JP2014135144A - レドックスフロー二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】プロトン(H+)透過性を悪化させることなく活物質のイオン透過性を抑制することのできる優れたイオン選択透過性を有し、且つ電気抵抗も低く、電流効率にも優れた、さらに耐酸化劣化性(ヒドロキシラジカル耐性)をも有するレドックスフロー二次電池用電解質膜及びそれを用いたレドックスフロー二次電池を提供すること。
【解決手段】特定の構造及び当量質量EWを有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含み、イオン伝導度が特定の範囲に調整されたレドックスフロー二次電池用電解質膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、レドックスフロー二次電池に関する。
レドックスフロー二次電池とは、電気を備蓄及び放電するものであり、電気使用量の平準化のために使用される大型の据え置き型電池に属する。レドックスフロー二次電池は、正極と正極活物質を含む正極電解液(正極セル)と、負極と負極活物質を含む負極電解液(負極セル)とを、隔膜で隔離して、両活物質の酸化還元反応を利用して充放電し、該両活物質を含む電解液を、備蓄タンクから電解層に流通させて電流を取り出し利用される。
電解液に含まれる活物質としては、例えば、鉄−クロム系、クロム−臭素系、亜鉛−臭素系や、電荷の違いを利用するバナジウム系などが用いられている。
特に、バナジウム系電池は起電力が高く、バナジウムイオンの電極反応が早い、副反応である水素発生量が少ない、出力が高い等の利点を有するため、開発が本格的に進められている。
また、隔膜については、両極の活物質を含む電解液が混ざらないように工夫されている。しかしながら、従来の隔膜は、酸化されやすい、電気抵抗を充分低くしなければいけない等の問題点がある。電流効率を上げるためには、それぞれのセル電解液に含まれるそれぞれの活物質イオンの透過(両極電解液中の電解質のコンタミ)をお互いにできるだけ防ぎ、かつ電荷を運ぶプロトン(H+)は充分透過しやすい、イオン選択透過性に優れたイオン交換膜が要求される。
このバナジウム系の二次電池では、負極セルにおけるバナジウムの2価(V2+)/3価(V3+)と、正極セルにおけるバナジウムの4価(V4+)/5価(V5+)の酸化還元反応を利用している。従って、正極セルと負極セルの電解液が同種の金属イオン種であるため、隔膜を透して電解液が混合されても、充電により正常に再生されるので、他種の金属種に比べて大きな問題にはなり難い。とはいえ、無駄になる活物質が増え、電流効率が低下するので、できるだけ活物質イオンは自由に透過しないほうがよい。
従来、様々なタイプの隔膜(本明細書においては単に「膜」とも略される場合がある。)を利用した電池があり、例えば、電解液のイオン差圧及び浸透圧をドライビングフォースとして自由に通過させる多孔膜を用いた電池が報告されている。例えば、引用文献1には、そのような多孔膜としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔膜、ポリオレフィン(PO)系多孔膜、PO系不織布などが開示されている。
引用文献2には、セル間の圧力差で両電解液が移動しないように、多孔膜と含水性ポリマーを組み合わせた複合膜が開示されている。
引用文献3には、親水性の水酸基を有する無孔の親水性ポリマー膜として、セルロース又はエチレンービニルアルコール共重合体の膜を利用することが開示されている。
引用文献4には、炭化水素系イオン交換樹脂としてポリスルホン系膜(陰イオン交換膜)の利用により、その電流効率が80%〜88.5%となり、耐ラジカル酸化性にも優れることが記載されている。
引用文献5には、フッ素系又はポリスルホン系イオン交換膜を隔膜として使用し、電流効率を上げるために正極の多孔性炭素に高価な白金を担持させて反応効率を上げる方法が開示されている。
引用文献6には、ポリプロピレン(PP)などの多孔膜の孔に親水性樹脂を塗布した、鉄−クロム系レドックスフロー電池が開示されている。当該文献の実施例には、100μmの厚さのPP製多孔膜の両表面に、数μmの厚さでフッ素系イオン交換樹脂(デュポン社製、商標ナフィオン)を被覆した膜の例がある。ここで、ナフィオンは、−(CF2−CF2)−で表される繰り返し単位と、−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)n−(CF2m−SO3H))−で表される繰り返し単位と、を含む共重合体において、X=CF3、n=1、m=2のときの共重合体である。
引用文献7には、特定の面格子を有する2層の液透過性多孔質炭素電極を用いて、電極側からの工夫で、セル電気抵抗をできるだけ下げ、効率を上げたバナジウム型電池の例が開示されている。
引用文献8には、抵抗が低く、プロトン透過性に優れる、ピリジニウム基(陽イオンのN+を利用)を有する陰イオン交換型の、スチレン系及びジビニルベンゼンと共重合した、架橋型重合体を隔膜として用いたバナジウム系レドックスフロー電池の例が開示されている。
引用文献9には、カチオン系イオン交換膜(フッ素系高分子又は他の炭化水素系高分子)とアニオン系イオン交換膜(ポリスルホン系高分子)とを交互に積層した構造を有する膜を利用し、正極電解液側にカチオン交換膜側を接する方法により、イオン選択透過性を改良した例が開示されている。
引用文献10には、耐薬品性に優れ、低抵抗でイオン選択透過性に優れた膜として、多孔質PTFE系樹脂からなる多孔質基材に、2個以上の親水基を有するビニル複素環化合物(アミノ基を有するビニルピロリドン等)の繰り返し単位を有する架橋重合体を複合してなるアニオン交換膜の使用例が開示されている。その原理については、イオン径及び電荷量の多い金属カチオンが電位差をかけられた時は、各カム表面のカチオンにより電気的反発を受けて金属カチオンの膜透過が阻害されるが、イオン径も小さく、1価であるプロトン(H+)は陽イオンを有する隔膜を容易に拡散透過できるので電気抵抗が小さくなると記載されている。
特開2005−158383号公報 特公平6−105615号公報 特開昭62−226580号公報 特開平6−188005号公報 特開平5−242905号公報 特開平6−260183号公報 特開平9−92321号公報 特開平10−208767号公報 特開平11−260390号公報 特開2000−235849号公報
しかしながら、引用文献2に開示された複合膜は、電気抵抗が高く、また、各イオンは多孔膜ほどではないが、自由に拡散してしまうという問題がある。引用文献3に開示された膜についても、上記と同様の問題があり、耐酸化耐久性にも劣る。
引用文献4に開示された電池は、電流効率が未だ不十分であり、長期にわたる硫酸電解液中での耐酸化劣化性にも劣る。また、同文献の比較例に、テフロン(登録商標)系イオン交換膜としての電流効率が64.8〜78.6%であることが記載されており、性能的にも問題を有する。
引用文献5についても、上記と同様の問題点を解決できておらず、また、大型設備では、価格的にも高価となってしまうという問題がある。
引用文献6に開示された膜は、塗布膜の厚みを極薄(数μm)にしないと、内部抵抗が増加すると記載されている。また、イオン選択透過性を向上させる工夫については一切記載されていない。
引用文献8に開示された電池は、電流効率が不十分であり、また、酸化劣化するため長期使用に関しても問題点を有している。
引用文献9に開示された膜は、電気抵抗が高くなるという問題点を有している。
引用文献10の実施例に示された結果では、膜の内部抵抗(電気抵抗)が十分低いとは言えず、また、長期使用では耐酸化劣化が問題となる。
従来のバナジウム系レドックスフロー電池用の電解質(隔)膜は、両電極の電解液の活物質であるバナジウムイオンの低電価グループのイオンを大多数とするセルと、高電価のイオングループを大多数とする各セル(負極側、正極側)それぞれにおいて、対極(セル)への、拡散移動透過を抑えて、尚且つ、目的の充放電の操作に伴い、プロトン(H+)を選択的に透過させることを目的として使用されている。しかしながら、現在、その性能は十分であると言えない。
炭化水素系樹脂を主とした膜基材としては、両セルの主役の電解質を含む電解液を単に隔離しただけの単なるイオン選択性のない多孔膜や、イオン選択性のない(無孔の)親水性膜基材、多孔膜に親水性膜基材を埋め込むか又は被覆したもの等が用いられている。また、膜自身が各種アニオン基を有する所謂カチオン交換膜、又は多孔質膜基材の孔に、カチオン交換性樹脂を被覆又は埋め込んだ複合膜、同様に膜自身がカチオン基を有するアニオン交換膜、同様に多孔膜基材に、アニオン交換性樹脂を被覆又は埋め込んだ複合膜、両者の積層型等が隔膜として用いられており、それぞれの特徴を生かした研究が行われている。
隔膜としては、電気抵抗(プロトン透過性に主に依存)と、主役の活物質である、金属イオン(多価カチオン)透過性阻止という、相反する2つの性能を十分に満足するイオン交換樹脂隔膜は、これまで開発されていない。フッ素系イオン交換樹脂に関しても、プロトン(H+)透過性に優れ、且つ、活物質イオンの透過を抑制するという合矛盾する性質に対する工夫が十分に検討されておらず、低電気抵抗、長期にわたる耐酸化劣化性(耐ヒドロキシラジカル性)などを充分に満足するレドックスフロー電池用電解質膜は開発されていない。
上記事情に鑑み、本発明は、プロトン(H+)透過性を悪化させることなく活物質のイオン透過性を抑制することのできる優れたイオン選択透過性を有し、且つ電気抵抗も低く、電流効率にも優れたレドックスフロー二次電池用電解質膜及びそれを用いたレドックスフロー二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)を有するフッ素系高分子電解質ポリマーを含むことにより、優れたイオン選択透過性を有し、且つ電気抵抗も低く、電流効率にも優れた、レドックスフロー二次電池用電解質膜及びそれを用いたレドックスフロー二次電池を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、
炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、
前記正極セル室と、前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、
を含む電解槽を有し、
前記正極セル室は活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室は活物質を含む負極電解液を含み、
前記電解液中の活物質の価数変化に基づき充放電するレドックスフロー二次電池であって、
前記電解質膜がフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含み、
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300g/eqであるレドックスフロー二次電池。
[2]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(1)で表される構造を有する重合体を含む、上記[1]記載のレドックスフロー二次電池。
−[CF2CX12a−[CF2−CF(CF2−O−(CFR1b−(CFR2c−X3)]g− (1)
(式中、X1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X3は、COOZ、SO3Z、PO32又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH31、NH212、NHR123、NR1234)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X3がPO32である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。)
[3]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(2)で表される繰り返し単位と、下記式(3)で表される繰り返し単位と、を有する重合体を含む、上記[1]記載のレドックスフロー二次電池。
(式中、Q1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Q2は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Rf2は、パーフルオロアルキル基であり、Zは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、tは、0〜3の整数である。)
[4]
テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を更に有する、上記[3]記載のレドックスフロー二次電池。
[5]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記モノマーAに基づく繰り返し単位と下記モノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体を含む、上記[1]記載のレドックスフロー二次電池。
モノマーA:ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマー
モノマーB:CF2=CF−(OCF2CFY1m−Op−(CF2n−SO22で表されるパーフルオロビニルエーテル
(式中、Y1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1であり、m+p>0、Y2はOH又はNHSO2ZであってZはエーテル性の酸素原子を含んでもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。)。
[6]
前記モノマーAに基づく繰り返し単位が、下記式(5)で表されるいずれか1種以上の繰り返し単位である、上記[5]記載のレドックスフロー二次電池。
(式中、nは1〜4の整数であり、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であり、X1、X2はそれぞれ独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、(CX12nにおいてnが2以上である場合は、炭素ごとにX1とX2の組合せは異なっていてもよい。)。
[7]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーは、さらに、下記の(A)〜(F)のいずれかの化合物をコモノマーとして共重合したものであり、かつ前記コモノマーに基づく重合単位を反応させて架橋されたものである、上記[1]〜[6]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
(A)二重結合を2個有するパーフルオロ不飽和化合物。
(B)臭素原子を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(C)カルボン酸基、カルボン酸塩基又はカルボン酸エステル基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(D)水酸基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(E)シアノ基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(F)シアナト基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
[8]
前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、上記[1]〜[7]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
[9]
前記電解質膜がフッ素系微多孔膜からなる補強材を有する、上記[1]〜[8]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
[10]
前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部のポリアゾール系化合物を含む、上記[1]〜[9]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
[11]
前記ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、上記[10]記載のレドックスフロー二次電池。
[12]
前記ポリアゾール系化合物は、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、上記[10]又は[11]記載のレドックスフロー二次電池。
[13]
前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記ポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、上記[10]〜[12]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
[14]
前記イオン交換樹脂組成物がCe系添加剤、Co系添加剤、及びMn系添加剤からなる群から選択されるいずれか1種以上を含む、上記[1]〜[13]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
[15]
前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部のポリフェニレンエーテル樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド樹脂を含む、上記[1]〜[14]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
[16]
前記レドックスフロー二次電池は、バナジウムを含む硫酸電解液を、正極及び負極電解液として用いたバナジウム系レドックスフロー二次電池である、上記[1]〜[15]のいずれか記載のレドックスフロー二次電池。
本発明のレドックスフロー二次電池用電解質膜は、優れたイオン選択透過性を有している。従って、高いプロトン(水素イオン)透過性を有し、低電気抵抗であり、また電解液中の活物質イオンの透過を抑制でき、更には、高い電流効率を発揮する。
本実施形態におけるレドックスフロー二次電池の概要図の一例を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。
本実施形態におけるレドックスフロー二次電池は、
炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、
炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、
前記正極セル室と、前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、
を含む電解槽を有し、
前記正極セル室は活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室は活物質を含む負極電解液を含み、
前記電解液中の活物質の価数変化に基づき充放電するレドックスフロー二次電池であって、
前記電解質膜がフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含み、
前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWが300〜1300g/eqである。
図1は、本実施形態におけるレドックスフロー二次電池の概要図の一例を示す。本実施形態におけるレドックスフロー二次電池10は、炭素電極からなる正極1を含む正極セル室2と、炭素電極からなる負極3を含む負極セル室4と、前記正極セル室2と、前記負極セル室4とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜5と、を含む電解槽6を有し、前記正極セル室2は活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室4は活物質を含む負極電解液を含む。活物質を含む正極電解液及び負極電解液は、例えば、正極電解液タンク7及び負極電解液タンク8によって貯蔵され、ポンプ等によって各セル室に供給される。また、レッドクスフロー二次電池によって生じた電流は、交直変換装置9を介して、直流から交流に変換されてもよい。
本実施形態におけるレドックスフロー二次電池は、液透過性で多孔質の集電体電極(負極用、正極用)を隔膜の両側にそれぞれ配置し、押圧でそれらを挟み、隔膜で仕切られた一方を正極セル室、他方を負極セル室とし、スペーサーで両セル室の厚みを確保した構造を有する。
バナジウム系レドックスフロー二次電池の場合、正極セル室には、バナジウム4価(V4+)及び同5価(V5+)を含む硫酸電解液からなる正極電解液を、負極セル室には、バナジウム3価(V3+)及び同2価(V2+)を含む負極電解液を流通させることにより、電池の充電及び放電が行われる。このとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するためV4+がV5+に酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子によりV3+がV2+に還元される。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H+)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H+)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれる。放電時には、この逆の反応が進む。この時の電流効率(%)は、放電電力量を充電電力量で除した比率(%)で表され、両電力量は、電池セルの内部抵抗と隔膜のイオン選択性及びその他電流損失に依存する。内部抵抗の減少は電圧効率を向上させ、イオン選択性の向上及びその他電流損失の低減は、電流効率を向上させるので、レドックスフロー二次電池においては、重要な指標となる。
本実施形態におけるレドックスフロー二次電池用電解質膜は、特定の当量質量EWを有するフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含む。
本実施形態において「主体とする」とは、樹脂組成物中に該当成分が、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%含まれることをいう。
[フッ素系高分子電解質ポリマー]
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、下記式(1)で表される構造を有する重合体(以下、「重合体A」とも言う。)を含んでいてもよい。
−[CF2CX12a−[CF2−CF(CF2−O−(CFR1b−(CFR2c−X3)]g− (1)
式中、X1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X3は、COOZ、SO3Z、PO32又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH31、NH212、NHR123、NR1234)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X3がPO32である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。
1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。X1及びX2としては、ポリマーの化学的安定性の観点から、フッ素原子、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基が好ましい。
3は、COOZ、SO3Z、PO32又はPO3HZを示す。本明細書においては、X3を、イオン交換基ともいう。
Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH31、NH212、NHR123、NR1234)を示す。ここで、アルカリ金属原子としては、特に限定されず、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。また、アルカリ土類金属原子としては、特に限定されず、カルシウム原子、マグネシウム原子等が挙げられる。また、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X3がPO32である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。X3としては、ポリマーの化学的安定性の観点から、SO3Zが好ましい。
1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。
重合体Aとしては、本発明の効果がより顕著となる傾向にあるため、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA樹脂)であることが好ましい。本実施形態におけるPFSA樹脂は、テフロン(登録商標)骨格連鎖からなる主鎖に、側鎖としてパーフルオロカーボンと、それぞれの側鎖に1個ないし2個以上のスルホン酸基(場合により一部が塩の形になっていてもよい)が結合した樹脂である。
本実施形態における重合体Aは、
−(CF2−CF2)−で表される繰り返し単位と、
式(2):CF2=CF−(CF2CFXO)n−[A](式中、Xは、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示す。[A]は(CF2m−W(mは0〜6の整数を示す。ただし、nとmは同時に0にならない。WはSO3Hを示す。)、又は
式(3):CF2=CF−(CF2P−CF(−O−(CF2K−W)若しくはCF2=CF−(CF2P−CF(−(CF2L−O−(CF2m−W)(式中、Pは0〜5の整数を示し、kは1〜5の整数を示し、Lは1〜5の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。ただし、kとLは同じでも、異なっていてもよく、P、K、Lは同時に0とはならない。)で表される繰り返し単位、
とからなることが好ましい。
PFSA樹脂は、−(CF2−CF2)−で表される繰り返し単位と、−(CF2−CF(−(CF2CFXO)n−(CF2m−SO3H))−で表される繰り返し単位(式中、Xは、F又はCF3を示し、nは0〜5の整数を示し、mは0〜12の整数を示す。ただし、nとmは同時に0にならない。)と、を含む共重合体であることがより好ましい。PFSA樹脂が上記構造を有する共重合体であり、且つ所定の当量質量EWを有する場合、得られる電解質膜は十分な親水性を有し、且つ酸化劣化で生成するラジカル種への耐性が強くなる傾向にある。
さらに、PFSA樹脂の前記−(CF2−CF(−(CF2CFXO)n−(CF2m−SO3H))−で表される繰り返し単位中のnが0であり、mが1〜6の整数であるもの、又は式(3)で表されるCF2=CF−(CF2P−CF(−O−(CF2K−W)及びCF2=CF−(CF2P−CF(−(CF2L−O−(CF2m−W)の両方の繰り返し単位を含む場合、当量質量EWが低くなり、得られる電解質膜の親水性が高くなる傾向にある。
本実施形態における重合体Aとしては、本発明の効果がより顕著となる傾向にあるため、下記式(4)で表される構造を有するパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)であることが好ましい。
−[CF2CF2a−[CF2−CF((−(CF2m−X4)]g− (4)
(式中、a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示し、mは1〜6の整数を示し、X4はSO3Hを示す。)
(重合体Aの製造方法)
本実施形態における重合体Aは、例えば、樹脂前駆体を製造した後、それを加水分解処理することにより得ることができる。
PFSA樹脂の場合、例えば、下記一般式(5)で表されるフッ化ビニルエーテル化合物と、下記一般式(6)で表されるフッ化オレフィンモノマーとの共重合体からなるPFSA樹脂前駆体を加水分解することにより得られる。
CF2=CF−(CF2CFXO)n−[A] (5)
(式中、Xは、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示し、Aは(CF2m−W、又はCF2=CF−(CF2P−CF((−O−(CF2K−W)若しくはCF2=CF−(CF2P−CF(−(CF2L−O−(CF2m−W)を示し、pは0〜12の整数を示し、mは0〜6の整数を示し(ただし、nとmは同時に0にならない。)、kは1〜5の整数を示し、Lは1〜5の整数を示し(ただし、nとL又はKは同時に0とならない。)、Wは加水分解によりSO3Hに転換し得る官能基を示す。)
CF2=CFZ (6)
(式中、Zは、H、Cl、F、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。)
上記式(5)中の加水分解によりSO3Hに転換しうる官能基を示すWとしては、特に限定されないが、SO2F、SO2Cl、SO2Brが好ましい。また、上記式において、X=CF3、W=SO2F、Z=Fであることがより好ましい。中でも、n=0、m=0〜6の整数(ただし、nとmは同時に0にならない。)であり、X=CF3、W=SO2F、Z=Fであることが、高い親水性及び高い樹脂濃度の溶液が得られる傾向にあるため、特に好ましい。
本実施形態における樹脂前駆体は、公知の手段により合成することができる。例えば、ラジカル発生剤の過酸化物を利用した重合法等にて、含フッ素炭化水素等の重合溶剤を使用し、上記イオン交換基前駆体を有するフッ化ビニル化合物とテトラフルオロエチレン(TFE)などのフッ化オレフィンのガスを充填溶解して反応させることにより重合する方法(溶液重合)、含フッ素炭化水素等の溶媒を使用せずフッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として重合する方法(塊状重合)、界面活性剤の水溶液を媒体として、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを充填して反応させることにより重合する方法(乳化重合)、界面活性剤及びアルコール等の助乳化剤の水溶液に、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填、乳化して反応させることにより重合する方法(エマルジョン重合)、及び懸濁安定剤の水溶液にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填懸濁して反応させることにより重合する方法(懸濁重合)等が知られている。
本実施形態においては上述したいずれの重合方法で作製されたものでも使用することができる。また、TFEガスの供給量等の重合条件を調整することにより得られる、ブロック状やテーパー状の重合体でもよい。
また、樹脂前駆体は、重合反応中に樹脂分子構造中に生成した不純末端や、構造上酸化されやすい部分(CO基、H結合部分等)を、公知の方法によりフッ素ガス下で処理し、該部分をフッ化してもよい。
また、樹脂前駆体の分子量は、該前駆体を、ASTM:D1238に準拠して(測定条件:温度270℃、荷重2160g)測定されたメルトフローインデックス(MFI)の値で0.05〜50(g/10分)である。前駆体樹脂のMFIの好ましい範囲は0.1〜30(g/10分)であり、より好ましい範囲は0.5〜20(g/10分)である。
樹脂前駆体は、押し出し機を用いてノズル又はダイ等で押し出し成型した後、加水分解処理を行うか、重合した時の産出物のまま、即ち分散液状、又は沈殿、ろ過させた粉末状の物とした後、加水分解処理を行う。樹脂前駆体の形状は特に限定されるものではないが、後述の加水分解処理及び酸処理における処理速度を速める観点から、0.5cm3以下のペレット状であるか、分散液状、粉末粒子状であることが好ましく、中でも、重合後の粉末状体のものを用いることが好ましい。コストの観点からは、押し出し成型したフィルム状の樹脂前駆体を用いてもよい。
上記のようにして得られ、必要に応じて成型された樹脂前駆体は、引き続き塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解処理される。加水分解処理に使用する塩基性反応液としては、特に限定されるものではないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、モノメチルアミン及びモノエチルアミン等のアミン化合物の水溶液や、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの水溶液が特に好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を用いる場合、その含有量は特に限定されないが、反応液全体に対して10〜30質量%であることが好ましい。上記反応液は、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、アセトン及びDMSO等の膨潤性有機化合物を含有することがより好ましい。膨潤性の有機化合物の含有量は、反応液全体に対して1〜30質量%であることが好ましい。
樹脂前駆体は、前記塩基性反応液体中で加水分解処理された後、温水等で十分に水洗し、その後、酸処理が行なわれる。酸処理に使用する酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類や、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましく、これらの酸と水との混合物がより好ましい。また、上記酸類は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、加水分解処理で用いた塩基性反応液は、カチオン交換樹脂で処理すること等により、酸処理の前に予め除去してもよい。
酸処理によって樹脂前駆体はプロトン化されてイオン交換基が生成する。例えば、PFSA樹脂前駆体のWは酸処理によってプロトン化され、SO3Hとなる。加水分解及び酸処理することによって得られたフッ素系高分子電解質ポリマーは、プロトン性有機溶媒、水、又は両者の混合溶媒に分散又は溶解することが可能となる。
本実施形態のおけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、下記式(7)で表される繰り返し単位と、下記式(8)で表される繰り返し単位と、を有する重合体(以下、「重合体B」とも言う。)を含んでいてもよい。
式中、Q1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Q2は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Rf2は、パーフルオロアルキル基であり、Zは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、tは、0〜3の整数である。単結合は、CYの炭素原子とSO2のイオウ原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
本実施形態においては、式(7)で表される繰り返し単位を単位(7)と記す。他の式で表される繰り返し単位も同様に記す。繰り返し単位は、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。また、本実施形態においては、式(u1)で表される化合物を化合物(u1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
単位(7):
1、Q2のパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。パーフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、重合体Bの当量質量の増加が抑えられ、電解質膜のプロトン伝導率の低下が抑えられる。
2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。Q2がエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であれば、Q2が単結合である場合に比べ、長期にわたってレドックスフロー二次電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。Q1、Q2の少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
f1のパーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。パーフルオロアルキル基としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等が好ましい。単位(7)が2つ以上のRf1を有する場合、Rf1は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
−(SO2X(SO2f1a-+基は、イオン性基である。−(SO2X(SO2f1a-+基としては、スルホン酸基(−SO3 -+基)、スルホンイミド基(−SO2N(SO2f1-+基)、またはスルホンメチド基(−SO2C(SO2f12-+基)が挙げられる。
Yとしては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
単位(7)としては、単位(M1)が好ましく、重合体Hの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(M11)、単位(M12)または単位(M13)がより好ましい。
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基である。
単位(8):
f2のパーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜12が好ましい。炭素数が12以下であれば、重合体Bの当量質量の増加が抑えられ、電解質膜のプロトン伝導率の低下が抑えられる。Zとしては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
単位(8)としては、単位(M2)が好ましく、重合体Bの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(M21)または単位(M22)がより好ましい。
ただし、qは、1〜12の整数である。
他の単位:
重合体Bは、さらに、後述する他のモノマーに基づく繰り返し単位(以下、他の単位と記す。)を有していてもよい。他の単位の割合は、重合体Bの、当量質量が後述の好ましい範囲となるように、適宜調整すればよい。
他の単位としては、電解質膜の機械的強度および化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーに基づく繰り返し単位が好ましく、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位がより好ましい。テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位の割合は、電解質膜の機械的強度および化学的な耐久性の点から、重合体Bを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位の割合は、電解質膜の電気抵抗の点から、重合体Bを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、92モル%以下が好ましく、87モル%以下がより好ましい。
重合体Bは、単位(7)、単位(8)、他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。重合体Bは、電解質膜の化学的な耐久性の点から、パーフルオロポリマーであることが好ましい。
重合体Bにおける単位(8)の割合は、単位(8)/(単位(7)+単位(8))とした場合、0.05〜0.30(モル比)が好ましく、0.075〜0.25がより好ましく、0.1〜0.2がさらに好ましい。単位(8)の割合が0.05以上であれば、電解質膜の湿潤状態と乾燥状態との繰り返しに対する耐久性が高くなり、固体高分子形燃料電池を長期にわたって安定して運転できる。単位(8)の割合が0.30以下であれば、電解質膜の含水率が高すぎることなく、また、軟化温度およびガラス転移温度も低くなりすぎることなく、電解質膜の機械的強度を保持できる。
重合体Bの重量平均分子量は、1×104〜1×107が好ましく、5×104〜5×106がより好ましく、1×105〜3×106がさらに好ましい。重合体Bの重量平均分子量が1×104以上であれば、膨潤度等の物性が経時的に変化しにくく、電解質膜の耐久性が充分となる。重合体Bの重量平均分子量が1×107以下であれば、溶液化および成形が容易となる。
重合体Bの重量平均分子量は、TQ値を測定することにより評価できる。TQ値(単位:℃)は、ポリマーの分子量の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm3/秒となる温度である。たとえば、TQ値が200〜300℃であるポリマーは、ポリマーを構成する繰り返し単位の組成で異なるが、重量平均分子量が1×105〜1×106に相当する。
(重合体Bの製造方法)
重合体Bは、たとえば、下記工程を経て製造できる。
(I)化合物(u1)、化合物(u2)、および必要に応じて他のモノマーを重合し、−SO2F基を有する前駆体ポリマー(以下、「ポリマーF」と記す。)を得る工程。
(II)必要に応じて、ポリマーFとフッ素ガスとを接触させ、ポリマーFの不安定末端基をフッ素化する工程。
(III)ポリマーFの−SO2F基をスルホン酸基、スルホンイミド基、またはスルホンメチド基に変換し、重合体Bを得る工程。
(I)工程:
化合物(u1)としては、化合物(m1)が好ましく、化合物(m11)、化合物(m12)または化合物(m13)がより好ましい。
化合物(m1)は、たとえば、下記合成ルートにより製造できる。
化合物(u2)としては、化合物(m2)が好ましく、化合物(m21)または化合物(m22)がより好ましい。
化合物(u2)は、たとえば、米国特許第3291843号明細書の実施例に記載の方法等、公知の合成方法により製造できる。
他のモノマーとしては、たとえば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレンン、パーフルオロα−オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等。)、(パーフルオロアルキル)エチレン類((パーフルオロブチル)エチレン等。)、(パーフルオロアルキル)プロペン類(3−パーフルオロオクチル−1−プロペン等。)、以下の式(9)で表される化合物が挙げられる。
CF2=CF−(OCF2CFY1m−Op−(CF2n−SO2F ・・・(9)
ここで、Y1は、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、かつ、m+p>0である。
他のモノマーのうち、電解質膜の機械的強度および化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーが好ましく、テトラフルオロエチレンがより好ましい。
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法が挙げられる。また、液体または超臨界の二酸化炭素中にて重合を行ってもよい。重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、ラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。
重合温度は、通常、10〜150℃である。ラジカル開始剤としては、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられ、不安定末端基が少ないポリマーFが得られる点から、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類等のパーフルオロ化合物が好ましい。
溶液重合法にて用いる溶媒としては、20〜350℃の沸点を有する溶媒が好ましく、40〜150℃の沸点を有する溶媒がより好ましい。溶媒としては、パーフルオロトリアルキルアミン類(パーフルオロトリブチルアミン等。)、パーフルオロカーボン類(パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン等。)、ハイドロフルオロカーボン類(1H,4H−パーフルオロブタン、1H−パーフルオロヘキサン等。)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等。)が挙げられる。
溶液重合法においては、溶媒中にモノマー、ラジカル開始剤等を添加し、溶媒中にてラジカルを生起させてモノマーの重合を行う。モノマーの添加は、一括添加であってもよく、逐次添加であってもよく、連続添加であってもよい。
懸濁重合法においては、水を分散媒として用い、該分散媒中にモノマー、非イオン性のラジカル開始剤等を添加し、分散媒中にてラジカルを生起させてモノマーの重合を行う。非イオン性のラジカル開始剤としては、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキシド類、ビス(フルオロアルキル)パーオキシド類、アゾ化合物類等が挙げられる。
分散媒には、助剤として前記溶媒;懸濁粒子の凝集を防ぐ分散安定剤として界面活性剤;分子量調整剤として炭化水素系化合物(ヘキサン、メタノール等。)等を添加してもよい。
(II)工程:
不安定末端基とは、連鎖移動反応によって形成される基、ラジカル開始剤に基づく基等であり、具体的には、−COOH基、−CF=CF2基、−COF基、−CF2H基等である。不安定末端基をフッ素化または安定化することにより、ポリマーHの分解が抑えられ、電解質膜の耐久性が向上する。
フッ素ガスは、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して用いてもよく、希釈せずにそのまま用いてもよい。ポリマーFとフッ素ガスとを接触させる際の温度は、室温〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましく、100〜220℃がさらに好ましく、150〜200℃が特に好ましい。ポリマーFとフッ素ガスとの接触時間は、1分〜1週間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
(III)工程:
たとえば、−SO2F基をスルホン酸基に変換する場合は、(III−1)工程を行い、−SO2F基をスルホンイミド基に変換する場合は、(III−2)工程を行う。
(III−1)ポリマーFの−SO2F基を加水分解してスルホン酸塩とし、スルホン酸塩を酸型化してスルホン酸基に変換する工程。
(III−2)ポリマーFの−SO2F基をイミド化して塩型のスルホンイミド基(−SO2NMSO2f1基)(ここで、Mは、アルカリ金属または1〜4級のアンモニウムである。)とし、さらに酸型化して酸型のスルホンイミド基(−SO2NHSO2f1基)に変換する工程。
(III−1)工程:
加水分解は、たとえば、溶媒中にてポリマーFと塩基性化合物とを接触させて行う。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。溶媒としては、水、水と極性溶媒との混合溶媒等が挙げられる。極性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール等。)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。酸型化は、たとえば、スルホン酸塩を有するポリマーを、塩酸、硫酸等の水溶液に接触させて行う。加水分解および酸型化は、通常、0〜120℃にて行う。
(III−2)工程:
イミド化としては、下記方法が挙げられる。
(III−2−1)−SO2F基と、Rf1SO2NHMとを反応させる方法。
(III−2−2)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、MF、アンモニアまたは1〜3級アミンの存在下で、−SO2F基と、Rf1SO2NH2とを反応させる方法。
(III−2−3)−SO2F基と、Rf1SO2NMSi(CH33とを反応させる方法。
酸型化は、塩型のスルホンイミド基を有するポリマーを、酸(硫酸、硝酸、塩酸等。)で処理することにより行う。
なお、イオン性基がスルホンイミド基である重合体Bは、化合物(u1)の−SO2F基をスルホンイミド基に変換した化合物(u1’)と、化合物(u2)と、必要に応じて他のモノマーと重合させることによっても製造できる。化合物(u1’)は、化合物(u1)の不飽和結合に塩素または臭素を付加し、−SO2F基を(III−2)工程と同様の方法でスルホンイミド基に変換した後、金属亜鉛を用いて脱塩素または脱臭素反応を行うことにより製造できる。
以上説明した重合体Bにあっては、単位(7)と単位(8)とを有するため、電気抵抗が低く、従来の電解質膜用のポリマーよりも高い軟化温度を有し、かつ柔軟性が高い。該理由は、下記の通りである。
単位(7)の側鎖は二つのイオン性基を有しており、一つのイオン性基を側鎖に有する従来ポリマーに比べてイオン性基の熱運動性が抑えられている。そのため、単位(7)を有する重合体Bの軟化温度が高くなると考えられる。また、単位(8)の側鎖は、ポリマーの主鎖の屈曲性を高める効果があるため、単位(7)を有し、かつ単位(8)を有さないポリマーに比べて、単位(7)と単位(8)とを有する重合体Bは、柔軟性が高いと考えられる。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、下記モノマーAに基づく繰り返し単位と下記モノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体(以下、「重合体C」とも言う。)を含んでいてもよい。
モノマーA:ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマー
モノマーB:CF2=CF−(OCF2CFY1m−Op−(CF2n−SO22で表されるパーフルオロビニルエーテル
式中、Y1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1であり、m+p>0、Y2はOH又はNHSO2ZであってZはエーテル性の酸素原子を含んでもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。
重合体Cにおける環構造は特に限定されないが、例えば下式(10)で表わされる環構造が好ましい。式中、nは1〜4の整数であり、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であり、X1、X2はそれぞれ独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、(CX12)nにおいてnが2以上である場合は、炭素ごとにX1とX2の組合せは異なっていてもよい。いずれの環構造の場合にも4〜7員環であることが好ましく、環の安定性を考慮すると5員環又は6員環であることが特に好ましい。
重合体Cを得るためのコモノマーの環構造を有するモノマーとしては、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(以下、PDDという。)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)(以下、MMDという)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール等を例示できる。
重合体Cを得るためのコモノマーの環化重合性モノマーとしては、パーフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)(以下、BVEという。)、パーフルオロ[(1−メチル−3−ブテニル)ビニルエーテル]、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、1,1’−[(ジフルオロメチレン)ビス(オキシ)]ビス[1,2,2−トリフルオロエテン]等を例示できる。
上述の環構造を有するモノマー又は環化重合性モノマーに基づく繰り返し単位を具体的に示すと、例えば、PDDに基づく繰り返し単位は式(11)、BVEに基づく繰り返し単位は式(12)、MMDに基づく繰り返し単位は式(13)で示される。本明細書において「脂肪族環構造を有するパーフルオロポリマー」とは、このように不飽和結合を含まない環構造を有する繰り返し単位を含む含パーフルオロポリマーを示すものとする。
環構造を有するモノマー又は環化重合性モノマーと反応させるスルホン酸基、スルホンイミド基又はそれらの基の前駆体基を有するモノマーとしては、−SO2F基を有するパーフルオロビニルエーテルが好ましく挙げられる。具体的には、CF2=CF−(OCF2CFY1m−Op−(CF2n−SO2Fで表されるパーフルオロビニルエーテル(式中、Y1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1であり、m+p>0である。)が好ましい。上記パーフルオロビニルエーテルのなかでも、式(14)〜(16)の化合物が好ましく挙げられる。ここで、式(14)〜(16)中、qは1〜8の整数であり、rは1〜8の整数であり、sは2又は3である。−SO2F基を有するモノマーを用いて重合した場合、通常加水分解、酸型化処理又は公知の反応を用いて−SO3H基又はスルホンイミド基に変換して電解質材料とされる。すなわち、電解質材料となる本ポリマー中にはCF2=CF−(OCF2CFY1m−Op−(CF2n−Zに基づく繰り返し単位(Zはスルホン酸基又はスルホンイミド基)が含まれることが好ましい。
また、上記モノマー以外に下記式(17)〜(19)で表わされるモノマーも使用できる。ただし、式中、Y2、Y3はそれぞれフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、t、xは0〜2の整数であり、u、v、wは1〜12の整数である。さらに具体的に示すと式(20)〜(23)で表わされるモノマーが挙げられる。
重合体Cとしては、特に、パーフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール及びパーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)からなる群から選択されるモノマーに基づく繰り返し単位と、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテン)スルホン酸(CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22SO3H)又はパーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテン)スルホン酸(CF2=CFO(CF22SO3H)に基づく繰り返し単位と、を含むポリマーであることが好ましい。
重合体Cは、上述の環状モノマー又は環化重合性モノマーと、例えば式(14)〜(16)で表わされるような−SO2F基を有するモノマーとの共重合の工程を経て合成されるが、強度の調整などのため、さらにテトラフルオロエチレン等の他のラジカル重合可能なモノマーを共重合させてもよい。重合体Cは、環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位とスルホン酸基又はスルホンイミド基を有するモノマーに基づく繰り返し単位のみから構成される場合、その骨格は剛直になりやすく、燃料電池の膜や触媒層に用いると膜や触媒層が脆くなりやすい場合もあるためである。
なお、重合体Cは、重合後、フッ素化の工程を経ることにより撥水性に優れ、レドックスフロー二次電池のカソードの電解質として使用する場合、レドックスフロー二次電池の出力を向上させ、長期にわたり安定した特性を示すが、他のモノマーを共重合する場合は、その優れた出力特性を損なわないように、本重合体中での当該他のモノマーに基づく繰り返し単位の含有量が質量比で35%以下、特に20%以下になるようにするのが好ましい。
上述の共重合可能なモノマーとしては、例えば、TFE、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、エチレン等が挙げられる。また、CF2=CFORf1、CH2=CHRf2、CH2=CHCH2f2で表わされる化合物も使用できる。ただし、Rf1は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であり、枝分かれ構造であってもよく、エーテル結合性の酸素原子を含有してもよい。Rf2は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基である。これらのなかでも、パーフルオロモノマーを用いるほうがフッ素ガスとの反応が容易であり、耐久性の観点から好ましい。なかでもTFEは入手が容易で重合反応性が高いので好ましい。
上記モノマーにおいてCF2=CFORf1で表される化合物としては、CF2=CF−(OCF2CFX)y−O−Rf4で表されるパーフルオロビニルエーテル化合物が好ましい。ただし、式中、yは0〜3の整数であり、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Rf4は直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基(以下、本明細書において、Rf4は同じ意味で用いる。)である。なかでも、式(24)〜(26)で表わされる化合物が好ましく挙げられる。ただし、式中、aは1〜8の整数であり、bは1〜8の整数であり、cは2又は3である。
重合体Cを用いた膜の強度を高めるためには、重合体Cの数平均分子量は5000以上が好ましく、10000以上、さらには20000以上であるとより好ましい。また、分子量が大きすぎると成形性や後述する溶媒への溶解性が低下することがあるので、分子量は5000000以下が好ましく、2000000以下であることがより好ましい。
重合体Cにおける環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位の含有量は、0.5〜80モル%が好ましく、1〜80モル%、さらには4〜70モル%、さらには10〜70モル%であるとより好ましい。環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位は少量含まれるだけでも耐久性向上効果があるが、0.5%未満では当該効果が現れにくい場合がある。また、環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位が多いほど、本重合体は厳しい環境下(例えば高温下)での耐久性に優れる。一方、環構造を有する繰り返し単位が多すぎると、重合体中のスルホン酸基が少なくなり、イオン交換容量が小さくなって導電性が低くなるおそれがある。
また、重合体Cを電解質膜として使用する場合、特にその使用温度が100℃以上の高温になる場合がある。そのため電解質膜の軟化温度は100℃以上、さらには110℃以上、特には120℃以上であること好ましい。軟化温度は、動的粘弾性測定法により測定することができる。本明細書では、酸型化した膜について動的粘弾性測定を1Hz、昇温速度2℃/minの条件で貯蔵弾性率を測定し、50℃における接線と、貯蔵弾性率5×107Paにおける接線との交点を軟化温度としている。また、一部のポリマーについては、動的粘弾性測定が難しいものがあるため、このようなポリマーについては、TMA法により測定を行い、軟化温度とすることができる。この場合、環構造を有するモノマーに基づく繰り返し単位の含有量は、20モル%以上、さらには30モル%以上、特に40モル%以上であることが好ましい。
さらに重合体CがTFEなどの共重合可能なモノマーに基づく繰り返し単位を含む場合は、当該繰り返し単位は5〜85モル%含まれることが好ましい。5モル%より少ないと、例えば電解質膜として使用する場合に、膜の靭性が充分でなくなる場合がある。85モル%より多いと、環構造を有する繰り返し単位及びポリマー中のスルホン酸基が少なくなり、本発明で期待される効果が発揮できないおそれがある。より好ましくは10〜80モル%、さらに好ましくは10〜70モル%である。また、ポリマーの軟化温度の高いものを得るには、10〜70モル%、さらには10〜60モル%、特に10〜50モル%であることが好ましい。
また、スルホン酸基又はスルホンイミド基を有する繰り返し単位は、重合体Cのイオン交換容量が0.7〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂となるように含まれることが好ましく、0.9〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂となるように含まれるとさらに好ましい。イオン交換容量が低すぎると電解質材料としてのポリマーの導電性が低くなり、高すぎると撥水性が悪く燃料電池に使用した場合耐久性が悪くなるおそれがあり、ポリマー強度も不充分になるおそれがある。
重合体Cを得るための重合はバルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など、従来公知の方法を採用できる。重合は、ラジカルが生起する条件で行われ、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、通常のラジカル重合で用いられるラジカル開始剤を添加する方法が一般的である。重合温度は通常は20〜150℃程度である。ラジカル開始剤としては、例えばビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられる。
溶液重合では、使用する溶媒の沸点は、取扱い性の観点から、通常は20〜350℃、好ましくは40〜150℃である。使用可能な溶媒としては、上述の、重合体Cのフッ素化を含フッ素溶媒中で行う際に含フッ素溶媒の好適なものとして例示した含フッ素溶媒と同じ溶媒が挙げられる。すなわち、ポリフルオロトリアルキルアミン化合物、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロアルカン、クロロフルオロアルカン、分子鎖末端に二重結合を有しないフルオロオレフィン、ポリフルオロシクロアルカン、ポリフルオロ環状エーテル化合物、ヒドロフルオロエーテル類、フッ素含有低分子量ポリエーテル、t−ブタノール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、この他にも液体又は超臨界の二酸化炭素を用いて重合することもできる。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、さらに、下記の(A)〜(F)のいずれかの化合物をコモノマーとして共重合したものであり、かつ前記コモノマーに基づく重合単位を反応させて架橋されたものであってもよい。
(A)二重結合を2個有するパーフルオロ不飽和化合物。
(B)臭素原子を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(C)カルボン酸基、カルボン酸塩基又はカルボン酸エステル基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(D)水酸基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(E)シアノ基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(F)シアナト基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーにおいて、基本骨格を架橋する架橋部位は、通常、架橋部位を有するラジカル重合性の含フッ素不飽和化合物を共重合することにより導入される。該含フッ素不飽和化合物はフッ素含有量が多いものが好ましく、特にパーフルオロ化合物であることが好ましい。該含フッ素不飽和化合物が共重合された重合体は、熱処理などにより架橋できる。また必要に応じて架橋剤を混合してもよい。含フッ素不飽和化合物の具体例としては、以下の6種のものが例示される。
第1に、二重結合を2個有するパーフルオロ不飽和化合物が挙げられ、具体的には式27〜34の化合物等が好ましく挙げられる。なかでも式32〜34の化合物は、反応性の異なる二重結合を有しており、パーフルオロビニロキシ基の側が重合してももう一方の二重結合の重合反応性はそれよりも小さいため重合時には反応せずに架橋部位として容易に樹脂中に導入できる。
ここで、式中、hは2〜8の整数であり、iとjはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、kは0〜6の整数であり、rは0〜5の整数である。また、sは1〜8の整数であり、tは2〜5の整数であり、uは0〜5の整数である。
第2に、臭素原子を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル鎖はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が挙げられ、具体的には式35〜37の化合物等が好ましく挙げられる。なお、式35〜37及び後述する式38〜40において、v、wはそれぞれ独立に1〜5の整数である。
第3に、カルボン酸基、カルボン酸塩基又はカルボン酸エステル基(アルコキシカルボニル基等)を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル鎖はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が挙げられ、具体的には式38〜40の化合物等が好ましく挙げられる。ただし、式中、Mは炭素数1〜5のアルキル基、水素原子、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウム)原子又はNH4である。
第4に、水酸基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル鎖はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が挙げられ、具体的には式41〜43の化合物等が好ましく挙げられる。
第5に、シアノ基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル鎖はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が挙げられ、具体的には式44〜48の化合物等が好ましく挙げられる。
第6に、シアナト基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)(アルキル鎖はエーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が挙げられ、具体的には式49〜50の化合物等が好ましく挙げられる。ただし、式中Zは水素原子又はトリフルオロメチル基である。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーの架橋方法は、通常、高分子材料の架橋に用いられる方法である、加熱、放射線照射、電子線照射、光照射等が採用されるが、加熱架橋法が装置の入手しやすさや取扱いの容易さ等の点で好ましい。架橋反応を促進させるうえで過酸化物等のラジカル開始剤、トリアリルイソシアヌレート、ビスフェノール、ビスフェノールAF等の架橋剤を添加して加熱する方法を採用することもできる。必要に応じて、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の助剤を添加してもよい。
式44〜48のようなシアノ基を有する化合物や式49〜50のようなシアナト基を有する化合物を含んで共重合された共重合体を用いる場合には、別途に触媒を添加する必要はないが、必要に応じて硬化触媒として、ルイス酸類、プロトン酸類、テトラフェニルスズ、水酸化トリフェニルスズ、(C715COO)2Zn等のカルボン酸の遷移金属塩類、カルボン酸のアンモニウム塩類、過酸化物、アミン類、アミジン類、イミドイルアミジン構造を有する化合物類等から選ばれる1種以上を用いてもよい。
また、アンモニア又はアミン系化合物の活性水素の一部又は全部を他の官能基で保護したブロックドアミン化合物を触媒として添加することもできる。必要に応じて、架橋後にスルホン酸基の酸型化処理が行われる。熱硬化の温度は通常100〜400℃、好ましくは150〜350℃の温度範囲で行われる。処理時間は0.1分〜2日間、特に0.5分〜3時間が好ましい。加熱方法としては、オーブン加熱、熱プレス、赤外線加熱、高周波加熱等の方法が採用される。ポリマーの劣化を防止するため、窒素等の不活性ガス雰囲気下での処理も好ましい。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりのフッ素系高分子電解質ポリマーの乾燥質量グラム数)は、300〜1300(g/eq)に調整されている。EWの上限は、好ましくは1100(g/eq)であり、より好ましくは900(g/eq)である。EWの下限は、好ましくは400(g/eq)であり、より好ましくは450(g/eq)であり、更に好ましくは500(g/eq)である。EWが小さい方が、イオン伝導度が高くなる反面、熱水への溶解性が大きくなる場合があるため、上記のような適切な範囲内に調整されていることが好ましい。
フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWを上記範囲に調整することによって、それを含むイオン交換樹脂組成物に優れた親水性を付与することができ、その樹脂組成物を用いて得られた電解質膜は低い電気抵抗及び高い親水性、より小さなクラスター(イオン交換基が水分子を配位及び/又は吸着した微小部分)を数多く有するようになり、高い耐酸化性(耐ヒドロキシラジカル)、低い電気抵抗、及び良好なイオン選択透過性を発揮する傾向にある。
フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWは、親水性、膜の耐水性の観点から300g/eq以上であることが好ましく、親水性、膜の電気抵抗の観点から1300g/eq以下であることが好ましい。また、フッ素系高分子電解質ポリマーのEWが下限値近くである場合には、膜の側鎖のイオン交換基の一部の分子間を直接的に又は間接的に部分架橋反応させることにより樹脂を変性し、溶解性や過剰膨潤性を制御してもよい。
上記部分架橋反応としては、例えば、イオン交換基と他分子の官能基又は主鎖との反応、又はイオン交換基同士の反応、耐酸化性の低分子化合物、オリゴマー又は高分子物質等を介しての架橋反応(共有結合)等が挙げられ、場合により、塩(SO3H基とのイオン結合を含む)形成物質との反応であってもよい。耐酸化性の低分子化合物、オリゴマー又は高分子物質としては、例えば、多価アルコール類や有機ジアミン類等が挙げられる。
部分架橋反応を行う場合は、フッ素系高分子電解質ポリマーのEWが低くても良い場合がある。即ち、イオン交換基(言い換えればEW)をあまり犠牲にせずとも、水溶性が低下(耐水性が向上)すればよい。また、フッ素系高分子電解質ポリマーが低メルトフロー領域(高分子領域)であり、分子間絡みが多い場合なども同様である。
また、フッ素系高分子電解質ポリマーの加水分解前の官能基(例えば、SO2F基)は、その一部が、部分的(分子間を含む)にイミド化(アルキルイミド化など)されていてよい。
フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWは、フッ素系高分子電解質ポリマーを塩置換し、その溶液をアルカリ溶液で逆滴定することにより測定することができる。
フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EWは、フッ素系モノマーの共重合比、モノマー種の選定等により調整することができる。
上述した特許文献に記載されたフッ素系樹脂であるナフィオン(Nafion:デュポン社の登録商標)は、−(CF2−CF2)−で表される繰り返し単位と、−(CF2−CF(−O−(CF2CFXO)n−(CF2m−SO3H))−で表される繰り返し単位と、を含む共重合体において、X=CF3、n=1、m=2であり、EWが893〜1030である化合物であることが知られている。しかしながらナフィオンをレドックスフロー二次電池の電解質膜の材料として用いた場合は、親水性が不足し、電気抵抗も高く、選択イオン透過性、電流効率も悪化する傾向にある。
本実施形態における電解質膜の110℃、相対湿度50%RHにおけるイオン伝導度は0.10S/cm以上である。本実施形態における電解質膜は、好ましくは40%RHにおけるイオン伝導度が0.10S/cm以上、より好ましくは30%RHにおけるイオン伝導度が0.10S/cm以上、更に好ましくは20%RHにおけるイオン伝導度が0.10S/cm以上である。電解質膜のイオン伝導度は高いほどよいが、例えば、110℃、相対湿度50%RHにおけるイオン伝導度が1.0S/cm以下であっても、通常は、十分な性能を発揮する。電解質膜のイオン伝導度が上記範囲であると、電気抵抗が低くなり、優れた電流効率を発揮する。
本実施形態における電解質膜を形成するイオン交換樹脂組成物中に含まれるフッ素系高分子電解質ポリマーの含有量としては、好ましくは約33.3〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%、さらに好ましくは50〜99.5質量%である。
本実施形態における電解質膜を形成するイオン交換樹脂組成物には、Ce系添加剤、Co系添加剤、及びMn系添加剤からなる群から選択されるいずれか1種以上が含まれていてもよい。イオン交換樹脂組成物がCe系添加剤を含むと、イオン交換基の一部がセリウムイオン、コバルトイオン、及び/又はマンガンイオンによりイオン交換されると考えられ、その結果、イオン選択透過性及び耐酸化劣化性が向上する傾向にある。
Ce系添加剤としては、溶液中にて+3価及び/又は+4価のセリウムイオンを形成するものが好ましい。+3価のセリウムイオンを含む塩としては、硝酸セリウム、炭酸セリウム、酢酸セリウム、塩化セリウム、硫酸セリウム等が挙げられる。+4価のセリウムイオンを含む塩としては、例えば、硫酸セリウム(Ce(SO42・4H2O)、硝酸二アンモニウムセリウム(Ce(NH42(NO36)、硫酸四アンモニウムセリウム(Ce(NH44(SO44・4H2O)等が挙げられる。またセリウムの有機金属錯塩も用いることができ、そのようなセリウムの有機金属錯塩としては、セリウムアセチルアセトナート(Ce(CH3COCHCOCH33・3H2O)等が挙げられる。上記の中でも特に、硝酸セリウム、硫酸セリウムは、水溶性であり取扱いが容易であるため好ましい。
Ce系添加剤の含有量は、電解質膜中のイオン交換基の数に対するセリウムイオンの割合で、好ましくは0.02〜20%、より好ましくは0.05〜15%、更に好ましくは0.07〜10%である。Ce系添加剤の含有量が20%以下であると、イオン選択透過性が良好となる傾向にあり、0.02%以上であると、耐酸化劣化性(ヒドロキシラジカル耐性)が向上する傾向にある。
Co系添加剤としては、溶液中にて+2価及び/又は+3価のコバルトイオンを形成するものが好ましい。+2価のコバルトイオンを含む塩としては、硝酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト等が挙げられる。+3価のコバルトイオンを含む塩としては、例えば、塩化コバルト(CoCl3)、硝酸コバルト(Co(NO32)、等が挙げられる。またコバルトの有機金属錯塩も用いることができ、そのようなコバルトの有機金属錯塩としては、コバルトアセチルアセトナート(Co(CH3COCHCOCH33)等が挙げられる。上記の中でも、特に、硝酸コバルト、硫酸コバルトは、水溶性であり取扱いが容易であるため好ましい。
Mn系添加剤としては、水溶性のマンガン塩、非水溶性のマンガン塩、酸化物や水酸化物などの不溶性化合物など、各種の化合物が使用できる。マンガンの価数は+2価又は+3価である。+2価のマンガンイオンを含む塩としては、例えば、酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O)、塩化マンガン(MnCl2・4H2O)、硝酸マンガン(Mn(NO32・6H2O)、硫酸マンガン(MnSO4・5H2O)、炭酸マンガン(MnCO3・nH2O)等が挙げられる。+3価のマンガンイオンを含む塩としては、例えば、酢酸マンガン(Mn(CH3COO)3・2H2O)等が挙げられる。またマンガンの有機金属錯塩も用いることができ、そのようなマンガンの有機金属錯塩としては、マンガンアセチルアセトナート(Mn(CH3COCHCOCH32)等が挙げられる。
Co系及び/又はMn系添加剤の含有量は、電解質膜中のイオン交換基の数に対するコバルトイオン及び/又はマンガンイオンの割合で、好ましくは0.01〜50%、より好ましくは0.05〜30%、更に好ましくは0.07〜20%である。Co系及び/又はMn系添加剤の含有量が50%以下であると、イオン選択透過性が良好となる傾向にあり、0.01%以上であると、耐酸化劣化性(ヒドロキシラジカル耐性)が向上する傾向にある。
本実施形態におけるイオン交換性樹脂組成物は、上述したフッ素系高分子電解質ポリマーの他に、ポリアゾール系化合物を含有するか、それに代えて/加えて、塩基性重合体(オリゴマーなどの低分子量物質を含む)を含有すると、樹脂組成物としての化学的安定性(主に耐酸化性等)が増加する傾向にある。これらの化合物は、樹脂組成物中で微細粒子状又は分子分散に近い形でイオンコンプレックスを部分的に作りイオン架橋構造を形成する。特に、フッ素系高分子電解質ポリマーのEWが低い場合(300〜500)の場合には、耐水性と電気抵抗、又は含水クラスター径が小さくなる傾向にあるため、イオン選択透過性等のバランス面の観点から好ましい。
また、フッ素系高分子電解質ポリマーは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他、ラジカル分解性の遷移金属(Ce化合物、Mn化合物等)との、部分塩(全イオン交換基当量の0.01〜5当量%程度)を単独で又は塩基性重合体と併用してもよい。
ポリアゾール系化合物としては、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上が挙げられる。複素環の構造としては、特に限定されないが、五員環であることが好ましい。
ポリアゾール系化合物としては、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
イオン交換樹脂組成物がポリアゾール系化合物を含有する場合、ポリアゾール系化合物は強度を低下しないような分散状態であることが好ましく、海島状にモザイク状態で分散していることが好ましい。また、膜の一部表面がイオン結合を形成し、膜の内部がイオン(カチオン)状態となるように、ポリアゾール化合物は、各種酸で電離させた状態で存在してもよい。また、フッ素系高分子電解質ポリマーのイオン交換基の少なくとも一部とポリアゾール系化合物の少なくとも一部が、分子分散に近い形で反応している状態(例えば、イオン結合して、酸塩基のイオンコンプレックスを形成している状態等の化学結合している状態)がより好ましい。
イオン結合の例としては、PFSA樹脂のスルホン酸基が、ポリアゾール系化合物中のイミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基等の各反応基中の窒素原子にイオン結合している状態等が挙げられる、この状態を制御すると、水分子を中心として、PFSA樹脂のスルホン酸基と形成するイオンチャンネルであるクラスター径を制御できる。その結果、膜の電気抵抗を上げることなく、イオン選択透過性、及び耐水性、耐酸化性について、合矛盾するどれかの性能を大幅に犠牲にしなくても、優れたバランスを有する電解質膜を得ることができ、従来のものに比べて大幅に性能を向上させることができる。
フッ素系高分子電解質ポリマーに対するポリアゾール系化合物の含有量は、フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、ポリアゾール系化合物は、好ましくは0.1〜200質量部であり、より好ましくは0.5〜150質量部、さらに好ましくは1〜100質量部、特に好ましくは1〜50質量部である。ポリアゾール系化合物の含有量を上記範囲に調整することにより、良好な電気抵抗を維持しながら、優れた耐水性、強度、高耐酸化性、イオン選択透過性を有するレドックスフロー用二次電池用の電解質膜を得ることができる傾向にある。また、ポリアゾール系化合物に燐酸系化合物(単体又はポリ燐酸等)を含ませ又は反応させ、その一部をポリアゾール系化合物に結合させることにより賦活化させたものを用いてもよい。
本実施形態におけるイオン交換性樹脂組成物は、電解質膜の耐酸化性(化学的耐久性)を上げることを目的として、又はクラスター径を下げることを目的として、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を含有してもよい。PPE・PPS樹脂の添加法としては、押し出し法により混合するか又はPPE・PPS樹脂の水性溶媒分散体を、フッ素系高分子電解質ポリマーを主体とする樹脂組成物の原液分散体に混合すればよい。その添加量は、フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部である。PPE及び/又はPPS樹脂の含有量が0.1質量部以上である場合、上記効果が発揮されやすくなる傾向にあり、20質量部以下である場合、十分な膜強度が得られる傾向にある。
本実施形態におけるポリフェニレンスルフィド樹脂は、パラフェニレンスルフィド骨格を70モル%以上、好ましくは90モル%以上含むポリフェニレンスルフィド樹脂であることが好ましい。PPSの製造方法としては、特に限定されるものではなく、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えば、p−ジクロルベンゼンを、硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムまたは硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられるが、中でも、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が適当である。具体的には、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号公報および米国特許第3274165号明細書、英国特許第1160660号明細書、さらに特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5−222196号公報等に記載された方法やこれら特許等に例示された先行技術の方法で得ることができる。
PPSは、320℃における溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D(L:オリフィス長、D:オリフィス内径)=10/1で6分間保持した値)は、好ましくは1〜10,000ポイズであり、より好ましくは100〜10,000ポイズである。
さらに、PPSに酸性官能基を導入したものも好適に用いることができる。導入する酸性官能基としてはスルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、マレイン酸基、無水マレイン酸基、フマル酸基、イタコン酸基、アクリル酸基、メタクリル酸基が好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。酸性官能基の導入方法は特に限定されず、一般的な方法を用いて実施される。例えばスルホン酸基の導入については、無水硫酸、発煙硫酸などのスルホン化剤を用いて公知の条件で実施することができ、例えば、K.Hu, T.Xu, W.Yang, Y.Fu, Journal of Applied Polymer Science, Vol.91,や、 E.Montoneri, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.27, 3043−3051(1989)に記載の条件で実施できる。また、導入した酸性官能基を金属塩またはアミン塩に置換したものも好適に用いられる。金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が特に好ましい。
PPEの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875号明細書、同第3257357号明細書、同第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報及び特開昭63−152628号公報等に記載された方法で容易に製造できる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、上記したPPE単独のほかに、アタクチック、シンジオタクチックの立体規則性を有するポリスチレン(アタクチック型のハイインパクトポリスチレンも含む)を、上記したPPE成分100質量部に対して、1〜400質量部の範囲で配合したものも好適に用いることができる。
さらにポリフェニレンエーテル樹脂は、上記に挙げた各種ポリフェニレンエーテルに反応性の官能基を導入したものも好適に用いることができる。反応性の官能基としては、エポキシ基、オキサゾニル基、アミノ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、その他酸性官能基が挙げられ、中でも、酸性官能基はより好適に用いられる。導入する酸性官能基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、マレイン酸基、無水マレイン酸基、フマル酸基、イタコン酸基、アクリル酸基、メタクリル酸基が好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量は、1,000以上5,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは1,500以上1,000,000以下である。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーとしては、PFSA樹脂以外のフッ素系樹脂(カルボン酸、リン酸等を含む樹脂やその他公知のフッ素系樹脂)を用いることができる。これらの樹脂を2種以上用いる場合は、溶媒に溶解又は媒体に分散させて混合してもよく、樹脂前駆体同士を押し出し混合してもよい。
電解質膜の平衡含水率は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、上限としては、80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。電解質膜の平衡含水率が5質量%以上であると、膜の電気抵抗や電流効率、耐酸化性、イオン選択透過性が良好となる傾向にある。一方、平衡含水率が50質量%以下であると、膜の寸法安定性や強度が良好となり、また水溶解性成分の増加を抑制できる傾向にある。電解質膜の平衡含水率は、樹脂組成物を水とアルコール系溶媒での分散液から成膜し、160℃以下で乾燥した膜を基準とし、23℃、50%関係湿度(RH)での平衡(24Hr放置)飽和吸水率(Wc)で表す。
電解質膜の平衡含水率は、上述したEWと同様の方法により調整することができる。
本実施形態における電解質膜は、フッ素系微多孔膜からなる補強材を有していてもよい。フッ素系微多孔膜としては、フッ素系高分子電解質ポリマーとの親和性が良好であれば特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる微多孔膜が挙げられ、延伸されて多孔化したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系膜が好ましい。このPTFE系膜にフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を実質的に隙間無く埋め込んだ補強膜が、薄膜の強度の観点、及び面(縦横)方向の寸法変化を抑える観点から、より好ましい。上記補強膜は、前述のイオン交換樹脂組成物を含む有機溶媒又はアルコール-水を溶媒とした、適度な該成分を有する溶質の適度な濃度の分散液を、適量多孔膜に含浸漬させて、乾燥させることにより得ることができる。
補強膜を作製する際に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、沸点が250℃以下の溶媒が好ましく、より好ましくは沸点が200℃以下の溶媒であり、さらに好ましくは沸点が120℃以下の溶媒である。中でも、水と脂肪族アルコール類が好ましく、具体的には、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール及びtert−ブチルアルコール等が挙げられる。上記溶媒は、単独の溶媒で用いても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態において好適に用いられるPTFE微多孔膜の製造方法は、特に限定されないが、電解質膜の寸法変化を抑制する観点から、延伸PTFE微多孔膜であることが好ましい。延伸PTFE微多孔膜の製造方法は、例えば特開昭51−30277号公報、特表平1−01876号公報および特開平10−30031号公報等に開示されているような公知の方法で作製することができる。具体的には、まずPTFE乳化重合水性分散液を凝析して得られたファインパウダーに、ソルベントナフサ、ホワイトオイルなどの液状潤滑剤を添加し、棒状にペースト押出を行う。その後、この棒状のペースト押出物(ケーク)を圧延して、PTFE未焼成体を得る。この時の未焼成テープを長手方向(MD方向)および/または幅方向(TD方向)に任意倍率延伸する。延伸時もしくは、延伸後、押出時に充填した液状潤滑剤を過熱もしくは抽出により除去し、延伸PTFE微多孔膜を得ることができる。
フッ素系微多孔膜は、必要に応じて、非繊維化物(例えば低分子量PTFE)、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の公知の添加剤を、本発明の課題達成及び効果を損なわない範囲で含有してもよい。
フッ素系微多孔膜は、その細孔分布の分布中心(ピーク)が、細孔径0.08μm〜5.0μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜4.0μmの範囲にあり、さらに好ましくは0.3〜3.0μmの範囲にある。ここで微多孔膜の細孔分布は、JIS−K−3832に記載されるバブルポイント法を用いたバブルポイント・ハーフドライ法により測定される値を言う。ここで細孔径の分布中心が0.08μm以上であれば、過酸化水素抑制効果等を有する添加剤や電解質溶液を充填しやすく、電解質膜にボイドが発生するのを抑制でき、フッ素系高分子電解質ポリマーの十分な充填速度が確保できるためプロセス性に優れる傾向にある。また細孔径の分布中心が5.0μm以下であれば、電解質膜の寸法変化を抑制でき、十分な膜の補強効果が得られる傾向にある。
微多孔膜の細孔分布の分布中心は、初期の発電特性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましく、0.7μm以上であることが特に好ましい。また、膜の補強効果の観点からは、微多孔膜の細孔分布の分布中心は、4.5μm以下であることが好ましく、4.0μm以下であることがより好ましく、3.5μm以下であることが更に好ましく、3.0μm以下であることが特に好ましい。
また、フッ素系微多孔膜の細孔分布は、微多孔膜の細孔径0.08μm〜5.0μmである細孔の存在量が0.5以上(数量比)であることが好ましい。ここで微多孔膜の「細孔の存在量」とは、JIS−K−3832に記載されるバブルポイント法を用いたバブルポイント・ハーフドライ法により、孔径測定範囲0.065μm〜10.0μmで測定された微多孔膜の全細孔数に対する細孔径0.08μm〜5.0μmの範囲に存在する細孔数の比をいう。微多孔膜の細孔径0.08μm〜5.0μmの細孔の存在量を0.5以上(数量比)存在するように調整すると、微多孔膜の細孔径が比較的均一となるため、微多孔膜の空隙に均一にフッ素系高分子電解質ポリマーを充填しやすくなる。その結果、フッ素系高分子電解質ポリマーが添加剤を含む場合、添加剤を膜中に均一分散させることができるため膜にボイドが発生し難く、さらに電解質膜が高化学耐久性を発現する傾向にある。また添加剤がプロトン伝導性を有しない場合には、微多孔膜の細孔径を添加剤のメディアン径と同程度〜大きくすることで、添加剤によって微多孔膜の空隙が閉塞されないように調整することができる。このことは結果として、膜中のプロトン伝導が何にも阻害されずに円滑に行われる傾向にあることを示しており、電解質膜の初期特性が向上するといった優れた効果を発現することが可能となる。
本実施形態におけるフッ素系微多孔膜の細孔径0.08μm〜5.0μmである細孔の存在量は、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、0.9以上であることがさらにより好ましく、1であることが特に好ましい。
また、フッ素系微多孔膜の細孔径0.5μm〜5.0μmである細孔の存在量(数量比)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、さらにより好ましくは0.9以上であり、特に好ましくは1である。
さらに、微多孔膜の細孔径0.7μm〜5.0μmである細孔の存在量(数量比)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、さらにより好ましくは0.9以上であり、特に好ましくは1である。
本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、その細孔分布が少なくとも2つの分布中心を有することが好ましい。フッ素系微多孔膜の細孔分布が2つの分布中心を有すると、(i)細孔径の大きい分布中心が、反応生成水の排出の促進および添加剤の易充填性といった役割を担う、(ii)細孔径の小さい分布中心が、電解質の体積膨潤を微多孔膜の機械強度により抑制する役割を担う、といった別々の役割を果たす部分を有するため、この微多孔膜を含む電解質膜は化学的耐久性と物理的耐久性を両立し易くなる傾向にある。
フッ素系微多孔膜の孔径は、製造する際の潤滑剤の種類、潤滑剤の分散性、微多孔膜の延伸倍率、潤滑剤抽出溶剤、熱処理温度、熱処理時間、抽出時間および抽出温度によって、その数値を上記範囲に調整することができる。
また本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、単層でも、必要に応じて複層からなる構成であってもよい。各単層に仮にボイドやピンホール等の欠陥が発生した場合にも欠陥が伝播しないという観点からは、複層であることが好ましい。一方、電解質ポリマーおよび添加剤の充填性の観点からは、単層であることが好ましい。微多孔膜を複層にする方法としては、2つ以上の単層を熱ラミネートで接着する方法やケークを複数重ねて圧延する方法等が挙げられる。
また本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、その製造時の機械流れ方向(MD)及びこれに垂直な方向(TD)の少なくとも一方の弾性率が1000MPa以下であることが好ましく、500MPa以下であることがより好ましく、250MPa以下であることがさらに好ましい。微多孔膜の弾性率を1000MPa以下とすることにより、電解質膜の寸法安定性が向上する。ここで微多孔膜の弾性率はJIS−K7113に準拠して測定される値を言う。
フッ素系高分子電解質ポリマーにおけるプロトン伝導は、フッ素系高分子電解質ポリマーが水を吸収し、イオン交換基が水和されることによって可能となる。したがって、イオン交換基密度が上がり、イオン交換容量が大きくなるほど、同湿度での伝導度は高くなる。また湿度が高いほど、伝導度は高くなる。
本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、スルホン基密度が高い場合は、低湿度下においても高い伝導度を示すが、高湿度下にて極度に含水するという問題がある。例えば、レッドクスフロー二次電池の運転においては、1日1回以上の起動と停止が通常行われるが、その際の湿度変化により電解質膜は膨潤収縮を繰り返すことになる。電解質膜がこのような乾湿寸法変化を繰り返すことは、性能面・耐久面の両面においてマイナスである。本実施形態におけるフッ素系高分子電解質ポリマーは、そのイオン交換容量が高い場合は、含水し易く、そのままの状態で膜を形成すると乾湿寸法変化が大きい。しかしながら、弾性率が1000MPa以下の微多孔膜を用いることにより、膜の体積変化による応力を微多孔膜で緩和し、寸法変化を抑制することが可能となる。一方、微多孔膜の弾性率が小さすぎると、膜の強度が低下する傾向にある。したがって、フッ素系微多孔膜の弾性率は、1〜1000MPaが好ましく、10〜800MPaがより好ましく、100〜500MPaがさらに好ましい。
本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、その空隙率が50%〜90%であると好ましく、60%〜90%であるとより好ましく、60%〜85%であると更に好ましく、50%〜85%であると特に好ましい。空隙率が50%〜90%の範囲にあることにより、電解質膜のイオン導電性の向上と電解質膜の強度の向上及び寸法変化の抑制を両立することができる傾向にある。ここで、微多孔膜の空隙率は、水銀圧入法により水銀ポロシメータ(例えば、島津製作所製、商品名:オートポアIV 9520、初期圧約20kPa)によって測定される値を言う。
微多孔膜の空隙率は、微多孔膜中の孔数、孔径、孔形状、延伸倍率、液状潤滑剤添加量及び液状潤滑剤の種類によって、その数値を上記範囲に調整することができる。微多孔膜の空隙率を高くする手段としては、例えば、液状潤滑剤の添加量を5〜50質量%に調整する方法が挙げられる。この範囲に液状潤滑剤の添加量を調整することで、微多孔膜を構成する樹脂の成形性が維持されると共に可塑化効果が十分となるため、微多孔膜を構成する樹脂の繊維を二軸方向に高度にフィブリル化させることができ効率よく延伸倍率を増加させることができる。逆に、空隙率を低くする手段としては、例えば、液状潤滑剤を減量すること、延伸倍率を減少すること等が挙げられる。
本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、その膜厚が0.1μm〜50μmであると好ましく、0.5μm〜30μmであるとより好ましく、1.0μm〜20μmであると更に好ましく、2.0μm〜20μmであると特に好ましい。膜厚が0.1μm〜50μmの範囲にあることにより、高分子電解質ポリマーが微多孔膜中に孔充填できるとともに、電解質膜の寸法変化が抑制される傾向にある。ここで、微多孔膜の膜厚は、その膜を50%RHの恒温恒湿の室内で十分に静置した後、公知の膜厚計(例えば、東洋精機製作所製、商品名「B−1」)を用いて測定される値を言う。
微多孔膜の膜厚は、キャスト溶液の固形分量、押し出し樹脂量、押し出し速度、微多孔膜の延伸倍率によって、その数値を上記範囲に調整することができる。
本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、さらに、収縮低減のために熱固定処理を施されることが好ましい。この熱固定処理を行うことにより、高温雰囲気下での微多孔膜の収縮を低減し、電解質膜の寸法変化を低減することができる。熱固定は、例えばTD(幅方向)テンターにより、微多孔膜原料の融点以下の温度範囲でTD(幅方向)方向の応力を緩和させることにより、微多孔膜に施される。本実施形態において好適に用いられるPTFEの場合、好ましい応力緩和温度範囲は200℃〜420℃である。
また、本実施形態におけるフッ素系微多孔膜は、本発明の課題解決及び効果を損なわない範囲で、界面活性剤塗布、化学的改質などの表面処理が必要に応じて施されてもよい。表面処理を施すことで微多孔膜の表面を親水化することができ、高分子電解質ポリマー溶液の高充填性といった効果を奏するほか、電解質膜の含水率を調整し得る。
本実施形態における電解質膜の製造方法(成膜法)としては、特に限定されず、公知の、押し出し方法、キャスト成膜を用いることができる。電解質膜は単層でも多層(2〜5層)でもよく、多層の場合は性質の異なる膜(例えば、EWや官能基の異なる樹脂)を積層することにより、電解質膜の性能を改善することができる。多層の場合は、押出し製膜時、キャスト時に積層させるか、又は得られたそれぞれの膜を積層させればよい。
また、上記方法で成膜された電解質膜は、充分水洗浄し(又は必要に応じて、水洗前に、希薄な、塩酸、硝酸、硫酸等の水性酸性液で処理し)不純物を除去して、膜を空気中(好ましくは不活性ガス中)で、130〜200℃、好ましくは140〜180℃、より好ましくは150〜170℃で、1〜30分間熱処理することが好ましい。熱処理の時間は、より好ましくは2〜20分であり、更に好ましくは3〜15分、特に好ましくは5〜10分程度である。
上記処理を行う理由の一つは、成膜時のままの状態では、原料由来の粒子間(一次粒子及び二次粒子間)及び分子間が充分に絡み合っていないため、その粒子間及び分子間を絡み合わす目的で、特に耐水性(特に熱水溶解成分比率を下げ)、水の飽和吸水率を安定させ、安定なクラスターを生成させるために有用である。また、膜強度向上の観点からも有用である。特にキャスト成膜法を用いた場合には有用である。
また、他の理由としては、フッ素系高分子電解質ポリマーの分子間同士で、微小な分子間架橋を生成させることにより、耐水性及び安定なクラスター生成に寄与し、さらに、クラスター径を均一に且つ小さくする効果があると推測される。
さらには、樹脂組成物中のフッ素系高分子電解質ポリマーのイオン交換基が、その他の添加物(樹脂を含む)成分の活性反応部位(芳香環など)と、少なくともその一部分が反応し、それを介して、(特に分散している添加物であるその他樹脂成分の近くに存在するイオン交換基の反応により)微小な架橋が生成して安定化するものと推測される。この架橋の程度は、EW(熱処理前後のEW低下の程度)に換算して、0.001〜5%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3%、更に好ましくは0.2〜2%程度である。
また、上記処理条件(時間、温度)の上限を超える過剰な処理を行った場合は、脱フッ素、脱フッ酸、脱スルホン酸、熱酸化部位などが増えて、かえって分子構造に欠陥が生じ、そこを起点に、実際に電解膜として使用している間に、耐酸化劣化性が悪化する傾向にある。一方、処理条件の下限未満であると、上述した本処理の効果が不十分となる場合がある。
本実施形態における電解質膜に存在するイオンクラスターは、高分子電解質ポリマー分子の骨格をなすフッ素化炭化水素部分を形成する疎水部分と、該主鎖に結合している側鎖である適度な分子構造及び該長さ部分を形成していて先端に位置するイオン交換基である親水基が(分子を介して)複数集まった部分と、その周辺に配位している水分子及び水素結合その他の親和力で近辺に集められている自由水(遊離水とも言う)とからなる。そして、複数個の、大きいサイズのチャンネル(所謂イオンクラスター)と、その間を繋ぐ小さなサイズのイオンチャンネルが形成され、結果として、膜の厚み方向に連続してイオンチャンネルが通じ、これがイオン(特にプロトンH+の)伝導通路(チャンネル)として機能する。
本実施形態における電解質膜の、25℃水中における小角X線法により測定したイオンクラスター径は好ましくは1.00〜3.10nmであり、より好ましくは1.50〜3.00nm、更に好ましくは1.70〜2.95nm、特に好ましくは2.00〜2.75nmである。イオンクラスター径が3.10nmを超えると、大きなイオンを透過しやすくなるため、イオン選択透過性に問題が生じるおそれがあり、また、膜の強度が低下する傾向にある。一方、イオンクラスター径が1.00nm未満であると、水分子を配位したプロトン(H+)が通り難くなり、電気抵抗が上昇する傾向にある。
電解質膜の単位体積あたりのイオンクラスター数(個/nm3)は、好ましくは0.06〜0.25であり、より好ましくは0.09〜0.22、更に好ましくは0.12〜0.20である。単位体積あたりのイオンクラスター数が多すぎると、膜強度が低下するおそれがあり、少なすぎると、電気伝導度が悪化する(膜電気抵抗が低くなる)傾向にある。
イオンクラスター径及びクラスター数の具体的な算出方法としては、以下のとおりである。
電解質膜を25℃の水に含浸した状態で小角X線散乱測定を実施し、得られた散乱プロフィールに対して空セル散乱補正、絶対強度補正を行う。2次元検出器を用いて測定を行った場合は円環平均等によりデータを1次元化し、散乱強度の散乱角依存性を求める。こうして得られた散乱強度の散乱角依存性(散乱プロフィール)を用いて、橋本康博、坂本直紀、飯嶋秀樹 高分子論文集 vol.63 No.3 pp.116 2006に記載された手法に準じてクラスター径を求めることができる。すなわち、クラスター構造が粒径分布を持つコアーシェル型の剛体球で表されると仮定し、このモデルに基づく理論散乱式をもちいて実測の散乱プロフィールのクラスター由来の散乱が支配的な領域をフィッティングすることで平均クラスター直径(クラスター径)、クラスター個数密度を得ることができる。このモデルにおいて、コアの部分がクラスターに相当し、コアの直径がクラスター径となる。なお、シェル層は仮想的なものでシェル層の電子密度はマトリックス部分と同じとする。また厚みは0.25nmとする。
電解質膜のイオンクラスター径及びイオンクラスター数は、ポリマー構造やポリマー組成、製膜条件等により調整することができる。
本実施形態における電解質膜は、イオンの選択透過性に優れ、電気抵抗も低く、耐久性(主に、ヒドロキシラジカル耐酸化性)にも優れており、レドックスフロー二次電池用の隔膜として優れた性能を発揮する。なお、本明細書中の各物性は、特に明記しない限り、以下の実施例に記載された方法に準じて測定することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
(フッ素系高分子電解質ポリマー)
(1) PFSA樹脂前駆体のメルトフローインデックス
ASTM:D1238に準拠して、測定条件:温度270℃、荷重2160gで測定を行った。
(2) PFSA樹脂の当量質量EW
PFSA樹脂0.3gを、25℃、飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中の遊離プロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPFSA樹脂分を純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPFSA樹脂の質量をW(mg)とし、下記式より当量質量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22
(高分子電解質膜)
(3) 膜厚
膜サンプルを23℃、50%RHの恒温恒湿の室内で1時間以上静置した後、膜厚計(東洋精機製作所製、商品名「B−1」)を用いて膜厚を測定した。
(4) 膜平衡含水率
PFSA樹脂の分散液を清澄なガラス板上に塗布し、150℃で約10分間乾燥し、剥離して約30μmの膜を形成させ、これを23℃の水中に約3時間放置し、その後23℃、関係湿度(RH)50%の部屋に24時間放置した時の平衡含水率を測定した。基準の乾燥膜としては、80℃真空乾燥膜を用いた。平衡含水率は、膜の質量変化から算出した。
(5) 膜吸水率
PFSA樹脂の分散液を清澄なガラス板上に塗布し、150℃で約10分間乾燥し、剥離して約30μmの膜を形成させ、これを23℃の水中に約3時間放置し、表面水をふき取って測定した時の最大含水率を測定した。基準の乾燥膜としては、80℃真空乾燥膜を用いた。最大含水率は、膜の質量変化から算出した。
(微多孔膜)
(6) 細孔分布
微多孔膜の細孔分布は、以下のようにして測定した。まず、微多孔膜サンプルをφ25mmの大きさに切り出し、貫通細孔分布/ガス、流体透過性解析装置(Xonics Corporation製、装置名:Porometer3G)を用いて測定を行った。本装置の測定は、JIS−K−3832に記載のバブルポイント法に準拠しており、まず微多孔膜の細孔体積を試験専用液体(porofil(登録商標))で完全に満たした後、微多孔膜にかかる圧力を徐々に増加させることで、試験専用液の表面張力と印加した気体の圧力、供給流量から細孔分布を求める方法である(バブルポイント・ハーフドライ法)。微多孔膜の細孔分布は、細孔測定範囲:0.065μm〜10.0μm、流量ガス:圧縮空気で測定した。
また、細孔の存在量を下記式により算出した。
(細孔の存在量)=(細孔径0.3μm〜5.0μmの範囲に存在する細孔数)/(細孔径0.065μm〜10.0μmに存在する微多孔膜の全細孔数)
(7) 弾性率
膜サンプルを70mm×10mmの矩形膜に切り出し、JIS K−7127に準拠して弾性率を測定した。
(8) 空隙率
水銀ポロシメータ(島津製作所製、商品名:オートポアIV 9520、初期圧約20kPa)を用いて、水銀圧入法により測定した。
(9) 充放電試験
レドックスフロー二次電池は、隔膜の両側にて、液透過性で多孔質の集電体電極(負極用、正極用)を隔膜の両側にそれぞれ配置し、押圧でそれらを挟み、隔膜で仕切られた一方を正極セル室、他方を負極セル室とし、スペーサーで両セル室の厚みを確保した。正極セル室には、バナジウム4価(V4+)及び同5価(V5+)を含む硫酸電解液からなる正極電解液を、負極セル室にはバナジウム3価(V3+)及び同2価(V2+)を含む負極電解液を流通させ、電池の充電及び放電を行った。このとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するためV4+がV5+に酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子によりV3+がV2+に還元される。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H+)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H+)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれる。放電時には、この逆の反応が進む。この時の電池効率(エネルギー効率)電流効率(%)は、放電電力量を充電電力量で除した比率(%)で表され、両電力量は、電池セルの内部抵抗と隔膜のイオン選択透過性及びその他電流損失に依存する。また、電流効率(%)は、放電電気量を充電電気量で除した比率(%)で表され、両電気量は、隔膜のイオン選択透過性及びその他電流損失に依存する。電池効率は、電流効率と電圧効率の積で表される。内部抵抗すなわちセル電気抵抗率の減少は電圧効率を向上させ、イオン選択透過性の向上及びその他電流損失の低減は、電流効率を向上させるので、レドックスフロー二次電池において、重要な指標となる。
充放電実験は、上述のようにして得られた電池を用いて行った。全バナジウム濃度が2M/Lで、全硫酸根濃度が4M/Lでの水系電解液を使用し、また、設置した正極及び負極セル室の厚みがそれぞれ5mmで、両多孔質電極と隔膜の間には炭素繊維からなる厚み5mmで嵩密度が約0.1g/cm3の多孔質状のフエルトを挟んで用いた。充放電実験は電流密度80mA/cm2で実施した。
セル電気抵抗率は、ACインピーダンス法を用いて、放電開始時においてAC電圧10mV,周波数20kHzでの直流抵抗値を測定し、それに電極面積を掛けることによって求めた。
(実施例1〜8)
(1)PFSA樹脂前駆体の作製
ステンレス製攪拌式オートクレーブに、C715COONH4の10%水溶液と純水とを仕込み、十分に真空、窒素置換を行った後、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)(以下、「TFE」とも略記する。)ガスを導入してケージ圧力で0.7MPaまで昇圧した。引き続いて、過硫酸アンモニウム水溶液を注入して重合を開始した。重合により消費されたTFEを補給するため、連続的にTFEガスを供給してオートクレーブの圧力を0.7MPaに保つようにして、供給したTFEに対して、質量比で0.70倍に相当する量のCF2=CFCF2O(CF22−SO2Fを連続的に供給して重合を行い、それぞれ重合条件を最適な範囲に調整して、各種のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体粉末を得た。得られたPFSA樹脂前駆体粉末A1のMFIは0.8(g/10分)であった。
(2)パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、及びその分散溶液の作製
得られたPFSA樹脂前駆体粉末A1を、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を更新して5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有し、式(1)で表される構造を有するPFSA樹脂の重合体Aを得た。得られた重合体AのEWは750(g/eq)であった。
得られたPFSA樹脂を、エタノール水溶液(水:エタノール=50:50(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なPFSA樹脂分散液を作製した。次に、これらの100gのPFSA樹脂分散液に純水100gを添加、攪拌した後、この液を80℃に加熱、攪拌しながら、固形分濃度が20質量%になるまで濃縮した。
得られたPFSA樹脂分散液を、分散液(ASF1)とした。
次に、ポリベンズイミダゾール(以下、「PBI」とも略する。)粉末を、アルカリ水溶液(KOH10%水溶液)に溶解し、上記各PFSA樹脂分散液に、均一に混合分散しながら、攪拌し、最終的(固形成分で)に、該PFSA樹脂成分100質量部に対して4質量部となるように均一に混合した。次にこれらを、粒子状カチオン交換樹脂粒子を充填したカラムを通して、アルカリイオン成分をほぼ完全に除去し、少なくとも一部の該官能基同士(スルホン酸基とアルカリ性の窒素原子と)のイオン結合を生成せしめた混合分散液とし、これをASBF1とした。
同様の方法により、ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」とも略する。)粉末(シェブロン・フィリップス社製、型番P−4)を、アルカリ水溶液(KOH10%水溶液)に溶解し、上記PFSA樹脂分散液に、均一に混合分散しながら攪拌し、最終的(固形成分で)に、該PFSA樹脂成分100質量部に対して10質量部となるように均一に混合した。次にこれらを、粒子状カチオン交換樹脂粒子を充填したカラムを通して、アルカリイオン成分をほぼ完全に除去し、少なくとも一部の該官能基同士(スルホン酸基とアルカリ性の窒素原子と)のイオン結合を生成せしめた混合分散液として、これをASBF2とした。
(3)電解質膜の作製
得られた分散液(ASF1)及び混合分散液(ASBF1及びASBF2)を、公知の通常の方法にて、担体シートであるポリイミド製フィルム上にキャストし、120℃(20分)の熱風を当てて、溶媒をほぼ完全に飛ばし、乾燥させることにより膜を得た。これを更に、160℃10分の条件下における熱風空気雰囲気下で、熱処理することにより膜厚50μmの電解質膜を得た。ASF1から得られた電解質膜を実施例1、ASBF1から得られた電解質膜を実施例2、ASBF2から得られた電解質膜を実施例3の電解質膜とした。
得られた電解質膜の平衡含水率は、ASF1(19質量%)、ASBF1(23質量%)、ASBF2(23質量%)であった。
25℃水中3時間におけるそれぞれの電解質膜の最大含水率は、それぞれ、ASF1(38質量%)、ASBF1(34質量%)、ASBF2(34質量%)であった。ここで、最大含水率は、平衡含水率測定時に観測される最大値を示す。
電解質膜のイオン伝導度は、ASF1(0.14S/cm)、ASBF1(0.12S/cm)、ASBF2(0.1S/cm)であった。
さらに、下記の処理を行うことにより実施例4〜8の電解質膜を得た。
実施例1の電解質膜を、硝酸セリウム(実施例4)、炭酸セリウム(実施例5)、酢酸マンガン(実施例6)、硝酸コバルト(実施例7)、又は硝酸マンガン(実施例8)を蒸留水に溶解した1%硝酸水溶液に浸漬し、室温で40時間、スターラーを用いて攪拌を行って電解質膜中に各金属イオンを含有させた。なお、浸漬前後の硝酸水溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により分析した結果、電解質膜の各金属イオンの含有率(膜中の−SO3−基の数に対するセリウムイオン、コバルトイオン、マンガンイオンの割合)は、それぞれ、10.2%(実施例4)、10.4%(実施例5)、25.1%(実施例6)、25.2%(実施例7)、25.4%(実施例8)であった。
次に各電解質膜を、バナジウムレドックスフロー二次電池の隔膜として用いて充放電試験を行った。各電解質膜を、電解液中で充分平衡にしてから充放電実験を行い、その後安定な状態にしてから、セル電気抵抗率及び電流効率を測定した。各膜のセル電気抵抗率/電流効率を表1に示した。
(実施例9)
(1)PTFE微多孔膜1の作製
数平均分子量650万のPTFEファインパウダー1kg当たりに、押出液状潤滑油としての炭化水素油を20℃において463mL加えて混合した。
次に、この混合物をペースト押出しすることにより得られた丸棒状成形体を、70℃に加熱したカレンダーロールによりフィルム状に成形し、PTFEフィルムを得た。このフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を蒸発除去し、平均厚み300μm、幅150mmの未焼成フィルムを得た。
次に、この未焼成PTFEフィルムを長手方向(MD方向)に延伸倍率6.6倍で延伸し、巻き取った。得られたMD方向延伸PTFEフィルムの両端をクリップで挟み、幅方向(TD方向)に延伸倍率8倍で延伸し、熱固定を行い、厚み10μmの延伸PTFE膜を得た。このときの延伸温度は290℃、熱固定温度は360℃であった。作製したPTFE微多孔膜を微多孔膜1とした。微多孔膜1の細孔分布の分布中心は1.29μmであった。
(2)電解質膜の作製
上記分散液ASF1をバーコーター(松尾産業製、バーNo.200、WET膜厚200μm)を用いて基材フィルム上に塗布した(塗布面積:幅約200mm×長さ約500mm)後、分散液が乾ききっていない状態で、PTFE微多孔膜1(膜厚:10μm、空隙率:82%、サンプルサイズ:幅200mm×長さ500mm)を分散液上に積層し、微多孔膜上からゴムローラーを用いて分散液と微多孔膜を圧着させた。このとき微多孔膜の一部に分散液が充填していることを目視にて確認した後、この
膜を90℃のオーブンで20分乾燥させた。次に、得られた膜のPTFE微多孔膜上から分散液を再度同様にして積層させることで微多孔膜の空隙を分散液で十分に充填させ、この膜を90℃のオーブンでさらに20分乾燥させた。このようにして得られた「分散液が十分に含浸したPTFE微多孔膜」を170℃のオーブンで1時間熱処理し、膜厚約30μmの電解質膜を得た。電解質膜の評価結果を表1に示す。
得られた電解質膜の平衡含水率は、12質量%であった。
25℃水中3時間における電解質膜の最大含水率は、23質量%であった。ここで、最大含水率は、平衡含水率測定時に観測される最大値を示す。
電解質膜の寸法変化は、14%であった
(実施例10〜15)
特開2008−210793号公報の例1に記載の方法と同様の方法によりPFSA樹脂前駆体を作製した。得られたPFSA樹脂前駆体粉末のMFIは、1.5(g/10分)であった。
得られたPFSA樹脂前駆体粉末を用いて、実施例1〜9と同様の方法によりPFSA樹脂の重合体B(EW:960g/eq)を得て、更に、実施例1〜9と同様の方法により電解質膜を得た。電解質膜の評価結果を表1に示す。
(実施例16〜18)
国際公開2004−66426号パンフレットの実施例1に記載の方法と同様の方法によりパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)/CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F(PSVE)共重合体のPFSA樹脂前駆体を作製した。得られたPFSA樹脂前駆体粉末のMFIは、1.5(g/10分)であった。
得られたPFSA樹脂前駆体粉末を用いて、実施例1〜9と同様の方法によりPFSA樹脂の重合体C(EW:1000g/eq)を得て、更に、実施例1〜9と同様の方法により電解質膜を得た。電解質膜の評価結果を表1に示す。
(実施例19及び20)
実施例16及び実施例17で得られた電解質膜を、平板プレス機を用いて150℃で面圧2MPaにてプレスし、その後220℃で2時間熱架橋させた。得られたPFSA樹脂のMFIは、1.0(g/10分)であった。電解質膜の評価結果を表1に示す。
(参考例1)
重合体Aの代わりにナフィオンDE2021(デュポン社製、20%溶液、EW1050)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は4質量%であった。
得られた電解質膜を用いて、寸法変化を測定したところ23%であり、寸法変化が大きかった。
また、実施例と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は94.5/1.20であり、電流効率については、実施例よりも低いレベルであった。これは、比較例1の電解質膜は、イオン選択透過性が低いためと推測される。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果においても、電流効率が86.0%、電気抵抗が1.30であり、耐久性にも劣っていた。
(参考例2)
重量平均分子量が4×105のポリプロピレン100質量部に酸化防止剤0.375質量部を加えポリオレフィン組成物を得た。このポリオレフィン組成物30質量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプ)に投入した。またこの二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン70質量部を供給し、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリオレフィン溶液を調製した。
続いて、この押出機の先端に設置されたTダイから220℃で溶融混練物を押出し、冷却ロールで引き取りながらシートを成形した。次いで成形したシートを、110℃で7×5に逐次二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた延伸膜を塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去した後、乾燥および熱処理を行い厚み12μmのポリプロピレン微多孔膜を得た。微多孔膜の細孔分布の分布中心は0.05μmであった。
重合体Aの代わりにナフィオンDE2021(デュポン社製、20%溶液、EW1050)を用い、さらに、上記にて作製したポリプロピレン微多孔膜を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により電解質膜を得た。この膜の平衡含水率は4質量%であった。
得られた電解質膜を用いて、寸法変化を測定したところ5%であった。
また、実施例と同様の方法により充放電試験を行った結果、電流効率(%)/セル電気抵抗率(Ω・cm2)は50/2.20であり、電流効率については、実施例よりも低いレベルであった。また、耐久試験として、充放電を200サイクル実施した結果においても、電流効率が25.0%、電気抵抗が4.00であり、耐久性にも劣っていた。
表1に、上記実施例1〜20、及び参考例1〜2の結果を示す。
本発明の電解質膜は、イオンの選択透過性に優れ、電気抵抗も低く、耐久性(主に、ヒドロキシラジカル耐酸化性)にも優れており、レドックスフロー二次電池用の隔膜としての産業上利用可能性を有する。
1 正極
2 正極セル室
3 負極
4 負極セル室
5 電解質膜
6 電解槽
7 正極電解液タンク
8 負極電解液タンク
9 交直変換装置
10 レドックスフロー二次電池

Claims (16)

  1. 炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、
    炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、
    前記正極セル室と、前記負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、
    を含む電解槽を有し、
    前記正極セル室は活物質を含む正極電解液を、前記負極セル室は活物質を含む負極電解液を含み、
    前記電解液中の活物質の価数変化に基づき充放電するレドックスフロー二次電池であって、
    前記電解質膜がフッ素系高分子電解質ポリマーを主体とするイオン交換樹脂組成物を含み、
    前記フッ素系高分子電解質ポリマーの当量質量EW(イオン交換基1当量あたりの乾燥質量グラム数)が300〜1300g/eqであるレドックスフロー二次電池。
  2. 前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(1)で表される構造を有する重合体を含む、請求項1記載のレドックスフロー二次電池。
    −[CF2CX12a−[CF2−CF(CF2−O−(CFR1b−(CFR2c−X3)]g− (1)
    (式中、X1及びX2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子及び炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。X3は、COOZ、SO3Z、PO32又はPO3HZを示す。Zは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、又はアミン類(NH4、NH31、NH212、NHR123、NR1234)を示す。R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基及びアレーン基からなる群から選択されるいずれか1種以上を示す。ここで、X3がPO32である場合、Zは同じでも異なっていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基及びフルオロクロロアルキル基からなる群から選択される1種以上を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす数を示す。bは0〜8の整数を示す。cは0又は1を示す。)
  3. 前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記式(2)で表される繰り返し単位と、下記式(3)で表される繰り返し単位と、を有する重合体を含む、請求項1記載のレドックスフロー二次電池。
    (式中、Q1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Q2は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Rf2は、パーフルオロアルキル基であり、Zは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、tは、0〜3の整数である。)
  4. テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を更に有する、請求項3記載のレドックスフロー二次電池。
  5. 前記フッ素系高分子電解質ポリマーが、下記モノマーAに基づく繰り返し単位と下記モノマーBに基づく繰り返し単位を含む共重合体を含む、請求項1記載のレドックスフロー二次電池。
    モノマーA:ラジカル重合により、主鎖に環構造を含む繰り返し単位を有するポリマーを与えるパーフルオロモノマー
    モノマーB:CF2=CF−(OCF2CFY1m−Op−(CF2n−SO22で表されるパーフルオロビニルエーテル
    (式中、Y1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1であり、m+p>0、Y2はOH又はNHSO2ZであってZはエーテル性の酸素原子を含んでもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。)。
  6. 前記モノマーAに基づく繰り返し単位が、下記式(5)で表されるいずれか1種以上の繰り返し単位である、請求項5記載のレドックスフロー二次電池。
    (式中、nは1〜4の整数であり、Rfは炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であり、X1、X2はそれぞれ独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、(CX12nにおいてnが2以上である場合は、炭素ごとにX1とX2の組合せは異なっていてもよい。)。
  7. 前記フッ素系高分子電解質ポリマーは、さらに、下記の(A)〜(F)のいずれかの化合物をコモノマーとして共重合したものであり、かつ前記コモノマーに基づく重合単位を反応させて架橋されたものである、請求項1〜6のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
    (A)二重結合を2個有するパーフルオロ不飽和化合物。
    (B)臭素原子を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
    (C)カルボン酸基、カルボン酸塩基又はカルボン酸エステル基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
    (D)水酸基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
    (E)シアノ基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
    (F)シアナト基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
  8. 前記電解質膜の平衡含水率が5〜80質量%である、請求項1〜7のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
  9. 前記電解質膜がフッ素系微多孔膜からなる補強材を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
  10. 前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して、0.1〜200質量部のポリアゾール系化合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
  11. 前記ポリアゾール系化合物が、環内に窒素原子を1個以上含む複素環化合物の重合体、及び環内に窒素原子を1個以上と酸素及び/又は硫黄を含む複素環化合物の重合体からなる群から選択される1種以上である、請求項10記載のレドックスフロー二次電池。
  12. 前記ポリアゾール系化合物は、ポリイミダゾール系化合物、ポリベンズイミダゾール系化合物、ポリベンゾビスイミダゾール系化合物、ポリベンゾオキサゾール系化合物、ポリオキサゾール系化合物、ポリチアゾール系化合物、及びポリベンゾチアゾール系化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項10又は11記載のレドックスフロー二次電池。
  13. 前記フッ素系高分子電解質ポリマーと前記ポリアゾール系化合物とが、少なくともその一部においてイオン結合を形成している、請求項10〜12のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
  14. 前記イオン交換樹脂組成物がCe系添加剤、Co系添加剤、及びMn系添加剤からなる群から選択されるいずれか1種以上を含む、請求項1〜13のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
  15. 前記イオン交換樹脂組成物が、前記フッ素系高分子電解質ポリマー100質量部に対して0.1〜20質量部のポリフェニレンエーテル樹脂及び/又はポリフェニレンスルフィド樹脂を含む、請求項1〜14のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
  16. 前記レドックスフロー二次電池は、バナジウムを含む硫酸電解液を、正極及び負極電解液として用いたバナジウム系レドックスフロー二次電池である、請求項1〜15のいずれか1項記載のレドックスフロー二次電池。
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