送層38の構成材料(構成材料の詳細は後述する。)を含む電荷輸送層形成用塗布液(フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の一例)が収容された塗布槽12の中へ降下させる。これにより、電荷輸送層38を形成するための電荷輸送層形成用塗布液に対して、電荷発生層36が形成された基体32を浸漬し、図3(C)に示されるように、電荷発生層36の表面に電荷輸送層形成用塗布液38Aを塗布する(第一工程の一例)。
次に、電荷輸送層形成用塗布液に浸漬した基体32を昇降装置20により塗布槽12から引き上げる。次に、図3(D)に示されるように、塗布槽12から引き上げた基体32の軸方向下端部の表面に付着した電荷輸送層形成用塗布液の塗膜38Aを拭き取る(第二工程の一例)。このときの拭き取り位置(基体32の下端からの距離)は、電荷発生層工程における拭き取り位置よりも下側の位置とすることがよい。すなわち、電荷発生層36の下端よりも電荷輸送層38の下端が下側(基体32の軸方向外側)に位置するようになっていることがよい。これにより、電荷輸送層38が電荷発生層36の周面及び端面を覆い、電荷発生層36が外部に露出しないようになっている。そして、電荷輸送層形成用塗布液の塗膜38Aを乾燥させることで電荷輸送層38が形成される(第三工程の一例)。
ここで、基体32に軸方向下端部における電荷輸送層形成用塗布液(フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の一例)の塗膜38Aの拭き取りは、拭き取り液を用いて行う。具体的には、例えば、基体32に軸方向下端部を拭き取り液に浸漬し(図4参照:図4中Fは拭き取り液を示す。)、塗布液の塗膜の全部又は一部を溶解した後、残部を拭き取り部材(スポンジ、ブレード等)により拭き取る。塗膜の拭き取りは、その他、拭き取り部材を使用せず、基体32に軸方向下端部を拭き取り液に浸漬し、一定時間放置するのみの操作より行ってよい。
塗膜の拭き取りに利用する拭き取り液は、有機溶剤と消泡剤とを含む。拭き取り液は、その他添加剤を含んでよい。
有機溶剤としては、拭き取り対象の塗膜の成分(塗布液の成分)に応じて選択されるが、テトラヒドロキシフラン(THF)、2−ブタノン(メチルエチルケトン:MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸ブチル(AcOBu)、トルエン、キシレン、2−プロピルアルコール、2−ブチルアルコールの単独溶媒、またはこれらの溶媒を所望の配合で混合した混合溶媒等が挙げられる。
消泡剤としては、油脂系消泡剤(ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等)、脂肪酸系消泡剤(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等)、脂肪酸エステル系消泡剤(ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ステアリン酸ブチル、天然ワックス、モノグリセド等)、アルコール系消泡剤(ポリオキシアルキレングリコールとその誘導体、ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール、ジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等)、エーテル系消泡剤(ジ−t−アミノフェノキシエタノール3−ヘプチルセルソルブ3−ヘプチルセロソルブ3−ヘプチルカルビトール等)、燐酸エステル系消泡剤(トリブチルフォスフェート、Naオクチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等)、アミン系消泡剤(ジアミルアミン等)、アミド系消泡剤(ポリアルキルアミド、アシレートポリアミン、ジオクタデカノイルピペラジンなど)、金属せっけん系消泡剤(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム、羊毛オレイン酸のカルシウム塩等)、硫酸エステル系消泡剤(ラウリル硫酸エステルナトリウム等)、シリコーン系消泡剤(ジメチルポリシロキサン、シリコーンペースト、シリコーンエマルション、シリコーン処理粉末、有機変性ポリシロキサン、フルオロシリコーン等)、硫酸第二鉄、ボーキサイト、三塩化三フッ化プロパン等が挙げられる。
これらの中でも、拭き取り液の交換頻度低減の観点から、シリコーン系消泡剤(ポリシロキサン構造を有する消泡剤)が好ましく、フルオロシリコーン系消泡剤が特に好ましい。
ここで、液中に泡の発生を抑制する、又は液中に発生した泡を短時間で消泡する消泡剤の機能を十分に発現させるためには、液中に溶解せず、分散状態を保ち、かつ液の系(有機溶剤)よりも表面張力が低くして、界面張力を高めることがよい。しかしながら、一般に有機溶剤は、水性溶媒に比べて表面張力が低く、シリコーン系消泡剤の溶解性が高い傾向がある。
一方、フルオロシリコーン系消泡剤は、1)有機溶剤よりも表面張力が低い、2)分子量が比較的高くて有機溶剤に対する溶解性が低い、3)かつ分子内の極性が小さく有機溶剤中での分散状態を保ちやすい性質を有している。そのため、フロロシリコーン系消泡剤は、有機溶剤中で消泡剤の機能を十分に発揮し、拭き取り液の交換頻度がより低減し易くなることから特に好ましい。
フルオロシリコーン系消泡剤は、鎖状又は環状ポリシロキサン鎖の側鎖、両末端の少なくとも一方にフッ素又はフッ化アルキル鎖を導入したフルオロシリコーン(変性フルオロシリコーンオイル)である。
フルオロシリコーン系消泡剤としては、鎖状ポリシロキサン鎖の両末端、又は片末端にフッ化アルキル基を導入したフルオロシリコーンが好ましく、パーフルオロポリエーテル変性シリコーンがより好ましく、特に、下記一般式(F)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シリコーン(パーフルオロポリエーテル変性ポリシロキサン)が好ましい。

一般式(F)中、Rfは、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基を示す。Xfは、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。Qfは、炭素数1以上12以下の2価の有機基を示す。Rf1、Rf2及びRf3は、各々独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基又はアリール基を示す。a、b、c及びdは、各々独立に0以上200以下の整数を示す。ただし、a+b+c+dは1以上を示し、eは0又は1の整数を示し、zは5以上100以下の整数を示す。
一般式(F)中、Rfが示すパーフルオロアルキル基は、好ましくは炭素原子数1以上3以下の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基が好ましい。なお、パーフルオロアルキル基としては、下記基が例示される。
一般式(F)中、Qfを示す2価の有機基は、炭素原子数3以上8以下の2価の有機基が好ましい。具体的には、2価の有機基としては、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらの基の組み合わせた基が挙げられる。また、2価の有機基は、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらの基の組み合わせた基にエーテル結合、アミド結合、エステル結合等を介在させた有機基も挙げられる。
Qfとしては、例えば、下記基が例示される。
ただし、上記基中、Phはフェニル基を示す。Ph’はフェニレン基を示す。nは1以上10以下の整数を示す。Y’は−CH−又は下記式で表される二価の基を示す。Rは水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1以上10以下の一価炭化水素基を示す。
一般式(F)中、Rf1、Rf2、及びRf3が示すアルキル基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。
f1、Rf2、及びRf3が示すアリール基は、フェニル基、2−フェニルプロピル基等が挙げられる。
f1、Rf2、及びRf3は、各々独立に、メチル基、n−ブチル基、フェニル基を示すことが好ましい。
一般式(F)中、a、b、c及びdは、20以上100以下の整数を示すことが好ましい。zは、10以上60以下の整数を示すことが好ましい。
一般式(F)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シリコーンにおいて、パーフルオロポリエーテル鎖及びポリシロキサン鎖の分子中のフッ素原子の質量割合は、20質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上55質量%以下がより好ましい。
フッ素原子の質量割合を20質量%以上にすると、変性シリコーンの表面張力が低下し易くなり、消泡機能が発揮され易くなる。フッ素原子の質量割合を70質量%以下にすると、有機溶剤に対する変性シリコーンオイルの分散性が高まり、消泡機能が発揮され易くなる。
一般式(F)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シリコーンとしては、例示される。
消泡剤の粘度(23℃)は、拭き取り液の交換頻度低減の観点から、好ましくは100mPa・s以上10000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以上5000mPa・s以下、更に好ましくは1000mPa・s以上3000mPa・s以下である。
粘度は、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃に設定し、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値である。
消泡剤の市販品としては、信越化学工業社製のFA−630、信越化学工業社製のFA−600が挙げられる。
消泡剤の含有量は、有機溶剤に対して、50ppm以上250ppm以下が好ましく、75ppm以上200ppm以下がより好ましい。なお、「ppm」は質量基準である。
消泡剤の含有量を50ppm以上にすると、有機溶剤中で消泡剤の機能を十分に発揮し、拭き取り液の交換頻度がより低減し易くなる。一方、消泡剤の含有量を200ppm以下にすると、拭き取り対象以外の塗膜(基体32の軸方向下端部以外における塗膜)に、消泡剤が浸透することを抑えられ、形成する層(フッ素樹脂粒子含有層:本実施形態では電荷輸送層38)の接着強度の低下が抑制される。
なお、電荷輸送層形成工程では、基体32の上部(軸方向端部)が電荷輸送層形成用塗布液の液面よりも上方に位置した状態(露出した状態)で、電荷輸送層形成用塗布液に対して基体32が浸漬される。
以上の工程を経て、基体32の表面上に、下引層34、電荷発生層36及び電荷輸送層38が順次形成された感光体が製造される。
なお、浸漬塗布方法により製造された感光体では、円筒状の基体32を各塗布液に浸漬するので、基体32の内周面にも、各塗布液が付着する。このため、塗布液が付着しているか否かを確認することで、感光体が、浸漬塗布方法により製造されたか否かが確認される。
また、浸漬塗布において、上方に位置する基体32の一端側は、各塗布液に塗布されないので、製造された感光体の基体32の内周面において、塗布液が付着していない一端側が上方に位置し、塗布液が付着している他端側が下方に位置したことが確認される。
仮に、基体32の内周面に付着した各塗布液を拭き取ったとしても、拭き取り跡が残るため、製造された感光体から、浸漬塗布方法によるもの、浸漬塗布の際に基体32の下方に位置した軸方向端部が確認される。
ここで、本実施形態に係る感光体の製造方法は、上記態様に限られるわけではない。例えば、本実施形態に係る感光体の製造方法は、1)電荷輸送層38の表面に表面保護層が設けられた層構成の感光体を製造する態様、2)電荷発生層36及び電荷輸送層38に代えて、単層型感光層を設けた層構成の感光体を製造する態様等であってもよい。
1)の態様の場合、電荷輸送層38と同様にして、図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、表面保護層の構成材料(構成材料の詳細は後述する。)を含む表面保護層形成用塗布液(フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の一例)の塗膜の形成、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理を経て、電荷輸送層38の表面に表面保護層を形成する。ただし、表面保護層の構成材料として、硬化性化合物を使用する場合、塗膜の乾燥に加え、硬化性化合物を硬化するための加熱又は光照射を行う。また、電荷輸送層38は、フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を配合しなくてもよい。
そして、1)の態様の場合でも、拭き取り液の交換頻度が低減される。
2)の態様の場合、電荷輸送層38と同様にして、図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、単層型感光層の構成材料(構成材料の詳細は後述する。)を含む単層型感光層形成用塗布液(フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の一例)の塗膜の形成、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理を経て、下引層34の表面(下引層が設けない場合、基体32の表面)に単層型感光層を形成する。
そして、2)の態様の場合でも、拭き取り液の交換頻度が低減される。
また、本実施形態に係る感光体の製造方法において、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理は、フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含まない機能層(下引層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層等)の形成に利用してもよい。
つまり、電荷輸送層38と同様にして、図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、機能層の構成材料を含む機能層形成用塗布液の塗膜の形成、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理を経て、各機能層を形成してもよい。
フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含まない機能層(下引層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層等)の形成においても、拭き取り液による拭き取り処理を実施すると、各機能層形成用塗布液の成分が拭き取り液に混入し、拭き取り液に泡が発生し易くなる。
そのため、フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含まない機能層の形成においても、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理を行うことで、拭き取り液の交換頻度が低減される。
(フッ素樹脂粒子、及びフッ素含有分散剤)
次に、最外層となる機能層(電荷輸送層、表面保護層、単層型感光層等)に配合するフッ素樹脂粒子、及びフッ素含有分散剤について説明する。
まず、フッ素樹脂粒子について説明する。
フッ素樹脂粒子は、フッ素を含有する樹脂の粒子である。フッ素樹脂粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の粒子の中から1種又は2種以上を選択するのが好ましい。これらの中でも、フッ素樹脂粒子としては、特に、4フッ化エチレン樹脂粒子、フッ化ビニリデン樹脂粒子が好ましい。
フッ素樹脂粒子の一次粒径は、0.05μm以上1μm以下であることがよく、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。
なお、この一次粒子は、感光層(電荷輸送層)から試料片を得て、これをSEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、一次粒子状態のフッ素樹脂粒子の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値とする。なお、SEMとして日本電子製JSM−6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
フッ素樹脂粒子の市販品としては、例えば、ルブロン(登録商標)シリーズ(ダイキン工業株式会社製)、テフロン(登録商標)シリーズ(デュポン製)、ダイニオン(登録商標)シリーズ(住友3M製)等が挙げられる。
フッ素樹脂粒子の含有量は、機能層(電荷輸送層、表面保護層、単層型感光層等)の全固形分に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が更に好ましい。
次に、フッ素含有分散剤について説明する。
フッ素含有分散剤としては、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体(以下「フッ化アルキル基含有重合体」とも称する)が挙げられる。
フッ素含有分散剤として具体的には、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとフッ素原子を有さないモノマーとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する。
フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アククリレートが挙げられる。
フッ素原子を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アククリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
その他、フッ素含有分散剤として具体的には、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーも挙げられる。更に、フッ素含有分散剤として具体的には、フッ素系界面活性剤も挙げられる。
これらの中でも、フッ素含有分散剤としては、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体が好ましく、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体がより好ましい。
以下、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体について説明する。

一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−S−、−O−、−NH−、又は単結合を表す。
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−(Cfx2fx−1(OH))−又は単結合を表す。
F1は、−O−、又は−NH−を表す。
fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。
fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。
ftは、1以上7以下の整数を表す。
fxは1以上の整数を表す。
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
一般式(FA)及び(FB)中、XF1及びYF1を表すアルキレン鎖(未置換アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖)としては、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖が好ましい。
F1を表す−(Cfx2fx−1(OH))−中のfxは、1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fp、fq、fr及びfsは、それぞれ独立に0または1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fnは、例えば、1以上60以下が好ましい。
ここで、フッ素含有分散剤において、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位との比、つまり、fl:fmは、1:9から9:1までの範囲が好ましく、3:7から7:3までの範囲がより好ましい。
また、フッ素含有分散剤、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位とに加え、一般式(FC)で示される構造単位を更に有していてもよい。一般式(FC)で示される構造単位の含有比は、一般式(FA)及び(FB)で示される構造単位の合計、即ちfl+fmとの比(fl+fm:fz)で、10:0から7:3までの範囲が好ましく、9:1から7:3までの範囲がより好ましい。

一般式(FC)中、RF5、及びRF6は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。fzは、1以上の整数を表す。
一般式(FC)中、RF5、及びRF6を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
フッ素含有分散剤の市販品としては、例えば、GF300、GF400(東亞合成社製)、サーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、フタージェントシリーズ(ネオス社製)、PFシリーズ(北村化学社製)、メガファックシリーズ(DIC製)、FCシリーズ(3M製)等が挙げられる。
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、例えば、2000以上250000以下が好ましく、3000以上150000以下がより好ましく、50000以上100000以下が更に好ましい。
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。GPCによる分子量測定は、例えば、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR−M+TSKgel GMHHR−M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行い、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出する。
フッ化アルキル基含有共重合体の含有量は、例えば、フッ素樹脂粒子の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上7質量%以下がより好ましい。
なお、フッ化アルキル基含有共重合体は、1種を単独でまたは2種以上を併用してもよい。
(感光体の各層の構成材料等)
次に、感光体の各層の構成材料等について説明する。なお、符号は省略して説明する。
−導電性基体−
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
−下引層−
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物;2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
−中間層−
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
−電荷発生層−
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro−Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4−189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp−型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn−型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n−型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012−155282号公報の段落[0288]〜[0291]に記載された化合物(CG−1)〜(CG−27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n−型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn−型とする。
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
−電荷輸送層−
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
構造式(a−1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、−C−C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は−C−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
構造式(a−2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、−C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
ここで、構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
高分子電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
−保護層−
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、−OH、−OR[但し、Rはアルキル基を示す]、−NH、−SH、−COOH、−SiRQ1 3−Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1〜3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
−単層型感光層−
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して10質量%以上85質量%以下がよく、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
<感光体の製造方法により得られる感光体の特徴>
本実施形態に係る感光体の製造方法により得られる感光体では、消泡剤としてフルオロシリコーン系消泡剤を使用した場合、最外層(電荷輸送層、表面保護層、単層型感光層等)が、電子写真感光体の軸方向一端部のみに消泡剤を含む層となる。それは、上記組成の拭き取り液により、最外層形成用塗布液の塗膜の形成、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理を経るとき、拭き取り対象以外の塗膜(基体32の軸方向下端部以外における塗膜)に消泡剤が浸透するためである。つまり、拭き取り対象以外の塗膜における、拭き取り対象の塗膜との境界に近い箇所に消泡剤が浸透するためである。
そして、感光体の軸方向一端部のみに消泡剤(特にフルオロシリコーン系消泡剤)を含む最外層を有する感光体は、消泡剤により、電子写真感光体の軸方向一端部の表面の摩擦係数が低減される。そのため、感光体の軸方向一端部の最表面層の摩耗が低減される。
<フッ素樹脂粒子含有層の形成方法>
本実施形態に係るフッ素樹脂粒子含有層の形成方法は、フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の塗膜の一部を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、塗膜の一部を拭き取る工程と、一部が拭き取られた塗膜を、少なくとも乾燥してフッ素樹脂粒子含有層を形成する工程と、を有する。
ここで、上記本実施形態に係る感光体の製造方法における、フッ素樹脂粒子含有層(
電荷輸送層、表面保護層、単層型感光層等)形成用塗布液の塗膜の形成、上記組成の拭き取り液による拭き取り処理は、感光体の製造分野に限られず、他の技術分野にも適用される。つまり、感光体の製造以外の他の技術分野でも、フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の塗膜の一部を拭き取りに、拭き取り液を使用する場合、拭き取り液へのフッ素含有分散剤を含む塗膜の固形成分の混入により泡が発生し易くなる。
そのため、感光体の製造以外の他の技術分野においても、フッ素樹脂粒子含有層を形成するとき、溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を採用すると、拭き取り液の交換頻度低減される。
なお、フッ素樹脂含有層は、表面に離型性が求められる部材の表面に形成する離型層等に適用できる。
本実施形態は、上記に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
<試験例>
以下、本実施形態に係る感光体の製造方法等の効果を裏付ける試験例を示す。ただし、本実施形態に係る感光体の製造方法等は、これら試験例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
(試験例1〜14、比較試験例1〜2)
−電荷輸送層形成用塗布液の準備−
電荷輸送材料として、ブタジエン系電荷輸送材料(CT1)8.0質量部およびベンジジン系電荷輸送材料(CT2)32.0質量部と、結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂(PC1)(pm:pn=25:75、粘度平均分子量=5万)60.0質量部と、フッ素樹脂粒子として、4フッ化エチレン樹脂粒子(体積平均粒子径200nm):8質量部と、フッ素含有分散剤として、GF400(東亜合成社製:フッ化アルキル基を持つメタクリレートを少なくとも重合成分とした界面活性剤)0.28質量部と、酸化防止剤として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(HP1)(分子量775」3.2質量部と、をテトラヒドロフラン340.0質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
なお、電荷輸送層形成用塗布液において、フッ素樹脂粒子に対するフッ素含有分散剤「GF400」の濃度は、3.5質量%であった。

−拭き取り液の準備−
既述した図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、直径φ30のアルミニウム基体の表面に、乾燥膜厚23.5μmになるように、電荷輸送層形成用塗布液の塗膜の形成、THFのみからなる拭き取り液によるアルミニウム基体の軸方向下端部の塗膜の拭き取り処理を実施した。
そして、拭き取り処理を400回行った拭き取り液A、拭き取り処理を2800回行った拭き取り液Bを準備した。
拭き取り液A及びBには、各々、電荷輸送層形成用塗布液の塗膜の固形成分(フッ素含有分散剤GF400を含む固形成分)が溶解されており、その濃度(以下「CT濃度」と称する)を測定した。その結果、拭き取り液AのCT濃度は0.7質量%であり、拭き取り液BのCT濃度は5.0質量%であった。
これらの結果を表1に一覧にして示す。
−消泡剤の添加−
表2に従って、各々、拭き取り液A又はBに、以下の消泡剤を添加した後、撹拌して、各例の拭き取り液を調製した。
・消泡剤(1);フルオロシリコーン系消泡剤「FA630(信越化学工業(株)製)」
・消泡剤(2);高分子量シリコーン系消泡剤「KF−96(信越化学工業(株)製)」
ただし、表2の「消泡剤の有無」の欄で、「無」と表記した例は、拭き取り液に消泡剤を添加しなったことを示している。
−実験−
・消泡性評価
各例の拭き取り液をサンプル瓶に入れ、上下に10回振とうした後、全ての泡が消滅する時間を計測した。この操作を3回繰り返し行って平均時間を算出し、消泡性評価を行った。消泡時間が270秒以下を「G1(○)」とし、消泡時間が270秒超え800秒未満を「G2(△)」とし、消泡時間が800秒以上を「N(×)」と評価した。
・電荷輸送層の接着性評価
既述した図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、直径φ30のアルミニウム基体の表面に、乾燥膜厚23.5μmになるように、電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成した。
次に、各例の拭き取り液をシャーレに入れ、電荷輸送層形成用塗布液の塗膜が形成されたアルミニウム基体の軸方向下端部を10mm浸漬し、1分間静置してから引上げ、アルミニウム基体の軸方向下端部に存在する塗膜を溶解させて除去した。
次に、アルミニウム基体の表面に形成されている「電荷輸送層形成用塗布液の塗膜」を、143℃30分の加熱乾燥し、電荷輸送層を形成した。
次に、電荷輸送層のうち、アルミニウム基体の下端(拭き取り液に浸漬した側の下端)から10mm〜15mmに位置する層を、1mmピッチで軸方向に5mm長の切り込みを6本入れた。そして、切り込みを入れた箇所を粘着テープで剥がす接着性試験を行った。この操作を、場所を変えて5回行い、層が剥がれた部分の合計が15個以下であれば「G(○)」とし、15個超えであれば「N(×)」と評価した。
上記結果から、拭き取り液に消泡剤(特に、フルオロシリコーン系消泡剤)を添加すると、1)拭き取り液に泡が生じ難くなる、又は2)泡が発生しても短時間で消泡されるため、拭き取り液の交換頻度が低減されることがわかる。
(試験例101、比較試験例101)
−感光体の作製−
酸化亜鉛(商品名:MZ 300、テイカ株式会社製)100質量部、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランの10質量%のトルエン溶液を10質量部、トルエン200質量部を混合して攪拌を行い、2時間還流を行った。その後10mmHgにてトルエンを減圧留去し、135℃で2時間焼き付けて、シランカップリング剤による酸化亜鉛の表面処理を行った。
表面処理した酸化亜鉛:33質量部、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):6質量部、下記構造式(AK−1)で示される化合物:1質量部、メチルエチルケトン:25質量部を30分間混合し、その後ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製):5質量部、シリコーンボール(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):3質量部、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部を添加し、サンドミルにて3時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。
さらに、浸漬塗布法にて、下引層形成用塗布液を、直径47mm、長さ357mm、肉厚1mmのアルミニウム基体上に塗布し、180℃、30分の乾燥硬化を行い、膜厚25μmの下引層を得た。
次に、電荷発生材料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料「Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=820nm、平均粒径=0.12μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=60m/g)」、結着樹脂としての塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)、およびn−酢酸ブチルからなる混合物を、容量100mLガラス瓶中に、充填率50%で1.0mmφガラスビーズと共に入れて、ペイントシェーカーを用いて2.5時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の混合物に対して、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の含有率を55.0体積%とし、分散液の固形分は6.0質量%とした。含有率は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の比重を1.606g/cm、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂の比重1.35g/cmをとして計算した。
得られた電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布し、100℃で5分間乾燥して、膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
次に、試験例1で準備した同じ組成の電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、150℃、40分の乾燥を行うことにより、膜厚34μmの電荷輸送層を形成した。
ここで、電荷輸送層の形成において、既述した図2に示す浸漬塗布装置10を用いた浸漬塗布方法により、電荷輸送層形成用塗布液の塗膜の形成、THFとフルオロシリコーン系消泡剤「FA630(信越化学工業(株)製)」(THFに対する濃度=100ppm)とを含む拭き取り液によるアルミニウム基材の軸方向下端部の塗膜の拭き取り処理を実施した。
以上の工程を経て、試験例101の感光体を得た。
一方で、上記電荷輸送層の形成における拭き取り処理を、THFのみからなる拭き取り液を用いて実施した以外は、同様にして、比較試験例101の感光体を得た。
−画像形成−
試験例101及び比較試験例101の感光体を、電子写真方式の画像形成装置(富士ゼロックス社製:DocuCentre−IV C5570)に搭載した。
この画像形成装置を用いて、画像濃度30%のハーフトーン画像をA4用紙に1万枚出力した。
その後、感光体を取り出し、拭き取り処理を行った側の電荷輸送層の表面の摩耗の度合を観察した。その結果、試験例101の感光体の電荷輸送層端部の摩耗が、比較試験例101の感光体よりも低減されていることが確認された。これにより、最表面層を形成するときに使用する拭き取り液に消泡剤(特に、フルオロシリコーン系消泡剤)を添加すると、感光体の軸方向一端部の最表面層の摩耗が低減されることがわかる。
10 浸漬塗布装置
12 塗布槽
12A 供給口
14 貯留部
16 供給ポンプ
18 受け部
20 昇降装置
22 支持部
23 乾燥膜厚
30 感光体
32 導電性基体
34 下引層
36 電荷発生層
38 電荷輸送層
38A 電荷輸送層形成用塗布液の塗膜

Claims (10)

  1. フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液に、円筒状又は円柱状の導電性基体の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、前記導電性基体を浸漬した後、前記塗布液から引き上げて、前記導電性基体の表面上に前記塗布液の塗膜を形成する第一工程と、
    前記第一工程後、前記導電性基体の軸方向下端部における前記塗膜を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜を拭き取る第二工程と、
    前記第二工程後、前記塗膜を少なくとも乾燥して、フッ素樹脂粒子含有層を形成する第三工程と、
    を有する電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記消泡剤が、フルオロシリコーン系消泡剤である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記フルオロシリコーン系消泡剤が、パーフルオロポリエーテル変性シリコーンである請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記消泡剤の含有量が、前記有機溶剤に対して50ppm以上250ppm以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. フッ素樹脂粒子及びフッ素含有分散剤を含む塗布液の塗膜の一部を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜の一部を拭き取る工程と、
    一部が拭き取られた前記塗膜を、少なくとも乾燥してフッ素樹脂粒子含有層を形成する工程と、
    を有するフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
  6. 前記消泡剤が、フルオロシリコーン系消泡剤である請求項5に記載のフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
  7. 前記フルオロシリコーン系消泡剤が、パーフルオロポリエーテル変性シリコーンである請求項6に記載のフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
  8. 前記消泡剤の含有量が、前記有機溶剤に対して50ppm以上250ppm以下である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂粒子含有層の形成方法。
  9. 機能層形成用塗布液に、円筒状又は円柱状の導電性基体の軸方向が鉛直方向に沿った状態で、前記導電性基体を浸漬した後、前記塗布液から引き上げて、前記導電性基体の表面上に前記機能層形成用塗布液の塗膜を形成する第一工程と
    前記第一工程後、前記導電性基体の軸方向下端部における前記塗膜を拭き取る工程であって、有機溶剤及び消泡剤を含む拭き取り液を用いて、前記塗膜を拭き取る第二工程と、
    前記第二工程後、前記塗膜を少なくとも乾燥して、機能層を形成する第三工程と、
    を有する電子写真感光体の製造方法。
  10. 円筒状又は円柱状の導電性基体と、
    前記導電性基体上に設けられた感光層と、
    を有し、
    最表面層が、電子写真感光体の軸方向一端部のみに消泡剤を含む層である電子写真感光体。
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