JP2019186155A - 高分子電解質 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、上記現状に鑑み、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することができる高分子電解質を提供することを目的とする。
側鎖に、脂肪族環、芳香族環、及びスルホン酸基を有することを特徴とする、高分子電解質。
前記脂肪族環がエーテル結合をその環構造中に含み、前記芳香族環が置換基を含む、[1]に記載の高分子電解質。
前記側鎖に、前記脂肪族環と前記芳香族環とが直接結合した構造、又は前記脂肪族環と前記芳香族環との間に、置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、エーテル結合、及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を有する構造を有する、[1]又は[2]に記載の高分子電解質。
前記芳香族環の環構造を構成する原子のうち少なくとも3個の原子に、フッ素原子、酸素原子、スルホン酸基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基、及びスルホンアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が結合している、[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子電解質。
前記側鎖が、下記式(1)で表わされる構造と、下記式(2)で表わされる構造とを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の高分子電解質。
[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子電解質と水とを含むことを特徴とする、高分子電解質溶液。
[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子電解質を含むことを特徴とする、電極触媒層。
[7]に記載の電極触媒層を備えることを特徴とする、膜電極接合体。
[8]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
本実施形態の高分子電解質は、側鎖に、脂肪族環、芳香族環、及びスルホン酸基を有する。これら3つを組み合わせることで、燃料電池の運転温度においても高酸素透過性、高プロトン伝導性、強酸性条件下での高耐熱性が実現でき、低〜高加湿の広い加湿範囲に渡って良好な電池性能を実現することにつながる。
エーテル結合を含む脂肪族環の構造としては、以下に限定されないが、例えば、下記式(3a)、(3b)、(4b)、又は(4b)で表わされる構造が挙げられる。
上記置換基としては、以下に限定されないが、例えば、フッ素原子等ハロゲン原子、酸素原子、スルホン酸基、フッ素化炭化水素基、スルホンアミド基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基等が挙げられる。
上記置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基の炭素数としては、1〜10が好ましく、より好ましくは1〜5である。フッ素化炭化水素基の炭素数が2以上である場合、炭素−炭素結合間にエーテル結合が挿入されていてもよい。上記エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基としては、例えば、−(CF2)2O(CF2)2SO3H、−OCF2CF2SO3H、−OCF2CFH−OCF2CF2SO3H、−O−(CF2CF−CF3)−OCF2CF2SO3H、−O−(CF2CF−CF3)−OCF2CF2CF3等が挙げられる。
上記高分子電解質の側鎖が芳香族環を有し、かつ上記構造が芳香族環に結合していることで、高分子電解質の結晶性が崩れるとともに、Pt/高分子電解質界面での高分子電解質密度が低下し、酸素溶解度が高くなり、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現する。その中でも特に、高加湿条件において、Pt活性サイトへのスルホン酸基の吸着を抑制でき、低電流密度領域での電圧性能向上に良好な結果を与える。
上記置換されていてもよい炭素数1〜10のフッ素化炭化水素基の炭素数は、より好ましくは1〜5である。
上記高分子電解質の側鎖に、上記脂肪族環と上記芳香族環とが結合した構造を含む場合、芳香族環のππスタックによる結晶化を抑制することで酸素溶解度を高くすることができるため、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することにつながる。その中でも特に、高加湿条件において、Pt活性サイトへのスルホン酸基の吸着を抑制でき、低電流密度領域での電圧性能向上に良好な結果を与える。
上記高分子電解質の側鎖にスルホン酸基を含むことで、プロトン伝導性及び強酸性条件下での高耐熱性をも実現でき、結果、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することにつながる。
上記式(1)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2、ZがHであることが好ましい。
上記式(2)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2であることが好ましい。
上記R1及びR2は、それらに含まれる原子が互いに結合して環構造を形成していてもよい。
EW=(W/M)−22
上記高分子電解質粒子が水に分散又は溶解したエマルションの形態で、上記高分子電解質が得られる。
本実施形態の高分子電解質溶液は、上記高分子電解質と水とを含むことが好ましく、上記高分子電解質、水、及び/又は有機溶媒を含むことがより好ましい。上記高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層を形成する原料として好適に用いることができる。上記高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層形成用高分子電解質溶液であることが好ましい。
また、チオエーテル化合物も挙げられる。例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル;テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロアピランのような環状チオエーテル;メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル;等が挙げられる。
本実施形態の電気触媒層としては、上記高分子電解質を用いた電極触媒層であることが好ましい。上記電極触媒層は、上記触媒ペーストからなることが好ましい。上記電極触媒層は、安価に製造することができる上、酸素透過性が高い。上記電極触媒層は、燃料電池用として好適に用いることができる。
本実施形態の膜電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、「MEA」ともいう。)は、上記電極触媒層を備えることが好ましい。本実施形態の膜電極接合体は、上記電極触媒層を備えるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。上記膜電極接合体は、燃料電池用として好適に用いることができる。
本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を備えることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものであれば特に限定されず、通常、燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。本実施形態の燃料電池は、上記電極触媒層を有する膜電極接合体を備えるものであるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。
ポリマーの膜の酸素溶解度測定はクロノアンペロメトリー法を用いて行った。ガラス封入した100μmφの白金微小電極を厚さ200μm程度のサンプルに押し当てて、温度、湿度を調整した。窒素又は酸素雰囲気下にて、電位を1100mV(vs.SHE)に保持した後、400mVにステップして電流値を測定した。窒素及び酸素雰囲気下で観測された電流値の差分を印加時間の−1/2乗に対してプロットし、直線性が得られた範囲において下記式を用いて酸素溶解度を算出した。
I=4πFrDc[1+r/(πDt)1/2+0.2732exp{−0.3911r/(Dt)1/2}]
ただし、Iは電流値(A)、Fはファラデー定数(96500C/mol)、rは電極半径(cm)、Dは酸素拡散係数(cm2/s)、cは酸素溶解度(mol/m3)、tは時間(s)である。
高温低加湿条件下におけるMEAの性能を評価するため、以下のような手順で発電試験を実施した。
固形分濃度15質量%の高分子電解質溶液、電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属工業(株)製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(重量)となるように配合し、次いで、固形分(電極触媒とパーフルオロスルホン酸ポリマーの和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。
(2)MEAの作製
自動スクリーン印刷機(製品名:LS−150、ニューロング精密工業株式会社製)を用い、高分子電解質膜の両面に上記電極触媒インクを、白金量がアノード側0.2mg/cm2、カソード側0.3mg/cm2となるように塗布し、140℃、5分の条件で乾燥・固化させることでMEAを得た。
(3)燃料電池単セルの作製
上記MEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。
(4)発電試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ社製燃料電池評価システム890CL)にセットして、発電試験を実施した。
発電の試験条件は、高加湿条件が、セル温度65℃、アノード及びカソードの加湿ボトル60℃に設定し、低加湿条件が、セル温度90℃、アノード及びカソードの加湿ボトル61℃に設定し、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ900ml/minの条件で供給した。また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。
上記高加湿条件において、電流密度0.2A/cm2において電圧値が0.830V以上であれば◎(優れる)、0.820V超0.830V未満であれば○(良好)、0.820V以下であれば×(劣る)、電流密度0.8A/cm2において電圧値が0.685V以上であれば◎(優れる)、0.675V超0.685V未満であれば○(良好)、0.675V以下であれば×(劣る)として表記した。
また、上記低加湿条件において、電流密度0.2A/cm2において電圧値が0.750V以上であれば◎(優れる)、0.720V超0.750V未満であれば○(良好)、0.720V以下であれば×(劣る)、電流密度0.8A/cm2において電圧値が0.0.550V以上であれば◎(優れる)、0.440V超0.550V未満であれば○(良好)、0.440V以下であれば×(劣る)として表記した。
100mLの三つ口フラスコに水素化ナトリウム(0.27g)を加え、系内を窒素置換後、フラスコを氷浴に付けながら、6−アミノ−2,2,3,3,7−ペンタフルオロ−1,4−ベンゾジオキサン(2.29g)を溶解させた1,2−ジメトキシエタン(40mL)溶液を滴下した。次にフラスコの中に、ラジカル重合法で取得した、テトラフルオロエチレンとCF2=CFOCF2CF2SO2Fとの共重合体(5.0g)を投入し、80℃で2時間反応させた。反応後、4Mの塩酸(100mL)を添加した後、フラスコから反応生成物を取り出し、80℃の熱水で十分に洗浄した。該反応生成物を、水酸化カリウム(15質量%)とメタノール(50質量%)とを溶解した水溶液中に80℃で20時間接触させ、60℃水中に5時間浸漬後、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を5回繰り返した後、イオン交換水で水洗し、乾燥させて、高分子電解質(A1)(4.2g)(下記式(5))を得た。
得られた固形分濃度10質量%のポリマー溶液を80℃で減圧濃縮して、固形分濃度15質量%のポリマー溶液(AS1)を得た。
AM1の酸素溶解度と発電性能の結果を表1に示す。
実施例1は、低加湿及び高加湿の両方の条件における発電性能が著しく高いことが分かる。
電極中の白金量をアノード側0.2mg/cm2、カソード側0.1mg/cm2とした以外は全て実施例1と同様にして発電試験を実施した。結果を表1に示す。
市販のナフィオン溶液(Nafion DE2020CS、SIGMA−ALDRICH社製)を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの膜を作製した。
得られたNafion DE2020CS膜のEWは954であった。
Nafion DE2020CS膜の酸素溶解度と発電性能の結果を表1に示す。
Nafion DE2020CSは、脂肪族環及び芳香族環を有さない為、酸素溶解度が低く、低加湿及び高加湿の両方の条件における発電性能が低いことが分かる。
ラジカル重合法で得られた、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体(69.8mol%/30.2mol%)を用い、実施例1と同様の方法で、加水分解処理によりパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)/CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3Hからなる高分子電解質を取得し、厚み200μmの膜を作製した。
得られた高分子電解質膜のEWは1010であった。
該高分子電解質膜の酸素溶解度と発電性能の結果を表1に示す。
酸素溶解度は比較的高いが、高加湿条件の高電流密度領域での発電性能は低く、全ての条件で高い電圧を満足し得る結果は得られなかった。
Claims (9)
- 側鎖に、脂肪族環、芳香族環、及びスルホン酸基を有することを特徴とする、高分子電解質。
- 前記脂肪族環がエーテル結合をその環構造中に含み、前記芳香族環が置換基を含む、請求項1に記載の高分子電解質。
- 前記側鎖に、前記脂肪族環と前記芳香族環とが直接結合した構造、又は前記脂肪族環と前記芳香族環との間に、置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基、エーテル結合、及びチオエーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を有する構造を有する、請求項1又は2に記載の高分子電解質。
- 前記芳香族環の環構造を構成する原子のうち少なくとも3個の原子に、フッ素原子、酸素原子、スルホン酸基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基、及びスルホンアミド基からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子電解質。
- 前記側鎖が、下記式(1)で表わされる構造と、下記式(2)で表わされる構造とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質と水とを含むことを特徴とする、高分子電解質溶液。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする、電極触媒層。
- 請求項7に記載の電極触媒層を備えることを特徴とする、膜電極接合体。
- 請求項8に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
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