JP5636994B2 - 亜クロム酸ナトリウムの製造方法 - Google Patents
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Description
(1)請求項1に記載の発明は、亜クロム酸ナトリウムの製造方法であって、水含有率を1000ppm以下とした酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物を、不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱することを要旨とする。
炭酸ナトリウムの水和物の水は温度300℃以上に加熱することにより除去することができる。また、温度300℃〜400℃の範囲では、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応、および水と酸化クロムとの反応は生じない。このような点を鑑み、本発明では、温度300℃〜400℃で加熱し、炭酸ナトリウムに含まれる水および炭酸ナトリウムの水和物の水を除去する。これにより、水と酸化クロムとの反応または水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応をより抑制することができ、副生成物の生成を抑制することができる。
上記製造方法による生成物を水で洗浄した場合、亜クロム酸ナトリウムのナトリウムと水から供与されるプロトンとが交換する交換反応が生じる。これにより、亜クロム酸ナトリウムを電池の正極として用いる場合の放電容量が低下するおそれがある。この点、アルコール類は水よりもプロトンの供与性が低いため、洗浄にともなう亜クロム酸ナトリウムの特性低下を抑制することができる。
亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2)の製造には、炭酸ナトリウム(Na2CO3)の無水物の粉末と酸化クロム(Cr2O3)の粉末とが原料として用いられる。各物質の粉末の平均粒径は1〜2μmとされる。なお、平均粒径は、粒度分布において累積質量度数が50%となる径を示す。ここでの粒度分布の粒径は、光散乱式の粒度分布計で計測された値を示す。
ところで、仮に、水を吸収した状態で炭酸ナトリウムについて必要量を秤量したとすれば、炭酸ナトリウムの実質量は必要量よりも水を含む分だけ少なくなる。したがって、酸化クロムが炭酸ナトリウムよりも過剰となるため、焼成後の生成物に、未反応の酸化クロムが残る。
実施例1は、上記に示した亜クロム酸ナトリウムの製造方法の製造条件を示している。
(製造条件)
・秤量前に、大気圧下で、300℃で24時間加熱する。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
図3のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、99.9%以上である。
・酸化クロムの割合は、0.05%以下である。
・炭酸ナトリウムの割合は、0.05%以下である。
図3に示すように、実施例1の製造条件の生成物のXRDスペクトルは、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルと略一致する。他のピークは殆ど存在しない。すなわち、副生成物は殆ど生成されていない。
本実施例では、実施例1に比べて、秤量前の乾燥時間を短くしている。
乾燥時間の短縮により、炭酸ナトリウムに水が残る場合があると考えられる。炭酸ナトリウムに水が含まれているとき、精確に炭酸ナトリウムを秤量したとしても、炭酸ナトリウムの実質量は実際に秤量した量よりも少なくなる。この点を考慮して、本実施例では、炭酸ナトリウムを秤量するとき、酸化クロムのモル数よりも多くする。
(製造条件)
・秤量前に、大気圧下で、300℃で5時間加熱する。
・炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合比率をモル比で1.05:1.00とする。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・2次加熱処理後、生成物を粉砕し、エタノールにより洗浄する。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
図4のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、99.9%以上である。
・酸化クロムの割合は、0.05%以下である。
図4に示すように、実施例2の製造条件の生成物のXRDスペクトルは、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルと略一致する。他のピークは殆ど見られない。すなわち、副生成物は殆ど含まれない。
本実施例では、秤量前の乾燥を、減圧下かつ炭酸ナトリウムをヒータで加熱することにより、行なっている。
(製造条件)
・秤量前に、減圧下(500Pa〜1000Pa)、150℃で5時間加熱する。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、99.9%以上である。
・酸化クロムの割合は、0.05%以下である。
・炭酸ナトリウムの割合は、0.05%以下である。
実施例1では、大気圧下、温度300℃で24時間加熱する。これに対し、本実施例では、減圧下、温度150℃で5時間加熱する。その他の製造条件は同じである。結果を比較すると、両実施例の亜クロム酸ナトリウムの割合は略同じである。すなわち、減圧下かつ加熱による炭酸ナトリウムの乾燥によっても、第1実施例と同様の結果が得られる。このように、減圧下では、水が蒸発しやすくなるため、大気圧下で乾燥を行なうときに比べて、短時間で炭酸ナトリウムを乾燥することができる。
実施例の製造工程のうち秤量前乾燥処理を省略している。これにより製造工程をより簡略にすることができる。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、95%である。
・酸化クロムの割合は、5%である。
秤量前乾燥処理を行なっている実施例1に比べて、亜クロム酸ナトリウムの割合が低下する。生成物には酸化クロムが5%含まれている一方、炭酸ナトリウムが含まれていないことから、炭酸ナトリウムの量に対して酸化クロムの量が過剰であったと推定される。これは、秤量前乾燥処理を行なわないことにより、炭酸ナトリウムが精確に秤量できなかったことに起因すると考えられる。
実施例4と同様に、秤量前乾燥処理を省略している。この場合、炭酸ナトリウムが水を含むため、炭酸ナトリウムの精確な秤量が行なえず、これにより、炭酸ナトリウムの量が酸化クロムに対して不足し、未反応の酸化クロムが残存する結果、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下すると考えられる。この点を考慮して、本実施例では、炭酸ナトリウムを秤量するとき、酸化クロムのモル数よりも多くする。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合比率をモル比で1.05:1.00とする。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、96%である。
・酸化クロムの割合は、1%である。
・炭酸ナトリウムの割合は、3%である。
実施例4に比べて、焼成後の生成物中、酸化クロムの割合が小さい。これは、本実施例の炭酸ナトリウムの実質量と酸化クロムの実質量との比率が、秤量時において、実施例4の場合の炭酸ナトリウムの実質量と酸化クロムの実質量との比率よりも、1:1に近かったことを示す。この点について以下に説明する。
実施例1の製造工程のうち、秤量前乾燥処理および1次加熱処理を省略している。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・1次加熱処理を行わず、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1〜2%であった。
(結果)
図5のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、85%である。
・クロム酸ナトリウム(Na2CrO4)の割合は、10%である。
・CrOOHの割合は、5%である。
(評価)
図5に示すように、比較例1の製造条件の生成物のXRDスペクトルには、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルのピークと、同スペクトル以外のピークが複数存在する。亜クロム酸ナトリウム以外のピークは、クロム酸ナトリウムとCrOOHに特定される。
実施例1〜5および比較例1では、アルゴン雰囲気中で2次加熱処理を行っている。本実施例では、大気中で2次加熱処理を行なう。これ以外の条件は、比較例1と同様の条件としている。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・1次加熱処理を行わず、2次加熱処理をする。
・2次加熱処理は、大気圧下で行なう。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1〜2%であった。
(結果)
図6のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合は0%である。
・クロム酸ナトリウム(4水和物を含む)の割合は、69%である。
・酸化クロムの割合は、31%である。
図6に示すように、比較例2の製造条件の生成物のXRDスペクトルから、生成物には、クロム酸ナトリウムとクロム酸ナトリウム4水和物と酸化クロムとが含まれると分析された。すなわち、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルに対応するピークは存在しない。
実施例1〜5および比較例1および2では、1t/cm2で加圧して成型している。本実施例では、成型を行なっていない。これ以外の条件は、実施例1と同様の条件としている。
・成型を行なわない。
・秤量前に、大気圧下で、300℃で24時間加熱する。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合は20%である。
・炭酸ナトリウムの割合は、40%である。
・酸化クロムの割合は、40%である。
成型を行なわず、混合物を焼成するとき、溶融した炭酸ナトリウムは流体となって流れ出し、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離する。この結果、殆どの炭酸ナトリウムと酸化クロムとは反応せず、未反応のまま残存する。
(1)本実施形態では、酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物の水含有率を1000ppm以下にした上で、焼成温度範囲で上記混合物を加熱する。この製造方法によれば、上記混合物に水が殆ど含まれないため、酸化クロムと炭酸ナトリウムとが焼成反応する条件下において、酸化クロムと炭酸ナトリウムと水との反応を抑制することができるため、副生成物が形成されることを抑制することができる。
炭酸ナトリウムは水を吸収しやすい性質があり、炭酸ナトリウムの無水物として提供されたものでも炭酸ナトリウムを使用する時点においては、空気中の水を吸収している。このため、炭酸ナトリウムを乾燥しないで、合成に必要な必要量を秤量したとしても、炭酸ナトリウムの実質量は必要量よりも少なくなる。したがって、この場合、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量よりも過剰となり、焼成後の生成物に未反応の酸化クロムが残る。
炭酸ナトリウムは水和物を形成する。炭酸ナトリウムの水和物から水を除去するためには、大気圧下、温度300℃以上に加熱する必要がある。一方、炭酸ナトリウムは温度851℃で融解する。このような点を鑑みて、大気圧下かつ温度300℃〜850℃の温度範囲で、炭酸ナトリウムを加熱する。これにより、炭酸ナトリウムを含まれる水を除去することができる。
炭酸ナトリウムは、酸化クロムよりも水を吸収するため、炭酸ナトリウムを精確に秤量したとしても、炭酸ナトリウムの量は、必要量よりも少なくなることがある。すると、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量に対して過剰となるため、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを混合して焼成したとき、生成物中に、未反応の酸化クロムが残る。酸化クロムは、水等の溶媒に溶解しないため、生成物から除去することも困難である。
この構成によれば、生成物をエタノールで洗浄することにより、生成物に残存する不純物、例えば、未反応のまま残余した炭酸ナトリウムを除去することができる。これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
炭酸ナトリウムの水和物の水は温度300℃以上に加熱することにより除去することができる。また、温度300℃〜400℃の範囲では、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応、および水と酸化クロムとの反応は生じない。このような点を鑑み、温度300℃〜400℃で加熱し、炭酸ナトリウムに含まれる水および炭酸ナトリウムの水和物の水を除去する。これにより、水と酸化クロムとの反応または水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応をより確実に抑制することができ、副生成物の生成を抑制することができる。
炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合物を焼成するとき、炭酸ナトリウムが溶融し、混合物から炭酸ナトリウムが流体となって流れ出だし、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離してしまうことがある。
なお、本発明の実施形態は、上記実施例において示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施例についてのみ適用されるものではなく、他の変形例に対して適用することもできる。
Claims (11)
- 亜クロム酸ナトリウムの製造方法であって、
水含有率を1000ppm以下とした酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物を、不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱する
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項1に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記不活性ガス雰囲気中で、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応および水と酸化クロムとの反応の少なくとも一方の反応が生じない非反応温度範囲で加熱することにより、前記混合物に含まれる水の含有率を1000ppm以下とする加熱処理を含み、
前記加熱処理に続けて、前記不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱する
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項2に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記非反応温度範囲は温度300℃〜400℃である
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記炭酸ナトリウムの粉末と前記酸化クロムの粉末とを混合する前に、前記炭酸ナトリウムを乾燥する
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項4に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
減圧下かつ温度50℃〜300℃の条件で、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥する
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項4に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
大気圧かつ温度300℃〜850℃の条件で、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥する
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記酸化クロムに対する前記炭酸ナトリウムの比率を、秤量時のモル比で、1以上とする
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記混合物を前記焼成温度範囲で加熱した後に得られた生成物を極性溶媒で洗浄する
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項8に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記極性溶媒はアルコール類に含まれる溶剤である
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記焼成温度範囲は850℃〜900℃である
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。 - 請求項1〜10のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
前記焼成温度範囲で前記混合物を加熱する前に、前記混合物を1t/cm2以上の圧力で押し固める
ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
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