JP7306950B2 - 含フッ素高分子電解質 - Google Patents
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Description
この固体高分子型燃料電池には、パーフルオロカーボンスルホン酸のような電解質膜とその両面に白金担持カーボンとバインダー樹脂(アイオノマー)からなる電極触媒層が密着した膜電極接合体(MEA)が設けられている。
このMEAの片方の電極触媒層に加湿した水素ガスを、もう一方の電極触媒層に加湿した酸素ガスを流通させると、水素ガス側(以下、アノード)の電極触媒上でプロトンが生成し、電解質膜を通して酸素ガス側(以下、カソード)に移動する。反対にカソードの電極触媒上では酸素が還元され、別回路から流れてきた電子と、アノードから流れてきたプロトンと反応し水が生成する。
一方、今後、固体高分子形燃料電池システムの更なる市場成長のためには、システムを構成する各種部材のコスト低減が必要であるが、特に、コスト比率の高い白金触媒の使用量を削減することが必要である。
従来の固体高分子形燃料電池システムではカソードに多くの白金触媒を使用することで性能を担保していたが、白金触媒の使用量を削減すると、発電に寄与する触媒表面積の低下から発電性能が低くなる問題が生じる。
そこで、少ない触媒表面により多くの酸素を供給する為にアイオノマーの酸素透過性を向上させて、電極中に酸素を行き渡らせる試みがなされてきた。
[1]
側鎖に、連結基としてスルホニル基、又はスルホニル基及び環構造に含まれないエーテル結合、を有し、
上記スルホニル基が、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、
上記直接結合をしている上記環状構造が窒素原子、又は窒素原子及びエーテル性の酸素原子、を含み、
上記スルホニル基が上記環状構造に含まれる上記窒素原子と直接結合しており、
上記直接結合をしている上記環状構造が、エーテル結合を含む置換基を有する、
ことを特徴とする、含フッ素高分子電解質。
[2]
上記エーテル結合を含む置換基が、環状エーテルである、[1]に記載の含フッ素高分子電解質。
[3]
側鎖に下記式(1)に記載の構造を有する、[1]又は[2]に記載の含フッ素高分子電解質。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素高分子電解質と溶媒と触媒とを含むことを特徴とする、含フッ素高分子電解質含有組成物。
[5]
[4]に記載の含フッ素高分子電解質含有組成物を含むことを特徴とする、電極触媒層。
[6]
[5]に記載の電極触媒層と電解質膜とを備えることを特徴とする、膜電極接合体。
[7]
[6]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
本実施形態の含フッ素高分子電解質は、側鎖に、連結基としてスルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル結合を有し、上記スルホニル基及び環構造に含まれない上記エーテル結合の少なくとも1つが、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、上記直接結合をしている上記環状構造が窒素原子及び/又はエーテル性の酸素原子を含む。
本実施形態の含フッ素高分子電解質によれば、高酸素透過性を発現するだけでなく、電極触媒層の表面にひび割れを少なくし、燃料電池の運転において、高性能、高化学耐久性を発現することができる。
本実施形態の含フッ素高分子電解質は他の構造単位を有していてもよい。上記他の構造単位は、一種であってもよいし複数種であってもよい。
以下、構造単位Aについて説明する。
上記構造単位Aの側鎖には、連結基として、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル結合を含む。
上記構造単位Aの側鎖には、連結基として、さらに、環構造に含まれない、チオエーテル基、ケトン基、エステル基、イミド基、炭素-炭素結合(例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭素-炭素結合)、等を含んでいてもよい。
中でも、上記連結基は、含フッ素高分子電解質の溶液化、及び燃料電池運転での化学耐久性向上の観点から、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル基と、炭素-炭素結合とを含むことが好ましく、合成の容易性から、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル基のみがより好ましい。
上記環状構造は、環構造を構成する元素として窒素原子及び/又はエーテル性の酸素原子を含むことが好ましく、電極触媒層のひび割れを一層抑制し、酸素透過性を一層向上させる観点から、窒素原子及びエーテル性の酸素原子を含むことが好ましい。
上記環状構造は、酸素透過性を一層向上させる観点から、エーテル結合を含む置換基を有することが好ましく、環状エーテルを含むことが好ましい。
上記環構造の置換基(例えば、R1~R26)としては、酸素溶解度及び酸素透過性の向上、電極のひび割れ防止による電池性能及び化学耐久性向上の観点から、フッ素原子、炭素数が1~10のフッ素化炭化水素基が好ましい。
上記環状構造としては、式13、式14、式25で表される構造が好ましく、酸素透過性に一層優れる観点から、式13がより好ましい。
上記芳香族環は、置換基を含むものが好ましい。
ここで、上記置換基とは、上記連結基以外の置換基をいう。
上記置換基とはとしては、以下に限定されないが、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、酸素原子、スルホン酸基、フッ素化炭化水素基、スルホンアミド基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基等が挙げられるが、中でも、フッ素原子、フッ素化炭化水素基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基が好ましい。
フッ素原子、フッ素化炭化水素基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基が含まれることで、より一層酸素溶解度が向上し、燃料電池運転での低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することにつながる。
上記側鎖は、酸素透過性に一層優れ、電極触媒層のひび割れを一層抑制できる観点から、主鎖に環構造に含まれないエーテル結合が結合し、該エーテル結合に炭素数1~10(好ましくは炭素数3~5)のフッ素化炭化水素基が結合し、該フッ素化炭化水素基にスルホニル基が結合し、該スルホニル基に上記環状構造が結合する構造が好ましい。
(式(50)中、X1~X3は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子を表す。Aは上記式35~式40を有する側鎖を表す。);下記式(51)で表される構造を含む主鎖
(式(51)中、X1~X5のうち、少なくとも2つは、単結合、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、カルボニル基から選ばれる結合基を表し、それぞれ同一でも異なっても良い。また、上記芳香族環を複数含む場合は、上記結合基を介して芳香族環が結合していてもよい。上記結合基を介して隣り合う構造単位の主鎖と結合する。上記結合基以外のX1~X5はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フッ素化されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。Aは、上記側鎖を有する部位を表し、上記芳香族環が複数あるときは、少なくとも一つの芳香族環のAが上記側鎖(例えば、式41~式46を有する部位)を有していればよい。)等の少なくとも1つの芳香族環と少なくとも1つのエーテル結合とを含む主鎖;下記式(52)で表される主鎖
(式(52)中、nは構造単位の繰り返し数を表し、Aは、上記側鎖を有する部位(例えば、式41~式46を有する部位)を表す。);等が挙げられる。
上記主鎖としては、-(CF2-CFA)-、-(CH2-CHA)-等のエチレン系主鎖;ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)等の主鎖にエーテル結合を有する主鎖;が好ましく、中でも、電池性能、化学耐久性の観点から、-(CF2-CFA)-が好ましい。
上記他の構造単位としては、上記構造単位Aと同じ主鎖を有し、上記側鎖を有さない構造単位としてもよい。上記他の構造単位は、例えば、上記構造単位Aと同じ主鎖を有し、側鎖を有さない構造単位と、上記構造単位Aと同じ主鎖を有し、プロトン伝導性を促す側鎖を有する構造単位とであってもよい。
プロトン伝導性を促す側鎖としては、下記式(53)~下記式(56)で表わされる構造であることが好ましい。
(式(53)中、Xは、F、Cl、又は置換されていてもよい炭素数1~3のフッ素化炭化水素基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表す。n個のXは、同一でも異なっていてもよい。Yは、F又はClを表す。mは1~6の整数を表す。m個のYは、同一でも異なっていてもよい。Zは、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属表す。)
上記式(53)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2、YがF、ZがHであることが好ましい。
(式(54)中、Xは、F、Cl、又は置換されていてもよい炭素数1~3のフッ素化炭化水素基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表す。n個のXは、同一でも異なっていてもよい。Yは、F又はClを表す。mは1~6の整数を表す。m個のYは、同一でも異なっていてもよい。Zは、NR1R2を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、水素原子、-SO2-R3を表す。ここでR3は炭素数1~10の炭化水素基を表す。R1、R2の一方が置換されても良いアルキル基又は水素であるとき、R2は-SO2-R3である。)
上記式(54)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2であることが好ましい。
(式(55)中、Rfは、それぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含む炭素数1~10のフッ素化炭化水素基、単結合を表す。Xは、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表す。)
(式(56)中、Rfは、それぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含む炭素数1~10のフッ素化炭化水素基、単結合を表す。XはNR1R2を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基又は水素、-SO2-R3を表す。ここでR3は炭素数1~10の炭化水素基を表す。R1、R2の一方が置換されても良いアルキル基又は水素であるとき、R2は-SO2-R3である。)
(式(57)中、Rfは炭素数1~10のフッ素化炭化水素基を表す。上記フッ素化炭化水素基は構造中にエーテル性酸素原子を含んでも良い。)
上記側鎖(D)としては、-O-CF3、-O-C2F5、-O-C3F7、-O-C2F4-O-C2F5、-O-(CF2CF(CF3))-O-C3F7、等が挙げられる。
本実施形態の含フッ素高分子電解質中の上記構造単位Aの割合は、下記の導入率により求めることができる。
上記導入率は、1.0mol%以上80.0mol%以下が好ましく、10.0mol%以上70.0mol%以下がより好ましく、10.0mol%以上60.0mol%以下がさらに好ましい。上記導入率が1.0mol%以上であることにより、電極触媒層のひび割れを一層抑制し、酸素透過率が高く、耐久性に一層優れる。また、80.0mol%以下であることにより、プロトン伝導性にも優れ、電池性能に一層優れる。
なお、上記導入率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の含フッ素高分子電解質は、当量重量EW(プロトン交換基1当量あたりの含フッ素高分子電解質の乾燥質量グラム数)が100~2000g/eqであることが好ましい。即ち、上記EWの範囲内となるように共重合比やプロトン伝導性基導入率を制御することが好ましい。EWの上限は、好ましくは1000g/eqであり、より好ましくは900g/eqである。EWの下限は、好ましくは300g/eqであり、より好ましくは500g/eqである。EWが上記の範囲内にあることにより、加工性に一層優れ、電極触媒層の伝導度が低くなりすぎず、熱水への溶解性も小さい。
なお、等量重量EWは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により測定される値であり、例えば、以下に示す方法により、標準ポリスチレンを基準として数平均分子量を算出することができる。
TOSOH社製 HLC-8020を用い、カラムはポリスチレンゲル製MIXカラム(東ソーGMHシリーズ、30cmサイズ)を3本、40℃、NMP(5mmol/L LiBr含有)溶剤、流速0.7mL/分で行うことができる。サンプル濃度は、0.1質量%で打ち込み量は500μLで行うことができる。数平均分子量がポリスチレン換算値で10万~80万程度のものが更に好ましく、13万~70万程度のものが更により好ましく、16万~60万程度のものが特に好ましい。
上記MFRは、ASTM規格D1238に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、MELT INDEXER TYPE C-5059D(商品名、東洋精機社製)を用いて測定することができる。
上記含フッ素高分子電解質は、所定の構造単位を形成できるモノマーを重合して得てもよいし、重合後の重合体に所定の側鎖を導入してもよい。
上記含フッ素高分子電解質は、例えば、重縮合、ラジカル重合、アニオン重合等の従来公知の方法にて合成することができ、中でも、重縮合又はラジカル重合が好ましく用いられる。
上記含フッ素高分子電解質粒子が水に分散又は溶解したエマルションの形態で、上記含フッ素高分子電解質が得られる。
上記重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。上記レドックス開始剤としては、過硫酸塩又は有機過酸化物と、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
本実施形態の含フッ素高分子電解質溶液は、上記含フッ素高分子電解質と溶媒(例えば、水、有機溶媒等)とを含むことが好ましく、上記含フッ素高分子電解質と水及び/又は有機溶媒とを含むことがより好ましい。上記含フッ素高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層(例えば、カソード用電極触媒層)を形成する原料として好適に用いることができる。上記含フッ素高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層形成用含フッ素高分子電解質溶液であることが好ましい。
また、チオエーテル化合物も挙げられる。例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル;テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロアピランのような環状チオエーテル;メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル;等が挙げられる。
上記金属酸化物としては例えば、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe3O4)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In2O3、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化タングステン(WO3、W2O5)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2、Ce2O3)、酸化アンチモン(Sb2O3、Sb2O5)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La2O3)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)、等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いてもよいし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al2O3)等に挙げられる複合酸化物を挙げることができる。
上記金属炭酸塩としては例えば、炭酸ジルコニウム(Zr(CO3)2)、炭酸チタニウム(Ti(CO3)2)、炭酸鉄(FeCO3)、炭酸銅(Cu2CO3)、炭酸亜鉛(ZnCO3)、炭酸モリブデン、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸ニッケル(NiCO3)、炭酸コバルト(CoCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)、等が挙げられる。
上記金属硝酸塩としては例えば、硝酸ジルコニウム(Zr(NO3)4)、硝酸鉄(Fe(NO3)3)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、硝酸チタン(Ti(NO3)4)、硝酸セリウム(Ce(NO3)3)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、硝酸コバルト(Co(NO3)2)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)、等が挙げられる。
上記含フッ素高分子電解質は、電極触媒インクを形成する原料として好適に用いることができる。上記電極触媒インクは、上記含フッ素高分子電解質、溶媒(例えば、水及び/又は有機溶媒)、並びに、触媒を含むことが好ましい。上記電極触媒インクは、燃料電池の電極触媒層(例えば、カソード用電極触媒層)を形成する原料として好適に用いることができる。上記電極触媒インクは、燃料電池の電極触媒層形成用電極触媒インクであることが好ましい。
上記触媒としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であることが好ましく、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属であることがより好ましい。中でも、白金が好ましい。
上記電極触媒インク中の上記触媒の含有量は、上記含フッ素高分子電解質に対して、50~200質量%であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100%質量%以上であることが更に好ましく、150質量%以下であることがより好ましく、130質量%以下であることが更に好ましい。
上記電極触媒インクは、撥水性の向上のため、更にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(2,2-ジメチル―1,3-ジオキソール)の共重合体を含有してもよい。この場合、撥水剤の形状としては特に限定されないが、定形性のものであればよく、粒子状、繊維状であることが好ましく、これらが単独で使用されても混合して使用されていてもよい。
無機系添加剤としては、例えば金属酸化物、金属炭酸塩、金属硝酸塩等が挙げられる。
これらの無機添加剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上の混合物を用いても良い。具体的には、金属酸化物としては例えば、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe3O4)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In2O3、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化タングステン(WO3、W2O5)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2、Ce2O3)、酸化アンチモン(Sb2O3、Sb2O5)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La2O3)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いてもよいし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al2O3)等に挙げられる複合酸化物を挙げることができる。
金属炭酸塩としては例えば、炭酸ジルコニウム(Zr(CO3)2)、炭酸チタニウム(Ti(CO3)2)、炭酸鉄(FeCO3)、炭酸銅(Cu2CO3)、炭酸亜鉛(ZnCO3)、炭酸モリブデン、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸ニッケル(NiCO3)、炭酸コバルト(CoCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)等が挙げられる。
金属硝酸塩としては例えば、硝酸ジルコニウム(Zr(NO3)4)、硝酸鉄(Fe(NO3)3)、硝酸銅(Cu(NO3)2)、硝酸チタン(Ti(NO3)4)、硝酸セリウム(Ce(NO3)3)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、硝酸コバルト(Co(NO3)2)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)等が挙げられる。
中でも、親水性向上の観点からシリカ(SiO2)が好ましく、化学耐久性向上の観点から酸化セリウム(CeO2、Ce2O3)、酸化マンガン(MnO)、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)、硝酸セリウム(Ce(NO3)3)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)、硝酸チタン(Ti(NO3)4)が好ましい。
本実施形態の電極触媒層としては、上記含フッ素高分子電解質を含む電極触媒層であることが好ましい。上記電極触媒層は、上記電極触媒インクからなることが好ましい。上記電極触媒層は、安価に製造することができる上、酸素透過性が高い。上記電極触媒層は、カソード用電極触媒層として用いることができ、燃料電池用として好適に用いることができる。
上記複合粒子としては、導電性粒子に対して触媒粒子が、好ましくは1~99質量%、より好ましくは10~90質量%、最も好ましくは30~70質量%である。具体的には、田中貴金属工業(株)製TEC10E40E等のPt触媒担持カーボンが好適な例として挙げられる。
上記撥水剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
電極触媒層が撥水剤を含有する場合、PTFE並びにテトラフルオロエチレンとパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の共重合体の含有率としては、電極触媒層の全質量に対し、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
上記無機系添加剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
上記無機系添加剤の含有率としては、電極触媒層の全質量に対し、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
本実施形態の膜電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、「MEA」ともいう。)は、上記電極触媒層を備えることが好ましい。本実施形態の膜電極接合体は、上記電極触媒層を備えるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。上記膜電極接合体は、燃料電池用として好適に用いることができる。
具体例として、炭素繊維トレカ(東レ社製)、パイロフィル(三菱ケミカル社製)、SIGRACET GDL(MFCテクノロジー社製)等が挙げられる。
本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を備えることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものであれば特に限定されず、通常、燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。本実施形態の燃料電池は、上記電極触媒層を有する膜電極接合体を備えるものであるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。
室温の条件下、試料をフッ素ガス5vol%と窒素ガス95vol%からなる混合ガスに30分間暴露することによりフッ素化を行った。
イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている含フッ素高分子電解質膜、およそ2~20cm2を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液として中和滴定した。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている含フッ素高分子電解質膜を、純水ですすぎ、更に真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの含フッ素高分子電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式により当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)-22
更に、得られたEW値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出した。
側鎖構造を導入した高分子電解質のH-NMR並びにF-NMR解析を行い、EW測定でのプロトン伝導性基導入量と併せることで、側鎖構造の導入率を算出した。また、特に環状構造を有する側鎖がプロトン伝導性基を有さない場合は下記のように導入率を測定した。
側鎖構造を導入した高分子電解質のEWを、上述のイオン交換容量測定の手法で測定した。その時の値をEW1とした。次いで、オートクレーブに側鎖構造を導入した電解質と6Nの塩酸水溶液を仕込み、N2ガスで十分に内部を置換した後、160℃、8時間の条件で加水分解を実施した。得られた高分子電解質を蒸留水で洗浄した後、120℃、1時間の条件で乾燥させた。乾燥させた樹脂のH-NMR並びにF-NMR解析から側鎖が完全に加水分解されていることを確認した。加水分解後の高分子電解質のEWを測定した。その時の値をEW2とした。以上から導入した側鎖量(C2)は1000/(EW1-EW2)と算出した。ここで加水分解前のプロトン伝導性基量をC1とした時、側鎖導入率(S)はC2/(C1+C2)×100(mol%)で表される。
また、構造をH-NMR並びにF-NMRで確認し、EWと併用することで、側鎖末端の構造にかかわらず側鎖構造の導入率を測定することができる。
ポリマーの含水率を加湿可能なTG-DTA(製品名:TG-8120、リガク社製)を用いて測定した。
はじめに、120℃で1時間乾燥させ、その後、80℃まで降温し、湿度80%で1時間保持し、当該加湿条件での質量と、乾燥質量の差から、ポリマー中に含まれる水の質量割合、即ち含水率(質量%)を算出した。
含フッ素高分子電解質樹脂の膜の酸素溶解度を、クロノアンペロメトリー法を用いて測定した。ガラス封入した100μmφの白金微小電極を厚さ200μm程度のサンプルに押し当てて、温度、湿度を調整した。窒素又は酸素雰囲気下にて、電位を1100mV(vs.SHE)に保持した後、400mVにステップして電流値を測定した。窒素及び酸素雰囲気下で観測された電流値の差分を印加時間の-1/2乗に対してプロットし、直線性が得られた範囲において下記式を用いて酸素溶解度を算出した。
I=4πFrDc[1+r/(πDt)1/2+0.2732exp{-0.3911r/(Dt)1/2}]
ただし、Iは電流値(A)、Fはファラデー定数(96500C/mol)、rは電極半径(cm)、Dは酸素拡散係数(cm2/s)、cは酸素溶解度(mol/m3)、tは時間(s)である。
本検討では評価温度80℃、湿度80%での酸素溶解度を示した。
GTRテック(株)製フロー式ガス透過率測定装置GTR-30XFAFCを用いて膜サンプルの酸素のガス透過係数を測定した。供給ガス流量は、TESTガス(酸素)30cc/min、キャリアーガス(He)100kPaとした。ガスの加温加湿条件は、80℃、90%RHを採用した。
TESTガス側からFLOW側に膜サンプルを透過してきた酸素ガスをヤナコ分析工業(株)製ガスクロマトグラフG2700TFに導入して、ガス透過量を定量化する。
透過量をX(cc)、補正係数をk(=1.0)、膜サンプルの膜厚をT(cm)、透過面積をA(cm2)、計量管通過時間をD(sec)、酸素分圧をp(cmHg)とした時のガス透過係数P(cc・cm/(cm2・sec・cmHg))は下記式から計算される。
P=(X×k×T/(A×D×p))
ダイコーターで作製した触媒層の表面を、走査型電子顕微鏡(製品名:VE8800、キーエンス社製)を用い、倍率50倍、加速電圧1kVの条件で観察した。観察の結果、触媒層表面にひび割れがなかった場合をA(良好)、ひび割れが見られた場合をB(不良)と表記した。
高温低加湿条件下におけるMEAの性能を評価するため、以下のような手順で発電試験を実施した。
(1)電極触媒インクの調製
固形分濃度15質量%の含フッ素高分子電解質溶液、電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属工業(株)製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(質量)となるように配合し、次いで、固形分(電極触媒とパーフルオロスルホン酸ポリマーの和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。
(2)電極触媒層の作製
ダイコーター(製品名:理化ダイ、伊藤忠ファインテクノ社製)を用い、膜厚100μmのテフロン(登録商標)基材(製品名:ナフロンテープ、ニチアス社製)上に上記電極触媒インクを、白金量が0.2mg/cm2となる様に塗布し、160℃、5分の条件で乾燥・固化させることで触媒層を得た。
(3)MEAの作製
プレス機(製品名:SFA-37、神藤金属工業社製)を用い、電解質膜(製品名:NafionHP、ケマーズ社製)の両面に、アノード側に含フッ素高分子電解質としてNafionDE2020CSを用いた電極触媒層を、カソード側に本実施形態の含フッ素高分子電解質を用いた電極触媒層を、温度160℃、圧力13MPaの条件で熱プレスすることで、MEAを得た。
(4)燃料電池単セルの作製
上記MEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。
(5)発電試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ社製燃料電池評価システム890CL)にセットして、発電試験を実施した。
発電の試験条件は、セル温度65℃、アノード及びカソードの加湿ボトル60℃に設定し、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ900ml/minの条件で供給した。また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。
上記評価条件において、電流密度0.2A/cm2、及び1.0A/cm2での電圧を表記した。
(6)化学耐久性試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ製燃料電池評価システム890CL)にセットして、セル温度90℃、加湿ボトル61℃(相対湿度30%RH)、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ300cc/minの条件で流通させることでOCV試験を実施した。
上記OCV試験の終点を判定するために、カソード側にマイクロガスクロマトグラフ(製品名:CP-4900、GLサイエンス社製)を接続し、アノード側より透過するH2ガスの濃度を測定した。上記H2ガスの濃度が1000ppmを越えた時点を終点とした。上記終点が200時間以上をA(良好)、200時間未満をB(不良)と表記した。
100mLの三つ口フラスコに水素化ナトリウム(0.27g)を加え、系内を窒素置換後、フラスコを氷浴に付けながら、4-ピペリドンエチレンケタール(1.36g)を溶解させた1,2-ジメトキシエタン(40mL)溶液を滴下した。次にフラスコの中に、ラジカル重合法で取得した、テトラフルオロエチレンとCF2=CFOCF2CF2SO2Fとの共重合体(5.0g)を投入し、80℃で2時間反応させた。反応後、4Mの塩酸(100mL)を添加した後、フラスコから反応生成物を取り出し、80℃の熱水で十分に洗浄した。該反応生成物を、水酸化カリウム(15質量%)とメタノール(50質量%)とを溶解した水溶液中に80℃で20時間接触させ、60℃水中に5時間浸漬後、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を5回繰り返した後、イオン交換水で水洗し、乾燥させて、含フッ素高分子電解質(A1)(4.2g)を得た。
得られた含フッ素高分子電解質(A1)とエタノール水溶液(水:エタノール=30:70(質量比))とを5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、攪拌しながら160℃まで昇温して3時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、固形分濃度10質量%の均一なポリマー溶液を作製した。
得られた固形分濃度10質量%のポリマー溶液を80℃で減圧濃縮して、固形分濃度15質量%のポリマー溶液(AS1)を得た。
上記AS1をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM1)を作製した。AM1のEWは832であり、側鎖に導入された4-ピペリドンエチレンケタールの導入率は10.3mol%であった。
AM1のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS1を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM1は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS1を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
実施例1で得たA1に上記方法でフッ素化を行い、フッ素化物A2を得た。
A2を実施例1と同様な方法で溶液化しポリマー溶液(AS2)を得た。
上記AS2をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM2)を作製した。AM2のEWは933であり、側鎖に導入されたパーフルオロ4-ピペリドンエチレンケタールの導入率は10.1mol%であった。
AM2のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS2を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM2は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS2を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
4-ピペリドンエチレンケタールのかわりに、2,6-ジメチルモルフォリン(0.95g)を用いる以外は実施例1と同様に合成を行い、含フッ素高分子電解質(A3)を得た。
得られたA3に対して上記手法でフッ素化を行った。
フッ素化したA2を実施例1と同様な方法で溶液化しポリマー溶液(AS3)を得た。
上記AS3をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM3)を作製した。AM3のEWは923であり、側鎖に導入されたパーフルオロ2,6-ジメチルモルフォリンの導入率は10.1mol%であった。
AM3のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS3を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM3は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS3を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
4-ピペリドンエチレンケタールのかわりに、1-アザ-15-クラウン-5-エーテル(2.28g)を用いる以外は実施例1と同様に合成を行い、含フッ素高分子電解質(A4)を得た。
得られたA4に対して実施例2と同様にフッ素化を行った。
フッ素化したA4を実施例1と同様な方法で溶液化しポリマー溶液(AS4)を得た。
上記AS4をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM4)を作製した。AM4のEWは1049であり、側鎖に導入されたパーフルオロ1-アザ-15-クラウン-5-エーテルの導入率は10.0mol%であった。
AM4のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS4を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM4は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS4を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
市販のナフィオン溶液(Nafion DE2020CS、SIGMA-ALDRICH社製)を用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmのキャスト膜を製膜し、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記ナフィオン溶液を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
Nafion DE2020CSは、酸素溶解度が低い。また触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF2)2-SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回新しい塩酸水溶液を用いて5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有する含フッ素高分子電解質のペレットを得た。
このペレットをエタノール水溶液(水:エタノール=66.7:33.3(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、撹拌翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なパーフルオロスルホン酸樹脂溶液を調製した。
次に、この溶液1200gを2Lのナスフラスコに移し、湯浴を80℃に設定したロータリーエバポレータ―(BUCHI社製 Rotavapor R-200)に設置し、固形分濃度が20質量%になるように減圧濃縮し、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を調製した。
ポリマー溶液(AS1)のかわりにパーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ200μmのキャスト膜を製膜し、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用いたキャスト膜は、酸素溶解度が低い。また触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF2)2-SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体ペレットを用いる以外は比較例2と同様にキャスト膜、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-2を得た。キャスト膜を用い、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-2を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-2を用いたキャスト膜は、酸素溶解度が低い。また触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
ラジカル重合法で得られた、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体(69.8mol%/30.2mol%)を用いる以外は比較例2と同様にキャスト膜、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-3を得た。キャスト膜を用い、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-3を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-3を用いたキャスト膜は、実施例1と比較して酸素溶解度は高いものの、触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
Claims (7)
- 側鎖に、連結基としてスルホニル基、又はスルホニル基及び環構造に含まれないエーテル結合、を有し、
前記スルホニル基が、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、
前記直接結合をしている前記環状構造が窒素原子、又は窒素原子及びエーテル性の酸素原子、を含み、
前記スルホニル基が前記環状構造に含まれる前記窒素原子と直接結合しており、
前記直接結合をしている前記環状構造が、エーテル結合を含む置換基を有する、
ことを特徴とする、含フッ素高分子電解質。 - 前記エーテル結合を含む置換基が、環状エーテルである、請求項1に記載の含フッ素高分子電解質。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素高分子電解質と溶媒と触媒とを含むことを特徴とする、含フッ素高分子電解質含有組成物。
- 請求項4に記載の含フッ素高分子電解質含有組成物を含むことを特徴とする、電極触媒層。
- 請求項5に記載の電極触媒層と電解質膜とを備えることを特徴とする、膜電極接合体。
- 請求項6に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
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