JP7306950B2 - 含フッ素高分子電解質 - Google Patents

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Description

本発明は、含フッ素高分子電解質、上記含フッ素高分子電解質を含む含フッ素高分子電解質含有組成物、上記含フッ素高分子電解質含有組成物を含む電極触媒層、上記電極触媒層を備える膜電極接合体、上記膜電極接合体を備える燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池は近年、家庭用燃料電池システムや燃料電池自動車に搭載、市販され、地球温暖化防止の観点から、今後も成長が期待される。
この固体高分子型燃料電池には、パーフルオロカーボンスルホン酸のような電解質膜とその両面に白金担持カーボンとバインダー樹脂(アイオノマー)からなる電極触媒層が密着した膜電極接合体(MEA)が設けられている。
このMEAの片方の電極触媒層に加湿した水素ガスを、もう一方の電極触媒層に加湿した酸素ガスを流通させると、水素ガス側(以下、アノード)の電極触媒上でプロトンが生成し、電解質膜を通して酸素ガス側(以下、カソード)に移動する。反対にカソードの電極触媒上では酸素が還元され、別回路から流れてきた電子と、アノードから流れてきたプロトンと反応し水が生成する。
固体高分子形燃料電池では、特に、カソードの電極触媒上での酸素還元反応を如何に効率よく起こすかが課題となる。
一方、今後、固体高分子形燃料電池システムの更なる市場成長のためには、システムを構成する各種部材のコスト低減が必要であるが、特に、コスト比率の高い白金触媒の使用量を削減することが必要である。
従来の固体高分子形燃料電池システムではカソードに多くの白金触媒を使用することで性能を担保していたが、白金触媒の使用量を削減すると、発電に寄与する触媒表面積の低下から発電性能が低くなる問題が生じる。
そこで、少ない触媒表面により多くの酸素を供給する為にアイオノマーの酸素透過性を向上させて、電極中に酸素を行き渡らせる試みがなされてきた。
特許文献1、2には、酸素透過性が高く、カソード側触媒層含フッ素高分子電解質として好適な含フッ素高分子電解質として、ラジカル重合により主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーを与える含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位と、フッ素系スルホン酸含有モノマーに基づく繰り返し単位とを含む共重合体並びに当該共重合体を含有するガス拡散電極が記載されている。
特許文献3には、嵩高い環構造を有することで低密度化し、酸素透過性を促進する含フッ素高分子電解質として、2位にパーフルオロ環構造を有するパーフルオロ(1,3-ジオキソール)とスルホン酸を有するパーフルオロビニルエーテルの共重合体が記載されている。
特許文献4には、プロトン伝導性と酸素透過性を両立する含フッ素高分子電解質として、主鎖又は側鎖に、パーフルオロ脂肪族とスルホンイミドを有する電解質が記載されている。
特開2003-36859号公報 特開2002-260705号公報 特開2018-39937号公報 特開2012-38515号公報
しかしながら、上記特許文献1~4に開示されている含フッ素高分子電解質は、嵩高い環構造の影響で、配合量を多くすると酸素透過性は上昇するものの、電極触媒層を形成させると表面に亀裂を生じ、発電性能が低下する、電池の耐久性が低下する、という問題が生じた。
そこで、本発明は、上記現状に鑑み、電極触媒層のひび割れを抑制し、酸素透過性が高く、電池での発電性能、耐久性が良好な含フッ素高分子電解質を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、側鎖に、連結基としてスルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル結合を有し、上記スルホニル基及び環構造に含まれない上記エーテル結合の少なくとも1つが、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、上記直接結合をしている上記環状構造が窒素原子及び/又はエーテル性の酸素原子を含む含フッ素高分子電解質により、電極触媒層の表面に亀裂を生じることなく、電池での発電性能、耐久性が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
側鎖に、連結基としてスルホニル基、又はスルホニル基び環構造に含まれないエーテル結合、を有し、
上記スルホニル基が、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、
上記直接結合をしている上記環状構造が窒素原子、又は窒素原子びエーテル性の酸素原子、を含み、
上記スルホニル基が上記環状構造に含まれる上記窒素原子と直接結合しており、
上記直接結合をしている上記環状構造が、エーテル結合を含む置換基を有する、
ことを特徴とする、含フッ素高分子電解質。
[2]
上記エーテル結合を含む置換基が、環状エーテルである、[1]に記載の含フッ素高分子電解質。
[3]
側鎖に下記式(1)に記載の構造を有する、[1]又は[2]に記載の含フッ素高分子電解質。
Figure 0007306950000001
(式中、NRは窒素原子を含むパーフルオロ環構造を表す。NRは窒素原子を含め炭素数3~12の環構造であり、炭素数1~3の置換基を有していてよく、該置換基は酸素原子を含んでも良い。上記NRはパーフルオロ環構造に、酸素原子、窒素原子を含んでも良い。)
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素高分子電解質と溶媒と触媒とを含むことを特徴とする、含フッ素高分子電解質含有組成物。
[5]
[4]に記載の含フッ素高分子電解質含有組成物を含むことを特徴とする、電極触媒層。
[6]
[5]に記載の電極触媒層と電解質膜とを備えることを特徴とする、膜電極接合体。
[7]
[6]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
本発明の含フッ素高分子電解質は、電極触媒層のひび割れを抑制し、酸素透過性が高く、電池での発電性能、耐久性が良好である。本発明の含フッ素高分子電解質含有組成物は、電極触媒層の割れを防ぐことが出来る。さらに本発明の膜電極接合体、及び燃料電池は高い発電性能、耐久性を示す。
以下、本発明を具体的に説明する。
[含フッ素高分子電解質]
本実施形態の含フッ素高分子電解質は、側鎖に、連結基としてスルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル結合を有し、上記スルホニル基及び環構造に含まれない上記エーテル結合の少なくとも1つが、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、上記直接結合をしている上記環状構造が窒素原子及び/又はエーテル性の酸素原子を含む。
本実施形態の含フッ素高分子電解質によれば、高酸素透過性を発現するだけでなく、電極触媒層の表面にひび割れを少なくし、燃料電池の運転において、高性能、高化学耐久性を発現することができる。
本実施形態の含フッ素高分子電解質は、主鎖に上記側鎖が結合した構造単位(繰り返し単位)(本明細書において、「構造単位A」と称する場合がある)を少なくとも有する重合体であることが好ましい。上記構造単位Aは、一種であってもよいし複数種であってもよいが、生産性の観点から、一種であることが好ましい。
本実施形態の含フッ素高分子電解質は他の構造単位を有していてもよい。上記他の構造単位は、一種であってもよいし複数種であってもよい。
(構造単位A)
以下、構造単位Aについて説明する。
上記構造単位Aの側鎖には、連結基として、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル結合を含む。
上記構造単位Aの側鎖には、連結基として、さらに、環構造に含まれない、チオエーテル基、ケトン基、エステル基、イミド基、炭素-炭素結合(例えば、部分的又は完全にフッ素化されていてもよい炭素数1~10の炭素-炭素結合)、等を含んでいてもよい。
中でも、上記連結基は、含フッ素高分子電解質の溶液化、及び燃料電池運転での化学耐久性向上の観点から、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル基と、炭素-炭素結合とを含むことが好ましく、合成の容易性から、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル基のみがより好ましい。
上記構造単位Aは、側鎖に、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる環状構造を有する。上記構造単位Aに含まれる上記環状構造は、1つであってもよいし複数であってもよい。
上記環状構造は、環構造を構成する元素として窒素原子及び/又はエーテル性の酸素原子を含むことが好ましく、電極触媒層のひび割れを一層抑制し、酸素透過性を一層向上させる観点から、窒素原子及びエーテル性の酸素原子を含むことが好ましい。
上記環状構造は、酸素透過性を一層向上させる観点から、エーテル結合を含む置換基を有することが好ましく、環状エーテルを含むことが好ましい。
上記環状構造としては、以下に限定されないが、例えば、下記式3~28で表される構造が挙げられる。
Figure 0007306950000002
Figure 0007306950000003
(式3~28中、R1~R26のうち少なくとも1つは上記連結基(好ましくはスルホニル基又は環構造に含まれないエーテル結合)と直接結合している。R1~R26のうち、上記連結基と結合する置換基を除く置換基は、それぞれ独立に、フッ素原子、水素原子、アリール基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、ビススルホニルイミド基、スルホンイミド基等のイオン伝導基等で置換されていてもよい炭素数1~10の炭化水素基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、ビススルホニルイミド基、スルホンイミド基等のイオン伝導基等で置換されていてもよい炭素数が1~10のフッ素化炭化水素基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、ビススルホニルイミド基、スルホンイミド基、又はこれらの組み合わせを表す。)
上記環構造の置換基(例えば、R1~R26)としては、酸素溶解度及び酸素透過性の向上、電極のひび割れ防止による電池性能及び化学耐久性向上の観点から、フッ素原子、炭素数が1~10のフッ素化炭化水素基が好ましい。
上記環状構造としては、式13、式14、式25で表される構造が好ましく、酸素透過性に一層優れる観点から、式13がより好ましい。
上記構造単位Aは、少なくとも1個の上記環状構造と、連結基としてのスルホニル基又は環構造に含まれないエーテル結合とが直接結合している構造を側鎖に含むことが好ましく、上記環状構造に含まれる窒素原子と上記スルホニル基とが直接結合している構造を側鎖に含むことがより好ましい。
上記構造単位Aは、下記式(1)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 0007306950000004
式(1)中、NR1は窒素原子を含むパーフルオロ環構造を表す。NR1は、窒素原子を含め炭素数3~12の環構造であり、炭素数1~3の置換基を有していてよく、上記置換基は酸素原子を含んでも良い。上記NR1はパーフルオロ環構造を構成する原子として、酸素原子、スルホニル基と直接結合している窒素原子以外の窒素原子を含んでも良い。
上記式(1)で表される構造としては、上記式3~14、式23~28を含む構造があげられ、具体的には下記式29~34の構造が好ましい。
Figure 0007306950000005
上記構造単位Aの側鎖に含まれる芳香族環としては、置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレン等の芳香族炭化水素環;置換されていてもよい、フラン、ピラン、ジオキシン、ジベンゾジオキシン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の芳香族複素環;等の構造が挙げられる。
上記芳香族環は、置換基を含むものが好ましい。
ここで、上記置換基とは、上記連結基以外の置換基をいう。
上記置換基とはとしては、以下に限定されないが、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、酸素原子、スルホン酸基、フッ素化炭化水素基、スルホンアミド基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基等が挙げられるが、中でも、フッ素原子、フッ素化炭化水素基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基が好ましい。
フッ素原子、フッ素化炭化水素基、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基が含まれることで、より一層酸素溶解度が向上し、燃料電池運転での低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することにつながる。
上記側鎖は、酸素透過性に一層優れ、電極触媒層のひび割れを一層抑制できる観点から、主鎖側に上記連結基(好ましくは、スルホニル基及び/又は環構造に含まれないエーテル結合)を有し、側鎖末端側に上記環状構造を有することが好ましい。
上記側鎖は、上記環状構造が側鎖末端に位置してもよいし、側鎖の中間に位置してもよい。例えば、環状構造よりも側鎖末端側に炭化水素基、スルホン酸基等のプロトン伝導性基が配置されてよく、主鎖側から側鎖末端に向けて、連結基、環状構造、プロトン伝導性基の順に配置される側鎖であってもよい。
上記側鎖は、酸素透過性に一層優れ、電極触媒層のひび割れを一層抑制できる観点から、主鎖に環構造に含まれないエーテル結合が結合し、該エーテル結合に炭素数1~10(好ましくは炭素数3~5)のフッ素化炭化水素基が結合し、該フッ素化炭化水素基にスルホニル基が結合し、該スルホニル基に上記環状構造が結合する構造が好ましい。
上記側鎖としては、酸素透過性に一層優れ、電極触媒層のひび割れを一層抑制できる観点から、以下の構造が好ましい。以下の構造が、例えば、後述の主鎖のAであってよい。
Figure 0007306950000006
上記構造単位Aの主鎖としては、特に限定されないが、例えば、下記式(50)で表される構造の主鎖
Figure 0007306950000007
式(50)
(式(50)中、X1~X3は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子を表す。Aは上記式35~式40を有する側鎖を表す。);下記式(51)で表される構造を含む主鎖
Figure 0007306950000008
式(51)
(式(51)中、X1~X5のうち、少なくとも2つは、単結合、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、カルボニル基から選ばれる結合基を表し、それぞれ同一でも異なっても良い。また、上記芳香族環を複数含む場合は、上記結合基を介して芳香族環が結合していてもよい。上記結合基を介して隣り合う構造単位の主鎖と結合する。上記結合基以外のX1~X5はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、フッ素化されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。Aは、上記側鎖を有する部位を表し、上記芳香族環が複数あるときは、少なくとも一つの芳香族環のAが上記側鎖(例えば、式41~式46を有する部位)を有していればよい。)等の少なくとも1つの芳香族環と少なくとも1つのエーテル結合とを含む主鎖;下記式(52)で表される主鎖
Figure 0007306950000009
式(52)
(式(52)中、nは構造単位の繰り返し数を表し、Aは、上記側鎖を有する部位(例えば、式41~式46を有する部位)を表す。);等が挙げられる。
上記主鎖としては、-(CF2-CFA)-、-(CH2-CHA)-等のエチレン系主鎖;ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)等の主鎖にエーテル結合を有する主鎖;が好ましく、中でも、電池性能、化学耐久性の観点から、-(CF2-CFA)-が好ましい。
(他の構造単位)
上記他の構造単位としては、上記構造単位Aと同じ主鎖を有し、上記側鎖を有さない構造単位としてもよい。上記他の構造単位は、例えば、上記構造単位Aと同じ主鎖を有し、側鎖を有さない構造単位と、上記構造単位Aと同じ主鎖を有し、プロトン伝導性を促す側鎖を有する構造単位とであってもよい。
本実施形態の含フッ素高分子電解質は、プロトン伝導性を促す側鎖を有してもよい。
プロトン伝導性を促す側鎖としては、下記式(53)~下記式(56)で表わされる構造であることが好ましい。
Figure 0007306950000010
式(53)
(式(53)中、Xは、F、Cl、又は置換されていてもよい炭素数1~3のフッ素化炭化水素基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表す。n個のXは、同一でも異なっていてもよい。Yは、F又はClを表す。mは1~6の整数を表す。m個のYは、同一でも異なっていてもよい。Zは、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属表す。)
上記式(53)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2、YがF、ZがHであることが好ましい。
Figure 0007306950000011
式(54)
(式(54)中、Xは、F、Cl、又は置換されていてもよい炭素数1~3のフッ素化炭化水素基を表す。kは0~2の整数、nは0~8の整数を表す。n個のXは、同一でも異なっていてもよい。Yは、F又はClを表す。mは1~6の整数を表す。m個のYは、同一でも異なっていてもよい。Zは、NR12を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、水素原子、-SO2-R3を表す。ここでR3は炭素数1~10の炭化水素基を表す。R1、R2の一方が置換されても良いアルキル基又は水素であるとき、R2は-SO2-R3である。)
上記式(54)において、特に、kが0又は2、nが0、mが2であることが好ましい。
Figure 0007306950000012
式(55)
(式(55)中、Rfは、それぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含む炭素数1~10のフッ素化炭化水素基、単結合を表す。Xは、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表す。)
Figure 0007306950000013
式(56)
(式(56)中、Rfは、それぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含む炭素数1~10のフッ素化炭化水素基、単結合を表す。XはNR12を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基又は水素、-SO2-R3を表す。ここでR3は炭素数1~10の炭化水素基を表す。R1、R2の一方が置換されても良いアルキル基又は水素であるとき、R2は-SO2-R3である。)
上記他の構造単位としては、下記式(57)で表される構造を有する側鎖(D)を有する構造単位を含んでいてもよく、-(CF2-CFA)-のAに上記側鎖(D)が直接結合した構造単位としてよい。上記側鎖(D)を有する構造単位を導入することで、含フッ素高分子電解質溶液を調製する際に、溶媒への溶解性を調整することが可能となる。
Figure 0007306950000014
式(57)
(式(57)中、Rfは炭素数1~10のフッ素化炭化水素基を表す。上記フッ素化炭化水素基は構造中にエーテル性酸素原子を含んでも良い。)
上記側鎖(D)としては、-O-CF3、-O-C25、-O-C37、-O-C24-O-C25、-O-(CF2CF(CF3))-O-C37、等が挙げられる。
上記他の構造単位における主鎖としては、上述の構造単位Aにおける主鎖と同様のものが挙げられる。
(構造単位の含有割合)
本実施形態の含フッ素高分子電解質中の上記構造単位Aの割合は、下記の導入率により求めることができる。
上記導入率は、1.0mol%以上80.0mol%以下が好ましく、10.0mol%以上70.0mol%以下がより好ましく、10.0mol%以上60.0mol%以下がさらに好ましい。上記導入率が1.0mol%以上であることにより、電極触媒層のひび割れを一層抑制し、酸素透過率が高く、耐久性に一層優れる。また、80.0mol%以下であることにより、プロトン伝導性にも優れ、電池性能に一層優れる。
なお、上記導入率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(特性)
本実施形態の含フッ素高分子電解質は、当量重量EW(プロトン交換基1当量あたりの含フッ素高分子電解質の乾燥質量グラム数)が100~2000g/eqであることが好ましい。即ち、上記EWの範囲内となるように共重合比やプロトン伝導性基導入率を制御することが好ましい。EWの上限は、好ましくは1000g/eqであり、より好ましくは900g/eqである。EWの下限は、好ましくは300g/eqであり、より好ましくは500g/eqである。EWが上記の範囲内にあることにより、加工性に一層優れ、電極触媒層の伝導度が低くなりすぎず、熱水への溶解性も小さい。
なお、等量重量EWは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の含フッ素高分子電解質の数平均分子量は、加工性、電気伝導度及び機械的強度が一層優れることから、1万~200万であることが好ましく、より好ましくは3万~100万である。
上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により測定される値であり、例えば、以下に示す方法により、標準ポリスチレンを基準として数平均分子量を算出することができる。
TOSOH社製 HLC-8020を用い、カラムはポリスチレンゲル製MIXカラム(東ソーGMHシリーズ、30cmサイズ)を3本、40℃、NMP(5mmol/L LiBr含有)溶剤、流速0.7mL/分で行うことができる。サンプル濃度は、0.1質量%で打ち込み量は500μLで行うことができる。数平均分子量がポリスチレン換算値で10万~80万程度のものが更に好ましく、13万~70万程度のものが更により好ましく、16万~60万程度のものが特に好ましい。
本実施形態の含フッ素高分子電解質のメルトフローレート(MFR)は、加工性、電気伝導度及び機械的強度が一層優れることから、0.1~1000g/10分であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であることが更に好ましく、200g/10分以下であることがより好ましく、100g/10分以下であることが更に好ましい。
上記MFRは、ASTM規格D1238に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、MELT INDEXER TYPE C-5059D(商品名、東洋精機社製)を用いて測定することができる。
(製造方法)
上記含フッ素高分子電解質は、所定の構造単位を形成できるモノマーを重合して得てもよいし、重合後の重合体に所定の側鎖を導入してもよい。
上記含フッ素高分子電解質は、例えば、重縮合、ラジカル重合、アニオン重合等の従来公知の方法にて合成することができ、中でも、重縮合又はラジカル重合が好ましく用いられる。
上記含フッ素高分子電解質粒子が水に分散又は溶解したエマルションの形態で、上記含フッ素高分子電解質が得られる。
上記ラジカル重合は、界面活性剤の存在下に行ってもよい。界面活性剤としては、公知の含フッ素アニオン界面活性剤が好ましい。
上記ラジカル重合は、重合開始剤を添加して行うことが好ましい。上記重合開始剤としては、重合温度でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。また、レドックス開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤の濃度は、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド、tert-ブチルヒドロパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。上記レドックス開始剤としては、過硫酸塩又は有機過酸化物と、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
ラジカル重合は、0.05~5.0MPaの圧力下で行うことができる。好ましい圧力の範囲は0.1~1.5MPaである。また、ラジカル重合は、5~100℃の温度で行うことができる。好ましい温度の範囲は10~90℃である。ラジカル重合では、また、目的に応じて、公知の安定剤、連鎖移動剤等を添加してもよい。
上記含フッ素高分子電解質はフッ素化して得てもよい。フッ素化の方法としては、例えば、特開2004-143622号公報に記載があるように、フッ素ガスあるいはフッ素ガスを不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス等)で希釈した混合ガスを被処理物に接触させることにより施すことができる。
(含フッ素高分子電解質溶液)
本実施形態の含フッ素高分子電解質溶液は、上記含フッ素高分子電解質と溶媒(例えば、水、有機溶媒等)とを含むことが好ましく、上記含フッ素高分子電解質と水及び/又は有機溶媒とを含むことがより好ましい。上記含フッ素高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層(例えば、カソード用電極触媒層)を形成する原料として好適に用いることができる。上記含フッ素高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層形成用含フッ素高分子電解質溶液であることが好ましい。
上記含フッ素高分子電解質溶液中の上記含フッ素高分子電解質の質量割合は、2~50質量%であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
上記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリン等のプロトン性有機溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性溶媒、等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
上記含フッ素高分子電解質溶液は、有機系添加剤を含んでもよい。また、上記含フッ素高分子電解質溶液は、無機系添加剤を含んでもよい。
上記有機系添加剤としては、原子がラジカルにより引き抜かれやすい化合物、例えば、3級炭素に結合した水素、炭素-ハロゲン結合等を構造中に有する化合物等が挙げられる。具体的には、ポリアニリンのような上記の官能基で一部置換された芳香族化合物、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、フェニル化ポリキノキサリン、フェニル化ポリキノリン等の不飽和の複素環化合物を挙げることができる。
また、チオエーテル化合物も挙げられる。例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル;テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロアピランのような環状チオエーテル;メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル;等が挙げられる。
上記含フッ素高分子電解質溶液中の上記有機系添加剤の質量割合は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。上記有機系添加剤を0.1質量%以上含有することで、燃料電池運転での化学耐久性を向上させることが可能となる。
上記無機系添加剤としては、例えば金属酸化物、金属炭酸塩、金属硝酸塩等が挙げられる。これらの無機添加剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上の混合物を用いても良い。
上記金属酸化物としては例えば、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化鉄(Fe23、FeO、Fe34)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In23、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化タングステン(WO3、W25)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化セリウム(CeO2、Ce23)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La23)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)、等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いてもよいし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al23)等に挙げられる複合酸化物を挙げることができる。
上記金属炭酸塩としては例えば、炭酸ジルコニウム(Zr(CO32)、炭酸チタニウム(Ti(CO32)、炭酸鉄(FeCO3)、炭酸銅(Cu2CO3)、炭酸亜鉛(ZnCO3)、炭酸モリブデン、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸ニッケル(NiCO3)、炭酸コバルト(CoCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)、等が挙げられる。
上記金属硝酸塩としては例えば、硝酸ジルコニウム(Zr(NO34)、硝酸鉄(Fe(NO33)、硝酸銅(Cu(NO32)、硝酸チタン(Ti(NO34)、硝酸セリウム(Ce(NO33)、硝酸ニッケル(Ni(NO32)、硝酸コバルト(Co(NO32)、硝酸マンガン(Mn(NO32)、等が挙げられる。
上記含フッ素高分子電解質溶液中の上記無機系添加剤の質量割合は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。上記無機系添加剤を0.1質量%以上含有することで、燃料電池運転での化学耐久性を向上させることが可能となる。
上記含フッ素高分子電解質溶液は、有機溶媒を含む場合、さらに水を含むことが好ましく、有機溶媒と水との質量比は10/90~90/10であることが好ましく、30/70以上であることがより好ましく、70/30以下であることがより好ましい。
上記含フッ素高分子電解質溶液は、所望の固形分濃度にするために、濃縮することが可能である。濃縮の方法としては特に限定されない。例えば、加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法等がある。その結果得られる含フッ素高分子電解質溶液の固形分率は、取り扱い性及び生産性を考慮して、最終的な含フッ素高分子電解質溶液の固形分率は0.5~50質量%が好ましい。
上記含フッ素高分子電解質溶液は、粗大粒子成分を除去する観点から、濾過されることがより好ましい。濾過方法は、特に限定されず、従来行われている一般的な方法が適用できる。例えば、通常使用されている定格濾過精度を有する濾材を加工したフィルターを用いて、加圧濾過する方法が代表的に挙げられる。フィルターについては、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10~100倍の濾材を使用することが好ましい。この濾材は濾紙でもよいし、金属焼結フィルターのような濾材でもよい。特に濾紙の場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10~50倍であることが好ましい。金属焼結フィルターの場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の50~100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞したりすることを抑制し得る。一方、平均粒子径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
(含フッ素高分子電解質含有組成物(電極触媒インク))
上記含フッ素高分子電解質は、電極触媒インクを形成する原料として好適に用いることができる。上記電極触媒インクは、上記含フッ素高分子電解質、溶媒(例えば、水及び/又は有機溶媒)、並びに、触媒を含むことが好ましい。上記電極触媒インクは、燃料電池の電極触媒層(例えば、カソード用電極触媒層)を形成する原料として好適に用いることができる。上記電極触媒インクは、燃料電池の電極触媒層形成用電極触媒インクであることが好ましい。
上記触媒としては、電極触媒層において活性を有し得るものであれば特に限定されず、上記電極触媒層が用いられる燃料電池の使用目的に応じて適宜選択される。上記触媒は、触媒金属であることが好ましい。
上記触媒としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であることが好ましく、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属であることがより好ましい。中でも、白金が好ましい。
触媒金属の粒子径は限定されないが、10~1000オングストロームが好ましく、より好ましくは10~500オングストローム、最も好ましくは15~100オングストロームである。
上記電極触媒インク中の上記含フッ素高分子電解質の含有量は、上記電極触媒インクに対して、5~30質量%であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
上記電極触媒インク中の上記触媒の含有量は、上記含フッ素高分子電解質に対して、50~200質量%であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100%質量%以上であることが更に好ましく、150質量%以下であることがより好ましく、130質量%以下であることが更に好ましい。
上記電極触媒インクは、更に、導電剤を含むことが好ましい。上記触媒及び上記導電剤は、上記触媒の粒子を担持した導電剤からなる複合粒子(例えば、Pt担持カーボン等)であることも好ましい形態の一つである。この場合、上記含フッ素高分子電解質は、バインダーとしても機能する。
導電剤としては、導電性を有する粒子(導電性粒子)であれば限定されないが、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛及び各種金属(触媒金属を除く)からなる群より選択される少なくとも1種の導電性粒子であることが好ましい。これら導電剤の粒子径としては、好ましくは10オングストローム~10μm、より好ましくは50オングストローム~1μm、最も好ましくは100~5000オングストロームである。
上記複合粒子としては、導電性粒子に対する触媒粒子の含有量が、好ましくは1~99質量%、より好ましくは10~90質量%、最も好ましくは30~70質量%である。具体的には、田中貴金属工業(株)製TEC10E40E、TEC10E50E、TEC10E50HT等のPt触媒担持カーボンが好適な例として挙げられる。
複合粒子の含有量は、上記含フッ素高分子電解質に対して、1.0~3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.4~2.9質量%、更に好ましくは1.7~2.9質量%、特に好ましくは1.7~2.3質量%である。
上記電極触媒インクは、更に、撥水剤を含んでもよい。
上記電極触媒インクは、撥水性の向上のため、更にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(2,2-ジメチル―1,3-ジオキソール)の共重合体を含有してもよい。この場合、撥水剤の形状としては特に限定されないが、定形性のものであればよく、粒子状、繊維状であることが好ましく、これらが単独で使用されても混合して使用されていてもよい。
上記撥水剤の含有量は、上記含フッ素高分子電解質に対して、0.01~30.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0~25.0質量%、更に好ましくは2.0~20.0質量%、特に好ましくは5.0~10.0質量%である。
上記電極触媒インクは、親水性向上及び化学耐久性向上のため、無機系添加剤を配合しても良い。
無機系添加剤としては、例えば金属酸化物、金属炭酸塩、金属硝酸塩等が挙げられる。
これらの無機添加剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上の混合物を用いても良い。具体的には、金属酸化物としては例えば、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化鉄(Fe23、FeO、Fe34)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In23、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化タングステン(WO3、W25)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化セリウム(CeO2、Ce23)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La23)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化マンガン(MnO)等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いてもよいし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al23)等に挙げられる複合酸化物を挙げることができる。
金属炭酸塩としては例えば、炭酸ジルコニウム(Zr(CO32)、炭酸チタニウム(Ti(CO32)、炭酸鉄(FeCO3)、炭酸銅(Cu2CO3)、炭酸亜鉛(ZnCO3)、炭酸モリブデン、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸ニッケル(NiCO3)、炭酸コバルト(CoCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)等が挙げられる。
金属硝酸塩としては例えば、硝酸ジルコニウム(Zr(NO34)、硝酸鉄(Fe(NO33)、硝酸銅(Cu(NO32)、硝酸チタン(Ti(NO34)、硝酸セリウム(Ce(NO33)、硝酸ニッケル(Ni(NO32)、硝酸コバルト(Co(NO32)、硝酸マンガン(Mn(NO32)等が挙げられる。
中でも、親水性向上の観点からシリカ(SiO2)が好ましく、化学耐久性向上の観点から酸化セリウム(CeO2、Ce23)、酸化マンガン(MnO)、炭酸セリウム(CeCO3)、炭酸マンガン(MnCO3)、硝酸セリウム(Ce(NO33)、硝酸マンガン(Mn(NO32)、硝酸チタン(Ti(NO34)が好ましい。
無機系添加剤の形態としては、粒子状や繊維状といったものを用いても構わないが、特に非定形であることが望ましい。ここで言う非定形とは、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察しても、粒子状や繊維状の金属酸化物が観察されないことを言う。特に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電極触媒層を数10万倍までに拡大して観察しても、粒子状や繊維状の金属酸化物は観察されない。また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電極触媒層を数10万倍~数100万倍に拡大して観察しても、明確に粒子状や繊維状の金属酸化物は観察することができない。このように現状の顕微鏡技術の範囲内では、金属酸化物の粒子状や繊維状を確認することができないことを指す。
上記無機系添加剤の含有量は、上記含フッ素高分子電解質に対して、0.01~100質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~45質量%、更に好ましくは0.01~25質量%、特に好ましくは0.5~6.0質量%である。
(電極触媒層)
本実施形態の電極触媒層としては、上記含フッ素高分子電解質を含む電極触媒層であることが好ましい。上記電極触媒層は、上記電極触媒インクからなることが好ましい。上記電極触媒層は、安価に製造することができる上、酸素透過性が高い。上記電極触媒層は、カソード用電極触媒層として用いることができ、燃料電池用として好適に用いることができる。
上記電極触媒層は、上記含フッ素高分子電解質及び上記触媒からなることが好ましい。上記電極触媒層は、電極面積に対する上記含フッ素高分子電解質の担持量が、好ましくは0.001~10mg/cm2、より好ましくは0.01~5mg/cm2、更に好ましくは0.1~1mg/cm2である。
本実施形態の電極触媒層は、含フッ素高分子電解質、触媒及び導電剤からなるものであることが好ましい。上記電極触媒層は、含フッ素高分子電解質と、触媒の粒子及びこれを担持した導電剤からなる複合粒子(例えば、Pt担持カーボン等)と、からなるものであることも好ましい形態の一つである。この場合、上記含フッ素高分子電解質は、バインダーとしても機能する。
上記導電剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
上記複合粒子としては、導電性粒子に対して触媒粒子が、好ましくは1~99質量%、より好ましくは10~90質量%、最も好ましくは30~70質量%である。具体的には、田中貴金属工業(株)製TEC10E40E等のPt触媒担持カーボンが好適な例として挙げられる。
上記複合粒子の含有率は、電極触媒層の全質量に対し、20~95質量%であることが好ましく、より好ましくは40~90質量%、更に好ましくは50~85質量%、特に好ましくは60~80質量%である。電極触媒層が燃料電池の電極触媒層として用いられる場合、電極面積に対する触媒金属の担持量としては、電極触媒層を形成した状態で、好ましくは0.001~10mg/cm2、より好ましくは0.01~5mg/cm2、更に好ましくは0.1~1mg/cm2、更により好ましくは0.2~0.5mg/cm2である。
電極触媒層の厚みとしては、好ましくは0.01~200μm、より好ましくは0.1~100μm、最も好ましくは1~50μmである。
上記電極触媒層は、必要に応じて撥水剤を含んでもよい。
上記撥水剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
電極触媒層が撥水剤を含有する場合、PTFE並びにテトラフルオロエチレンとパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)の共重合体の含有率としては、電極触媒層の全質量に対し、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
上記電極触媒層は、親水性向上及び化学耐久性向上のため、無機系添加剤を配合しても良い。
上記無機系添加剤としては、上述のものが挙げられ、上述と同様のものが好ましい。
上記無機系添加剤の含有率としては、電極触媒層の全質量に対し、好ましくは0.001~20質量%、より好ましくは0.01~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。
上記電極触媒層の空隙率としては特に限定されないが、好ましくは10~90体積%、より好ましくは20~80体積%、最も好ましくは30~60体積%である。
上記電極触媒層の製造方法は、得られた含フッ素高分子電解質溶液に上記触媒を分散させて上記電極触媒インクを調製する工程と、電極触媒インクを基材に塗布する工程と、基材に塗布した電極触媒インクを乾燥させて電極触媒層を得る工程と、を含む。
得られた含フッ素高分子電解質溶液に上記触媒を分散させて電極触媒インクを調製する工程は、得られたエマルジョン又は含フッ素高分子電解質溶液に、触媒の粒子及びこれを担持した導電剤からなる複合粒子を分散させた電極触媒インクを調製するものであることが好ましい。
上記電極触媒インクの塗布は、スクリーン印刷法、スプレー法等の一般的に知られている各種方法を用いることが可能である。
(膜電極接合体)
本実施形態の膜電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、「MEA」ともいう。)は、上記電極触媒層を備えることが好ましい。本実施形態の膜電極接合体は、上記電極触媒層を備えるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。上記膜電極接合体は、燃料電池用として好適に用いることができる。
電解質膜の両面にアノードとカソードの2種類の電極触媒層が接合したユニットは、膜電極接合体(以下「MEA」ともいう。)と呼ばれる。電極触媒層のさらに外側に一対のガス拡散層を対向するように接合したものについても、MEAと呼ばれる場合がある。電極触媒層はプロトン伝導性を有することが必要となる。
アノードとしての電極触媒層は、燃料(例えば水素)を酸化して容易にプロトンを生しさせる触媒を包含し、カソードとしての電極触媒層は、プロトン及び電子と酸化剤(例えば酸素や空気)を反応させて水を生成させる触媒を包含する。アノードとカソードのいずれについても、触媒としては上述した触媒金属を好適に用いることができる。
ガス拡散層としては、市販のカーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等を用いることができる。これらのガス拡散層にはポリテトラフルオロエチレン等により撥水処理されていることが好ましい。
具体例として、炭素繊維トレカ(東レ社製)、パイロフィル(三菱ケミカル社製)、SIGRACET GDL(MFCテクノロジー社製)等が挙げられる。
MEAは、例えば、電極触媒層の間に電解質膜を挟みこみ、熱プレスにより接合することにより作製することができる。より具体的には、上記含フッ素高分子電解質をアルコールと水の混合溶液に分散又は溶解したものに、触媒として市販の白金担持カーボン(例えば、田中貴金属(株)製TEC10E40E)を分散させてペースト状にする。これを2枚のPTFEシートのそれぞれの片面に一定量塗布して乾燥させて電極触媒層を形成する。次に、各PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に電解質膜を挟み込み、100~200℃で熱プレスにより転写接合してから、PTFEシートを取り除くことにより、MEAを得ることができる。当業者にはMEAの作製方法は周知である。MEAの作製方法は、例えば、JOURNAL OF APPLIED ELECTROCHEMISTRY,22(1992)p.1-7に詳しく記載されている。
上記MEA(一対のガス拡散電極が対向した構造のMEAを含む。)は、更にバイポーラプレートやバッキングプレート等の一般的な燃料電池に用いられる構成成分と組み合わされて、燃料電池が構成される。
(燃料電池)
本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を備えることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものであれば特に限定されず、通常、燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。本実施形態の燃料電池は、上記電極触媒層を有する膜電極接合体を備えるものであるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。
バイポーラプレートとは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトと樹脂との複合材料、又は金属製のプレート等を意味する。バイポーラプレートは、電子を外部負荷回路へ伝達する機能の他、燃料や酸化剤を電極触媒近傍に供給する流路としての機能を持っている。こうしたバイポーラプレートの間にMEAを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池が製造される。
次に本発明を、実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
(フッ素化)
室温の条件下、試料をフッ素ガス5vol%と窒素ガス95vol%からなる混合ガスに30分間暴露することによりフッ素化を行った。
(イオン交換容量)
イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている含フッ素高分子電解質膜、およそ2~20cm2を、25℃、飽和NaCl水溶液30mlに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液として中和滴定した。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている含フッ素高分子電解質膜を、純水ですすぎ、更に真空乾燥して秤量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの含フッ素高分子電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式により当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)-22
更に、得られたEW値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出した。
(導入率)
側鎖構造を導入した高分子電解質のH-NMR並びにF-NMR解析を行い、EW測定でのプロトン伝導性基導入量と併せることで、側鎖構造の導入率を算出した。また、特に環状構造を有する側鎖がプロトン伝導性基を有さない場合は下記のように導入率を測定した。
側鎖構造を導入した高分子電解質のEWを、上述のイオン交換容量測定の手法で測定した。その時の値をEW1とした。次いで、オートクレーブに側鎖構造を導入した電解質と6Nの塩酸水溶液を仕込み、N2ガスで十分に内部を置換した後、160℃、8時間の条件で加水分解を実施した。得られた高分子電解質を蒸留水で洗浄した後、120℃、1時間の条件で乾燥させた。乾燥させた樹脂のH-NMR並びにF-NMR解析から側鎖が完全に加水分解されていることを確認した。加水分解後の高分子電解質のEWを測定した。その時の値をEW2とした。以上から導入した側鎖量(C2)は1000/(EW1-EW2)と算出した。ここで加水分解前のプロトン伝導性基量をC1とした時、側鎖導入率(S)はC2/(C1+C2)×100(mol%)で表される。
また、構造をH-NMR並びにF-NMRで確認し、EWと併用することで、側鎖末端の構造にかかわらず側鎖構造の導入率を測定することができる。
(含水率)
ポリマーの含水率を加湿可能なTG-DTA(製品名:TG-8120、リガク社製)を用いて測定した。
はじめに、120℃で1時間乾燥させ、その後、80℃まで降温し、湿度80%で1時間保持し、当該加湿条件での質量と、乾燥質量の差から、ポリマー中に含まれる水の質量割合、即ち含水率(質量%)を算出した。
(酸素溶解度)
含フッ素高分子電解質樹脂の膜の酸素溶解度を、クロノアンペロメトリー法を用いて測定した。ガラス封入した100μmφの白金微小電極を厚さ200μm程度のサンプルに押し当てて、温度、湿度を調整した。窒素又は酸素雰囲気下にて、電位を1100mV(vs.SHE)に保持した後、400mVにステップして電流値を測定した。窒素及び酸素雰囲気下で観測された電流値の差分を印加時間の-1/2乗に対してプロットし、直線性が得られた範囲において下記式を用いて酸素溶解度を算出した。
I=4πFrDc[1+r/(πDt)1/2+0.2732exp{-0.3911r/(Dt)1/2}]
ただし、Iは電流値(A)、Fはファラデー定数(96500C/mol)、rは電極半径(cm)、Dは酸素拡散係数(cm2/s)、cは酸素溶解度(mol/m3)、tは時間(s)である。
本検討では評価温度80℃、湿度80%での酸素溶解度を示した。
(酸素透過係数)
GTRテック(株)製フロー式ガス透過率測定装置GTR-30XFAFCを用いて膜サンプルの酸素のガス透過係数を測定した。供給ガス流量は、TESTガス(酸素)30cc/min、キャリアーガス(He)100kPaとした。ガスの加温加湿条件は、80℃、90%RHを採用した。
TESTガス側からFLOW側に膜サンプルを透過してきた酸素ガスをヤナコ分析工業(株)製ガスクロマトグラフG2700TFに導入して、ガス透過量を定量化する。
透過量をX(cc)、補正係数をk(=1.0)、膜サンプルの膜厚をT(cm)、透過面積をA(cm2)、計量管通過時間をD(sec)、酸素分圧をp(cmHg)とした時のガス透過係数P(cc・cm/(cm2・sec・cmHg))は下記式から計算される。
P=(X×k×T/(A×D×p))
(ひび割れの有無(SEM観察))
ダイコーターで作製した触媒層の表面を、走査型電子顕微鏡(製品名:VE8800、キーエンス社製)を用い、倍率50倍、加速電圧1kVの条件で観察した。観察の結果、触媒層表面にひび割れがなかった場合をA(良好)、ひび割れが見られた場合をB(不良)と表記した。
(触媒ペースト作製、電極作製、燃料電池評価)
高温低加湿条件下におけるMEAの性能を評価するため、以下のような手順で発電試験を実施した。
(1)電極触媒インクの調製
固形分濃度15質量%の含フッ素高分子電解質溶液、電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属工業(株)製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(質量)となるように配合し、次いで、固形分(電極触媒とパーフルオロスルホン酸ポリマーの和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。
(2)電極触媒層の作製
ダイコーター(製品名:理化ダイ、伊藤忠ファインテクノ社製)を用い、膜厚100μmのテフロン(登録商標)基材(製品名:ナフロンテープ、ニチアス社製)上に上記電極触媒インクを、白金量が0.2mg/cm2となる様に塗布し、160℃、5分の条件で乾燥・固化させることで触媒層を得た。
(3)MEAの作製
プレス機(製品名:SFA-37、神藤金属工業社製)を用い、電解質膜(製品名:NafionHP、ケマーズ社製)の両面に、アノード側に含フッ素高分子電解質としてNafionDE2020CSを用いた電極触媒層を、カソード側に本実施形態の含フッ素高分子電解質を用いた電極触媒層を、温度160℃、圧力13MPaの条件で熱プレスすることで、MEAを得た。
(4)燃料電池単セルの作製
上記MEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。
(5)発電試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ社製燃料電池評価システム890CL)にセットして、発電試験を実施した。
発電の試験条件は、セル温度65℃、アノード及びカソードの加湿ボトル60℃に設定し、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ900ml/minの条件で供給した。また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。
上記評価条件において、電流密度0.2A/cm2、及び1.0A/cm2での電圧を表記した。
(6)化学耐久性試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ製燃料電池評価システム890CL)にセットして、セル温度90℃、加湿ボトル61℃(相対湿度30%RH)、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ300cc/minの条件で流通させることでOCV試験を実施した。
上記OCV試験の終点を判定するために、カソード側にマイクロガスクロマトグラフ(製品名:CP-4900、GLサイエンス社製)を接続し、アノード側より透過するH2ガスの濃度を測定した。上記H2ガスの濃度が1000ppmを越えた時点を終点とした。上記終点が200時間以上をA(良好)、200時間未満をB(不良)と表記した。
(実施例1)
100mLの三つ口フラスコに水素化ナトリウム(0.27g)を加え、系内を窒素置換後、フラスコを氷浴に付けながら、4-ピペリドンエチレンケタール(1.36g)を溶解させた1,2-ジメトキシエタン(40mL)溶液を滴下した。次にフラスコの中に、ラジカル重合法で取得した、テトラフルオロエチレンとCF2=CFOCF2CF2SO2Fとの共重合体(5.0g)を投入し、80℃で2時間反応させた。反応後、4Mの塩酸(100mL)を添加した後、フラスコから反応生成物を取り出し、80℃の熱水で十分に洗浄した。該反応生成物を、水酸化カリウム(15質量%)とメタノール(50質量%)とを溶解した水溶液中に80℃で20時間接触させ、60℃水中に5時間浸漬後、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を5回繰り返した後、イオン交換水で水洗し、乾燥させて、含フッ素高分子電解質(A1)(4.2g)を得た。
得られた含フッ素高分子電解質(A1)とエタノール水溶液(水:エタノール=30:70(質量比))とを5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、攪拌しながら160℃まで昇温して3時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、固形分濃度10質量%の均一なポリマー溶液を作製した。
得られた固形分濃度10質量%のポリマー溶液を80℃で減圧濃縮して、固形分濃度15質量%のポリマー溶液(AS1)を得た。
上記AS1をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM1)を作製した。AM1のEWは832であり、側鎖に導入された4-ピペリドンエチレンケタールの導入率は10.3mol%であった。
AM1のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS1を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM1は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS1を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
(実施例2)
実施例1で得たA1に上記方法でフッ素化を行い、フッ素化物A2を得た。
A2を実施例1と同様な方法で溶液化しポリマー溶液(AS2)を得た。
上記AS2をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM2)を作製した。AM2のEWは933であり、側鎖に導入されたパーフルオロ4-ピペリドンエチレンケタールの導入率は10.1mol%であった。
AM2のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS2を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM2は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS2を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
(実施例3)
4-ピペリドンエチレンケタールのかわりに、2,6-ジメチルモルフォリン(0.95g)を用いる以外は実施例1と同様に合成を行い、含フッ素高分子電解質(A3)を得た。
得られたA3に対して上記手法でフッ素化を行った。
フッ素化したA2を実施例1と同様な方法で溶液化しポリマー溶液(AS3)を得た。
上記AS3をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM3)を作製した。AM3のEWは923であり、側鎖に導入されたパーフルオロ2,6-ジメチルモルフォリンの導入率は10.1mol%であった。
AM3のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS3を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM3は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS3を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
(実施例4)
4-ピペリドンエチレンケタールのかわりに、1-アザ-15-クラウン-5-エーテル(2.28g)を用いる以外は実施例1と同様に合成を行い、含フッ素高分子電解質(A4)を得た。
得られたA4に対して実施例2と同様にフッ素化を行った。
フッ素化したA4を実施例1と同様な方法で溶液化しポリマー溶液(AS4)を得た。
上記AS4をキャスト製膜して、厚み200μmの膜(AM4)を作製した。AM4のEWは1049であり、側鎖に導入されたパーフルオロ1-アザ-15-クラウン-5-エーテルの導入率は10.0mol%であった。
AM4のEW、含水率、酸素溶解度及び酸素透過係数を表1に示す。またAS4を用いた触媒層のひび割れ有無、電池性能及び化学耐久試験の結果を表2に示す。
AM4は高い酸素溶解度、及び酸素透過係数を示す。またAS4を用いた触媒層にはひび割れがなく、電池性能及び化学耐久性が比較の材料よりも高いことが分かる。
(比較例1)
市販のナフィオン溶液(Nafion DE2020CS、SIGMA-ALDRICH社製)を用いて、実施例1と同様にして、厚さ200μmのキャスト膜を製膜し、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記ナフィオン溶液を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
Nafion DE2020CSは、酸素溶解度が低い。また触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
(比較例2)
テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF22-SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回新しい塩酸水溶液を用いて5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有する含フッ素高分子電解質のペレットを得た。
このペレットをエタノール水溶液(水:エタノール=66.7:33.3(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、撹拌翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なパーフルオロスルホン酸樹脂溶液を調製した。
次に、この溶液1200gを2Lのナスフラスコに移し、湯浴を80℃に設定したロータリーエバポレータ―(BUCHI社製 Rotavapor R-200)に設置し、固形分濃度が20質量%になるように減圧濃縮し、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を調製した。
ポリマー溶液(AS1)のかわりにパーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ200μmのキャスト膜を製膜し、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-1を用いたキャスト膜は、酸素溶解度が低い。また触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
(比較例3)
テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF22-SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体ペレットを用いる以外は比較例2と同様にキャスト膜、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-2を得た。キャスト膜を用い、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-2を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-2を用いたキャスト膜は、酸素溶解度が低い。また触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
(比較例4)
ラジカル重合法で得られた、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体(69.8mol%/30.2mol%)を用いる以外は比較例2と同様にキャスト膜、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-3を得た。キャスト膜を用い、EW、酸素溶解度及び酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
また上記パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-3を用い実施例1と同様に触媒層を作製し、ひび割れ有無、電池性能及び化学耐久性試験を行った。結果を表2に示す。
パーフルオロスルホン酸樹脂溶液-3を用いたキャスト膜は、実施例1と比較して酸素溶解度は高いものの、触媒層にひび割れが生じており、電池性能及び化学耐久性が低くなる。
Figure 0007306950000015
Figure 0007306950000016

Claims (7)

  1. 側鎖に、連結基としてスルホニル基、又はスルホニル基び環構造に含まれないエーテル結合、を有し、
    前記スルホニル基が、芳香族環、脂肪族環、及び芳香族環と脂肪族環とを含む複合環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環状構造と直接結合しており、
    前記直接結合をしている前記環状構造が窒素原子、又は窒素原子びエーテル性の酸素原子、を含み、
    前記スルホニル基が前記環状構造に含まれる前記窒素原子と直接結合しており、
    前記直接結合をしている前記環状構造が、エーテル結合を含む置換基を有する、
    ことを特徴とする、含フッ素高分子電解質。
  2. 前記エーテル結合を含む置換基が、環状エーテルである、請求項1に記載の含フッ素高分子電解質。
  3. 側鎖に下記式(1)に記載の構造を有する、請求項1又は2に記載の含フッ素高分子電解質。
    Figure 0007306950000017
    (式中、NRは窒素原子を含むパーフルオロ環構造を表す。NRは窒素原子を含め炭素数3~12の環構造であり、炭素数1~3の置換基を有していてよく、該置換基は酸素原子を含んでも良い。前記NRはパーフルオロ環構造に、酸素原子、窒素原子を含んでも良い。)
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素高分子電解質と溶媒と触媒とを含むことを特徴とする、含フッ素高分子電解質含有組成物。
  5. 請求項4に記載の含フッ素高分子電解質含有組成物を含むことを特徴とする、電極触媒層。
  6. 請求項5に記載の電極触媒層と電解質膜とを備えることを特徴とする、膜電極接合体。
  7. 請求項6に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする、燃料電池。
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