JP2014175179A - ナトリウム溶融塩電池用正極活物質、ナトリウム溶融塩電池用正極およびナトリウム溶融塩電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気化学的にナトリウムイオンを吸蔵および放出可能であるナトリウム含有金属酸化物を含み、炭酸ナトリウムの質量割合が500ppm以下である、ナトリウム溶融塩電池用正極活物質。
【選択図】図5
Description
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一局面は、電気化学的にナトリウムイオンを吸蔵および放出可能であるナトリウム含有金属酸化物を含み、炭酸ナトリウムの質量割合が500ppm以下である、ナトリウム溶融塩電池用正極活物質に関する。このようなナトリウム溶融塩電池用正極活物質によれば、溶融塩電池に特有の環境下においても、副反応が抑制され、ナトリウム溶融塩電池の電池特性および信頼性が向上する。
本発明の一局面は、ナトリウムをイオン伝導のキャリアとして利用するナトリウム溶融塩電池に用いられる正極活物質を包含する。ただし、正極活物質は、電気化学的にナトリウムイオンを吸蔵および放出可能であるナトリウム含有金属酸化物を含む。
具体的には、イオン交換水と正極活物質とを混合し、正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムをイオン交換水に溶解させて測定用試料を得る。その後、測定用試料における炭酸イオン(CO3 2-)濃度をイオンクロマトグラフィにより測定することで、正極活物質に残存する炭酸ナトリウムの質量割合を求めることができる。
ナトリウム含有金属酸化物は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
炭酸ナトリウムと、所要の金属を含む金属化合物(酸化物、水酸化物等)とを混合する。得られる正極活物質における炭酸ナトリウムの残存量を十分に低減する観点から、炭酸ナトリウムと金属化合物との原料混合物において、金属化合物の量を、化学量論量より0〜3モル%大きくすることが望ましい。原料混合物を、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中で、所定の条件で加熱することで、ナトリウム含有金属酸化物を含む正極活物質が得られる。不活性雰囲気の圧力は、8.1×104〜1.2×105Pa(0.8〜1.2atm)が好ましく、9.1×104〜1.1×105Pa(0.9〜1.1atm)がより好ましい。例えば、加熱温度は850〜950℃であることが好ましく、850〜900℃がより好ましい。加熱時間は3〜20時間が好ましく、5〜10時間がより好ましい。
亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2)を含む正極活物質は、化学量論量基準で、炭酸ナトリウム量より酸化クロムを0〜3モル%、更に好ましくは0.5〜1モル%過剰に含む原料混合物を、所定の条件で加熱することで得られる。なお、過剰分の酸化クロムは、未反応のまま正極活物質中に存在することとなるが、電池特性にはほとんど影響しない。
[正極]
図1は、本発明の一実施形態に係る正極の正面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。
ナトリウム溶融塩電池用正極2は、正極集電体2aおよび正極集電体2aに付着した正極活物質層2bを含む。正極活物質層2bは、正極活物質を必須成分として含み、任意成分として導電性炭素材料、結着剤等を含んでもよい。
図3は、本発明の一実施形態に係る負極の正面図であり、図4は図3のIV−IV線断面図である。
負極3は、負極集電体3aおよび負極集電体3aに付着した負極活物質層3bを含む。負極活物質層3bには、例えば、ナトリウム、ナトリウム合金またはナトリウムと合金化可能な金属を用いることができる。このような負極は、例えば、第1金属により形成された負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部を被覆する第2金属とを含む。ここで、第1金属は、ナトリウムと合金化しない金属であり、第2金属は、ナトリウムと合金化する金属である。
負極に含まれる水分の質量割合は、試料として負極を用いること以外、正極と同様にしてカールフィッシャー法により測定すればよい。
電解質(溶融塩)としては、電池の作動温度域(好ましくは90℃以下、更に好ましくは70℃以下)でイオン性液体となる塩が使用される。溶融塩は、カチオンとして、溶融塩電池内において電荷のキャリアとなるナトリウムイオンを少なくとも含む。
セパレータの材質は、電池の使用温度を考慮して選択すればよいが、電解質との副反応を抑制する観点からは、ガラス繊維、シリカ含有ポリオレフィン、フッ素樹脂、アルミナ、ポリフェニレンサルファイト(PPS)などを用いることが好ましい。なかでもガラス繊維の不織布は、安価であり、耐熱性も高い点で好ましい。また、シリカ含有ポリオレフィンやアルミナは、耐熱性に優れる点で好ましい。また、フッ素樹脂やPPSは、耐熱性と耐腐食性の点で好ましい。特にPPSは、溶融塩に含まれるフッ素に対する耐性に優れている。
溶融塩電池は、上記の正極と負極を含む電極群および電解質を、電池ケースに収容した状態で用いられる。電極群は、正極と負極とを、これらの間にセパレータを介在させて積層または捲回することにより形成される。このとき、金属製の電池ケースを用いるとともに、正極および負極の一方を電池ケースと導通させることにより、電池ケースの一部を第1外部端子として利用することができる。一方、正極および負極の他方は、電池ケースと絶縁された状態で電池ケース外に導出された第2外部端子と、リード片などを用いて接続される。
図5は、電池ケースの一部を切り欠いた溶融塩電池の斜視図であり、図6は、図5におけるVI−VI線断面を概略的に示す縦断面図である。
(正極活物質の調製)
平均粒径D50が2.0μmの炭酸ナトリウム(Na2CO3)と、平均粒径D50が1.5μmの酸化クロム(Cr2O3)とを、ナトリウムとクロムのモル比が1:1.01となる量で混合した。得られた混合物を、窒素雰囲気中、900℃で8時間加熱して、亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2)を含む正極活物質を得た。
次に、以下の方法で正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合を求めた。
所定量のイオン交換水と、得られた正極活物質とを混合して、測定用試料を得た。測定用試料における炭酸イオン(CO3 2-)濃度を、イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス株式会社製のイオンクロマトグラフ分析装置:ICS−3000)により求めたところ、測定できなかった。したがって、正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、測定限界である1ppm未満であることがわかった。
得られた正極活物質に対して粉砕、分級を行い、平均粒径を10μmとした。平均粒径10μmの正極活物質85質量部、アセチレンブラック(導電性炭素材料)10質量部およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量部を、分散媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させ、正極ペーストを調製した。得られた正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させ、圧延し、所定の寸法に裁断して、両面に厚さ80μmの正極活物質層を有する正極を作製した。正極の寸法は、幅46mm、長さ46mm、総厚180μmとした。
厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に、厚さ100μmのナトリウム金属を貼り付けた。アルミニウム箔には、アルミニウム製の負極リードを溶接した。
厚さ50μm、空隙率90%のポリオレフィン製のセパレータを準備した。セパレータは、50×50mmの寸法に裁断した。
ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(NaFSA)とカリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(KFSA)とのモル比56:44の混合物からなる電解質を調製した。この電解質(溶融塩)の融点は61℃である。
正極、負極およびセパレータを、0.3Paの減圧下で、90℃以上で加熱して乾燥させた。乾燥は、正極および負極の水分量が、それぞれ50ppmおよび30ppmになり、セパレータの水分量が100ppmになるまで行った。
(i)サイクル特性
得られたナトリウム溶融塩電池を恒温室内で90℃になるまで加熱し、温度が安定した状態で、以下の(1)〜(3)の条件を1サイクルとして、1000サイクル充放電を行い、1サイクル目の放電容量に対する1000サイクル目の放電容量(容量維持率)を求めた。結果を表1に示す。
(1)充電電流0.2Cで、充電終止電圧3.5Vまで充電
(2)3.5Vの定電圧で終止電流0.01Cまで充電
(3)放電電流0.2Cで、放電終止電圧2.5Vまで放電
(i)のサイクル特性評価後の電池の厚さを、ダイヤルゲージを用いて測定した。この厚さを、サイクル特性評価前の電池の厚さと比較することにより、ガスによる電池膨れの有無を確認した。なお、電池膨れが初期厚さの3%未満であるとき、電池膨れ「なし」と判断し、電池膨れが初期厚さの3%以上であるとき、電池膨れ「あり」と判断した。
正極活物質の調製において、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを、ナトリウムとクロムのモル比が1:1となる量で混合したこと以外、実施例1と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、100ppmであった。
正極活物質の調製において、加熱時間を5時間としたこと以外、実施例2と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、400ppmであった。
正極活物質の調製において、加熱時間を5時間としたこと以外、実施例1と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、200ppmであった。
正極活物質の調製において、加熱温度を850℃としたこと以外、実施例1と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、500ppmであった。
正極活物質の調製において、加熱温度を850℃とし、加熱時間を5時間としたこと以外、実施例2と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、0.1%(1000ppm)であった。
正極活物質の調製において、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを、ナトリウムとクロムのモル比が1:0.99となる量で混合したこと以外、実施例1と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、900ppmであった。
正極活物質の調製において、加熱温度を850℃としたこと以外、実施例2と同様にして、正極活物質を調製した。得られた正極活物質に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合は、600ppmであった。
Claims (8)
- 電気化学的にナトリウムイオンを吸蔵および放出可能であるナトリウム含有金属酸化物を含み、炭酸ナトリウムの質量割合が500ppm以下である、ナトリウム溶融塩電池用正極活物質。
- 前記ナトリウム含有金属酸化物が、一般式:Na1-xM1 xCr1-yM2 yO2(0≦x≦2/3、0≦y≦0.7であり、M1およびM2は、それぞれ独立にCrおよびNa以外の金属元素である)で表される化合物である、請求項1に記載のナトリウム溶融塩電池用正極活物質。
- 正極集電体および前記正極集電体に付着した正極活物質層を含み、
前記正極活物質層が、請求項1または2に記載の正極活物質と、導電性炭素材料とを含む、ナトリウム溶融塩電池用正極。 - 前記正極に含まれる炭酸ナトリウムの質量割合が500ppm以下である、請求項3に記載のナトリウム溶融塩電池用正極。
- 前記正極に含まれる水分の質量割合が200ppm以下である、請求項3または4に記載のナトリウム溶融塩電池用正極。
- 正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータおよび電解質を含み、
前記電解質が、少なくともナトリウムイオンを含む溶融塩であり、
前記正極が、請求項3〜5のいずれか1項に記載のナトリウム溶融塩電池用正極である、ナトリウム溶融塩電池。 - 前記電解質に含まれる前記ナトリウムイオンの濃度が、前記電解質に含まれるカチオンの2モル%以上を占めている、請求項6に記載のナトリウム溶融塩電池。
- 設計容量が、10Ah以上である、請求項6または7に記載のナトリウム溶融塩電池。
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