JP5636994B2 - 亜クロム酸ナトリウムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は亜クロム酸ナトリウムの製造方法に関する。
亜クロム酸ナトリウムは層状構造を有し特有の性質を有することから用途が広がっている。例えば、ナトリウムイオンを放出および吸収する性質を有することから2次電池の正極材料として採用されている。また、特許文献1に示されるように、高温の液体ナトリウムや高真空中で使用することができる固体潤滑剤として採用されている。
亜クロム酸ナトリウムは、例えば、非特許文献1に挙げられている製造方法により合成される。すなわち、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末と混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気で加熱することにより亜クロム酸ナトリウムが合成される。
特開平8−295894号公報
Electrochem,Commun 2010,vol.12 P355−358
ところで、上記の亜クロム酸ナトリウムの製造方法によれば、亜クロム酸ナトリウム以外に、クロム酸ナトリウム(NaCr0)、CrOOH等の副生成物が形成される。このため、これらの副生成物を少なくする技術が要求されている。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、収率の高い亜クロム酸ナトリウムの製造方法を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、亜クロム酸ナトリウムの製造方法であって、水含有率を1000ppm以下とした酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物を、不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱することを要旨とする。
従来の亜クロム酸ナトリウムの製造方法によれば、6価クロムの副生成物が形成される。そこで、発明者が鋭意研究した結果、温度850℃での焼成において水と酸化クロムまたは水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとが反応して副生成物を形成されることを見出した。発明者は、この知見に基づいて、上記構成の亜クロム酸ナトリウムの製造方法を提案する。この方法によれば、上記混合物に水が殆ど含まれないため、上記副生成物が形成されることが抑制される。すなわち、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記不活性ガス雰囲気中で、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応および水と酸化クロムとの反応の少なくとも一方の反応が生じない非反応温度範囲で加熱することにより、前記混合物に含まれる水の含有率を1000ppm以下とする加熱処理を含み、前記加熱処理に続けて、前記不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱することを要旨とする。
本発明によれば、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末との混合物を上記非反応温度範囲で加熱することにより、混合物から水を除去し、その後、上記焼成温度範囲で加熱する。このような製造工程、すなわち水を除去する工程と焼成温度で亜クロム酸ナトリウムを形成する工程とを連続して行う製造工程により、水が侵入する機会を少なくすることができるため、水が殆ど存在しない状態で、酸化クロムと炭酸ナトリウムとを焼成反応させることができる。すなわち、水と酸化クロムとの反応または水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応を抑制し、これらの反応による副生成物の形成を抑制することができる。これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記非反応温度範囲は温度300℃〜400℃であることを要旨とする。
炭酸ナトリウムの水和物の水は温度300℃以上に加熱することにより除去することができる。また、温度300℃〜400℃の範囲では、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応、および水と酸化クロムとの反応は生じない。このような点を鑑み、本発明では、温度300℃〜400℃で加熱し、炭酸ナトリウムに含まれる水および炭酸ナトリウムの水和物の水を除去する。これにより、水と酸化クロムとの反応または水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応をより抑制することができ、副生成物の生成を抑制することができる。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記炭酸ナトリウムの粉末と前記酸化クロムの粉末とを混合する前に、前記炭酸ナトリウムを乾燥することを要旨とする。
亜クロム酸ナトリウムを製造する際、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末とを精確に秤量しなければ、過剰にある物質が未反応のまま残余し、焼成後、過剰にある物質が残る。このため、原料を精確に秤量する必要がある。
ところが炭酸ナトリウムは水を吸収しやすい性質があり、炭酸ナトリウムの無水物として提供されたものでも炭酸ナトリウムを使用する時点においては空気中の水を吸収している。このため、炭酸ナトリウムを乾燥しないで、合成に必要な必要量を秤量したとしても、水を除いた炭酸ナトリウムの実際の量(以下、「実質量」)は必要量よりも少なくなる。したがって、この場合、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量よりも過剰となり、焼成後の生成物に未反応の酸化クロムが残る。
この点、上記発明によれば、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末とを混合する前に、炭酸ナトリウムを乾燥するため、炭酸ナトリウムの量を正確に秤量することができる。これにより、未反応で残る酸化クロムの量を抑制することができ、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、減圧下かつ温度50℃〜300℃の条件で、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥することを要旨とする。
炭酸ナトリウムは水和物を形成する。このため、炭酸ナトリウムの水和物から水を除去することが好ましい。そこで、上記条件により、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥する。この条件によれば、大気圧で乾燥するよりも、短時間で乾燥することができる。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、大気圧かつ温度300℃〜850℃の条件で、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥することを要旨とする。
炭酸ナトリウムの水和物から水を除去するためには、大気圧(1気圧)下において温度300℃以上に加熱する必要がある。一方、炭酸ナトリウムは温度851℃で融解する。このような点を鑑みて、本発明では、大気圧下、温度300℃〜850℃の温度範囲で、炭酸ナトリウムを加熱する。これにより、炭酸ナトリウムを含まれる水を除去することができる。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記酸化クロムに対する前記炭酸ナトリウムの比率を、秤量時のモル比で、1以上とすることを要旨とする。
炭酸ナトリウムは、酸化クロムよりも水を吸収するため、炭酸ナトリウムを精確に秤量したとしても、炭酸ナトリウムの量は、必要量よりも少なくなることがある。すると、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量に対して過剰となるため、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを混合して焼成したとき、生成物中に、未反応の酸化クロムが残る。酸化クロムは、水等の溶媒に溶解しないため、生成物から除去することも困難である。
本発明によれば、炭酸ナトリウムの必要量(モル量)を酸化クロムの必要量(モル量)よりも多くする。これにより、炭酸ナトリウムの必要量(モル量)を酸化クロムの必要量(モル量)よりも多くしていない場合と比較して、酸化クロムの残量を少なくすることができ、生成物中の亜クロム酸ナトリウムの割合を高くすることができる。
なお、炭酸ナトリウムの必要量(モル量)を酸化クロムの必要量(モル量)よりも多くすることにより、炭酸ナトリウムの実質量が酸化クロムの実質量よりも多くなる場合もある。この場合、焼成後、未反応の炭酸ナトリウムが残る。しかし、炭酸ナトリウムは、アルコール等の溶媒に溶解するため、生成物をアルコール等の溶媒で洗浄することにより、炭酸ナトリウムを除去することができる。したがって、仮に、炭酸ナトリウムの実質量が酸化クロムの実質量よりも多くなることがあっても、生成物中の亜クロム酸ナトリウムの割合を高めることができる。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記混合物を前記焼成温度範囲で加熱した後に得られた生成物を極性溶媒で洗浄することを要旨とする。
本発明によれば、生成物を極性溶媒で洗浄することにより、生成物に残存する不純物、例えば、未反応のまま残余した炭酸ナトリウムを除去することができる。これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(9)請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記極性溶媒はアルコール類に含まれる溶剤であることを要旨とする。
上記製造方法による生成物を水で洗浄した場合、亜クロム酸ナトリウムのナトリウムと水から供与されるプロトンとが交換する交換反応が生じる。これにより、亜クロム酸ナトリウムを電池の正極として用いる場合の放電容量が低下するおそれがある。この点、アルコール類は水よりもプロトンの供与性が低いため、洗浄にともなう亜クロム酸ナトリウムの特性低下を抑制することができる。
(10)請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記焼成温度範囲は850℃〜900℃であることを要旨とする。
炭酸ナトリウムと亜クロム酸ナトリウムは850℃〜2400℃の範囲で焼成する。しかし、温度が900℃よりも高いとき、溶融した炭酸ナトリウムが流動しやすくなる。炭酸ナトリウムが酸化クロムと反応する前に流れ、酸化クロムから分離する。このように炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離すると、炭酸ナトリウムは反応に寄与することができなくなるため、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下する。この点、本発明によれば、850℃〜900℃で焼成反応をさせているため、炭酸ナトリウムの流動による炭酸ナトリウムと酸化クロムとの分離が生じることを抑制することができ、これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率の低下を抑制することができる。
(11)請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、前記焼成温度範囲で前記混合物を加熱する前に、前記混合物を1t/cm以上の圧力で押し固めることを要旨とする。
炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合物を焼成するとき、炭酸ナトリウムが溶融し、混合物から炭酸ナトリウムが流体となって流れ出だし、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離してしまうことがある。
本発明によれば、混合物の焼成前に、この混合物を1t/cm以上の圧力押し固めて、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末とを互いに密接させる。このため、溶融した炭酸ナトリウムは、流体となって流れ出す前に、同炭酸ナトリウムの周囲の酸化クロムと反応する。これによって、炭酸ナトリウムの溶融にともなう炭酸ナトリウムと酸化クロムとの分離が抑制され、亜クロム酸ナトリウムの収率の低下を抑制することができる。
本発明によれば収率の高い亜クロム酸ナトリウムの製造方法を提供することができる。
本発明の亜クロム酸ナトリウムの製造方法について、実施例1の製造工程を示すフローチャート。 本発明の亜クロム酸ナトリウムの製造方法について、実施例および比較例の製造条件および生成物の組成を示すテーブル。 本発明の亜クロム酸ナトリウムの製造方法について、実施例1の製造条件によって生成した生成物のスペクトル図。 本発明の亜クロム酸ナトリウムの製造方法について、実施例2の製造条件によって生成した生成物のスペクトル図。 亜クロム酸ナトリウムの製造方法について、実施例と比較される比較例1の製造条件によって生成された生成物のスペクトル図。 亜クロム酸ナトリウムの製造方法について、実施例と比較される比較例2の製造条件によって生成された生成物のスペクトル図。
図1を参照し、本発明の実施形態について実施例1を例に挙げて説明する。
亜クロム酸ナトリウム(NaCrO)の製造には、炭酸ナトリウム(NaCO)の無水物の粉末と酸化クロム(Cr)の粉末とが原料として用いられる。各物質の粉末の平均粒径は1〜2μmとされる。なお、平均粒径は、粒度分布において累積質量度数が50%となる径を示す。ここでの粒度分布の粒径は、光散乱式の粒度分布計で計測された値を示す。
炭酸ナトリウムと酸化クロムとは、モル比で、1対1で反応するため、炭酸ナトリウムの量と酸化クロムの量とが等モル量となるように秤量する。炭酸ナトリウムの量および酸化クロムの量をそれぞれ1モルとするとき、生成目的物である亜クロム酸ナトリウムは2モル得られる。したがって、所定目的量の亜クロム酸ナトリウムを製造するときは、炭酸ナトリウムの量(必要量)および酸化クロムの量(必要量)はそれぞれ、モル比で、亜クロム酸ナトリウムの目的量の半分の量とする。
炭酸ナトリウムは、保管している間に水を吸収するため、秤量前に、乾燥する。
ところで、仮に、水を吸収した状態で炭酸ナトリウムについて必要量を秤量したとすれば、炭酸ナトリウムの実質量は必要量よりも水を含む分だけ少なくなる。したがって、酸化クロムが炭酸ナトリウムよりも過剰となるため、焼成後の生成物に、未反応の酸化クロムが残る。
そこで、ステップS100に示すように、秤量前に、大気圧下、温度300℃で24時間にわたって加熱する(秤量前乾燥処理)。なお、加熱温度は、300℃〜850℃の範囲で設定することができる。秤量前乾燥処理の下限温度である300℃は、炭酸ナトリウムの水和物から水を除去して無水炭酸ナトリウムにすることができる温度を示す。すなわち、300℃未満の乾燥では炭酸ナトリウムの水和物から水を除去することが困難となる。秤量前乾燥処理の上限温度である850℃は、炭酸ナトリウムの融点より低い温度を示す。すなわち、炭酸ナトリウムは温度851℃で融解するため、秤量前乾燥処理は、この温度よりも低い温度で行なう。秤量前乾燥処理においてより好ましい温度範囲は、300℃〜400℃である。
次に、ステップS200で示すように、炭酸ナトリウムと酸化クロムとをモル比で1:1となるように秤量する。そして、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを混合して、混合物を形成する。さらに、ステップS300に示すように、混合物を耐熱容器に充填して、0.8〜1.0t/cm、好ましくは1.0t/cmの圧力で押し固める(加圧処理)。すなわち、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを密接させて、炭酸ナトリウムが溶融したときに両者が反応しやすいようにする。
次に、ステップS400に示すように、耐熱容器に入れた混合物をオーブンに投入し、アルゴン雰囲気で、焼成開始温度よりも低い温度かつ非反応温度範囲で、加熱する(1次加熱処理(加熱処理))。ここで、焼成開始温度とは、炭酸ナトリウムと酸化クロムとの反応開始温度を示す。
非反応温度範囲は300℃〜400℃である。1次加熱処理の下限温度である300℃は、炭酸ナトリウムの水和物から水を除去することができる温度を示す。1次加熱処理の上限温度である400℃は、水と酸化クロムとの反応、および水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応が生じない上限温度を示す。すなわち、温度が400℃以上のとき、炭酸ナトリウムと酸化クロムと水との反応または酸化クロムと水との反応により、6価のクロム化合物(例えば、NaCrO)およびCrOOHが生成する。
1次加熱処理は、秤量前乾燥処理で除去されなかった水および秤量前乾燥処理の後に炭酸ナトリウムまたは酸化クロムに吸収される水を除去するために行なわれる。具体的には、1次加熱処理は温度300℃で混合物を加熱する。この工程により、工程上必要とされる水分含有量、1000ppm以下が達成される。なお、同工程での水含有量はカールフィッシャー法により計測した。
1次加熱処理に続いて、オーブンの温度を上げて、焼成温度範囲で、炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合物を加熱する(2次加熱処理)。具体的には、2次加熱処理は、温度850℃で行なわれる。
なお、2次加熱処理の温度は、850℃〜2400℃の範囲で設定することができる。2次加熱処理の下限温度である850℃は、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが安定して焼成反応する下限温度である。2次加熱処理の上限温度である2400℃は、酸化クロムの溶融点よりも低い値である。2次加熱処理の温度の好ましい範囲は、850℃〜900℃である。オーブンの温度を900℃以上とすると、溶融した炭酸ナトリウムが流動して、炭酸ナトリウムが酸化クロムと反応する前に流れ出し、酸化クロムと炭酸ナトリウムとが分離する。この結果、酸化クロムと炭酸ナトリウムの未反応物が増大し、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下する。
2次加熱処理の終了したとき、生成物は固まりとなっている。そこで、耐熱容器から生成物を取り出し、粉砕機で粉砕し、粉状にする。粒径は、用途に応じた大きさにされる。例えば、2次電池の電極に用いるときは、0.1〜数十μmとする。
図2〜図6を参照して、実施例と比較例とを比較して、亜クロム酸ナトリウムの製造条件の相違による収率変化について説明する。なお、図2において、丸印は、丸印が付されている欄の条件を実行することを示す。例えば、実施例2の成型の欄の丸印は、1.0t/cmで成型していることを示し、洗浄の欄の丸印は洗浄を行なっていることを示す。焼成条件の温度条件の「A→B」の表示は、オーブンの温度300で3時間加熱した後、オーブンの温度を上げ、温度850℃で5時間加熱することを示す。また、焼成条件の温度条件の「B」は、温度850℃で5時間加熱することを示す。
各実施例の製造条件の詳細および組成の詳細は図2に示す。同図に示す生成物の組成は、X線回折装置によるスペクトルから各成分を分析し、各成分のスペクトルの積分値を求め、各成分についての積分値の比に基づいて求めている。組成の単位%はモル%であり、以降では、単に「%」で示す。なお、以下の実施例の製造条件の項目では、特徴的な事項のみを示す。
<実施例1>
実施例1は、上記に示した亜クロム酸ナトリウムの製造方法の製造条件を示している。
(製造条件)
・秤量前に、大気圧下で、300℃で24時間加熱する。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
図3のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、99.9%以上である。
・酸化クロムの割合は、0.05%以下である。
・炭酸ナトリウムの割合は、0.05%以下である。
(評価)
図3に示すように、実施例1の製造条件の生成物のXRDスペクトルは、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルと略一致する。他のピークは殆ど存在しない。すなわち、副生成物は殆ど生成されていない。
秤量前に、十分な時間をかけて炭酸ナトリウムを乾燥しているため、炭酸ナトリウムは精確に秤量される。このため、炭酸ナトリウムと酸化クロムとは一方が過剰となることがなくなるため、焼成後の生成物に、未反応の炭酸ナトリウムまたは酸化クロムは殆ど含まれない。また、2次加熱処理により焼成する前に、1次加熱処理により混合物を乾燥して、水を除去しているため、水の存在に起因する副生成物は、焼成後の生成物に殆ど含まれない。
<実施例2>
本実施例では、実施例1に比べて、秤量前の乾燥時間を短くしている。
乾燥時間の短縮により、炭酸ナトリウムに水が残る場合があると考えられる。炭酸ナトリウムに水が含まれているとき、精確に炭酸ナトリウムを秤量したとしても、炭酸ナトリウムの実質量は実際に秤量した量よりも少なくなる。この点を考慮して、本実施例では、炭酸ナトリウムを秤量するとき、酸化クロムのモル数よりも多くする。
炭酸ナトリウムに水が含まれる量はモル比で5%にも満たない量と考えられるが、敢えて、炭酸ナトリウムを5%増しの量とし、酸化クロムに対して過剰量とする。これにより、焼成後に、未反応の酸化クロムが残らないようにする。一方、焼成後に炭酸ナトリウムが残るため、これをエタノールで洗浄する。炭酸ナトリウムは水またはアルコール等に溶解するため、洗浄により容易に除去することができる。なお、酸化クロムは、水またはアルコール等に溶解しにくいため、このような洗浄により容易に除去することができない。
(製造条件)
・秤量前に、大気圧下で、300℃で5時間加熱する。
・炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合比率をモル比で1.05:1.00とする。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・2次加熱処理後、生成物を粉砕し、エタノールにより洗浄する。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
図4のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、99.9%以上である。
・酸化クロムの割合は、0.05%以下である。
(評価)
図4に示すように、実施例2の製造条件の生成物のXRDスペクトルは、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルと略一致する。他のピークは殆ど見られない。すなわち、副生成物は殆ど含まれない。
炭酸ナトリウムについて秤量前の乾燥時間を短縮した場合、炭酸ナトリウムの乾燥が不十分となって、精確な秤量が行なえず、これにより、炭酸ナトリウムの量が酸化クロムに対して不足し、未反応の酸化クロムが残存する結果、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下すると考えられる。これに対し、上記のように、炭酸ナトリウムの量を酸化クロムに対して過剰として焼成後に酸化クロムが残らないようにし、かつ、焼成後にエタノールで洗浄することにより未反応の炭酸ナトリウムを除去することにより、亜クロム酸ナトリウムの収率を実施例1と略同じ値にすることができる。
<実施例3>
本実施例では、秤量前の乾燥を、減圧下かつ炭酸ナトリウムをヒータで加熱することにより、行なっている。
(製造条件)
・秤量前に、減圧下(500Pa〜1000Pa)、150℃で5時間加熱する。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、99.9%以上である。
・酸化クロムの割合は、0.05%以下である。
・炭酸ナトリウムの割合は、0.05%以下である。
(評価)
実施例1では、大気圧下、温度300℃で24時間加熱する。これに対し、本実施例では、減圧下、温度150℃で5時間加熱する。その他の製造条件は同じである。結果を比較すると、両実施例の亜クロム酸ナトリウムの割合は略同じである。すなわち、減圧下かつ加熱による炭酸ナトリウムの乾燥によっても、第1実施例と同様の結果が得られる。このように、減圧下では、水が蒸発しやすくなるため、大気圧下で乾燥を行なうときに比べて、短時間で炭酸ナトリウムを乾燥することができる。
<実施例4>
実施例の製造工程のうち秤量前乾燥処理を省略している。これにより製造工程をより簡略にすることができる。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、95%である。
・酸化クロムの割合は、5%である。
(評価)
秤量前乾燥処理を行なっている実施例1に比べて、亜クロム酸ナトリウムの割合が低下する。生成物には酸化クロムが5%含まれている一方、炭酸ナトリウムが含まれていないことから、炭酸ナトリウムの量に対して酸化クロムの量が過剰であったと推定される。これは、秤量前乾燥処理を行なわないことにより、炭酸ナトリウムが精確に秤量できなかったことに起因すると考えられる。
一方、後に示す比較例1すなわち2次加熱処理の前に1次加熱処理を行っていない製造方法と比べると、クロム酸ナトリウム、CrOOH等の副生成物は見られない。これは、2次加熱処理の前に、水を除去する処理である1次加熱処理を行なって混合物に含まれる水が除去されているためと考えられる。
<実施例5>
実施例4と同様に、秤量前乾燥処理を省略している。この場合、炭酸ナトリウムが水を含むため、炭酸ナトリウムの精確な秤量が行なえず、これにより、炭酸ナトリウムの量が酸化クロムに対して不足し、未反応の酸化クロムが残存する結果、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下すると考えられる。この点を考慮して、本実施例では、炭酸ナトリウムを秤量するとき、酸化クロムのモル数よりも多くする。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合比率をモル比で1.05:1.00とする。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1000ppm以下であった。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、96%である。
・酸化クロムの割合は、1%である。
・炭酸ナトリウムの割合は、3%である。
(評価)
実施例4に比べて、焼成後の生成物中、酸化クロムの割合が小さい。これは、本実施例の炭酸ナトリウムの実質量と酸化クロムの実質量との比率が、秤量時において、実施例4の場合の炭酸ナトリウムの実質量と酸化クロムの実質量との比率よりも、1:1に近かったことを示す。この点について以下に説明する。
実施例4では、秤量前乾燥処理を行なわずに炭酸ナトリウムを秤量したことにより、酸化クロムの実質量が炭酸ナトリウムの実質量よりも過剰となったと考えられる。これに対し、本実施例では、予め、炭酸ナトリウムの量を酸化クロムの量よりも多くする。これにより、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量よりも過剰となる量を少なくする。これにより、焼成後に、未反応の酸化クロムが残存する量を少なくしている。
<比較例1>
実施例1の製造工程のうち、秤量前乾燥処理および1次加熱処理を省略している。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・1次加熱処理を行わず、2次加熱処理をする。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1〜2%であった。
(結果)
図5のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合(収率)は、85%である。
・クロム酸ナトリウム(NaCrO)の割合は、10%である。
・CrOOHの割合は、5%である。
(評価)
図5に示すように、比較例1の製造条件の生成物のXRDスペクトルには、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルのピークと、同スペクトル以外のピークが複数存在する。亜クロム酸ナトリウム以外のピークは、クロム酸ナトリウムとCrOOHに特定される。
1次加熱処理を行なっている実施例1〜5と比べて、亜クロム酸ナトリウムの収率(割合)が低い。焼成後の生成物には、クロム酸ナトリウムが10%、CrOOHが5%含まれている。クロム酸ナトリウムは、400℃以上の温度で、炭酸ナトリウムと酸化クロムと水との反応により生成されるため、2次加熱処理のとき、混合物に水が存在したと考えられる。すなわち、1次加熱処理を行なわなければ、副生成物が形成され、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下する。
<比較例2>
実施例1〜5および比較例1では、アルゴン雰囲気中で2次加熱処理を行っている。本実施例では、大気中で2次加熱処理を行なう。これ以外の条件は、比較例1と同様の条件としている。
(製造条件)
・秤量前乾燥処理を行なわない。
・1次加熱処理を行わず、2次加熱処理をする。
・2次加熱処理は、大気圧下で行なう。
・1次加熱処理後かつ2次加熱処理前の原料の水分量を測定すると、1〜2%であった。
(結果)
図6のXRDスペクトルを参照。
・亜クロム酸ナトリウムの割合は0%である。
・クロム酸ナトリウム(4水和物を含む)の割合は、69%である。
・酸化クロムの割合は、31%である。
(評価)
図6に示すように、比較例2の製造条件の生成物のXRDスペクトルから、生成物には、クロム酸ナトリウムとクロム酸ナトリウム4水和物と酸化クロムとが含まれると分析された。すなわち、亜クロム酸ナトリウムのXRDスペクトルに対応するピークは存在しない。
大気中で焼成を行なうと、クロムの酸化反応が主となる。このため、亜クロム酸ナトリウムは生成されず、クロム酸ナトリウムが主に生成される。すなわち、不活性ガス雰囲気中で、2次加熱処理を行なわなければ、亜クロム酸ナトリウムが生成されない。
<比較例3>
実施例1〜5および比較例1および2では、1t/cmで加圧して成型している。本実施例では、成型を行なっていない。これ以外の条件は、実施例1と同様の条件としている。
(製造条件)
・成型を行なわない。
・秤量前に、大気圧下で、300℃で24時間加熱する。
・1次加熱処理の後、2次加熱処理をする。
(結果)
・亜クロム酸ナトリウムの割合は20%である。
・炭酸ナトリウムの割合は、40%である。
・酸化クロムの割合は、40%である。
(評価)
成型を行なわず、混合物を焼成するとき、溶融した炭酸ナトリウムは流体となって流れ出し、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離する。この結果、殆どの炭酸ナトリウムと酸化クロムとは反応せず、未反応のまま残存する。
本実施形態によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物の水含有率を1000ppm以下にした上で、焼成温度範囲で上記混合物を加熱する。この製造方法によれば、上記混合物に水が殆ど含まれないため、酸化クロムと炭酸ナトリウムとが焼成反応する条件下において、酸化クロムと炭酸ナトリウムと水との反応を抑制することができるため、副生成物が形成されることを抑制することができる。
(2)本実施形態では、酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末とを混合し、酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物を押し固める。次いで、押し固められた混合物を、アルゴン雰囲気で、非反応温度範囲で加熱し、同加熱に続けて炭酸ナトリウムと酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱する。
この構成によれば、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末との混合物を上記非反応温度範囲で加熱することにより、混合物から水を除去し、その後、上記焼成温度範囲で加熱する。このような製造工程を経ることにより、水が存在しない状態で、酸化クロムと炭酸ナトリウムとの焼成反応を生じさせることができる。すなわち、水と酸化クロムとの反応または水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応を抑制するとともに、これらの反応による副生成物の形成を抑制することができる。これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(3)本実施形態では、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末とを混合する前に、炭酸ナトリウムを乾燥する。
炭酸ナトリウムは水を吸収しやすい性質があり、炭酸ナトリウムの無水物として提供されたものでも炭酸ナトリウムを使用する時点においては、空気中の水を吸収している。このため、炭酸ナトリウムを乾燥しないで、合成に必要な必要量を秤量したとしても、炭酸ナトリウムの実質量は必要量よりも少なくなる。したがって、この場合、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量よりも過剰となり、焼成後の生成物に未反応の酸化クロムが残る。
この点、上記構成によれば、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末とを混合する前に、炭酸ナトリウムを乾燥するため、炭酸ナトリウムの量を正確に秤量することができる。これにより、未反応で残る酸化クロムの量を抑制することができ、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(4)本実施形態では、大気圧下、かつ温度300℃〜850℃の条件下で、好ましくは300℃〜400℃の範囲で炭酸ナトリウムの粉末を乾燥する。
炭酸ナトリウムは水和物を形成する。炭酸ナトリウムの水和物から水を除去するためには、大気圧下、温度300℃以上に加熱する必要がある。一方、炭酸ナトリウムは温度851℃で融解する。このような点を鑑みて、大気圧下かつ温度300℃〜850℃の温度範囲で、炭酸ナトリウムを加熱する。これにより、炭酸ナトリウムを含まれる水を除去することができる。
(5)また、炭酸ナトリウムの粉末の乾燥を、減圧下かつ温度50℃〜300℃の条件で行うこともできる。この条件によれば、大気圧で乾燥するよりも、短時間を炭酸ナトリウムを乾燥することができる。
(6)本実施形態では、酸化クロムに対する炭酸ナトリウムの混合比を、秤量時のモル比で、1以上とする。
炭酸ナトリウムは、酸化クロムよりも水を吸収するため、炭酸ナトリウムを精確に秤量したとしても、炭酸ナトリウムの量は、必要量よりも少なくなることがある。すると、酸化クロムの量が炭酸ナトリウムの量に対して過剰となるため、炭酸ナトリウムと酸化クロムとを混合して焼成したとき、生成物中に、未反応の酸化クロムが残る。酸化クロムは、水等の溶媒に溶解しないため、生成物から除去することも困難である。
上記構成によれば、炭酸ナトリウムの必要量を酸化クロムの必要量よりも多くする。これにより、炭酸ナトリウムの必要量を酸化クロムの必要量よりも多くしていない場合と比較して、酸化クロムの残量を少なくすることができ、生成物中の亜クロム酸ナトリウムの割合を高めることができる。
(7)本実施形態では、混合物を焼成温度範囲で加熱した後に得られる生成物をエタノールで洗浄する。
この構成によれば、生成物をエタノールで洗浄することにより、生成物に残存する不純物、例えば、未反応のまま残余した炭酸ナトリウムを除去することができる。これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率を高くすることができる。
(8)本実施形態では、1次加熱処理を温度300℃で行なっている。なお、1次加熱処理は、温度300℃〜400℃の範囲で行なうことができる。
炭酸ナトリウムの水和物の水は温度300℃以上に加熱することにより除去することができる。また、温度300℃〜400℃の範囲では、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応、および水と酸化クロムとの反応は生じない。このような点を鑑み、温度300℃〜400℃で加熱し、炭酸ナトリウムに含まれる水および炭酸ナトリウムの水和物の水を除去する。これにより、水と酸化クロムとの反応または水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応をより確実に抑制することができ、副生成物の生成を抑制することができる。
(9)本実施形態では、2次加熱処理を850℃で行なっている。なお、2次加熱処理は、850℃〜2400℃の範囲で行なうことができ、この範囲内でも、850℃〜900℃の温度範囲で行なうことが好ましい。
炭酸ナトリウムと亜クロム酸ナトリウムは850℃〜2400℃の範囲で焼成する。しかし、温度が900℃よりも高いとき、溶融した炭酸ナトリウムが流動しやすくなる。炭酸ナトリウムが酸化クロムと反応する前に流れ、酸化クロムから分離する。このように炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離すると、炭酸ナトリウムは反応に寄与することができなくなるため、亜クロム酸ナトリウムの収率が低下する。この点、上記構成によれば、850℃〜900℃で焼成反応をさせているため、炭酸ナトリウムの流動による炭酸ナトリウムと酸化クロムとの分離が生じることを抑制することができ、これにより、亜クロム酸ナトリウムの収率の低下を抑制することができる。
(10)本実施形態では、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末との混合物を押し固める工程で、混合物を1t/cm以上の圧力で押し固める。
炭酸ナトリウムと酸化クロムとの混合物を焼成するとき、炭酸ナトリウムが溶融し、混合物から炭酸ナトリウムが流体となって流れ出だし、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離してしまうことがある。
この構成によれば、混合物を1t/cm以上の圧力押し固めることにより、炭酸ナトリウムの粉末と酸化クロムの粉末とを互いに密接させている。このため、溶融した炭酸ナトリウムは、流体となって流れ出す前に、同炭酸ナトリウムの周囲の酸化クロムと反応する。これによって、炭酸ナトリウムの溶融にともなう炭酸ナトリウムと酸化クロムとの分離が抑制されるため、亜クロム酸ナトリウムの収率の低下を抑制することができる。
(その他の実施例)
なお、本発明の実施形態は、上記実施例において示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施例についてのみ適用されるものではなく、他の変形例に対して適用することもできる。
・上記実施例1〜5では、1次加熱処理において温度300℃で3時間維持しているが、300℃〜400℃の範囲にわたって徐々に温度を上げてもよい。このような設定にしたとき、2次加熱処理を開始するとき、焼成温度である850℃まで短時間で昇温することができる。
・上記実施例1〜5では、混合物を1t/cmで押し固めているが、混合物の加圧はこの値に限定されない。例えば、加圧の範囲は、0.8〜5.0t/cmの範囲で設定することができる。なお、加圧が5t/cm以上のとき、焼成後の粉砕が困難になる。加圧0.8t/m未満のとき、炭酸ナトリウムが溶解したとき流体となって、炭酸ナトリウムと酸化クロムとが分離するおそれがある。
・上記実施例1〜5では、アルゴン雰囲気で、炭酸ナトリウムと酸化クロムとの焼成を行なっているが、アルゴンに代えて、例えば、窒素を用いることができる。すなわち、炭酸ナトリウムと酸化クロムとの焼成は、不活性雰囲気で行わればよい。
・上記実施例2では、焼成後の生成物をエタノールで洗浄しているが、他のアルコールを用いることもできる。また。アルコール類の溶剤に代えて、炭酸ナトリウムを溶解する他の極性溶媒を用いることもできる。例えば、アセトニトリル等を用いることができる。
なお、洗浄液として水を用いた場合、亜クロム酸ナトリウムのナトリウムとプロトンとの交換反応が生じる。これにより、亜クロム酸ナトリウムを正極活物質として用いた場合の放電容量等の特性が低下する。従って、洗浄液としては、少なくとも水よりもプロトン供与性の低い溶媒を用いることが好ましい。
・上記実施例3では、秤量前の炭酸ナトリウムの乾燥は、減圧下(500Pa〜1000Pa)、温度150℃で5時間加熱している。この乾燥での加熱は、温度50℃〜300℃の範囲で設定することが可能である。より好ましくは、温度100℃〜200℃である。

Claims (11)

  1. 亜クロム酸ナトリウムの製造方法であって、
    水含有率を1000ppm以下とした酸化クロムの粉末と炭酸ナトリウムの粉末との混合物を、不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱する
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  2. 請求項1に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記不活性ガス雰囲気中で、水と酸化クロムと炭酸ナトリウムとの反応および水と酸化クロムとの反応の少なくとも一方の反応が生じない非反応温度範囲で加熱することにより、前記混合物に含まれる水の含有率を1000ppm以下とする加熱処理を含み、
    前記加熱処理に続けて、前記不活性ガス雰囲気中で、前記炭酸ナトリウムと前記酸化クロムとが焼成する焼成温度範囲で加熱する
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  3. 請求項2に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記非反応温度範囲は温度300℃〜400℃である
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記炭酸ナトリウムの粉末と前記酸化クロムの粉末とを混合する前に、前記炭酸ナトリウムを乾燥する
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  5. 請求項4に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    減圧下かつ温度50℃〜300℃の条件で、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥する
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  6. 請求項4に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    大気圧かつ温度300℃〜850℃の条件で、前記炭酸ナトリウムの粉末を乾燥する
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記酸化クロムに対する前記炭酸ナトリウムの比率を、秤量時のモル比で、1以上とする
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記混合物を前記焼成温度範囲で加熱した後に得られた生成物を極性溶媒で洗浄する
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  9. 請求項8に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記極性溶媒はアルコール類に含まれる溶剤である
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記焼成温度範囲は850℃〜900℃である
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の亜クロム酸ナトリウムの製造方法において、
    前記焼成温度範囲で前記混合物を加熱する前に、前記混合物を1t/cm以上の圧力で押し固める
    ことを特徴とする亜クロム酸ナトリウムの製造方法。
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