JP7103830B2 - 高分子電解質 - Google Patents
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Description
本発明は、上記現状に鑑み、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することができる高分子電解質を提供することを目的とする。
スルホン酸基、環状体、エーテル結合、及びフッ素原子を含み、
80℃30%RH条件でPt厚膜法により測定した酸素溶解度が7.0mol/m3以上であり、
LAMMPSを用いてPCFF力場によって計算した凝集エネルギー密度が0.350kcal/mol/Å3以上である、
ことを特徴とする高分子電解質。
前記環状体として芳香環を含み、
前記芳香環が、前記芳香環の環構造を構成する原子のうち少なくとも3個の原子に、フッ素原子、酸素原子、スルホン酸基、及びエーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基を有する構造からなる群から選ばれる構造が結合する芳香環である、[1]に記載の高分子電解質。
下記式(2)で表される繰り返し単位を有する、[2]に記載の高分子電解質。
側鎖として前記スルホン酸基を含むスルホン酸基含有側鎖を含み、
前記環状体の環構造を構成する原子に直接結合する基及び前記スルホン酸基含有側鎖に、前記フッ素原子が含まれる、[1]~[3]のいずれかに記載の高分子電解質。
前記環状体として、置換されていてもよい脂環を含む、[2]又は[3]に記載の高分子電解質。
[6]
前記環状体として、置換されていてもよい脂環を含む、[4]に記載の高分子電解質。
前記芳香環と前記脂環とが結合する構造を有する、[5]に記載の高分子電解質。
[8]
側鎖として前記スルホン酸基を含むスルホン酸基含有側鎖を含み、
前記環状体の環構造を構成する原子に直接結合する基及び前記スルホン酸基含有側鎖に、前記フッ素原子が含まれる、[7]に記載の高分子電解質。
[1]~[9]のいずれかに記載の高分子電解質と水とを含むことを特徴とする高分子電解質溶液。
[1]~[9]のいずれかに記載の高分子電解質を含むことを特徴とする電極触媒層。
[11]に記載の電極触媒層を備えることを特徴とする膜電極接合体。
[12]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
上記環状体としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレン等の芳香環;シクロペンタン等の炭素数3~10のシクロアルカン等の飽和の脂環;シクロペンテン等の炭素数3~10のシクロアルケン等の不飽和の脂環;2個以上の原子(例えば、炭素原子と酸素原子)から構成される飽和又は不飽和複素環等の置換された脂環;又はこれらの組み合わせ(複環);等が挙げられる。
本実施形態の高分子電解質中に、上記スルホン酸基、上記環状体、上記エーテル結合、上記フッ素原子は、1個含まれていてもよいし、複数個含まれていてもよい。複数個含まれる場合、構造が同じであってもよいし異なっていてもよい。
上記酸素溶解度が8mol/m3以上であり、凝集エネルギー密度が0.370kcal/mol/Å3以上であると好ましく、上記酸素溶解度が10mol/m3以上であり、凝集エネルギー密度が0.380kcal/mol/Å3以上であるとより好ましい。酸素溶解度と凝集エネルギー密度が上記値以上であると、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現する。
上記酸素溶解度、及び上記凝集エネルギーは、後述の実施例に記載の方法により、測定、計算することができる。
環状体が芳香環を含み、かつ上記構造が芳香環に結合していることで、凝集エネルギー密度が高くなり、すなわち結晶性が崩れるとともに、Pt/高分子電解質界面での高分子電解質密度が低下し、酸素溶解度が高くなり、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現する。その中でも特に、高加湿条件において、Pt活性サイトへのスルホン酸基の吸着を抑制でき、低電流密度領域での電圧性能向上に良好な結果を与える。
上記芳香環としては、ベンゼン系芳香環及び複素系芳香環が好ましく、上記ベンゼン系芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレン、上記複素系芳香環としては、フラン、ピラン、ジオキシン、ジベンゾジオキシン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジンが好ましい。その中でも特に、上記ベンゼン系芳香環としてはベンゼン、上記複素系芳香環としては、フラン、ピラン、ジオキシン、ジベンゾジオキシンが好ましい。上記芳香環は、本実施形態の高分子電解質の主鎖及び側鎖のどちらの中に含まれていても良いが、主鎖に含まれることが好ましく、主鎖のみに含まれることがより好ましい。
上記酸素原子が結合する芳香環としては、芳香環の環構造を構成する原子に、エーテル結合を介して他の基が結合した構造(芳香環を含む主鎖にエーテル結合を含む側鎖が結合した構造、主鎖にエーテル結合と芳香環とを含む構造、側鎖にエーテル結合と芳香環とを含む構造)等が挙げられる。中でも、低加湿及び高加湿における電池性能が一層優れる観点から、芳香環を構成する原子に直接エーテル結合を介して他の基が結合した構造を主鎖に有することが好ましい。
上記置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基の炭素数としては、1~10が好ましく、より好ましくは1~5である。上記置換基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基等のプロトン交換基、スルホンアミド基、フッ素化炭化水素等が挙げられる。フッ素化炭化水素基の炭素数が2以上である場合、炭素-炭素結合間にエーテル結合が挿入されていてもよい。上記エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基を有する構造は、エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基であってよい。上記エーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基を有する構造としては、例えば、-(CF2)2O(CF2)2SO3H、-OCF2CF2SO3H、-OCF2CFH-OCF2CF2SO3H、-O-(CF2CF-CF3)-OCF2CF2SO3H、-O-(CF2CF-CF3)-OCF2CF2CF3)、下記式(8)で表される構造等が挙げられ、-(CF2)2O(CF2)2SO3H、下記式(8)で表される構造が好ましい。
本実施形態の高分子電解質は、フッ素原子を、上記環状体の環構造を構成する原子に直接結合する基、及び上記スルホン酸基含有側鎖の両方に含有することが好ましい。こうすることで、酸素溶解度が高くなるのみではなく、高プロトン伝導性及び強酸性条件下での高耐熱性をも実現でき、結果、低加湿と高加湿のいずれの条件でも高い発電性能を発現することにつながる。
環状体を構成する原子に直接フッ素原子が結合した構造としては、例えば、芳香環又は脂環の環状体の環構造を構成する原子(例えば、炭素原子等)に、1~6個のフッ素原子が結合した構造等が挙げられ、シクロペンテン等の脂環の環構造を構成する炭素原子に結合する全水素原子のうち2個を除く水素原子の全てがフッ素原子に置換された構造が好ましい。
上記脂環としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジオキソラン、ジオキサンが好ましい。上記脂環は、置換されていてもよい。
なお、芳香環と脂環とが結合する構造とは、芳香環の環構造を構成する少なくとも1個の原子と、脂環の環構造を構成する少なくとも1個の原子とが重複した構造をいう。上記芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ヘリセン、ピレンが好ましく、より好ましくはベンゼンである。また、上記脂環としては、置換又は未置換の脂環が挙げられ、未置換の脂環としては、シクロペンタン等の炭素数3~10のシクロアルカン、シクロペンテン等の炭素数3~10のシクロアルケンが挙げられ、置換された脂環としては、ジオキソラン、ジオキサン等の飽和又は不飽和複素環、等が挙げられる。上記脂環としては、下記式(9)で表される基等の2以上の脂環が結合した環であってもよい。
中でも、ベンゼン環を構成する炭素原子の少なくとも1個(例えば、2個)と、ジオキソラン又は下記式(9)で表される環を構成する炭素原子の少なくとも1個(例えば、2個)とが重複する構造が好ましく、後述の式(5)で表される構造がより好ましい。
尚、これらの高分子電解質は、式(1)で表される構造に由来するモノマーであるオクタフルオロシクロペンテンを、水酸基を2つ以上有するモノマーと重縮合させることで、合成できる。
EW=(W/M)-22
TOSOH社製 HLC-8020を用い、カラムはポリスチレンゲル製MIXカラム(東ソーGMHシリーズ、30cmサイズ)を3本、40℃、NMP(5mmol/L LiBr含有)溶剤、流速0.7mL/分で行うことができる。サンプル濃度は、0.1重量%で打ち込み量は500μLで行うことができる。数平均分子量がポリスチレン換算値で10万~80万程度のものが更に好ましく、13万~70万程度のものが更により好ましく、16万~60万程度のものが特に好ましい。
上記MFRは、ASTM規格D1238に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、MELT INDEXER TYPE C-5059D(商品名、東洋精機社製)を用いて測定することができる。
上記高分子電解質粒子が水に分散又は溶解したエマルションの形態で、上記高分子電解質が得られる。
本実施形態の高分子電解質溶液は、上記高分子電解質と水とを含むことが好ましく、上記高分子電解質、水、及び/又は有機溶媒を含むことがより好ましい。上記高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層を形成する原料として好適に用いることができる。上記高分子電解質溶液は、燃料電池の電極触媒層形成用高分子電解質溶液であることが好ましい。
また、チオエーテル化合物も挙げられる。例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル;テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロアピランのような環状チオエーテル;メチルフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル;等が挙げられる。
上記触媒としては、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であることが好ましく、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属であることがより好ましい。中でも、白金が好ましい。触媒金属の粒子径は限定されないが、10~1000オングストロームが好ましく、より好ましくは10~500オングストローム、最も好ましくは15~100オングストロームである。
本実施形態の電気触媒層としては、上記高分子電解質を用いた電極触媒層であることが好ましい。上記電極触媒層は、上記触媒ペーストからなることが好ましい。上記電極触媒層は、安価に製造することができる上、酸素透過性が高い。上記電極触媒層は、燃料電池用として好適に用いることができる。
本実施形態の膜電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、「MEA」ともいう。)は、上記電極触媒層を備えることが好ましい。本実施形態の膜電極接合体は、上記電極触媒層を備えるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。上記膜電極接合体は、燃料電池用として好適に用いることができる。
本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を備えることが好ましい。上記燃料電池は、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。本実施形態の燃料電池は、上記膜電極接合体を有するものであれば特に限定されず、通常、燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってよい。本実施形態の燃料電池は、上記電極触媒層を有する膜電極接合体を備えるものであるため、電池特性並びに機械的強度に優れ、安定性に優れる。
ポリマーの酸素溶解度測定はクロノアンペロメトリー法を用いて行った。ガラス封入した100μmφの白金微小電極を厚さ200μm程度のサンプルに押し当てて、温度、湿度を調整した。窒素又は酸素雰囲気下にて、電位を1100mV(vs.SHE)に保持した後、400mVにステップして電流値を測定した。窒素及び酸素雰囲気下で観測された電流値の差分を印加時間の-1/2乗に対してプロットし、直線性が得られた範囲において下記式を用いて酸素溶解度を算出した。
I=4πFrDc[1+r/(πDt)1/2+0.2732exp{-0.3911r/(Dt)1/2}]
ただし、Iは電流値(A)、Fはファラデー定数(96500C/mol)、rは電極半径(cm)、Dは酸素拡散係数(cm2/s)、cは酸素溶解度(mol/m3)、tは時間(s)である。
(1)合計で100量体のポリマーを2本用意する。
(2)(1)で用意したポリマーは、コポリマーの場合はランダムコポリマーを前提とし、光学異性体がある場合はatacticな構造とする。
(3)(2)のポリマーの分子力場パラメータはPCFFを用い、原子電荷はBond Increment法に従ってアサインする。
(4)Scienomics社のソフトウェアMAPS-4.0.1のAmorphous Builderツールにより、(3)のポリマーによるアモルファスセルを作製する。
(5)(4)で生成したアモルファスセルについて、lammps-14May16を用いて1気圧条件下で10nsのNPTアンサンブルシミュレーションを実施し、5~10nsの密度を平均化する。なお、XYZ方向への周期的境界条件を設定し、電荷評価はPPPMで行い、ファンデルワールスのカットオフ距離は13.0Åとし、tail correctionを付し、温度は350Kとした。なお、本請求項で実施するパラメータの単位は全てrealである。
(6)(5)の操作を4回実施し、平均化して各ポリマーの密度を算出する。
(7)(6)で算出した密度から、(4)と同じツールとポリマー本数、(3)と同じ力場パラメータと電荷を使い、アモルファスセルを再度生成する。
(8)酸素分子を4個生成し、分子力場パラメータ:PCFFをアサインした後、(7)で作製したセルに入れ、構造最適化計算を行う。
(9)(8)で計算したアモルファスセルについて、25nsのNVTアンサンブルを実施する。なお、圧力以外のパラメータは(5)と同じとする。
(10)計算実施後、LAMMPSのcomputeコマンドを用い、2本のポリマーのエネルギーを計算する。具体的には例えばmolecule1と2で既定されるポリマーに対し、group poly molecule1 2でpolyグループを規定し、この中の相互作用を以下のコマンドで網羅的に計算する。compute inter poly group/group poly pair yes boundary yes。これを10~25nsで平均化する。
(11)(10)の計算を4回繰り返し、平均化する。
(12)(11)で算出した平均値をセル体積で割り、凝集エネルギー密度(単位:kcal/mol/Å3)を算出した。
(13)(12)で計算した凝集エネルギー密度が低いほどポリマー間の相互作用が強く、結晶化しやすくなると考えられるため、結晶化の指標とした。
高温低加湿条件下におけるMEAの性能を評価するため、以下のような手順で発電試験を実施した。
固形分濃度15質量%の高分子電解質溶液、電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属工業(株)製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(重量)となるように配合し、次いで、固形分(電極触媒とパーフルオロスルホン酸ポリマーの和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。
(2)MEAの作製
自動スクリーン印刷機(製品名:LS-150、ニューロング精密工業株式会社製)を用い、高分子電解質膜の両面に上記電極触媒インクを、白金量がアノード側0.2mg/cm2、カソード側0.3mg/cm2となるように塗布し、140℃、5分の条件で乾燥・固化させることでMEAを得た。
(3)燃料電池単セルの作製
上記MEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。
(4)発電試験
上記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ社製燃料電池評価システム890CL)にセットして、発電試験を実施した。
発電の試験条件は、高加湿条件が、セル温度65℃、アノード及びカソードの加湿ボトル60℃に設定し、低加湿条件が、セル温度90℃、アノード及びカソードの加湿ボトル61℃に設定し、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ900ml/minの条件で供給した。また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。
上記高加湿条件において、電流密度0.2A/cm2において電圧値が0.830V以上であれば◎(優れる)、0.820V超0.830V未満であれば○(良好)、0.820V以下であれば×(劣る)、電流密度0.8A/cm2において電圧値が0.685V以上であれば◎(優れる)、0.675V超0.685V未満であれば○(良好)、0.675V以下であれば×(劣る)として表記した。
また、上記低加湿条件において、電流密度0.2A/cm2において電圧値が0.750V以上であれば◎(優れる)、0.720V超0.750V未満であれば○(良好)、0.720V以下であれば×(劣る)、電流密度0.8A/cm2において電圧値が0.0.550V以上であれば◎(優れる)、0.440V超0.550V未満であれば○(良好)、0.440V以下であれば×(劣る)として表記した。
下記の反応はグローブボックス内で窒素置換をしながら実施した。500ml四つ口フラスコに、2-ヨードレゾルシノール10.0g(42.4mmol)、脱水N,N-ジメチルアセトアミド130ml、炭酸カリウム14.6g(105.9mmol)を入れ、キャップをした後、常温で撹拌混合した。オクタフルオロシクロペンテン9.0g(42.4mmol)を入れ、内温100℃で24時間撹拌混合した。反応終了後、放冷し、反応液をイオン交換水とメタノールの1:1重量混合液1L中に投入し、ガラスフィルターで減圧ろ過後、イオン交換水とメタノールで十分に洗浄し、50℃で12時間減圧乾燥した。得られたポリマーA1は薄茶色固体で、収量17.1g(収率90%)であった。1H-NMR(d-DMSO)では6.2~7.6ppmに、19F-NMR(d-DMSO)では-113~-121ppmと-133~-137ppmに、芳香環由来のブロードなピークが各々見られた。またGPC測定では数平均分子量が45,300であった。
100mL四つ口フラスコに、上記A1 3.00g、直径100nmの銅粉2.40g、N,N-ジメチルアセトアミド50mLを入れ、120℃で4時間撹拌混合した。次に、Macromolecules,2009年,Vol.42,p.9302-9306を参考に、1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-ヨードエトキシ)エタンスルホニルフルオライドを加水分解して得られた1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-ヨードエトキシ)エタンスルホン酸カリウムをN,N-ジメチルアセトアミド30mlに溶解し、上記反応液に滴下し、160℃で3日間撹拌混合した。ろ過により銅粉を除去した後、溶液を2M硝酸500mlに滴下し、沈殿物を減圧ろ過により回収した。得られた固体をN,N-ジメチルアセトアミド30mlに溶解し、2M硝酸500mlに滴下することで再沈殿精製し、これをさらに3回繰り返した。最後に、得られた固体を再度N,N-ジメチルアセトアミド30mlに溶解し、60℃熱水に滴下することで再沈殿精製した。得られた固体を80℃12時間減圧乾燥した。得られたポリマーA2は薄茶色固体で、収量3.84g(収率90%)であった(式(6))。
得られた固形分濃度10質量%のポリマー溶液を80℃にて減圧濃縮して、固形分濃度15質量%のポリマー溶液AS1を作製した。
AM1のEWは699であり、スルホン酸導入率は70mol%であった。
AM1の酸素溶解度と凝集エネルギー密度を表1に示す。
以上より、実施例1は低加湿及び高加湿の両方の条件における発電性能が著しく高いことが分かる。
電極中の白金量をアノード側0.2mg/cm2、カソード側0.1mg/cm2とした以外は全て実施例1と同様にして発電試験を実施した。結果を表1に示す。
市販のナフィオン溶液(Nafion DE2020CS SIGMA-ALDRICH社製)を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの膜を作製した。
Nafion DE2020CSのEWは954であり、スルホン酸導入率は16.4mol%であった。
Nafion DE2020CSの酸素溶解度と凝集エネルギー密度を表1に示す。
Nafion DE2020CSは環状体を有さない為、酸素溶解度と凝集エネルギー密度がともに低く、低加湿及び高加湿の両方の条件における発電性能が低いことが分かる。
特許文献3の実施例2のポリマーは環状体を有さず、側鎖にエーテル結合を介した直鎖のフッ素化炭化水素基を有する。
上記ポリマーを実施例1と同様に厚み200μmの膜を作製した。
上記膜の酸素溶解度と凝集エネルギー密度はを表1に示す。
凝集エネルギー密度は高く非晶性を示すと考えられるが、酸素溶解度が比較的低く、低加湿条件での発電性能は比較的高いが、高加湿条件での発電性能が低かった。
実施例1の2-ヨードレゾルシノールの代わりに、2、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は、実施例1と同様にして重合を実施した。
得られた前駆体ポリマーに、上記前駆体ポリマーの重量1に対し0.1体積当量のクロロホルム、及び上記前駆体ポリマーの48モル当量のクロロ硫酸を加え、60℃で12時間撹拌混合した。反応液をイオン交換水へ投入し、沈殿精製し、十分に60℃熱水で洗浄した。19F-NMR(d-DMSO)で、-65.0ppmに見られるピークからスルホン化率は31%であった(式(7))。
GPC測定での数平均分子量は8,100であった。
得られた固形分濃度10質量%のポリマー溶液を80℃にて減圧濃縮して、固形分濃度15質量%のポリマー溶液AS2を作製した。
AM2のEWは1719であった。
AM2の酸素溶解度と凝集エネルギー密度を表1に示す。
酸素溶解度は高いが、凝集エネルギー密度は著しく低く、低加湿及び高加湿の両方の条件における発電性能が低いことが分かる。
Claims (13)
- スルホン酸基、環状体、エーテル結合、及びフッ素原子を含み、
80℃30%RH条件でPt厚膜法により測定した酸素溶解度が7.0mol/m3以上であり、
LAMMPSを用いてPCFF力場によって計算した凝集エネルギー密度が0.350kcal/mol/Å3以上である、
ことを特徴とする高分子電解質。 - 前記環状体として芳香環を含み、
前記芳香環が、前記芳香環の環構造を構成する原子のうち少なくとも3個の原子に、フッ素原子、酸素原子、スルホン酸基、及びエーテル結合を含む置換されていてもよい炭素数1以上のフッ素化炭化水素基を有する構造からなる群から選ばれる構造が結合する芳香環である、請求項1に記載の高分子電解質。 - 側鎖として前記スルホン酸基を含むスルホン酸基含有側鎖を含み、
前記環状体の環構造を構成する原子に直接結合する基及び前記スルホン酸基含有側鎖に、前記フッ素原子が含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子電解質。 - 前記環状体として、置換されていてもよい脂環を含む、請求項2又は3に記載の高分子電解質。
- 前記環状体として、置換されていてもよい脂環を含む、請求項4に記載の高分子電解質。
- 前記芳香環と前記脂環とが結合する構造を有する、請求項5に記載の高分子電解質。
- 側鎖として前記スルホン酸基を含むスルホン酸基含有側鎖を含み、
前記環状体の環構造を構成する原子に直接結合する基及び前記スルホン酸基含有側鎖に、前記フッ素原子が含まれる、請求項7に記載の高分子電解質。 - 請求項1~9のいずれか一項に記載の高分子電解質と水とを含むことを特徴とする高分子電解質溶液。
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする電極触媒層。
- 請求項11に記載の電極触媒層を備えることを特徴とする膜電極接合体。
- 請求項12に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
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